JP5623719B2 - 荷電粒子線装置の色収差補正装置及びその補正方法 - Google Patents

荷電粒子線装置の色収差補正装置及びその補正方法 Download PDF

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Description

本発明は荷電粒子線装置に用いられる色収差並びに球面収差補正装置およびその収差補正方法に関し、特に電磁場重畳多極子を用いた色収差・球面収差同時補正装置及びその収差補正方法に関する。
透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子線装置(荷電粒子線装置)において、球面収差と色収差は空間分解能を低下させる主な要因である。特に、軸対称レンズは本質的に正の球面収差を生じるため、凹レンズ作用を生じさせることは不可能である。一方、色収差についても軸対称レンズでは色収差を除去することは出来ない。従って、多極子による回転対称場がこれらの収差を補正するために用いられる。
非特許文献1、非特許文献2には、六極子を二段用いた球面収差補正器に関する記載がある。この球面収差補正器は二枚の軸対称レンズからなる転送レンズ対と、その両側の各転送レンズの節点に配置される六極子とを備える。二段の六極子によって三次の負の球面収差が現れることから、これと対物レンズとを組み合わせることによって全体の系として球面収差が除去されることになる。
一方、特許文献1には、電界型四極子と磁界型四極子を組み合わせた色収差補正器が記載されている。この色収差補正器は四段の多極子を備える。一段目と四段目の多極子は電界型四極子であり、二段目と三段目の多極子は電界型四極子と磁界型四極子とを有する、所謂電磁界重畳多極子となっている。
この色収差補正器では、光軸をz方向とした場合、x方向とy方向の色収差を独立に補正する。そのため、電子線をx、y方向のうち一方の方向に対して発散させ、他方の方向に対して集束させる(所謂ラインフォーカスさせる)レンズ作用を有する。
一段目の多極子はこのラインフォーカス用に設けられたものであり、例えば、この多極子が電子線に対してx方向に発散作用、y方向に集束作用を有する場合、当該多極子はx方向に沿った線状の電子線を二段目の多極子の中央に形成する。そして二段目の多極子はx方向の色収差を補正し、これと併せてy方向に沿った線状の電子線を三段目の多極子に形成する。二段目の多極子と同様に、三段目の多極子はy方向に対する色収差を補正する。最後に四段目の多極子はラインフォーカスと逆の操作を行い、線状の電子線は元の形状に戻す。この場合、二段目の多極子の中央において、電子線はx方向に対して逆空間像を表し、y方向に対して実空間像を表している。これとは逆に、三段目の多極子の中央において、電子線はx方向に対して実空間像を表し、y方向に対して逆空間像を表している。
二段目の多極子及び三段目の多極子において電界型四極子による電子線への偏向力は、多極子内での当該電子線の位置に一次で比例する。逆空間像における電子線の位置は第一多極子に対する電子線の入射角に対応するので、この偏向力は当該入射角に一次で比例するとも言える。さらに、磁界型四極子による電子線への偏向力も、電界型四極子の場合と同様である。従って、第二及び第三の多極子のそれぞれにおいて、電界型四極子による電場と磁界型四極子による磁場を適宜調整することにより、所定のエネルギーを有する電子線に対して、それぞれの場による当該電子線への偏向力を相殺することができる。この場合の軌道は、収差を考慮しない時に想定される軌道(基準軌道)と変わらない。
一方、電場に対する電子線の屈折率(偏向力波長依存性、或いは偏向力加速電圧依存性)は、磁場のそれとは異なる。従って、電場と磁場の組み合わせが電子線への偏向力を相殺した場合、電子線は基準軌道から逸脱せず、当該電子線への屈折率のみが軌道上で変化する。この磁場・電場四極子により生み出した屈折率を、対物レンズの屈折率を打ち消すように設定することで色収差補正ができる。
特開2003−203593号公報
O. Scherzer, Optik, Vol.2 (1947) p.114 - 132 H. Rose, Optik, Vol. 85, (1990) p. 19 - 24
上記の色収差補正器では一方の方向のみの色収差を補正するためのラインフォーカスを行う。そのため、電子線の実空間像と逆空間像はx方向とy方向で異なる位置に結像するため、このままではTEMには使用できない。つまり、上記の色収差補正器によって得られる適正な電子線のビーム径は小さい試料上の視野を照射できる大きさに限られる。このため、走査電子顕微鏡(SEM)や走査透過電子顕微鏡(STEM)への導入は可能であるものの、試料上の広い範囲に亘って電子線を同時に照射する必要がある透過電子顕微鏡(TEM)の場合は、当該電子線に対して色収差及び球面収差の補正が困難になり上記装置の適用が困難になる。
また、このラインフォーカスによって電子線を一方向に過剰に発散させると、真空槽の内壁に電子線が衝突する恐れがある。このような衝突が起こると、電子の放出・散乱による不要なノイズが生じ、また無用な真空度の悪化を生じる場合がある。
そこで本発明は、ラインフォーカスを行うことなく、ビーム径の大きい荷電粒子線に対して色収差及び球面収差を同時に補正する色収差補正装置を提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、本発明の第一の態様に係る色収差補正装置は、荷電粒子線の光軸に沿って、第一の厚みを有し、円筒対称なレンズ作用と二回非点収差作用とを形成する第一の静電磁場を発生する第一多極子と、前記光軸上に設けられ、該光軸に沿って第二の厚みを有し、円筒対称なレンズ作用と二回非点収差作用とを形成する第二の静電磁場を発生する第二多極子とを備え、前記第一の静電磁場と前記第二の静電磁場との極性を逆にすることにより、それぞれの静電磁場が形成する二回非点収差作用を相殺し、前記第一の静電磁場及び前記第二の静電磁場が形成する円筒対称なレンズ作用により、対物レンズの色収差を補正し、前記第一の静電磁場及び前記第二の静電磁場は、それぞれ独立に
Figure 0005623719
を満たすことを特徴とする。ただし上式において、Ae2は、第一多極子または第二多極子が発生する第一の静電磁場または第二の静電磁場のうち静電場が発生する単位長さあたりの二回非点収差の量、Am2は、第一多極子または第二多極子が発生する第一の静電磁場または第二の静電磁場のうち静磁場が発生する単位長さあたりの二回非点収差の量、tは多極子の電子線方向の長さ(厚み)、fは対物レンズの焦点距離とする。
第一の態様に係る前記色収差補正装置は、前記第一多極子に四回対称の静電場あるいは磁場を重畳し、前記第二多極子に四回対称の静電場あるいは磁場を重畳することにより、前記第一多極子と前記第二多極子のそれぞれに生じる四回非点収差を打ち消すようにしたことを特徴とする。
第一の態様に係る前記色収差補正装置は、前記のように静電二回対称場と磁場二回対称場がお互い上記数式の範囲内で相殺されているので、第一多極子に三回対称の静電場あるいは磁場を重畳し、第二多極子に三回対称の静電場あるいは磁場を重畳することにより三回対称場を用いた球面収差補正が実現できる。これにより、色収差および球面収差の同時補正が行えることを特徴とする。
また第一の態様に係る前記色収差補正装置は、前記光軸上に設けられ、該光軸に沿って第三の厚みを有し、三回対称の第三の静電場又は静磁場を発生する第三の多極子を更に備えても良い。
本発明の第一の態様に係るもう一つの色収差補正装置は、前記第一多極子に四回対称の静電場あるいは静磁場を重畳し、前記第二多極子に四回対称の静電場あるいは静磁場を重畳することにより、色収差と球面収差を同時に補正するようにしても良い。
第一の態様に係るもう一つの前記色収差補正装置は、前記光軸上に設けられ、該光軸に沿って第三の厚みを有し、四回対称の第三の静電場又は静磁場を発生する第三の多極子を更に備えても良い。
また、第一の態様に係るもう一つの前記色収差補正装置は、前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第三の厚みを有し、二回対称の静電磁場と四回対称の静電場又は静磁場を重畳した第三の静電磁場を発生する第三多極子と、前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第四の厚みを有し、二回対称の静電磁場と四回対称の静電場又は静磁場を重畳した第四の静電磁場を発生する第四多極子とを更に備えても良い。
また上記の構成に加え、各前記多極子の間に第一の転送レンズ対を設けても良い。
さらに、各前記多極子のうち前記荷電粒子線装置の対物レンズに隣接する多極子と前記対物レンズとの間に第二の転送レンズ対を設けても良い。
また、前記第一の厚みと前記第二の厚みは異なるものであっても良い。
また、前記第一多極子及び前記第二多極子のそれぞれにおいて、磁場を生じる極は四極子又は十二極子で構成されても良い。
また、前記第一多極子において、前記第一の静電磁場を生じさせるための静電場を発生する極は真空内に配置され、該第一の静電磁場を生じさせるための静磁場を発生する極は真空外に配置され、前記第二多極子において、前記第二の静電磁場を生じさせるための静電場を発生する極は真空内に配置され、該第二の静電磁場を生じさせるための静磁場を発生する極は真空外に配置されても良い。
本発明の第二の態様に係わる荷電粒子線装置における色収差補正方法は、荷電粒子線の光軸に沿って、円筒対称なレンズ作用と二回非点収差作用とを形成する第一の静電磁場を発生し、前記光軸に沿って円筒対称なレンズ作用と二回非点収差作用とを形成する第二の静電磁場を発生し、前記第一の静電磁場と前記第二の静電磁場との極性を逆にすることにより、それぞれの静電磁場が形成する二回非点収差作用を相殺し、前記第一の静電磁場及び前記第二の静電磁場が形成する円筒対称なレンズ作用により、対物レンズの色収差を補正し、前記第一の静電磁場及び第二の静電磁場は、それぞれ独立に
Figure 0005623719
を満たすことを特徴とする。ただし上式において、Ae2は第一多極子または第二多極子が発生する第一の静電磁場または第二の静電磁場のうち静電場が発生する単位長さあたりの二回非点収差の量、Am2は第一多極子または第二多極子が発生する第一の静電磁場または第二の静電磁場のうち静磁場が発生する単位長さあたりの二回非点収差の量、tは多極子の電子線方向の長さ(厚み)、fは対物レンズの焦点距離とする。
第二の態様に係る前記色収差補正方法は、前記第一多極子に四回対称の静電場あるいは磁場を重畳し、前記第二多極子に四回対称の静電場あるいは磁場を重畳することにより、前記第一多極子と前記第二多極子のそれぞれに生じる四回非点収差を打ち消すようにしたことを特徴とする。
第二の態様に係わる前記色収差補正方法において、前記第一の静電磁場に三回対称の静電場あるいは磁場を重畳し、前記第二の静電磁場に三回対称の静電場あるいは磁場を重畳することにより、色収差と球面収差を同時に補正することを特徴とする。
第二の態様に係わる色収差補正方法において、前記光軸に沿った三回対称の第三の静電場又は静磁場を更に発生させても良い。
また本発明の第二の態様に係わるもう一つの前記色収差補正方法において、前記第一多極子に四回対称の静電場あるいは静磁場を重畳し、前記第二多極子に四回対称の静電場あるいは静磁場を重畳することにより、色収差と球面収差を同時に補正しても良い。
第二の態様に係わるもう一つの前記色収差補正方法において、前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第三の厚みを有する第三多極子により、四回対称の第三の静電場又は静磁場を更に発生させても良い。
また第二の態様に係わるもう一つの色収差補正方法において、前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第三の厚みを有する第三多極子により二回対称の静電磁場と四回対称の静電場又は静磁場を重畳した第三の静電磁場を発生させるとともに、前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第四の厚みを有する第四多極子により二回対称の静電磁場と四回対称の静電場又は静磁場を重畳した第四の静電磁場を更に発生させても良い。
本発明の色収差補正装置及びその方法によれば、ラインフォーカスを行うことなく色収差の補正が行えるので、球面収差を同時に補正することができる。従って、TEM等に用いられるビーム径の大きい荷電粒子線に対しても色収差及び球面収差の補正に適用できる。また、二段又は三段の多極子によって色収差と球面収差の補正が同時に行えるので、光学系が簡略化する。従って、荷電粒子線装置の小型化が可能となり、製造コストの削減にもつながる。
本発明の一実施形態に係る色収差補正装置の模式図である。 本発明の一実施形態に係る色収差補正装置における多極子の構成図であり、(a)は四極の磁極、(b)は十二極の磁極を設けた例である。 本発明の一実施形態に係る色収差補正装置を透過型電子顕微鏡に搭載した例をしめす模式図である。 図2に示す色収差補正装置の一変形例で、(a)は四極の磁極、(b)は十二極の磁極を真空外に設けた例である。 図4に示す変形例の断面図である。 電子線の受ける力を説明するための図であり、(a)は電場四極子の場合、(b)は磁場四極子を示す。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は電子、陽電子、負イオン、正イオンなどの荷電粒子に適用できるものであるが、以下の実施形態の説明では便宜上、取り扱う荷電粒子線を電子線として説明する。
(原理)
まず、光軸に沿って厚みを有した多極子が発生する二回対称場によって、屈折率(偏向力波長依存性、或いは偏向力の加速電圧依存性)の異なる凹レンズ効果が生み出される原理を説明する。
なお、多極子が厚みを有することの意味は次の通りである。例えば、四極子、六極子はそれぞれ、二回対称場、三回対称場を基本的に発生させる。これらの場はその多極子が生じる場を多重極界展開した場合のプライマリー項と称される。実際の多極子は、僅かであるがプライマリー項以外の高次項による場が発生している。通常の厚みを持たない(又は薄い)多極子においては、プライマリー項以外の高次項は多極子の使用目的に対して無視されるか又は単なる寄生要因に過ぎない。しかし、多極子の厚みを増していくと、プライマリー項以外の高次項による効果が表れる。この効果を活かすために、光軸に沿って必要
な長さを持った多極子が「厚み」を有する多極子であり、そこから発生する場は「厚み」のある場である。
四極子による静電場又は静磁場、或いはそれらの重畳場によって生じた二回対称場による二回非点収差を考える。複素表記を用いた電子線の軌道計算において、逆空間(焦点面)での位置のr、傾きをr '(=∂r/∂z)、複素角をΩ、複素角に対する微分Ω'(=∂Ω/∂z)とする。Aを単位長さあたりの二回非点収差係数、Ωの複素共役をΩの上にバーをつけた記号で表すと、二回非点収差(幾何収差)は、
Figure 0005623719
で表される。
四極子の入射面と射出面における電子線の位置および傾きの複素表記をそれぞれ、(r、r')、(r、r')と表し、対物レンズの焦点距離をfとする。この対物レンズ内に試料面がある場合、この位置における電子線の位置と傾きを逆空間で表すと、それぞれr=fΩ、r'=fΩ'になる。
光軸に沿った多極子の厚みをtすると、この多極子の射出面における電子線の傾きは、
Figure 0005623719
と表される。ただし、nは整数(n>0)である。
この式において、|A2nの係数をもつ項は円筒対称なレンズ作用を表し、符号が+の項は凹レンズ作用を表す。一方、A・|A2(n−1)の係数をもつ項は二回非点収差を表す。
ところで、二回対称電場による二回非点収差係数をAE2で表すと、その強さ|AE2| は、
Figure 0005623719
の比例関係を有する。ここで、Uは加速電圧である。同様に、二回対称磁場の場合の二回非点収差係数をAB2で表すと、その強さ|AB2|は、
Figure 0005623719
の比例関係を有する。
厚みをもつ四極子場から生じた凹レンズ作用を有する光学系において、式(1)の係数|A|の指数が2n、2(n−1)であることを考慮すると、当該光学系による偏向力の加速電圧依存性を係数|A|に係る各項の組み合わせによって1/U(Nは正の整数)に比例するように定めることができる。
また、所定の加速電圧の電子線に対する電気的偏向力と磁気的偏向力が相殺される光学系においても、所定の加速電圧と異なる加速電圧の電子線に対しては係数|A|が有限の値となる。従って、その電子線は凹レンズ作用を受けることになる。
さらに、式(1)に示した焦点距離fの対物レンズが磁場型(磁界型)である場合、このレンズによる偏向力は一般的に、
Figure 0005623719
と表される。
上述したように、厚みをもつ四極子による偏向力の加速電圧依存性は1/Uで表される。一方、式(4)に示した加速電圧Uに対する加速電圧依存性は1/Uで表される。即ち、互いの加速電圧依存性は大きく異なるため、厚みをもつ四極子場は対物レンズと異なった屈折率をもつ。そして、この違いから、厚みをもつ四極子場の凹レンズ作用が対物レンズの色収差補正に適用できることがわかる。
また、式(1)に示すように、四極子の厚みを増加させていくと凹レンズ作用が増加する。従って、必要な凹レンズ作用の強度に合わせた厚みtを定めることもできる。
ところで、式(1)右辺のA・|A2(n−1)の係数を持つ項に示されるように、一段の四極子場では二回非点収差が新たに発生する。しかしながら、この二回非点収差は以下に示すように四極子を二段にすることで除去できる。
二段の四極子のそれぞれが発生する二回対称場は相似且つ反対称に分布させる。具体的には、同一構造の二つの多極子を配置し、印加する電圧または励磁の極性を互いに逆にする。両四極子の光軸に沿った厚みは等しいとすると、二段目の四極子の射出面における電子線の傾きr'は、
Figure 0005623719
と表される。なお、n、mは正の整数である。
この式に示すように、極性を互いに逆にして二段の四極子の配置すると、式(1)に示された二回非点収差の項が無くなる。また、同式の右辺の項において+の符号をもつ項は凹レンズ作用を示すので、収差補正に必要な円筒対称レンズ作用のみが取り出される。
また、式(2)〜(4)について述べたのと同様に、それぞれが厚みをもつ二段の四極子の凹レンズ作用は二回非点収差を生じさせることなく対物レンズの色収差を補正する。
さらに、四極子の厚みtの増加に従って凹レンズ作用が増加するので、必要な凹レンズ作用の強度に合わせた厚みtを定めることもできる。
上記二段の四極子を磁界型とし、その転送倍率を1:1とすると、焦点距離fは下記の式(6)で表される。
Figure 0005623719
ここで、A2m、t、r、N、Iは、それぞれ磁界型四極子の二回非点収差係数、光軸に沿った厚み、ボア半径、該四極子の励磁コイルの巻数N、同コイルに流れる電流値である。すなわちNIは起磁力を表す。また、Uは電子線の加速電圧、eは電気素量、mは電子の質量、μは真空透磁率である。
一方、上記二段の四極子を電界型とし、その転送倍率を1:1とすると、焦点距離fは下記の式(7)で表される。
Figure 0005623719
ここで、A2e、t、r、Vは、それぞれ電界型四極子の二回非点収差係数、光軸に沿った厚み、ボア半径、並びに同四極子の各極への印加電圧である。他の変数は(6)式に用いたものと同義である。
前述した色収差補正系においては、電場或いは磁場の二回対称場が存在する。これらが、電子線の軌道を多極子内で大きく変えると、球面収差補正器等の幾何収差補正器を用いた補正と同時に色収差の補正を行うことが困難となる。また、電極や磁極に電子線が二回対称場の偏向により近づきすぎたりすると、チャージ等の影響で電子線が光学設計と異なる力を受けて問題となる。近年、一般的に用いられている球面収差補正装置は、三回対称場を利用したものである[非特許文献2参照]。これは、電子線が多極子内を移動する際、磁極に近づくことによって、さらに偏向力が加わることを利用しており、電子線が多極子内で磁極から遠ざかり、軸上を通ると、以上の原理が使えなくなる。前述した色収差補正系で、電子線が二回対称場により極子から遠ざかると、色収差・球面収差同時補正が行えないこととなる。そこで、これら磁界型四極子と電界型四極子とを組み合わせた電磁界重畳多極子内において、加速電圧Uの電子線への偏向力がある程度(おおむね)相殺され、軌道が極子から遠ざかり軸上を通ることがないようにする。第一多極子内での電子線の軌道は、tの四乗まで記述すると式(8)となる。
Figure 0005623719
主に電子線の軌道を変えるのは、第二項の二回非点収差の項であり、この項の係数となっているAは、式(6)と(7)を満たし、以下の関係式で示される。
Figure 0005623719
式(8)から、位置rが、大きく軌道を変えて軸上(r=0)にまで達しないようにする、磁場二回非点収差と電場二回非点収差の相殺条件は、
Figure 0005623719
とになる。
加速電圧に比べて有意な電位の電場二回場を用いた場合、多極子内で電子線の速度が変わる効果が現れる。発散する場合は速度が速くなるので発散効果が小さくなり、結果的に収束効果となる。一方、収束する場合は、速度が遅くなるので、収束作用は大きくなり、これも結果的に収束作用となる。その為、四回非点収差が有意に残ることがある。この収差を補正するために、第一多極子に四回対称の静電場あるいは磁場を重畳し、第二多極子に四回対称の静電場あるいは磁場を重畳することにより前記第一多極子と前記第二多極子のそれぞれに生じる四回非点収差を打ち消す。
電気的及び磁気的偏向力がおおむね相殺された状態の下では、複数の三回対称場を用いた球面収差補正を行うことができる。つまり、非特許文献2に記載された複数の六極子による三回対称場は負の球面収差を生じるので、対物レンズにおいて生じる正の球面収差を相殺することができる。従って、この三回対称場を上記の電磁界重畳多極子による電磁界重畳場に重畳させることにより、球面収差と色収差が同時に補正される。
以上は多極子が二段の場合について議論したものである。上述の通り、球面収差・色収差同時補正を行うためには二回対称又は三回対称の静電場が必要となるが、式(7)に示すように、電極の厚みtが増加するにつれて電極の印加電圧は減少する。従って、電極間の放電を抑制できる利点がある。しかしながら、電極の厚みtを増加させると下記の式(11)に示す傾向によって、六回非点収差が増加してしまう。
Figure 0005623719
ここで、A、Aはそれぞれ、六回非点収差係数、三回非点収差係数である。この式に示すように六回非点収差は電極の厚みtの7乗に比例する。
一方、球面収差補正用の多極子を三段とすると、六回非点収差係数Aは次のようになる。
Figure 0005623719
ここで、A31、A32、A33はそれぞれ、一段目、二段目、三段目の多極子の三回非点収差係数を表す。六回非点収差は三回非点収差の関数となっており、三回非点収差を光軸に対して回転させれば六回非点収差を低減できることになる。これにより球面収差補正を行いながら、六回非点収差が少ない光学系を構築できる。電極の厚みを長く出来るので、色収差補正の際に印加する電圧を下げることが出来る。なお、色収差補正に用いる電界型四極子は、三段の多極子のうち何れか二つに配置すればよい。
電子線がラインフォーカスになっていた場合、四回非点場を重畳すると負の球面収差が出ることは知られている(非特許文献O. Scherzer, Optik 2,114-132 (1947)参照)。四回非点場は、電子線に対して、発散場と収束場が0〜360度の間で四回繰り返す場である。また、次数は球面収差と同じ三次である。三次の負の球面収差を発生させる場合、この四回非点の発散場のみを取り出す必要がある。ラインフォーカスとは、電子線が光軸に対して大きさを持たない方向と、有限の大きさを持つ方向がある状態である。ラインフォーカスを利用した球面収差補正の方法は、光軸に近い方は重畳された場の力を電子線はほとんど受けないが、光軸から離れて多極子に近い電子線は、多極子が作る場からの力をより大きく受ける原理を利用している。我々は、電子線が少しでも円筒対称から外れて楕円形状(二回非点を持っている)になっていれば、この原理を球面収差補正に適用できることに着目した。実際に、ビームが二回非点を持っている場合、そこに四回場を重畳すると、下記の式(13)で示されるように負の球面収差(−Cs)が発生することが解析的に求まった。
Figure 0005623719
ここに、AとAは二回非点強度と四回非点強度である。このように、四回非点場を重畳しても、色収差と球面収差の同時補正が行える。ただし、重畳する四回非点場の方向は、二回非点の方向と特定の方位関係にあわせなければならない。つまり、すでにある二回非点がつくる光軸から離れた電子線が存在する方向に、四回非点場の発散方向を重畳することが必要である。色収差補正を行うために加える二回非点の方向は、二つの多極子において、0度と90度の関係にある。これに対して上記の条件を満たす四回非点場は、(四回対称であるため)同じ位相角を持つこととなる。つまり、二つの多極子に加える四回非点場の方向は同じ方向であり、両者を打ち消しあう方向ではない。そのため、球面収差を補正した後、四回非点収差が残留する。以上の理由から、その四回非点収差を別途補正する必要が出てくる場合がある。そのために、第三の多極子を用意して、第一多極子と第二多極子により生じる残留四回非点収差を第三の多極子により補正する。
また、この四回非点場を打ち消す方法として、大きさが同じで逆符号の四回非点収差を二つ発生させ、お互いを打ち消しあう方法がある。この方法は二つの四回非点収差を発生させる必要があるので、少なくとも三段の多極子を必要とする。多極子が四段の場合、ひとつの組が二段の多極子を二組用意して、一組目の二段の多極子から生じる四回非点収差を二組目の二段の多極子から生じる四回非点収差で打ち消すようにする。多極子が三段の場合、一段目と二段目の多極子から生じる四回非点収差と、二段目と三段目の多極子から生じる四回非点収差をお互いに打ち消しあうようにしても良い。
以上に示すように何れの場合においても、ラインフォーカスを行わずに色収差が補正できるので、球面収差を同時に補正することができる。従って、TEM等に用いられるビーム径の大きい荷電粒子線に対しても色収差及び球面収差の同時補正が可能である。
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を述べる。
図1は本発明の一実施形態に係る色収差補正装置の模式図である。図2(a)は図1に示す色収差補正装置の電磁界重畳多極子の模式図である。本実施形態では、この色収差補正装置を透過型電子顕微鏡(以下、TEM)に用いた場合を想定して説明する。
本実施形態の一実施形態に係る色収差補正装置10は、図1に示すように、荷電粒子線の光軸11に沿って設けられた多極子(第一多極子)12と、その後段に設けられる多極子(第二多極子)13とを備える。
多極子12は光軸方向に沿って厚みtを有し、三回対称の静磁場(第一の静電場)と、それに重畳する二回対称の静電磁場(第一の静電磁場)とを発生する。多極子13は光軸方向に沿って厚みtを有し、三回対称の静磁場(第二の静磁場)と、それに重畳する二回対称の静電磁場(第二の静電磁場)とを発生する。
さらに、色収差補正装置10は両多極子12、13の間に設けられる転送倍率1:1の転送レンズ対(14a、14b)と、対物レンズ16と多極子13との間に設けられる転送倍率1:1の転送レンズ対(15a、15b)と、を備える。
多極子12及び多極子13は光軸11の周囲に規則的に配置された複数の磁極及び電極を有する。図2(a)は多極子12の一例である。この図に示すように多極子12は、光軸11(Z軸方向)の周囲に、ボア径rとなる四極の電極20a〜20dと、ボア径rとなる四極の磁極30a〜30dとを有する。
各電極20a〜20dは、光軸11に垂直な平面(即ち、XY平面)上で90度毎に振り分けて配置される。また、各電極20a〜20dの印加電圧の絶対値は等しく、極性のみが交互に変わる。印加電圧は式(10)を満たすように設定するので、第一の静電磁場に寄与する電場が発生する。なお、光軸11周辺には磁場を分布させる必要があるので、各電極20a〜20dは非磁性である。
各磁極30a〜30dは、光軸11に垂直な平面上で90度毎に振り分けて配置される。各磁極30a〜30dには巻線数Nの励磁コイル(図示せず)が各磁極の後端部(図示せず)に装着され、この励磁コイルに電流Iが流れるようになっている。従って、各磁極の起磁力はNIとなる。各励磁コイルは個別に電流源(図示せず)と接続されており、その起磁力は任意に設定される。図6(a)、(b)に示すように、電場四極子によって電子線が受ける力Fと磁場四極子によって電子線が受ける力Fは、お互いの力がおおむね相殺する方向に加えられる。
多極子13は、多極子12と同様の複数の磁極及び電極を有する。各極の物理的な配置は図2(a)と同様であるが、その極性が多極子12に対して逆になる。即ち、光軸11から見た場合、多極子13の極性は、図2(a)に示す多極子12に対して90度回転して位置する。
図2(b)に示すように、上記の多極子12、13に設けられた磁極の極数を四極から十二極に変更しても良い。この場合、電場および磁場四極子に三回対称場が重畳できるようになる。この図において、二回対称場を生じる磁極をN極及びS極で表し、三回対称場を生じる磁極を(N)極及び(S)極と表している。即ち、各磁極から生じる磁場は二回対称場と三回対称場を生じさせる磁場が一つの磁場に合成されたものである。十二極の各磁極31a〜31lには個別に励磁コイル(図示せず)と電流源(図示せず)が接続され、起磁力を個別に発生可能となっている。球面収差補正を行うための三回対称磁場および色収差補正のための磁場分布をより適切に生じさせることが出来る。
転送レンズ対14a、14bは多極子12において形成された電子線17の逆空間像を多極子13に転送する。転送レンズ対14a、14bを配置する理由は次の通りである。
TEMにおける色収差補正は、視野全般に拡がる電子線17の全ての領域に亘って同じ補正を行う必要がある。このような補正を行うためには、電子線17の位置に依存しない空間でのみ電子線17に偏向作用を与えなければならない。この電子線17の位置に依存しない空間は、電子線17の逆空間像が得られる位置に対応する。そして、この逆空間像は多極子12の中央に現れ、さらにこの像を多極子13に転送する必要がある。従って、転送レンズ対14a、14bを多極子12と多極子13の間に配置する。
転送レンズ対(15a、15b)は多極子13に現れる電子線17の逆空間像を対物レンズのコマフリー面16aに転送する。この面は対物レンズの前方焦点面にほぼ等しく、コマフリー面16aに転送された逆空間像は対物レンズの試料面16bにおいて実空間像となる。対物レンズの正の色収差及び正の球面収差は多極子12及び多極子13の光学系による負の色収差及び負の球面収差によって相殺されているので、試料面における電子線17の実空間像には色収差および球面収差の影響が現れない。
図3は本発明の色収差補正装置を照射系収差補正器として用いた透過型電子顕微鏡(TEM)の例である。TEM50に設けられた電子銃51は、高圧制御部58によって電子線(図示せず)を発生し、併せて所望のエネルギーに電子線を加速する。次に第1集束レンズ52が加速された電子線を集束する。集束された電子線は照射系収差補正器53を通過する。このとき、上記した収差補正が行われる。さらに照射系収差補正器53を通過した電子線は、第2集束レンズ54によって集束され、対物レンズ及び試料ステージ55を通過する。なお、試料ステージには試料が装着されている。
試料を透過した電子線は中間・投影レンズ56によって拡大され、観察室57の蛍光板(図示せず)に入射する。この蛍光板に投影された試料像は、カメラ等によって撮像される。
電子線が対物レンズ及び試料ステージ55を通過するとき、対物レンズは電子線を更に集束させる。このとき対物レンズによる正の球面収差は試料面上の電子線のスポット径を広げるように作用する。しかしながら、照射系収差補正器53によって生じた負の球面収差によって、正の球面収差が打ち消される。電子線のスポット径を広げる作用は対物レンズの正の色収差によっても生じるが、この場合も上記と同様に、照射系収差補正器53によって生じた負の色収差が対物レンズの正の色収差を打ち消す。従って、試料面において球面収差および色収差の影響を受けていない電子線が広範囲に照射され、空間分解能が向上する。
また、TEM50と同様の光学系を有するSEM又はSTEM等の荷電粒子装置に本発明の色収差補正装置を設けた場合はボケの少ない微小なスポット径の電子線が得られることになるので、この場合も空間分解能が向上する。
(変形例)
第一及び第二多極子12、13のそれぞれが第一の静磁場と第二の静磁場を用いる場合
は、各磁極を真空外に設けても良い。図4(a)、(b)は図2(a)、(b)に示す磁極を真空外に設けた一例であり、電子線を通過させるライナーチューブ25の内部に各電極20a〜20dを配置し、磁極30a〜30f(又は31a〜31l)をライナーチューブ25の外側に配置する。この場合、図5に示すように、ライナーチューブ25内の真空を保ち、且つ各極20a〜20dへの電圧印加を可能とするように電流導入手段26を設ける。
また、本発明の球面収差・色収差補正装置による色収差補正において、第一及び第二多極子12、13に課される条件が式(10)であることから、これらの式に従う限り各多極子の厚みt、tは異なっても良い。また、本発明の色収差補正装置をTEMにおけるSTEMモードやSEMの色収差補正に用いる場合、光軸11に垂直な全方向(即ち背景技術の項で述べたx、y方向)に亘る逆空間像を得る必要が無いので、上記実施形態で述べた転送レンズ対14a、14b及び/又は転送レンズ対15a、15bを省いても良い。
さらにまた、第1の静電磁場および第2の静電磁場は3回対称であっても良い。この場合、図2(a)、(b)に示す四極の電極20a〜20dを六極にして式(10)を満たす六極子電場を生じればよい。この六極子電場に、式(10)を満たし、磁極30a〜30fによって発生する三回対称の静磁場を重畳させれば、これら電場と磁場による加速電圧Uの電子線への電気的偏向力と磁気的偏向力は相殺され、色収差が補正できる。さらに、磁極30a〜30fによって球面収差補正に必要な磁場を生じさせることで、色収差と球面収差は同時に補正される。
また、球面収差補正に係る三回対称の静磁場を生じる多極子を三段設け、このうち何れか二つの多極子に色収差を補正する二回又は三回対称の静電磁場を生じる磁極及び電極を設けても良い。この場合、二回又は三回対称の静電磁場を生じる磁極及び電極を設けた多極子に式(10)を満たす静電磁場を生じさせ、三回対称の静磁場を重畳させれば色収差が補正でき、且つ球面収差も同時に補正できる。各多極子の間に転送倍率1:1の転送レンズを設ければ、TEMにも適用できる。さらに三段の多極子のうち対物レンズと隣接する多極子と、対物レンズとの間に同様の転送レンズを設けても良い。
上記何れの例においても加速電圧Uの電子線に対して磁気的偏向力及び電気的偏向力を相殺する状態で色収差補正を行うので、これに併せて球面収差を同時に補正することができる。また、TEM等に用いられるビーム径の大きい荷電粒子線に対する色収差及び球面収差の同時補正に適用できる。また、二段又は三段の多極子によって色収差と球面収差の補正を同時に行うので光学系が簡略化する。従って、荷電粒子装置の小型化が可能となり、製造コストの削減にもつながる。
(同一または類似の動作を行なうものには共通の符号を付す。)
10:色収差補正装置
11:光軸
12、13:多極子
14a、14b:転送レンズ対
15a、15b:転送レンズ対
16:対物レンズ
17:電子線
50:透過型電子顕微鏡

Claims (20)

  1. 荷電粒子線装置の色収差補正装置であって、
    荷電粒子線の光軸に沿って、第一の厚みを有し、円筒対称なレンズ作用と二回非点収差作用とを形成する第一の静電磁場を発生する第一多極子と、前記光軸上に設けられ、該光軸に沿って第二の厚みを有し、円筒対称なレンズ作用と二回非点収差作用とを形成する第二の静電磁場を発生する第二多極子とを備え、
    前記第一の静電磁場と前記第二の静電磁場との極性を逆にすることにより、それぞれの静電磁場が形成する二回非点収差作用を相殺し、
    前記第一の静電磁場及び前記第二の静電磁場が形成する円筒対称なレンズ作用により、対物レンズの色収差を補正し、
    前記第一の静電磁場及び前記第二の静電磁場は、それぞれ独立に
    Figure 0005623719
    を満たすことを特徴とする色収差補正装置。ただし、Ae2は、第一多極子または第二多極子が発生する第一の静電磁場または第二の静電磁場のうち静電場が発生する単位長さあたりの二回非点収差の量、Am2は、第一多極子または第二多極子が発生する第一の静電磁場または第二の静電磁場のうち静磁場が発生する単位長さあたりの二回非点収差の量、tは多極子の電子線方向の長さ(厚み)、fは対物レンズの焦点距離とする。
  2. 前記色収差補正装置において、前記第一多極子に四回対称の静電場あるいは磁場を重畳し、前記第二多極子に四回対称の静電場あるいは磁場を重畳することにより、前記第一多極子と前記第二多極子のそれぞれに生じる四回非点収差を打ち消すようにしたことを特徴とする請求項1に記載の色収差補正装置。
  3. 前記色収差補正装置において、前記第一多極子に三回対称の静電場あるいは静磁場を重畳し、前記第二多極子に三回対称の静電場あるいは静磁場を重畳することにより、色収差と球面収差を同時に補正することを特徴とする請求項1に記載の色収差補正装置。
  4. 前記光軸上に設けられ、該光軸に沿って第三の厚みを有し、三回対称の第三の静電場又は静磁場を発生する第三多極子を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の色収差補正装置。
  5. 前記色収差補正装置において、前記第一多極子に四回対称の静電場あるいは静磁場を重畳し、前記第二多極子に四回対称の静電場あるいは静磁場を重畳することにより、色収差と球面収差を同時に補正することを特徴とする請求項1に記載の色収差補正装置。
  6. 前記光軸上に設けられ、該光軸に沿って第三の厚みを有し、四回対称の第三の静電場又は静磁場を発生する第三多極子とを更に備えることを特徴とする請求項5に記載の色収差補正装置。
  7. 前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第三の厚みを有し、二回対称の静電磁場と四回対称の静電場又は静磁場を重畳した第三の静電磁場を発生する第三多極子と、前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第四の厚みを有し、二回対称の静電磁場と四回対称の静電場又は静磁場を重畳した第四の静電磁場を発生する第四多極子とを更に備えることを特徴とする請求項5に記載の色収差補正装置。
  8. 各前記多極子の間に設けられる第一の転送レンズ対を更に備えることを特徴とする請求項1又は3又は5の何れか一項に記載の色収差補正装置。
  9. 各前記多極子のうち、前記荷電粒子線装置の対物レンズに隣接する多極子と前記対物レンズとの間に設けられる第二の転送レンズ対を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の色収差補正装置。
  10. 前記第一の厚みと前記第二の厚みは異なることを特徴とする請求項1に記載の色収差補正装置。
  11. 前記第一多極子及び前記第二多極子のそれぞれにおいて、静磁場を生じる極は四極子で構成されることを特徴とする請求項1に記載の色収差補正装置。
  12. 前記第一多極子及び前記第二多極子のそれぞれにおいて、静磁場を生じる極は十二極子で構成されることを特徴とする請求項1に記載の色収差補正装置。
  13. 前記第一多極子において、前記第一の静電磁場を生じさせるための静電場を発生する極は真空内に配置され、該第一の静電磁場を生じさせるための静磁場を発生する極は真空外に配置され、
    前記第二多極子において、前記第二の静電磁場を生じさせるための静電場を発生する極は真空内に配置され、該第二の静電磁場を生じさせるための静磁場を発生する極は真空外に配置されることを特徴とする請求項1又は3又は5の何れか一項に記載の色収差補正装置。
  14. 荷電粒子線装置における色収差補正方法であって、
    荷電粒子線の光軸に沿って、円筒対称なレンズ作用と二回非点収差作用とを形成する第一の静電磁場を発生し、
    前記光軸に沿って円筒対称なレンズ作用と二回非点収差作用とを形成する第二の静電磁場を発生し、
    前記第一の静電磁場と前記第二の静電磁場との極性を逆にすることにより、それぞれの静電磁場が形成する二回非点収差作用を相殺し、
    前記第一の静電磁場及び前記第二の静電磁場が形成する円筒対称なレンズ作用により、対物レンズの色収差を補正し、
    前記第一の静電磁場及び第二の静電磁場は、それぞれ独立に
    Figure 0005623719
    を満たすことを特徴とする色収差補正方法。ただし、Ae2は、第一多極子または第二多極子が発生する第一の静電磁場または第二の静電磁場のうち静電場が発生する単位長さあたりの二回非点収差の量、Am2は、第一多極子または第二多極子が発生する第一の静電磁場または第二の静電磁場のうち静磁場が発生する単位長さあたりの二回非点収差の量、tは多極子の電子線方向の長さ(厚み)、fは対物レンズの焦点距離とする。
  15. 前記色収差補正方法において、前記第一の静電磁場に四回対称の静電場あるいは磁場を重畳し、前記第二の静電磁場に四回対称の静電場あるいは磁場を重畳することにより、前記第一の静電磁場と前記第二の静電磁場のそれぞれに生じる四回非点収差を打ち消すようにしたことを特徴とする請求項14に記載の色収差補正方法。
  16. 前記色収差補正方法において、前記第一の静電磁場に三回対称の静電場あるいは磁場を重畳し、前記第二の静電磁場に三回対称の静電場あるいは静磁場を重畳することにより、色収差と球面収差を同時に補正することを特徴とする請求項14に記載の色収差補正方法。
  17. 前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第三の厚みを有する第三多極子により、三回対称の第三の静電場又は静磁場を発生させることを特徴とする請求項16に記載の色収差補正方法。
  18. 前記第一の静電磁場に四回対称の静電場あるいは静磁場を重畳し、前記第二の静電磁場に四回対称の静電場あるいは静磁場を重畳することにより、色収差と球面収差を同時に補正することを特徴とする請求項14に記載の色収差補正方法。
  19. 前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第三の厚みを有する第三多極子により、四回対称の第三の静電場又は静磁場を更に発生させることを特徴とする請求項18に記載の色収差補正方法。
  20. 前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第三の厚みを有する第三多極子により二回対称の静電磁場と四回対称の静電場又は静磁場を重畳した第三の静電磁場を発生させるとともに、前記光軸上に設けられ該光軸に沿って第四の厚みを有する第四多極子により二回対称の静電磁場と四回対称の静電場又は静磁場を重畳した第四の静電磁場を更に発生させることを特徴とする請求項18に記載の色収差補正方法。
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