JP5613468B2 - 環状成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、Ni;50.00〜55.00質量%、Cr;17.0〜21.0質量%、Nb;4.75〜5.60質量%、Mo;2.8〜3.3質量%、Ti;0.65〜1.15質量%、Al;0.20〜0.80質量%、C;0.01〜0.08質量%、残部がFe及び不可避不純物とされた合金素体を鍛造して円板状の鍛造体を作製する鍛造工程と、前記鍛造体に貫通孔を形成してなる環状中間体をリング圧延して環状成形体を作製するリング圧延工程と、を備え、前記リング圧延工程では、前記環状中間体の表面から深さ4mm〜23mmの範囲内に設定される表面近傍に塑性ひずみを0.03〜0.08の範囲内で付与する圧延を少なくとも15回以上行って前記環状成形体とするとともに、前記表面近傍の内側に位置する製品領域の結晶粒度をASTM結晶粒度番号で8以上とすることを特徴とする。
なお、ASTM結晶粒度番号とは、American Society of Testing and Materials(米国材料試験協会)のASTM規格E122に規定する基準によって決定されるものである。
本実施形態に係る環状成形体10は、航空機用エンジンのタービンディスクTDを成形する加工素材として使用されるものである。
また、環状成形体10は、耐熱性に優れたNi基超合金で構成されており、本実施形態では、Ni基合金Alloy718で構成されている。
まず、Ni基合金Alloy718の溶湯を溶製する。ここで、前述したNi基合金Alloy718の成分範囲になるように、溶解原料を調製し、真空誘導加熱溶解(VIM:Vacuum Induction Melting)を行って、インゴットを製出する。次に、このインゴットをエレクトロスラグ再溶解(ESR:Electro Slag Remelting)して、再度インゴットを製出する。さらに、このインゴットを、真空アーク再溶解(VAR:Vacuum Arc Remelting)した後、熱間鍛造を行い円柱状のビレット(合金素体)を製出する。
次に、ビレットに対して、該ビレットの軸線方向に押圧するように鍛造加工を行い、円板状の鍛造体を作製する。鍛造加工は、例えば、ビレットの温度を950℃〜1075℃に加熱して、熱間鍛造により行う。この鍛造により、鍛造体の高さは、例えば60mm〜500mm程度に調整される。
次いで、得られた鍛造体の中央部に、ウォーターカッターによって断面円形の貫通孔を形成する。さらに、貫通孔形成後に必要に応じて中間リング圧延を行う。この穿孔加工+中間リング圧延工程S3によって、環状中間体20が製出されることになる。
本実施形態では、環状中間体20は、図4に示すように、周方向に直交する断面が概略多角形状をなしており、軸線Oに対して略直交する方向に延びる上面及び下面を有する基体部21と、この基体部21から径方向内方に向けて突出した内側凸部22と、基体部21から径方向外方に向けて突出した外側凸部23と、を備えている。
次に、この環状中間体20に対してリング圧延を行う。なお、このリング圧延は熱間圧延で行われ、その温度は、例えば900℃〜1050℃の範囲内とされている。
ここで、リング圧延装置30は、図5に示すように、環状中間体20の外周側に配設されるメインロール40と、環状中間体20の内周側に配設されるマンドレルロール50と、環状中間体20の軸線O方向端面(本実施形態では、基体部21の上面および下面)に当接される一対のアキシャルロール31、32と、を備えている。
このようにリング圧延を行うことによって、環状中間体20は周方向に延びるように塑性変形していくとともに、その内径及び外径が拡大されて、図7に示す環状成形体10が作製される。
なお、前述したリング圧延は、実質的に金属組織を決定づける塑性加工の最終工程(最終圧延工程)に位置付けされる。
前述のようにして製出された環状成形体10は、熱処理によって特性が調整されるとともに、切削加工によって最終形状に成形され、ガスタービン用のタービンディスクTDとされる。
例えば、環状成形体10及び環状中間体20の形状は、本実施形態に限定されるものではなく、製出するタービンディスクTD等の形状を考慮して適宜設計変更することが可能である。
また、環状成形体10及び環状中間体20がNi基合金Alloy718で構成されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、その他の材質(例えば、Waspaloy(登録商標)(United Technology Inc.)、Alloy720、Co基合金、Fe基合金等)で構成されたものであってもよい。
また、ビレットを前述の三重溶解により製出する代わりに、二重溶解(VIM+ESR、又はVIM+VAR)により製出してもよい。
(試料の作製)
まず、Ni基合金Alloy718の溶湯を溶製した。詳しくは、前述の実施形態で説明したNi基合金Alloy718の成分範囲になるように溶解原料を調製した。そして、この溶湯に対して三重溶解を施した。詳しくは、真空誘導加熱溶解(VIM)、エレクトロスラグ再溶解(ESR)、真空アーク再溶解(VAR)を施して、直径φ254mmの円柱状のビレットを製出した。
前述のように作製した環状成形体10を用いて、仮想平面VS1〜VS4の各製品領域P内における外郭部分の結晶粒度を測定した。製品領域P内の外郭部分の測定箇所としては、表面近傍Aの深さt1(鍛造体の外表面)から製品領域P側へ向かって深さ5mmに位置する部位と、前記深さt1から製品領域P側へ向かって深さ20mmに位置する部位とを設定した。なお、各仮想平面の製品領域Pの外郭部分において、前記深さ5mm、20mmに位置する部位を19点ずつ選定して、それぞれ測定を行った。また、近接位置について結晶粒度差を算出した。詳しくは、この外郭部分において、前記深さ5mmに位置する部位と、該部位に対応する前記深さ20mmに位置する部位との結晶粒度差の最大値を求めた(絶対値)。結果を表1に示す。
(試料の作製)
実施例1と同様に、三重溶解によりビレットを製出した後このビレットに鍛造工程を施して、円板状の鍛造体を作製した。
次いで、鍛造体の中央部にウォーターカッターによって貫通孔を形成し、環状中間体20を作製した。なお、環状中間体20は、前記厚さT=115mm、高さH=90mmとなるように成形した。
次いで、この環状成形体10に実施例1で説明した熱処理を実施して、直接時効材とした。
それ以外は、実施例1と同様の条件として試料を作製し、前述の結晶粒度測定を実施した。
(試料の作製)
また、比較例1として、実施例1と同様のビレットを製出した後、このビレットに対して鍛造工程を施し、円板状の鍛造体を作製した。
次いで、前記鍛造体に貫通孔を形成して環状中間体(厚さT=90mm、高さH=90mm)とし、この環状中間体に対して、リング圧延を行った。リング圧延は、環状中間体の温度を1000℃に加熱した熱間圧延で行い、前記加工領域Rを1回通過する単位当たりの圧延で、該環状中間体の表面近傍に塑性ひずみεが0.01〜0.02の範囲内で付与されるように、計15回圧延した。なお、この15回の熱間圧延によって、表面近傍には、塑性ひずみεが総計で0.3付与された。
次いで、この環状成形体に実施例1で説明した熱処理を実施して、直接時効材とした。
それ以外は、実施例1と同様の条件として試料を作製し、前述の結晶粒度測定を実施した。
(試料の作製)
また、比較例2として、実施例1と同様のビレットを製出した後、このビレットに対して鍛造工程を施し、円板状の鍛造体を作製した。
次いで、前記鍛造体に貫通孔を形成して環状中間体(厚さT=110mm、高さH=90mm)とし、この環状中間体に対して、リング圧延を行った。リング圧延は、環状中間体の温度を1000℃に加熱した熱間圧延で行い、前記加工領域Rを1回通過する単位当たりの圧延で、該環状中間体の表面近傍に塑性ひずみεが0.03〜0.06の範囲内で付与されるように、計12回圧延した。なお、この12回の熱間圧延によって、表面近傍には、塑性ひずみεが総計で0.6付与された。
次いで、この環状成形体に実施例1で説明した熱処理を実施して、直接時効材とした。
それ以外は、実施例1と同様の条件として試料を作製し、前述の結晶粒度測定を実施した。
表1に示すように、実施例1、2においては、製品領域Pにおける結晶粒度がASTM結晶粒度番号ですべて8以上となり、組織が十分に微細化されていることが確認された。特に、実施例1においては、ASTM結晶粒度番号がすべて9.5以上であった。一方、比較例1においては、結晶粒度がASTM結晶粒度番号で5.5以上、比較例2においては、結晶粒度がASTM結晶粒度番号で6以上であった。
20 環状中間体
A 環状中間体(環状成形体)の表面近傍
P 製品領域
S2 鍛造工程
S4 リング圧延工程
ε リング圧延工程において付与される塑性ひずみ量
Claims (2)
- Ni;50.00〜55.00質量%、Cr;17.0〜21.0質量%、Nb;4.75〜5.60質量%、Mo;2.8〜3.3質量%、Ti;0.65〜1.15質量%、Al;0.20〜0.80質量%、C;0.01〜0.08質量%、残部がFe及び不可避不純物とされた合金素体を鍛造して円板状の鍛造体を作製する鍛造工程と、
前記鍛造体に貫通孔を形成してなる環状中間体をリング圧延して環状成形体を作製するリング圧延工程と、を備え、
前記リング圧延工程では、前記環状中間体の表面から深さ4mm〜23mmの範囲内に設定される表面近傍に塑性ひずみを0.03〜0.08の範囲内で付与する圧延を少なくとも15回以上行って前記環状成形体とするとともに、前記表面近傍の内側に位置する製品領域の結晶粒度をASTM結晶粒度番号で8以上とすることを特徴とする環状成形体の製造方法。 - 請求項1に記載の環状成形体の製造方法であって、
前記リング圧延工程では、前記環状中間体の前記表面近傍に付与する塑性ひずみの総計を0.8以上に設定して、前記製品領域のうち前記表面近傍の内側に隣接するように位置する外郭部分における結晶粒度差を、ASTM結晶粒度番号差で±2.5の範囲内とすることを特徴とする環状成形体の製造方法。
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