JP5612373B2 - 光硬化型樹脂組成物、パターン形成された基板の製造方法及び電子部品 - Google Patents

光硬化型樹脂組成物、パターン形成された基板の製造方法及び電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、光硬化型樹脂組成物、パターン形成された基板の製造方法及び電子部品に関する。
樹脂の光硬化技術は、低温・短時間の硬化が可能であるのみにならず、光パターニングによる微細加工が可能である等、従来の熱硬化技術にはない長所を有しており、特に電子材料分野で多用されている。樹脂の光硬化技術は、ラジカル型、カチオン型、アニオン型の3種類に大別される。
従来はラジカル型が主流だが、ラジカル型で用いられる(メタ)アクリル酸系ポリマーは、硬化収縮が大きいという問題に加え、耐熱性や接着性に劣る等の問題点がある。カチオン型においては、光酸発生剤が用いられ、数々の化合物が開発されているが、いずれも光により強いプロトン酸を発生するため金属類の腐食が問題となり、電子材料分野での実用化は困難である。
アニオン型では光塩基発生剤が用いられる。例えば、光によりアミンを発生する化合物として、カルバミン酸誘導体等が知られている(特許文献1参照)。また、特許文献2において、アミノトロポンに紫外線を照射し塩基性を発現することにより、光塩基発生剤とする例が開示されている。さらに、特許文献3や特許文献4では、光塩基発生剤を用いたレジスト材料や光硬化組成物が開示されている。
特開平10−77264号公報 国際公開第2008/072651号 特開平9−127696号公報 特開平7−140663号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2の技術では、副生成物の発生により塩基性の発現が妨げられるといった問題や、光感度が低いため照射エネルギー量が多く必要となるといった問題がある。また、特許文献3や特許文献4の技術でも、塩基が発生する際に副生成物が発生するといった問題がある。このような副生成物の発生は、レジスト材料等として用いる場合には特に好ましくない。
レジスト材料として使用する場合、微細なパターン形状であっても高精度のパターニングを実現するため、露光の際には、露光部分では優れた硬化速度性を発揮するとともに、未露光部分では優れた保存安定性により未硬化のまま存在することが望まれる。かかる観点から、硬化速度と保存安定性に優れる材料であることが望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、光硬化に好適な、優れた硬化速度と保存安定性を有する光硬化型樹脂組成物を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アニオン硬化型樹脂、光塩基発生剤、を用い、かつpKbが3.8を超える値を持つ塩基性物質を含有する光硬化型樹脂組成物が有用であることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下のとおりである。
〔1〕
アニオン硬化型樹脂(a)、
光塩基発生剤(b)、及び
pKbが8.6〜12の範囲であり、単官能塩基性物質である塩基性物質(c)
を含有する、
光硬化型樹脂組成物。
〔2〕
前記塩基性物質(c)が、芳香族アミンである、前項〔1〕に記載の光硬化型樹脂組成物。
〔3〕
更に、酸性物質(d)を含む、前項〔1〕又は〔2〕に記載の光硬化型樹脂組成物。
〔4〕
更に、硬化剤(e)を含む、前項〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の光硬化型樹脂組成物。
〔5〕
前記硬化剤(e)が、メルカプトカルボン酸エステル化物である、前項〔4〕に記載の光硬化型樹脂組成物。
〔6〕
前記光塩基発生剤(b)が、2−アミノトロポン及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、前項〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の光硬化型樹脂組成物。
〔8〕
以下の(1)〜(3)工程を有する、パターン形成された基板の製造方法;
(1)アニオン硬化型樹脂(a)、光塩基発生剤(b)、及びpKbが8.6〜12の範囲であり、単官能塩基性物質である塩基性物質(c)を含有する、光硬化型樹脂組成物を基板に塗布して有機膜を形成する工程、
(2)光照射により、前記有機膜中に塩基を発生させ、前記有機膜を硬化させる工程、
(3)前記有機膜の硬化していない部分を、アルカリ現像により除去することで、基板上にパターンを形成する工程。
〔9〕
前項〔7〕に記載の製造方法により得られる基板を備える電子部品。
本発明によれば、光硬化に好適な、優れた硬化速度と保存安定性を有する光硬化型樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変更して実施できる。
本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、アニオン硬化型樹脂(a)、光塩基発生剤(b)、及びpKbが3.8を超える値を持つ塩基性物質(c)を含有する。かかる成分を含有することで、保存安定性及び硬化速度性に優れた光硬化型樹脂組成物とすることができる。特に、後述する基板のパターン形成において、露光部分では優れた硬化速度性を発揮するとともに、未露光部分では優れた保存安定性により未硬化のまま存在することができるので、高精度のパターニングを容易に実現することができる。
アニオン硬化型樹脂(a)としては、その種類に特に制限はないが、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂、あるいはエポキシ樹脂とモノカルボン酸との付加生成物に酸無水物を反応させたポリカルボン酸樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては公知のものを用いることができ、例えば、2価フェノール類のグリシジルエーテル、3〜6価又はそれ以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール類のポリグリシジルエーテル、脂肪族2価アルコールのジグリシジルエーテル、3〜6価又はそれ以上のヒドロキシ基を有する脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテルのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂肪族又は脂環式骨格を有するポリカルボン酸のグリシジルエステル、活性水素原子を有する芳香族アミン類のグリシジルアミン、活性水素原子を有する脂環式アミン類のグリシジルアミン、活性水素原子を有する複素環式アミン類のグリシジルアミン、鎖状脂肪族エポキサイド、脂環式エポキサイドが挙げられる。
2価フェノール類のグリシジルエーテルとしては、例えば、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル、カテキンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、オクタクロロ−4,4'−ジヒドロキシフェニルジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、9,9'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルとの反応から得られるジグリシジルエーテルが挙げられる。
3〜6価又はそれ以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール類のポリグリシジルエーテルとしては、例えば、ピロガロールトリグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフチルクレゾールトリグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ジナフチルトリグリシジルエーテル、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、p−グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールAグリシジルエーテル、トリスメチル−tert−ブチル−ブチルヒドロキシメタントリグリシジルエーテル、4,4'−オキシビス(1,4−フェニルエチル)テトラクレゾールグリシジルエーテル、4,4'−オキシビス(1,4−フェニルエチル)フェニルグリシジルエーテル、ビス(ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、フェノール又はクレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、リモネンフェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド又はホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル、レゾルシンとアセトンとの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテルが挙げられる。
脂肪族2価アルコールのジグリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキシド(エチレンオキシド又はプロピレンオキシド)付加物のジグリシジルエーテルが挙げられる。
3〜6価又はそれ以上のヒドロキシ基を有する脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等の芳香族ポリカルボン酸のグリシジルエステルが挙げられる。
脂肪族又は脂環式骨格を有するポリカルボン酸のグリシジルエステルとしては、例えば、芳香族ポリカルボン酸のグリシジルエステルの芳香核水素添加物、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルピメレート、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体、トリカルバリル酸トリグリシジルエステルが挙げられる。
活性水素原子を有する芳香族アミン類のグリシジルアミンとしては、例えば、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N',N'−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、N,N,N',N'−テトラグリシジルジエチルジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジルアミノフェノールが挙げられる。
活性水素原子を有する脂環式アミン類のグリシジルアミンとしては、例えば、N,N,N',N'−テトラグリシジルキシリレンジアミンの水素添加物が挙げられる。
活性水素原子を有する複素環式アミン類のグリシジルアミンとしては、例えば、トリスグリシジルメラミンが挙げられる。
鎖状脂肪族エポキサイドとしては、例えば、エポキシ化ブタジエン、エポキシ化大豆油が挙げられる。
脂環式エポキサイドとしては、例えば、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシ6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミンが挙げられる。
エポキシ樹脂とモノカルボン酸との付加生成物に酸無水物を反応させたポリカルボン酸樹脂としては特に限定されず、例えば、以下の第一及び第二の反応を行うことにより得ることができる。ポリカルボン酸樹脂は、第一の反応において、エポキシ樹脂のエポキシ当量の10〜70モル%にあたる量のモノカルボン酸のカルボキシル基とエポキシ基を付加反応させることによりヒドロキシル基を形成させ、第二の反応において、生成又は導入されたヒドロキシ基と酸無水物を半エステル化することにより得られる。ここで用いられるモノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、(メタ)アクリル酸、桂皮酸、シアノ桂皮酸、モノメチロールプロパン、ジメチロールプロピオン酸、モノメチロールブタン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。これらのモノカルボン酸は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第一の反応に用いられる溶媒としては、ヒドロキシル基を有さない溶媒、具体的にはアセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレンジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油溶剤等を用いることができる。
反応時には反応を促進するために触媒を用いることが好ましい。この反応で使用する触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。触媒の使用量は特に限定されないが、反応原料混合物に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。その際の反応温度は特に限定されないが、好ましくは60〜150℃であり、反応時間は特に限定されないが、好ましくは5〜60時間である。
第二の反応に用いられる酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態に係るアニオン硬化型樹脂(a)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも、硬化物の性能や入手容易性の観点から、アニオン硬化型樹脂(a)は、ポリカルボン酸樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂又はグリシジルエステル型エポキシ樹脂であることが好ましく、ポリカルボン酸樹脂又はグリシジルエーテル型エポキシ樹脂であることがより好ましい。
ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を閉環してポリイミドを形成するものやポリイソイミドをポリイミドに変換するものも、アニオン硬化型樹脂(a)として用いることができる。また、ノボラック型フェノール樹脂もアニオン硬化型樹脂(a)として用いることができる。
光塩基発生剤(b)は、光照射により塩基性物質を発生する性質を有するものであればよく、その種類は特に限定されないが、硬化性能の観点から、2−アミノトロポン及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。2−アミノトロポン及びその誘導体とは、下記式(1)又は式(2)で表される化合物の少なくともいずれかを含有する化合物をいう。
Figure 0005612373
(式中、R1とR2は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、R3乃至R7は、互いに独立して、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ホルミル基、アシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルキル基、メルカプト基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。Zは、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
式(1)において、R1とR2は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
式(1)において、R3乃至R7は、互いに独立して、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ホルミル基、アシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルキル基、メルカプト基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボキシル基、ヒドロキシエトキシカルボニル基等が挙げられ、メトキシカルボニル基が好ましい。
アシル基としては、アセチル基が好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、プロペニル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ブテニル基、イソブテニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、メチル基とイソプロピル基が好ましい。
アリール基としてはフェニル基が好ましい。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、メトキシ基が好ましい。
ハロゲン原子としては、塩素原子と臭素原子が好ましい。
アミノ基としては、無置換のアミノ基の他、モノ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基が挙げられ、メチルアミノ基が好ましい。
ジ置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基等が挙げられ、ジメチルアミノ基が好ましい。
1乃至R7は、互いに結合し、飽和又は不飽和環(例えば、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等のアゾール環等)を形成していてもよい。また、R1乃至R7は前記式(1)及び/又は(2)の分子と結合していてもよい。
Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。保存安定性の観点から、Zは酸素原子が好ましい。
Figure 0005612373
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、R3乃至R8は、互いに独立して、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ホルミル基、アシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルキル基、メルカプト基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。)
式(2)において、R1は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
式(2)において、R3乃至R8は、互いに独立して、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ホルミル基、アシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルキル基、メルカプト基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボキシル基、ヒドロキシエトキシカルボニル基等が挙げられるが、メトキシカルボニル基が好ましい。
アシル基としては、アセチル基が好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、プロペニル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ブテニル基、イソブテニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基等が挙げられるが、メチル基とイソプロピル基が好ましい。
アリール基としてはフェニル基が好ましい。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられるが、メトキシ基が好ましい。
ハロゲン原子としては、塩素原子と臭素原子が好ましい。
アミノ基としては、無置換のアミノ基の他、モノ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基が挙げられ、メチルアミノ基が好ましい。
ジ置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基等が挙げられ、ジメチルアミノ基が好ましい。
1乃至R8は、互いに結合し、飽和又は不飽和環(例えば、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等のアゾール環等)を形成していてもよい。また、R1乃至R8は式(1)及び/又は式(2)の分子と結合していてもよい。
なお、式(1)において、例えば、R2が水素原子であり、R8が−OHや−SH等である場合には、前記式(1)と式(2)の構造は互変異性の関係となるので(下記式(3)参照)、両者は等価である。
Figure 0005612373
2−アミノトロポン誘導体は、7員環の特徴である光分子内環化反応により塩基性を発現する。すなわち、下記式(4)、式(5)で表されるように、光分子環化反応により7員環全体に及んでいた共役系を切断し、窒素原子上の電子密度を増大させることにより塩基性を発現させるものである(ただし、本実施形態の作用はこれに限定されない)。
Figure 0005612373
Figure 0005612373
ここに示した反応は、7員環の光分子内環化反応の一例であり(O,L,Chapman, Advances in Photochemistry, Vol.1, p.323(1963))、置換基の種類を問わず様々な分子おいて同様な反応を進行させることができる。
光塩基発生剤(b)の含有量は特に限定されないが、アニオン硬化型樹脂(a)100質量部に対する光塩基発生剤(b)の含有量の下限値は、十分実用的な硬化速度が得られる観点から、好ましくは0.001質量部以上であり、より好ましくは0.005〜80質量部であり、更に好ましくは0.01質量部以上である。アニオン硬化型樹脂(a)100質量部に対する光塩基発生剤(b)の含有量の上限値は、硬化物の物性の観点から、好ましくは100質量部以下であり、より好ましくは80質量部以下であり、更に好ましくは50質量部以下である。
本実施形態の光硬化型樹脂組成物に用いられる塩基性物質(c)とは、上記した光塩基発生剤(b)と異なる塩基性物質であり、そのpKbが3.8を超えるものである。pKbが3.8以下であると塩基性物質の塩基性が強すぎ、光硬化型樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましくない。pKbは、保存安定性の観点から、好ましくは5.5〜14の範囲であり、より好ましくは8.6〜12の範囲である。
ここで、pKbとは、塩基解離定数のことであり、下記の方法によって測定することができる。塩基解離定数は25℃の水溶液中での測定値である。具体的には、A. E. Martell, R. M. Smith, "Critical Stability Constants", Vol.1〜3, Plenum Press (1974, 1975, 9177)に記載の方法でpKaを求めた上、pKb=14.0−pKaの式から求めることができる。
塩基性物質の存在により、光硬化型樹脂組成物に存在する酸性物質による硬化阻害及び保存安定性の低下も軽減することができる。すなわち、後述する酸性物質(d)を含有する場合であっても、酸性物質(d)による硬化阻害を抑制することができる。その結果、光硬化型樹脂組成物のパターニングに有利な条件である、光照射の有無による硬化速度の差が大きくなり、高いパターン精度とすることができる。
光硬化型樹脂組成物中の塩基性の序列は、光照射前の光塩基発生剤(b)<塩基性物質(c)となることが好ましい。後述する酸性物質(d)を含有する場合、酸性物質(d)は塩基と中和された状態で系中に存在し、光塩基発生剤による硬化阻害は低減される。特に、光塩基発生剤(b)が2−アミノトロポンやその誘導体である場合、かかる効果はより顕著となる。
アニオン硬化型樹脂(a)がエポキシ樹脂であり、後述する酸性物質(d)を更に添加する場合、塩基性物質(c)の塩基性(pKb)は8.6〜12であることが好ましい。上記範囲の塩基性とすることにより、酸性物質(d)と中和した塩基成分の一部が遊離することでフリーな状態となり、エポキシ樹脂に対する硬化剤として必要以上に働いてしまうことを一層効果的に防止することができる。特に、酸性物質(d)が弱酸性である場合、かかる効果はより顕著となる。
塩基性物質(c)の具体例としては、o−,m−,p−ブロモアニリン、o−,m−,p−アニシジン、o−,m−,p−トルイジン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N'−ジメチルアニリン、o−,m−,p−ニトロアニリン、N−メチルピロール、p,p'−ジアミノベンゾフェノン、p,p'−ジメチルアミノベンゾフェノンやp,p'−テトラメチルジアミノベンゾフェノン等の芳香族アミン類、ビリジン類、ベンジルアミン類あるいはこれらの金属錯体等が挙げられる。これらの中で、好ましくはアニリン、N−メチルアニリン、N,N'−ジメチルアニリン等のアニリン類である。
酸性物質との架橋性に起因するアルカリ現像性の観点から、塩基性物質(c)は単官能塩基性物質であることが好ましい。単官能塩基性物質の具体例としては、例えば、o−,m−,p−ブロモアニリン、o−,m−,p−アニシジン、o−,m−,p−トルイジン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N'−ジメチルアニリン、o−,m−,p−ニトロアニリン、N−メチルピロール等が挙げられる。
塩基性物質(c)の添加量としては特に限定されないが、光硬化型樹脂組成物に含まれるカルボキシル基のモル数の1/10以上に添加されることが好ましく、より好ましくはカルボキシル基のモル数に対し1〜3倍量の範囲であり、更に好ましくは1〜2倍量の範囲である。
本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、酸性物質(d)(上記(a)成分に該当するものを除く)を更に含むことが好ましい。酸性物質(d)を添加することにより、アニオン硬化型樹脂の溶解性を向上させることができる。これらの酸性物質(d)は予め任意に添加された酸でもよく、組成物中で何らかの反応が進行することにより二次的に発生する酸であってもよい。
酸性物質(d)としては特に限定されず、例えば、ノボラック樹脂やレゾール樹脂等のフェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、あるいは、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、ソルビン酸、ケイ皮酸等の予めカルボキシ基を含有する不飽和単量体を含む単量体を共重合することによって得られるアイオノマー等が挙げられる。これらの中で好ましいのはノボラック樹脂である。
酸性物質(d)の添加量は特に限定されないが、光硬化型樹脂組成物のうち、光塩基発生剤(b)と有機溶媒を除いたものに対して、3〜70質量部の範囲であることが好ましい。アルカリ現像性の観点から3質量部以上であることが好ましく、得られるパターンの電気的特性の観点から70質量部以下であることが好ましい。
また、必要に応じて、硬化剤(e)を更に配合してもよい。配合する硬化剤(e)としては特に限定されないが、効果性能の観点から、ポリチオールが好ましい。ポリチオールとしては特に限定されず、公知のものを用いることもでき、例えば、炭素数1〜20であり、官能基数2〜6又はそれ以上のアルキルチオール化合物が挙げられる。かかるアルキルチオール化合物としては、例えば、1,4−ブタンジチオール、1,8−オクタンジチオールが挙げられる。それら以外のチオール基を有する化合物としては、例えば、ポリオキサイドと硫化水素の反応によって得られるチオールやメルカプトカルボン酸エステル等が挙げられる。
本実施形態の硬化剤としては、硬化物の性能や入手容易性の観点から、メルカプトカルボン酸エステル化物が好ましく、メルカプトカルボン酸とポリオールとのエステル化物がより好ましい。
メルカプトカルボン酸とポリオールとのエステル化物としては、例えば、炭素数2〜20であり官能基数2〜3又はそれ以上のメルカプトカルボン酸(例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトオクタン酸、メルカプトステアリン酸等)と炭素数2〜30で官能基数2〜6のポリオールとのエステル化物が挙げられる。
硬化剤(e)の添加量は特に限定されないが、光硬化型樹脂組成物のうち光塩基発生剤(b)と有機溶媒を除いたものに対し、3〜60質量部の範囲であることが好ましく、5〜50質量部あることがより好ましく、10〜40質量部であることがさらに好ましい。かかる範囲とすることにより、硬化性能を高くすることができる。
また、本実施形態の光硬化型樹脂組成物としては上述した(a)〜(e)成分以外に、必要に応じて、無機充填剤、着色剤、重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、光ラジカル開始剤等を、1種単独で又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母等の公知のものが挙げられ、本実施形態の光硬化型樹脂組成物の硬化体と基板との密着性、この硬化体の硬度等の各種物性を向上させる目的で用いられる。
着色剤としては、例えば、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等が挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェチアジン等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、アスベスト、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン類等が挙げられる。
レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類等が挙げられる。
密着性付与剤としては、例えば、変性ポリアミドとアクリル酸エステル等が挙げられる。
光ラジカル開始剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、「ダロキュア1173」、「イルガキュア784」、「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「イルガキュア907」(いずれもチバスペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
また、エポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂の硬化促進剤として、ヒドロキシ基を持つ化合物を含有してもかまわない。
本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、水又は有機溶媒に溶解させて光硬化型樹脂組成物溶液とすることができる。有機溶媒としては特に限定されず、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン等のピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の鎖状又は環状飽和炭化水素類;その他の有機極性溶媒類が挙げられる。さらには、有機溶媒としてベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及びその他の有機非極性溶媒類が挙げられる。これらの水又は有機溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記有機溶媒の添加量としては特に限定されず、例えば、基板上に本実施形態の光硬化型樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する際に、均一に塗布されるように適宜選択することができる。好ましくは光硬化型樹脂組成物に対して0.1〜200質量部の範囲であり、より好ましくは1〜150質量部の範囲であり、更に好ましくは10〜100質量部の範囲である。添加量をかかる範囲とすることにより、パターニングに適した良い塗膜を形成することができる。
本実施形態の光硬化型樹脂組成物を用いて基板上にパターン形成することができる。本実施形態のパターン形成された基板の製造方法は、以下の(1)〜(3)工程を有する;(1)アニオン硬化型樹脂(a)、光塩基発生剤(b)、及びpKbが3.8を超える値を持つ塩基性物質(c)を含有する、光硬化型樹脂組成物を基板に塗布して有機膜を形成する工程、
(2)光照射により、有機膜中に塩基を発生させ、有機膜を不溶化する工程、
(3)有機膜の不溶化していない部分を、アルカリ現像により除去することで、基板上にパターンを形成する工程。
まず、光硬化型樹脂組成物を基板に塗布して有機膜を形成する。光硬化型樹脂組成物は、上記した各成分を適宜に配合させることができる。光硬化型樹脂組成物は、上記した各種溶媒等によって希釈したものであってもよい。基板の材質としては特に限定されず、本実施形態の光硬化型樹脂組成物を塗布可能である材質であればよく、例えば、ガラス布イミド樹脂、ガラス布エポキシ樹脂、ポリイミドフィルム、シリコーンウェハー等が挙げられる。これらの中でも、ガラス布エポキシ樹脂、ポリイミドフィルム、シリコーンウェハー、ガラス等が好ましい。
基板上に本実施形態の光硬化型樹脂組成物を塗布する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スピンコート、スクリーン印刷、スプレー法、カーテンコート法、ロールコート法等の方法が挙げられる。また、必要に応じて、加熱等の操作を行ってもよい。
続いて、光照射により有機膜中に塩基を発生させ、有機膜を硬化させる。本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、光照射のみを施されることにより、光照射と加熱を同時に施されることにより、あるいは、光照射の後に加熱を施されることにより、塩基が発生し、これにより硬化する。この際、光照射された箇所のみが選択的に硬化(不溶化)するので、所望のパターン形状に応じて光照射することが好ましい。本実施形態では、パターン露光として通常用いられる技術を適宜採用することができる。
使用する光の波長域は特に限定されないが、硬化性能の観点から、150〜750nmの波長域の光を用いることが好ましい。光源については特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ等を用いることができる。
光照射の照射量は、光硬化型樹脂組成物を硬化できる程度であればよく、特に限定されないが、0.01〜100J/cm2の照射量で光照射を行うことが好ましい。硬化性能の観点から、光照射は200〜400nmの波長域の照射光を用いて、0.05〜20J/cm2の照射量で行われることがより好ましい。
光照射を行う雰囲気は特に限定されず、空気中又は不活性ガス中であってもよく、硬化反応を制御する観点から、好ましくは不活性ガス雰囲気下であり、より好ましくは窒素ガス雰囲気下である。
また、加熱を行う場合の加熱温度は、アニオン重合性樹脂の分解点以下の温度であれば特に限定されないが、硬化性能の観点から、30〜400℃の温度であることが好ましく、50〜300℃の温度であることがより好ましい。加熱を行う場合の加熱時間は特に限定されないが、硬化を更に十分に行う観点から、1秒間〜3時間であることが好ましく、30秒間〜1時間であることがより好ましい。加熱を行う雰囲気は特に限定されず、空気中又は不活性ガス中であってもよい。
そして、有機膜の硬化していない部分(未硬化部分)を、アルカリ現像により除去することで、基板上にパターンを形成する。未硬化部分をアルカリ現像により除去することで、基板上に所望のパターン形状を形成することができる。
このアルカリ現像に用いられるアルカリ現像液としては特に限定されず、公知の現像液を用いることができ、有機アルカリ化合物、無機アルカリ化合物等が挙げられる。
有機アルカリ化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
無機アルカリ化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニア等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール、またはエチレングリコール等の水溶性有機溶媒、界面活性剤、保存安定剤及び樹脂の溶解抑制剤等を適量添加することができる。
なお、本実施形態の製造方法では、上記現像工程後に、基板を被覆している有機膜(上記硬化部分であるマスク)を除去する工程を更に行ってもよい。これにより、エッチングされた基板とすることができる。この有機膜の除去方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
本実施形態の製造方法によれば、光硬化の際に副生成物が発生しないので、得られる基板の電気的特性に悪影響を与えることなく、微細なパターン形状を形成することができる。本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、光照射により速やかに硬化するので、露光部分では速やかに硬化して基板をマスキングできるとともに、未露光部分では硬化せずに有機膜として安定して存在することができるので、微細なパターン形状であっても高精度に実現することができる。本実施形態の製造方法により得られるパターン形成された基板(パターン基板)は、レジスト材料、プリント配線基板等をはじめとする各種電子部材として好適に用いることができる。そして、本実施形態のパターン形成された基板を備える電子部品とすることができる。この場合、光硬化型樹脂組成物により形成された膜は、表面保護層や絶縁層として用いることもできる。
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(製造例1)
<光塩基発生剤(b)の合成>
4−イソプロピルトロポロンとジアゾメタンとから常法に従って合成した、2−メトキシ−4−イソプロピルトロポンと2−メトキシ−6−イソプロピルトロポンの混合物(360mg、2.0mmol)と、1,2−プロパンジアミン(37mg、0.50mmol)をエタノール(2mL)に溶解し、還流温度で24時間加熱撹拌した。エタノールを減圧下に留去した後、カラムクロマトグラフ(和光純薬工業(株)製、商品名「ワコーゲルC−300」をシリカゲルとして用い、酢酸エチルを展開溶媒として使用)により光塩基発生剤を単離した。その収量は157mg(0.43mmol)であり、1,2−プロパンジアミン基準の収率は85%であった。なお、得られた2−アミノトロポン誘導体の確認は1H−NMR(日本電子(株)製「ECA−500」)によって行った。
(製造例2)
<光塩基発生剤(b)の合成>
2−ヒドロキシトロポロン(トロポロン)とジアゾメタンとから常法に従って合成した2−メトキシトロポン(381mg、2.8mmol)と、25質量%アンモニア4.0g(アンモニア分1.0g、58.8mmol)を混合し、50℃で24時間加熱撹拌した。25℃に冷却した後、ジクロロメタン10mLで3回抽出した。ジクロロメタンを減圧下で留去した後、カラムクロマトグラフ(和光純薬工業(株)製、「ワコーゲルC−300」を用い、酢酸エチルを展開溶媒として使用)により2−アミノトロポンを単離した(光塩基発生剤)。その収量は169mg(1.40mmol)であり、2−メトキシトロポン基準の収率は50%であった。なお、得られた2−アミノトロポン誘導体の確認は1H−NMR(日本電子(株)製「ECA−500」)によって行った。
(製造例3)
<アニオン硬化型樹脂(a)の合成>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「AER250」67質量部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸12質量部、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル21質量部、トリフェニルフォスフィン0.25質量部を溶解し、窒素雰囲気で100℃、16時間反応させた。KOH滴定により2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸の残存量が0であることを確認後、m−クロロ過安息香酸0.24質量部を添加した。続いて、この反応物に、テトラヒドロ無水フタル酸25質量部と酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル33質量部を添加し、窒素雰囲気で100℃、6時間反応させた。丸善出版 新実験化学講座 13巻−I p78に記載の方法により、テトラヒドロ無水フタル酸の残存量が0であることを確認した。
(実施例1)
<光硬化型樹脂組成物1>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「AER250」)19質量部、製造例3で合成したアニオン硬化型樹脂(a)39質量部、製造例1で合成した光塩基発生剤(b)17質量部、塩基性物質(c)としてアニリン0.54質量部、及び硬化剤(e)としてジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(略称DPMP SC有機化学(株)製)25質量部を混合して光硬化型樹脂組成物1を得た。
なお、塩基性物質のpKbは、25℃の水溶液中での値であり、A. E. Martell, R. M. Smith, "Critical Stability Constants", Vol.1〜3, Plenum Press (1974, 1975, 9177)に記載の方法でpKaを求めた上、pKb=14.0−pKaの式から求めた。
得られた光硬化型樹脂組成物1をガラス板上(JIS R3202(硝子板))に塗布し、厚さ100μmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、窒素雰囲気下で30mW/cm2の紫外線(波長:365nm)を表1の照射量となるように照射した。その後、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。結果を表1に示す。
(実施例2)
<光硬化型樹脂組成物2>
エポキシ樹脂(阪本薬品工業(株)製、商品名「SR−TMP」)50質量部、硬化剤(e)としてDPMP(SC有機化学(株)製)12質量部、及び酸性物質(d)としてクレゾールノボラック樹脂(旭有機材工業(株)製、商品名「EPR5030G」)の50体積%エタノール溶液25質量部と、塩基性物質(c)としてアニリン0.13質量部と、製造例1で合成した光塩基発生剤(b)10質量部とを混合して光硬化型樹脂組成物2を得た。
得られた光硬化型樹脂組成物2をガラス板上に塗布し、厚さ100μmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、窒素雰囲気下で30mW/cm2の紫外線(波長:365nm)を表1に示すそれぞれの露光量となるように、照射した。その後、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。結果を表1に示す。
(実施例3)
<光硬化型樹脂組成物3>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「AER250」)23質量部、製造例3で合成したアニオン硬化型樹脂(a)47質量部、製造例1で合成した光塩基発生剤(b)20質量部、塩基性物質(c)としてN,N'−ジメチルアニリン0.84質量部、及び硬化剤(e)としてDPMP(SC有機化学(株)製)30質量部を混合して光硬化型樹脂組成物3を得た。
得られた光硬化型樹脂組成物をガラス板上に塗布し、厚さ100μmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、窒素雰囲気下で30mW/cm2の紫外線(波長:365nm)を表1に示すそれぞれの露光量となるように、照射した。その後、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。結果を表1に示す。
参考例4)
<光硬化型樹脂組成物4>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「AER250」)23質量部、製造例3で合成したアニオン硬化型樹脂(a)48質量部、製造例1で合成した光塩基発生剤(b)20質量部、塩基性物質(c)としてN−メチルピロール0.50質量部、及び硬化剤(e)としてDPMP(SC有機化学(株)製)30質量部を混合して光硬化型樹脂組成物4を得た。
得られた光硬化型樹脂組成物4をガラス板上に塗布し、厚さ100μmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、窒素雰囲気下で30mW/cm2の紫外線(波長:365nm)を表1に示すそれぞれの露光量となるように、照射した。その後、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。結果を表1に示す。
(実施例5)
<光硬化型樹脂組成物5>
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「ECN1299」)64質量部、製造例2で合成した光塩基発生剤(b)20質量部、塩基性物質(c)としてアニリン0.20質量部、酸性物質(d)としてポリヒドロキシスチレン(略称PHS 丸善石油化学(株)製、商品名「マルカリンカーM」18質量部、及び硬化剤(e)としてテトラキス(メルカプト酢酸)ペンタエリトリトール(略称PETMA 和光純薬工業(株)製)18質量部を混合して光硬化型樹脂組成物5を得た。
<基板のパターニング>
光硬化型樹脂組成物1をガラス板上に塗布して、厚さ100μmの塗膜を形成した。この塗膜を80℃で30分間乾燥した後、塗膜に対して、所定の文字を描画したフォトマスクを介し、空気雰囲気下で2J/cm2の紫外線(波長:365nm)を照射して潜像を形成した。そして、塗膜の潜像の部分を120℃で23分間加熱して潜像の部分を完全に硬化させた後、0.25N水酸化ナトリウム水溶液で現像して、水洗及び乾燥を行った。こうして、フォトマスクに描画した文字が鮮明に刻み込まれたネガ型のパターンが基板上に形成された。なお、光照射や加熱の過程でガスの発生は認められず、均質で強固なパターンが形成された基板が得られることが確認された。
(比較例1)
<光硬化型樹脂組成物a>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「AER250」)19質量部、製造例3で合成したアニオン硬化型樹脂(a)39質量部、製造例1で合成した光塩基発生剤(b)17質量部、及び硬化剤(e)としてDPMP(SC有機化学(株)製)25質量部を混合して光硬化型樹脂組成物aを得た。
得られた光硬化型樹脂組成物aをガラス板上に塗布し、厚さ100μmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、窒素雰囲気下で30mW/cm2の紫外線(波長:365nm)を表1に示すそれぞれの露光量となるように、照射した。その後、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。結果を表1に示す。
(比較例2)
<光硬化型樹脂組成物b>
エポキシ樹脂(阪本薬品工業(株)製、商品名「SR−TMP」)50質量部、硬化剤(e)としてDPMP(SC有機化学(株)製)12質量部、酸性物質(d)としてクレゾールノボラック樹脂(旭有機材工業(株)製、商品名「EPR5030G」)の50体積%エタノール溶液25質量部、及び製造例1で合成した光塩基発生剤(b)10質量部を混合して比較光硬化型樹脂組成物bを得た。
得られた光硬化型樹脂組成物bをガラス板上に塗布し、厚さ100μmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、窒素雰囲気下で30mW/cm2の紫外線(波長:365nm)を表1に示すそれぞれの露光量となるように、照射した。その後、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。結果を表1に示す。
(比較例3)
<光硬化型樹脂組成物c>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「AER250」)23質量部、製造例1で合成した光塩基発生剤(b)20質量部、塩基性物質(c)としてメチルアミン0.25質量部、製造例3で合成した酸性物質(d)47質量部、及び硬化剤(e)としてDPMP(SC有機化学(株)製)30質量部を混合して光硬化型樹脂組成物cを得たが、直後から硬化が始まり塗膜を得ることはできなかった。
Figure 0005612373
上述のとおり、実施例1〜3、5について、光照射したものとしていないものを比較すると、光照射の露光量に応じて硬化時間が短縮されており、その短縮率が比較例1〜2と比較して大きいことがわかる。よって、塩基性物質を含む実施例1〜3、5は、硬化速度性に優れることが確認された。
また、実施例1〜3、5及び比較例1〜2について、光照射していないときの硬化時間を比較すると、塩基性物質を含む実施例1〜3、5の硬化時間が比較例1〜2の硬化時間より長いことが分かる。よって、保存安定性に優れることが確認された。
本発明に係る光硬化型樹脂組成物は、各種レジスト材料、プリント配線基板をはじめとする各種電子部品の材料として好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. アニオン硬化型樹脂(a)、
    光塩基発生剤(b)、及び
    pKbが8.6〜12の範囲であり、単官能塩基性物質である塩基性物質(c)
    を含有する、
    光硬化型樹脂組成物。
  2. 前記塩基性物質(c)が、芳香族アミンである、請求項に記載の光硬化型樹脂組成物。
  3. 更に、酸性物質(d)を含む、請求項1又は2に記載の光硬化型樹脂組成物。
  4. 更に、硬化剤(e)を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の光硬化型樹脂組成物。
  5. 前記硬化剤(e)が、メルカプトカルボン酸エステル化物である、請求項に記載の光硬化型樹脂組成物。
  6. 前記光塩基発生剤(b)が、2−アミノトロポン及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜のいずれか一項に記載の光硬化型樹脂組成物。
  7. 以下の(1)〜(3)工程を有する、パターン形成された基板の製造方法;
    (1)アニオン硬化型樹脂(a)、光塩基発生剤(b)、及びpKbが8.6〜12の範囲であり、単官能塩基性物質である塩基性物質(c)を含有する、光硬化型樹脂組成物を基板に塗布して有機膜を形成する工程、
    (2)光照射により、前記有機膜中に塩基を発生させ、前記有機膜を硬化させる工程、
    (3)前記有機膜の硬化していない部分を、アルカリ現像により除去することで、基板上にパターンを形成する工程。
  8. 請求項に記載の製造方法により得られる基板を備える電子部品。
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