JP5619061B2 - レ−ダ装置 - Google Patents
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Description
まず、前者の機械走査方式においては、隣接するアンテナのビ−ムパタ−ンが重なるラップ領域での検出を行い、各ラップ領域についてビ−ト信号の受信強度に基づいて角度を計測する。しかしながら、ビ−ト信号の受信強度は様々な要因の影響を受けやすく、このような受信強度を用いるよりも、位相を用いて角度を計測する後者の電子走査方式の方が分解能・精度を向上できることで知られている。
また、位相を用いてタ−ゲット方位を計測する別の方式として、ディジタル・ビ−ム・フォ−ミング(以下、DBF)がある。DBFでは、タ−ゲットからのエコ−を複数の受信アンテナにより同時に受信し、その受信信号を信号処理段階で位相補正して積算することにより、様々なアンテナパタ−ンをデジタル信号処理の段階で形成するものである。
アンテナ素子RX1、RX2が2個で素子間隔がdのアレ−アンテナにおいて、アンテナに対し方向θ1からの到来波s1(t)が入射され、それぞれのアンテナ素子RX1、RX2に受信信号r1(t)、r2(t)が得られる場合を簡略化して考える。
受信信号r1(t)、r2(t)は到来波s1(t)に対し、それぞれ0、φ1の位相をもってアンテナ素子に入力されるとする(r1(t)、r2(t)の位相差がφ1)。このとき2個のアンテナ素子に入力される受信信号r1(t)、r2(t)はノイズを無視して次式(1)となる。
r1(t)=s1(t)
r2(t)=ejφ1s1(t) (1)
r2(t)=r1(t)ejφ1 (2)
したがって計測した受信信号r1(t)、r2(t)の位相差φ1は、以下の式(3)で求める事が出来る。
また、図5から位相差φ1は素子間隔dと以下の関係にある。λは波長である。
図6において、左側はTX2送信時、右側はTX1送信時の各受信アンテナ(RX1〜RX2)に入射する電波の等位相面を示している。ここでは、正面方向から右側θ1の方向から受信波が返ってくる場合を想定している。
TX2送信時のTX2を基準とした受信アンテナ(RX1〜RX2)に入射される電波の送受の経路差は以下のようになる。
RX1 : +1△r
RX2 : +2△r
ここで、受信アンテナ間隔をdとすると、
△r=dsinθ1 で表される。
RX1 :+4△r
RX2 :+5△r
よって、TX2を基準とした送受の位相差は以下のように表わすことができる。
TX2送信時は、
RX1 :−1△φ
RX2 :−2△φ
TX1送信時は、
RX1 :−4△φ
RX2 :−5△φ
この時、TX1送信時は、
RX1 :+2△φ
RX2 :+1△φ
となり、送信アンテナを挟んで、計4つの受信アンテナが配置されていると仮想的に扱うことができる。
つまり、実際には2つの受信アンテナしかないにもかかわらず、ほぼ倍のアンテナ開口径を仮想的に実現することができ、測角精度を向上することができる。
前述した位相差方探の原理より明らかであるが、タ−ゲット角度が高精度に観測される為には、複数の受信アンテナにより検出された位相差φが、到来角度θ1と受信アンテナの間隔dだけで定まっていることが求められる。これはすなわち、アンテナそのものの放射パタ−ンとしては、各チャンネル(送受積)の位相パタ−ンが揃っていて(均一であり)、チャンネル間の位相差が測角範囲の全てに渡って十分に小さいことが求められていることと等価である。
空間に放射された送信波は、タ−ゲットで反射してエコ−として複数の受信アンテナ5a、5b(RX1、RX2)により受信され、信号処理回路6に入力される。信号処理回路6は受信した受信波を検出し、タ−ゲットの距離、角度、速度などタ−ゲット検知に必要な情報を算出する。
意図している送信アンテナTX1の放射に対し、送信間アイソレ−ションの影響で意図しない送信アンテナTX2の放射が重畳する様子を模式的に表した図を図8(a)に示す。
ここで、送信アンテナ間の間隔をdとし、それぞれの送信アンテナの励振分布を図8(b)に示す。図8(b)に示すとおり、基準とすべき放射を意図した送信アンテナTX1の励振振幅を1、励振位相を0degとし、スイッチ内部の漏れこみの影響を受けた送信アンテナTX2の励振振幅をA、励振位相をφ[deg]とする。
図10において、励振分布は一例として、励振振幅AはA=0.001(対数表示:−30dB
)、励振位相φはφ=90degの場合を示す。
式(7)、式(9)、及び図10より、従来のレ−ダ装置においては、意図して放射する送信アンテナをそれぞれTX1、TX2とした場合、放射パタ−ンに重畳されるリップルは、リップル周期、振幅が同一となるが、原理的に逆相のリップルとなる。このため、測角精度向上のためには送信アンテナTX1、TX2の位相パタ−ンは均一であることが求められるものの、位相差パタ−ン、位相パタ−ンともに、リップル重畳の影響を受けることによって、パタ−ン均一性を大きく損ねる結果となってしまう。
リップルの周期は送信アンテナの間隔によって決まり、送信アンテナ同士を離して配置するほど、リップルの周期は短くなる。また、リップルの大きさは送信間アイソレ−ション量によって決まり、送信間アイソレ−ションを向上させるほどリップル量をある程度抑制できるが、使用する高周波用途のスイッチ内部のチャンネル間アイソレ−ションを改善することは容易ではない。例えば、回路の最適化、或いは要所に電波吸収体を設置するなどしてチャンネル間アイソレ−ションを改善させることは、ある程度は可能だが、高コストの要因となる。
また、スイッチ内部のアイソレ−ション性能が如何なる値であろうと、原理的に位相差パタ−ンに表れるリップルをなくすことができるので、スイッチの製造ばらつきなどの影響を受けにくいロバストな設計が可能になる。
以下、この発明の実施の形態1におけるレ−ダ装置を図1〜図3に基づいて説明する。図1はレ−ダ装置の全体構成を説明するために簡単化したブロック図、図2は送信アンテナによる位相パタ−ンを示す図、図3はレーダ装置の移相回路の構成図をそれぞれ示す。
図1において、発振回路によって構成される送信信号発生回路1は送信信号を生成する。送信信号発生回路1からの送信信号は送信アンテナ切替スイッチ(切替手段)2により、2つの送信チャンネル経路(TX1、TX2)に切り替えて伝送され、2つの送信アンテナ3a、3b(TX1、TX2)の前段に設けられたそれぞれの移相回路4a、4bによって所定の移相量だけ励振位相が調整される。
また、送信アンテナ切替スイッチ2に対するスイッチ制御および移相回路4a、4bに対する移相制御は、共に制御回路7が行う。即ち、制御回路7はスイッチ制御の切り替えに連動して移相回路4a、4bの移相量を制御する。
ここで、移相回路4a、4bの移相量が共に0degの場合に、双方の送信アンテナ(TX1とTX2)からの励振位相は同相(位相差なし)で空間に電波が放射されることになることを意味する。
具体的には、送信アンテナとして、送信アンテナ3a(TX1)を用いた送信時には、TX1送信波に対してTX2送信波の位相を90degだけ進ませ、一方、アンテナ3b(TX2)を用いた送信時には、TX2送信波に対してTX1送信波の位相を90degだけ進ませる。換言すれば、非導通端子側の送信アンテナを、導通端子側の送信アンテナに比べて、常に90degだけ進相させるように、送信アンテナ切替スイッチ2の制御に連動して、移相回路4a、4bにより送信アンテナ3a、3b(TX1、TX2)への励振位相を制御する。
∠Etx1 ≒ A・sin(kdsinθ+φ)
≒ A・sin(kdsinθ+90deg)
= A・cos(kdsinθ) (10)
∠Etx2 ≒ ―A・sin(kdsinθ+φ)
≒ ―A・sin(kdsinθ―90deg)
= A・cos(kdsinθ) (11)
式(10)、式(11)で表される位相パタ−ンを横軸を角度θとしてグラフ化した図を図2に示す。
の場合を示す。
式(10)(11)および図2より、この発明に係るレ−ダ装置においては、送信アンテナ3a、3b(TX1、TX2)のそれぞれの位相パタ−ンに重畳するリップルを、同一振幅で、なおかつ、同相のリップルとすることができるため、送信チャンネル間の位相差パタ−ン(TX1−TX2)としては、すべての角度範囲に渡ってリップルが相殺される形となり、レ−ダの測角精度悪化の要因を原理的に解消することが可能となる。
また、スイッチ内部のアイソレ−ション性能が如何なる値であろうと、原理的に位相差パタ−ンに表れるリップルをなくすことができるので、スイッチの製造ばらつきなどの影響を受けにくいロバストな設計が可能になる。
図3(a)(b)は、いずれも同一のブロック要素から構成されており、接続状態のみ異なる。
スイッチSW1は送信アンテナ切替スイッチ2、スイッチSW2〜3はTX1移相回路4a用のスイッチ(SW2:前段、SW3:後段)、スイッチSW4〜5はTX2移相回路4b用のスイッチ(SW4:前段、SW5:後段)をそれぞれ示す。
また、図3(b)に示すように、送信アンテナ3b(TX2)送信時(スイッチSW1はTX2側に導通状態)には、スイッチSW2〜SW3は−90deg伝送線路側に導通状態、スイッチSW4〜SW5は0deg伝送線路側に導通状態となるように連動制御されており、非導通端子側の送信アンテナ3a(TX1)を、導通端子側の送信アンテナ3b(TX2)に比べて、常に90degだけ進相させる接続状態となっている。
また、送信アンテナ切替スイッチ2内部のアイソレ−ション性能が如何なる値であろうと、原理的に位相差パタ−ンに表れるリップルをなくすことができるので、スイッチの製造ばらつきなどの影響を受けにくいロバストな設計が可能になる。
次に、この発明の実施の形態2におけるレ−ダ装置を図4に基づいて説明する。図4は実施の形態2におけるレーダ装置の移相回路の構成図を示し、この移相回路4の具体例について詳説する。
図4において、TX1送信時の回路接続状態を図4(a)に、TX2送信時の回路接続状態を図4(b)に示す。図4(a)(b)は、いずれも同一のブロック要素から構成されており、接続状態のみ異なる。
スイッチSW1は送信アンテナ切替スイッチ2、スイッチSW2〜3はTX1移相回路4用のスイッチ(SW2:前段、SW3:後段)を示す。
ここで、選択はできないが、移相回路4の移相量が0degの場合に、双方の送信アンテナ(TX1とTX2)からの励振位相は同相(位相差なし)で空間に電波が放射されることになることを意味する。
また、図4(b)に示すように、送信アンテナ3b(TX2)送信時(SW1はTX2側に導通状態)には、SW2〜SW3は−90deg伝送線路側に導通状態となるように連動制御されており、非導通端子側の送信アンテナを3a(TX1)を、導通端子側の送信アンテナ3b(TX2)に比べて、常に90degだけ進相させる接続状態となっている。
また、送信アンテナ切替スイッチ2内部のアイソレ−ション性能が如何なる値であろうと、原理的に位相差パタ−ンに表れるリップルをなくすことができるので、スイッチの製造ばらつきなどの影響を受けにくいロバストな設計が可能になる。
また、図4(a)(b)では、送信アンテナ3a(TX1)側だけに移相回路4を設けるような回路構成としたが、送信アンテナ3b(TX2)側だけに同様の移相回路4を設けてもよい。
3a、3b:送信アンテナ、 4、4a、4b:移相回路、
5a、5b:受信アンテナ、 6:信号処理回路、
7:制御回路。
Claims (5)
- 送信信号を生成するための送信信号発生回路と、前記送信信号を空間へ放射するための2つの送信アンテナと、前記2つの送信アンテナを交互に切り替えて使用するための送信アンテナ切替え手段と、前記送信アンテナから放射された送信信号のタ−ゲットによる反射波を受信するための複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナによって受信された前記反射波に含まれる位相情報から検知したタ−ゲットの方位角度を算出するための信号処理回路と、前記送信アンテナ切替え手段と前記送信アンテナの間に配置され、前記2つの送信アンテナに対する励振位相を変更するための移相回路と、前記送信アンテナ切替え手段に対する切替制御および前記移相回路に対する移相制御を行うと共に、前記送信アンテナ切替え手段の切替えに連動して、前記移相回路の移相量を制御する制御手段を備え、
前記移相回路は、前記送信アンテナ切替え手段の切り替えに応じて、一方の送信アンテナから送信される送信信号の励振位相が、他方の送信アンテナから送信される送信信号の励振位相に対して、常に90degだけ進相、或いは常に90degだけ遅相となるようにしたことを特徴とするレ−ダ装置。 - 前記移相回路は、非導通端子側の送信アンテナを常に90degだけ進相、或いは常に90degだけ遅相となるように位相制御されることを特徴とする請求項1に記載のレ−ダ装置。
- 前記移相回路は、2つの送信アンテナへ給電する両方の給電経路内に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレ−ダ装置。
- 前記移相回路は、2つの送信アンテナへ給電する給電経路のうち、一方の給電経路内に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレ−ダ装置。
- 前記複数の受信アンテナが2つの送信アンテナによって挟まれて配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレ−ダ装置。
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