JP5621885B2 - 光硬化性組成物およびこれを用いた硬化物 - Google Patents

光硬化性組成物およびこれを用いた硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、塗工作業性が良好な低粘度で、かつ、密着性に優れ、加えて透明性、硬化性、保存安定性に優れた光硬化性組成物およびこれを用いた硬化物に関する。
アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などは軽量で耐衝撃性、透明性に優れるため、様々な用途に広く用いられている。しかし、これらの樹脂は表面硬度が低く傷つきやすいため、傷により透明度が低下する等の問題があった。そのため、表面コーティングを施すことによる耐磨耗性、耐擦傷性および表面硬度を向上させる試みがなされてきた。
従来より、ハードコート剤としてアクリル系光硬化性樹脂が広く利用されているが、硬化収縮が比較的大きく、これに起因する密着性の低下などの問題があった。
アクリル系光硬化性樹脂の硬化収縮を抑える方法として、例えば特許文献1にはウレタンアクリレートオリゴマーと球状シリカナノ粒子を含有する組成物が記載されている。しかしながら、当該組成物は粘度が高く、取り扱いが容易ではない。また、高い表面硬度を得る方法として、特許文献2にはシリカ化合物と光酸発生剤からなる組成物が記載されている。しかしながら、光硬化性樹脂としては比較的長い時間光を照射しているにもかかわらず硬化が十分ではなく、アクリル樹脂等の基材に対する密着性が充分ではない。
低粘度で取り扱いが容易な光硬化性組成物として、特許文献3にはポリカーボネートジオールアクリレート誘導体と光重合開始剤からなる組成物が記載されている。しかしながら、当該ポリカーボネートジオールアクリレート誘導体は、直接エステル化法により製造されているため着色しているという問題がある。
着色のないポリカーボネートジオールアクリレート化合物として、エステル交換法によって製造されたものが特許文献4に開示されている。
特開2002−194039号公報 特願平8−302284号公報 特開平4−208251号公報 特開2001−151730号公報
本発明は、塗工作業性が良好な低粘度で、かつ、密着性に優れ、加えて透明性、硬化性、保存安定性に優れた光硬化性組成物、およびこれを用いた硬化物を提供することを目的とする。
本発明は、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応により製造され、少なくとも一つの末端に(メタ)アクリル基を有するポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体と、光重合開始剤と、下記一般式[1]〜[3]から選ばれる1種もしくは2種以上の(メタ)アクリレートと、シリカ粒子とを含有し、前記ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体と、前記(メタ)アクリレートと、前記シリカ粒子との合計100質量部に対し、前記ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体を15〜25質量部、前記(メタ)アクリレートを70〜80質量部含有し、前記光重合開始剤は、組成物全量に対し0.1〜5質量%含有し、前記シリカ粒子は、組成物全量に対し1〜20質量%含有する光硬化性組成物である。
(式中、Xは水素または炭素数1〜3のアルキル基を、Yは炭素数1〜8のアルキル基(炭素数3以上の場合は分岐していても良い。)、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、イソボルニル基、シクロヘキシル基、トリシクロデカニル基、4−ヒドロキシブチル基またはテトラヒドロフルフリル基を、Zは炭素数1〜10のアルキル基(炭素数3以上の場合は分岐していても良く、また、炭素数4以上の場合は炭素−炭素間に酸素を結合していても良く、また、炭素数5以上の場合は環を形成していても良い。)を、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシ基を示す。)
本発明の光硬化性組成物は、ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体の数平均分子量が500〜3000であることが好ましい。
一方、別の発明としては前記光硬化性組成物を光照射により硬化して得られる硬化物である。
また、別の発明としては前記光硬化性組成物を含有するハードコート剤である。
本発明によれば、塗工作業性が良好な低粘度で、かつ、密着性に優れ、加えて透明性、硬化性、保存安定性に優れた光硬化性組成物を提供することができる。本発明によって得られた光硬化性組成物は、特に光学的用途のプラスチックやガラス基材へのコーティング材料として好適に使用することができる。さらにより好適には、透明プラスチックの透明ハードコートとして使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及しない場合、アクリレートとメタクリレートを総称して(メタ)アクリレートと表記する。
本発明でいう光硬化性組成物とは、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応により製造され、少なくとも一つの末端に(メタ)アクリル基を有するポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体および光重合開始剤を含有する組成物をいい、その組成物に可視光線又は紫外線等の光を照射することにより硬化物を与えるものである。
本発明において、少なくとも一つの末端に(メタ)アクリル基を有するポリカーボネートジオール誘導体とは、ポリカーボネートジオールの両末端の少なくとも一つにエステル結合で直接(メタ)アクリル基が結合した誘導体をいう。組成物の硬化物に硬さ及び透明性と共に伸び及び柔軟性を付与するための成分である。例えば、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応で得られる化合物や、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応で得られる化合物が挙げられる。
本発明で用いられるポリカーボネートジオールは、例えば炭素数4〜25(好ましくは4〜15)のアルキレン基を有する脂肪族2価アルコールと炭酸エステル(炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジブチル、炭酸ジフェニル等)とのエステル交換反応、炭素数2〜25(好ましくは2〜15)のアルキレン基を有する環状炭酸エステルの開環重合、或いは前記脂肪族2価アルコールとクロロギ酸エステル又はホスゲンとの反応などにより製造されたものを使用することができる。これらの中では、前記の炭素数4〜25(好ましくは4〜15)のアルキレン基を有する脂肪族2価アルコールと炭酸エステルとのエステル交換反応によって製造されたポリカーボネートジオールが好ましい。
前記脂肪族2価アルコールとしては、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどのアルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオールのホモポリマーまたはランダム共重合体が挙げられる。この中で、硬化物の透明度、硬度の点から1,6−ヘキサンジオールとシクロヘキサンジメタノールの共重合ポリカーボネートジオールが好ましい。
脂肪族2価アルコールと炭酸エステルとのエステル交換反応によってポリカーボネートジオールを得る際、エステル交換触媒を用いる。例えば、アルカリ金属化合物や、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、有機スズ化合物などが挙げられる。これら触媒の中では、チタン化合物、有機スズ化合物が好ましい。中でもチタンアルコキシド(テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等)が更に好ましい。チタンアルコキシドの中では、テトラブトキシチタンが特に好ましい。
前記エステル交換反応において、生成するアルコールと炭酸エステルは、例えば、蒸留装置(精留塔など)を備えた反応器を用いて蒸留により抜き出すことが好ましい。また、反応温度は100〜210℃であることが好ましく、反応圧力は特に制限されないが、常圧から50〜500mmHgの減圧とすることが好ましい。なお、反応は、空気、炭酸ガス、もしくは不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下又は気流中で行うことができるが、不活性ガス雰囲気下又は気流中で行うことが好ましい。
次に、上記で得られるポリカーボネートジオールプレポリマーを、触媒存在下、生成する脂肪族ジヒドロキシ化合物を抜き出しながら縮重合反応させることにより、分子末端が水酸基であるポリカーボネートジオール(数平均重合度mnが1.90〜48.4)を生成させることができる。このポリカーボネートジオールは、分子末端水酸基と分子末端アルキル基の合計に対する分子末端アルキル基の割合がモル基準で0.02%未満であり、分子末端が実質的に全て水酸基であるポリカーボネートジオールである。
この縮合反応において、触媒は前記エステル交換触媒と同じものをそのまま用いることができる。縮合反応の反応温度は150〜240℃、更には150〜230℃であることが好ましく、反応圧力は0.1〜50mmHg、更には0.1〜40mmHgの減圧とすることが好ましい。脂肪族ジヒドロキシ化合物は前記エステル交換反応と同様に蒸留により抜き出されることが好ましく、反応雰囲気等も前記と同様であることが好ましい。
反応終了後、そのまま反応液を冷却して分子末端が水酸基であるポリカーボネートジオールを得ることができる。このポリカーボネートジオールは前記のように分子末端(両末端)が実質的に全て水酸基であって、かつ着色が少ない(特にJIS−K−1557によるAPHAが50未満、更には20以下の)高品質のポリカーボネートジオールである。なお、ポリカーボネートジオールの分子量は、脂肪族2価アルコールの抜き出し量により調節される。
本発明においては、前記(メタ)アクリル基を有するポリカーボネートジオール誘導体を、前記ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応によって得る。本発明で用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ベンジルエステルなどが挙げられる。この中で、エステル交換反応速度の点から(メタ)アクリル酸のエチルエステル、メチルエステルが好ましい。
アクリル酸エステル化合物の使用量は、ポリカーボネートジオール1モルに対して0.5〜60モル、更には1.5〜30モルであることが好ましい。
前記エステル交換反応は、エステル交換触媒を用いる。エステル交換触媒としては、例えば、チタン、スズ、アルミニウム、亜鉛、銅、ニッケル、鉄等の金属の化合物や、塩酸、硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、カチオン性イオン交換樹脂等のプロトン酸や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等の有機塩基などを挙げることができる。触媒の使用量は触媒種や反応条件等により異なるが、ポリカーボネートジオール1モルに対して、触媒が0.00001〜0.3モル、更には0.0001〜0.2モル、特に0.001〜0.1モルの割合であることが好ましい。なお、触媒は単独でも複数でも使用できる。
ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸エステル化合物との反応は、例えば、蒸留装置を備えた反応器を使用して、生成するアルコールを蒸留により反応系外に抜き出しながら行われる。このとき、反応温度は反応が進行し原料や生成物が分解しない範囲であれば良い。例えば、反応温度は、50℃から200℃、好ましくは60℃から180℃である。反応圧力は反応が進行する条件であれば特に制限されず、常圧、加圧、減圧、いずれの条件でもよい。反応雰囲気は大気下であってもよいが、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下又は気流下であることが好ましい。なお、反応時間は反応条件等により異なるが、通常は0.1〜100時間の範囲である。なお、前記反応で反応系外に抜き出されるアルコールはアクリル酸エステル化合物に由来する。
前記反応は重合防止剤を共存させて行うことが好ましい。重合防止剤は通常に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール、ヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、p−メトキシフェノール(メトキノン)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジンなどが使用できる。重合防止剤の使用量は、ポリカーボネートジオール1モルに対して0.000001〜0.05モル、更には0.000002〜0.03モルであることが好ましい。
また、前記反応は必要に応じて溶媒を使用して行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロドデカン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素や、ジクロロエタン、クロロホルム等の脂肪族ハロゲン化炭化水素や、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素や、クロロベンゼン、クロロトルエン等の芳香族ハロゲン化炭化水素などが使用される。これら溶媒では、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素が好ましく、中でもトルエン、キシレンが更に好ましい。溶媒の使用量は、ポリカーボネートジオール1gに対して50g以下、更には0.01〜40g、特に0.05〜30gであることが好ましい。
反応終了後、触媒を失活させることが好ましい。この触媒失活は、塩基、水、リン酸エステル(リン酸ジブチル等)、リン酸等の少なくとも一種の失活剤を反応液に添加することにより行われる。
前記失活剤の添加量は、触媒1モルに対して2〜2000モルであることが好ましい。また、触媒を失活させる際の温度は20〜130℃、更には30〜120℃、特に50〜110℃であることが好ましい。その際の時間は他の条件により異なるが、通常0.01〜20時間程度である。
触媒失活の後、不溶物は濾過又は遠心分離等により除去することが好ましい。その後、生成したポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート化合物(ポリカーボネートジオールの末端水酸基が(メタ)アクリル酸エステル化合物で(メタ)アクリレート化された化合物)は、反応液中の低沸点成分((メタ)アクリル酸エステル化合物や溶媒等)を常圧又は減圧蒸留により除去して得ることができる。なお、低沸点成分の除去は触媒失活の前であってもよい。
低沸点成分を蒸留で除去する際の温度は(メタ)アクリル酸エステル化合物や溶媒等により異なるが、通常、バス温が20〜120℃であればよい。必要であれば、微量の残存低沸点成分や、ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート化合物の低分子量成分を除去するため、減圧下、120〜250℃、好ましくは120〜200℃の高温で蒸留を行ってよい。回収された溶媒や(メタ)アクリル酸エステル化合物は、必要に応じて精製して再使用することができる。
上記により、末端に(メタ)アクリレート基を含有するポリカーボネートジオール誘導体を得ることができる。末端に(メタ)アクリレート基を含有するポリカーボネートジオール誘導体としては、数平均分子量500〜3000のオリゴマーが好ましい。尚、本発明において、数平均分子量とは、生成物の核磁気共鳴スペクトルから見積もられる重合度をもとに算出される値である。
本発明の光硬化性組成物は、前記ポリカーボネートジオール誘導体に加えて、下記一般式[1]で表される単官能性(メタ)アクリレート、一般式[2]で表される二官能性(メタ)アクリレートまたは一般式[3]で表される三官能性(メタ)アクリレートの1種類もしくは2種類以上を更に含むことができる。
(式中、Xは水素または炭素数1〜3のアルキル基を、Yは炭素数1〜8のアルキル基(炭素数3以上の場合は分岐していても良い。)、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、イソボルニル基、シクロヘキシル基、トリシクロデカニル基、4−ヒドロキシブチル基またはテトラヒドロフルフリル基を、Zは炭素数1〜10のアルキル基(炭素数3以上の場合は分岐していても良く、また、炭素数4以上の場合は炭素−炭素間に酸素を結合していても良く、また、炭素数5以上の場合は環を形成していても良い。)を、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシ基を示す。)
単官能性(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。この中で2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
単官能性の(メタ)アクリレートは、1種または2種以上を併用して用いることもできる。また、二官能性(メタ)アクリレート、三官能性以上の(メタ)アクリレートを併用して用いることもできる。単官能性(メタ)アクリレートの含有割合としては、後述する硬化物の白濁や柔軟性を考慮して組成物全体重量に対して70重量%以下が望ましい。
二官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3−ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。この中で1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3−ジ(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。二官能性(メタ)アクリレートは、1種または2種以上を併用して用いることもできる。さらに単官能性(メタ)アクリレート、三官能性以上の(メタ)アクリレートを併用して用いることもできる。二官能性(メタ)アクリレートの含有割合としては、後述する硬化物の白濁や柔軟性を考慮して組成物全体重量に対して50重量%以下が望ましい。
三官能性(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。この中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。三官能性(メタ)アクリレートは、1種または2種以上を併用して用いることもできる。さらに単官能性(メタ)アクリレート、二官能性(メタ)アクリレート、および四官能性以上の(メタ)アクリレートを併用して用いることもできる。三官能性(メタ)アクリレートの含有割合としては、後述する硬化物の白濁や柔軟性を考慮して組成物全体重量に対して50重量%以下が望ましい。
成分として、前記ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体に加えて、前記(メタ)アクリレートの1種類もしくは2種類以上を更に含むことにより、光硬化性組成物の粘度を低く保つことができる。また、含有量を調整することにより、組成物の粘度や硬化物の硬度、透明性、柔軟性、硬化性などを調整することができる。
本発明の光硬化性組成物は、前記ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体に加えて、下記一般式[4]で表されるシラン化合物を更に含むこともできる。または、前記ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体および前記(メタ)アクリレートに加えて、下記一般式[4]で表されるシラン化合物を更に含むこともできる。シラン化合物は、硬化物中に架橋形成し、透明度と共に硬化物に充分な表面硬度を与えるものである。
(式中、Xは水素または炭素数1〜3のアルキル基を、Rは水素または炭素数1〜3のアルキル基を、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、またはORを示す。)
シラン化合物の具体例としては、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。シラン化合物は、2種以上を併用することもできる。シラン化合物の含有割合としては、組成物全量に対して10〜90質量%が好ましい。
本発明の光硬化性組成物は、前記ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体に加えて、カゴ型シルセスキオキサン誘導体を更に含むことができる。カゴ型シルセスキオキサン誘導体は、硬化物に充分な表面硬度を与えると共に、透明性を与えるものである。
カゴ形シルセスキオキサン誘導体としては、下記一般式[5]で表される炭素−炭素二重結合を含む置換基を有する化合物が好ましい。
(但し一般式[5]において、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、または炭素原子数1〜20の含酸素官能基化炭化水素基であり、同一シルセスキオキサン分子上の複数のRは同一であっても異なっていても良く、少なくとも1つは炭素−炭素二重結合を含む置換基である。aは4〜12の整数で、bは1〜3の整数で、a+bは7〜14の整数である。)
一般式[5]の置換基Rにおける炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの飽和炭化水素基、フェニル基、メチルフェニル基などの芳香族炭化水素基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、スチリル基などの炭素−炭素二重結合を含む炭化水素基等を挙げることができる。また、炭素原子数1〜20の含酸素官能基化炭化水素基としては、例えば3−メタクリロイルオキシプロピル基、3−アクリロイルオキシプロピル基等を挙げることができる。これらは炭素−炭素二重結合を有する置換基を1分子中に少なくとも1つ含むことを条件に適宜組み合わせることができる。この中で3−メタクリロイルオキシプロピル基、ビニル基を置換基として有するカゴ形シルセスキオキサン誘導体を好適に使用することができる。
カゴ形シルセスキオキサン誘導体は2種以上を併用することもできる。カゴ型シルセスキオキサン誘導体の含有割合としては、組成物全量に対して1〜50質量%が好ましい。
本発明の光硬化性組成物は、前記ポリカーボネートジオール誘導体に加えて、シリカ粒子を更に含むことができる。シリカ粒子は、硬化物に充分な表面硬度を与えるものである。
本発明におけるシリカ粒子は、水分散液、有機溶媒分散液、粉体など形態によらず、本組成物に対し分散できるものであれば特に限定されない。シリカ粒子の粒径は、光学的に透明な硬化物を得るために5nm以上80nm以下が好ましく、さらに5nm以上40nm以下がより好ましい。また、シリカ粒子の表面は有機化合物で修飾されていてもよい。有機化合物でシリカ粒子の表面を修飾することにより、シリカ粒子の光硬化性組成物に対する溶解性、分散性、安定性などを付与することができる。さらに、シリカ粒子を修飾する有機化合物として(メタ)アクリレート官能基を有する化合物を用いると、光硬化性組成物である(メタ)アクリレート化合物と化学的に結合することが可能で、硬化物内にシリカ粒子を固定する効果があり、シリカ粒子のブリードアウトに起因する硬化物の特性劣化を防止することができる。
シリカ粒子は市販の製品を適宜利用することもできる。例えば、VP LE5315X(エボニックデグサ製、疎水性シリカトリメチルタイプ 固形分濃度15重量%イソプロピルアルコール分散液)、VP CO1030(エボニックデグサ製、R9200シリカ30重量%メトキシプロピルアセテート分散液)、AEROSIL R7200(エボニックデグサ製、粉体)、AEROSIL R711(エボニックデグサ製、粉体)、AEROSIL R972(エボニックデグサ製、粉体)、NanoTek(登録商標)SiO‐St1(シーアイ化成製、メタクリレート基を有する疎水性シリカ粒子)、ACR‐ST‐2101(日産化学工業製、30重量%テトラヒドロフルフリルアクリレート分散液)、ACR‐ST‐2201(日産化学工業製、30重量%トリプロピレングリコールジアクリレート分散液)、Nanocryl C140(nanoresins製、50重量%ヘキサンジオールジアクリレート分散液)、Nanocryl C350(nanoresins製、50重量%ヒドロキシエチルメタクリレート)等を挙げることができる。また、これらは1種又は2種以上混合して用いてもよい。シリカ粒子の含有割合としては、組成物全量に対して1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
本発明における光重合開始剤は、光照射によりラジカル種を発生するものであり、例えば光ラジカル開始剤としてベンジルジメチルケタール(IRGACURE651)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCURE1173)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE819)などが挙げられる。
本発明においてシラン化合物を用いる場合は、ラジカル種に加えてカチオン種を発生することが好ましいため、単独でこれらを同時に発生する開始剤を使用するか、光酸発生剤を併用する。単独でこれらを同時に発生する開始剤として、例えばベンゾイントシレート(2−フェニル−2(p−トルエンスルフォニルオキシ)アセトフェノン)、ベンゾイン−p−クロロフェニルスルフォネートなどが挙げられる。
光酸発生剤としては、IRGACURE250、Rhodorsil2074、UV9380c等のヨードニウム塩、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−180L、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、アデカオプタマーSP−172、アデカオプタマーSP−170、アデカオプタマーSP−152、アデカオプタマーSP−150、CYRACURE UVI−6976、CIRACUREUVI−6992などの芳香族スルフォニウム塩が挙げられる。
光重合開始剤の含有割合としては、組成物全量に対して0.1〜5質量%が好ましい。この割合が0.1質量%に満たない場合、組成物を硬化させることができないことがあり、一方5質量%を超えると着色が生じる可能性がある。
本発明の光硬化性組成物は、前記成分の他、染料、顔料及び各種安定剤等の種々の添加剤を配合することができる。
本発明で得られる光硬化性組成物から硬化物を得る方法としては、例えば適用される基材に対して、通常の塗装法により塗布した後、可視光線又は紫外線等の光を照射する等の一般的な方法を採用することができる。適用できる基材としては、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートなどのプラスチック、金属及びガラス等が挙げられる。
本発明の光硬化性組成物の用途としては、接着剤、コーティング剤等を挙げることができる。また、本発明の光硬化性組成物は、良好な塗工作業性と透明性を併せ持つため、特に光学部品、ディスプレー及び自動車部材等に用いられるコーティング剤としてより好ましく使用できる。また、高硬度の硬化物が得られるので、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの透明樹脂表面のハードコート剤としてより好ましく使用できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。尚、各例で得られた光硬化性組成物または硬化物は、以下の方法に従い評価した。
(光硬化性組成物の粘度)
E型粘度計を用い、組成物の40℃での粘度を測定した。
(硬化物の基材(PET、ガラス、ポリカーボネート(PC))への密着性)
得られた硬化皮膜について、JIS K5400に準拠し、1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて、100個の碁盤目を作る。セロハンテープ(ニチバン製、商品名;セロテープ(登録商標))をその表面に密着させた後、一気に剥がした際に剥離せずに残存したマス目の個数を計測し、下記のように表示した。
(残存したマス目の数)/100または(残存したマス目の数)のみ
(硬化物の鉛筆硬度)
得られた硬化皮膜について、JIS K5600−5−4に準拠し、コーテック(株)製の鉛筆硬度計を用い、750g重の力で45度の角度で引っ掻き、傷のつかない最大硬さの鉛筆を調べ、その硬さを鉛筆硬度とした。このとき、使用した鉛筆は三菱鉛筆ユニ(登録商標)である。
(硬化物の透明性)
得られた硬化皮膜について、目視にて曇りの有無、曇りの面積割合で評価し、または、JIS K7136に準拠し、日本電色工業製ヘイズメータNDH5000を用いて、ヘイズ値を測定した。
下記表1には、以下の参考例、実施例、又は比較例で用いられた化合物の略称をまとめて示す。また、以下において、「部」とは質量部を意味する。
[参考例1]
(ポリカーボネートジオールジメタクリレート(UM−90(1/1)DM)の製造)
蒸留装置を取り付けた内容積500mlのガラス製フラスコに、ポリカーボネートジオール(UM−CARB90(1/1);数平均分子量920;宇部興産製)45g(0.05モル)、メタクリル酸メチル(東京化成工業製)25g(0.25モル)、ヒドロキノン0.034g(0.30ミリモル)、テトラブトキシチタン0.17g(0.50ミリモル)、及びトルエン250gを入れ、常圧下、窒素気流中、バス温130〜140℃で9時間加熱攪拌した。この間、メタノールを含む液を蒸留で留出させた。
反応後、反応液に水3.0gを添加してバス温90℃で2時間攪拌した。次いで、不溶物を吸引濾過で除去し、トルエンを減圧下/120℃で留去し、低沸点成分(メタクリル酸メチル、残存トルエン等)を50〜20mmHg/バス温120〜190℃で留去して、無色透明のポリカーボネートジオールメタクリレート化合物48.7gを得た。NMRの測定より、末端アクリレート化率(原料ポリカーボネートジオールの末端水酸基がアクリレート化された割合)が90.5%で、数平均分子量が932であった。
[参考例2]
(ポリカーボネートジオールジメタクリレート(UM−90(3/1)DM)の製造)
ポリカーボネートジオールを(UM−CARB90(3/1);数平均分子量908;宇部興産製)に変更した以外は、参考例1と同様な方法によりポリカーボネートジメタクリレートを製造した。その結果、無色透明のポリカーボネートジオールメタクリレート化合物49.3gを得た。NMRの測定より、末端アクリレート化率(原料ポリカーボネートジオールの末端水酸基がアクリレート化された割合)が90.3%で、数平均分子量が940であった。
[参考例3]
(ポリカーボネートジオールジメタクリレート(UM−90(1/3)DM)の製造)
ポリカーボネートジオールを(UM−CARB90(1/3);宇部興産製)に変更した以外は、参考例1と同様な方法によりポリカーボネートジメタクリレートを製造し、無色透明のポリカーボネートジオールメタクリレート化合物を得た。NMRの測定より、末端アクリレート化率(原料ポリカーボネートジオールの末端水酸基がアクリレート化された割合)が86.9%で、数平均分子量が894であった。
[参考例4]
(ポリカーボネートジオールジメタクリレート(UH−100DM)の製造(エステル交換法))
ポリカーボネートジオールを(UH−100;宇部興産製)に変更した以外は、参考例1と同様な方法によりポリカーボネートジメタクリレートを製造し、無色透明のポリカーボネートジオールメタクリレート化合物を得た。NMRの測定より、末端アクリレート化率(原料ポリカーボネートジオールの末端水酸基がアクリレート化された割合)が83.2%で、数平均分子量が856であった。
[参考例5]
(ポリカーボネートジオールジメタクリレート(UH−100DM)の製造(直接エステル化法))
ポリカーボネートジオール(UH−100;宇部興産製)とメタクリル酸を酸触媒の存在下で反応させた。この間、水を含む液を蒸留で留出させた。反応終了後、通常の後処理をすることによって淡褐色透明のポリカーボネートジオールメタクリレート化合物を得た。NMRの測定より、末端アクリレート化率(原料ポリカーボネートジオールの末端水酸基がアクリレート化された割合)が81.2%で、数平均分子量が862であった。
[参考例6]
(メタクリレート基を有するカゴ形シルセスキオキサン(SQ1)の製造)
2L容のセパラブルフラスコにテトラヒドロフラン1200mlおよび3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン119.23g(480mmol)を加えた。この溶液を攪拌羽を用いて激しく攪拌しながら、オイルバスを用いて40℃に保持した。この状態で12.18wt%水酸化ナトリウム水溶液14.77g(水720mmol)を入れて、激しい攪拌を維持しながらオイルバスを用いて40℃に保持した。30分後反応液を室温に放冷し、1N塩酸45ml加えた。ろ過後、ろ液が白濁するまで減圧濃縮した。濃縮液を分液漏斗に移し、ジエチルエーテルを200ml、飽和食塩水を50ml加えて分液操作を行った。有機層を飽和食塩水で3回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで1昼夜脱水した。これをろ過後、濃縮し、1昼夜真空乾燥した。生成物は無色透明の粘性液体で、収量78.82g、収率91%であった。生成物の分子量は、Mn=1.7×10、Mw/Mn=1.08であった。生成物の核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定の結果は、H−NMR δ(ppm):0.68(m、2H)、1.7〜1.9(m、5.1H)、4.1(m、2H)、5.6(m、1H)、6.1(m、1H);29Si−NMR δ(ppm):−74〜−64、−65〜−55TOF−MS測定結果におけるm/z=1643は、[RSiO1.5[RSiOH](Rは3−メタクリロイルオキシプロピル基)で表される化合物の分子量と一致した。
[参考例7]
(メチル基およびビニル基を有するカゴ形シルセスキオキサン(SQ2)の製造)
10L容のセパラブルフラスコにメチルトリメトキシシラン163.47g(1.2mol)、ビニルトリメトキシシラン177.91g(1.2mmol)および、テトラヒドロフラン6000mlを加え、攪拌羽を用いて激しく攪拌した。この攪拌を維持しながら1N水酸化ナトリウム水溶液225mlを入れ、オイルバスを用いて63℃で24時間加熱保持した。その後反応液を室温に放冷し、1N塩酸225ml加えた。溶液をろ過後、ろ液が白濁するまで濃縮した。濃縮液を分液漏斗に移し、ジエチルエーテルを600ml、飽和食塩水を200ml加えて分液操作を行った。有機層を飽和食塩水で3回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで終夜脱水した。これをろ過後、濃縮し、濃縮液を7000mlのn−ヘキサン中に滴下し、沈殿物を除去した。上澄みを回収し、減圧乾固し、白色固体の生成物(収量135.38g、収率77%)を得た。
生成物の分子量は、Mn=0.80×10、Mw/Mn=1.2であった。
生成物の核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定の結果、H−NMR δ(ppm):0.2(m、15H)、5.9−6.0(m、15H);29Si−NMR δ(ppm):−84〜−80、−71〜−64、−58〜−53。
生成物1gには、ビニル基として6.76mmol相当が含まれる。
[参考例8]
(シリカ粒子分散液の調製)
200mLナスフラスコにイソプロピルアルコールを分散媒とするシリカゾル(エボニックデグサ製 VP LE5315X 疎水性シリカトリメチルタイプ 固形分濃度15wt%)50.2g、HDDMA42.7gを加え、室温、減圧下にてイソプロピルアルコールを除去し、真空ポンプで乾燥後、疎水性シリカトリメチルタイプ 15wt% HDDMA分散液50.2gを得た。
[実施例1、2]
参考例4のエステル交換法で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレート(UH−100DM)70部又は50部に、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMAと略す)(和光純薬製)を全体が100部になるように混合し、その混合物100部に対して1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を2.0部加えて均一に混合し、光硬化性組成物とした。次にポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーターを用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を10秒間照射して、光硬化性組成物を硬化させた。得られたコーティングはすべて無色透明であった。光硬化性組成物の粘度、硬化物の鉛筆硬度、密着性、ヘイズ値の結果を下記表2に示す。
[比較例1、2]
参考例5の直接エステル化法で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレート(UH−100DM)を使用した以外は、実施例1と同様に光硬化性組成物を調製し、その硬化物を得た。結果を下記表2に示す。
表2に示すように、直接エステル化法で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレートでは、光硬化性組成物の粘度が高く、コーティングの操作性が悪かった。また、硬化物は、鉛筆硬度B〜2Bの硬度しか得られなかった。更に、目視で確認できるほどの褐色の着色が認められた。一方、エステル交換法で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレートでは、光硬化性組成物の粘度が低く、コーティングの操作性に優れていた。また、硬化物は、鉛筆硬度Fの硬度が得られた。更に、得られたコーティングはすべて無色透明であった。
[実施例3〜10]
参考例3で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレート(UM−90(1/3)DM)に、単官能性(メタ)アクリレートと、二官能性(メタ)アクリレートと、三官能性(メタ)アクリレートとを、全体が100部になるように、それぞれを下記表3に示す配合で混合し、その混合物100部に対して2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(和光純薬製)を2.0部加えて均一に混合し、光硬化性組成物とした。次にポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーターを用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を10秒間照射して、光硬化性組成物を硬化させた。得られたコーティングはすべて無色透明であった。また、硬化物の密着性、鉛筆硬度、ヘイズ値の結果を下記表3に示す。
[実施例11〜17]
参考例1〜4で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレート(UM−90(1/1)DM、UM−90(3/1)DM、UM−90(1/3)DM、又はUH−100DM、)に、単官能性(メタ)アクリレート(HEMA)と、二官能性(メタ)アクリレート(HDDMA)と、三官能性(メタ)アクリレート(TMPTMA)とを、全体が100部になるように、それぞれを下記表4に示す配合で混合し、その混合物100部に対して1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を2.0部加えて均一に混合し、光硬化性組成物とした。次にポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーターを用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を10秒間照射して、光硬化性組成物を硬化させた。得られたコーティングはすべて無色透明であり、密着性は100/100であった。硬化物の鉛筆硬度、ヘイズ値の結果を下記表4に示す。
[比較例3]
ポリカーボネートジオールジメタクリレートを使用しない以外は、実施例3と同様に光硬化性組成物を作成し、ポリカーボネート板の表面に塗布して硬化させた。得られたコーティングの密着性は100/100であった。結果を下記表4に示す。
表4に示すように、ポリカーボネートジオールジメタクリレートを使用しない比較例の硬化物では、3Hの鉛筆硬度が得られるものの、ヘイズ値が7.2と高く、目視で確認できるほどの濁りを生じていた。一方、ポリカーボネートジオールジメタクリレートを配合すると、高い透明性が得られた。
[実施例18]
参考例3で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレートUM90(1/3)DM5.00g(73部)(官能基モル数:9.7mmol)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMAと略す)(和光純薬製)0.51g(8部)(官能基モル数:4.5mmol)、および2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMAと略す)(Aldrich製)1.31g(19部)(官能基モル数:10.1mmol)を9mlのサンプル管中で混合し、攪拌して相溶させた。これに重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を0.0679g添加し、攪拌して溶解させた。
次に、ポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーター(#6)を用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を19秒間照射した。得られた硬化物は無色透明であり、その鉛筆硬度は2B、密着性試験結果は100/100であった。
[実施例19]
参考例3で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレートUM90(1/3)DM2.82g(70部)(官能基モル数:5.5mmol)、およびHEMA(Aldrich製)1.21g(30部)(官能基モル数:9.3mmol)を9mlのサンプル管中で混合し、攪拌して相溶させた。これに重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を0.0411g添加し、攪拌して溶解させた。
次に、ポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーター(#5)を用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を25秒間照射した。得られた硬化物は無色透明であり、その鉛筆硬度は2B、密着性試験結果は100/100であった。
[実施例20]
参考例2で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレートUM90(3/1)DM3.45g(70部)(官能基モル数:6.6mmol)、およびHEMA(Aldrich製)1.48g(30部)(官能基モル数:11.4mmol)を9mlのサンプル管中で混合し、攪拌して相溶させた。これに重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を0.0493g添加し、攪拌して溶解させた。
次に、ポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーター(#5)を用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を25秒間照射した。得られた硬化物は無色透明であり、その鉛筆硬度は2B、密着性試験結果は100/100であった。
[実施例21]
参考例3で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレートUM90(1/3)DM2.31g(50部)(官能基モル数:4.5mmol)、TMPTMA(和光純薬製)0.94g(20部)(官能基モル数:8.3mmol)、およびHEMA(Aldrich製)1.39g(30部)(官能基モル数:10.7mmol)を9mlのサンプル管中で混合し、攪拌して相溶させた。これに重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を0.0450g添加し、攪拌して溶解させた。
次に、ポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーター(#5)を用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を25秒間照射した。得られた硬化物は無色透明であり、その鉛筆硬度はB、密着性試験結果は100/100であった。
[実施例22]
参考例2で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレートUM90(3/1)DM2.62g(50部)(官能基モル数:5.0mmol)、TMPTMA(和光純薬製)1.05g(20部)(官能基モル数:9.3mmol)、およびHEMA(Aldrich製)1.60g(30部)(官能基モル数:12.3mmol)を9mlのサンプル管中で混合し、攪拌して相溶させた。これに重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を0.0528g添加し、攪拌して溶解させた。
次に、ポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーター(#5)を用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を25秒間照射した。得られた硬化物は無色透明であり、その鉛筆硬度はF、密着性試験結果は100/100であった。
[比較例4]
1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)を1.27g(41部)(官能基モル数:10.0mmol)、TMPTMA(和光純薬製)0.51g(17部)(官能基モル数:4.5mmol)、およびHEMA(Aldrich製)1.31g(42部)(官能基モル数:10.1mmol)を9mlのサンプル管中で混合し、攪拌して相溶させた。これに重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を0.0353g添加し、攪拌して溶解させた。
次に、実施例18と同等の方法でポリカーボネート板上に上記光硬化性組成物を硬化させた。得られた硬化物は白濁部分が多く見られ(50%)、その鉛筆硬度は3H、密着性試験結果は100/100であった。
実施例18〜22、比較例4の硬化物の鉛筆硬度、密着性、及び目視による透明性の結果を下記表5に示す。
[実施例23〜27]
参考例1で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレートUM90(1/1)−DM75部に、シラン化合物である3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下MPTMS、チッソ株式会社製)と、単官能性(メタ)アクリレート(HEMA)とを、全体が100部になるように、それぞれを下記表6に示す配合で混合し、その混合物100部に対して、光ラジカル、カチオン開始剤のベンゾイントシレート(以下BT、東京化成工業製)を2.0部加え、均一に混合した。得られた液状の光硬化性組成物を、塗布装置であるバーコーターを用いて基材に10μmの厚さに塗布し、光照射条件:ウシオ製1500W UV照射装置(USHIO VB−15201BY−A)を使用し、コンベアー速度0.73m/分で塗布層に照射した。光硬化性組成物の粘度、硬化物の鉛筆硬度、密着性、目視による透明性の結果を下記表6に示す。
[実施例28、29]
ポリカーボネートジオールジメタクリレートを、参考例2で製造したポリカーボネートジオールジメタクリレートUM90(3/1)−DMに変更し、開始剤をBTからIRGACURE184(光ラジカル開始剤、チバスペシャリティーケミカルズ製)およびIRGACURE250(光カチオン開始剤、チバスペシャリティーケミカルズ製)各1部に変更した以外は実施例23と同様に液状の光硬化性組成物を製造した後、光硬化を行い得られた硬化物を評価した。それらの結果を下記表6に示す。
[比較例5]
MPTMSを100部を用いた以外は、実施例23と同様の方法で光硬化性組成物を作成し、これに光照射を施した。評価の結果を下記表6に示す。
その結果、実施例23〜29いずれの光硬化性組成物も、低粘度で取り扱いやすく、塗膜形成が容易であった。また、ポリカーボネートフィルムに処理した硬化物(基板フィルム厚50μm、塗布層10μm)の180度屈曲試験では、引張側、圧縮側ともに割れ、剥離などの変化は見られなかった。一方、比較例5の光硬化性組成物は、硬化が不十分であり、曇りが多く生じた。
[光硬化性組成物の保存安定性]
硬化処理前の光硬化性組成物各1gをサンプル壜に入れ、60℃で96時間保存した。室温まで冷却後、E型粘度計(BROOKFIELD DV−II Viscometer)を用い、組成物の40℃での粘度を測定し、保存前の粘度と比較した。その結果、実施例23〜29の組成物の粘度変化の割合は全て5%以下であった。一方、比較例5では10%以上の粘度増加が観察され、保存安定性が不十分であった。
[実施例30〜37]
参考例6で製造したメタクリレート基を有するカゴ形シルセスキオキサン(SQ1)を用い、下記表7に示す組成100部に対して1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を2.0部加え、光硬化性組成物とした。次にポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーターを用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を10秒間照射して、光硬化性組成物を硬化させた。得られたコーティングはすべて無色透明であった。その硬化物の鉛筆硬度、密着性、ヘイズ値の結果を下記表7に示す。
[実施例38、39]
参考例8で調製したシリカ粒子分散液を用い、下記表8に示す組成100部に対して1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を2.0部加え、光硬化性組成物とした。次にポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーターを用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製 1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を10秒間照射して、光硬化性組成物を硬化させた。得られたコーティングはすべて無色透明であった。その硬化物の鉛筆硬度、密着性、ヘイズ値の結果を下記表8に示す。
[実施例40〜43]
Aldrich製シルセスキオキサン([SiO1.5OCOC(CH)=CHn=8,10,12の混合物、SQ3)を用い、下記表9に示す組成100部に対して1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を1.0重量部加え、光硬化性組成物とした。次にポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーターを用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製 1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を10秒間照射して、光硬化性組成物を硬化させた。得られたコーティングはすべて無色透明であった。その硬化物の鉛筆硬度、密着性の結果を下記表9に示す。
[実施例44〜47]
参考例6で製造したメタクリレート基を有するカゴ形シルセスキオキサン(SQ1)を用い、下記表10に示す組成100部に対して1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を1.0重量部加え、光硬化性組成物とした。次にポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーターを用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を10秒間照射して、光硬化性組成物を硬化させた。得られたコーティングはすべて無色透明であった。その硬化物の鉛筆硬度、密着性の結果を下記表10に示す。
[実施例48〜51]
参考例7で製造したメチル基およびビニル基を有するカゴ形シルセスキオキサン(SQ2)を用い、下記表11に示す組成100部に対して1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬製)を1.0重量部加え、光硬化性組成物とした。次にポリカーボネート板の表面に上記で得られた光硬化性組成物をバーコーターを用いて塗布し、UV光(セン特殊光源製1500W UV照射装置「HM15001C−4」)を10秒間照射して、光硬化性組成物を硬化させた。得られたコーティングはすべて無色透明であった。その硬化物の鉛筆硬度、密着性の結果を下記表11に示す。
本発明は、塗工作業性が良好な低粘度で、かつ、密着性に優れ、加えて透明性、硬化性、保存安定性に優れた光硬化性組成物として利用可能である。

Claims (4)

  1. ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応により製造され、少なくとも一つの末端に(メタ)アクリル基を有するポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体と、光重合開始剤と、下記一般式[1]〜[3]から選ばれる1種もしくは2種以上の(メタ)アクリレートと、シリカ粒子とを含有し、
    前記ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体と、前記(メタ)アクリレートと、前記シリカ粒子との合計100質量部に対し、前記ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体を15〜25質量部、前記(メタ)アクリレートを70〜80質量部含有し、
    前記光重合開始剤は、組成物全量に対し0.1〜5質量%含有し、
    前記シリカ粒子は、組成物全量に対し1〜20質量%含有することを特徴とする光硬化性組成物。



    (式中、Xは水素または炭素数1〜3のアルキル基を、Yは炭素数1〜8のアルキル基(炭素数3以上の場合は分岐していても良い。)、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、イソボルニル基、シクロヘキシル基、トリシクロデカニル基、4−ヒドロキシブチル基またはテトラヒドロフルフリル基を、Zは炭素数1〜10のアルキル基(炭素数3以上の場合は分岐していても良く、また、炭素数4以上の場合は炭素−炭素間に酸素を結合していても良く、また、炭素数5以上の場合は環を形成していても良い。)を、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシ基を示す。)
  2. ポリカーボネートジオール(メタ)アクリレート誘導体の数平均分子量が500〜3000である請求項1に記載の光硬化性組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の光硬化性組成物を光照射により硬化して得られる硬化物。
  4. 請求項1又は2に記載の光硬化性組成物を含有するハードコート剤。
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