JP5610081B2 - 電子部品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、電子部品及びその製造方法に関し、より特定的には、螺旋状のコイルを内蔵している電子部品及びその製造方法に関する。
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の積層電子部品が知られている。図8は、特許文献1に記載の積層電子部品の積層体500の断面構造図である。
積層電子部品は、積層体500及びコイル502を備えている。積層体500は、複数のセラミックグリーンシート504が積層されて構成されている。コイル502は、積層体500に内蔵されており、コイル形成導体506及びスルーホールVが接続されて構成されている。コイル形成導体506は、セラミックグリーンシート504上に形成されており、矩形状の断面形状を有している。
ところで、特許文献1に記載の積層電子部品500は、コイル形成導体506に積層ずれが発生するという問題を有している。より詳細には、積層電子部品では、コイル形成導体506は、図8に示すように、積層方向に重なっている。そのため、積層体500において、コイル形成導体506が形成された領域の積層方向の高さは、コイル形成導体506が形成されていない領域の積層方向の高さよりも高くなる。よって、積層体500の圧着時に、コイル形成導体506が形成された領域に集中して力が加わる。その結果、コイル形成導体506が積層方向に直交する方向にずれてしまう。
そこで、本発明の目的は、コイル導体の積層ずれの発生を抑制できる電子部品及びその製造方法を提供することである。
本発明の第1の形態に係る電子部品は、複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、前記積層体に内蔵されており、かつ、前記絶縁体層上に設けられている第1のコイル導体及び第2のコイル導体を含む複数のコイル導体及び前記絶縁体層を貫通しているビアホール導体により構成されている螺旋状のコイルと、を備えており、前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とは前記絶縁体層を介して互いに積層方向に対向しており、前記第1のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第1のコイル導体における積層方向の一方側に位置する第1の面、及び、該第1のコイル導体における積層方向の他方側に位置する第3の面はそれぞれ、第1の凸部及び第2の凸部を有しており、前記第2のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第2のコイル導体における積層方向の他方側に位置する第2の面、及び、該第2のコイル導体における積層方向の一方側に位置する第4の面はそれぞれ、第1の凹部及び第2の凹部を有しており、前記第1の凸部は、積層方向の一方側に位置する前記第1の凹部と積層方向において重なっていること、を特徴とする。
本発明の第2の形態に係る電子部品は、複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、前記積層体に内蔵されており、かつ、前記絶縁体層上に設けられている第1のコイル導体及び第2のコイル導体を含む複数のコイル導体及び前記絶縁体層を貫通しているビアホール導体により構成されている螺旋状のコイルと、を備えており、前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とは前記絶縁体層を介して互いに積層方向に対向しており、前記第1のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、前記第2のコイル導体に対向している該第1のコイル導体の第1の面は、凸部を有しており、前記第2のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第2のコイル導体は、複数に分割されて該第2のコイルの線幅方向に並んでいると共に、積層方向において前記凸部と重なっていないこと、を特徴とする。
本発明の第3の形態に係る電子部品は、複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、前記積層体に内蔵されており、かつ、前記絶縁体層上に設けられている第1のコイル導体及び第2のコイル導体を含む複数のコイル導体及び前記絶縁体層を貫通しているビアホール導体により構成されている螺旋状のコイルと、を備えており、前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とは積層方向に並んでおり、前記第1のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第1のコイル導体は、複数に分割されて該第1のコイル導体の線幅方向に並んでおり、前記第2のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第2のコイル導体は、複数に分割されて該第2のコイル導体の線幅方向に並んでいると共に、積層方向において前記第1のコイル導体と重なっておらず、複数に分割された前記第1のコイル導体と複数に分割された前記第2のコイル導体とが積層方向に隣り合うもの同士で、線幅方向に、交互に並んでいること、を特徴とする。
本発明の第1の形態に係る電子部品の製造方法は、複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、該積層体に内蔵されており、かつ、該絶縁体層上に設けられている第1のコイル導体及び第2のコイル導体を含む複数のコイル導体及び該絶縁体層を貫通しているビアホール導体により構成されている螺旋状のコイルと、を備えた電子部品の製造方法であって、前記第1のコイル導体を前記絶縁体層に形成する第1の工程と、前記第2のコイル導体を前記絶縁体層に形成する第2の工程と、前記絶縁体層を介して前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とが対向するように前記複数の絶縁体層を積層する第3の工程と、を備えており、前記第1の工程では、前記第1のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、第1の数の開口が設けられた第1のマスクパターンを用いて該第1のコイル導体を形成し、前記第2の工程では、前記第2のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第2のコイル導体の線幅方向に並ぶ第2の数の開口が設けられた第2のマスクパターンを用いて該第2のコイル導体を形成し、前記第1の数と第2の数との差は、1であり、前記第3の工程では、前記第1のマスクパターンにより形成された複数に分割された前記第1のコイル導体と前記第2のマスクパターンにより形成された複数に分割された前記第2のコイル導体とが積層方向に隣り合うもの同士で、線幅方向に、交互に並ぶように、前記複数の絶縁体層を積層すること、を特徴とする。
本発明によれば、コイル導体の積層ずれの発生を抑制できる。
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品及びその製造方法について説明する。
(電子部品の構成)
本発明の一実施形態に係る電子部品の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図2は、一実施形態に係る電子部品10の積層体12の分解斜視図である。図3は、図1のA−Aにおける断面構造図である。
本発明の一実施形態に係る電子部品の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図2は、一実施形態に係る電子部品10の積層体12の分解斜視図である。図3は、図1のA−Aにおける断面構造図である。
以下、電子部品10の積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10のz軸方向の正方向側の上面の2辺に沿った方向をx軸方向及びy軸方向と定義する。x軸方向とy軸方向とz軸方向とは直交している。
電子部品10は、図1及び図2に示すように、積層体12、外部電極14(14a,14b)及びコイルLを備えている。
積層体12は、図1に示すように、直方体状をなしており、コイルLを内蔵している。以下では、積層体12のz軸方向の正方向側の面を上面と定義し、積層体12のz軸方向の負方向側の面を下面と定義する。また、積層体12のその他の面を側面と定義する。
積層体12は、図2に示すように、絶縁体層16(16a〜16j)がz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並ぶように積層されることにより構成されている。以下では、絶縁体層16のz軸方向の正方向側の面を表面と称し、絶縁体層16のz軸方向の負方向側の面を裏面と称す。
外部電極14aは、図1に示すように、積層体12のx軸方向の負方向側の側面を覆うように設けられている。外部電極14bは、図1に示すように、積層体12のx軸方向の正方向側の側面を覆うように設けられている。更に、外部電極14a,14bは、積層体12の上面及び下面、並びに、y軸方向の正方向側及び負方向側の積層体12の側面に対して折り返されている。外部電極14a,14bは、電子部品10外の回路とコイルLとを電気的に接続する接続端子として機能する。
コイルLは、積層体12に内蔵され、図2に示すように、コイル導体18(18a〜18g)及びビアホール導体b1〜b6により構成されている。コイルLは、コイル導体18及びビアホール導体b1〜b6が接続されることにより螺旋状をなしている。
コイル導体18a〜18gは、図2に示すように、絶縁体層16c〜16iの表面上に設けられており、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りに旋回するコ字型の線状導体層である。コイル導体18a〜18gは、z軸方向から平面視したときに、重なりあって長方形状の環状の軌道を形成している。より詳細には、コイル導体18a〜18gは、3/4ターンのターン数を有しており、絶縁体層16c〜16iの三辺に沿っている。コイル導体18aは、絶縁体層16cにおいて、x軸方向の負方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。また、コイル導体18aは、x軸方向の負方向側の短辺に引き出されており、外部電極14aと接続されている。コイル導体18bは、絶縁体層16dにおいて、y軸方向の負方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18cは、絶縁体層16eにおいて、x軸方向の正方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18dは、絶縁体層16fにおいて、y軸方向の正方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18eは、絶縁体層16gにおいて、x軸方向の負方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18fは、絶縁体層16hにおいて、y軸方向の負方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18gは、絶縁体層16iにおいて、x軸方向の正方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。また、コイル導体18gは、x軸方向の正方向側の短辺に引き出されており、外部電極14bと接続されている。
以下では、コイル導体18において、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りの上流側の端部を上流端とし、時計回りの下流側の端部を下流端とする。なお、コイル導体18のターン数は、3/4ターンに限らない。よって、コイル導体18のターン数は、例えば、7/8ターンであってもよい。
ビアホール導体b1〜b6は、図2に示すように、絶縁体層16c〜16hをz軸方向に貫通するように設けられている。より詳細には、ビアホール導体b1は、絶縁体層16cをz軸方向に貫通し、コイル導体18aの下流端及びコイル導体18bの上流端に接続されている。ビアホール導体b2は、絶縁体層16dをz軸方向に貫通し、コイル導体18bの下流端及びコイル導体18cの上流端に接続されている。ビアホール導体b3は、絶縁体層16eをz軸方向に貫通し、コイル導体18cの下流端及びコイル導体18dの上流端に接続されている。ビアホール導体b4は、絶縁体層16fをz軸方向に貫通し、コイル導体18dの下流端及びコイル導体18eの上流端に接続されている。ビアホール導体b5は、絶縁体層16gをz軸方向に貫通し、コイル導体18eの下流端及びコイル導体18fの上流端に接続されている。ビアホール導体b6は、絶縁体層16hをz軸方向に貫通し、コイル導体18fの下流端及びコイル導体18gの上流端に接続されている。
ところで、電子部品10は、コイル導体18a〜18gの積層ずれの発生を抑制できる構成を有している。以下に、コイル導体18aとコイル導体18bとに着目してかかる構成について図3を参照しながら説明する。
コイル導体18aとコイル導体18bとは、絶縁体層16cを介してz軸方向において互いに対向している。以下では、コイル導体18aにおいて、コイル導体18bと対向している面(すなわち、z軸方向の負方向側の面)を面S1と定義する。また、コイル導体18bにおいて、コイル導体18aと対向している面(すなわち、z軸方向の正方向側の面)を面S2と定義する。
面S1は、コイル導体18aが延在している方向(y軸方向)に垂直な断面において、コイル導体18bに向かって(z軸方向の負方向に向かって)突出している凸部A1を有している。また、コイル導体18aは、凸部A1のx軸方向の正方向側及び負方向側(すなわち、線幅方向の外側)に凹部A2,A3を有している。凹部A2,A3は、コイル導体18bから遠ざかる方向(z軸方向の正方向側)に向かって窪んでいる。
また、コイル導体18aのz軸方向の正方向側の面S3は、面S1を上下反転させた形状をなしている。以上のように、コイル導体18aは、線幅方向(x軸方向)の中央が相対的に厚く、線幅方向の両端が相対的に薄い形状をなしている。
面S2は、コイル導体18bが延在している方向(y軸方向)に垂直な断面において、コイル導体18aから遠ざかる方向(z軸方向の負方向)に向かって窪んでいる凹部A4を有している。凹部A4は、z軸方向において凸部A1と重なっている。また、コイル導体18bは、凹部A4のx軸方向の正方向側及び負方向側(すなわち、線幅方向の外側)に凸部A5,A6を有している。凸部A5,A6は、コイル導体18aに向かって(z軸方向の正方向側に向かって)突出している。凸部A5,A6はそれぞれ、z軸方向において凹部A2,A3と重なっている。これにより、面S2は、面S1に倣った形状をなしている。
また、コイル導体18bのz軸方向の負方向側の面S4は、面S2を上下反転させた形状をなしている。以上のように、コイル導体18bは、線幅方向(x軸方向)の中央が相対的に薄く、線幅方向の両端が相対的に厚い形状をなしている。
コイル導体18c,18e,18gは、コイル導体18aと同じ形状をなしており、コイル導体18d,18fは、コイル導体18bと同じ形状をなしている。これにより、コイル導体18a及びコイル導体18aと同じ形状を有するコイル導体18c,18e,18gと、コイル導体18b及びコイル導体18bと同じ形状を有するコイル導体18d,18fとがz軸方向に交互に並んでいる。なお、コイル導体18a〜18gは、A−Aに直交する断面においても、A−Aにおける断面と同じ形状を有している。
(電子部品の製造方法)
以下に、電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図4(a)は、コイル導体18aの形成に用いるスクリーン板M1を示し、図4(b)は、コイル導体18bの形成に用いるスクリーン板M2を示している。なお、以下では、一つの電子部品10の製造方法について説明を行うが、実際には、大判のマザーセラミックグリーンシートが積層されてマザー積層体が作製され、更に、マザー積層体がカットされることにより、複数の積層体が同時に作製される。
以下に、電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図4(a)は、コイル導体18aの形成に用いるスクリーン板M1を示し、図4(b)は、コイル導体18bの形成に用いるスクリーン板M2を示している。なお、以下では、一つの電子部品10の製造方法について説明を行うが、実際には、大判のマザーセラミックグリーンシートが積層されてマザー積層体が作製され、更に、マザー積層体がカットされることにより、複数の積層体が同時に作製される。
まず、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を所定の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
このフェライトセラミック粉末に対して、結合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)、可塑剤、湿潤材及び分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、キャリアシート上にシート状に形成して乾燥させ、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを作製する。
次に、絶縁体層16c〜16hとなるべきセラミックグリーンシートのそれぞれに、ビアホール導体b1〜b6を形成する。具体的には、絶縁体層16c〜16hとなるべきセラミックグリーンシートにレーザビームを照射してビアホールを形成する。更に、ビアホールに対して、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電性材料からなるペーストを印刷塗布などの方法により充填して、ビアホール導体b1〜b6を形成する。
次に、絶縁体層16c,16e,16g,16iとなるべきセラミックグリーンシート上に、導電性材料からなるペーストをスクリーン印刷法により塗布することにより、コイル導体18a,18c,18e,18gを形成する。より詳細には、コイル導体18a,18c,18e,18gと同じ形状の開口OP1を有するスクリーン板M1(図4(a)参照)を介して、導電性材料からなるペーストを絶縁体層16c,16e,16g,16iに塗布する。なお、図4(a)は、コイル導体18aを形成するためのスクリーン板M1である。スクリーン板M1は、コイル導体18aが延在している方向に垂直な断面において、1つの開口が設けられている。導電性材料からなるペーストは、例えば、Ag粉末に、ワニス及び溶剤が加えられたものである。
次に、絶縁体層16d,16f,16hとなるべきセラミックグリーンシート上に、導電性材料からなるペーストをスクリーン印刷法により塗布することにより、コイル導体18b,18d,18fを形成する。より詳細には、コイル導体18b,18d,18fと同じ形状の開口OP2を有するスクリーン板M2(図4(b)参照)を介して、導電性材料からなるペーストを絶縁体層16d,16f,16hに塗布する。なお、図4(b)は、コイル導体18bを形成するためのスクリーン板M2である。ただし、スクリーン板M2は、コイル導体18bが延在している方向に垂直な断面において、コイル導体18bの線幅方向に並ぶ2つの開口OP3,OP4が設けられている。そのため、形成直後のコイル導体18b,18d,18fの断面形状は、線幅方向に並ぶ2つの部分に分割されている。
なお、コイル導体18を形成する工程とビアホールに対して導電性材料からなるペーストを充填する工程とは、同じ工程において行われてもよい。
次に、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを一枚ずつ積層及び仮圧着して未焼成の積層体12を得る。絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを1枚ずつ積層及び仮圧着する。この際、z軸方向に隣り合うコイル導体18a〜18g同士が対向するように、絶縁体層16を積層する。この後、未焼成の積層体12に対して、静水圧プレスにて本圧着を施す。静水圧プレスの条件は、100MPaの圧力及び45℃の温度である。仮圧着及び本圧着において、コイル導体18a,18c,18e,18gは、z軸方向から押しつぶされて、図3に示すように、楕円形状に変形する。一方、コイル導体18b,18d,18fは、z軸方向から押しつぶされて、2つに分割された部分がつながることによって、図3に示すように線幅方向の中央が窪んだ形状に変形する。
次に、未焼成の積層体12に、脱バインダー処理及び焼成を施す。脱バインダー処理は、例えば、低酸素雰囲気中において850℃で2時間の条件で行う。焼成は、例えば、900℃〜930℃で2.5時間の条件で行う。この後、積層体12の表面に、バレル研磨処理を施して、面取りを行う。
次に、Agを主成分とする導電性材料からなる電極ペーストを、積層体12のx軸方向の両端に位置する側面に塗布する。そして、塗布した電極ペーストを約800℃の温度で1時間の条件で焼き付ける。これにより、外部電極14となるべき銀電極を形成する。更に、外部電極14となるべき銀電極の表面に、Niめっき/Snめっきを施すことにより、外部電極14を形成する。以上の工程により、電子部品10が完成する。
(効果)
以上のように構成された電子部品10及びその製造方法によれば、コイル導体18の積層ずれの発生を抑制できる。より詳細には、特許文献1に記載の積層インダクタ500では、コイル形成導体506は、図8に示すように、積層方向に重なっている。そのため、積層体500において、コイル形成導体506が形成された領域の積層方向の高さは、コイル形成導体506が形成されていない領域の積層方向の高さよりも高くなる。よって、積層体500の圧着時に、コイル形成導体506が形成された領域に集中して力が加わる。その結果、コイル形成導体506が積層方向に直交する方向にずれてしまう。
以上のように構成された電子部品10及びその製造方法によれば、コイル導体18の積層ずれの発生を抑制できる。より詳細には、特許文献1に記載の積層インダクタ500では、コイル形成導体506は、図8に示すように、積層方向に重なっている。そのため、積層体500において、コイル形成導体506が形成された領域の積層方向の高さは、コイル形成導体506が形成されていない領域の積層方向の高さよりも高くなる。よって、積層体500の圧着時に、コイル形成導体506が形成された領域に集中して力が加わる。その結果、コイル形成導体506が積層方向に直交する方向にずれてしまう。
一方、電子部品10では、図3に示すように、面S2は、面S1に倣った形状をなしている。より詳細には、面S1は、コイル導体18aが延在している方向に垂直な断面において、コイル導体18bに向かって(z軸方向の負方向側に向かって)突出している凸部A1を有している。面S2は、コイル導体18bが延在している方向に垂直な断面において、コイル導体18aから遠ざかる方向(z軸方向の負方向)に向かって窪んでいる凹部A4を有している。そして、凹部A4は、z軸方向において凸部A1と重なっている。すなわち、コイル導体18aが18bにはまり込んだ構造となっている。その結果、コイル導体18a,18bに力が加わったとしても、コイル導体18a,18bがz軸方向に直交する方向にずれることが抑制される。よって、電子部品10において、コイル導体18に積層ずれが発生することが抑制される。
また、電子部品10の製造方法では、コイル導体18が延在している方向に垂直な断面において、1つの開口が設けられているスクリーン板M1を用いて、コイル導体18a,18c,18e,18gを形成している。そのため、形成直後のコイル導体18b,18d,18fの断面形状は、線幅方向に並ぶ2つの部分に分割されていない。また、コイル導体18が延在している方向に垂直な断面において、コイル導体18の線幅方向に並ぶ2つの開口OP3,OP4が設けられているスクリーン板M2を用いて、コイル導体18b,18d,18fを形成している。そのため、形成直後のコイル導体18b,18d,18fの断面形状は、線幅方向に並ぶ2つの部分に分割されている。そして、z軸方向に隣り合うコイル導体18a〜18g同士が対向するように、絶縁体層16を積層し、静水圧プレスにて本圧着を施す。これにより、コイル導体18a,18c,18e,18gは、z軸方向から押しつぶされて、図3に示すように、楕円形状に変形する。一方、コイル導体18b,18d,18fは、z軸方向から押しつぶされて、2つに分割された部分がつながることによって、図3に示すように線幅方向の中央が窪んだ形状に変形する。その結果、前述したようにコイル導体18の積層ずれが発生しにくい電子部品10を得ることができる。
また、電子部品10では、コイル導体18aの線幅方向の中央部分に圧力が集中することが抑制されるので、コイル導体18aが圧着時に線幅方向に大きく広がることが抑制される。これにより、電子部品10のコイルLの内径が小さくなることや、電子部品10のコイルLの外部の領域が狭くなることが抑制される。
(変形例に係る電子部品の製造方法)
以下に、変形例に係る電子部品10の製造方法について説明する。変形例に係る電子部品10の製造方法では、図4(a)のスクリーン板M1及び図4(b)のスクリーン板M2を使い分けて、2種類の形状のコイル導体18a,18c,18e,18g及びコイル導体18b,18d,18fを形成するのではなく、2種類の導電性ペーストを使い分けて、2種類の形状のコイル導体18a,18c,18e,18g及びコイル導体18b,18d,18fを形成する。
以下に、変形例に係る電子部品10の製造方法について説明する。変形例に係る電子部品10の製造方法では、図4(a)のスクリーン板M1及び図4(b)のスクリーン板M2を使い分けて、2種類の形状のコイル導体18a,18c,18e,18g及びコイル導体18b,18d,18fを形成するのではなく、2種類の導電性ペーストを使い分けて、2種類の形状のコイル導体18a,18c,18e,18g及びコイル導体18b,18d,18fを形成する。
より詳細には、相対的にペースト中でAg粉末が移動しにくい第1の導電性ペーストと相対的にペースト中でAg粉末が移動しやすい第2の導電性ペーストを準備する。第2の導電性ペーストを第1の導電性ペーストよりもAg粉末が移動しやすくする方法としては、例えば、第2の導電性ペーストが含有している溶剤として、第1の導電性ペーストが含有している溶剤よりも乾燥しやすい溶剤を用いることが挙げられる。また、第2の導電性ペーストが含有している樹脂成分の割合を、第1の導電性ペーストが含有している樹脂成分の割合よりも低くしてもよい。また、第2の導電性ペーストが含有している溶剤の割合を、第1の導電性ペーストが含有している溶剤の割合よりも高くしてもよい。また、第2の導電性ペーストが含有している金属粉(Ag粉末)の割合を、第1の導電性ペーストが含有している金属粉の割合よりも低くしてもよい。
そして、第1の導電性ペーストを用いて、コイル導体18a,18c,18e,18gをスクリーン印刷法により絶縁体層16c,16e,16g,16iに形成する。この際、図4(a)のスクリーン板M1のタイプのスクリーン板を用いる。
また、第2の導電性ペーストを用いて、コイル導体18b,18d,18fをスクリーン印刷法により絶縁体層16d,16f,16hに形成する。この際、図4(a)のスクリーン板M1のタイプのスクリーン板を用いる。
以上のように形成されたコイル導体では、線幅方向の両端が線幅方向の中央よりもペースト量が少ないため、線幅方向の両端が線幅方向の中央よりも先に乾燥する。そのため、コイル導体において、線幅方向の両端での溶剤の濃度は、線幅方向の中央の溶剤の濃度よりも低くなる。よって、溶剤は、濃度を均一にしようとしてコイル導体において、線幅方向の中央から線幅方向の両端へと移動する。この時、コイル導体18b,18d,18fはペースト中でAg粉末が移動しやすい第2の導電性ペーストによって形成されているため、溶剤の移動に伴って、Ag粉末も、コイル導体18b,18d,18fにおいて、線幅方向の中央から線幅方向の両端へと移動する。その結果、コイル導体18b,18d,18fは、線幅方向の中央が窪んだ形状をなすようになる。
以上のような電子部品10の製造方法によっても、電子部品10を得ることができる。
(第1の変形例)
以下に、第1の変形例に係る電子部品10aについて図面を参照しながら説明する。図5は、第1の変形例に係る電子部品10aのコイル導体18a,18bの断面構造図である。
以下に、第1の変形例に係る電子部品10aについて図面を参照しながら説明する。図5は、第1の変形例に係る電子部品10aのコイル導体18a,18bの断面構造図である。
コイル導体18aの面S1は、凸部A11〜A13及び凹部A14,A15を有している。そして、x軸方向の正方向側から負方向側へと、凸部A12、凹部A14、凸部A11、凹部A15、凸部A13の順に並んでいる。
また、コイル導体18bの面S2は、凹部A16〜A18及び凸部A19、A20を有している。そして、x軸方向の正方向側から負方向側へと、凹部A17、凸部A19、凹部A16、凸部A20、凹部A18の順に並んでいる。そして、凹部A17、凸部A19、凹部A16、凸部A20、凹部A18はそれぞれ、凸部A12、凹部A14、凸部A11、凹部A15、凸部A13とz軸方向に重なっている。これにより、面S2は、面S1に倣った形状となっている。以上のように、面S1,S2には、複数の凹部及び凸部が設けられていてもよい。
以上のように構成された電子部品10aにおいても、電子部品10と同様に、コイル導体18に積層ずれが発生することが抑制される。
(第2の変形例)
次に、第2の変形例に係る電子部品10bについて図面を参照しながら説明する。図6は、第2の変形例に係る電子部品10bのコイル導体18a,18bの断面構造図である。
次に、第2の変形例に係る電子部品10bについて図面を参照しながら説明する。図6は、第2の変形例に係る電子部品10bのコイル導体18a,18bの断面構造図である。
電子部品10bのコイル導体18aの形状は、電子部品10のコイル導体18aと同じであるので、説明を省略する。
コイル導体18bは、コイル導体18bが延在している方向に垂直な断面において、複数(2つ)に分割されてコイル導体18bの線幅方向に並んでいると共に、z軸方向において凸部A1に重なっていない。より詳細には、コイル導体18bは、x軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並ぶ導体部118,119に分割されている。導体部118,119はそれぞれ、z軸方向に凹部A2,A3と重なっている。そして、導体部118と導体部119との間の隙間と凸部A1とがz軸方向に重なっている。
以上のように構成された電子部品10bにおいても、電子部品10と同様に、コイル導体18に積層ずれが発生することが抑制される。
(第3の変形例)
次に、第3の変形例に係る電子部品10cについて図面を参照しながら説明する。図7は、第3の変形例に係る電子部品10cのコイル導体18a,18bの断面構造図である。
次に、第3の変形例に係る電子部品10cについて図面を参照しながら説明する。図7は、第3の変形例に係る電子部品10cのコイル導体18a,18bの断面構造図である。
電子部品10cのコイル導体18bの形状は、電子部品10bのコイル導体18bと同じであるので、説明を省略する。
コイル導体18a,18bは、z軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並んでいる。
コイル導体18aは、コイル導体18aが延在している方向に垂直な断面において、複数(3つ)に分割されてコイル導体18aの線幅方向に並んでいる。より詳細には、コイル導体18aは、x軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並ぶ導体部120,121,122に分割されている。
コイル導体18bの導体部118,119は、コイル導体18aの導体部120,121,122とz軸方向において重なっていない。すなわち、導体部118は、導体部120と導体部121との間の隙間とz軸方向に重なっており、導体部119は、導体部121と導体部122との間の隙間とz軸方向に重なっている。
以上のように構成された電子部品10cにおいても、電子部品10と同様に、コイル導体18に積層ずれが発生することが抑制される。
(その他の実施形態)
本発明に係る電子部品及びその製造方法は、前記実施形態に係る電子部品10,10a〜10c及びその製造方法に限らない。
本発明に係る電子部品及びその製造方法は、前記実施形態に係る電子部品10,10a〜10c及びその製造方法に限らない。
スクリーン板M1は、図4(a)に示すように、コイル導体18aが延在している方向に垂直な断面において、1つの開口が設けられている。また、スクリーン板M2は、コイル導体18bが延在している方向に垂直な断面において、コイル導体18bの線幅方向に並ぶ2つの開口OP3,OP4が設けられている。しかしながら、スクリーン板M1,M2の開口の数はこれに限らない。例えば、スクリーン板M1は、コイル導体18aが延在している方向に垂直な断面において、第1の数の開口が設けられている。また、スクリーン板M2は、コイル導体18bが延在している方向に垂直な断面において、コイル導体18bの線幅方向に並ぶ第2の数の開口が設けられている。そして、第1の数と第2の数との差は、1であればよい。
以上のように、本発明は、電子部品及びその製造方法に有用であり、特に、コイル導体の積層ずれの発生を抑制できる点において優れている。
A1,A5,A6,A11〜A13,A19,A20 凸部
A2〜A4,A14〜A18 凹部
L コイル
M1,M2 スクリーン板
S1〜S4 面
b1〜b6 ビアホール導体
10,10a〜10c 電子部品
12 積層体
16a〜16j 絶縁体層
18a〜18g コイル導体
118〜122 導体部
A2〜A4,A14〜A18 凹部
L コイル
M1,M2 スクリーン板
S1〜S4 面
b1〜b6 ビアホール導体
10,10a〜10c 電子部品
12 積層体
16a〜16j 絶縁体層
18a〜18g コイル導体
118〜122 導体部
Claims (6)
- 複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、
前記積層体に内蔵されており、かつ、前記絶縁体層上に設けられている第1のコイル導体及び第2のコイル導体を含む複数のコイル導体及び前記絶縁体層を貫通しているビアホール導体により構成されている螺旋状のコイルと、
を備えており、
前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とは前記絶縁体層を介して互いに積層方向に対向しており、
前記第1のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第1のコイル導体における積層方向の一方側に位置する第1の面、及び、該第1のコイル導体における積層方向の他方側に位置する第3の面はそれぞれ、第1の凸部及び第2の凸部を有しており、
前記第2のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第2のコイル導体における積層方向の他方側に位置する第2の面、及び、該第2のコイル導体における積層方向の一方側に位置する第4の面はそれぞれ、第1の凹部及び第2の凹部を有しており、
前記第1の凸部は、積層方向の一方側に位置する前記第1の凹部と積層方向において重なっていること、
を特徴とする電子部品。 - 前記第1のコイル導体及び前記第2のコイル導体はそれぞれ複数設けられており、
前記複数の第1のコイル導体と前記複数の第2のコイル導体とは、積層方向に交互に並んでおり、
前記第2の凸部は、積層方向の他方側に位置する前記第2の凹部と積層方向において重なっていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。 - 複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、
前記積層体に内蔵されており、かつ、前記絶縁体層上に設けられている第1のコイル導体及び第2のコイル導体を含む複数のコイル導体及び前記絶縁体層を貫通しているビアホール導体により構成されている螺旋状のコイルと、
を備えており、
前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とは前記絶縁体層を介して互いに積層方向に対向しており、
前記第1のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、前記第2のコイル導体に対向している該第1のコイル導体の第1の面は、凸部を有しており、
前記第2のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第2のコイル導体は、複数に分割されて該第2のコイルの線幅方向に並んでいると共に、積層方向において前記凸部と重なっていないこと、
を特徴とする電子部品。 - 複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、
前記積層体に内蔵されており、かつ、前記絶縁体層上に設けられている第1のコイル導体及び第2のコイル導体を含む複数のコイル導体及び前記絶縁体層を貫通しているビアホール導体により構成されている螺旋状のコイルと、
を備えており、
前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とは積層方向に並んでおり、
前記第1のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第1のコイル導体は、複数に分割されて該第1のコイル導体の線幅方向に並んでおり、
前記第2のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第2のコイル導体は、複数に分割されて該第2のコイル導体の線幅方向に並んでいると共に、積層方向において前記第1のコイル導体と重なっておらず、
複数に分割された前記第1のコイル導体と複数に分割された前記第2のコイル導体とが積層方向に隣り合うもの同士で、線幅方向に、交互に並んでいること、
を特徴とする電子部品。 - 前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とは、積層方向に交互に並んでいること、
を特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の電子部品。 - 複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、該積層体に内蔵されており、かつ、該絶縁体層上に設けられている第1のコイル導体及び第2のコイル導体を含む複数のコイル導体及び該絶縁体層を貫通しているビアホール導体により構成されている螺旋状のコイルと、を備えた電子部品の製造方法であって、
前記第1のコイル導体を前記絶縁体層に形成する第1の工程と、
前記第2のコイル導体を前記絶縁体層に形成する第2の工程と、
前記絶縁体層を介して前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とが対向するように前記複数の絶縁体層を積層する第3の工程と、
を備えており、
前記第1の工程では、前記第1のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、第1の数の開口が設けられた第1のマスクパターンを用いて該第1のコイル導体を形成し、
前記第2の工程では、前記第2のコイル導体が延在している方向に垂直な断面において、該第2のコイル導体の線幅方向に並ぶ第2の数の開口が設けられた第2のマスクパターンを用いて該第2のコイル導体を形成し、
前記第1の数と第2の数との差は、1であり、
前記第3の工程では、前記第1のマスクパターンにより形成された複数に分割された前記第1のコイル導体と前記第2のマスクパターンにより形成された複数に分割された前記第2のコイル導体とが積層方向に隣り合うもの同士で、線幅方向に、交互に並ぶように、前記複数の絶縁体層を積層すること、
を特徴とする電子部品の製造方法。
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