しかしながら、上述のグランドインピーダンス調整回路を積層基板に形成する場合、次に示すような問題が生じていた。図2は従来のグランドインピーダンス調整回路の積層体10Pを示す図である。図3は、図2の構造のグランドインピーダンス調整回路の通過特性を示す図である。図4(A)は3段のLC共振器を備えるバンドパスフィルタの等価回路図であり、図4(B)は従来構造のグランドインピーダンス調整回路を用いて、図4(A)に示したバンドパスフィルタを構成した場合の通過特性図である。
図2に示すように、グランドインピーダンス調整回路の積層体10Pは5層の絶縁体層901P〜905Pを積層した構造である。最下層(第1層)の絶縁体層901Pには、入出力用電極201,202およびグランド電極110が形成されている。グランド電極110は、絶縁体層901Pの底面に形成され、入出力用電極201,202は、絶縁体層901Pの対向する二端面から底面にかけてそれぞれ形成されている。なお、入出力用電極201,202は、最上層(第5層)の絶縁体層905P以外の各層の端面に形成されている。
第2層の絶縁体層902Pには、内層グランド電極120が形成されている。内層グランド電極120は、グランド電極110と導電性ビアホールにより接続している。
第3層の絶縁体層903Pには、キャパシタ用電極131,132が形成されるとともに、キャパシタ用電極131と図示しない入出力用電極201とを接続する引き回し電極と、キャパシタ用電極132と入出力用電極202とを接続する引き回し電極が形成されている。
第4層の絶縁体層904Pには、キャパシタ用電極140が形成されている。
このような構造により、キャパシタ用電極131と内層グランド電極120との対向領域が図1のキャパシタC1となる。キャパシタ用電極132と内層グランド電極120との対向領域が図1のキャパシタC2となる。キャパシタ用電極140とキャパシタ用電極131,132の対向領域が図1のキャパシタC12となる。そして、このグランドインピーダンス調整回路を備える素子をプリント基板等に実装した際、プリント基板のグランド電位とグランドインピーダンス調整回路のグランド電位との電位差が寄生インダクタLgとなる。このため、上述のような構成では、寄生インダクタLgに、ビアホールによるインダクタが含まれる構成となってしまう。
このような構造では、図3に示すように、グランドインピーダンス調整回路を構成するキャパシタは高周波数帯域において、特にキャパシタC1,C2による自己共振点が発生してしまい、キャパシタC12により結合することによって、改善したはずの通過特性が局所的に劣化する。例えば、キャパシタC1においては、キャパシタ用電極131の残留インダクタンスと、キャパシタ用電極131とグランド電極120との間に構成されるキャパシタンスとによって、自己共振が発生する。
このため、このようなグランドインピーダンス調整回路を用いて図4(A)に示すようなバンドパスフィルタを構成しても、図4(B)に示すように減衰帯域に共振点が発生し、良い周波数特性が得られない。
また、特許文献2に示すように、各LC共振器のインダクタを形成する電極は、前記両端部を結ぶ方向に沿って所定間隔で配置されている。したがって、飛び結合用キャパシタを構成する電極が上述のような形状であると、積層方向から見てインダクタ用の電極を複数個に掛けて跨ぐように配設されることになる。
このような構造では、飛び結合用キャパシタを構成する電極が、インダクタ間の結合に大きな影響を及ぼし、挿入損失が増加してしまう。これにより、フィルタとしての特性(通過特性や減衰特性)が劣化してしまう。
このような各種課題を鑑みて、本発明の目的は、共振点の発生を抑制したり、挿入損失の増加要因を抑制したりすることで、優れた特性を有する高周波積層部品および積層型高周波フィルタを実現することにある。
この発明は、一対の入出力端子と、該一対の入出力端子間に接続された所定機能を実現する回路機能部と、一対の入出力端子間に接続された直列キャパシタ、および、該直列キャパシタの両端とグランドとの間にそれぞれ接続された第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタと、第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタをグランドに接続するグランド接続のインダクタと、を備えるグランドインピーダンス調整回路と、を有する高周波積層部品に関する。この高周波積層部品は、所定の電極パターンが形成された複数の絶縁体層を積層した積層体により、少なくともグランドインピーダンス調整回路を形成してなる。
この高周波積層部品は、さらに、積層体の異なる絶縁体層にそれぞれ形成された内層グランド電極を少なくとも備える。並列キャパシタを形成する電極は、内層グランド電極の間に配置されている。
この構成では、二個の内層グランド電極間に並列キャパシタが挟まれることで、当該並列キャパシタの自己共振が抑制される。これにより、図4(B)に示すような共振点が抑制される。
また、この発明の高周波積層部品では、それぞれが互いに対向する対向電極で構成された第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタの一方の対向電極を、内層グランド電極で形成する。第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタの他方の対向電極は、二個の内層グランド電極の間に配置される。
この構成では、第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタの一方の対向電極が直接グランド電極になるとともに、これらのキャパシタも内層グランド電極間に挟まれる。これにより、さらに周波数特性を向上できる。
また、この発明の高周波積層部品では、第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタの他方の対向電極は、互いに対向する対向電極で構成される直列キャパシタの一方の対向電極を兼用する。
この構成では、直列キャパシタと第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタとの引き回し電極が省略される。これにより、さらに周波数特性が優れるとともに、より小型化が可能になる。
また、この発明の高周波積層部品では、回路機能部は、所定の周波数通過特性を有するフィルタである。この構成では、回路機能部の具体例を示しており、このように回路機能部をフィルタとすることで、本願の構成が、より有効に作用する。
また、この発明の高周波積層部品では、回路機能部は、複数の積層体に形成された電極パターンからなる。この構成では、回路機能部の具体的な形状を示している。このように、回路機能部を積層体内に形成することで、高周波積層部品を単一の積層体のみで実現できる。
また、この発明の高周波積層部品では、回路機能部にキャパシタを含み、該キャパシタを、グランドインピーダンス調整回路を構成する直列キャパシタ、第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタの少なくとも一つで兼用する。
この構成では、回路機能部にキャパシタを含む場合の具体的な形状を示している。このように、回路機能部とグランドインピーダンス調整回路とを少なくとも部分的に兼用することで、小型化が可能になる。
また、この発明の高周波積層部品では、回路機能部は、積層体に実装される実装部品からなる。積層体には、実装部品を実装する実装用ランドが形成されている。
この構成では、回路機能部の具体的な形状を示している。このように、回路機能部を実装部品にすることで、回路機能部を構成する各回路素子を必要に応じて、容易に変更することができ、変更しても優れた周波数特性を実現できる。
また、この発明は、一対の入出力端子と、該一対の入出力端子間に接続された直列キャパシタ、および、該直列キャパシタの両端とグランドとの間にそれぞれ接続された第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタと、第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタをグランドに接続するグランド接続のインダクタと、を備えるグランドインピーダンス調整回路と、を有する高周波積層部品に関する。この高周波積層部品は、所定の電極パターンが形成された複数の絶縁体層を積層した積層体により、グランドインピーダンス調整回路を形成してなる。
この高周波積層部品は、さらに、積層体の異なる中間層にそれぞれ形成された二個の内層グランド電極を少なくとも備える。直列キャパシタを形成する電極は、二個の内層グランド電極の間に配置されている。
この構成では、高周波積層部品として、グランドインピーダンス調整回路のみからなる場合を示している。このような構成の高周波積層部品を用いることで、当該部品に接続する他の回路機能部の周波数特性を向上させることができる。
また、この発明の高周波積層部品では、第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタの一方の対向電極を、内層グランド電極で形成する。第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタの他方の対向電極は、二個の内層グランド電極の間に配置されている。
この構成では、グランドインピーダンス調整回路のみからなる高周波積層部品において、第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタの一方の対向電極が直接グランド電極になるとともに、これらのキャパシタも内層グランド電極間に挟まれる。これにより、さらに周波数特性を向上できる。
また、この発明の高周波積層部品では、第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタの他方の対向電極は、直列キャパシタの一方の対向電極を兼用する。
この構成では、グランドインピーダンス調整回路のみからなる高周波積層部品において、直列キャパシタと第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタとの引き回し電極が省略される。これにより、さらに周波数特性が優れるとともに、より小型化が可能になる。
また、この発明は、積層型高周波フィルタに関する。積層型高周波フィルタは、一対の入出力端子と、該一対の入出力端子間に高周波的に接続された複数段のLC共振器と、一対の入出力端子間に直接接続される飛び結合用キャパシタと、一対の入出力端子間に接続された直列キャパシタと、該直列キャパシタの両端とグランドとの間にそれぞれ接続された第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタと第1並列キャパシタおよび第2並列キャパシタをグランドに接続するグランド接続のインダクタとを備えるグランドインピーダンス調整回路と、を備える。積層型高周波フィルタは、LC共振器を構成するインダクタおよびキャパシタと、飛び結合用キャパシタとを、所定の電極パターンが形成された複数の絶縁体層を積層した積層体により形成してなる。
そして、この発明の積層型高周波フィルタでは、インダクタを構成する電極パターンと、飛び結合用キャパシタを構成する電極パターンとの間に、内層グランド電極が配設されている。
この構成では、飛び結合用キャパシタを構成する電極パターンが、複数のLC共振器のインダクタ間の結合に影響を与えない。これにより、インダクタ間に所望の結合を得ることができ、挿入損失の増加を抑制することができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタは、一対の入出力端子とグランドとの間にそれぞれ接続される入出力用キャパシタを備える。積層型高周波フィルタは、入出力用キャパシタを積層体の電極パターンにより形成し、少なくとも飛び結合用キャパシタが、異なる絶縁体層に形成された内層グランド電極により挟まれて配設されている。
この構成では、入出力用キャパシタと飛び結合用キャパシタとでπ型回路が構成される。このようなπ型回路を構成することで、減衰特性を向上させることができる。特に、π型の並列キャパシタを内層グランド電極間に挟み込むことで、並列キャパシタの自己共振を抑制できる。これにより、さらに減衰特性を向上させることができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタでは、入出力用キャパシタを形成する電極パターンも、異なる絶縁体層に形成された内層グランド電極により挟まれて配設されている。
この構成では、全てのキャパシタを内層グランド電極間に挟み込むことで、さらに減衰特性を向上させることができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタでは、LC共振器のインダクタの電極パターンの両端にLC共振器のキャパシタおよびグランドに接続するためのビアホールが形成され、インダクタは該インダクタの電極パターンと二つのビアホールとにより構成されている。
この構成では、インダクタが電極パターンと当該電極パターンに接続する二つのビアホールとから構成される。これにより、インダクタの電極がループ状に延び、インダクタ間の結合を強くすることができる。さらに、インダクタの電極をループ状に形成することで、インダクタのQ値を向上し、フィルタの挿入損失を改善することができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタでは、各インダクタの電極パターンに接続するビアホールは、積層体を側面から見て略重なる位置に形成されている。
この構成では、隣り合うインダクタを構成するビアホールの間隔を近くすることができる。これにより、インダクタ間の結合を強くすることができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタでは、インダクタを構成する電極パターンは、複数の絶縁体層に設けられている。複数の絶縁体層に設けられた各電極パターンは、二つのビアホールに並列接続されている。
この構成では、電極パターンが複数存在することで、さらにインダクタ間の結合を強くすることができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタでは、インダクタの電極パターンが接続されるグランドは、積層体の底面とは異なる所定の絶縁体層に形成された内層グランド電極である。
この構成では、インダクタが直接外部接続用のグランド電極に接続しないので、当該グランド電極に起因する渦電流損失を減らすことができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタでは、インダクタの電極パターンが接続する内層グランド電極は、インダクタを構成する電極パターンと、飛び結合用キャパシタを構成する電極パターンとの間に配設された内層グランド電極である。
この構成では、インダクタが接続されるグランドが、上述のインダクタと飛び結合用キャパシタとを区分する内層グランド電極で兼用されるので、積層体の構成要素を減らすことができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタでは、複数のLC共振器を構成するインダクタの内、任意の隣り合うインダクタの電極パターンのキャパシタと接続するビアホールの接続位置が異なる端部にある。
この構成では、隣り合うインダクタで電流の流れる方向を逆にすることができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタでは、複数のLC共振器を構成するインダクタの内、任意の隣り合うインダクタの電極パターンが同一の絶縁体層に形成されている。
この構成では、隣り合うインダクタの電極パターンが近接し、インダクタ間の結合を強くすることができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタでは、外部グランドに接続するための外部グランド電極と、一対の入出力端子を形成する外部入出力端子とが、積層体の底面に配列形成されている。
この構成では、積層型高周波フィルタを外部の回路基板に実装するための電極が積層体の底面に備えられるので、実装面積を小さくすることができる。
また、この発明の積層型高周波フィルタでは、直列キャパシタは、飛び結合用キャパシタを構成する電極パターンと兼用されている。
この構成では、グランドインピーダンス調整回路の直列キャパシタと飛び結合用キャパシタとが兼用されるので、積層型高周波フィルタをより小型に形成することができる。
この発明によれば、キャパシタのπ型回路からなるグランドインピーダンス調整回路を用いても、共振点の発生を抑圧できる。また、この発明によれば、積層体内の電極パターン間の不要な結合を抑えることができ、挿入損失の増加要因を抑制することができる。これにより、優れた特性の高周波積層部品および積層型高周波フィルタを実現できる。
本発明の第1の実施形態に係る高周波積層部品について、図を参照して説明する。本実施形態では、高周波積層部品として帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタBPF)を例に説明する。図5(A)は本実施形態の高周波積層部品の外観斜視図であり、図5(B)は本実施形態の高周波積層部品の積層構成を示す図である。なお、図5に示す高周波積層部品10Aは、3段のLC並列回路を備えるバンドパスフィルタであり、等価回路は上述の図4(A)と同じである。
高周波積層部品は、10層の絶縁体層901〜910を積層した積層体10Aからなる。積層体10Aを構成する各絶縁体層901〜910は、所定の厚み(マイクロメートルオーダ)の平板からなる。積層体10Aの一方端面には入出力用電極201が形成され、対向する他方端面には入出力用電極202が形成されている。また、以下では、入出力用電極201,202が形成される側面を「端面」と称し、これに直交する側面を「側面」と称する。
最下層(第1層)の絶縁体層901には、入出力用電極201,202およびグランド電極110が形成されている。グランド電極110は、絶縁体層901の底面に形成され、入出力用電極201,202は、絶縁体層901の対向する二端面から底面にかけてそれぞれ形成されている。なお、図5では入出力用電極201,202は、最上層(第10層)の絶縁体層910以外の各層の端面に形成されている。最上層の絶縁体層910にも入出力用電極201,202を形成してもよい。
第2層の絶縁体層902には、内層グランド電極120が形成されている。内層グランド電極120は、絶縁体層902の略全面に亘り形成されている。
第3層の絶縁体層903には、所定面積からなるキャパシタ用電極131,132が形成されている。第3層の絶縁体層903には、キャパシタ用電極131と、一方端面の図示しない入出力用電極201とを接続する引き回し電極が形成されている。第3層の絶縁体層903には、キャパシタ用電極132と他方端面の入出力用電極202とを接続する引き回し電極が形成されている。
第4層の絶縁体層904には、キャパシタ用電極140が形成されている。キャパシタ用電極140は、第3の絶縁体層903のキャパシタ用電極131,132と部分的に対向するように形成されている。
第5層の絶縁体層905には、第3層の絶縁体層903のキャパシタ用電極131,132と同様に、キャパシタ用電極151,152が形成されている。キャパシタ用電極151は、積層方向に沿って見て、キャパシタ用電極131と対向するように形成されている。キャパシタ用電極152は、積層方向に沿って見て、キャパシタ用電極132と対向するように形成されている。第5層の絶縁体層905には、キャパシタ用電極151と一方端面の図示しない入出力用電極201とを接続する引き回し電極が形成されている。第5層の絶縁体層905には、キャパシタ用電極152と他方端面の入出力用電極202とを接続する引き回し電極が形成されている。
第6層の絶縁体層906には、内層グランド電極160が形成されている。内層グランド電極160は、絶縁体層906の略全面に亘り形成されている。
第7層の絶縁体層907には、所定面積からなるキャパシタ用電極171,172,173が形成されている。
第8層の絶縁体層908には、入出力用の引き回し電極181,182が形成されている。引き回し電極181は、一方端面の図示しない入出力用電極201に接続されている。引き回し電極182は、他方端面の入出力用電極202に接続されている。
第9層の絶縁体層909には、インダクタ用の線状電極191,192,193が形成されている。線状電極191,192,193は、端面に沿う方向に延びる形状からなる。線状電極191,192,193は、所定間隔で離間して形成されている。
最上層である第10層の絶縁体層910には、何も形成されておらず、積層体10Aの蓋として機能する層である。
積層体10Aには、さらに次に示す導電性のビアホール群が形成されている。各ビアホールは、図5に示すように、積層方向に延びる形状からなる。
ビアホール800は、絶縁体層901のグランド電極110と、絶縁体層902の内層グランド電極120と、絶縁体層906の内層グランド電極160とを接続するように形成されている。ビアホール800は、各層の対向するそれぞれの側面に近い位置の二箇所に形成されている。
ビアホール801は、絶縁体層908の引き回し電極181と、絶縁体層907のキャパシタ用電極171と、線状電極191とを接続するように形成されている。ビアホール801は、線状電極191の延びる方向の一方端付近に接続している。
ビアホール811は、絶縁体層906の内層グランド電極160と、線状電極191とを接続するように形成されている。ビアホール811は、線状電極191の延びる方向の他方端付近に接続している。
ビアホール812は、絶縁体層906の内層グランド電極160と、線状電極192とを接続するように形成されている。ビアホール812は、線状電極192の延びる方向の一方端付近に接続している。
ビアホール802は、絶縁体層907のキャパシタ用電極172と、線状電極192とを接続するように形成されている。ビアホール802は、線状電極192の延びる方向の他方端付近に接続している。
ビアホール803は、絶縁体層908の引き回し電極182と、絶縁体層907のキャパシタ用電極173と、線状電極193とを接続するように形成されている。ビアホール803は、線状電極193の延びる方向の一方端付近に接続している。
ビアホール813は、絶縁体層906の内層グランド電極160と、線状電極193とを接続するように形成されている。ビアホール813は、線状電極193の延びる方向の他方端付近に接続している。
以上のような構成とすることで、入出力用電極201が図4(A)の第1入出力ポートPio1となり、入出力用電極202が図4(A)の第2入出力ポートPio2となる。
キャパシタ用電極131と内層グランド電極120との組合せ、およびキャパシタ用電極151と内層グランド電極160との組合せが、図4(A)キャパシタC1(本発明の「第1並列キャパシタ」に相当する。)となる。
キャパシタ用電極132と内層グランド電極120との組合せ、およびキャパシタ用電極152と内層グランド電極160との組合せが、図4(A)キャパシタC2(本発明の「第2並列キャパシタ」に相当する。)となる。
キャパシタ用電極140とキャパシタ用電極131,132との組合せ、およびキャパシタ用電極140とキャパシタ用電極151,152との組合せが、図4(A)のキャパシタC12(本発明の「直列キャパシタ」に相当する。)となる。このキャパシタC12は、本発明の「飛び結合用キャパシタ」も兼用している。
このような構成とすることで、キャパシタC12,C1,C2がπ型接続されたグランドインピーダンス調整回路を構成することができる。そして、このグランドインピーダンス調整回路の全てのキャパシタC12,C1,C2を、二個の内層グランド電極120,160で積層方向に沿って挟み込む構造が実現される。
キャパシタ用電極171と内層グランド電極160との組合せ、キャパシタ用電極131と内層グランド電極120との組合せ、および、キャパシタ用電極151と内層グランド電極160との組合せが、図4(A)の共振用キャパシタCr1となる。キャパシタ用電極173と内層グランド電極160との組合せ、キャパシタ用電極132と内層グランド電極130との組合せ、およびキャパシタ用電極152と内層グランド電極160との組合せが、図4(A)の共振用キャパシタCr2となる。キャパシタ用電極172と内層グランド電極160との組合せが、図4(A)の共振用キャパシタCr3となる。
線状電極191と、ビアホール801,811とが、図4(A)の共振用インダクタLr1となる。この共振用インダクタLr1は、内層グランド電極160に接続する側を基点として、積層体10Aの入出力用電極202側の端面から見て、反時計回りとなるループ形状となる。
線状電極192と、ビアホール802,812とが、図4(A)の共振用インダクタLr2となる。この共振用インダクタLr2は、内層グランド電極160に接続する側を基点として、積層体10Aの入出力用電極202側の端面から見て、時計回りとなるループ形状となる。
線状電極193と、ビアホール803,813とが、図4(A)の共振用インダクタLr3となる。この共振用インダクタLr3は、内層グランド電極160に接続する側を基点として、積層体10Aの入出力用電極202側の端面から見て、反時計回りとなるループ形状となる。
また、線状電極191およびビアホール801,811と線状電極192およびビアホール802,812が所定間隔で配置されることで、図4(A)の結合インダクタンスM12が実現され、線状電極192およびビアホール802,812と線状電極193およびビアホール803,813が所定間隔で配置されることで、図4(A)の結合インダクタンスM23が実現される。
また、ビアホール800のグランド電極110と内層グランド電極120との間の部分が寄与インダクタLgとなる。
以上のように、本実施形態の積層構造を用いることで、3段のLC共振器と、寄与インダクタLgを含むグランドインピーダンス調整回路とを一体に備えた積層型高周波フィルタの高周波積層部品を実現することができる。
このような構成において、上述のように、グランドインピーダンス調整回路を構成するキャパシタC12,C1,C2を内層グランド電極で挟み込むことで、これらキャパシタの自己共振を抑制することができる。特に、本実施形態のように対称性を有するように電極パターンを形成した場合、自己共振が生じ易いが、内層グランド電極で挟み込むことで、自己共振を抑制することができる。
図6は本実施形態の構造からなる3段のLC共振器を備えるバンドパスフィルタの通過特性図である。図6に示すように、本実施形態の構造を用いることで、従来構造の図4(B)に示すような共振点の発生を抑制できる。これにより、通過帯域よりも高周波数側の減衰特性を向上させることができる。すなわち、バンドパスフィルタの周波数特性を向上させることができる。
また、共振用インダクタLr1の線状電極191およびビアホール801,811、共振用インダクタLr2の線状電極192およびビアホール802,812、共振用インダクタLr3の線状電極193およびビアホール803,813と、飛び結合用キャパシタのキャパシタ用電極140との間には、内層グランド電極160が配設されている。これにより、飛び結合用キャパシタのキャパシタ用電極140が、共振用インダクタLr1、Lr2,Lr3の電磁界結合に作用しない。これにより、共振用インダクタLr1,Lr2,Lr3による結合時の損失を抑制し、フィルタとしての挿入損失を低下することができる。これにより、優れた帯域特性の積層型高周波フィルタを実現することができる。
図7(A)は本実施形態の構造からなるバンドパスフィルタの通過特性図であり、図7(B)は同じ等価回路となる従来構成のバンドパスフィルタの通過特性図である。
図7に示すように、本実施形態の構成とすることで、従来の構造では形成できなかった通過帯域の低周波数側近傍の減衰帯域(2.2GHz付近)に減衰極を設けることができる。これにより、フィルタの通過特性および減衰特定を改善でき、優れた帯域特性の積層型高周波フィルタを実現することができる。
また、上述のように、キャパシタ用電極140で構成されるキャパシタC12は、キャパシタC1,C2とともに、入出力端子Pio1,Pio2間に接続されたπ型回路として機能する。これにより、通過帯域の高域側の減衰特性を改善するグランドインピーダンス調整回路を実現することができる。この結果、さらに優れた帯域特性の積層型高周波フィルタを実現することができる。
また、さらに、上述のように、これらのキャパシタC12,C1,C2を構成するキャパシタ用電極が、内層グランド電極120,160間に挟まれているので、これらのキャパシタの自己共振、特に並列キャパシタとしても機能するキャパシタC1,C2の自己共振を抑制できる。これにより、さらに優れた帯域特性の積層型高周波フィルタを実現することができる。
また、共振用インダクタLr1,Lr2,Lr3を構成する各線状電極191,192,193が、全て同じ絶縁体層909に形成されている。このため、これら線状電極がそれぞれに異なる絶縁体層に形成されている場合と比較して、線状電極間を短くすることができる。これによっても、インダクタ間の結合を強くすることができる。
また、各線状電極191,192,193に接続するビアホールが、積層体10Aの入出力用電極201,202が形成された端面側から見て、重なるように形成されている。この構成では、ビアホール間の距離を短くすることができる。これによっても、インダクタ間の結合を強くすることができる。
また、隣り合う共振用インダクタLr1と共振用インダクタLr2とが、内層グランド電極160を基点にして反対の巻回方向となる。また、隣り合う共振用インダクタLr2と共振用インダクタLr3が、内層グランド電極160を基点にして反対の巻回方向となる。このような共振用インダクタ間の結合を実現することで、フィルタの通過帯域のリップルを抑制することができる。
また、インダクタを構成する線状電極191,192,193およびビアホール801,811,802,812,803,813が内層グランド電極160に直接接続し、積層体10Aの底面に形成された外部グランド電極110に直接接続していない。これにより、当該外部グランド電極110に起因する渦電流損失を抑制することができる。この結果、各LC共振器のQを改善することができる。
また、上述の構造を用いることで、キャパシタC12が飛び結合用キャパシタと、グランドインピーダンス調整回路の直列キャパシタとを兼用する。したがって、これらを個別に形成するよりも積層体10Aの構成要素を少なくできる。これにより、上述のような優れた帯域特性を有する積層型高周波フィルタを、より小型に形成することができる。
また、共振用インダクタLr1,Lr2,Lr3を構成する電極パターンと、キャパシタC12を構成する電極パターンとの間に配置される内層グランド電極160が、共振用インダクタLr1,Lr2,Lr3を構成する線状電極191,192,193およびビアホール801,811,802,812,803,813が直接接続する内層グランド電極を兼用している。これにより、個別に形成するよりも積層体10Aの構成要素を少なくできる。これによっても、上述のような優れた帯域特性を有する積層型高周波フィルタを、より小型に形成することができる。
次に、第2の実施形態に係る高周波積層部品について、図を参照して説明する。図8は本実施形態の高周波積層部品の積層構造を示す図である。
本実施形態の高周波積層部品は、入出力用電極111,112を積層体10Bの底面に形成している。また、積層体10Bの最下層の絶縁体層901と、積層体内部における最も下の位置の内層グランド電極120を有する絶縁体層902との間に、もう一層の絶縁体層911を備えている。他の構成は上述の第1の実施形態に示した高周波積層部品と同じであるので、説明は省略する。
最下層の絶縁体層901の底面には、グランド電極110とともに、入出力用底面電極111,112が形成されている。これら入出力用底面電極111,112は、グランド電極110を挟むように形成されている。入出力用底面電極111は端面の入出力用電極201に接続し、入出力用底面電極112は端面の入出力用電極202に接続している。
最下層の上面には絶縁体層911が配設されている。絶縁体層911には、所定面積からなるキャパシタ用電極211,212が形成されている。キャパシタ用電極211は絶縁体層901の入出力用底面電極111に対向するように形成されている。キャパシタ用電極212は絶縁体層901の入出力用底面電極112に対向するように形成されている。絶縁体層911には、キャパシタ用電極211と、一方端面の図示しない入出力用電極201とを接続する引き回し電極が形成されている。絶縁体層911には、キャパシタ用電極212と他方端面の入出力用電極202とを接続する引き回し電極が形成されている。
このような構造であっても、上述の第1の実施形態と同様に、グランドインピーダンス調整回路のキャパシタンスの自己共振を抑制し、周波数特性が向上した高周波積層部品を実現できる。すなわち、優れた帯域特性を有する積層型高周波フィルタを実現することができる。さらに、本実施形態の構造を用いることで、入出力用底面電極111,112と内層グランド電極120との間で発生する寄生容量を抑制することができ、さらに周波数特性を向上させることができる。
次に、第3の実施形態からなる高周波積層部品について、図を参照して説明する。図9は本実施形態の高周波積層部品の積層構造を示す図である。
本実施形態の高周波積層部品の積層体10Cは、第2の実施形態に示した高周波積層部品の積層体10Bに対して、LC共振器が4個になり、内層グランド電極120とグランド電極110とを接続するビアホールの構造が異なるものである。他の構成は上述の第2の実施形態に示した高周波積層部品の積層体10Bと同じであるので、変更箇所のみを説明し、同じ箇所の説明は省略する。
絶縁体層907には、所定面積からなるキャパシタ用電極171,172,173,174が形成されている。
絶縁体層909には、インダクタ用の線状電極191,192,193,194が形成されている。線状電極191,192,193,194は、端面に沿う方向に延びる形状からなる。線状電極191,192,193,194は、所定間隔で離間して形成されている。
ビアホール800は、ビアホール800A,800Bからなる。ビアホール800Aは、絶縁体層901のグランド電極110と、絶縁体層902の内層グランド電極120とを接続するように形成されている。ビアホール800Aは一箇所に形成されている。ビアホール800Bは、絶縁体層902の内層グランド電極120と、絶縁体層906の内層グランド電極160とを接続するように形成されている。ビアホール800Bは、各層の対向するそれぞれの側面に近い位置の二箇所に形成されている。
ビアホール801は、絶縁体層908の引き回し電極181と、絶縁体層907のキャパシタ用電極171と、線状電極191とを接続するように形成されている。ビアホール801は、線状電極191の延びる方向の一方端付近に接続している。
ビアホール811は、絶縁体層906の内層グランド電極160と、線状電極191とを接続するように形成されている。ビアホール811は、線状電極191の延びる方向の他方端付近に接続している。
ビアホール812は、絶縁体層906の内層グランド電極160と、線状電極192とを接続するように形成されている。ビアホール812は、線状電極192の延びる方向の一方端付近に接続している。
ビアホール802は、絶縁体層907のキャパシタ用電極172と、線状電極192とを接続するように形成されている。ビアホール802は、線状電極192の延びる方向の他方端付近に接続している。
ビアホール813は、絶縁体層906の内層グランド電極160と、線状電極193とを接続するように形成されている。ビアホール813は、線状電極193の延びる方向の一方端付近に接続している。
ビアホール803は、絶縁体層907のキャパシタ用電極173と、線状電極193とを接続するように形成されている。ビアホール803は、線状電極193の延びる方向の他方端付近に接続している。
ビアホール804は、絶縁体層908の引き回し電極182と、絶縁体層907のキャパシタ用電極174と、線状電極194とを接続するように形成されている。ビアホール804は、線状電極194の延びる方向の一方端付近に接続している。
ビアホール814は、絶縁体層906の内層グランド電極160と、線状電極194とを接続するように形成されている。ビアホール814は、線状電極194の延びる方向の他方端付近に接続している。
図10は第3の実施形態の積層型高周波フィルタの等価回路図である。
入出力用電極201は、図10の第1入出力ポートPio1となり、入出力用電極202は図10の第2入出力ポートPio2となる。
キャパシタ用電極140とキャパシタ用電極131,132との組合せ、およびキャパシタ用電極140とキャパシタ用電極151,152との組合せが、図10の飛び結合用のキャパシタC12となる。このキャパシタC12も上述の実施形態と同様に、グランドインピーダンス調整回路の直列キャパシタを兼用している。
線状電極191とビアホール801,811とが、図10の共振用インダクタLr1となる。この共振用インダクタLr1は、内層グランド電極160に接続する側を基点として、積層体10Cの入出力用電極202側の端面から見て、反時計回りとなるループ形状となる。
線状電極192とビアホール802,812とが、図10の共振用インダクタLr2となる。この共振用インダクタLr2は、内層グランド電極160に接続する側を基点として、積層体10Cの入出力用電極202側の端面から見て、時計回りとなるループ形状となる。
線状電極193とビアホール803,813とが、図10の共振用インダクタLr3となる。この共振用インダクタLr3は、内層グランド電極160に接続する側を基点として、積層体10Cの入出力用電極202側の端面から見て、時計回りとなるループ形状となる。
線状電極194と、ビアホール804,814とが、図10の共振用インダクタLr4となる。この共振用インダクタLr4は、内層グランド電極160に接続する側を基点として、積層体10Cの入出力用電極202側の端面から見て、反時計回りとなるループ形状となる。
線状電極191およびビアホール801,811と線状電極192およびビアホール802,812が所定間隔で配置されることで、図10の結合インダクタンスM12が実現される。
線状電極192およびビアホール802,812と線状電極193およびビアホール803,813が所定間隔で配置されることで、図10の結合インダクタンスM23が実現される。
線状電極193およびビアホール803,813と線状電極194およびビアホール804,814が所定間隔で配置されることで、図10の結合インダクタンスM34が実現される。
キャパシタ用電極171と内層グランド電極160との組合せ、キャパシタ用電極151と内層グランド電極160との組み合わせおよびキャパシタ電極131と内層グランド電極120が、図10の共振用キャパシタCr1となる。キャパシタ用電極172と内層グランド電極160との組合せが、図10の共振用キャパシタCr2となる。キャパシタ用電極173と内層グランド電極160との組合せが、図10の共振用キャパシタCr3となる。キャパシタ用電極174と内層グランド電極160との組合せ、キャパシタ用電極152と内層グランド電極160との組合せおよびキャパシタ用電極132と内層グランド電極160との組合せが、図10の共振用キャパシタCr4となる。
キャパシタ用電極131と内層グランド電極120との組合せ、およびキャパシタ用電極151と内層グランド電極160との組合せが、図10のキャパシタC1となる。
キャパシタ用電極132と内層グランド電極120との組合せ、およびキャパシタ用電極152と内層グランド電極160との組合せが、図10のキャパシタC2となる。
このように、本実施形態の積層体10Cでは、上述の図9に示すような構造とすることで、図10の等価回路に示すような4段のLC共振器を備えたバンドパスフィルタを構成することができる。
このような構成であっても、上述の各実施形態と同様に、周波数特性を向上させることができる。さらに、本実施形態のように、グランド電極110に直接接続するビアホールの本数を変更することで、通過帯域近傍の減衰特性をさらに向上させることができる。
また、本実施形態の構造でも、共振用インダクタLr1の線状電極191およびビアホール801,811、共振用インダクタLr2の線状電極192およびビアホール802,812、共振用インダクタLr3の線状電極193およびビアホール803,813、共振用インダクタLr4の線状電極194およびビアホール804,814と、飛び結合用キャパシタのキャパシタ用電極140との間には、内層グランド電極160が配設されている。これにより、飛び結合用キャパシタのキャパシタ用電極140が、共振用インダクタLr1、Lr2,Lr3,Lr4の電磁界結合に作用しない。これにより、共振用インダクタLr1,Lr2,Lr3,Lr4による結合時の損失を抑制し、フィルタとしての挿入損失を低下することができる。これにより、優れた帯域特性の積層型高周波フィルタを実現することができる。
次に、第4の実施形態に係る高周波積層部品について、図を参照して説明する。図11は本実施形態の高周波積層部品の積層構造を示す図である。
本実施形態の高周波積層部品の積層体10Dは、第3の実施形態に示した高周波積層部品の積層体10Cに対して、LC共振器のインダクタの形状が異なるものである。他の構成は上述の第3の実施形態に示した高周波積層部品の積層体10Cと同じであるので、変更箇所のみを説明し、同じ箇所の説明は省略する。
本実施形態の積層体10Dは、インダクタ用の線状電極を形成した絶縁体層を三層にしている。引き回し電極181,182が形成された絶縁体層908の上層には、絶縁体層909Cが配設される。絶縁体層909Cには、インダクタ用の線状電極191C,192C,193C,194Cが形成されている。線状電極191C,192C,193C,194Cは、端面に沿う方向に延びる形状からなる。線状電極191C,192C,193C,194Cは、所定間隔で離間して形成されている。
絶縁体層909Cの上層には、絶縁体層909Bが配設されている。絶縁体層909Bには、インダクタ用の線状電極191B,192B,193B,194Bが形成されている。絶縁体層909Bの線状電極191B,192B,193B,194Bは、絶縁体層909Cの線状電極191C,192C,193C,194Cと、積層方向に沿って見た状態で、重なり合うように形成されている。
絶縁体層909Bの上層には、絶縁体層909Aが配設されている。絶縁体層909Aには、インダクタ用の線状電極191A,192A,193A,194Aが形成されている。絶縁体層909Aの線状電極191A,192A,193A,194Aは、絶縁体層909B,Cの線状電極191B,192B,193B,194B,191C,192C,193C,194Cと、積層方向に沿って見た状態で、重なり合うように形成されている。
ビアホール801、811は、線状電極191A,191B,191Cを導通するように形成されている。ビアホール802、812は、線状電極192A,192B,192Cを導通するように形成されている。ビアホール803、813は、線状電極193A,193B,193Cを導通するように形成されている。ビアホール804,814は、線状電極194A,1924,194Cを導通するように形成されている。
このような構成とすることで、共振用インダクタLr1,Lr2,Lr3,Lr4が三層構造となり、一層構造の時よりも共振用インダクタ間の結合度が向上する。これにより、挿入損失が低下し、通過特性が向上する。図12(A)はインダクタの層数に応じた挿入損失の変化を示す表であり、図12(B)は通過帯域の通過特性を拡大した図である。図12からも分かるように、インダクタの層数を増加させることで、挿入損失および通過特性を向上させることができる。これにより、高周波積層部品としての特性を、さらに向上することができる。
次に、第5の実施形態に係る高周波積層部品について、図を参照して説明する。図13は本実施形態の高周波積層部品の積層構造を示す図である。
本実施形態の高周波積層部品の積層体10Eは、第3の実施形態に示した高周波積層部品の積層体10Cに対して、回路機能部に相当する層の構成が異なるものである。他の構成は上述の第3の実施形態に示した高周波積層部品の積層体10Cと同じであるので、変更箇所のみを説明し、同じ箇所の説明は省略する。
絶縁体層901,911,902,903,904,905,906および最上層の絶縁体層910の構造は、第3の実施形態の高周波積層部品の積層体10Cと同じである。なお、本実施形態の構成では、最上層の絶縁体層910に入出力用電極201,202が形成されている。この入出力用電極201,202は、上述の各実施形態とともに、形成しても形成しなくてもよい。
内層グランド電極160が形成された絶縁体層906の上層には、絶縁体層912が配設される。絶縁体層912には、入出力用電極201,202を導通する所定幅で直線状の線状電極195が形成されている。この線状電極195がインダクタとして機能する。
図14は、積層体10Eからなる高周波積層部品の等価回路図である。図14に示すように、積層体10Eからなる高周波積層部品は、入出力端子Pio1,Pio2間にインダクタLaが直列接続され、当該インダクタLaにグランドインピーダンス調整回路が並列接続された低域通過フィルタ(ローパスフィルタLPF)として機能する。
図15は、積層体10Eからなる低域通過フィルタの通過特性図である。図15に示すように、本実施形態の構造を用いることで、高域側の減衰特性が向上し、優れた周波数特性の低域通過フィルタを構成することができる。
次に、第6の実施形態に係る高周波積層部品について、図を参照して説明する。図16は本実施形態の高周波積層部品の積層構造を示す図である。
本実施形態の高周波積層部品の積層体10Fは、第5の実施形態の積層体10Eに対して、回路機能部に相当する層の構成が異なるものである。他の構成は上述の第5の実施形態に示した高周波積層部品の積層体10Eと同じであるので、変更箇所のみを説明し、同じ箇所の説明は省略する。
絶縁体層901,911,902,903,904,905,906および最上層の絶縁体層910の構造は、積層体10Eと同じである。
内層グランド電極160が形成された絶縁体層906の上層には、絶縁体層913Bが配設される。絶縁体層913Bには、上層側から見て反時計回りで外側から内側へ巻く、巻回形の線状電極196Bが形成されている。巻回形の線状電極196Bの最外周端付近は、入出力用電極201を接続されている。
絶縁体層913Bの上層には、絶縁体層913Aが配設されている。絶縁体層913Aには、上層側から見て、前記巻回形の線状電極196Bに繋がって巻回するような形状の線状電極196Aが形成されている。線状電極196Aの一方端付近は、ビアホール820により、絶縁体層913Bの線状電極196Bの最内周端付近に接続されている。線状電極196Aの他方端は、入出力用電極201に接続されている。
このような構造であっても、上述の第5実施形態と同様に、周波数特性が優れるローパスフィルタを構成することができる。
次に、第7の実施形態に係る高周波積層部品について、図を参照して説明する。図17は本実施形態の高周波積層部品の積層構造を示す図である。
本実施形態の高周波積層部品の積層体10Gは、第5の実施形態の積層体10Eに対して、回路機能部に相当する層の構成が異なるものである。他の構成は上述の第3の実施形態に示した高周波積層部品の積層体10Eと同じであるので、変更箇所のみを説明し、同じ箇所の説明は省略する。
内層グランド電極160が形成された絶縁体層906の上層には、絶縁体層914が配設される。絶縁体層914には、T字状電極197が形成されている。T字状電極197は、上層から見てそれぞれに略90°をなす三方向に沿って延びる形状の電極である。T字状電極197における延びる方向が平行な二個の線状電極の一方が入出力用電極201に接続し、他方が入出力用電極202に接続している。T字状電極197における残りの一個の線状電極は、積層体の側面に露出しない所定の長さで形成され、ビアホール820を介して内層グランド電極160と接続されている。
図18は、積層体10Gからなる高周波積層部品の等価回路図である。図18に示すように、積層体10Gからなる高周波積層部品は、入出力端子Pio1,Pio2間にインダクタLb,Lcの直列回路が接続され、インダクタLb,Lcの接続点とグランドとの間にインダクタLdが接続されたT型の帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタBPF)として機能する。
図19は、積層体10Gからなる帯域通過フィルタの通過特性図である。図19に示すように、本実施形態の構造を用いることで、通過帯域の高域側の減衰特性が向上し、優れた周波数特性の帯域通過フィルタを構成することができる。さらに、本実施形態では、インダクタLb,Lcを直線状に形成できるため、低損失な帯域通過フィルタを構成することができる。このとき、ビアホール820の接続位置を変更することで、インダクタLb,Lc間のインダクタンスを最適な値に調整できる。
次に、第8の実施形態に係る高周波積層部品について、図を参照して説明する。図20は本実施形態の高周波積層部品の積層構造を示す図である。
本実施形態の高周波積層部品の積層体10Hは、第7実施形態の積層体10Gに対して、回路機能部に相当する層の構成が異なるものである。他の構成は上述の第7の実施形態に示した高周波積層部品の積層体10Gと同じであるので、変更箇所のみを説明し、同じ箇所の説明は省略する。
絶縁体層901,911,902,903,904,905,906および最上層の絶縁体層910の構造は、積層体10Gと同じである。
内層グランド電極160が形成された絶縁体層906の上層には、絶縁体層915が配設される。絶縁体層915には、クロス形状電極198が形成されている。クロス形状電極198は、上層から見てそれぞれに略90°をなす四方向に沿って延びる形状(十字形状)の電極である。クロス形状電極198における延びる方向が平行なそれぞれ一対の線状電極の内、一方の対の線状電極が入出力用電極201,202に接続している。クロス形状電極198における残りの一対の線状電極は、それぞれ反対方向へ延びるように積層体の側面に露出しない所定の長さで形成されている。
図21は、積層体10Hからなる帯域通過フィルタの通過特性図である。図21に示すように、本実施形態の構造を用いても、通過帯域の高域側の減衰特性が向上し、優れた周波数特性の帯域通過フィルタを構成することができる。さらに、本実施形態では、インダクタLb,Lcを直線状に形成できるため、低損失な帯域通過フィルタを構成することができる。このとき、ビアホール820の接続位置を変更することで、インダクタLb,Lcの間のインダクタンスを最適な値に調整できる。
次に、第9の実施形態に係る高周波積層部品について、図を参照して説明する。図22は本実施形態の高周波積層部品の積層構造を示す図である。
本実施形態の高周波積層部品の積層体10Iは、第5実施形態の積層体10Eに対して、回路機能部に相当する層の構成が異なり、当該回路機能部が構成される絶縁体層が最上層となるものである。他の構成は上述の第5の実施形態に示した高周波積層部品の積層体10Eと同じであるので、変更箇所のみを説明し、同じ箇所の説明は省略する。
絶縁体層901,911,902,903,904,905,906の構造は、積層体10Gと同じである。
内層グランド電極160が形成された絶縁体層906の上層には、絶縁体層916が配設される。絶縁体層916には、入出力用電極201,202にそれぞれ導通する所定幅で直線状の引き回し電極199A,199Bが形成されている。この引き回し電極199A,199Bの対向する端部に、チップインダクタ300が実装されている。
このような構造であっても、上述の第5実施形態と同様に、優れた周波数特性の高周波積層部品を構成することができる。さらに、本実施形態の構成とすれば、チップインダクタ300を、他の回路素子(他のインダクタンスのチップインダクタやフィルタ素子等)に置き換えることで、別の特性からなる優れた周波数特性の高周波積層部品を構成することができる。すなわち、複数種類の優れた周波数特性の高周波積層部品を容易に形成することができる。
なお、図22では、第5の実施形態の構成を基礎に、他の回路素子を実装可能な構成にしたが、図23に示すように、第7の実施形態の構成を基礎に、同様の他の回路素子を実装可能な構成からなる高周波積層部品を形成してもよい。図23は本実施形態の高周波積層部品の他の積層構造(積層体10I’)を示す図である。もちろん、第8の実施形態の構成を基礎に、同様の他の回路素子を実装可能な構成からなる高周波積層部品を形成してもよい。図23のような構成であれば、実装回路素子と線状電極との組合せで回路機能部を構成することができる。
次に、第10の実施形態に係る高周波積層部品について、図を参照して説明する。図24は本実施形態の高周波積層部品の積層構造を示す図である。
上述の各実施形態では、グランドインピーダンス調整回路と回路機能部とを積層体に一体形成した例を示した。しかしながら、本実施形態に示すように、積層体にグランドインピーダンス調整回路のみを備えた構造であってもよい。
図24に示すように、本実施形態の高周波積層部品の積層体10Jは、第2の実施形態の図8に示した積層体10Bの絶縁体層907,908,909を省いた構造からなる。
このような構造とすることで、グランドインピーダンス調整回路単体からなる高周波積層部品を形成することができる。そして、このような高周波積層部品を、別体のフィルタ素子部品に近接させて、回路基板上に実装する。これにより、別体のフィルタ素子部品の周波数特性を向上させることが可能になる。また、このグランドインピーダンス調整回路を回路基板内に形成し、部品全体を小型化することも可能である。
また、このようなグランドインピーダンス調整回路のみからなる高周波積層部品に対しても、上述の第3実施形態等に示したように、最下層の内層グランド電極120とグランド電極110との間と、内層グランド電極120よりも上層側とで、ビアホールの本数を異ならせてもよい。図25は本実施形態の高周波積層部品の他の積層構造を示す図である。
なお、上述の回路機能部を備える実施形態では、LC共振器用のキャパシタとグランドインピーダンス調整回路のキャパシタとを個別に形成する例を示した。しかしながら、連続する複数のLC共振器の両端のLC共振器のキャパシタを、グランドインピーダンス調整回路の第1並列キャパシタC1および第2並列キャパシタC2で兼用するように構成してもよい。これにより、積層体の構成要素が少なくなり、積層体の構造をより簡素に且つ小型に形成することができる。
また、上述の回路機能部を備えるフィルタの実施形態においては、入出力端子Pio1,Pio2間に飛び結合用のキャパシタンスを設定することがある。この際、当該飛び結合用のキャパシタンスをグランドインピーダンス調整回路の直列キャパシタC12で兼用することができる。これにより、積層体の構成要素が少なくなり、積層体の構造をより簡素に且つ小型に形成することができる。
また、上述の回路機能部を備える実施形態では、LC共振器用のキャパシタとグランドインピーダンス調整回路のキャパシタとを個別に形成する例を示した。しかしながら、連続する複数のLC共振器の両端のLC共振器のキャパシタを、グランドインピーダンス調整回路の第1並列キャパシタC1および第2並列キャパシタC2で兼用するように構成してもよい。これにより、積層体の構成要素が少なくなり、積層体の構造をより簡素に且つ小型に形成することができる。
また、上述の構造では、LC共振器のキャパシタ用の電極を所望のキャパシタンスが得られるように、適宜設定している。しかしながら、キャパシタンスに応じて、当該キャパシタ用の電極の形状を決定する際に、隣り合う線状電極の両方と、少なくとも同時には重ならないように形成するとよりよい。