JP5613467B2 - 環状成形体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、航空機用エンジンのタービンディスクに代表される環状成形体の製造方法に関するものであり、特に、均一性に優れた環状成形体に係るものである。
従来、Ni基合金、Fe基合金、Co基合金等の合金からなる環状成形体が知られている。例えば、航空機用エンジンのタービンディスクには、高温強度に優れるNi基合金からなる環状成形体が用いられており、この環状成形体を機械加工して製品であるタービンディスクが製造されている。
タービンディスクの外周部には、周方向に沿って複数のタービンブレード(動翼)が配設されている。航空機用エンジンでは、エンジン内部で発生した高温・高圧の燃焼ガスが、タービンディスクの外周部においてその軸方向前方側から後方側へ向けて流れることにより、タービンブレードが該タービンディスクとともに高速で回転する。そして、この回転の駆動力がタービンディスクの前方側に配置されたコンプレッサーとファンに伝達されて、連続的な燃焼に必要な圧縮空気と推進力を得るようになっている。
このようなタービンディスクは重要回転体に位置づけられており、該タービンディスクに用いられる環状成形体には十分な機械的強度が要求される。詳しくは、タービンディスクは、その外周部が燃焼ガスに晒されて600〜700℃程度の高温になる一方、内周部の温度は比較的低く抑えられており、エンジンの起動や停止にともなって、繰り返し内部に熱応力が生じることになる。そのため、優れた低サイクル疲労特性が求められるとともに、外周部では高温下で軸周りの高速回転に起因した遠心力を受けることから、高いクリープ強度特性を合わせ持つ必要がある。また、高い引張・降伏強度も要求される。
このような種々の要求に対応し得る機械的強度を確保するため、タービンディスクに用いられる環状成形体は、一般に鍛造(鍛造プレス)で製造されている(例えば、特許文献1、2参照)。すなわち、鍛造により環状成形体にひずみを与えるとともに結晶粒を微細化して、引張強度や疲労強度等を向上させている。鍛造の適用設備としては、鍛造速度の厳密な制御が可能な油圧制御鍛造プレスが望ましく、環状成形体における組織(結晶粒)の周方向の均一性を得るためには、素材全体を同時に成形する全面鍛造の適用が好ましいと認識されている。
また近年、航空機用エンジンの高出力化への要求にともなって、タービンディスクの大型化が求められている。このようなタービンディスクの大型化に伴って環状成形体を大型化する場合、数万トンクラスの大型の油圧制御鍛造プレスが必要になる(例えば、非特許文献1参照)。
特開平07−138719号公報 特開昭62−211333号公報
「平成14年度調査報告書 超大型鍛造用プレス機を利用した革新的部材開発に関する調査研究報告書」、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、平成15年3月、p.10、11、37−41
しかしながら、前述した大型の油圧制御鍛造プレスは、非常に高価であるばかりか世界的に見ても数が少なく、このような大型の油圧制御鍛造プレスを用いた場合、環状成形体の供給能力が制限されるとともに製品コストも高止まりしてしまうことになる。また、近年のタービンディスクの大型化傾向は、大型の油圧制御鍛造プレスを用いたとしても密閉鍛造が困難な程度にまで達しており、鍛造する環状成形体の一部領域では望ましい機械的特性が得られ難く、組織の均一性が確保し難いといった課題が生じていた。
一方、環状成形体を鍛造プレスにより成形する代わりに、リング圧延により成形する手法が考えられる。この場合、設備費用を削減できるとともに、環状成形体の大型化にも対応しやすい。しかしながら、一般にリング圧延品はプレス鍛造品よりも機械的特性(強度特性)の異方性が生じやすく、タービンディスクのように機械的特性の等方性が要求される製品には不向きであった。
また、鍛造プレスとリング圧延とを組み合わせて環状成形体を成形する手法も考えられるが、所望の均一微細組織を得るには、前記リング圧延後にさらに最終鍛造を施す必要性が生じて、製造工程が複雑となるとともに製造コストが嵩んでしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、環状成形体における組織の均一性を確保して機械的強度を十分に高めつつ、設備費用及び製造コストを削減できる環状成形体の製造方法を提供することを目的としている。
前述の目的を達成するために、本発明の発明者は、環状成形体の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得るに至った。
一般に、リング圧延品は、ビレット等の合金素体を荒地鍛造(プリフォーム鍛造)し、この鍛造で得られた鍛造体に貫通孔を穿孔してなる環状中間体をリング圧延することにより作製される。従来のリング圧延品の機械的特性は、リング圧延工程において十分に高い加工率を付加することで制御されている。リング圧延工程における加工条件等の設定は、如何に適切な温度領域で高加工率を付与できるかに主眼が置かれている。その一方、鍛造体を成形する鍛造工程においては、前述した加工率については特に考慮されてはいない。具体的には、作製された鍛造体がリング圧延装置に投入できる程度で、かつ、リング圧延工程で所望の加工率が付与できるサイズであればよいとの認識であった。
タービンディスク等、重要回転体と位置づけされる製品に用いられる環状成形体においては、その機械的強度を十分に確保することが要求されている。十分な機械的強度を得るためには、均一・微細な結晶粒組織を実現しなければならないが、リング圧延工程で高加工率を付与する従来製法で成形した場合、リング圧延の結果として微細等軸粒からなる組織が得られたとしても、高ひずみ付与に起因した強度特性の強い異方性の発生が避けられなかった。環状成形体の組織にこのような異方性が生じた場合、機械的強度を十分に確保することは難しい。その一方で、異方性の発生を回避するために付与ひずみを制限した場合には、所望の均一微細組織を得ることはできない。そのため、リング圧延を活用しようとする場合には、荒地鍛造+リング圧延+仕上げ鍛造、という複雑な工程を経る必要が生じてしまうことになる。
発明者は、環状中間体の高さ方向や径方向に対比して周方向への塑性変形が大きく成らざるを得ないリング圧延工程において高加工率を与えることが、結果として環状成形体の組織に強度特性の異方性を付与している、との知見を得るに至った。すなわち、リング圧延工程においては加工率を抑え、該リング圧延工程前の鍛造工程において高加工率を付与することによって、環状成形体における強度特性の等方性を向上でき、所望の均一微細組織が得られることを見出したのである。これによれば、荒地鍛造+リング圧延のみの比較的簡便な加工工程により所望の環状成形体が得られるのである。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、Ni;50.00〜55.00質量%、Cr;17.0〜21.0質量%、Nb;4.75〜5.60質量%、Mo;2.8〜3.3質量%、Ti;0.65〜1.15質量%、Al;0.20〜0.80質量%、C;0.01〜0.08質量%、残部がFe及び不可避不純物とされた合金素体を鍛造して円板状の鍛造体を作製する鍛造工程と、前記鍛造体に貫通孔を形成してなる環状中間体をリング圧延して環状成形体を作製するリング圧延工程と、を備える環状成形体の製造方法であって、前記鍛造工程では、前記鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が0.3〜1、該鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが0.6〜0.7、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が0.7〜2の範囲内となる熱間鍛造を、2回行うことを特徴とする。
本発明に係る環状成形体の製造方法によれば、鍛造工程において合金素体に付与する周方向のひずみの絶対値εθ1及び高さ方向のひずみの絶対値εhを大きく設定することによって、次のリング圧延工程において環状中間体に付与する周方向のひずみ量の割合を低減させることができる。また、リング圧延では付与しにくい高さ方向のひずみ量が十分に確保される。これにより、成形される環状成形体の強度特性の異方性が抑制されるとともに等方性が高められ、均一性が十分に確保された微細結晶組織が得られるのである。
また、比εh/εθ1は付与ひずみの方向性バランスを示しており、加工前後での素材内の相対位置変化を制御する指標である。引き続くリング圧延工程では製法上、相当する数値がゼロ或いはゼロに近い数値にならざるを得ないため、鍛造工程で高さ方向へのひずみ付与比率を適切に取ることが異方性の抑制に必須である。
また、本発明に係る環状成形体の製造方法において、前記リング圧延工程では、前記環状成形体における周方向のひずみの絶対値εθ2を0.5以上付与する熱間圧延を行い、前記環状成形体における製品領域の結晶粒度をASTM結晶粒度番号で8以上とすることとしてもよい。
本発明に係る環状成形体の製造方法によれば、リング圧延工程において、環状成形体の周方向のひずみの絶対値εθ2を0.5以上付与する熱間圧延を行うことで、環状成形体において機械加工により製品とされる製品領域の結晶粒度が、ASTM結晶粒度番号で8以上に確実に微細化される。従って、環状成形体から得られる製品の機械的強度が確実に高められる。
なお、ASTM結晶粒度番号とは、American Society of Testing and Materials(米国材料試験協会)のASTM規格E122に規定する基準によって決定されるものである。
また、本発明に係る環状成形体の製造方法において、前記環状成形体の軸線を含む断面内における該環状成形体の製品領域の結晶粒度差が、ASTM結晶粒度番号差で±2の範囲内であることとしてもよい。
本発明に係る環状成形体の製造方法によれば、環状成形体の断面内の製品領域における結晶粒度差が、ASTM結晶粒度番号差で±2の範囲内とされているので、この環状成形体は、径方向及び高さ方向における結晶粒度の均一性が確保されている。
また、本発明に係る環状成形体の製造方法において、前記鍛造工程では、前記鍛造体の結晶粒度をASTM結晶粒度番号で7以上とすることとしてもよい。
本発明に係る環状成形体の製造方法によれば、鍛造工程において、前述のように高いひずみ量を付与することによって、鍛造体の結晶粒度がASTM結晶粒度番号で7以上に微細化できる。従って、次のリング圧延工程において付与するひずみ量を低減しつつも、環状成形体の組織の微細化が可能となる。
また、本発明に係る環状成形体の製造方法において、前記環状中間体における径方向の厚さTと該環状中間体の軸線方向に沿う高さHとの比T/Hが0.6〜2.3の範囲内となるように該環状中間体を成形した後、リング圧延して、前記環状成形体に周方向均等に設定した複数の等価位置同士の結晶粒度差を、ASTM結晶粒度番号差で±1.5の範囲内とすることとしてもよい。
本発明に係る環状成形体の製造方法によれば、環状中間体における径方向の厚さTと高さHとの比T/Hが0.6〜2.3の範囲内となるように環状中間体を成形した後、リング圧延することにより、環状成形体における周方向の等価位置同士の結晶粒度差をASTM結晶粒度番号差で±1.5の範囲内に抑制することができる。すなわち、この環状中間体を成形して得られる環状成形体は、周方向における結晶粒度の均一性が確保される。詳しくは、リング圧延は局部加工であるものの一般的な部分鍛造とは異なり、加工の連続性を有することから成形後の組織の軸対称性が高く、環状成形体における周方向の材料特性の偏差が小さくなることが知られている。本発明では、リング圧延前の環状中間体において前記比T/Hを前述の範囲内に設定することによって、成形された環状成形体の形状(真円度)及び組織の軸対称性を一段と高くできる。
すなわち、前記比T/Hが0.6〜2.3の範囲内とされていることにより、均一性付与に必須な圧延の安定性がもたらされる。詳しくは、T/Hが0.6未満の領域では、圧延する両ロール(メインロール及びマンドレルロール)と素材との接触面積が大きくなり、相対的に抜熱の影響度が増すために、周方向の均一性が得られ難くなる。一方、T/Hが大きくなるほど座屈が発生し易くなる。詳しくは、T/Hが2.3を超える領域では同傾向が強まるために周方向の均一性が得られ難くなる。
本発明に係る環状成形体の製造方法によれば、環状成形体における組織の均一性を確保して機械的強度を十分に高めつつ、設備費用及び製造コストを削減できる。
本発明の一実施形態に係る環状成形体の上面図である。 図1におけるX−X断面図である。 本発明の一実施形態に係る環状成形体及びタービンディスクの製造方法を示すフローチャートである。 図3に示す製造方法において用いられる環状中間体の断面図である。 図3に示す製造方法において用いられるリング圧延の説明図である。 メインロールとマンドレルロールとを用いたリング圧延工程の説明図である。 メインロールとマンドレルロールとを用いたリング圧延工程の説明図である。 本発明の実施例に係る環状成形体の引張強さ−絞り相関図であり、従来例との比較を説明する図である。 本発明の実施例に係る環状成形体の耐力−絞り相関図であり、従来例との比較を説明する図である。
以下に、本発明の一実施形態について添付した図面を参照して説明する。
本実施形態に係る環状成形体10は、航空機用エンジンのタービンディスクを成形する加工素材として使用されるものである。
環状成形体10は、図1及び図2に示すように、貫通孔を有するとともに、軸線Oを中心とする円環状をなしており、本体部11と、本体部11から径方向内方に向けて突出した内側凸条部12と、本体部11から径方向外方に向けて突出した外側凸条部13と、を備えている。
また、環状成形体10は、耐熱性に優れたNi基超合金で構成されており、本実施形態では、Ni基合金Alloy718で構成されている。
なお、Ni基合金Alloy718の合金組成は、Ni;50.00〜55.00質量%、Cr;17.0〜21.0質量%、Nb;4.75〜5.60質量%、Mo;2.8〜3.3質量%、Ti;0.65〜1.15質量%、Al;0.20〜0.80質量%、C;0.01〜0.08質量%、残部がFe及び不可避不純物とされている。
そして、この環状成形体10は、機械加工してタービンディスク(製品)とされる不図示の所望領域(以下「製品領域」とする)における組織の結晶粒度が、ASTM結晶粒度番号でASTM No.8以上とされている。また、図2に符号VS1、VS2で示す仮想平面は、環状成形体10の軸線Oを含む断面であり、これら仮想平面VS1、VS2は環状成形体10を周方向均等に2分割した等価位置に設定されている。この環状成形体10は、仮想平面VS1(又はVS2)の断面内における前記製品領域の組織の結晶粒度差が、ASTM結晶粒度番号差で±2の範囲内とされ、均一性が確保されている。また、環状成形体10の周方向の等価位置同士における結晶粒度差、すなわち仮想平面VS1における結晶粒度と仮想平面VS2における結晶粒度との差は、ASTM結晶粒度番号差で±1.5の範囲内とされている。
このように構成された環状成形体10は、機械的特性の等方性が十分に確保されている。
次に、この環状成形体10の製造方法及びタービンディスクの製造方法について、図3から図7を参照して説明する。
(溶解鋳造工程S1)
まず、Ni基合金Alloy718の溶湯を溶製する。ここで、前述したNi基合金Alloy718の成分範囲になるように、溶解原料を調製し、真空誘導加熱溶解(VIM:Vacuum Induction Melting)を行って、インゴットを製出する。次に、このインゴットをエレクトロスラグ再溶解(ESR:Electro Slag Remelting)して、再度インゴットを製出する。さらに、このインゴットを、真空アーク再溶解(VAR:Vacuum Arc Remelting)した後、熱間鍛造を行い円柱状のビレット(合金素体)を製出する。
ビレットは、例えば、直径が7inch〜12inch程度に成形される。また、製出されたビレットの組織は、ASTM結晶粒度番号でASTM No.6程度とされる。前述のように、3回の溶解(三重溶解)を行うことによって、合金成分の凝固偏析が小さく凝固組織が制御された、介在物が極めて少ない高清浄度のビレットが製出されることになる。
(鍛造工程S2)
次に、ビレットに対して、該ビレットの軸線方向に押圧するように鍛造加工を行い、円板状の鍛造体を作製する。この鍛造加工は、ビレットの温度を、例えば950℃〜1075℃に加熱した状態で、鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が0.3以上、鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが0.3以上、かつ、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が0.4〜2.5の範囲内となるように熱間鍛造により行い、この熱間鍛造は少なくとも2回以上行われる。
詳しくは、鍛造工程において、鍛造体の周方向に付与されるひずみ量の絶対値εθ1は、0.3〜1.3の範囲内に設定される。また、鍛造体の軸線方向に沿う高さ方向に付与されるひずみ量の絶対値εhは、0.3〜1.3の範囲内に設定される。この鍛造により、鍛造体の高さは、例えば60mm〜500mm程度に調整される。このような鍛造工程によって、鍛造体にはひずみが十分に付与されて、該鍛造体の結晶粒度はASTM結晶粒度番号で7以上に微細化される。
(穿孔加工+中間リング圧延工程S3)
次いで、得られた鍛造体の中央部に、ウォーターカッターによって断面円形の貫通孔を形成する。さらに、貫通孔形成後に必要に応じて中間リング圧延を行う。この穿孔加工+中間リング圧延工程S3によって、環状中間体20が製出されることになる。
本実施形態では、環状中間体20は、図4に示すように、周方向に直交する断面が概略多角形状をなしており、軸線Oに対して略直交する方向に延びる上面及び下面を有する基体部21と、この基体部21から径方向内方に向けて突出した内側凸部22と、基体部21から径方向外方に向けて突出した外側凸部23と、を備えている。
詳しくは、この環状中間体20(基体部21)の軸線O方向に沿う高さHは、H=60mm〜500mmの範囲内に設定される。また、環状中間体20において軸線Oに直交する径方向の肉厚(厚さ)Tと前記高さHとの比T/Hが0.6〜2.3の範囲内となるように成形される。
(リング圧延工程S4)
次に、この環状中間体20に対してリング圧延を行う。なお、このリング圧延は熱間圧延で行われ、その温度は、例えば900℃〜1050℃の範囲内とされている。
ここで、リング圧延装置30は、図5に示すように、環状中間体20の外周側に配設されるメインロール40と、環状中間体20の内周側に配設されるマンドレルロール50と、環状中間体20の軸線O方向端面(本実施形態では、基体部21の上面および下面)に当接される一対のアキシャルロール31、32と、を備えている。
メインロール40とマンドレルロール50とは、その回転軸が互いに平行となるように配置され、環状中間体20を内周側及び外周側から挟持して押圧し、環状中間体20を周方向に回転させつつ圧延する構成とされている。また、一対のアキシャルロール31、32は、軸線O方向において環状中間体20を挟持して押圧する構成とされており、環状中間体20の高さ寸法を制御するものである。
ここで、図6に示すように、メインロール40の外周部には、環状中間体20の一部が収容可能な収容凹部41が設けられており、本実施形態では、環状中間体20の外側凸部23、基体部21及び内側凸部22の外周部分が収容可能な深さとされている。また、この収容凹部41の底部41Aには、環状成形体10の外側凸条部13を成形するための第1成形溝42が、メインロール40における径方向内方(図6において右方)に向けて凹むように形成されている。なお、この第1成形溝42は、成形される外側凸条部13の突出高さと同一の深さとされている。
一方、マンドレルロール50の外周部には、メインロール40の収容凹部41内に嵌入可能な構成とされた嵌入部51が設けられており、この嵌入部51の外周面には、環状成形体10の内側凸条部12を成形するための第2成形溝52が、マンドレルロール50における径方向内方(図6において左方)に向けて凹むように形成されている。なお、この第2成形溝52は、成形される内側凸条部12の突出高さと同一の深さとされている。
このような構成とされたメインロール40とマンドレルロール50とが互いに接近するように作動することにより、環状中間体20は、メインロール40とマンドレルロール50とに挟持されて押圧される。詳しくは、メインロール40を該メインロール40の回転軸を中心に回転させながら、メインロール40とマンドレルロール50とを互いに接近させていくことにより、メインロール40との間の摩擦抵抗によって環状中間体20を軸線O回りに回転させる。
一方、マンドレルロール50は該マンドレルロール50の回転軸を中心に回転自在とされており、環状中間体20との間の摩擦抵抗により従動回転する。環状中間体20は、メインロール40の収容凹部41及び第1成形溝42、マンドレルロール50の第2成形溝52内に充填されるように塑性変形し、環状成形体10が成形されることになる。このとき、環状成形体10における内側凸条部12は、第2成形溝52の形状に対応して塑性変形する。また、外側凸条部13は、第1成形溝42の形状に対応して塑性変形する。
このようにリング圧延を行うことによって、環状中間体20は周方向に延びるように塑性変形していくとともに、その内径及び外径が拡大されて、図7に示す環状成形体10が作製されるのである。
そして、このリング圧延工程では、環状成形体10における周方向のひずみの絶対値εθ2を0.5以上付与することとしている。詳しくは、少なくとも1回以上の熱間圧延を施して、前記ひずみの絶対値εθ2が総計で0.5〜1.3の範囲内に設定されるようにしている。
(熱処理工程S5/切削加工工程S6)
前述のようにして製出された環状成形体10は、熱処理によって特性が調整されるとともに、切削加工によって最終形状に成形され、ガスタービン用のタービンディスクとされる。
以上のような構成とされた環状成形体10及び環状成形体の製造方法によれば、ビレットを鍛造して鍛造体を作製する鍛造工程において、鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が0.3以上、鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが0.3以上、かつ、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が0.4〜2.5の範囲内となる熱間鍛造を、少なくとも2回以上行うこととした。このように、鍛造工程においてビレットに付与する周方向のひずみの絶対値εθ1及び高さ方向のひずみの絶対値εhを大きく設定することによって、次のリング圧延工程において環状中間体20に付与する周方向のひずみ量εθ2の割合を低減させることができる。また、リング圧延では付与しにくい高さ方向のひずみ量が十分に確保される。これにより、成形される環状成形体10の機械的特性の異方性が抑制されるとともに等方性が高められ、均一性が十分に確保された微細結晶組織が得られるのである。
また、比εh/εθ1は付与ひずみの方向性バランスを示しており、加工前後での素材内の相対位置変化を制御する指標である。引き続くリング圧延工程では製法上、前記εh/εθ1に相当する数値がゼロ或いはゼロに近い数値にならざるを得ないため、鍛造工程で高さ方向へのひずみ付与比率を適切に取ることが異方性の抑制に必須であるが、εh/εθ1が0.4未満ではその効果が不十分である。一方、εh/εθ1が2.5を超える数値では高さ方向への分配が過剰となるとともに、塑性流動が不安定となり、均一性の付与に不可欠な塑性流動の軸対称性が低減する。従って、比εh/εθ1が0.4〜2.5の範囲内に設定されることにより、前述した効果が確実に得られる。
また、リング圧延工程において、環状成形体10の周方向のひずみの絶対値εθ2を0.5以上付与する熱間圧延を行うことで、環状成形体10における前記製品領域の結晶粒度が、ASTM結晶粒度番号で8以上に確実に微細化される。従って、環状成形体10から得られる製品の機械的強度が確実に高められる。
また、環状成形体10の軸線Oを含む断面内の製品領域における結晶粒度差が、ASTM結晶粒度番号差で±2の範囲内とされているので、この環状成形体10は、径方向及び高さ方向における結晶粒度の均一性が十分に確保されている。
また、鍛造工程において、前述のように高いひずみ量を付与することによって、鍛造体の結晶粒度がASTM結晶粒度番号で7以上に微細化できる。従って、次のリング圧延工程において付与するひずみ量を低減しつつも、環状成形体10の組織の微細化が可能となる。
また、環状中間体20における径方向の厚さTと高さHとの比T/Hが0.6〜2.3の範囲内となるように該環状中間体20を成形した後、リング圧延することにより、環状成形体10における周方向の等価位置同士の結晶粒度差をASTM結晶粒度番号差で±1.5の範囲内に抑制することができる。すなわち、この環状中間体20を成形して得られる環状成形体10は、周方向における結晶粒度の均一性が十分に確保される。
詳しくは、リング圧延は局部加工であるものの一般的な部分鍛造とは異なり、加工の連続性を有することから成形後の組織の軸対称性が高く、環状成形体10における周方向の材料特性の偏差が小さくなることが知られている。そこで、本実施形態のように、リング圧延前の環状中間体20において前記比T/Hを前述した範囲内に設定することによって、成形された環状成形体10の形状(真円度)及び組織の軸対称性を一段と高くできるのである。
すなわち、前記比T/Hが0.6〜2.3の範囲内とされていることにより、均一性付与に必須な圧延の安定性がもたらされる。詳しくは、T/Hが0.6未満の領域では、圧延する両ロール(メインロール40及びマンドレルロール50)と素材との接触面積が大きくなり、相対的に抜熱の影響度が増すために、周方向の均一性が得られ難くなる。一方、T/Hが大きくなるほど座屈が発生し易くなる。詳しくは、T/Hが2.3を超える領域では同傾向が強まるために周方向の均一性が得られ難くなる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、環状成形体10及び環状中間体20の形状は、本実施形態に限定されるものではなく、製出するタービンディスク等の形状を考慮して適宜設計変更することが可能である。
また、環状成形体10及び環状中間体20がNi基合金Alloy718で構成されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、その他の材質(例えば、Waspaloy(登録商標)(United Technology Inc.)、Alloy720、Co基合金、Fe基合金等)で構成されたものであってもよい。
また、Ni基合金Alloy718の溶湯を溶製し、鋳造によってビレットを製出するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、粉末成形法によってビレットを製出し、このビレットに鍛造工程及びリング圧延工程を行う構成としてもよい。
また、ビレットを前述の三重溶解により製出する代わりに、二重溶解(VIM+ESR、又はVIM+VAR)により製出してもよい。
また、本実施形態では、円板状の鍛造体の中央部にウォーターカッターによって貫通孔を形成する穿孔工程を有するものとして説明したが、これに限定されることはなく、ウォーターカッター以外の手法で貫通孔を形成してもよい。あるいは、鍛造の時点で貫通孔を形成しておき、穿孔工程自体を省略してもよい。また、鍛造工程の途中段階でウォーターカッター等による穿孔も可能である。
また、図3において、リング圧延工程S4により環状成形体10を成形した後、熱処理工程S5の前に、該環状成形体10に形状付与や形状寸法調整を目的とした部分鍛造等の加工を施してもよい。
また、本実施形態では、環状成形体10を周方向均等に2分割した等価位置(仮想平面VS1、VS2)を用いて、仮想平面VS1における結晶粒度と仮想平面VS2における結晶粒度との差がASTM結晶粒度番号差で±1.5の範囲内とされているとしたが、比較する仮想平面の数は2つに限定されるものではない。すなわち、この環状成形体10は、周方向全周における等価性が確保されていることから、前述した2分割に限らず、周方向均等に3分割以上した等価位置同士の結晶粒度差においても、ASTM結晶粒度番号差で±1.5の範囲内とされている。また、環状成形体10において、等価位置を設定する周方向位置についても限定されるものではない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(試料の作製)
まず、Ni基合金Alloy718の溶湯を溶製した。詳しくは、前述の実施形態で説明したNi基合金Alloy718の成分範囲になるように溶解原料を調製した。そして、この溶湯に対して三重溶解を施した。詳しくは、真空誘導加熱溶解(VIM)、エレクトロスラグ再溶解(ESR)、真空アーク再溶解(VAR)を施して、直径φ254mmの円柱状のビレットを製出した。
次いで、このビレットに対して鍛造工程を施し、円板状の鍛造体を作製した。鍛造加工は、ビレットの温度を1000℃に加熱した熱間鍛造で2回行った。なお、1回目の熱間鍛造は、鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が0.3、鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが0.6、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が2となるように行った。また、2回目の熱間鍛造は、鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が1、鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが0.7、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が0.7となるように行った。
次いで、鍛造体の中央部にウォーターカッターによって貫通孔を形成し、環状中間体20を作製した。なお、環状中間体20は、厚さTと高さHとの比T/H=1.4となるように成形した。
次いで、この環状中間体20に対してリング圧延を行った。リング圧延は、環状中間体20の温度を1000℃に加熱した熱間圧延で2回行った。なお、これら2回の熱間圧延によって、環状成形体10の周方向のひずみの絶対値εθ2が総計で0.7付与された。環状中間体20をリング圧延して得られた環状成形体10は、外径φ1050mm程度、内径φ900mm程度(すなわち厚さT=75mm程度)、高さH=90mm程度に成形された。なお、環状成形体10は複数作製した。
次いで、環状成形体10に熱処理を実施した。詳しくは、これら環状成形体10のうち、直接時効材として、リング圧延後水冷し、718℃/8時間+621℃/8時間+A.C.時効処理のみを施したものを作製した。また、溶体化時効材として、リング圧延後、970℃/1時間+W.Q.溶体化処理或いは980℃/1時間+W.Q.溶体化処理後718℃/8時間+621℃/8時間+A.C.時効処理を施したものを作製した。なお、以下の説明では、前述した溶体化時効材のうち、前者を970℃溶体化時効材、後者を980℃溶体化時効材と呼ぶ。
(高温引張特性確認試験1)
前述のように作製された環状成形体10のうち、直接時効材及び970℃溶体化時効材を用いて、図1の仮想平面VS1、VS2を含む等価位置から周方向、高さ方向、径方向の引張試験片をそれぞれ採取し、650℃高温引張試験をそれぞれ行った。なお、試験は平行部径6.35mmのASTM E8 small size試験片を用いてASTM E21に準拠して実施し、引張強さ、耐力(0.2%耐力)及び絞りについてそれぞれ測定した。また、周方向、高さ方向、径方向の各測定値の偏差を確認するため、周方向の測定値を1(100%)とした場合の高さ方向及び径方向の割合を算出した。結果を表1、表2に示す。なお、前記直接時効材の測定結果については、図8として引張強さ−絞り相関図を、図9として耐力−絞り相関図をそれぞれ示す。
Figure 0005613467
Figure 0005613467
(高温引張特性確認試験2)
作製された環状成形体10のうち、直接時効材、970℃溶体化時効材及び980℃溶体化時効材を用いて、仮想平面VS1、VS2を含まない任意の位置から周方向(3箇所)、高さ方向、径方向の引張試験片をそれぞれ採取した。そして、400℃高温引張試験及び650℃高温引張試験をそれぞれ行った。結果を表3に示す。
Figure 0005613467
(結晶粒度測定)
また、作製された環状成形体10のうち、直接時効材及び970℃溶体化時効材を用いて、仮想平面VS1、VS2を含む断面内の製品領域における中央、及び、外周4箇所の結晶粒度を測定し対比した。結果を表4に示す。
Figure 0005613467
[実施例2]
(試料の作製)
実施例1と同様に、三重溶解によりビレットを製出した後このビレットに鍛造工程を施して、円板状の鍛造体を作製した。
次いで、鍛造体の中央部にウォーターカッターによって貫通孔を形成し、環状中間体20を作製した。なお、環状中間体20は、厚さTと高さHとの比T/H=1.4となるように成形した。
次いで、この環状中間体20に対してリング圧延を行った。リング圧延は、環状中間体20の温度を1000℃に加熱した熱間圧延で1回行った。なお、この熱間圧延によって、環状成形体10の周方向のひずみの絶対値εθ2が0.3付与された。環状中間体20をリング圧延して得られた環状成形体10は、外径φ680mm程度、内径φ420mm程度(すなわち厚さT=130mm程度)、高さH=90mm程度に成形された。次いで、この環状成形体10に実施例1で説明した熱処理を実施して、直接時効材とした。
(結晶粒度測定)
このように作製された環状成形体10(直接時効材)を用いて、仮想平面VS1を含む断面内の製品領域における中央、及び、外周4箇所の結晶粒度を測定した。
[実施例3]
(試料の作製)
実施例1と同様に、三重溶解によりビレットを製出した後このビレットに鍛造工程を施して、円板状の鍛造体を作製した。なお、鍛造加工は、ビレットの温度を1000℃に加熱した熱間鍛造で2回行った。熱間鍛造は、1回目・2回目ともに、鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が0.3、鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが0.6、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が2となるようにそれぞれ行った。
次いで、鍛造体の中央部にウォーターカッターによって貫通孔を形成し、環状中間体20を作製した。なお、環状中間体20は、厚さTと高さHとの比T/H=0.4となるように成形した。
次いで、この環状中間体20に対してリング圧延を行った。リング圧延は、環状中間体20の温度を1000℃に加熱した熱間圧延で2回行った。なお、これら2回の熱間圧延によって、環状成形体10の周方向のひずみの絶対値εθ2が総計で0.5付与された。環状中間体20をリング圧延して得られた環状成形体10は、外径φ620mm程度、内径φ530mm程度(すなわち厚さT=45mm程度)、高さH=180mm程度に成形された。次いで、この環状成形体10に実施例1で説明した熱処理を実施して、970℃溶体化時効材とした。
(結晶粒度測定)
このように作製された環状成形体10(970℃溶体化時効材)を用いて、仮想平面VS1、VS2を含む断面内の製品領域における中央、及び、外周4箇所の結晶粒度を測定した。
[比較例1]
(試料の作製)
また、比較例1として、下記の手順で環状成形体を用意した。
まず、直径φ178mmの円柱状のビレットを製出した。
次いで、このビレットに対して鍛造工程を施し、円板状の鍛造体を作製した。鍛造加工は、ビレットの温度を1000℃に加熱した熱間鍛造で2回行った。なお、1回目の熱間鍛造は、鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が0.6、鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが1.2、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が2となるように行った。また、2回目の熱間鍛造は、鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が0.6、鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが0(すなわち比εh/εθ1も0)となるように行った。
次いで、前記鍛造体に貫通孔を形成して環状中間体とし、この環状中間体に対してリング圧延を行った。リング圧延は、環状中間体の温度を1000℃に加熱した熱間圧延で1回行った。なお、この熱間圧延によって、環状成形体の周方向のひずみの絶対値εθ2が0.3付与された。このようにして得られた環状成形体は、外径φ400mm程度、内径φ270mm程度(すなわち厚さT=65mm程度)、高さH=120mm程度に成形された。なお、環状成形体は複数作製した。
次いで、環状成形体に熱処理を実施した。詳しくは、これら環状成形体に実施例1で説明した熱処理を施して、直接時効材と970℃溶体化時効材とを用意した。
それ以外は、実施例1と同様の条件として試料を作製し、各種測定を行った。詳しくは、直接時効材及び970℃溶体化時効材に対して高温引張特性確認試験1をそれぞれ実施し、直接時効材に対して結晶粒度測定を実施した。
[比較例2]
(試料の作製)
また、比較例2として、比較例1と同様のビレットを製出した後、このビレットに対して鍛造工程を施し、円板状の鍛造体を作製した。鍛造加工は、ビレットの温度を1000℃に加熱した熱間鍛造で1回行った。なお、この熱間鍛造は、鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が1.2、鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが1.2、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が1となるように行った。
次いで、前記鍛造体に貫通孔を形成し得られた環状中間体に対して、リング圧延を行った。リング圧延は、環状中間体の温度を1000℃に加熱した熱間圧延で1回行った。なお、この熱間圧延によって、環状成形体の周方向のひずみの絶対値εθ2が0.4付与された。このようにして得られた環状成形体は、外径φ430mm程度、内径φ320mm程度(すなわち厚さT=55mm程度)、高さH=120mm程度に成形された。
次いで、環状成形体に熱処理を実施して、直接時効材と970℃溶体化時効材とを用意した。
それ以外は、実施例1と同様の条件として試料を作製し、直接時効材及び970℃溶体化時効材に対して高温引張特性確認試験1をそれぞれ実施した。
[比較例3]
(試料の作製)
また、比較例3として、比較例1と同様のビレットを製出した後、このビレットに対して鍛造工程を施し、円板状の鍛造体を作製した。鍛造加工は、ビレットの温度を1000℃に加熱した熱間鍛造で2回行った。なお、1回目の熱間鍛造は、鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が0.5、鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが1、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が2となるように行った。また、2回目の熱間鍛造は、鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が0.7、鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが0.2、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が0.3となるように行った。
それ以外は、比較例2と同様の条件として試料を作製し、直接時効材及び970℃溶体化時効材に対して高温引張特性確認試験1をそれぞれ実施した。
(評価)
表1、図8、図9に示すように、直接時効材を用いた高温引張特性確認試験1の結果、実施例1は、引張強さ、0.2%耐力、絞りのすべてにおいて比較例1〜3よりも優れていることが確認された。すなわち、実施例1は、強度特性の等方性が高められているとともに、均一性が十分に確保された微細結晶組織を有していることがわかった。
詳しくは、実施例1においては、引張強さが1183MPa以上、0.2%耐力が1019MPa以上、絞りが47%以上確保されているとともに、周方向の測定値を基準としたときの高さ方向、径方向の測定値の偏差が、引張強さで1.4%以下、0.2%耐力で1.4%以下、絞りで31.9%以下に抑制された。
一方、比較例1においては、引張強さが1155MPa以上、0.2%耐力が986MPa以上、絞りが33%以上であった。比較例2においては、引張強さが1168MPa以上、0.2%耐力が977MPa以上、絞りが32%以上であった。比較例3においては、引張強さが1160MPa以上、0.2%耐力が1003MPa以上、絞りが33%以上であった。また、比較例1〜3においては、周方向の測定値を基準としたときの高さ方向、径方向の測定値の偏差が、引張強さで1.6%以下、0.2%耐力で5.9%以下、絞りで50.8%以下であった。
また、表2に示すように、970℃溶体化時効材を用いた高温引張特性確認試験1の結果においても、実施例1が比較例1〜3よりも優れており、強度特性の等方性が高められているとともに、均一性が十分に確保された微細結晶組織を有していることがわかった。
また、表3に示すように、高温引張特性確認試験2の結果、実施例1においては、熱処理工程(直接時効材、970℃溶体化時効材、980℃溶体化時効材)、試験温度(400℃、650℃)、測定位置(周方向I・II・III、高さ方向、径方向)に係わらず、性能が安定して確保されることが確認された。
また、表4に示すように、結晶粒度測定の結果、実施例1〜3においては、結晶粒度がASTM結晶粒度番号ですべて7.5以上となり、組織が十分に微細化されていることが確認された。特に、実施例1においては、ASTM結晶粒度番号がすべて9.5以上であった。一方、比較例1においては、結晶粒度がASTM結晶粒度番号で4.5以上であった。
また、実施例1〜3においては、同一の断面(VS1又はVS2)内における最大結晶粒度差が、ASTM結晶粒度番号差で3以下(±1.5の範囲内)に抑制された。一方、比較例1においては、同一面内の最大結晶粒度差がASTM結晶粒度番号差で6以下(±3の範囲内)であった。
また、実施例1〜3においては、等価位置同士の最大結晶粒度差が、ASTM結晶粒度番号差で3.5以下(±1.8の範囲内)に抑制された。特に、環状中間体20の前記T/Hを0.6〜2.3の範囲内に設定した実施例1においては、等価位置同士の最大結晶粒度差が、ASTM結晶粒度番号差で2以下(±1の範囲内)に抑制された。一方、比較例1においては、等価位置同士の最大結晶粒度差が、ASTM結晶粒度番号差で4(±2)にまで及んだ。
10 環状成形体
20 環状中間体
H 環状中間体の軸線方向に沿う高さ
O 軸線
S2 鍛造工程
S4 リング圧延工程
T 環状中間体における径方向の厚さ
VS1 仮想平面(等価位置)
VS2 仮想平面(等価位置)
εh 鍛造工程において高さ方向に付与するひずみ量
εθ1 鍛造工程において周方向に付与するひずみ量
εθ2 リング圧延工程において周方向に付与するひずみ量

Claims (5)

  1. Ni;50.00〜55.00質量%、Cr;17.0〜21.0質量%、Nb;4.75〜5.60質量%、Mo;2.8〜3.3質量%、Ti;0.65〜1.15質量%、Al;0.20〜0.80質量%、C;0.01〜0.08質量%、残部がFe及び不可避不純物とされた合金素体を鍛造して円板状の鍛造体を作製する鍛造工程と、前記鍛造体に貫通孔を形成してなる環状中間体をリング圧延して環状成形体を作製するリング圧延工程と、を備える環状成形体の製造方法であって、
    前記鍛造工程では、前記鍛造体の周方向のひずみの絶対値εθ1が0.3〜1、該鍛造体の高さ方向のひずみの絶対値εhが0.6〜0.7、これらひずみの絶対値同士の比εh/εθ1が0.7〜2の範囲内となる熱間鍛造を、2回行うことを特徴とする環状成形体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の環状成形体の製造方法であって、
    前記リング圧延工程では、前記環状成形体における周方向のひずみの絶対値εθ2を0.5以上付与する熱間圧延を行い、前記環状成形体における製品領域の結晶粒度をASTM結晶粒度番号で8以上とすることを特徴とする環状成形体の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の環状成形体の製造方法であって、
    前記環状成形体の軸線を含む断面内における該環状成形体の製品領域の結晶粒度差が、ASTM結晶粒度番号差で±2の範囲内であることを特徴とする環状成形体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の環状成形体の製造方法であって、
    前記鍛造工程では、前記鍛造体の結晶粒度をASTM結晶粒度番号で7以上とすることを特徴とする環状成形体の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の環状成形体の製造方法であって、
    前記環状中間体における径方向の厚さTと該環状中間体の軸線方向に沿う高さHとの比T/Hが0.6〜2.3の範囲内となるように該環状中間体を成形した後、リング圧延して、前記環状成形体に周方向均等に設定した複数の等価位置同士の結晶粒度差を、ASTM結晶粒度番号差で±1.5の範囲内とすることを特徴とする環状成形体の製造方法。
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