以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の分離方法は、活性水素含有化合物(A)と該活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)とを含有する混合物を、多段蒸留塔によって分離する方法であって、活性水素含有化合物(A)の標準沸点と化合物(B)の標準沸点の間に標準沸点を有し、かつ活性水素含有化合物(A)と化合物(B)の双方に対して化学的に不活性である中間沸点不活性化合物(C)の存在下に該多段蒸留塔によって活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを蒸留分離する分離方法である。係る不活性化合物は、場合により「中間沸点不活性化合物」と称される。
一般的に、可逆的な反応とは、化学反応のうち、原系(原料)から生成系(生成物)への反応(正反応)と、反対に生成系から原系に戻る反応(逆反応)がともに起こる反応のことであるが、本実施の形態において、「該活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)」とは、活性水素含有化合物(A)と反応して、(A)と(B)の結合体を形成し得る化合物であり、下記式(6)で表される反応系が成立する化合物である。
一般的に、ある系においてそれらの正、逆反応しか起こらなければ、その系は最終的に一定量の基質と生成物を含む平衡状態に落ち着く。このような、平衡状態を形成し得る反応系を平衡反応という。すなわち、「活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)」は「活性水素含有化合物と平衡反応を形成し得る化合物(B)」ということもできる。本実施の形態において、活性水素含有化合物(A)と該活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)とを含有する混合物は、好ましくは、該混合物において、(A)、(B)及び(A)と(B)の結合体が下記式(7)で表される平衡状態にある混合物である。
より好ましくは、(B)は(A)と熱解離平衡を形成し得る化合物であり、さらに好ましくは、該混合物において、(A)、(B)及び(A)と(B)の結合体は熱解離平衡状態にある。熱解離とは、温度の上昇によって分子などが分解し、温度が下がれば逆反応によってもとの分子に戻る反応であり、上記式(7)を例にすると、(A)と(B)の結合体が、温度の上昇によって分解して(A)と(B)を形成し、温度が下がれば、(A)と(B)とが反応して(A)と(B)の結合体を形成する反応である。これらの上記した反応において、系内に触媒は存在していても存在していなくてもよいが、好ましくは、触媒が存在しない系である。
このような系を形成し得る(B)として、好ましくは、イソシアネート、および/または、イソチオシアネートである。
本実施の形態におけるイソシアネートとは、IUPAC(The International Union of Pure and Applied Chemistry)で定められた Nomenclature(IUPAC Nomenclature of Organic Chemistry)記載の規則C−8に定められる“イソシアネート(isocyanates)”の項の「The isocyanic acid tautomer, HN=C=O,of cyanic acid, HOC=N and its hydrocarbyl derivatives:RN=C=O.」のうち、後半部の「its hydrocarbyl derivatives:RN=C=O」に相当する化合物であり、好ましくは、下記式(8)で表される化合物である。
(式中;
R
1は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
nは、1〜10の整数を表す。)
上記式(8)で表されるイソシアネートのうち、好ましくはnが1〜3のイソシアネートである。好ましいR1としては、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等の直鎖炭化水素基;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)アルカン等の無置換の脂環式炭化水素由来の基;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のアルキル置換シクロヘキサン由来の基;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換シクロヘキサン由来の基;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換シクロヘキサン由来の基;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換ベンゼン;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換ベンゼン;ジフェニルアルカン、ベンゼン等の芳香族炭化水素由来の基等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレン、フェニレン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレニル、メチルシクロヘキサン、イソホロン及びジシクロヘキシルメタン由来の基が好ましい。
好ましいイソシアネートの具体的な例としては、フェニルイソシアネート、ナフタレンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(各異性体)、トリレンジイソシアネート(各異性体)、メチレンビス(シクロヘキサン)ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(各異性体)等が挙げられる。
本実施の形態におけるイソチオシアネートとは、IUPAC(The International Union of Pure and Applied Chemistry)で定められた Nomenclature(IUPAC Nomenclature of Organic Chemistry)記載の規則C−8に定められる“イソチオシアネート(isothiocyanates)”の項の「Sulfer analogues of isocyanates:RN=C=S.」であり、好ましくは、下記式(9)で表される化合物である。
(式中;
R
1は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
nは、1〜10の整数を表す。)
上記式(9)で表されるイソチオシアネートのうち、好ましくはnが1〜3のイソチオシアネートであり、好ましいR1としては、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等の直鎖炭化水素基;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘヘプタン、シクロオクタン等の無置換の脂環式炭化水素由来の基;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のアルキル置換シクロヘキサン由来の基;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換シクロヘキサン由来の基;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換シクロヘキサン由来の基;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換ベンゼン;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換ベンゼン;ジフェニルアルカン、ベンゼン等の芳香族炭化水素由来の基等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレン、フェニレン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレニル、メチルシクロヘキサン、イソホロン及びジシクロヘキシルメタン由来の基が好ましい。
好ましいイソチオシアネートの具体的な例としては、フェニルイソチオシアネート、ナフタレンイソチオシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、イソホロンジイソチオシアネート、ジフェニルメタンジイソチオシアネート(各異性体)、トリレンジイソチオシアネート(各異性体)、メチレンビス(シクロヘキサン)ジイソチオシアネート、ナフタレンジイソチオシアネート(各異性体)、リシンジイソチオシアネート等が挙げられる。
一方、(A)は、活性水素含有化合物である。該活性水素含有化合物(A)における「活性水素」は、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子等と結合している水素原子、及び末端メチン基の水素原子を指す。例えば、−OH基、−C(=O)OH基、−C(=O)H基、−SH基、−SO3H基、−SO2H基、−SOH基、−NH2基、−NH−基、−SiH基、−C≡CH基、HX(Xはハロゲン原子を表す)などの原子団または分子に含まれている水素である。該活性水素含有化合物(A)は、上記したこれらの活性水素を含有する化合物であり、好ましくは、−OH基、−SH基、−NH2基を含有する化合物およびハロゲン化水素(前述のHX(Xはハロゲン原子))である。
具体的な化合物として、好ましくは、ヒドロキシ化合物、チオール、芳香族チオール、およびハロゲン化水素からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である、
好ましいヒドロキシ化合物は、アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物であり、アルコールの場合は、下記式(10)で表される化合物である。
(式中;R
5は、c個のヒドロキシ基で置換された、炭素数1〜50の脂肪族基、又は、炭素数7〜50の脂肪族基であって芳香族基が結合した基を表し、式(10)で表されるアルコールの−OH基は芳香族基に結合していない−OH基である。cは、1から3の整数を表す。ただし、R
5は、ヒドロキシ基以外に活性水素を有しない基である。)
R5としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、ジブチルシクロヘキシル基等を挙げることができる。
このようなR5を有するアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、メチルシクロペンタノール、エチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール、プロピルシクロヘキサノール、ブチルシクロヘキサノール、ペンチルシクロヘキサノール、ヘキシルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、ジエチルシクロヘキサノール、ジブチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。
また、R5としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基等を挙げることもできる。
このようなR5を有するアルコールの具体例としては、フェニルメタノール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェニルブタノール、フェニルペンタノール、フェニルヘキサノール、フェニルヘプタノール、フェニルオクタノール、フェニルノナノール等を挙げることができる。
上述のアルコールのうち、工業的な使用を考えれば、アルコール性ヒドロキシ基(上記ヒドロキシ化合物を構成する、芳香族環以外の炭素原子に直接付加するヒドロキシ基)を1又は2個有するアルコールが、一般に低粘度であるため好ましく、更に好ましくは上記アルコール性ヒドロキシ基が1個である、モノアルコールである。
これらの中でも、入手のし易さ、原料や生成物の溶解性等の観点から、炭素数1〜20のアルキルアルコールが好ましい。
ヒドロキシ化合物が、芳香族ヒドロキシ化合物である場合は、上記ヒドロキシ化合物は、下記式(11)で表される化合物である。
(式中;環Aは、芳香族性を保つ任意の位置にd個のヒドロキシ基で置換された芳香族基を含有する、6〜50の炭素原子を含む有機基を表し、単環でも複数環でも複素環であっても、他の置換基によって置換されていてもよく、dは1〜6の整数を表す。)
好ましくは環Aが、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を含有する構造であり、より好ましくは環Aが、ベンゼン環を少なくとも1つ含有する構造である。また、好ましくは、環Aは、ヒドロキシ基以外に活性水素を有しない基である。
環Aの芳香族基に結合するヒドロキシ基は環Aの芳香族基の炭素原子に結合したヒドロキシ基であって、上記ヒドロキシ基の数は1〜6の整数で、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2、さらに好ましいのは1個(すなわち、d=1)である。より好ましくは上記芳香族性ヒドロキシル基が1個である、芳香族モノヒドロキシ化合物である。
具体的には、フェノール、メチルフェノール(各異性体)、エチルフェノール(各異性体)、プロピルフェノール(各異性体)、ブチルフェノール(各異性体)、ペンチルフェノール(各異性体)、ヘキシルフェノール(各異性体)、オクチルフェノール(各異性体)、ノニルフェノール(各異性体)、クミルフェノール(各異性体)、ジメチルフェノール(各異性体)、メチルエチルフェノール(各異性体)、メチルプロピルフェノール(各異性体)、メチルブチルフェノール(各異性体)、メチルペンチルフェノール(各異性体)、ジエチルフェノール(各異性体)、エチルプロピルフェノール(各異性体)、エチルブチルフェノール(各異性体)、ジプロピルフェノール(各異性体)、ジクミルフェノール(各異性体)、トリメチルフェノール(各異性体)、トリエチルフェノール(各異性体)、ナフトール(各異性体)等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシ化合物としては、上記芳香族ヒドロキシ化合物を構成する芳香族炭化水素環に直接結合するヒドロキシル基を1つ有する化合物が好ましい。上記芳香族ヒドロキシ化合物を構成する芳香族炭化水素環に直接結合するヒドロキシル基を2つ以上有する芳香族ヒドロキシ化合物であっても、芳香族ヒドロキシ化合物として使用することが可能であるが、該ヒドロキシ基が1つのものは一般的に低粘度であるため、芳香族炭化水素環に直接結合するヒドロキシル基は1つであることが好ましい。
好ましいチオールとしては、下記式(12)で表される化合物である。
(式中;R
5は、e個のスルフヒドリル基で置換された、炭素数1〜50の脂肪族基、又は、芳香族基が結合した、炭素数7〜50の脂肪族基からなる基を表し、式(12)で表されるチオールの−SH基は芳香族基に結合していない−SH基である。eは、1から3の整数を表す。ただし、R
5は、スルフヒドリル基以外に活性水素を有しない基である。)
R5としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ペンチルシクロヘキサン、ヘキシルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、ジブチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
このようなR5を有するチオールの具体例としては、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロヘプタンチオール、シクロオクタンチオール、メチルシクロペンタンチオール、エチルシクロペンタンチオール、メチルシクロヘキサンチオール、エチルシクロヘキサンチオール、プロピルシクロヘキサンチオール、ブチルシクロヘキサンチオール、ペンチルシクロヘキサンチオール、ヘキシルシクロヘキサンチオール、ジメチルシクロヘキサンチオール、ジエチルシクロヘキサンチオール、ジブチルシクロヘキサンチオール等を挙げることができる。
また、R5としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基等を挙げることもできる。
このようなR5を有するアルコールの具体例としては、フェニルメタンチオール、フェニルエタンチオール、フェニルプロパンチオール、フェニルブタンチオール、フェニルペンタンチオール、フェニルヘキサンチオール、フェニルヘプタンチオール、フェニルオクタンチオール、フェニルノナンチオール等を挙げることができる。
上述のチオールのうち、工業的な使用を考えれば、チオール性スルフヒドリル基(該チオールを構成する、芳香族環以外の炭素原子に直接付加するスルフヒドリル基)を1又は2個有するチオールが、一般に低粘度であるため好ましく、更に好ましくは該チオール性スルフヒドリル基が1個である、モノチオールである。
これらの中でも、入手のし易さ、原料や生成物の溶解性等の観点から、炭素数1〜20のアルキルチオールが好ましい。
好ましい芳香族チオールとしては、下記式(13)で表される化合物である。
(式中;環Aは、芳香族性を保つ任意の位置にf個のスルフヒドリル基で置換された芳香族基を含有する、6〜50の炭素原子を含む有機基を表し、単環でも複数環でも複素環であっても、他の置換基によって置換されていてもよく、fは1〜6の整数を表す。)
好ましくは環Aが、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を含有する構造であり、より好ましくは環Aが、ベンゼン環を少なくとも1つ含有する構造である。また、好ましくは、環Aは、スルフヒドリル基以外に活性水素を有しない基である。
環Aの芳香族基に結合するスルフヒドリル基は環Aの芳香族基の炭素原子に結合したスルフヒドリル基であって、該スルフヒドリル基の数は1〜6の整数で、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2、さらに好ましいのは1個(すなわち、f=1)である。より好ましくは該芳香族性スルフヒドリル基が1個である、芳香族モノチオール化合物である。
具体的には、ベンゼンチオール、メチルベンゼンチオール(各異性体)、エチルベンゼンチオール(各異性体)、プロピルベンゼンチオール(各異性体)、ブチルベンゼンチオール(各異性体)、ペンチルベンゼンチオール(各異性体)、ヘキシルベンゼンチオール(各異性体)、オクチルベンゼンチオール(各異性体)、ノニルベンゼンチオール(各異性体)、クミルベンゼンチオール(各異性体)、ジメチルベンゼンチオール(各異性体)、メチルエチルベンゼンチオール(各異性体)、メチルプロピルベンゼンチオール(各異性体)、メチルブチルベンゼンチオール(各異性体)、メチルペンチルベンゼンチオール(各異性体)、ジエチルベンゼンチオール(各異性体)、エチルプロピルベンゼンチオール(各異性体)、エチルブチルベンゼンチオール(各異性体)、ジプロピルベンゼンチオール(各異性体)、ジクミルベンゼンチオール(各異性体)、トリメチルベンゼンチオール(各異性体)、トリエチルベンゼンチオール(各異性体)、ナフタレンチオール(各異性体)等が挙げられる。
芳香族チオールとしては、該芳香族チオールを構成する芳香族炭化水素環に直接結合するスルフヒドリル基を1つ有する化合物が好ましい。該芳香族チオールを構成する芳香族炭化水素環に直接結合するスルフヒドリル基を2つ以上有する芳香族チオールであっても、芳香族チオールとして使用することが可能であるが、該を1又は2個有する芳香族チオールが、一般に低粘度であるため好ましく、更に好ましくは芳香族モノチオールである。
ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が挙げられる。
本実施の形態において、活性水素含有化合物(A)と該活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)とを含有する混合物は、好ましくは、下記式(5)で表される化合物の熱分解反応によって得られる混合物である。
(式中:
R
1は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
Yは、酸素原子または硫黄原子を表し、
Zは、ヒドロキシ化合物の−OH基から水素原子を除いた残基、チオールまたは芳香族チオールの−SH基から水素原子を除いた残基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれる1つの基を表し、
nは、1〜10の整数を表す。)
具体的には、下記式(14)で表されるN−置換カルバミン酸エステル、下記式(15)で表されるN−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル、下記式(16)で表されるN−置換―S−置換チオカルバミン酸エステル、下記式(17)で表されるN−置換ジチオカルバミン酸エステル、下記式(18)で表されるN−置換カルバミン酸ハロゲニドである。
(式中;
R
1は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
R
2は、炭素数1〜50の脂肪族基、炭素数6〜50の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
nは、1〜10の整数を表す。)
(式中;
R
1は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
R
2は、炭素数1〜50の脂肪族基、炭素数6〜50の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
nは、1〜10の整数を表す。)
(式中;
R
1は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
R
2は、炭素数1〜50の脂肪族基、炭素数6〜50の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
nは、1〜10の整数を表す。)
(式中;
R
1は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
R
2は、炭素数1〜50の脂肪族基、炭素数6〜50の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
nは、1〜10の整数を表す。)
(式中;
R
1は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、該基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、
Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子からなる群から選ばれる1つの原子を表し、
nは、1〜10の整数を表す。)
上記式(14)〜(18)において、好ましいR1としては、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等の直鎖炭化水素基;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)アルカン等の無置換の脂環式炭化水素由来の基;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のアルキル置換シクロヘキサン由来の基;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換シクロヘキサン由来の基;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換シクロヘキサン由来の基;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換ベンゼン由来の基;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換ベンゼン由来の基;ジフェニルアルカン、ベンゼン等の芳香族炭化水素由来の基等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレン、フェニレン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレニル、メチルシクロヘキサン、イソホロン及びジシクロヘキシルメタン由来の基が好ましい。
また、上記式(14)〜(17)において、好ましいR2としては、メチル基、エチル基、プロピル基(各異性体)、ブチル基(各異性体)、ペンチル基(各異性体)、ヘキシル基(各異性体)、ヘプチル基(各異性体)、オクチル基(各異性体)、ノニル基(各異性体)、デシル基(各異性体)、ウンデシル基(各異性体)、ドデシル基(各異性体)等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、メチル−フェニル基(各異性体)、エチル−フェニル基(各異性体)、プロピル−フェニル基(各異性体)、ブチル−フェニル基(各異性体)、ペンチル−フェニル基(各異性体)、ヘキシル−フェニル基(各異性体)、ヘプチル−フェニル基(各異性体)、オクチル−フェニル基(各異性体)、ノニル−フェニル基(各異性体)、デシル−フェニル基(各異性体)、ドデシル−フェニル基(各異性体)、フェニル−フェニル基(各異性体)、フェノキシ−フェニル基(各異性体)、クミル−フェニル基(各異性体)、ジメチル−フェニル基(各異性体)、ジエチル−フェニル基(各異性体)、ジプロピル−フェニル基(各異性体)、ジブチル−フェニル基(各異性体)、ジペンチル−フェニル基(各異性体)、ジヘキシル−フェニル基(各異性体)、ジヘプチル−フェニル基(各異性体)、ジフェニル−フェニル基(各異性体)、ジフェノキシ−フェニル基(各異性体)、ジクミル−フェニル基(各異性体)、ナフチル基(各異性体)、メチル−ナフチル基(各異性体)等の芳香族基が挙げられる。
これらの中でも、R2を構成する炭素原子の数が6〜12である芳香族基が、該N−置換カルバミン酸エステル、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換―S−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換ジチオカルバミン酸エステルは、R2が脂肪族基の場合に比べて熱分解温度が低い(すなわち、熱分解が容易である)場合が多く、好ましい。
N−置換カルバミン酸エステルの例としては、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、ジフェニル−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、ジ(メチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、ジ(エチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、ジ(プロピルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ブチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ペンチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ヘキシルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ヘプチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(オクチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステル、3−(メチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(メチルフェノキシ)エステル(各異性体)、3−(エチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(エチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(プロピルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ブチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ペンチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘキシルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘプチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジフェニルエステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジフェニルエステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)を挙げることができる。
上述したN−置換カルバミン酸エステルは、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステルの例としては、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−フェニル)エステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−メチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−エチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、ジ(O−フェニル)−4,4’−メチレン−ジチオカルバメート、ジ(O−メチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート、ジ(O−エチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート、ジ(O−プロピルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(O−ブチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(O−ペンチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(O−ヘキシルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(O−ヘプチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(O−オクチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、3−(フェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−フェニル)エステル、3−(メチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−メチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(エチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−エチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(プロピルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(O−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ブチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ペンチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘキシルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘプチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−オクチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−フェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−メチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−エチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(O−ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(O−オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−フェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−メチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−エチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−プロピルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−ペンチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−ヘキシルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−ヘプチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−オクチルフェニル)エステル(各異性体)を挙げることができる。
上述したN−置換―O−置換チオカルバミン酸エステルは、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
N−置換−S−置換チオカルバミン酸エステルの例としては、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−フェニル)エステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−メチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−エチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、ジ(S−フェニル)−4,4’−メチレン−ジチオカルバメート、ジ(S−メチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート、ジ(S−エチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート、ジ(S−プロピルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(S−ブチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(S−ペンチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(S−ヘキシルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(S−ヘプチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(S−オクチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、3−(フェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−フェニル)エステル、3−(メチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−メチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(エチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−エチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(プロピルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(S−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ブチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ペンチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘキシルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘプチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−オクチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−フェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−メチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−エチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(S−ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(S−オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−フェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−メチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−エチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−プロピルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−ペンチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−ヘキシルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−ヘプチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−オクチルフェニル)エステル(各異性体)を挙げることができる。
上述したN−置換―S−置換チオカルバミン酸エステルは、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
N−置換ジチオカルバミン酸エステルの例としては、N−置換ジチオカルバミン酸エステルの例としては、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジフェニルエステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、ジフェニル−4,4’−メチレン−ジジチオカルバメート、ジ(メチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート、ジ(エチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート、ジ(プロピルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、ジ(ブチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、ジ(ペンチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、ジ(ヘキシルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、ジ(ヘプチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、ジ(オクチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、3−(フェニルスルホニルチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸フェニルエステル、3−(メチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(メチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(エチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(エチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(プロピルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ブチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ペンチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘキシルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘプチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジフェニルエステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジフェニルエステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)を挙げることができる。
上述したN−置換ジチオカルバミン酸エステルは、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
N−置換カルバミン酸ハロゲニドの例としては、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジクロリド、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジブロミド、ジクロロ−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、ジブロモ−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、3−(クロロカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸クロリド、3−(ブロモカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ブロミド、トルエン−ジカルバミン酸ジクロリド(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジブロミド(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジクロリド、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジブロミド、を挙げることができる。
上述したN−置換カルバミン酸ハロゲニドは、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
これらの、N−置換カルバミン酸エステル、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換―S−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換ジチオカルバミン酸エステル、N−置換カルバミン酸ハロゲニドの製造方法は特に限定はされず、種々の公知の方法を用いることができる
上記したこれらの化合物の中でも、N−置換カルバミン酸エステルは、該N−置換カルバミン酸エステルの熱分解によってイソシアネートを生成する反応が、ホスゲンを使用しないイソシアネート製造方法として大変有用であり、本実施の形態による方法を用いることで効率的にイソシアネートを製造できることから、本実施の形態において好ましく使用される。
N−置換カルバミン酸エステルの好ましい製造方法の例として、下記工程(I)または工程(II)による方法が挙げられる。
工程(I):炭酸エステルと有機第1アミンとの反応によりN−置換カルバミン酸エステルを製造する工程。
工程(II):尿素と有機第1アミンとヒドロキシ化合物とからN−置換カルバミン酸エステルを製造する工程。
以下、工程(I)または工程(II)によるN−置換カルバミン酸エステルの製造方法について説明する。
工程(I)について説明する。
まず、使用する化合物について説明する。
炭酸エステルは、下記式(19)で表される化合物が好ましく使用される。
(式中;
R
3、R
4は、各々独立に、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を表し、上記炭素数1〜22の脂肪族基、上記炭素数6〜22の芳香族基は、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい。)
上記式(19)のR3、R4としては、R3、R4が脂肪族基の場合、好ましくは、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、より好ましくは、直鎖状または分岐鎖乗の炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、直鎖状または分岐状の炭素数1〜8のアルキル基である。このようなR3、R4の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基(各異性体)、ブチル基(各異性体)、ペンチル基(各異性体)、ヘキシル基(各異性体)、ヘプチル基(各異性体)、オクチル基(各異性体)等の、上記基を構成する炭素原子の数が1〜8であるアルキル基が挙げられる。
このような炭酸エステルとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル(各異性体)、炭酸ジブチル(各異性体)、炭酸ジペンチル(各異性体)、炭酸ジヘキシル(各異性体)、炭酸ジヘプチル(各異性体)、炭酸ジオクチル(各異性体)等が例示される。中でも、アルキル基を構成する炭素原子の数が4〜6の整数から選ばれる数である炭酸エステルが好ましく使用される。
上記式(19)のR3、R4が芳香族基の場合、好ましくは、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基であり、より好ましくは、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。R3、R4が、炭素数23以上の芳香族炭化水素基である炭酸エステルを用いることもできるが、後述する混合物に含まれるイソシアネートとの分離を容易にするという観点から、R3、R4を構成する炭素数は22以下が好ましい。
上記芳香族基R3、R4の例としては、フェニル基、メチルフェニル基(各異性体)、エチルフェニル基(各異性体)、プロピルフェニル基(各異性体)、ブチルフェニル基(各異性体)、ペンチルフェニル基(各異性体)、ヘキシルフェニル基(各異性体)、オクチルフェニル基(各異性体)、ノニルフェニル基(各異性体)、クミルフェニル基(各異性体)、ジメチルフェニル基(各異性体)、メチルエチルフェニル基(各異性体)、メチルプロピルフェニル基(各異性体)、メチルブチルフェニル基(各異性体)、メチルペンチルフェニル基(各異性体)、ジエチルフェニル基(各異性体)、エチルプロピルフェニル基(各異性体)、エチルブチルフェニル基(各異性体)、ジプロピルフェニル基(各異性体)、ジクミルフェニル基(各異性体)、トリメチルフェニル基(各異性体)、トリエチルフェニル基(各異性体)、ナフチル基(各異性体)等が挙げられる。
上記した炭酸エステルの製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、スズ−酸素−炭素結合を有する有機スズ化合物と二酸化炭素とを反応させて炭酸エステルを製造する方法、ホスゲン、カルボジイミド、炭酸エステル等のカルボニル化合物とヒドロキシ化合物とを反応させて製造する方法等が挙げられる。
一方の有機第1アミンは、下記式(20)で表される有機第1アミンが好ましく使用される。
(式中;
R
1は、上記式(5)で定義したR
1と同義であり、
nは、上記式(5)で定義したnと同義である。)
上記式(20)で表される有機第1アミンとしては、好ましくはnが2以上の有機第1ポリアミンが使用され、さらに好ましくはnが2である有機第1ジアミンが使用される。
上記式(20)で表されるような有機第1アミンの例としては、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(各異性体)、シクロヘキサンジアミン(各異性体)、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(各異性体)等の脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン(各異性体)、トルエンジアミン(各異性体)4,4’−メチレンジアニリン等の芳香族ジアミンを挙げることができる。中でもヘキサメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(各異性体)、シクロヘキサンジアミン(各異性体)、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(各異性体)等の脂肪族ジアミンが好ましく使用され、中でも、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンがより好ましい。
炭酸エステルと有機第1アミンとの反応は、好ましくは、ヒドロキシ化合物存在下でおこなわれる。
ヒドロキシ化合物としては、アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物を使用することができる。好ましいアルコールは、上記式(10)で説明したアルコールであり、好ましい芳香族ヒドロキシ化合物は、上記式(11)で説明した芳香族ヒドロキシ化合物である。
これらのヒドロキシ化合物(アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物)の中でも、炭酸エステルを構成する基R3O(R3は上記(19)中で定義した基であり、Oは酸素原子を表す)に水素原子が付加した化合物R3OHに相当する化合物が、より好ましく使用される。例えば、炭酸エステルが炭酸ジメチルの場合は、ヒドロキシ化合物としてメタノールが好ましく使用され、炭酸エステルが炭酸ジフェニルの場合は、ヒドロキシ化合物としてフェノールが好ましく使用される。これは、炭酸エステルとアミン化合物との反応によって得られる反応混合物における化合物の種類を少なくすることができ、分離操作を簡素化することができるためである。
有機第1アミンは、好ましくは、N−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなう反応器に液体の状態で供給される。一般的に、上記で例示した有機第1アミンは、常温(例えば20℃)で固体のものが多く、そのような場合には、有機第1アミンを融点以上に加熱して液体の状態で供給することもできる。しかしながら、あまりに高温で有機第1アミンを供給すると、加熱による熱変性反応等の副反応を生じる場合があることから、好ましくは、該有機第1アミンを、上述の、ヒドロキシ化合物、炭酸エステル又は水との混合物とし、比較的低い温度で液体の状態で供給することが好ましい。
炭酸エステルと有機第1アミンとが反応するための両者の存在比は,反応させる化合物によって異なるが、一般的には有機第1アミンのアミノ基に対して炭酸エステルを化学量論比で、1〜1000倍の範囲である。反応速度を高め、反応を早期に完結させるためには、炭酸エステルは有機第1アミンのアミノ基に対して過剰量用いることが好ましいが、反応器の大きさを考慮すれば、好ましくは1.1〜50倍の範囲、さらに好ましくは、1.5〜10倍の範囲で用いる。炭酸エステルと有機第1アミンとの反応にヒドロキシ化合物を共存させる場合には、上記ヒドロキシ化合物の使用量は、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で、好ましくは1〜100倍の範囲であり、より好ましくは1.2〜50倍、さらに好ましくは1.5〜10倍である。反応温度は、通常、0℃〜150℃の範囲である。反応速度を高めるためには高温が好ましいが、一方で、高温では好ましくない反応も起こる場合があるので、より好ましくは10℃〜100℃の範囲である。反応温度を一定にするために、上記反応器に公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、好ましくは20〜1×106 Paの範囲で行われる。反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく好ましくは0.001〜50時間、より好ましくは0.01〜20時間、さらに好ましくは0.1〜10時間である。また、反応液を採取し、例えば、液体クロマトグラフィーによって所望する量のN−置換カルバミン酸エステルが生成していることを確認して反応を終了することもできる。
炭酸エステルと有機第1アミンとの反応には、触媒を使用しないのが好ましい。何故なら、触媒反応によってN−置換カルバミン酸エステルを生成すると、触媒を分離する工程を経ない限り、生成物中に触媒として使用した金属成分が残存することになり、触媒成分が残存したN−置換カルバミン酸エステルを熱分解反応等のために加熱すると、N−置換カルバミン酸エステルの熱変性反応等を生起する場合があるためである。炭酸エステルと有機第1アミンとの反応に触媒を使用し、触媒を除去する工程を経てから、反応混合物の移送や熱分解反応をおこなうこともできるが、工程が増えるので好ましくない。
しかしながら、反応を短時間で完結させる、反応温度を低くする等の目的で、触媒を使用することは否定されない。一般的に、有機第1アミンとして芳香族アミン(例えば、上記式(20)において、R1が芳香族基の場合)を使用する場合は、脂肪族アミン(例えば、上記式(20)において、R1が脂肪族基の場合)に比べて反応性が低い場合があるので、触媒の使用が有効な場合がある。また、炭酸エステルが炭酸脂肪族エステル(例えば、上記式(19)において、R3、R4が脂肪族基の場合)を使用する場合も、炭酸エステルが炭酸芳香族エステル(例えば、上記式(19)において、R3、R4が芳香族基の場合)に比べて反応性が低い場合があるので、触媒の使用が有効な場合がある。触媒の例としては、スズ、鉛、銅、チタン等の有機金属化合物や無機金属化合物及びアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアルコラートであって、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムのメチラート、エチラート、ブチラート(各異性体)等の塩基性触媒が挙げられる。上記したように、触媒を使用する場合は、炭酸エステルと有機第1アミンとの反応を終えた後で、触媒を除去する工程を経てから、熱分解反応等の次の工程をおこなうことが好ましい。触媒を除去する方法としては、晶析、膜分離、イオン交換樹脂等を用いた分離等、公知の方法を用いることができる。
余剰の炭酸エステル、又は余剰の炭酸エステル及びヒドロキシ化合物以外に、反応溶媒を使用してもよいが、後述するN−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によって生成するイソシアネートやヒドロキシ化合物と、不活性溶媒との分離等が煩雑となり、好ましくない。
炭酸エステルと有機第1アミンとの反応において使用される反応器は、公知の槽型反応器、塔型反応器、蒸留塔が使用できる。当該反応器及びラインの材質は、出発物質や反応物質に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316,SUS316L等が安価であり、好ましく使用できる。
次に、工程(II)について説明する。
当該工程で使用する有機第1アミンは、上記式(20)で表される有機第1アミンが好ましく使用される。また、ヒドロキシ化合物は、アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物のいずれを使用してもよい。好ましいヒドロキシ化合物は、該ヒドロキシ化合物がアルコールの場合は、上記式(10)で表されるアルコール、該ヒドロキシ化合物が芳香族ヒドロキシ化合物の場合は、上記式(11)で表される芳香族ヒドロキシ化合物である。
尿素とヒドロキシ化合物と有機第1アミンとの反応における反応条件は、使用する化合物によっても異なるが、ヒドロキシ化合物の量は、使用される有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で1倍〜500倍の範囲である。ヒドロキシ化合物の使用量が少ないと複雑に置換したカルボニル化合物等が生成しやすくなるため、大過剰のヒドロキシ化合物を使用することが好ましいが、反応器の大きさを考慮すれば、好ましくは1倍〜200倍の範囲、より好ましくは1.5倍〜100倍の範囲、更に好ましくは、2倍〜50倍である。
尿素の量は、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で1倍〜100倍の範囲が好ましい。尿素の使用量が少ない場合も複雑に置換したカルボニル化合物等が生成しやすくなるため、過剰量の尿素を使用することが好ましいが、あまりに過剰の尿素を使用すると、かえって、複雑に置換したカルボニル化合物が生成しやすくなる場合が生じる。そのため、より好ましくは1.1倍〜10倍、さらに好ましくは1.5倍〜5倍の範囲である。
反応温度は、使用する有機第1アミンと尿素とヒドロキシ化合物の反応性にもよるが、100℃〜350℃の範囲が好ましい。100℃より低い温度では、ヒドロキシ化合物と、副生するアンモニアが強く結合するために、反応が遅かったり、反応がほとんど起こらなかったり、あるいは、複雑に置換したカルボニル化合物が増加したりするため好ましくない。一方、350℃よりも高い温度では、ヒドロキシ化合物が脱水素変性したり、あるいは、生成物であるN−置換カルバミン酸エステルの分解反応や変性反応等が生じやすくなるため、好ましくない。このような観点から、より好ましい温度は120℃〜320℃の範囲、更に好ましくは140℃〜300℃の範囲である。
反応圧力は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧、加圧で行うことができるが、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲で実施されることが好ましい。工業的実施の容易性を考慮すると、減圧、常圧が好ましく、0.1kPa〜1.5MPa(絶対圧)の範囲が好ましい。
有機第1アミンと尿素とヒドロキシ化合物とからN−置換カルバミン酸エステルが生成する反応は、平衡反応であり、反応が大きく原系に偏っている。したがって、N−置換カルバミン酸エステルの収率を高めるためには、可能な限り、副生するアンモニアを系外に除去しながら反応を行う必要がある。好ましくは、反応液中のアンモニア濃度が1000ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、最も好ましくは10ppm以下となるようにアンモニアを除去する。
アンモニアを除去する方法としては、反応蒸留法、不活性ガスによる方法、膜分離、吸着分離による方法などを行うことができる。例えば、該反応蒸留法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを蒸留によって気体状で分離する方法である。アンモニアの蒸留効率を上げるために、溶媒又はヒドロキシ化合物の沸騰下で行うこともできる。また、不活性ガスによる方法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを、気体状で不活性ガスに同伴させることによって反応系から分離する方法である。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等を、単独で、あるいは混合して使用し、該不活性ガスを反応系中に導入する方法が好ましい。吸着分離する方法において使用される吸着剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、各種ゼオライト類、珪藻土類等の、当該反応が実施される温度条件下で使用可能な吸着剤が挙げられる。これらのアンモニアを系外に除去する方法は、単独で実施しても、複数種の方法を組み合わせて実施してもよい。
上記反応において、例えば、反応速度を高める目的で、触媒を使用することができる。このような触媒としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムのメチラート、エチラート、ブチラート(各異性体)等の塩基性触媒、希土類元素、アンチモン、ビスマスの単体及びこれらの元素の酸化物、硫化物及び塩類、ホウ素単体及びホウ素化合物、周期律表の銅族、亜鉛族、アルミニウム族、炭素族、チタン族の金属及びこれらの金属酸化物及び硫化物、周期律表の炭素を除く炭素族、チタン族、バナジウム族、クロム族元素の炭化物及び窒化物が好ましく用いられる。触媒を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で0.0001〜100倍の範囲で使用することができる。触媒を添加すれば、上記触媒を除去する必要が生じる場合が多いので、好ましくは触媒を添加せず行う。触媒を使用した場合、反応後に触媒は除去してもよい。除去する方法は、公知の方法を用いることができ、膜分離、蒸留分離、晶析等の方法が好ましく使用できる。
反応時間(連続反応の場合は滞留時間)は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置、反応圧力等によって異なるが、好ましくは、0.01〜100時間である。反応時間は、目的化合物であるN−置換カルバミン酸エステルの生成量によって決定することもできる。例えば、反応液をサンプリングして、上記反応液中のN−置換カルバミン酸エステルの含有量を定量し、使用した有機第1アミンに対して10%以上の収率で生成していることを確認したのち反応を停止してもよいし、上記収率が90%以上であることを確認したのち反応を停止してもよい。好ましくは該収率が50%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上とする。
当該反応において、必ずしも反応溶媒を使用する必要はないが、反応操作を容易にする等の目的で適当な溶媒、例えば、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)等のアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン(各異性体)、ジブチルベンゼン(各異性体)、ナフタレン等の芳香族炭化水素およびアルキル置換芳香族炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等の二トリル化合物;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(各異性体)、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン(各異性体)、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲン又はニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン(各異性体)等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類及びチオエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、安息香酸エチル等のエステル化合物;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等を反応溶媒として好適に使用する。いうまでもなく、当該反応において過剰量使用するヒドロキシ化合物も、反応溶媒として好適に使用される。
また、尿素とヒドロキシ化合物と有機第1アミンとの反応によるN−置換カルバミン酸エステルの製造方法として、下記工程(A)及び工程(B)を含む方法を用いることもできる。
工程(A):有機第1アミンと尿素とを反応させて、ウレイド基を有する化合物を含む反応混合物を得る工程。
工程(B):上記工程(A)で得たウレイド基を有する化合物と、ヒドロキシ化合物とを反応させて、N−置換カルバミン酸エステルを製造する工程。
工程(A)において使用する尿素の量は、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で1倍〜100倍の範囲が好ましい。尿素の使用量が少ない場合も複雑に置換したカルボニル化合物等が生成しやすくなるため、過剰量の尿素を使用することが好ましいが、あまりに過剰の尿素を使用すると、返って、複雑に置換した尿素化合物やカルボニル化合物が生成しやすくなる場合が生じる。そのため、より好ましくは1.1倍〜10倍、さらに好ましくは1.5倍〜5倍の範囲である。
工程(A)における反応温度は、30℃〜250℃の範囲で実施することができる。反応速度を高めるためには高温が好ましいが、一方で、高温では好ましくない反応が生起して、複雑に置換した。尿素化合物やカルボニル化合物を生成する場合があるので、より好ましくは50℃〜200℃、更に好ましくは70℃〜180℃の範囲である。反応温度を一定にするために、工程(A)を行う反応器に公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。
工程(A)における反応圧力は、使用する化合物の種類、反応系の組成、反応温度、反応装置等によって異なるが、通常、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲で実施されることが好ましく、工業的実施の容易性を考慮すると、0.1kPa〜5MPa(絶対圧)の範囲が好ましい。
工程(A)における反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく、好ましくは0.001〜100時間、より好ましくは0.01〜80時間、さらに好ましくは0.1〜50時間である。また、反応液を採取し、例えば、液体クロマトグラフィーによってウレイド基を有する化合物が所望量生成していることを確認して反応を終了することもできる。
工程(A)の反応を実施する際には、必要に応じて触媒を使用することができる。触媒としては、上記した、尿素とヒドロキシ化合物と有機第1アミンとの反応によるN−置換カルバミン酸エステルの製造において例示した触媒が使用できる。触媒については、工程(A)に限らず、上記理由で除去することが好ましい。より好ましくは、触媒を使用した工程の終了毎に除去する。除去する方法は上記したような公知の方法が好ましく使用できる。また、工程(A)において反応溶媒を使用することが好ましく、上記した、尿素とヒドロキシ化合物と有機第1アミンとの反応によるN−置換カルバミン酸エステルの製造において例示した反応溶媒を使用することができるが、好ましくは、次の工程(B)で用いるヒドロキシ化合物と同種のヒドロキシ化合物を反応溶媒として使用する。
工程(B)における、ウレイド基を有する化合物とヒドロキシ化合物との反応によってN−置換カルバミン酸エステルを製造する反応条件は、反応させる化合物によっても異なるが、ヒドロキシ化合物の量は、使用するウレイド基を有する化合物のウレイド基の数に対して化学量論比で1倍〜500倍の範囲が好ましい。1倍より少ない量では複雑に置換したカルボニル化合物や分子内にカルボニル結合を有する高分子量化合物が生成しやすくなるため、大過剰のヒドロキシ化合物を使用することが好ましいが、反応器の大きさを考慮すれば、より好ましくは1倍〜100倍の範囲、さらに好ましくは2倍〜50倍の範囲、一層好ましくは、3〜20倍の範囲である。
工程(B)における反応温度は、使用する化合物にもよるが、100℃〜350℃の範囲が好ましい。100℃より低い温度では、ヒドロキシ化合物と、副生するアンモニアが強く結合するために、反応が遅かったり、反応がほとんど起こらなかったり、あるいは、複雑に置換したカルボニル化合物が増加したりするため好ましくない。一方、350℃よりも高い温度では、ヒドロキシ化合物が脱水素変性したり、あるいは、生成物であるN−置換カルバミン酸エステルの分解反応や変性反応等が生じやすくなるため、好ましくない。このような観点から、より好ましい温度は120℃〜320℃の範囲、更に好ましくは140℃〜300℃の範囲である。
工程(B)における反応圧力は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置等によって異なるが、通常、0.01Pa〜10MPa(絶対圧)の範囲で実施されることが好ましく、工業的実施の容易性を考慮すると、0.1Pa〜5MPa(絶対圧)の範囲がより好ましく、気体のアンモニアを系外に除去することを考慮すると、0.1Pa〜1.5MPa(絶対圧)がさらに好ましい。
工程(B)における、N−置換カルバミン酸エステルを生成する反応は平衡反応であり、反応が原系に偏っているため、可能な限り、副生するアンモニアを系外に除去しながら反応をおこなうことが好ましい。好ましくは、反応液中のアンモニア濃度が1000ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、最も好ましくは10ppm以下となるようにアンモニアを除去するする。その方法としては、反応蒸留法、不活性ガスによる方法、膜分離、吸着分離による方法などを行うことができる。例えば、上記反応蒸留法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを蒸留によって気体状で分離する方法である。アンモニアの蒸留効率を上げるために、溶媒又はヒドロキシ組成物の沸騰下で行うこともできる。また、不活性ガスによる方法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを、気体状で不活性ガスに同伴させることによって反応系から分離する方法である。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等を、単独であるいは混合して使用し、上記不活性ガスを反応系中に導入する方法が好ましい。これらのアンモニアを系外に除去する方法は、単独で実施しても、複数種の方法を組み合わせて実施してもよい。
工程(B)における、上記反応において、例えば、反応速度を高める目的で、触媒を使用することができる。触媒としては、上記した、尿素とヒドロキシ化合物と有機第1アミンとの反応によるN−置換カルバミン酸エステルの製造において例示した触媒が使用できる。また、工程(B)において反応溶媒を使用することができ、上記した、尿素とヒドロキシ化合物と有機第1アミンとの反応によるN−置換カルバミン酸エステルの製造において例示した反応溶媒を使用することができるが、好ましくは、上記工程(B)で過剰に用いるヒドロキシ化合物を反応溶媒として使用する。
以上に示したN−置換カルバミン酸エステルの製造において使用される反応器は、公知の槽型反応器、塔型反応器、蒸留塔が使用できる。当該反応器及びラインの材質は、出発物質や反応物質に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316,SUS316L等が安価であり、好ましく使用できる。
以上の方法(工程(I)、工程(II)、工程(A)と工程(B))によって製造されるN−置換カルバミン酸エステルは、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解によるイソシアネートの製造に好適に使用されるが、イソシアネートの製造においてより好ましく使用されるN−置換カルバミン酸エステルは、エステル基が芳香族基であるN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルである。上記N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルは、工程(I)の炭酸エステルとして芳香族炭酸エステル(例えば、上記式(6)におけるR3、R4が芳香族基である炭酸エステル)を使用して製造されるN−置換カルバミン酸エステル及び工程(II)または工程(B)のヒドロキシ化合物として芳香族ヒドロキシ化合物を使用して製造されるN−置換カルバミン酸エステルが相当する。一方、工程(I)の炭酸エステルとして脂肪族炭酸エステル(例えば、上記式(6)におけるR3、R4が脂肪族基である炭酸エステル)を使用して製造されるN−置換カルバミン酸エステル及び工程(II)または工程(B)のヒドロキシ化合物としてアルコールを使用して製造されるN−置換カルバミン酸エステルは、エステル基が脂肪族基であるN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルである。上記N−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルは、N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルに比べて熱分解反応を生起しにくい傾向にある。
上記した製造方法で得られるN−置換カルバミン酸エステルは、使用する化合物の種類によって、N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルとすることもできるし、N−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルとすることもできる。上記した製造方法によって、N−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルを得た場合は、下記工程(Y)によって、熱分解が容易なN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルに変換したのち、熱分解反応に使用することができる。なお、当該工程は、N−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルのエステル基を変換する工程であることから、本実施の形態では「エステル交換工程」とも称する。
工程(Y):N−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルと、芳香族ヒドロキシ化合物とを反応させて、上記芳香族ヒドロキシ化合物に由来するエステル基を有するN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルを製造する工程。
なお、上記工程(Y)では、N−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルに由来するアルコールが生成する。以下、上記工程(Y)について説明する。
反応させる芳香族ヒドロキシ化合物は、上記式(11)で表される芳香族ヒドロキシ化合物と同種の芳香族ヒドロキシ化合物を使用することができる。上記芳香族ヒドロキシ化合物は、単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
上記工程(Y)は、公知の方法(例えば、WO2008/059953参照)を参考に、使用する化合物等に応じて様々な方法をおこなうことができる。
工程(Y)の反応条件は、反応させる化合物によって異なるが、原料のN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルを構成するエステル基に対して、芳香族ヒドロキシ化合物を化学量論比で表して、2〜1000倍の範囲で使用するのが好ましい。反応を早期に完結させるためには、上記芳香族ヒドロキシ化合物は、原料のN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルを構成するエステル基に対して過剰量が好ましいが、反応器の大きさを考慮すれば、より好ましくは2〜100倍の範囲、さらに好ましくは、5〜50倍の範囲である。
反応温度は、好ましくは、100℃〜300℃の範囲であり、反応速度を高めるためには高温が好ましいが、一方で、高温では副反応が生じやすくなる場合があるので、より好ましくは150℃〜250℃の範囲である。反応温度を一定にするために、上記反応器に公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、好ましくは20〜1×106 Paの範囲で行われる。反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく好ましくは0.001〜100時間、より好ましくは0.01〜50時間、さらに好ましくは0.1〜30時間である。また、反応液を採取し、例えば、液体クロマトグラフィーによって目的のN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルが所望量生成していることを確認して反応を終了することもできる。
該工程(Y)において、触媒は必ずしも必要ではないが、反応温度を低下させたり、反応を早期に完結させるために、触媒を使用することは何ら問題ない。触媒はN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルの重量に対して好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%で使用される。触媒としては、例えば、ルイス酸およびルイス酸を生成する遷移金属化合物、有機スズ化合物、銅族金属、亜鉛、鉄族金属の化合物、アミン類が挙げられる。具体的には、AlX3、TiX3、TiX4、VOX3、VX5、ZnX2、FeX3、SnX4(ここでXは、ハロゲン、アセトキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基である)で表されるルイス酸およびルイス酸を生成する遷移金属化合物; (CH3)3SnOCOCH3、(C2H5)SnOCOC6H5、Bu3SnOCOCH3、Ph3SnOCOCH3、Bu2Sn(OCOCH3)2、Bu2Sn(OCOC11H23)2、Ph3SnOCH3、(C2H5)3SnOPh、Bu2Sn(OCH3)2、Bu2Sn(OC2H5)2、Bu2Sn(OPh)2、Ph2Sn(CH3)2、(C2H5)3SnOH、PhSnOH、Bu2SnO、(C8H17)2SnO、Bu2SnCl2、BuSnO(OH)等で表される有機スズ化合物;CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、CuI2、Cu(OAc)2、Cu(acac)2、オレフィン酸銅、Bu2Cu、(CH3O)2Cu、AgNO3、AgBr、ピクリン酸銀、AgC6H6ClO4等の銅族金属の化合物;Zn(acac)2等の亜鉛の化合物;Fe(C10H8)(CO)5、Fe(CO)5、Fe(C4H6)(CO)3、Co(メシチレン)2(PEt2Ph2)、CoC5F5(CO)7、フェロセン等の鉄族金属の化合物等が挙げられる。(上記において、Buはブチル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトンキレート配位子を表す。)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミンなどのアミン類が使用に適し、中でも、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクチル酸鉛、スタナオクトエートなどの有機金属触媒が挙げられる。これらの化合物は単独でも二種類以上の混合物として使用してもよい。
本実施の形態においては、必ずしも反応溶媒を使用する必要はないが、反応操作を容易にする等の目的で適当な不活性溶媒を用いることができる。不活性溶媒としては、例えば、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)などのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン(各異性体)、ジブチルベンゼン(各異性体)、ナフタレン等の芳香族炭化水素およびアルキル置換芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(各異性体)、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン(各異性体)、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲンまたはニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン(各異性体)等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル及びチオエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類;シリコーン油を使用することができる。これらの溶媒は単独でも2種類以上の混合物として使用することもできる。
本実施の形態におけるエステル交換の反応は平衡反応である。したがって、効率よくエステル交換をおこなうために、生成物であるアルコール(原料のN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルに由来するアルコール)を反応系より除去しながら、反応を進めることが好ましい。したがって、原料のN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルに由来するアルコールの標準沸点よりも、エステル交換で使用する芳香族ヒドロキシ化合物の標準沸点が高くなるように芳香族ヒドロキシ化合物を選択しておくと、反応系で、最も標準沸点の低い化合物が、原料のN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルに由来するアルコールとなり、反応系からの生成物の除去が容易である。
また、エステル交換を効率よく進行させるため、好ましくは、エステル交換を連続法でおこなう。すなわち、原料のN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルと芳香族ヒドロキシ化合物を、反応器に連続的に供給して、エステル交換をおこなう。そして、原料のN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルに由来するアルコール生成物を気体成分として反応器から取り出し、生成するN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを含む反応液を、反応器底部から連続的に取り出す。
エステル交換をおこなう反応器およびラインの材質は、出発物質や反応物質に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316、SUS316Lなどが安価であり、好ましく使用できる。反応器の形式に、特に制限はなく、公知の槽状、塔状の反応器が使用できる。たとえば攪拌槽、多段攪拌槽、蒸留塔、多段蒸留塔、多管式反応器、連続多段蒸留塔、充填塔、薄膜蒸発器、内部に支持体を備えた反応器、強制循環反応器、落膜蒸発器、落滴蒸発器、細流相反応器、気泡塔のいずれかを含む反応器を用いる方式、及びこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。平衡を生成系側に効率的にずらすという観点から、薄膜蒸発器、塔状の反応器を用いる方法が好ましく、また、原料のN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルに由来するアルコール生成物を気相に速やかに移動させるという観点から、気−液接触面積の大きな構造が好ましい。
該エステル交換反応に使用できる多段蒸留塔とは、蒸留の理論段数が2段以上の多段を有する蒸留塔であって、連続蒸留が可能なものであるならばどのようなものであってもよい。このような多段蒸留塔としては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、向流トレイ等のトレイを使用した棚段塔方式のものや、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、スルザーパッキング、メラパック等の各種充填物を充填した充填塔方式のものなど、通常多段蒸留塔として用いられるものならばどのようなものでも使用することができる。充填塔は、塔内に上記した公知の充填剤を充填した充填塔ならばどのようなものでも使用することができる。さらに、棚段部分と充填物の充填された部分とをあわせもつ棚段−充填混合塔方式のものも好ましく用いられる。
反応器には、不活性ガスおよび/または液体状の不活性溶媒を該反応器下方から供給するラインを別途取り付けてもよい。また、目的のN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルと芳香族ヒドロキシ化合物を含有する混合液が、原料のN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルを含有している場合は、上記混合液の一部あるいは全部を、再度、上記反応器に循環させるラインを反応器に取り付けてもよい。なお、前述の不活性溶媒を用いる場合、上記不活性溶媒は気体状および/または液体状であってもよい。
反応器から抜き出した、原料のN−置換カルバミン酸−O−脂肪族エステルに由来するアルコールを含む気体成分は、好ましくは蒸留塔など公知の方法を用いて精製して、工程(I)および/または工程(II)および/または工程(A)および/または工程(B)のアルコールとして再利用することができる。
<熱分解反応>
本実施の形態で用いる、活性水素含有化合物(A)と該活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)とを含有する混合物は、好ましくは、上記した、N−置換カルバミン酸エステル、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換―S−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換ジチオカルバミン酸エステル、N−置換カルバミン酸ハロゲニドを熱分解反応に付して得られる混合物である。いずれの化合物においても、その熱分解反応に付す操作は同様であることから、以下、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応を例に、上記したこれらの化合物の熱分解反応について説明する。N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応では、イソシアネートとヒドロキシ化合物とが生成するが、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステルの熱分解反応の場合は、イソシアネートを対応するイソチオシアネートと置き換えればよく、N−置換−S−置換チオカルバミン酸エステルの熱分解反応の場合は、ヒドロキシ化合物を、対応するチオールまたは芳香族チオールと置き換えればよく、N−置換ジチオカルバミン酸エステルの熱分解反応の場合は、イソシアネートを対応するイソチオシアネート、ヒドロキシ化合物を、対応するチオールまたは芳香族チオールと置き換えればよく、N−置換カルバミン酸ハロゲニドの熱分解反応の場合は、ヒドロキシ化合物をハロゲン化水素と置き換えればよい。
<N−置換カルバミン酸エステルの熱分解>
本実施の形態における、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物は、好ましくは、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によって生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物である。ここで、N−置換カルバミン酸エステルを熱分解反応に付して、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物を製造する工程について説明する。
本工程では、溶媒を用いても用いなくてもよいが、好ましくはヒドロキシ化合物の存在下で実施する。上記したように、N−置換カルバミン酸エステルの製造において、好ましくはヒドロキシ化合物が使用され、上記ヒドロキシ化合物をそのまま本工程におけるヒドロキシ化合物として使用することができる。また、炭酸エステルと有機第1アミンとの反応によってN−置換カルバミン酸エステルを製造する方法では、反応副生物としてヒドロキシ化合物が生成するので、上記ヒドロキシ化合物をそのまま本工程におけるヒドロキシ化合物として使用することができる。必要であれば、ヒドロキシ化合物の量を調整して本工程を実施してもよい。
上記において、ヒドロキシ化合物の量を調整する、あるいは新たに調整して用いると記載したが、その量は、N−置換カルバミン酸エステルの移送効率や、貯蔵の際の貯槽の大きさを考慮すると、ヒドロキシ化合物のモル数の値が、N−置換カルバミン酸エステルに含まれるエステル基の総数の値に対して、好ましくは0.2〜50倍、より好ましくは、0.3〜30倍、さらに好ましくは、1〜20倍である。
その他に添加してもよい溶媒としては、反応操作を容易にする等の目的で適当な不活性溶媒、例えば、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)などのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン(各異性体)、ジブチルベンゼン(各異性体)、ナフタレン等の芳香族炭化水素およびアルキル置換芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(各異性体)、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン(各異性体)、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲンまたはニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン(各異性体)等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレートなどが挙げられる。
熱分解反応の反応温度は、好ましくは100℃〜350℃の範囲であり、反応速度を高めるためには高温が好ましい。ただし、高温ではN−置換カルバミン酸エステルおよび/または生成物であるイソシアネートによって、上述したような副反応が引き起こされる場合があるので、より好ましくは150℃〜250℃の範囲である。反応温度を一定にするために、上記反応器に公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、好ましくは20〜1×106 Paの範囲で行われる。反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく、好ましくは0.001〜100時間、より好ましくは0.005〜50時間、さらに好ましくは0.01〜10時間である。
本実施の形態において、好ましくは触媒を使用しない。ただし、上記N−置換カルバミン酸エステルを製造する際に、いずれかの工程で触媒を使用した場合、上記触媒残渣等が上記熱分解工程に供給される場合がある。本実施の形態において、そのような触媒残渣等が存在していても差し支えない。
N−置換カルバミン酸エステルは、高温下で長時間保持された場合、例えば、2分子のN−置換カルバミン酸エステルからの脱炭酸エステル反応によって尿素結合含有化合物を生成する反応や、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解によって生成するイソシアネート基との反応によってアロファネート基を生成する反応等の副反応が生起されることがある。したがって、上記N−置換カルバミン酸エステルおよび上記イソシアネートが高温下に保持される時間は、可能な限り短時間であることが好ましい。したがって、上記熱分解反応は、好ましくは連続法でおこなわれる。連続法とは、上記N−置換カルバミン酸エステルを含有する混合物を、反応器に連続的に供給して、熱分解反応に付し、生成するイソシアネートおよびヒドロキシ化合物を、上記熱分解反応器から連続的に抜き出す方法である。上記連続法において、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によって生成する低沸点成分は、好ましくは、気相成分として上記熱分解反応器より回収され、残りは液相成分として上記熱分解反応器の底部より回収される。熱分解反応器中に存在する全ての化合物を気相成分として回収することもできるが、液相成分を上記熱分解反応器中に存在させることによって、N−置換カルバミン酸エステルおよび/またはイソシアネートによって生起される副反応によって生成するポリマー状化合物を溶解して、上記ポリマー状化合物の上記熱分解反応器への付着・蓄積を防止する効果が得られる。N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応により、イソシアネートとヒドロキシ化合物が生成するが、これらの化合物のうち、少なくとも一方の化合物を気相成分として回収する。どの化合物を気相成分として回収するかは、熱分解反応条件等に依存する。
ここで、本実施の形態で用いる用語「N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によって生成する低沸点成分」とは、上記N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によって生成する、ヒドロキシ化合物および/またはイソシアネートが相当するが、特に、当該熱分解反応が実施される条件下で、気体として存在し得る化合物を指す。
例えば、熱分解反応によって生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物とを気相成分として回収し、N−置換カルバミン酸エステルを含有する液相成分を回収する方法を採用することができる。当該方法において、熱分解反応器でイソシアネートとヒドロキシ化合物を別々に回収してもよい。
上記液相成分が、N−置換カルバミン酸エステルを含有する場合は、好ましくは、上記液相成分の一部または全部を、上記熱分解反応器の上部に供給し、上記N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付す。ここでいう、熱分解反応器の上部とは、例えば、上記熱分解反応器が蒸留塔の場合は、理論段数で塔底より2段目以上上の段を指し、上記熱分解反応器が薄膜蒸留器の場合は、加熱されている伝面部分よりも上の部分を指す。上記液相成分の一部または全部を熱分解反応器の上部に供給する際は、上記液相成分を、好ましくは50℃〜280℃、より好ましくは、70℃〜230℃、さらに好ましくは、100℃〜200℃に保持して移送する。
また、例えば、熱分解反応によって生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物とを気相成分として回収し、N−置換カルバミン酸エステルを含有する液相成分を熱分解反応器の底部から回収する方法を採用することができる。当該方法においても、回収されたイソシアネートを含有する気体成分は、好ましくは、気相で、上記イソシアネートを精製分離するための蒸留装置に供給される。一方、N−置換カルバミン酸エステルを含有する液相成分は、その一部もしくは全部を、上記熱分解反応器の上部に供給し、該N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付す。上記液相成分の一部または全部を熱分解反応器の上部に供給する際は、上記液相成分を、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは、70℃〜170℃、さらに好ましくは、100℃〜150℃に保持して移送する。
さらに、例えば、熱分解反応によって生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物のうち、ヒドロキシ化合物を気相成分として回収し、上記イソシアネートを含有する混合物を液相成分として、上記熱分解反応器の底部より回収する方法を採用することができる。この場合、上記液相成分を蒸留装置に供給し、イソシアネートを回収する。上記液相成分に、N−置換カルバミン酸エステルが含有される場合には、好ましくは、上記N−置換カルバミン酸エステルを含有する混合物は、その一部または全部を、上記熱分解反応器の上部に供給し、上記N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付すことが好ましい。上記液相成分の一部または全部を熱分解反応器の上部に供給する際は、上記液相成分を、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは、70℃〜170℃、さらに好ましくは、100℃〜150℃に保持して移送する。
先にも述べたように、上記熱分解反応においては、液相成分を該熱分解反応器の底部より回収することが好ましい。それは、液相成分を上記熱分解反応器中に存在させることによって、上述したような、N−置換カルバミン酸エステルおよび/またはイソシアネートによって生起される副反応によって生成するポリマー状副生物を溶解して、液相成分として熱分解反応器から排出させることができるからである。これにより、上記ポリマー状化合物の上記熱分解反応器への付着・蓄積を低減する効果が得られる。
液相成分にN−置換カルバミン酸エステルが含有される場合には、上記液相成分の一部もしくは全部を、上記熱分解反応器の上部に供給し、上記N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付すが、この工程を繰り返すと、液相成分にポリマー状副生物が蓄積される場合がある。その場合には、上記液相成分の一部または全部を反応系から除去し、ポリマー状副生物の蓄積を減少させる、もしくは、一定の濃度に保持することができる。
上記熱分解反応器の形式に、特に制限はないが、気相成分を効率よく回収するために、好ましくは、公知の蒸留装置を使用する。例えば、蒸留塔、多段蒸留塔、多管式反応器、連続多段蒸留塔、充填塔、薄膜蒸発器、内部に支持体を備えた反応器、強制循環反応器、落膜蒸発器、落滴蒸発器のいずれかを含む反応器を用いる方式、およびこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。低沸点成分を素早く反応系から除去する観点から、好ましくは、管状反応器、より好ましくは、管状薄膜蒸発器、管状流下膜蒸発器等の反応器を用いる方法であり、生成する低沸点成分を気相にすみやかに移動させられる気−液接触面積の大きな構造が好ましい。
熱分解反応器およびラインの材質は、上記ウレタンや生成物である芳香族ヒドロキシ化合物、イソシアネート等に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316、SUS316L等が安価であり、好ましく使用できる。
<中間沸点不活性化合物>
次に、本実施形態において使用する中間沸点不活性化合物について説明する。
ここで、「中間沸点不活性化合物」という語を使用しているが、これは、活性水素含有化合物(A)と該活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)とを含有する混合物を、多段蒸留塔によって分離する方法であって、活性水素含有化合物(A)の標準沸点と化合物(B)の標準沸点の間に標準沸点を有し、かつ活性水素含有化合物(A)と化合物(B)の双方に対して化学的に不活性である中間沸点不活性化合物(C)の存在下に該多段蒸留塔によって活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを蒸留分離する分離方法における中間沸点不活性化合物(C)を指す。
まず、中間沸点不活性化合物(C)の特徴として、活性水素含有化合物(A)と該活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)に対して不活性である点が挙げられる。「不活性」とは、(A)と(B)とに対して反応性を有しないという意味である。該蒸留の操作温度で、中間沸点不活性化合物(C)は、(A)と(B)それぞれと、または別々に共有結合を形成しない化合物である。
好ましい中間沸点化合物は、イソシアネート及びヒドロキシ化合物と反応する官能基を有しない化合物であり、より好ましくは、活性水素を有しない化合物である。
このような中間沸点不活性化合物(C)としては、(1)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物、(2)同種の又は異種の、直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物が、エーテル結合またはチオエーテル結合を介して結合した化合物(すなわち、2つの炭化水素化合物がエーテル結合またはチオエーテル結合を介して結合した化合物。上記炭化水素化合物は直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有し、2つの炭化水素化合物は同種のものであっても、異種のものであってもよい。)、(3)炭化水素基からなる置換基を有してもよい芳香族炭化水素化合物、(4)同種の又は異種の芳香族炭化水素化合物が、エーテル結合またはチオエーテル結合を介して結合した化合物、及び(5)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物と芳香族炭化水素化合物とが、エーテル結合またはチオエーテル結合を介して結合した化合物、(6)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子、または、炭化水素基からなる置換基を有してもよい芳香族炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を挙げることができる。
中間沸点不活性化合物の具体例としては、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)、ドデカン(各異性体)、テトラデカン(各異性体)、ペンタデカン(各異性体)、ヘキサデカン(各異性体)、オクタデカン(各異性体)、ノナデカン(各異性体)等の炭化水素化合物;オクチルエーテル(各異性体)、ノニルエーテル(各異性体)、デシルエーテル(各異性体)、ドデシルエーテル(各異性体)、テトラデシルエーテル(各異性体)、ペンタデシルエーテル(各異性体)、ヘキサデシルエーテル(各異性体)、オクタデシルエーテル(各異性体)、ノナデシルエーテル(各異性体)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の、炭化水素化合物がエーテル結合を介して結合したエーテル類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジブチルスルフィド(各異性体)、ジヘキシルスルフィド(各異性体)、オクチルスルフィド(各異性体)、ノニルスルフィド(各異性体)、デシルスルフィド(各異性体)、ドデシルスルフィド(各異性体)、テトラデシルスルフィド(各異性体)、ペンタデシルスルフィド(各異性体)、ヘキサデシルスルフィド(各異性体)、オクタデシルスルフィド(各異性体)、ノナデシルスルフィド(各異性体)等の、炭化水素化合物がチオエーテル結合を介して結合したチオエーテル類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン(各異性体)、ペンチルベンゼン(各異性体)、ヘキシルベンゼン(各異性体)、オクチルベンゼン(各異性体)、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルエタン(各異性体)、(メチルフェニル)フェニルエタン(各異性体)、ジメチルビフェニル(各異性体)、ベンジルトルエン(各異性体)等の芳香族炭化水素化合物;ジフェニルエーテル、ジ(メチルベンジル)エーテル(各異性体)、ジ(エチルベンジル)エーテル(各異性体)、ジ(ブチルベンジル)エーテル(各異性体)、ジ(ペンチルベンジル)エーテル(各異性体)、ジ(ヘキシルベンジル)エーテル(各異性体)、ジ(オクチルベンジル)エーテル(各異性体)、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル等の芳香族炭化水素化合物がエーテル結合を介して結合した芳香族エーテル類;ジフェニルスルフィド、ジ(メチルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(エチルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(ブチルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(ペンチルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(ヘキシルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(オクチルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(メチルフェニル)スルフィド、ジベンジルスルフィド等の芳香族炭化水素化合物がチオエーテル結合を介して結合した芳香族チオエーテル類;メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ブトキシベンゼン(各異性体)、ジメトキシベンゼン(各異性体)、ジエトキシベンゼン(各異性体)、ジブトキシベンゼン(各異性体)等の炭化水素化合物と芳香族炭化水素化合物とがエーテル結合を介して結合した化合物;クロロメタン、クロロエタン、クロロペンタン(各異性体)、クロロオクタン(各異性体)、ブロモメタン、ブロモエタン、ブロモペンタン(各異性体)、ブロモオクタン(各異性体)、ジクロロエタン(各異性体)、ジクロロペンタン(各異性体)、ジクロロオクタン(各異性体)、ジブロモエタン(各異性体)、ジブロモペンタン(各異性体)、ジブロモオクタン(各異性体)、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、塩化ベンジル、臭化ベンジル等のハロゲン化物を挙げることができる。
これらの中でも、(2)、(4)、(5)のようなエーテル結合またはチオエーテル結合を有する化合物は、条件によっては酸化物や過酸化物を生成する場合があり、熱的に安定であるという観点から、これらの中でも、(1)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物、(3)炭化水素基からなる置換基を有してもよい芳香族炭化水素化合物、(6)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子、または、炭化水素基からなる置換基を有してもよい芳香族炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化物が好ましい。また、(6)のようなハロゲン原子を含有する化合物は、条件によっては、分解、またはハロゲンラジカルを発生し、生成物にハロゲン化物が混入する場合があることから、(1)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物、(3)炭化水素基からなる置換基を有してもよい芳香族炭化水素化合物がさらに好ましい。
また、上記中間沸点不活性化合物(C)の特徴として、上記中間沸点不活性化合物(C)の標準沸点が、上記(A)の標準沸点と上記(B)の標準沸点の間の温度である。すなわち、中間沸点不活性化合物の標準沸点(Tc℃)は、分離する活性水素含有化合物(A)の標準沸点(Ta℃)と化合物(B)の標準沸点(Tb℃)に対して、Tb<Tc<Ta、又はTa<Tc<Tbであり、取り扱う活性水素含有化合物(A)と化合物(B)に合わせて、該中間沸点不活性化合物(C)は適宜選択して使用することができる。ここで標準沸点とは、1気圧下での沸点を表す。標準沸点は一般式等の構造で規定することは困難であり、各々の化合物について標準沸点を測定又は調査して選択する。標準沸点の測定は、例えば、第十四改正日本薬局方第一部54で規定の方法等の公知の方法で行うことができ、当業者であれば通常実施できる。
中間沸点不活性化合物(C)の標準沸点(Tc℃)は、分離する(B)の標準沸点(Tb℃)及び(A)の標準沸点(Ta℃)と5℃以上、さらに好ましくは10℃以上異なることが好ましい。この場合、(A)と中間沸点不活性化合物(C)、又は中間沸点不活性化合物(C)と(B)、との分離が容易である。すなわち、中間沸点不活性化合物(C)の標準沸点が、(B)の標準沸点及び(A)の標準沸点と5℃以上離れていることは、本実施形態の根幹をなすものではない。ただし、分離される2成分の標準沸点が5℃以上離れていれば、工業的に充分蒸留分離可能であるという知見に基づき、(A)と(B)との分離後に生じ得る工程が容易となるとの観点で、5℃以上はなれていることが好ましいとしている。したがって、この好ましい態様は、現状公知の分離手段についてのみ成立するといえる。
<活性水素含有化合物(A)と、該活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)との分離>
活性水素含有化合物(A)と、上記活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)とを含有する混合物を、多段蒸留塔の、上述の中間沸点不活性化合物(C)を含む不活性層に供給し、(A)と(B)とを分離する方法について説明する。
活性水素含有化合物(A)と、上記活性水素含有化合物と可逆的に反応する化合物(B)とを含有する混合物は、多段蒸留塔内の、上述した中間沸点不活性化合物(C)の不活性層に供給され、上記多段蒸留塔にて(A)と(B)が分離回収される。すなわち、(A)と(B)とを含有する混合物を上記多段蒸留塔に供給する際には、該多段蒸留塔内の、上記(A)と上記(B)との混合物が供給される供給口を具備する高さは、上記(C)からなる不活性層が形成されている。
活性水素含有化合物(A)、化合物(B)は、該多段蒸留塔の中段に供給する。ここでいう「中段」とは、該多段蒸留塔において、高さ方向で塔頂部と塔底部との間であって、該供給口を具備する段の上部および下部に少なくとも1段、好ましくは、少なくとも3段の理論段が存在し得る位置である。塔頂部とは、該多段蒸留塔の最上部であって、連続的にガス相を抜き出す部分を指し、塔底部とは、該多段蒸留塔の最底部を指す。
活性水素含有化合物(A)は、液状で供給しても、気液混合相の状態で供給しても、ガス状で供給してもよいが、該多段蒸留塔へ活性水素含有化合物(A)を供給するラインでの滞留時間を短くして、活性水素含有化合物(A)の熱変性反応等を抑制する観点から、好ましくは、ガス状で供給する。化合物(B)についても、液状で供給しても、気液混合相の状態で供給しても、ガス状で供給してもよいが、該多段蒸留塔へ化合物(B)を供給するラインでの滞留時間を短くして、化合物(B)の熱変性反応等を抑制する観点から、好ましくは、ガス状で供給する。すなわち、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを含有する混合物は、液状で供給しても、気液混合相の状態で供給しても、ガス状で供給してもよいが、該多段蒸留塔へ活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを含有する混合物を供給するラインでの滞留時間を短くして、活性水素含有化合物(A)、化合物(B)それぞれの熱変性反応を抑制する観点から、好ましくは、ガス状で供給する。また、該混合物を液状で供給する場合、該混合物をガス状で供給する場合に比べて、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との反応が進行しやすくなる場合が多いため、そのような観点からも活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを含有する混合物は、好ましくはガス状で供給する。
本実施の形態における「不活性層」は、主として上述した中間沸点不活性化合物(C)によって形成された層を指し、好ましくはガス状の(C)であって、該ガス状の(C)によって(A)と(B)のガス層が分離する。より好ましくは、該ガス状の(C)からなる不活性層にガス状の混合物を供給し、蒸留分離によって該ガズ状の(A)、該ガス状の(B)が該不活性層の上方または下方に分離する。
活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との混合物を多段蒸留塔に供給し、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを分離しようとすると、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との反応によって活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との結合体(反応物)が生成して収率を低下させる場合が多い。該不活性層に活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との混合物を供給し、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを分離および/または希釈することによって、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との接触による活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との反応を抑制し、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)を分離できる効果を奏すると考えられる。また、例えば、活性水素含有化合物(A)がヒドロキシ化合物、化合物(B)がイソシアネートの場合を例に考えると、本実施の形態のような方法を採らなければ、蒸留中にN−置換カルバミン酸エステルが生成し、蒸留中やその下流の反応においてN−置換カルバミン酸エステルが重合し、ポリマー状化合物が装置に付着するという問題が生じる場合がある。本実施の形態の方法によれば、このような問題も防止できる。
本実施の形態の不活性層は、該供給口の上部および下部に、少なくとも1段、好ましくは少なくとも3段の範囲に形成されている。該不活性層の、液相および/または気相、好ましくは、液相およびガス相は、中間沸点不活性化合物(C)の含有率が、好ましくは5wt%以上、より好ましくは10wt%以上、さらに好ましくは30wt%以上である。該中間沸点不活性化合物(C)の含有率は、該多段蒸留塔より、液相成分および/またはガス相成分をサンプリングして、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等の公知の方法で分析することにより求めることができる。また、あらかじめ該多段蒸留塔内の成分のT−XY線図を求めておき、該多段蒸留塔内の任意の場所における温度と圧力から該T−XY線図を用いて中間沸点不活性化合物(C)の含有率を推定してもよい。
該不活性層の範囲は、該多段蒸留塔底部に具備する蒸発器に与える熱量、該多段蒸留塔頂部における還流量、中間沸点不活性化合物(C)の供給量、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを含有する混合物の供給量、該多段蒸留塔内の圧力等を制御することにより調整することができる。また、場合によっては、上記した範囲以外の段に該中間沸点不活性化合物(C)が存在する場合があっても構わない。
一方、該多段蒸留塔への該混合物の供給を開始する時は、該(C)のみを該多段蒸留塔内に導入して該(C)を炊き上げることにより、気相部を該(C)のガスで満たしておいた状態とした多段蒸留塔に該混合物を供給する方法が好ましく、さらに好ましくは、該(C)の全還流状態としておいた多段蒸留塔に該混合物を供給する。
上記したように、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを含有する混合物は、好ましくはガス状で該多段蒸留塔の不活性層に供給される。該混合物が、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との結合体(例えば、上記式(5)で表される化合物)を熱分解反応に付して得られる、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを含有する混合物である場合、該熱分解反応がおこなわれる熱分解反応器と該蒸留塔とをつなぐ配管を、好ましくは、熱分解反応によって生成する活性水素含有化合物(A)と化合物(B)の、操作圧力における凝縮温度以上に加熱し、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを含有する混合物をガス状で移送する。
例えば、N−置換カルバミン酸エステルを熱分解反応に付して、生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物を、該蒸留塔に気体状態で供給する場合、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解がおこなわれる熱分解反応器と該蒸留塔とをつなぐ配管を、好ましくは、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解によって生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物の凝縮温度以上に加熱し、イソシアネートとヒドロキシ化合物をガス状で移送する。
一方、中間沸点不活性化合物(C)は、該多段蒸留塔に液体で供給することもできるし、ガス状で供給することもできる。該中間沸点不活性化合物(C)は、該多段蒸留塔のどの位置から供給してもよく、該多段蒸留塔の上部に具備する供給口より供給してもよいし、該多段蒸留塔の下部に具備する供給口より供給してもよいし、該混合物が供給される供給口と同じ高さに具備する供給口より供給してもよいし、該混合物が供給される供給口より供給してもよい。
中間沸点不活性化合物(C)の使用量は、使用する化合物や分離する化合物、操作条件にもよるが、該混合物の重量に対して0.01倍〜100倍であることが好ましい。活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との反応を抑制するためには、中間沸点不活性化合物(C)の使用量は、過剰とすることが好ましいが、あまりに大過剰とすると、蒸留塔での処理量(活性水素含有化合物(A)と化合物(B)とを含有する混合物の供給量)が低下することになり好ましくない。したがって、中間沸点不活性化合物(C)の使用量は、該混合物の重量に対してより好ましくは0.1倍〜50倍、さらに好ましくは0.3倍〜30倍である。
活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との蒸留分離がおこなわれる圧力は、該蒸留分離が実施される該多段蒸留塔に供給される成分の組成、温度、該多段蒸留塔の種類等によって異なり、減圧下でも、大気圧下でも、加圧下でもおこなわれるが、通常、0.01kPa〜10MPaの範囲で実施されることが好ましく、工業的実施の容易性を考慮すると、より好ましくは0.1kPa〜1MPaの範囲、さらに好ましくは0.5kPa〜50kPaの範囲が好ましい。
活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との蒸留分離がおこなわれる温度は、該蒸留分離が実施される該多段蒸留塔に供給される成分の組成、温度、該多段蒸留塔の種類等によって異なるが、あまりに高温の場合は、活性水素含有化合物(A)、化合物(B)、該中間沸点不活性化合物(C)が熱変性する場合があり、一方で、あまりに低温の場合は、冷却のための新たな設備を設ける必要が生じたりして工業的な実施が容易でなくなることから、好ましくは、50℃〜350℃の範囲、より好ましくは80℃〜300℃、さらに好ましくは100℃〜250℃の範囲でおこなわれる。
該中間沸点不活性化合物(C)は、該多段蒸留塔の塔頂より留出させてもよいし、該多段蒸留塔の塔底より抜き出してもよい。例えば、中間沸点不活性化合物(C)の標準沸点(Tc℃)が、活性水素含有化合物(A)の標準沸点(Ta℃)と化合物(B)の標準沸点(Tb℃)に対して、Tb<Tc<Taの場合、該中間沸点不活性化合物(C)を、蒸留塔の塔頂より化合物(B)と共に抜き出すこともできるし、蒸留塔の塔底より活性水素含有化合物(A)と共に抜き出すこともできるし、あるいは、塔頂と塔底より該中間沸点不活性化合物(C)を抜き出すこともできる。好ましくは、塔頂、塔底のいずれかから該中間沸点不活性化合物(C)を抜き出す方法であり、例えば、中間沸点不活性化合物(C)を塔頂より化合物(B)と共に抜き出して、得られる該中間沸点不活性化合物(C)と化合物(B)との混合物をさらに蒸留して化合物(B)を回収し、塔底からは、実質的に中間沸点不活性化合物(C)を含まない活性水素含有化合物(A)を回収して、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との結合体、例えば、上記式(5)で表される化合物の製造工程や該化合物の熱分解工程にリサイクルすることができる。また、例えば、中間沸点不活性化合物を塔底より活性水素含有化合物(A)と共に抜き出して、得られる該中間沸点不活性化合物(C)と活性水素含有化合物(A)との混合物をさらに蒸留分離してヒドロキシ化合物を回収して、活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との結合体、例えば、上記式(5)で表される化合物の製造工程や該化合物の熱分解工程にリサイクルし、塔頂からは、実質的に中間沸点不活性化合物(C)を含まない化合物(B)を回収することができる。また、回収された中間沸点不活性化合物(C)は、リサイクル使用することができる。
また、例えば、中間沸点不活性化合物の標準沸点(Tc℃)が、活性水素含有化合物(A)の標準沸点(Ta℃)と化合物(B)の標準沸点(Tb℃)に対して、Ta<Tc<Tbの場合、該中間沸点不活性化合物(C)を、蒸留塔の塔頂より活性水素含有化合物(A)と共に抜き出すこともできるし、蒸留塔の塔底より化合物(B)と共に抜き出すこともできるし、あるいは、塔頂と塔底より該中間沸点不活性化合物(C)を抜き出すこともできる。この場合も、好ましくは、塔頂、塔底のいずれかから該中間沸点不活性化合物(C)を抜き出す方法であり、例えば、中間沸点不活性化合物を塔頂より活性水素含有化合物(A)と共に抜き出して、得られる該中間沸点不活性化合物(C)と活性水素含有化合物(A)との混合物をさらに蒸留分離して化合物(B)を回収して活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との結合体、例えば、上記式(5)で表される化合物の製造工程や該化合物の熱分解工程にリサイクルし、塔底からは、実質的に中間沸点不活性化合物(C)を含まない化合物(B)を回収することができる。また、例えば、中間沸点不活性化合物(C)を塔底より化合物(B)と共に抜き出して、得られる該中間沸点不活性化合物(C)と化合物(B)との混合物を蒸留分離して化合物(B)を回収し、塔頂からは、実質的に中間沸点不活性化合物(C)を含まない活性水素含有化合物(A)を回収して活性水素含有化合物(A)と化合物(B)との結合体、例えば、上記式(5)で表される化合物の製造工程や該化合物の熱分解工程にリサイクルすることができる。また、回収された中間沸点不活性化合物(C)は、リサイクル使用することができる。
活性水素含有化合物(A)と化合物(B)が、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解によって生成するヒドロキシ化合物とイソシアネートである場合を例にすると、例えば、中間沸点不活性化合物の標準沸点(Tc℃)が、イソシアネートの標準沸点(Tb℃)とヒドロキシ化合物の標準沸点(Ta℃)に対して、Tb<T<Taの場合、該中間沸点不活性化合物(C)を、多段蒸留塔の塔頂よりイソシアネートと共に抜き出すこともできるし、多段蒸留塔の塔底よりヒドロキシ化合物と共に抜き出すこともできるし、あるいは、塔頂と塔底より該中間沸点不活性化合物(C)を抜き出すこともできる。好ましくは、塔頂、塔底のいずれかから該中間沸点不活性化合物(C)を抜き出す方法であり、例えば、中間沸点不活性化合物(C)を塔頂よりイソシアネートと共に抜き出して、得られる該中間沸点不活性化合物(C)とイソシアネートとの混合物をさらに蒸留してイソシアネートを回収し、塔底からは、実質的に中間沸点不活性化合物(C)を含まないヒドロキシ化合物を回収して、N−置換カルバミン酸エステルの製造工程やN−置換カルバミン酸エステルの熱分解工程にリサイクルすることができる。また、例えば、中間沸点不活性化合物(C)を塔底よりヒドロキシ化合物と共に抜き出して、得られる該中間沸点不活性化合物(C)とヒドロキシ化合物との混合物をさらに蒸留分離してヒドロキシ化合物を回収してN−置換カルバミン酸エステルの製造工程やN−置換カルバミン酸エステルの熱分解工程にリサイクルし、塔頂からは、実質的に中間沸点不活性化合物(C)を含まないイソシアネートを回収することができる。
また、例えば、中間沸点不活性化合物の標準沸点(Tc℃)が、イソシアネートの標準沸点(Tb℃)とヒドロキシ化合物の標準沸点(Ta℃)に対して、Ta<Tc<Tbの場合、該中間沸点不活性化合物(C)を、多段蒸留塔の塔頂よりヒドロキシ化合物と共に抜き出すこともできるし、多段蒸留塔の塔底よりイソシアネートと共に抜き出すこともできるし、あるいは、塔頂と塔底より該中間沸点不活性化合物(C)を抜き出すこともできる。この場合も、好ましくは、塔頂、塔底のいずれかから該中間沸点不活性化合物(C)を抜き出す方法であり、例えば、中間沸点不活性化合物(C)を塔頂よりヒドロキシ化合物と共に抜き出して、得られる該中間沸点不活性化合物(C)とヒドロキシ化合物との混合物をさらに蒸留分離してヒドロキシ化合物を回収してN−置換カルバミン酸エステルの製造工程やN−置換カルバミン酸エステルの熱分解工程にリサイクルし、塔底からは、実質的に中間沸点不活性化合物(C)を含まないイソシアネートを回収することができる。また、例えば、中間沸点不活性化合物(C)を塔底よりイソシアネートと共に抜き出して、得られる該中間沸点不活性化合物(C)とイソシアネートとの混合物を蒸留分離してイソシアネートを回収し、塔頂からは、実質的に中間沸点不活性化合物(C)を含まないヒドロキシ化合物を回収してN−置換カルバミン酸エステルの製造工程やN−置換カルバミン酸エステルの熱分解工程にリサイクルすることができる。
イソシアネートとヒドロキシ化合物との蒸留分離がおこなわれる装置及びラインの材質は、出発物質や反応物質に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316、SUS316L等が安価であり、好ましく使用できる。蒸留塔の形式に、特に制限はなく、公知の蒸留塔が使用できる。蒸留塔としては、例えば、多段蒸留塔、連続多段蒸留塔、充填塔のいずれかを含む蒸留装置を用いる方式、及びこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。
多段蒸留塔とは、蒸留の理論段数が3段以上の多段を有する蒸留塔であって、連続蒸留が可能なものであるならばどのようなものであってもよいが、あまりに理論段数が多い場合は、該多段蒸留塔が巨大なものとなり工業的な実施が難しい場合がある。したがって、理論段数は好ましくは500段以下とする。このような多段蒸留塔としては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、向流トレイ等のトレイを使用した棚段塔方式のものや、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、スルザーパッキング、メラパック等の各種充填物を充填した充填塔方式のもの等、通常、多段蒸留塔として用いられるものならばどのようなものでも使用することができる。
充填塔は、塔内に上記した公知の充填剤を充填した充填塔ならばどのようなものでも使用することができる。さらに、棚段部分と充填物の充填された部分とをあわせもつ棚段−充填混合塔方式のものも好ましく用いられる。
<イソシアネートの製造方法>
本実施の形態のイソシアネートの製造方法は、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応により、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物を得る工程と、上述したイソシアネートの分離方法により上記混合物からイソシアネートを分離する工程とを含む。さらには、上述したN−置換カルバミン酸エステルを製造する工程(工程(I)、工程(II)、工程(A)および工程(B))、または、N−置換カルバミン酸エステルを製造する工程(工程(I)、工程(II)、工程(A)および工程(B))と工程(Y)とを組み合わせた工程を含む工程によって、有機第1アミンを原料としてN−置換カルバミン酸エステルを製造し、上記N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応により、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物を製造し、上述したイソシアネートの分離方法により上記混合物からイソシアネートを分離することにより、有機第1アミンを原料としてイソシアネートを製造することができる。
本実施の形態のイソシアネートの製造方法によれば、効率よく、高収率でイソシアネートを得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
<分析方法>
1)NMR分析方法
装置:日本国、日本電子(株)社製JNM−A400 FT−NMRシステム
(1)1H−NMR分析サンプル及び13C−NMR分析サンプルの調製
サンプル溶液を約0.3g秤量し、重クロロホルム(米国、アルドリッチ社製、99.8%)約0.7gと内部標準物質としてテトラメチルスズ(日本国、和光純薬工業社製、和光一級)0.05gとを加えて均一に混合した溶液をNMR分析サンプルとした。
(2)定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
2)液体クロマトグラフィー分析方法
装置:日本国、島津社製 LC−10ATシステム
カラム:日本国、東ソー社製 Silica−60カラム 2本直列に接続
展開溶媒:ヘキサン/テトラヒドロフラン=80/20(体積比)の混合液
溶媒流量:2mL/分
カラム温度:35℃
検出器:R.I.(屈折率計)
(1)液体クロマトグラフィー分析サンプル
サンプルを約0.1g秤量し、テトラヒドロフラン(日本国、和光純薬工業社製、脱水)を約1gと内部標準物質としてビスフェノールA(日本国、和光純薬工業社製、一級)を約0.02g加えて均一に混合した溶液を、液体クロマトグラフィー分析のサンプルとした。
(2)定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
[実施例1]
・工程(1−1):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの製造
図1に示す装置を使用して反応をおこなった。
ライン14を閉止した状態で、炭酸ジフェニル(米国、Aldrich社製)13.50kg(63mol)を貯槽101よりライン11を経て内容積50Lのバッフル付きSUS製反応容器104に供給し、フェノール(米国、Aldrich社製)9.87kg(105mol)を貯槽102よりライン12を経て上記SUS製反応器に供給した。上記反応器104内の液温度を約50℃に調整し、ヘキサメチレンジアミン(米国、Aldrich社製)2.44kg(21mol)を貯槽103よりライン13を経て上記反応器104に約2.00kg/hrで供給した。
反応後の溶液(以下、「反応液(1)」とも記す。)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルが収率99.5%で生成していた。
ライン14を開き、上記反応液(1)を、ライン14を経て貯槽105に移送した。
・工程(1−2):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用して反応をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔202の塔底にn−ドデカン(日本国、東京化成工業社製)を供給し、塔頂圧力を約15kPaとしてn−ドデカンの全還流運転をおこなって、n−ドデカンを含む不活性層を形成した。n−ドデカンの蒸発に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。
伝熱面積0.1m2の薄膜蒸留装置201(日本国、神鋼環境ソリューション社製)を220℃に加熱し、内部の圧力を約13kPaとした。工程(1−1)で貯槽105に回収した反応液を150℃に加熱し、ライン21を経て約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置201の上部に供給して、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解をおこなうことにより、イソシアネートとヒドロキシ化合物(フェノール)とを含有する混合物を得た。薄膜蒸留装置201の底部より、液相成分をライン23より抜き出し、ライン24及びライン21を経て、薄膜蒸留装置201の上部に循環させた。該混合物を、気相成分として、220℃に保持したライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した気相成分である混合物を連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経てn−ドデカンを0.3kg/hrで供給し、上記気相成分である混合物の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔202の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約15kPaであった。連続多段蒸留塔202の塔頂から留出するガスを、ライン25を経て凝縮器203で凝縮してライン27より貯槽208へ連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ライン26を経て液相成分を抜き出し、蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下1段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもn−ドデカンを10wt%以上含有するよう運転をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、上記液相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン31とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約1.5kPaであった。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。定常状態における抜き出し量は約101g/hrであった。
ライン32より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は92.8%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、n−ドデカンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例2]
・工程(2−1):3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの製造
図1に示す装置を使用して反応をおこなった。
炭酸ジフェニルの使用量を10.5kg(49mol)とし、フェノールの使用量を9.24kg(98.3mol)とし、ヘキサメチレンジアミンの代わりに3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(米国、Aldrich社製)3.41kg(20mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法で反応をおこなった。
反応後の溶液(以下、「反応液(2)」とも記す。)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルが収率99.1%で生成していた。
ライン14を開き、上記反応液(2)を、ライン14を経て貯槽105に移送した。
・工程(2−2):3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用して反応をおこなった。
連続多段蒸留塔202の塔底に1,3,5−トリエチルベンゼン(日本国、東京化成工業社製)を供給し、塔頂圧力を約5kPaとして1,3,5−トリエチルベンゼンの全還流運転をおこなった。1,3,5−トリエチルベンゼンの蒸発に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。
薄膜蒸留装置201を270℃に加熱し、内部の圧力を約13kPaとした。工程(2−1)で貯槽105に回収した反応液(2)を150℃に加熱し、ライン21を経て約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置201の上部に供給して、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの熱分解をおこなうことにより、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(2)を得た。薄膜蒸留装置201の底部より、液相成分をライン23より抜き出し、ライン24及びライン21を経て、薄膜蒸留装置201の上部に循環させた。該混合物(2)を、気相成分としてライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した気相成分である混合物(2)を連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経て1,3,5−トリエチルベンゼンを0.2kg/hrで供給し、該気相成分である混合物(2)の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔202の塔底部の液温度は200℃、塔頂圧力は約5kPaであった。連続多段蒸留塔202の塔頂から留出するガスを、ライン25を経て凝縮器203で凝縮してライン27より連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ライン26を経て液相成分を抜き出し、蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれも1,3,5−トリエチルベンゼンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン31とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約1.5kPaであった。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、イソホロンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は91.7%であった。
なお、イソホロンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、1,3,5−トリエチルベンゼンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例3]
・工程(3−1):3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの製造
図1に示す装置を使用して反応をおこなった。
炭酸ジフェニルの使用量を13.3kg(62mol)とし、フェノールの使用量を11.2kg(119mol)とし、ヘキサメチレンジアミンの代わりに4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(米国、Aldrich社製)3.26kg(15.5mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法で反応をおこなった。
反応後の溶液(以下、「反応液(3)」とも記す。)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)が収率98.8%で生成していた。
ライン14を開き、該反応液(3)を、ライン14を経て貯槽105に移送した。
・工程(3−2):N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)の熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用して反応をおこなった。
連続多段蒸留塔202の塔底にテトラエチレングリコールジメチルエーテル(日本国、東京化成工業社製)を供給し、塔頂圧力を約0.1kPaとして1,3,5−トリエチルベンゼンの全還流運転をおこなった。テトラエチレングリコールジメチルエーテルの蒸発に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。
薄膜蒸留装置201を300℃に加熱し、内部の圧力を約2kPaとした。工程(3−1)で貯槽105に回収した反応液(3)を150℃に加熱し、ライン21を経て約0.8kg/hrで薄膜蒸留装置201の上部に供給して、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)の熱分解をおこなうことにより、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(3)を得た。薄膜蒸留装置201の底部より、液相成分をライン23より抜き出し、ライン24及びライン21を経て、薄膜蒸留装置201の上部に循環させた。該混合物(3)を、気相成分としてライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した気相成分である混合物(3)を連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経て、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを0.4kg/hrで供給し、該気相成分である混合物(3)の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔202の塔底部の液温度は200℃、塔頂圧力は約0.1kPaであった。連続多段蒸留塔202の塔頂から留出するガスを、ライン25を経て凝縮器203で凝縮してライン27より連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ライン26を経て液相成分を抜き出し、蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもテトラエチレングリコールジメチルエーテルを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン31とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔底部の液温度は240℃、塔頂圧力は約0.1kPaであった。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は87.2%であった。
なお、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、テトラエチレングリコールジメチルエーテルの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例4]
・工程(4−1):3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの製造
図1のような装置を使用して反応をおこなった。
炭酸ジフェニルの使用量を12.2kg(57mol)とし、フェノールの使用量を15.2kg(162mol)をとし、ヘキサメチレンジアミンの代わりに3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン4.43kg(26mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法で反応をおこなった。
反応後の溶液(以下、「反応液(4)」とも記す。)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルが収率97.9%で生成していた。
ライン14を開き、該反応液(2)を、ライン14を経て貯槽105に移送した。
・工程(4−2):3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用して反応をおこなった。
連続多段蒸留塔202の塔底にジフェニルエーテル(日本国、東京化成工業社製)を供給し、塔頂圧力を約0.1kPaとしてジフェニルエーテルの全還流運転をおこなった。ジフェニルエーテルの蒸発に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。
上記工程(4−1)で得られた3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルを使用した以外は、実施例2の工程(2−2)と同様の方法で熱分解をおこない、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(4)を得た。
また、1,3,5−トリエチルベンゼンの代わりに、ジフェニルエーテルを0.4kg/hrで供給した以外は、実施例2の工程(2−2)と同様の方法でイソシアネートの分離回収をおこない、連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、イソホロンジイソシアネートを約99.2重量%含有する溶液であった。3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は91.2%であった。
なお、イソホロンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、ジフェニルエーテルの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例5]
・工程(5−1):3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの製造
図1に示す装置を使用して反応をおこなった。
炭酸ジフェニルの使用量を14.2kg(66mol)とし、フェノールの使用量を13.9kg(148mol)をとし、ヘキサメチレンジアミンの代わりに3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン2.39kg(17mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法で反応をおこなった。
反応後の溶液(以下、「反応液(5)」とも記す。)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルが収率98.7%で生成していた。
ライン14を開き、該反応液(5)を、ライン14を経て貯槽105に移送した。
・工程(5−2):3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用して反応をおこなった。
上記工程(5−1)で得られた3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルを使用した以外は、実施例2の工程(2−2)と同様の方法で熱分解をおこない、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(5)を得た。
また、1,3,5−トリエチルベンゼンの代わりに、トリブチルアミン(日本国、東京化成工業社製)を0.3kg/hrで供給した以外は、実施例2の工程(2−2)と同様の方法でイソシアネートの分離回収をおこない、連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、イソホロンジイソシアネートを約98.4重量%含有し、トリブチルアミンに由来すると推定される軽沸化合物を約0.2重量%含有する溶液であった。3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は89.8%であった。
なお、イソホロンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、トリブチルアミンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例6]
・工程(6−1):N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの製造
図1に示す装置を使用して反応をおこなった。
炭酸ジフェニルの使用量を9.42kg(44.4mol)とし、フェノールの使用量を10.5kg(112mol)をとし、ヘキサメチレンジアミンの代わりに4,4’−メチレンジアニリン3.97kg(20.0mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法で反応をおこなった。
反応後の溶液(以下、「反応液(6)」とも記す。)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジフェニルエステルが収率96.8%で生成していた。
ライン14を開き、該反応液(6)を、ライン14を経て貯槽105に移送した。
・工程(6−2):N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用して反応をおこなった。
連続多段蒸留塔202の塔底にフタル酸ジエチル(日本国、東京化成工業社製)を供給し、塔頂圧力を約0.2kPaとしてフタル酸ジエチルの全還流運転をおこなった。ジフェニルエーテルの蒸発に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。
上記工程(6−1)で得られたN,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジフェニルエステルを使用した以外は、実施例2の工程(2−2)と同様の方法で熱分解をおこない、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(4)を得た。
また、1,3,5−トリエチルベンゼンの代わりに、フタル酸ジエチルを0.5kg/hrで供給した以外は、実施例2の工程(2−2)と同様の方法でイソシアネートの分離回収をおこない、連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、ジフェニルメタンジイソシアネートを約98.2重量%含有し、フタル酸ジエチルに由来すると推定される軽沸化合物を約0.8重量%含有する溶液であった。4,4’−メチレンジアニリンに対する収率は87.4%であった。
なお、ジフェニルメタンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、フタル酸ジエチルの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例7]
・工程(7−1):トルエン−2,4−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの製造
図1に示す装置を使用して反応をおこなった。
炭酸ジフェニルの使用量を17.9kg(83.5mol)とし、フェノールの使用量を18.0kg(192mol)をとし、ヘキサメチレンジアミンの代わりに2,4−トルエンジアミン3.93kg(32.1mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法で反応をおこなった。
反応後の溶液(以下、「反応液(7)」とも記す。)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、トルエン−2,4−ジカルバミン酸ジフェニルエステルが収率94.4%で生成していた。
ライン14を開き、該反応液(7)を、ライン14を経て貯槽105に移送した。
・工程(7−2):トルエン−2,4−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用して反応をおこなった。
連続多段蒸留塔202の塔底に1,3,5−トリエチルベンゼン(日本国、東京化成工業社製)を供給し、塔頂圧力を約0.2kPaとして1,3,5−トリエチルベンゼンの全還流運転をおこなった。1,3,5−トリエチルベンゼンの蒸発に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。
上記工程(7−1)で得られたトルエン−2,4−ジカルバミン酸ジフェニルエステルを使用した以外は、実施例2の工程(2−2)と同様の方法で熱分解をおこない、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(4)を得た。
また、1,3,5−トリエチルベンゼンを0.2kg/hrで供給した以外は、実施例2の工程(2−2)と同様の方法でイソシアネートの分離回収をおこない、連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、2,4−トリレンジイソシアネートを約99.2重量%含有する溶液であった。2,4−トルエンジアミンに対する収率は86.0%であった。
なお、2,4−トリレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、1,3,5−トリエチルベンゼンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例8]
・工程(8−1):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの製造
図1に示す装置を使用して反応をおこなった。
炭酸ジフェニルを13.5kg(63.7mol)、フェノールを13.8kg(149mol)、ヘキサメチレンジアミン3.22kg(27.7mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法をおこない、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルを含有する反応液(以下、「反応液(8)」とも記す。)を得た。反応液(8)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルが収率99.5%で生成していた。
・工程(8−2):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用して反応をおこなった。
n−ドデカンの代わりにデカメチルテトラシロキサン(日本国、東京化成工業社製)を使用し、塔頂圧力を0.5kPaとしてデカメチルテトラシロキサンの全還流運転をおこなった。
伝熱面積0.1m2の薄膜蒸留装置201を220℃に加熱し、内部の圧力を約1.3kPaとした。工程(8−1)で貯槽105に回収した反応液を150℃に加熱し、ライン21を経て約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置201の上部に供給して、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解をおこなうことにより、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物を得た。薄膜蒸留装置201の底部より、液相成分をライン23より抜き出し、ライン24及びライン21を経て、薄膜蒸留装置201の上部に循環させた。該混合物を、気相成分としてライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した気相成分である混合物を連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経てデカメチルテトラシロキサンを0.3kg/hrで供給し、該気相成分である混合物の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔202の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約15kPaであった。連続多段蒸留塔202の塔頂から留出するガスを、ライン25を経て凝縮器203で凝縮してライン27より連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ライン26を経て液相成分を抜き出し、蒸留塔205に供給した。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン31とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約1.5kPaであった。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は87.1%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、デカメチルテトラシロキサンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例9]
工程(9−1):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルの製造
図3に示す装置を使用して、工程(9−1)を実施した。
ヘキサメチレンジアミン2.4kg、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(日本国、東京化成社製)85.10kg、及び尿素(日本国、和光純薬工業社製、特級)4.96kgを混合し、原料溶液を調製した。充填材(ヘリパックNo.3)を充填した内径20mmの充填塔302を240℃に加熱し、充填塔302内部の圧力を約20kPaとした。充填塔302の上方側部に連結されたライン31より、原料溶液と同じ組成の混合液を充填塔302内部に導入した。運転条件が安定した後、ライン33より原料溶液を約1.0g/minで充填塔302内部に導入し、反応させた。反応液を充填塔302の最底部に連結されたライン34を経由して貯槽305に回収した。また、充填塔302の最上部に連結されたライン32より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器303で凝縮して得られる成分を貯槽304に回収した。貯槽305に回収した反応液は46.9kgであった。この反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルがヘキサメチレンジアミンに対して収率約92%で生成していた。
工程(9−2):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図4に示す装置を使用して、工程(9−2)を実施した。
薄膜蒸留装置401を280℃に加熱し、内部の圧力を約1.0kPaとした。工程(9−1)で貯槽305に回収した反応液を150℃に加熱し、薄膜蒸留装置401の上方側部に連結されたライン41より約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置401に供給し、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルの熱分解を行った。この熱分解により、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(9)を得た。なお、薄膜蒸留装置401の底部に連結されたライン43より液相成分を抜き出し、ライン44及びライン41を経て、薄膜蒸留装置401の上部に導入し、循環させた。上記混合物(9)は、気相成分としてライン42より抜き出した。
連続多段蒸留塔402の中段に、薄膜蒸留装置401よりライン42を経て抜き出した気相成分である混合物(9)を連続的にフィードし、同時に、貯槽410からライン49を経てn−ペンタデカン(日本国、東京化成工業社製)を供給し、気相成分である混合物(9)の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン46及び48とリボイラー404とを経て循環させることにより供給した。塔頂圧力は約5kPaであった。連続多段蒸留塔402の塔頂から留出するガスを、ライン45を経て凝縮器403で凝縮して液相成分とし、ライン47より連続的に抜き出し、連続多段蒸留塔405に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔402の該ライン42を具備する位置に対して、理論段数で上下1段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもn−ペンタデカンを10wt%以上含有するよう運転をおこなった。
連続多段蒸留塔405の中段に、ライン47より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、液相成分の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインA3とリボイラー407とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔405の塔頂から留出するガスを、ラインA0を経て凝縮器406で凝縮して、ラインA2を経て貯槽409へ連続的に抜き出した。
ラインA2より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は90.0%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、n−ペンタデカンの標準沸点Tcは、Tb<Tc<Taを満たしていた。
[実施例10]
工程(10−1):ウレイド基を有する化合物の製造
図5に示す装置を使用して、工程(10−1)を実施した。
ライン55を閉止した状態で、貯槽500から4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノール(日本国、和光純薬工業社製)66.0kgを、貯槽501から尿素7.0kgを、攪拌槽503にフィードした。攪拌槽503を100℃に加熱し、攪拌を開始した。ヘキサメチレンジアミン3.3kgを、貯槽502よりライン53を経て、攪拌槽503に約0.1kg/minで供給した。ヘキサメチレンジアミンの供給が終了した後、約2時間攪拌し、反応液をサンプリングした。この反応液を液体クロマトグラフィーで分析した結果、1,6−ヘキサンジウレアが生成していた。上記反応液を貯槽505に移送した。
工程(10−2):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルの製造
図3に示す装置を使用して、工程(10−2)を実施した。
工程(10−2)は、ヘキサメチレンジアミンと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールと尿素からなる原料溶液の代わりに、工程(10−1)で貯槽505に回収した反応液を使用したこと、充填塔302を240℃に加熱し、内部の圧力を約5kPaとしたこと以外は、実施例9の工程(9−1)と同様の方法で行った。貯槽305に回収した反応液は70.0kgであった。この反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)がヘキサメチレンジアミンに対して収率約95%で生成していた。
工程(10−3):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
工程(10−3)は、薄膜蒸留装置401を280℃に加熱し、内部の圧力を約5kPaとしたこと、工程(10−2)で貯槽305に回収した反応液を150℃に加熱し、ライン41より約2.0kg/hrで薄膜蒸留装置401に供給したこと、n−ペンタデカンの代わりにベンジルトルエン(異性体混合物)を供給したこと以外は、実施例9の工程(9−2)と同様の方法で行った。連続多段蒸留塔405の塔頂から留出するガスを、ラインA0を経て凝縮器406で凝縮して、ラインA2を経て貯槽409へ連続的に抜き出した。
ラインA2より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は96.5%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、ベンジルトルエンの標準沸点Tcは、Tb<Tc<Taを満たしていた。
[実施例11]
工程(11−1):ウレイド基を有する化合物の製造
実施例10の工程(10−1)と同様の方法をおこない、1,6−ヘキサンジウレアを含有する反応液を得、該反応液を貯槽505に移送した。
工程(11−2):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルの製造
実施例10の工程(10−2)と同様の方法をおこない、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルを含む反応液を得た。ヘキサメチレンジアミンに対するN,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルの収率は約95%であった。
工程(11−3):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
ベンジルトルエン(異性体混合物)の代わりにジフェニルスルフィド(日本国、東京化成工業社製)を使用した以外は、実施例10の工程(10−3)と同様の方法をおこない、連続多段蒸留塔405の塔頂から留出するガスを、ラインA0を経て凝縮器406で凝縮して、ラインA2を経て貯槽409へ連続的に抜き出した。
ラインA2より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約97重量%含有し、ジフェニルスルフィドに由来すると推定される軽沸化合物を約0.3重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は92.2%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、ジフェニルスルフィドの標準沸点Tcは、Tb<Tc<Taを満たしていた。
[実施例12]
工程(12−1):ウレイド基を有する化合物の製造
工程(12−1)は、ヘキサメチレンジアミンの代わりに3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンを1.0kg使用したこと、4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールの代わりに4−フェニルフェノールを10.0kg使用したこと、尿素を1.42kg使用したこと以外は、実施例10の工程(10−1)と同様の方法で行い、3−(ウレイドメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルウレアを含む反応液を得た。
工程(12−2):3−((4−フェニルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−フェニルフェニル)エステルの製造
工程(12−2)は、ヘキサメチレンジアミンと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールと尿素とからなる原料溶液の代わりに、工程(12−1)で得た反応液を使用したこと、充填塔302を220℃に加熱し、充填塔302内部の圧力を約3kPaとしたこと以外は、実施例9の工程(9−1)と同様の方法で行った。貯槽305に回収した反応液は12.4kgであった。この反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、3−((4−フェニルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−フェニルフェニル)エステルが、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対して収率約92%で生成していた。
工程(12−3):3−((4−フェニルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−フェニルフェニル)エステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
工程(12−3)は、薄膜蒸留装置401を280℃に加熱し、内部の圧力を約3kPaとしたこと、工程(12−2)で貯槽305に回収した反応液を120℃に加熱し、ライン41を経て約2.0kg/hrで薄膜蒸留装置401の上部に供給したこと、n−ペンタデカンの代わりにジベンジルエーテルを供給したこと以外は、実施例9の工程(9−2)と同様の方法で行った。連続多段蒸留塔405の塔頂から留出するガスを、ラインA0を経て凝縮器406で凝縮して、ラインA2を経て貯槽409へ連続的に抜き出した。
ラインA2より抜き出された液は、イソホロンジイソシアネートを約98重量%含有し、ジベンジルエーテルに由来すると推定される軽沸化合物を約0.8重量%含有する溶液であった。3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は約88.3%であった。
なお、イソホロンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、ジベンジルエーテルの標準沸点Tcは、Tb<Tc<Taを満たしていた。
[実施例13]
工程(13−1):3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの製造
図6に示す装置を使用して、工程(13−1)を実施した。
3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン8.80kgとフェノール97.1kgと尿素7.70kgとを混合し原料溶液を調製した。充填塔602を220℃に加熱し、充填塔602の上方側部に連結されたライン60より、原料溶液と同じ組成の混合液を充填塔602内部に導入した。運転条件が安定した後、ライン60より原料溶液を約1.0g/minで充填塔602内部に導入し、反応させた。反応液を、充填塔602の最底部に連結されたライン63を経由して貯槽604に回収した。内部の圧力は約0.2MPaであった。充填塔602の最上部に連結されたライン62より生成するアンモニアを抜き出した。貯槽604に回収した反応液は11.2kgであった。この反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルが、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対して収率約94%で生成していた。
・工程(13−2):3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用して、工程(13−2)を実施した。
薄膜蒸留装置201を280℃に加熱し、内部の圧力を約10kPaとした。工程(13−1)で貯槽604に回収した反応液を100℃に加熱し、薄膜蒸留装置201の上方側部に連結されたライン21より約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置201に供給して、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの熱分解を行った。この熱分解により、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(13)を得た。なお、薄膜蒸留装置201の底部に連結されたライン23より液相成分を抜き出し、ライン24及びライン21を経て、薄膜蒸留装置201の上部に導入し、循環させた。上記混合物(13)を気相成分としてライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した気相成分を連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経て4−メチルベンジルクロリド(日本国、東京化成工業社製)を供給し、気相成分である混合物(13)の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26及び28とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。塔頂圧力は約5kPaであった。連続多段蒸留塔202の塔底から留出する液相成分を、ライン26より連続的に抜き出し、連続多段蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下2段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれも4−メチルベンジルクロリドを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン33とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔底部の液温度は160℃、塔頂圧力は約1.5kPaであった。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。
ライン32より抜き出された液は、イソホロンジイソシアネートを約99重量%含有する溶液であった。3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は約87.4%であった。また、得られたイソホロンジイソシアネートは塩素成分を10ppm含有していた。
なお、イソホロンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、4−メチルベンジルクロリドの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例14]
・工程(14−1):ウレイド基を有する化合物の製造
工程(14−1)は、ヘキサメチレンジアミンの代わりに4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(米国、Aldrich社製)を3.40kg(16.2mol)を使用し、4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールの代わりに4−tert−ブチルフェノールを73.0kg(486mol)を使用し、尿素を3.89kg(64.8mol)を使用したこと以外は、実施例10の工程(10−1)と同様の方法で行い、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルウレア)を含む反応液を得た。
・工程(14−2):N,N’−(4,4’メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジ(4−tert−ブチルフェニル)エステルの製造
工程(14−2)は、ヘキサメチレンジアミンと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールと尿素とからなる原料溶液の代わりに、工程(14−1)で得た反応液を使用し、充填塔302を220℃に加熱し、充填塔302内部の圧力を約3kPaとしたこと以外は、実施例9の工程(9−1)と同様の方法をおこない、貯槽305に反応液を回収した。この反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、N,N’−(4,4’メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジ(4−tert−ブチルフェニル)エステルが、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対して収率約90%で生成していた。
・工程(14−3):N,N’−(4,4’メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジ(4−tert−ブチルフェニル)エステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
薄膜蒸留装置201を280℃に加熱し、内部の圧力を約0.5kPaとし、工程(13−1)で貯槽604に回収した反応液の代わりに工程(14−1)で得た反応液を使用し、薄膜蒸留装置201の上方側部に連結されたライン21より約1.2kg/hrで薄膜蒸留装置201に供給した以外は、実施例13の工程(13−2)と同様の方法をおこなって、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの熱分解を行った。この熱分解により、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(14)を得た。なお、薄膜蒸留装置201の底部に連結されたライン23より液相成分を抜き出し、ライン24及びライン21を経て、薄膜蒸留装置201の上部に導入し、循環させた。上記混合物(14)を気相成分としてライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した気相成分を連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経てフルオレン(日本国、東京化成工業社製)を供給し、気相成分である混合物(14)の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26及び28とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。塔頂圧力は約5kPaであった。連続多段蒸留塔202の塔底から留出する液相成分を、ラインB1より連続的に抜き出し、連続多段蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもフルオレンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
連続多段蒸留塔605の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン33とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔底部の液温度は160℃、塔頂圧力は約1.5kPaであった。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。
ライン32より抜き出された液は、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを約99重量%含有する溶液であった。4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は約81.5%であった。
なお、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、フルオレンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例15]
・工程(15−1):N,N’−(4,4’メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジ(4−エチルフェニル)エステルの製造
3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンの代わりに4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)4.50kg(21.4mol)を使用し、フェノールの代わりに104.6kg(856mol)を使用し、尿素2.70kg(44.9mol)を使用した以外は、実施例13の工程(13−1)と同様の方法をおこない、貯槽604に反応液を回収した。この反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、N,N’−(4,4’メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジ(4−エチルフェニル)エステルが、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対して収率約93%で生成していた。
・工程(15−2):N,N’−(4,4’メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジ(4−エチルフェニル)エステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
薄膜蒸留装置201を260℃に加熱し、内部の圧力を約0.5kPaとし、工程(13−1)で貯槽604に回収した反応液の代わりに工程(15−1)で得た反応液を使用し、薄膜蒸留装置201の上方側部に連結されたライン21より約2.0kg/hrで薄膜蒸留装置201に供給した以外は、実施例13の工程(13−2)と同様の方法をおこない、N,N’−(4,4’メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジ(4−エチルフェニル)エステルの熱分解を行った。この熱分解により、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(15)を得た。なお、薄膜蒸留装置201の底部に連結されたライン23より液相成分を抜き出し、ライン24及びライン21を経て、薄膜蒸留装置201の上部に導入し、循環させた。上記混合物(13)を気相成分としてライン22より抜き出した。
続いて、4−メチルベンジルクロリドの代わりに1−クロロドデカン(日本国、東京化成社製)を使用し、気相成分である混合物(15)の蒸留分離をおこなった。塔頂圧力は約0.1kPaであった。連続多段蒸留塔202の塔底から留出する液相成分を、ライン26より連続的に抜き出し、連続多段蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれも1−クロロドデカンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン33とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔底部の液温度は160℃、塔頂圧力は約1.5kPaであった。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。
ライン32より抜き出された液は、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを約99重量%含有する溶液であった。4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は約85.0%であった。また、得られたジシクロヘキシルメタンジイソシアネートは塩素成分を約5ppm含有していた。
なお、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、1−クロロドデカンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例16]
・工程(16−1):トルエン−2,4−ジカルバミン酸ジ(4−ドデシルフェニル)エステルの製造
ヘキサメチレンジアミンの代わりに2,4−トルエンジアミン5.53kg(45.3mol)を使用し、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの代わりに4−ドデシルフェノール237.7kg(906mol)を使用し、尿素8.15kg(136mol)を使用した以外は、実施例9の工程(9−1)と同様の方法をおこない、貯槽305に反応液を回収した。この反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、トルエン−2,4−ジカルバミン酸ジ(4−ドデシルフェニル)エステルが、2,4−トルエンジアミンに対して収率約90%で生成していた。
・工程(16−2):トルエン−2,4−ジカルバミン酸ジ(4−ドデシルフェニル)エステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
工程(16−2)は、薄膜蒸留装置401を220℃に加熱し、内部の圧力を約0.3kPaとしたこと、工程(16−1)で貯槽305に回収した反応液を150℃に加熱し、ライン41より約2.0kg/hrで薄膜蒸留装置401に供給したこと、n−ペンタデカンをライン49より約0.5kg/hrで供給したこと以外は、実施例9の工程(9−2)と同様の方法で行った。連続多段蒸留塔405の塔頂から留出するガスを、ラインA0を経て凝縮器406で凝縮して、ラインA2を経て貯槽409へ連続的に抜き出した。
ラインA2より抜き出された液は、2,4−トリレンジイソシアネートを約99重量%含有する溶液であった。2,4−トルエンジアミンに対する収率は88.3%であった。
なお、2,4−トリレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、n−ペンタデカンの標準沸点Tcは、Tb<Tc<Taを満たしていた。
[実施例17]
・工程(17−1):N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジ(4−tert−アミルフェニル)エステルの製造
3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンの代わりに4,4’−メチレンジアニリン1.64kg(8.27mol)を使用し、フェノールの代わりに4−tert−アミルフェノール34.0kg(207mol)を使用し、尿素1.99kg(33.1mol)を使用した以外は、実施例13の工程(13−1)と同様の方法をおこない、貯槽604に反応液を回収した。この反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジ(4−tert−アミルフェニル)エステルが、4,4’−メチレンジアニリンに対して収率約92%で生成していた。
・工程(17−2):N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジ(4−tert−アミルフェニル)エステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
薄膜蒸留装置201を260℃に加熱し、内部の圧力を約0.5kPaとし、工程(13−1)で貯槽204に回収した反応液の代わりに工程(16−1)で得た反応液を使用し、薄膜蒸留装置201の上方側部に連結されたライン21より約1.9kg/hrで薄膜蒸留装置201に供給した以外は、実施例13の工程(13−2)と同様の方法をおこない、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジ(4−tert−アミルフェニル)エステルの熱分解を行った。この熱分解により、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(17)を得た。なお、薄膜蒸留装置201の底部に連結されたライン63より液相成分を抜き出し、ライン24及びライン21を経て、薄膜蒸留装置201の上部に導入し、循環させた。上記混合物(17)を気相成分としてライン22より抜き出した。
続いて、フルオレンの代わりにベンジルトルエンを使用し、気相成分である混合物(17)の蒸留分離をおこなった。塔頂圧力は約0.1kPaであった。連続多段蒸留塔202の塔底から留出する液相成分を、ライン26より連続的に抜き出し、連続多段蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下2段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもベンジルトルエンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔205の中段に、ライン31より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン33とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔底部の液温度は160℃、塔頂圧力は約1.5kPaであった。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。
ライン32より抜き出された液は、ジフェニルメタンジイソシアネートを約99重量%含有する溶液であった。4,4’−メチレンジアニリンに対する収率は約81.0%であった。
なお、ジフェニルメタンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、ベンジルトルエンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例18]
・工程(18−1):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(3−メチルブチル)エステルの製造
図7に示す装置を使用した。
ライン74を閉止した状態で、参考例1の炭酸ビス(3−メチルブチル)9.99kg(49.5mol)を貯槽701よりライン71を経てSUS製反応容器704に供給し、ヘキサメチレンジアミン(米国、Aldrich社製)1.15kg(9.9mol)を貯槽702よりライン72を経て該反応器704に供給した。該反応器704内の液温度を約80℃に調整し、ナトリウムメトキシド(日本国、和光純薬工業社製、28%メタノール溶液)19.2gを貯槽703よりライン73を経て該SUS製反応器704に供給し、反応をおこなった。
反応後の溶液を液体クロマトグラフィーで分析した結果、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(3−メチルブチル)エステルが収率99.7%で生成していた。
ライン74を開き、該反応液を、水分を除去して調整した酸性イオン交換樹脂(Amberlyst−15(球状):ROHM&HAAS社製)を収容し、かつ外部ジャケットによって80℃に保温したカラム705に供給し、ナトリウムメトキシドの中和をおこなった。該溶液を、ライン75を経て貯槽706に移送した。
・工程(18−2):低沸成分の留去
図8に示す装置を使用して、アルコールの留去をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径5cmの連続多段蒸留塔802の中段に、貯槽706に回収した混合物を、予熱器801を経て、ライン81から約0.56kg/hrで、液状で連続的にフィードした。蒸留に必要な熱量は、塔下部液をライン83とリボイラー804を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔802の塔底部の液温度は160℃、塔頂圧力は約70kPaとした。連続多段蒸留塔802の塔頂から留出するガスを、ライン82を経て凝縮器803で凝縮してライン84より貯槽805へ、約86g/hrで連続的に抜き出した。塔底からは、ライン83を経て貯槽806へ約474g/hrで連続的に抜き出した。
図9に示す装置を使用して、炭酸エステルの留去をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径5cmの連続多段蒸留塔902の中段に、貯槽806に回収した混合物を、予熱器901を経て、ライン91から約474g/hrで、液状で連続的にフィードした。蒸留に必要な熱量は、塔下部液をライン93とリボイラー904を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔902の塔底部の液温度は160℃、塔頂圧力は約2.6kPaとした。連続多段蒸留塔902の塔頂から留出するガスを、ライン92を経て凝縮器903で凝縮してライン94より貯槽905へ、約150g/hrで連続的に抜き出した。塔底からは、ライン93を経て貯槽906へ約87g/hrで連続的に抜き出した。
貯槽906に抜き出された混合物について液体クロマトグラフィー分析をおこなったところ、該混合物は、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(3−メチルブチル)エステルを約98.1重量%含有していた。
・工程(18−3):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(3−メチルブチル)エステルの熱分解とイソシアネートの蒸留分離
図10に示す装置を使用した。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔1002に1,2−ジクロロベンゼン(日本国、東京化成工業社製)を供給し、塔頂での圧力を約1kPaとして1,2−ジクロロベンゼンが全還流している状態とした。
伝熱面積0.1m2の薄膜蒸留装置1001(日本国、神鋼環境ソリューション社製)を270℃に加熱し、内部の圧力を約13kPaとした。工程(18−2)で貯槽906に回収した混合物を160℃に加熱し、ラインD0を経て約580g/hrで薄膜蒸発器1001の上部に供給した。また、ラインD1より、ジラウリン酸ジブチルスズ(日本国、和光純薬工業社製)を約25.2g/hrでフィードした。薄膜蒸留装置1001の底部より、液相成分をラインD3より抜き出し、ラインD4を経て、薄膜蒸留装置1001の上部に循環させた。気相成分をラインD2より抜き出した。
連続多段蒸留塔1002の中段に、薄膜蒸留装置1001よりラインD2を経て抜き出した気相成分を連続的にフィードし、同時に、1,2−ジクロロベンゼンをラインE4より約0.3kg/hrで供給し、該気相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインD6とリボイラー504を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔1002の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約50kPaであった。連続多段蒸留塔1002の塔頂から留出するガスを、ラインD5を経て凝縮器1003で凝縮してラインD7より連続的に抜き出した。連続多段蒸留塔1002の塔底よりラインD9を通して液相成分を抜き出した。定常状態において、該連続多段蒸留塔1002の該ラインD2を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれも1,2−ジクロロベンゼンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔1005の中段に、ラインD9より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該気相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインE1とリボイラー1007を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔1005の塔頂から留出するガスを、ラインE0を経て凝縮器1006で凝縮して、ラインE2を経て貯槽1009へ連続的に抜き出した。
40時間運転後、液相成分をラインE4より貯槽1010へ約11g/hrで抜き出した。
ラインE2より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は82.1%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、1,2−ジクロロベンゼンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例19]
・工程(19−1):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルの製造
炭酸ビス(3−メチルブチル)の代わりに、参考例2の炭酸ジブチル8.76kg(50.3mol)を使用し、ヘキサメチレンジアミン1.30kg(11.1mol)を使用し、ナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液)20.1gを使用した以外は、実施例18の工程(18−1)と同様の方法をおこない、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルを含有する反応液を得た。N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルの収率は95.3%であった。続いてナトリウムメトキシドの中和をおこない、溶液を貯槽706に移送した。
・工程(19−2):低沸成分の留去
貯槽706に回収した混合物をライン81から約1kg/hrでフィードし、連続多段蒸留塔802の塔底部の液温度を140℃、塔頂圧力を70kPaとした以外は、実施例18の工程(18−2)と同様の方法でアルコールの留去をおこなった。
続いて、貯槽806に回収した混合物を、連続多段蒸留塔902に、ライン91から約540g/hrで供給し、連続多段蒸留塔902の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約3.0kPaとした以外は、実施例18の工程(18−2)と同様の方法をおこなった。貯槽906に抜き出された混合物について液体クロマトグラフィー分析をおこなったところ、該混合物は、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルを約97.9重量%含有していた。
・工程(19−3):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルの熱分解とイソシアネートの蒸留分離
1,2−ジクロロベンゼンの代わりに1,3,5−トリエチルベンゼンを使用し、薄膜蒸留装置1001を280℃に加熱し、内部の圧力を約13kPaとし、工程(18−2)で貯槽906に回収した混合物の代わりに工程(19−2)で貯槽906に回収した混合物を使用し、約630g/hrで薄膜蒸発器1001の上部に供給した以外は、実施例18の工程(18−3)と同様の方法をおこなった。
続いて、連続多段蒸留塔1002の中段に、1,2−ジクロロベンゼンの代わりに1,3,5−トリメチルベンゼンを約0.2kg/hrで供給し、薄膜蒸発器1001で生成した気相成分の蒸留分離をおこなった。連続多段蒸留塔1005の中段に、ラインD9より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該気相成分の蒸留分離をおこない、凝縮液を、ラインE2を経て貯槽1009へ連続的に抜き出した。ラインE2より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は80.5%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、1,3,5−トリエチルベンゼンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例20]
・工程(20−1):3−(ブトキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ブチルエステルの製造
炭酸ビス(3−メチルブチル)の代わりに、参考例2の炭酸ジブチル9.75kg(56.0mol)を使用し、ヘキサメチレンジアミンの代わりに3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン1.59kg(9.33mol)を使用し、ナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液)18.0gを使用した以外は、実施例18の工程(18−1)と同様の方法をおこない、3−(ブトキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ブチルエステルを含有する反応液を得た。3−(ブトキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ブチルエステルの収率は94.8%であった。続いてナトリウムメトキシドの中和をおこない、溶液を貯槽706に移送した。
・工程(20−2):低沸成分の留去
貯槽706に回収した混合物をライン81から約0.9kg/hrでフィードし、連続多段蒸留塔802の塔底部の液温度を140℃、塔頂圧力を70kPaとした以外は、実施例18の工程(18−2)と同様の方法でアルコールの留去をおこなった。
続いて、貯槽806に回収した混合物を、連続多段蒸留塔902に、ライン91から約550g/hrで供給し、連続多段蒸留塔902の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約3.0kPaとした以外は、実施例18の工程(18−2)と同様の方法をおこなった。貯槽906に抜き出された混合物について液体クロマトグラフィー分析をおこなったところ、該混合物は、3−(ブトキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ブチルエステルを約98・0重量%含有していた。
・工程(20−3):3−(ブトキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ブチルエステルの熱分解とイソシアネートの蒸留分離
1,2−ジクロロベンゼンの代わりにシクロドデカン(日本国、東京化成工業社製)を使用し、薄膜蒸留装置1001を280℃に加熱し、内部の圧力を約13kPaとし、工程(18−2)で貯槽906に回収した混合物の代わりに工程(20−2)で貯槽906に回収した混合物を使用し、約630g/hrで薄膜蒸発器1001の上部に供給した以外は、実施例18の工程(18−3)と同様の方法をおこなった。
続いて、連続多段蒸留塔1002の中段に、1,2−ジクロロベンゼンの代わりにシクロドデカンを約0.15kg/hrで供給し、薄膜蒸発器1001で生成した気相成分の蒸留分離をおこなった。連続多段蒸留塔1005の中段に、ラインD9より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該気相成分の蒸留分離をおこない、凝縮液を、ラインE2を経て貯槽1009へ連続的に抜き出した。ラインE2より抜き出された液は、イソホロンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は80.5%であった。
なお、イソホロンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、シクロドデカンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例21]
・工程(21−1):N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジブチルエステルの製造
炭酸ビス(3−メチルブチル)の代わりに、参考例3の炭酸ビス(2−エチルブチル)12.8kg(56.0mol)を使用し、ヘキサメチレンジアミンの代わりに、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)1.87kg(8.90mol)を使用し、ナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液)22.0gを使用した以外は、実施例18の工程(18−1)と同様の方法をおこない、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジブチルエステルを含有する反応液を得た。N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジブチルエステルの収率は95.3%であった。続いてナトリウムメトキシドの中和をおこない、溶液を貯槽706に移送した。
・工程(21−2):低沸成分の留去
貯槽706に回収した混合物をライン81から約1.3kg/hrでフィードし、連続多段蒸留塔802の塔底部の液温度を140℃、塔頂圧力を70kPaとした以外は、実施例18の工程(18−2)と同様の方法でアルコールの留去をおこなった。
続いて、貯槽806に回収した混合物を、連続多段蒸留塔902に、ライン91から約550g/hrで供給し、連続多段蒸留塔902の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約3.0kPaとした以外は、実施例18の工程(18−2)と同様の方法をおこなった。貯槽906に抜き出された混合物について液体クロマトグラフィー分析をおこなったところ、該混合物は、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジブチルエステルを約96.9重量%含有していた。
・工程(21−3):N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジブチルエステルの熱分解とイソシアネートの蒸留分離
1,2−ジクロロベンゼンの代わりにジベンジルエーテルを使用し、薄膜蒸留装置1001を280℃に加熱し、内部の圧力を約13kPaとし、工程(18−2)で貯槽906に回収した混合物の代わりに工程(20−2)で貯槽906に回収した混合物を使用し、約770g/hrで薄膜蒸発器1001の上部に供給した以外は、実施例18の工程(18−3)と同様の方法をおこなった。
続いて、連続多段蒸留塔1002の中段に、1,2−ジクロロベンゼンの代わりにジベンジルエーテルを約0.22kg/hrで供給し、薄膜蒸発器1001で生成した気相成分の蒸留分離をおこなった。連続多段蒸留塔1002の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約50kPaであった。連続多段蒸留塔1005の中段に、ラインD9より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該気相成分の蒸留分離をおこない、凝縮液を、ラインE2を経て貯槽1009へ連続的に抜き出した。ラインE2より抜き出された液は、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを約98.5重量%含有し、ジベンジルエーテルに由来すると推定される軽沸化合物を約0.7重量%含有する溶液であった。4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は76.5%であった。
なお、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、ジベンジルエーテルの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例22]
・工程(22−1):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルの製造
3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンの代わりにヘキサメチレンジアミン0.74kg(6.4mol)を使用し、フェノールの代わりに1−ブタノール28.1kg(379mol)を使用し、尿素を0.19kg(3.2mol)を使用し、充填塔602を220℃に加熱した以外は、実施例13の工程(13−1)と同等の方法をおこない、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルを含有する反応液を得た。液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルが、ヘキサメチレンジアミンに対して収率約95%で生成していた。
・工程(22−2):低沸成分の留去
図8に示す装置を使用して、アルコールの留去をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径5cmの連続多段蒸留塔802の中段に、工程(22−1)で得た反応液を、予熱器801を経て、ライン81から約1.0kg/hrで、液状で連続的にフィードした。蒸留に必要な熱量は、塔下部液をライン83とリボイラー804を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔802の塔底部の液温度は160℃、塔頂圧力は約70kPaとした。連続多段蒸留塔802の塔頂から留出するガスを、ライン82を経て凝縮器803で凝縮してライン84より貯槽805へ、約86g/hrで連続的に抜き出した。塔底からは、ライン83を経て貯槽806へ約474g/hrで連続的に抜き出した。N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルを約99.1重量%含有していた。
・工程(22−3):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルの熱分解とイソシアネートの蒸留分離
図10に示す装置を使用した。
連続多段蒸留塔1002に、ブチルベンゼン(日本国、東京化成工業社製)を供給し、塔頂での圧力を約0.1kPaとしてブチルベンゼンが全還流している状態とした。
薄膜蒸留装置1001を270℃に加熱し、内部の圧力を約1.3kPaとした。工程(22−2)で貯槽806に回収した液を160℃に加熱し、ラインD0を経て約580g/hrで薄膜蒸発器1001の上部に供給した。また、ラインD1より、ジラウリン酸ジブチルスズを約22.1g/hrでフィードした。薄膜蒸留装置1001の底部より、液相成分をラインD3より抜き出し、ラインD4を経て、薄膜蒸留装置1001の上部に循環させた。気相成分をラインD2より抜き出した。
連続多段蒸留塔1002の中段に、薄膜蒸留装置1001よりラインD2を経て抜き出した気相成分を連続的にフィードし、同時に、ブチルベンゼンを約0.3kg/hrで供給し、該気相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインD6とリボイラー1004を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔1002の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約50kPaであった。連続多段蒸留塔1002の塔頂から留出するガスを、ラインD5を経て凝縮器1003で凝縮してラインD7より連続的に抜き出した。連続多段蒸留塔1002の塔底に具備するラインD9より、液相成分を抜き出した。定常状態において、該連続多段蒸留塔1002の該ラインD2を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもブチルベンゼンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔1005の中段に、ラインD9より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該気相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインE1とリボイラー1007を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔1005の塔頂から留出するガスを、ラインE0を経て凝縮器1006で凝縮して、ラインE2を経て貯槽1009へ連続的に抜き出した。液相成分をラインE4より貯槽1010へ抜き出した。
ラインE2より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は80.5%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、ブチルベンゼンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例23]
・工程(23−1):3−((2−エチルブチルオキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(2−エチルブチル)エステルの製造
3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン1.41kg(8.3mol)を使用し、フェノールの代わりに2−エチル−1−ブタノール57.8kg(249mol)を使用し、尿素を1.10kg(18.2mol)を使用し、充填塔602を220℃に加熱した以外は、実施例13の工程(13−1)と同等の方法をおこない、3−((2−エチルブチルオキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(2−エチルブチル)エステルを含有する反応液を得た。液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、3−((2−エチルブチルオキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(2−エチルブチル)エステルが、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対して収率約94%で生成していた。
・工程(23−2):低沸成分の留去
工程(22−1)で得た反応液の代わりに工程(23−2)で得た反応液を使用し、該反応液をライン81から約1.0kg/hrで連続的にフィードし、連続多段蒸留塔802の塔底部の液温度を160℃、塔頂圧力を約70kPaとした以外は、実施例22の工程(22−2)と同様の方法をおこなった。塔底からは、3−((2−エチルブチルオキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(2−エチルブチル)エステルを約99.1重量%含有する混合物が得られた。
・工程(23−3):3−((2−エチルブチルオキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(2−エチルブチル)エステルの熱分解とイソシアネートの蒸留分離
図10に示す装置を使用した。
連続多段蒸留塔1002に、n−ドデカンを供給し、塔頂での圧力を約0.1kPaとしてn−ドデカンが全還流している状態とした。
薄膜蒸留装置1001を270℃に加熱し、内部の圧力を約1.3kPaとした。工程(23−2)で貯槽806に回収した液を160℃に加熱し、ラインD0を経て約580g/hrで薄膜蒸発器1001の上部に供給した。また、ラインD1より、ジラウリン酸ジブチルスズを約20.1g/hrでフィードした。薄膜蒸留装置1001の底部より、液相成分をラインD3より抜き出し、ラインD4を経て、薄膜蒸留装置1001の上部に循環させた。気相成分をラインD2より抜き出した。
連続多段蒸留塔1002の中段に、薄膜蒸留装置1001よりラインD2を経て抜き出した気相成分を連続的にフィードし、同時に、ブチルベンゼンを約0.3kg/hrで供給し、該気相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインD6とリボイラー1004を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔1002の塔頂から留出するガスを、ラインD5を経て凝縮器1003で凝縮してラインD7より連続的に抜き出した。連続多段蒸留塔1002の塔底に具備するラインD9より、液相成分を抜き出した。定常状態において、該連続多段蒸留塔1002の該ラインD2を具備する位置に対して、理論段数で上下1段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもブチルベンゼンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔1005の中段に、ラインD9より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該気相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインE1とリボイラー1007を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔1005の塔頂から留出するガスを、ラインE0を経て凝縮器1006で凝縮して、ラインE2を経て貯槽1009へ連続的に抜き出した。液相成分をラインE4より貯槽1010へ抜き出した。
ラインE2より抜き出された液は、イソホロンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は80.6%であった。
なお、イソホロンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、n−ドデカンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例24]
・工程(24−1):N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジブチルエステルの製造
3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンの代わりに4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)1.60kg(7.6mol)を使用し、フェノールの代わりに1−ブタノール28.1kg(380mol)を使用し、尿素を0.96kg(16.0mol)を使用し、充填塔602を220℃に加熱した以外は、実施例13の工程(13−1)と同等の方法をおこない、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジブチルエステルを含有する反応液を得た。液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジブチルエステルが、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対して収率約93%で生成していた。
・工程(24−2):低沸成分の留去
工程(22−1)で得た反応液の代わりに工程(24−2)で得た反応液を使用し、該反応液をライン81から約1.2kg/hrで連続的にフィードし、連続多段蒸留塔802の塔底部の液温度を160℃、塔頂圧力を約70kPaとした以外は、実施例22の工程(22−2)と同様の方法をおこなった。塔底からは、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジブチルエステルを約99.1重量%含有する混合物が得られた。
・工程(24−3):N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジシクロヘキシル)−ジカルバミン酸ジブチルエステルの熱分解とイソシアネートの蒸留分離
図10に示す装置を使用した。
連続多段蒸留塔1002に、ヘキシルベンゼンを供給し、塔頂での圧力を約0.1kPaとしてヘキシルベンゼンが全還流している状態とした。
薄膜蒸留装置1001を270℃に加熱し、内部の圧力を約1.3kPaとした。工程(24−2)で貯槽806に回収した液を160℃に加熱し、ラインD0を経て約580g/hrで薄膜蒸発器1001の上部に供給した。また、ラインD1より、ジラウリン酸ジブチルスズを約20.1g/hrでフィードした。薄膜蒸留装置1001の底部より、液相成分をラインD3より抜き出し、ラインD4を経て、薄膜蒸留装置1001の上部に循環させた。気相成分をラインD2より抜き出した。
連続多段蒸留塔1002の中段に、薄膜蒸留装置1001よりラインD2を経て抜き出した気相成分を連続的にフィードし、同時に、ヘキシルベンゼンを約0.3kg/hrで供給し、該気相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインD6とリボイラー1004を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔1002の塔頂から留出するガスを、ラインD5を経て凝縮器1003で凝縮してラインD7より連続的に抜き出した。連続多段蒸留塔1002の塔底に具備するラインD9より、液相成分を抜き出した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下1段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもヘキシルベンゼンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔1005の中段に、ラインD9より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該気相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインE1とリボイラー1007を経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔1005の塔頂から留出するガスを、ラインE0を経て凝縮器1006で凝縮して、ラインE2を経て貯槽1009へ連続的に抜き出した。液相成分をラインE4より貯槽1010へ抜き出した。
ラインE2より抜き出された液は、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は75.1%であった。
なお、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、ヘキシルベンゼンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例25]
・工程(25−1):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルの製造
ヘキサメチレンジアミン2.4kg(20.7mol)、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール127.9kg(620mol)、及び尿素4.97kgを使用した以外は、実施例9の工程(9−1)と同様の方法をおこない、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルをヘキサメチレンジアミンに対して収率約92%で得た。
・工程(25−2):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図11に示す装置を使用した。
薄膜蒸留装置1101を280℃に加熱し、内部の圧力を約1.0kPaとした。工程(25−1)で貯槽304に回収した反応液を150℃に加熱し、薄膜蒸留装置1101の上方側部に連結されたラインF1より約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置1101に供給し、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルの熱分解を行った。この熱分解により、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(25)を得た。なお、薄膜蒸留装置1101の底部に連結されたラインF3より液相成分を抜き出し、ラインF4及びラインF1を経て、薄膜蒸留装置1101の上部に導入し、循環させた。上記混合物(25)は、気相成分としてラインF2より抜き出したのち、約80℃で操作された凝縮器1111で凝縮し、液体とした。
連続多段蒸留塔1102の中段に、凝縮器1110で液体とした混合物(25)をラインG5を経て連続的にフィードし、同時に、貯槽1110からラインF9を経てn−ペンタデカンを供給し、混合物(25)の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインF6及びF8とリボイラー1104とを経て循環させることにより供給した。塔頂圧力は約5kPaであった。連続多段蒸留塔1102の塔頂から留出するガスを、ラインF5を経て凝縮器1103で凝縮して液相成分とし、ラインF7より連続的に抜き出し、連続多段蒸留塔1105に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔1102の該ラインG5を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもn−ペンタデカンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
連続多段蒸留塔1105の中段に、ラインF7より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、液相成分の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をラインG3とリボイラー1107とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔1105の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約1.5kPaであった。連続多段蒸留塔1105の塔頂から留出するガスを、ラインG0を経て凝縮器1106で凝縮して、ラインG2を経て貯槽1109へ連続的に抜き出した。
ラインG2より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は62.8%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、n−ペンタデカンの標準沸点Tcは、Tb<Tc<Taを満たしていた。
[実施例26]
・工程(26−1):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの製造
図1に示す装置を使用して反応をおこなった。
炭酸ジフェニルの代わりに炭酸メチルフェニルを15.8kg(99.2mol)、フェノールを11.7kg(124mol)、ヘキサメチレンジアミン2.88kg(24.8mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法をおこない、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルを含有する反応液(以下、「反応液(26)」とも記す。)を得た。反応液(26)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジメチルエステルが収率94.5%で生成していた。
・工程(26−2):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジメチルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用して反応をおこなった。
n−ドデカンの代わりにp−キシレン(日本国、東京化成工業社製)を使用し、塔頂圧力を10kPaとしてp−キシレンの全還流運転をおこなった。
伝熱面積0.1m2の薄膜蒸留装置201を290℃に加熱し、内部の圧力を約15kPaとした。工程(26−1)で貯槽105に回収した反応液を150℃に加熱し、ライン21を経て約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置201の上部に供給して、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジメチルエステルの熱分解をおこなうことにより、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物を得た。薄膜蒸留装置201の底部より、液相成分をライン23より抜き出し、ライン24及びライン21を経て、薄膜蒸留装置201の上部に循環させた。該混合物を、気相成分としてライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した気相成分である混合物を連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経てp−キシレンを約1.0kg/hrで供給し、該気相成分である混合物の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔202の塔頂から留出するガスを、ライン25を経て凝縮器203で凝縮してライン27より連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ライン26を経て液相成分を抜き出し、蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下1段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもp−キシレンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
ディクソンパッキング(6mmφ)を充填した内径約5cmの連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン31とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔底部の液温度は150℃、塔頂圧力は約1.5kPaであった。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は80.0%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、p−キシレンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例27]
・工程(27−1):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジクロリドの製造
図12に示す装置を使用した。クロロベンゼン(日本国、東京化成工業社製)25kgをラインH1より撹拌槽1203にフィードし、ヘキサメチレンジアミン1.2kg(10.3mol)をラインH2より撹拌槽1203にフィードして混合し均一な溶液としたのち、−10℃に冷却した。該混合液にガス状のホスゲンをラインH3から吹き込み反応をおこなった。余剰のホスゲンと副生する塩化水素は、ラインH5を通じて系外に抜き出した。さらに、系内を1kPaに減圧し、余剰のホスゲンと塩化水素を系外に抜き出した。得られた反応液はN,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジクロリドを含む溶液であった。
・工程(27−2):N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジクロリドの熱分解およびイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用してN,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジクロリドの熱分解をおこなった。
連続多段蒸留塔202の塔底にクロロベンゼンを供給し、塔頂圧力を約1kPaとしてクロロベンゼンの全還流運転をおこなった。
薄膜蒸留装置201を140℃に加熱し、内部の圧力を約2kPaとした。工程(26−1)で得られた反応液を、冷却したまま、ライン21を経て約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置201の上部に供給して、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジクロリドの熱分解をおこなうことにより、イソシアネートと塩化水素とを含有する混合ガスを得た。薄膜蒸留装置201の底部より、液相成分をライン23より抜き出した。該混合ガスをライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した混合ガスを連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経てクロロベンゼンを0.2kg/hrで供給し、該気相成分である混合物(2)の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔202の塔底部の液温度は200℃、塔頂圧力は約5kPaであった。連続多段蒸留塔202の塔頂から留出するガスを、ライン25を経て凝縮器203で凝縮してライン27より連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ライン26を経て液相成分を抜き出し、蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもクロロベンゼンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン31とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔底部の液温度は約60℃、塔頂圧力は約1kPaであった。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネート約97.1重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は90.1%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、塩化水素の標準沸点をTaとした場合、クロロベンゼンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例28]
・工程(28−1):N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−フェニル)の熱分解およびイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用してN,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−フェニル)の熱分解をおこなった。
連続多段蒸留塔202の塔底にn−ドデカンを供給し、塔頂圧力を約1kPaとしてn−ドデカンの全還流運転をおこなった。
薄膜蒸留装置201を290℃に加熱し、内部の圧力を約2kPaとした。工程(26−1)で得られた反応液を、冷却したまま、ライン21を経て約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置201の上部に供給して、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−フェニル)の熱分解をおこなうことにより、イソシアネートと塩化水素とを含有する混合ガスを得た。薄膜蒸留装置201の底部より、液相成分をライン23より抜き出した。該混合ガスをライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した混合ガスを連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経てn−ドデカンを0.3kg/hrで供給し、該気相成分である混合物(2)の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔202の塔頂から留出するガスを、ライン25を経て凝縮器203で凝縮してライン27より連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ライン26を経て液相成分を抜き出し、蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもn−ドデカンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン31とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソチオシアネート約93.1重量%含有する溶液であった。
なお、ヘキサメチレンジイソチオシアネートの標準沸点をTbとし、フェノールの標準沸点をTaとした場合、n−ドデカンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例29]
・工程(29−1):N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−フェニル)の熱分解およびイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用してN,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−フェニル)の熱分解をおこなった。
連続多段蒸留塔202の塔底にn−ドデカンを供給し、塔頂圧力を約1kPaとしてn−ドデカンの全還流運転をおこなった。
薄膜蒸留装置201を290℃に加熱し、内部の圧力を約2kPaとした。工程(26−1)で得られた反応液を、冷却したまま、ライン21を経て約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置201の上部に供給して、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−フェニル)の熱分解をおこなうことにより、イソシアネートと塩化水素とを含有する混合ガスを得た。薄膜蒸留装置201の底部より、液相成分をライン23より抜き出した。該混合ガスをライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した混合ガスを連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経てn−ドデカンを0.3kg/hrで供給し、該気相成分である混合物(2)の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔202の塔頂から留出するガスを、ライン25を経て凝縮器203で凝縮してライン27より連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ライン26を経て液相成分を抜き出し、蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもn−ドデカンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン31とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネート約95.0重量%含有する溶液であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ベンゼンチオールの標準沸点をTaとした場合、n−ドデカンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例30]
・工程(30−1):N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジフェニルの熱分解およびイソシアネートの分離回収
図2に示す装置を使用してN,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジフェニルの熱分解をおこなった。
連続多段蒸留塔202の塔底にn−ドデカンを供給し、塔頂圧力を約1kPaとしてn−ドデカンの全還流運転をおこなった。
薄膜蒸留装置201を290℃に加熱し、内部の圧力を約2kPaとした。工程(26−1)で得られた反応液を、冷却したまま、ライン21を経て約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置201の上部に供給して、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジフェニルの熱分解をおこなうことにより、イソシアネートと塩化水素とを含有する混合ガスを得た。薄膜蒸留装置201の底部より、液相成分をライン23より抜き出した。該混合ガスをライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した混合ガスを連続的にフィードし、同時に、貯槽210からライン29を経てn−ドデカンを0.3kg/hrで供給し、該気相成分である混合物(2)の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔202の塔頂から留出するガスを、ライン25を経て凝縮器203で凝縮してライン27より連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ライン26を経て液相成分を抜き出し、蒸留塔205に供給した。定常状態において、該連続多段蒸留塔202の該ライン22を具備する位置に対して、理論段数で上下3段の位置のガス成分と液成分とを分析し、いずれもn−ドデカンを30wt%以上含有するよう運転をおこなった。
連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン31とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。ライン32より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソチオシアネート約90.3重量%含有する溶液であった。
なお、ヘキサメチレンジイソチオシアネートの標準沸点をTbとし、ベンゼンチオールの標準沸点をTaとした場合、n−ドデカンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[参考例1] 炭酸ビス(3−メチルブチル)の製造
・工程(I−1):ジアルキルスズ触媒の製造
容積5000mLのナス型フラスコに、ジ−n−ブチルスズオキシド(日本国、三共有機合成社製)625g(2.7mol)および3−メチル−1−ブタノール(日本国、和光純薬工業社製)2020g(22.7mol)を入れた。該フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)を接続したエバポレーター(日本国、柴田社製、R−144)に取り付けた。エバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。エバポレーターのパージバルブを閉め、系内の減圧を行った後、パージバルブを徐々に開き、系内に窒素を流し、常圧に戻した。オイルバス温度を約145℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してエバポレーターの回転を開始した。エバポレーターのパージバルブを開放したまま大気圧窒素下で約40分間加熱したところで、水を含む3−メチル−1−ブタノールの蒸留が始まった。この状態を7時間保った後、パージバルブを閉め、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が74〜35kPaの状態で過剰の3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。留分が出なくなった後、該フラスコをオイルバスからあげた。該フラスコが室温(25℃)付近まで冷却されたのち、該フラスコをオイルバスからあげてパージバルブを徐々に開き系内の圧力を大気圧に戻した。該フラスコには反応液886gが得られた。119Sn、1H、13C−NMRの分析結果から、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンが、ジ−n−ブチルスズオキシドに対して、収率99%で得られたことを確認した。同様の操作を12回繰り返し、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを合計10635g得た。
・工程(I−2):炭酸ビス(3−メチルブチル)の製造
図13に示すような連続製造装置において、炭酸ビス(3−メチルブチル)を製造した。充填物Metal Gauze CY(スイス国、Sulzer Chemtech Ltd.製)を充填した、内径151mm,有効長さ5040mmの塔型反応器1302に、ラインJ4から上記で製造した1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを4388g/hrで供給し、ラインJ2から連続多段蒸留塔1301で精製された3−メチル−1−ブタノールを14953g/hrで供給した。該反応器1302は液温度が160℃になるようにヒーターおよびリボイラー1312によって調整し、圧力が約120kPa−Gになるように圧力調節バルブによって調整した。該反応器内の滞留時間は約17分であった。反応器上部からラインJ6を経て水を含む3−メチル−1−ブタノール15037g/hrを、および、ラインJ1を経て3−メチル−1−ブタノール825g/hrを、充填物Metal Gauze CYを充填し、リボイラー1311および凝縮器1321を備えた連続多段蒸留塔1301に輸送し、蒸留精製を行った。該蒸留塔1301の上部では高濃度の水を含む留分が凝縮器1321によって凝縮されラインJ3から回収された。精製された3−メチル−1−ブタノールを、連続多段蒸留塔1301の下部にあるラインJ2を経て塔型反応器1302に輸送した。塔型反応器1302の下部からジ−n−ブチル−ビス(3−メチルブチルオキシ)スズと1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを含むアルキルスズアルコキシド触媒組成物を得、ラインJ5を経て薄膜蒸留装置1303(日本国、神鋼環境ソリューション社製)に供給した。薄膜蒸留装置1303において3−メチル−1−ブタノールを留去し、凝縮器1323、ラインJ8およびラインJ4を経て塔型反応器1302に戻した。薄膜蒸留装置1303の下部からラインJ7を経てアルキルスズアルコキシド触媒組成物を輸送し、ジ−n−ブチル−ビス(3−メチルブチルオキシ)スズと1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンの流量が約5130g/hrになるように調節しオートクレーブ1304に供給した。オートクレーブ1304にラインJ9より、二酸化炭素を973g/hrで供給し、オートクレーブ1304内圧を4MPa−Gに維持した。オートクレーブ1304における温度を120℃に設定し、滞留時間を約4時間に調整し、二酸化炭素とアルキルスズアルコキシド触媒組成物との反応を行い、炭酸ビス(3−メチルブチル)を含む反応液を得た。該反応液をラインJ10と調節バルブを介して除炭槽1305に移送し残存二酸化炭素を除去し、ラインJ11から二酸化炭素を回収した。その後、該反応液を、ラインJ12を経て約142℃、約0.5kPaとした薄膜蒸留装置1306(日本国、神鋼環境ソリューション社製)に移送し、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンの流量が約4388g/hrになるように調節し供給して、炭酸ビス(3−メチルブチル)を含む留分を得、一方で蒸発残渣をラインJ13とラインJ4を介して、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンの流量が約4388g/hrになるように調節し塔型反応器1302に循環した。炭酸ビス(3−メチルブチル)を含む留分は凝縮器1326および移送ラインJ14を経て、充填物Metal Gauze CYを充填しリボイラー1317および凝縮器1327を備えた連続多段蒸留塔1307に959g/hrで供給して、蒸留精製を行った後、回収ラインJ15から99wt%の炭酸ビス(3−メチルブチル)を944g/hrで得た。移送ラインJ13のアルキルスズアルコキシド触媒組成物を119Sn,1H,13C−NMRによって分析したところ、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンが含まれており、ジ−n−ブチル−ビス(3−メチルブチルオキシ)スズは含まれていなかった。上記連続運転を約240時間行った後、抜き出しラインJ16からアルキルスズアルコキシド触媒組成物を18g/hrで抜き出し、一方でラインJ17から上記方法で製造した1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを18g/hrで供給した。
[参考例2] 炭酸ジブチルの製造
・工程(II−1):ジアルキルスズ触媒の製造
容積3000mLのナス型フラスコに、ジ−n−ブチルスズオキシド692g(2.78mol)および1−ブタノール(日本国、和光純薬工業社製)2001g(27mol)を入れた。白色スラリー状の該混合物を入れたフラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したエバポレーターに取り付けた。エバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。エバポレーターのパージバルブを閉め、系内の減圧を行った後、パージバルブを徐々に開き、系内に窒素を流し、常圧に戻した。オイルバス温度を126℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してエバポレーターの回転を開始した。エバポレーターのパージバルブを開放したまま常圧で約30分間、回転攪拌と加熱した後、混合液が沸騰し、低沸成分の蒸留が始まった。この状態を8時間保った後、パージバルブを閉め、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が76〜54kPaの状態で残存低沸成分を蒸留した。低沸成分が出なくなった後、該フラスコをオイルバスからあげた。反応液は透明な液になっていた。その後、該フラスコをオイルバスからあげてパージバルブを徐々に開き系内の圧力を常圧に戻した。該フラスコには反応液847gを得た。119Sn,1H,13C−NMRの分析結果から、生成物1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(n−ブチルオキシ)−ジスタンオキサンが、ジ−n−ブチルスズオキシド基準で、収率99%で得られた。同様な操作を12回繰り返し、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(n−ブチルオキシ)−ジスタンオキサンを合計10180g得た。
・工程(II−2):炭酸ジブチルの製造
図13に示すような連続製造装置において、炭酸エステルを製造した。充填物Mellapak 750Y(スイス国、Sulzer Chemtech Ltd.社製)を充填した、内径151mm,有効長さ5040mmの塔型反応器に供給ラインJ4から工程(II−1)で製造した1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(n−ブチルオキシ)−ジスタンオキサンを4201g/hrで、ラインJ2から連続多段蒸留塔1301で精製した1−ブタノールを24717g/hrで、塔型反応器1302に供給した。該反応器内は液温度が160℃になるようにヒーターおよびリボイラー1312によって調整し、圧力が約120kPa−Gになるように圧力調節バルブによって調整した。該反応器内の滞留時間は約10分であった。反応器上部からラインJ6を経て水を含む1−ブタノール24715g/hrおよび供給ラインJ1を経て1−ブタノール824g/hrを、充填物Metal Gauze CY(スイス国、Sulzer Chemtech Ltd.社製)を充填しリボイラー1311および凝縮器1321を備えた連続多段蒸留塔1301に輸送し、蒸留精製を行った。連続多段蒸留塔1301の上部では高濃度の水を含む留分が凝縮器1321によって凝縮され移送ラインJ3から回収された。連続多段蒸留塔1301の下部にあるラインJ2を経て精製された1−ブタノールを輸送した。塔型反応器1302の下部からジ−n−ブチルスズ−ジ−n−ブチルオキシドと1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(n−ブチルオキシ)−ジスタンオキサンを含むアルキルスズアルコキシド触媒組成物を得、ライン5を経て薄膜蒸留装置1303(日本国、神鋼環境ソリューション社製)に供給した。薄膜蒸留装置1303において1−ブタノールを留去し、凝縮器1323、移送ラインJ8および移送ラインJ4を経て塔型反応器1302に戻した。薄膜蒸留装置1303の下部からラインJ7を経てアルキルスズアルコキシド触媒組成物を輸送し、ジ−n−ブチルスズ−ジ−n−ブチルオキシドと1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(n−ブチルオキシ)−ジスタンオキサンの活性成分の流量が約4812g/hrになるように調節しオートクレーブ1304に供給した。オートクレーブに供給ラインJ9を介し二酸化炭素を973g/hrで供給し、オートクレーブ内圧を4MPa−Gに維持した。オートクレーブにおける温度を120℃に設定し、滞留時間を約4時間に調製し、二酸化炭素とアルキルスズアルコキシド触媒組成物との反応を行い、炭酸ジブチルを含む反応液を得た。該反応液をラインJ10と調節バルブを介して除炭槽1305に移送し残存二酸化炭素を除去し、ラインJ11から二酸化炭素を回収した。その後、該反応液を、ラインJ12を経て140℃、約1.4kPaとした薄膜蒸留装置1306(日本国、神鋼環境ソリューション社製)に輸送し、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(n−ブチルオキシ)−ジスタンオキサンの流量が約4201g/hrになるように調節し供給して炭酸ジブチルを含む留分を得、一方で蒸発残渣をラインJ13とラインJ4を介して、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(n−ブチルオキシ)−ジスタンオキサン流量が約4201g/hrになるように調節し塔型反応器1302に循環した。炭酸ジブチルを含む留分は凝縮器1326およびラインJ14を経て、充填物Metal Gauze CY(スイス国、Sulzer Chemtech Ltd.社製)を充填しリボイラー1317および凝縮器1327を備えた蒸留塔1307に830g/hrで供給して、蒸留精製を行った後、移送ラインJ15から99wt%の炭酸ジブチルを814g/hr得た。移送ラインJ13のアルキルスズアルコキシド触媒組成物を119Sn,1H,13C−NMRによる分析を行ったところ、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(n−ブチルオキシ)−ジスタンオキサンが含まれており、ジ−n−ブチルスズ−ジ−n−ブチルオキシドは含まれていなかった。上記連続運転を約600時間行った後、抜き出しラインJ16からアルキルスズアルコキシド触媒組成物を16g/hrで、一方でラインJ17から工程(II−1)で製造した1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(n−ブチルオキシ)−ジスタンオキサンを16g/hrで供給した。
[参考例3] 炭酸ビス(2−エチルブチル)の製造
・工程(III−1):ジアルキルスズ触媒の製造
容積5000mLのナス型フラスコに、ジ−n−オクチルスズオキシド(日本国、三共有機合成社製)893g(2.48mol)及び2−エチル−1−ブタノール2403g(23.6mol)を入れた。該フラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したエバポレーターに取り付けた。エバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。エバポレーターのパージバルブを閉め、系内の減圧を行った後、パージバルブを徐々に開き、系内に窒素を流し、常圧に戻した。オイルバス温度を約165℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してエバポレーターの回転を開始した。エバポレーターのパージバルブを開放したまま大気圧窒素下で約40分間加熱したところで、水を含む2−エチル−1−ブタノールの蒸留が始まった。この状態を7時間保った後、パージバルブを閉め、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が74〜25kPaの状態で過剰の2−エチル−1−ブタノールを蒸留した。留分が出なくなった後、該フラスコをオイルバスからあげた。該フラスコが室温(25℃)付近まで冷却されたのち、該フラスコをオイルバスからあげてパージバルブを徐々に開き系内の圧力を大気圧に戻した。該フラスコには反応液1125gが得られた。119Sn、1H、13C−NMRの分析結果から、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンが、ジ−n−オクチルスズオキシドに対して、収率99%で得られたことを確認した。同様の操作を12回繰り返し、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを合計13510g得た。
・工程(III−2):炭酸エステルの製造およびジアルキルスズ触媒の失活体組成物の回収
図13に示すような連続製造装置において、炭酸エステルを製造した。充填物Metal Gauze CYを充填した、内径151mm,有効長さ5040mmの塔型反応器1302に、ライン4から上記で製造した1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを6074g/hrで供給し、ラインJ2から連続多段蒸留塔1301で精製された2−エチル−1−ブタノールを12260g/hrで供給した。該反応器1302は液温度が160℃になるようにヒーターおよびリボイラー1312によって調整し、圧力が約120kPa−Gになるように圧力調節バルブによって調整した。該反応器内の滞留時間は約17分であった。反応器上部からラインJ6を経て水を含む2−エチル−1−ブタノール12344g/hrを、および、ラインJ1を経て2−エチル−1−ブタノール958g/hrを、充填物Metal Gauze CYを充填しリボイラー1311および凝縮器1321を備えた連続多段蒸留塔1301に輸送し、蒸留精製を行った。連続多段蒸留塔1301の上部では高濃度の水を含む留分が凝縮器1321によって凝縮され回収ラインJ3から回収された。精製された2−エチル−1−ブタノールは、連続多段蒸留塔1301の下部にあるラインJ2を経て塔型反応器1302に輸送した。塔型反応器1302の下部からジ−n−オクチル−ビス(2−エチルブチルオキシ)スズと1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを含むアルキルスズアルコキシド触媒組成物を得、ラインJ5を経て薄膜蒸留装置1303に供給した。薄膜蒸留装置1303において2−エチル−1−ブタノールを留去し、凝縮器1323、ラインJ8およびラインJ4を経て塔型反応器1302に戻した。薄膜蒸留装置1303の下部からラインJ7を経てアルキルスズアルコキシド触媒組成物を輸送し、ジ−n−オクチル−ビス(2−エチルブチルオキシ)スズと1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの流量が約6945g/hrになるように調節しオートクレーブ1304に供給した。オートクレーブにラインJ9より、二酸化炭素を973g/hrで供給し、オートクレーブ内圧を4MPa−Gに維持した。オートクレーブにおける温度を120℃に設定し、滞留時間を約4時間に調整し、二酸化炭素とアルキルスズアルコキシド触媒組成物との反応を行い、炭酸ビス(2−エチルブチル)を含む反応液を得た。該反応液をラインJ10と調節バルブを介して除炭槽1305に移送し残存二酸化炭素を除去し、ラインJ11から二酸化炭素を回収した。その後、該反応液を、ラインJ12を経て約142℃、約0.5kPaとした薄膜蒸留装置1306に移送し、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの流量が約6074g/hrになるように調節し供給して、炭酸ビス(2−エチルブチル)を含む留分を得、一方で蒸発残渣をラインJ13とラインJ4を介して、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの流量が約6074g/hrになるように調節し塔型反応器1302に循環した。炭酸ビス(2−エチルブチル)を含む留分は凝縮器1326およびラインJ14を経て、充填物Metal Gauze CYを充填しリボイラー1317および凝縮器1327を備えた蒸留塔1307に959g/hrで供給して、蒸留精製を行った後、回収ラインJ15から99wt%の炭酸ビス(2−エチルブチル)を1075g/hrで得た。ラインJ13のアルキルスズアルコキシド触媒組成物を119Sn,1H,13C−NMRによる分析を行ったところ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンが含まれており、ジ−n−オクチル−ビス(2−エチルブチルオキシ)スズは含まれていなかった。上記連続運転を約220時間行った後、抜き出しラインJ16からアルキルスズアルコキシド触媒組成物を18g/hrで、一方で供給ラインJ17から上記方法で製造した1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを18g/hrで供給した。
[比較例1]
・工程(a−1):N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルの製造
原料として、炭酸ジフェニル(米国、Aldrich社製)13.40kg(63mol)、フェノール(米国、Aldrich社製)9.96kg(106mol)及びヘキサメチレンジアミン(米国、Aldrich社製)2.44kg(21mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法で反応をおこない、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルを含有する反応液(a)を得た。
反応液(a)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルが収率99.2%で生成していた。
・工程(a−2):N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2のような装置を使用して反応をおこなった。
薄膜蒸留装置201を220℃に加熱し、内部の圧力を約13kPaとした。工程(a−1)で貯槽105に回収した反応液(a)を150℃に加熱し、ライン21を経て約1.0kg/hrで薄膜蒸留装置201の上部に供給して、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解をおこなうことにより、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(a)を得た。薄膜蒸留装置201の底部より、液相成分をライン23より抜き出し、ライン24及びライン21を経て、薄膜蒸留装置201の上部に循環させた。該混合物(a)を、気相成分としてライン22より抜き出した。
連続多段蒸留塔202の中段に、薄膜蒸留装置201よりライン22を経て抜き出した気相成分である混合物(a)を連続的にフィードし、該気相成分である混合物(a)の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン26とリボイラー204とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔202の塔頂から留出するガスを、ライン25を経て凝縮器203で凝縮してライン27より連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ライン26を経て液相成分を抜き出し、蒸留塔205に供給した。
連続多段蒸留塔205の中段に、ライン26より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、該液相成分の蒸留分離をおこなった。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をライン31とリボイラー207とを経て循環させることにより供給した。連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。定常状態における抜き出し量は約63g/hrであった。
ライン32より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99.8重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は46%であった。
[比較例2]
・工程(b−1):N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルの製造
原料として、炭酸ジフェニル12.2kg(57mol)、フェノール11.3kg(120mol)及びヘキサメチレンジアミン2.55kg(22mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法で反応をおこない、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルを含有する反応液(b)を得た。
反応液(b)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルが収率98.1%で生成していた。
・工程(b−2):N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2のような装置を使用して反応をおこなった。
反応液(1)の代わりに、工程(b−1)で得た反応液(b)を使用した以外は、実施例1の工程(1−2)と同様の方法で熱分解をおこない、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(b)を得た。
また、n−ドデカンの代わりにp−キシレン(日本国、東京化成工業社製)を0.3kg/hrでフィードした以外は、実施例(1)の工程(1−2)と同様の方法でイソシアネートの分離回収をおこない、連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。
ライン32より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99.3重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は42%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、p−キシレンの標準沸点Tcは、Tc<Ta<Tbであった。
[比較例3]
・工程(c−1):N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルの製造
原料として、炭酸ジフェニル10.3kg(48mol)、フェノール12.2kg(130mol)及びヘキサメチレンジアミン1.98kg(17mol)を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法で反応をおこない、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルを含有する反応液(c)を得た。
反応液(c)を液体クロマトグラフィーで分析した結果、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルが収率98.6%で生成していた。
・工程(c−2):N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収
図2のような装置を使用して反応をおこなった。
反応液(a)の代わりに、工程(c−1)で得た反応液(c)を使用した以外は、実施例1の工程(1−2)と同様の方法で熱分解をおこない、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物(c)を得た。
また、n−ドデカンの代わりに1,2−ジフェニルエタン(日本国、東京化成工業社製)を0.2kg/hrでフィードした以外は、実施例(1)の工程(1−2)と同様の方法でイソシアネートの分離回収をおこない、連続多段蒸留塔205の塔頂から留出するガスを、ライン30を経て凝縮器206で凝縮して、ライン32を経て貯槽209へ連続的に抜き出した。
ライン32より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約98.1重量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は38%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ヒドロキシ化合物の標準沸点をTaとした場合、1,2−ジフェニルエタンの標準沸点Tcは、Ta<Tb<Tcであった。