本発明は、以下に説明する複数の発明を包含する発明群に属する発明であり、以下に、その発明群の実施形態として、第1ないし第8の実施形態および第1ないし第4の変形例について説明するが、そのうち、第1ないし第8の実施形態および第2および第4の変形例が、本出願人が特許請求の範囲に記載した発明に対応するものである。
以下、本発明の実施形態によるフィルタ、アンテナモジュールおよび通信装置を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1および図4は本発明の第1の実施形態によるフィルタ1を示している。フィルタ1は、多層基板2、グランド電極6,7、共振器8,11,14、伝送線路10,13、浮き電極16,17を備えている。フィルタ1は、共振器8,11,14の共振周波数付近の帯域の信号を通過させ、他の帯域の信号を遮断する帯域通過フィルタとなっている。
多層基板2は、誘電体基板である。多層基板2は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のうち例えばX軸方向およびY軸方向に対して平行に広がる平板状に形成されている。多層基板2は、例えば低温同時焼成セラミックス多層基板(LTCC多層基板)によって形成されている。多層基板2は、第1主面2A(表面)から第2主面2B(裏面)に向けてZ軸方向に積層した3層の絶縁層3~5(図3参照)を有している。各絶縁層3~5は、1000℃以下の低温で焼成可能な絶縁性のセラミックス材料からなり、薄い層状に形成されている。なお、多層基板2は、LTCC多層基板に限らず、例えば樹脂材料からなる絶縁層を積層した多層基板でもよい。多層基板2は、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板でもよい。多層基板2は、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板でもよい。多層基板2は、LTCC多層基板以外のセラミックス多層基板でもよい。さらに、多層基板2は、可撓性を有するフレキシブル基板でもよく、熱可塑性を有するリジッド基板でもよい。
グランド電極6,7は、例えば銅、銀等の導電性金属材料を用いて形成されている。なお、グランド電極6,7は、アルミニウム、金またはこれらの合金を主成分とする金属材料によって形成してもよい。グランド電極6は、多層基板2の第1主面2Aに設けられている。グランド電極7は、多層基板2の第2主面2Bに設けられている。グランド電極6,7は、外部のグランドに接続される。グランド電極6は、多層基板2の第1主面2Aの全体を覆っている。グランド電極7は、多層基板2の第2主面2Bの全体を覆っている。
入力段の共振器8は、多層基板2の内部に設けられている(図1~図3参照)。共振器8は、平面視でC字形状の線状導体9によって形成されている。図3に示すように、線状導体9は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。線状導体9の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体9の両端は、開放されている。このため、線状導体9は、両端が開放された半波長共振器を構成している。
図1および図2に示すように、線状導体9は、第1開放部9Aおよび第2開放部9Bを備えている。線状導体9の第1開放部9Aは、平面視でL字状に形成されている。第1開放部9Aは、接続部9A1と開放端部9A2とを有している。第1開放部9Aの接続部9A1は、第2開放部9Bの接続部9B1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部9A1の第1端は、接続部9B1に電気的に接続されている。接続部9A1の第2端は、開放端部9A2の第1端に電気的に接続されている。
第1開放部9Aの開放端部9A2は、線状導体9の一方の端部(縁端部)であり、X軸方向に延びている。開放端部9A2の第2端は、電気的に開放されている。第1開放部9Aの長さ寸法は、線状導体9の半分の長さ寸法よりも長くなっている。このため、第1開放部9Aの長さ寸法は、第2開放部9Bの長さ寸法よりも長くなっている。線状導体9の第1開放部9Aは、1/4波長のオープンスタブになっている。
線状導体9の第2開放部9Bは、平面視でL字状に形成されている。第2開放部9Bは、接続部9B1と開放端部9B2とを有している。第2開放部9Bの接続部9B1は、第1開放部9Aの接続部9A1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部9B1の第1端は、接続部9A1に電気的に接続されている。接続部9B1の第2端は、開放端部9B2の第1端に電気的に接続されている。第2開放部9Bの開放端部9B2は、線状導体9の他方の端部(縁端部)であり、X軸方向に延びている。開放端部9B2の第2端は、電気的に開放されている。
入力側の伝送線路10は、線状導体9の途中位置に電気的に接続されている。具体的には、伝送線路10は、第1開放部9Aと第2開放部9Bとの接続位置で、線状導体9に接続されている。伝送線路10は、線状導体によって形成されている。図3に示すように、伝送線路10の線状導体は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、X軸方向に延びている。伝送線路10は、線状導体9から多層基板2の外側に向けて延びている。入力段の共振器8は、多層基板2に設けられた入力側の伝送線路10に直接的に結合されている。直接的に結合とは、例えば伝送線路10の線状導体と共振器8の線状導体9のような2つの導体パターンが物理的に接続していることをいう。
出力段の共振器11は、多層基板2の内部に設けられている(図1~図3参照)。共振器11は、平面視でC字形状の線状導体12によって形成されている。図3に示すように、線状導体12は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。線状導体12の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体12の両端は、開放されている。このため、線状導体12は、両端が開放された半波長共振器を構成している。
図1および図2に示すように、線状導体12は、線状導体9とX軸方向で離間している。線状導体12と線状導体9との間には、中間段の共振器14が配置されている。線状導体12は、多層基板2を平面視したときに、線状導体9と点対称な形状に形成されている。線状導体12は、第1開放部12Aおよび第2開放部12Bを備えている。
線状導体12の第1開放部12Aは、平面視でL字状に形成されている。第1開放部12Aは、接続部12A1と開放端部12A2とを有している。第1開放部12Aの接続部12A1は、第2開放部12Bの接続部12B1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部12A1の第1端は、接続部12B1に電気的に接続されている。接続部12A1の第2端は、開放端部12A2の第1端に電気的に接続されている。
第1開放部12Aの開放端部12A2は、線状導体12の一方の端部(縁端部)である。線状導体12の第1開放部12Aの開放端部12A2は、線状導体9の第2開放部9Bの開放端部9B2と一直線状に並んで、X軸方向に延びている。線状導体12の第1開放部12Aの開放端部12A2は、線状導体9の第2開放部9Bの開放端部9B2とX軸方向で離間している。開放端部12A2の第2端は、電気的に開放されている。第1開放部12Aの長さ寸法は、線状導体12の半分の長さ寸法よりも長くなっている。このため、第1開放部12Aの長さ寸法は、第2開放部12Bの長さ寸法よりも長くなっている。線状導体12の第1開放部12Aは、1/4波長のオープンスタブになっている。
線状導体12の第2開放部12Bは、平面視でL字状に形成されている。第2開放部12Bは、接続部12B1と開放端部12B2とを有している。第2開放部12Bの接続部12B1は、第1開放部12Aの接続部12A1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部12B1の第1端は、接続部12A1に電気的に接続されている。接続部12B1の第2端は、開放端部12B2の第1端に電気的に接続されている。
第2開放部12Bの開放端部12B2は、線状導体12の他方の端部(縁端部)である。線状導体12の第2開放部12Bの開放端部12B2は、線状導体9の第1開放部9Aの開放端部9A2と一直線状に並んで、X軸方向に延びている。開放端部12B2の第2端は、電気的に開放されている。
出力側の伝送線路13は、線状導体12の途中位置に電気的に接続されている。具体的には、伝送線路13は、第1開放部12Aと第2開放部12Bとの接続位置で、線状導体12に接続されている。伝送線路13は、線状導体によって形成されている。図3に示すように、伝送線路13の線状導体は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、X軸方向に延びている。伝送線路13は、線状導体12から多層基板2の外側に向けて延びている。出力段の共振器11は、多層基板2に設けられた出力側の伝送線路13に直接的に結合されている。
中間段の共振器14は、入力段の共振器8と出力段の共振器11との間に位置して、多層基板2に設けられている。共振器14は、多層基板2の内部に設けられている(図1~図3参照)。共振器14は、直線状の線状導体15によって形成されている。図3に示すように、線状導体15は、絶縁層3と絶縁層4との間に位置して、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。このため、線状導体15と線状導体9,12との間には、絶縁層4が挟まれている。線状導体15の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体15の両端は、開放されている。このため、線状導体15は、両端が開放された半波長共振器を構成している。
図1および図2に示すように、線状導体15は、本体部15Aおよび結合部15B,15Cを備えている。本体部15Aは、平面視した状態で、共振器8の線状導体9と共振器11の線状導体12に取り囲まれた位置に配置されている。本体部15Aは、X軸方向に延びている。本体部15Aの第1端は、結合部15Bに電気的に接続されている。本体部15Aの第2端は、結合部15Cに電気的に接続されている。
結合部15Bは、線状導体15の第1端部であり、本体部15Aの第1端からY軸方向に延びている。結合部15Bは、第2開放部9Bの開放端部9B2を横切っている。結合部15Bと開放端部9B2とは、Z軸方向で離間している。これにより、線状導体15の結合部15Bは、線状導体9の開放端部9B2と容量結合する。
結合部15Cは、線状導体15の第2端部であり、本体部15Aの第2端からY軸方向に延びている。結合部15Cは、第2開放部12Bの開放端部12B2を横切っている。結合部15Cと開放端部12B2とは、Z軸方向で離間している。これにより、線状導体15の結合部15Cは、線状導体12の開放端部12B2と容量結合する。
浮き電極16は、入力段の共振器8と出力段の共振器11とを飛越し結合させる飛越し結合電極である。飛越し結合(Cross-coupling)とは、入力段と出力段の間で直接に隣接結合していない共振器同士が、電磁界結合している状態をいう。図1および図2に示すように、浮き電極16は、線状導体9の開放端部9A2と線状導体12の開放端部12B2との間に位置して、多層基板2の内部に設けられている。浮き電極16は、開放端部9A2および開放端部12B2と一直線状に並んでいる。図3に示すように、浮き電極16は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、島状に形成されている。図2に示すように、浮き電極16と線状導体9,12との間には、X軸方向の隙間gが形成されている。このため、浮き電極16は、線状導体9,12には接触せず、線状導体9,12と離間している。浮き電極16は、隙間gの大きさに応じて、線状導体9の開放端部9A2と線状導体12の開放端部12B2とを容量結合させる。
浮き電極17は、入力段の共振器8と出力段の共振器11とを飛越し結合させる飛越し結合電極である。図1および図2に示すように、浮き電極17は、線状導体9の開放端部9B2と線状導体12の開放端部12A2との間に位置して、多層基板2の内部に設けられている。浮き電極17は、開放端部9B2および開放端部12A2と一直線状に並んでいる。浮き電極17は、線状導体9,12および浮き電極16と同じ層に位置して、島状に形成されている。図2に示すように、浮き電極17と線状導体9,12との間には、X軸方向の隙間gが形成されている。このため、浮き電極17は、線状導体9,12には接触せず、線状導体9,12と離間している。浮き電極17は、隙間gの大きさに応じて、線状導体9の開放端部9B2と線状導体12の開放端部12A2とを容量結合させる。
ここで、図4に示すフィルタ1の等価回路を参照しつつ、3つの共振器8,11,14によるフィルタ動作について説明する。
線状導体9の第2開放部9Bは、線状導体15の結合部15Bと重なり合っている(図1、図2参照)。これにより、入力段の共振器8は、次段となる中間段の共振器14と容量結合する。また、線状導体15の結合部15Cは、線状導体12の第2開放部12Bと重なり合っている(図1、図2参照)。これにより、中間段の共振器14は、次段となる出力段の共振器11と容量結合する。この結果、3つの共振器8,11,14は、共振器8,11,14の共振周波数付近の帯域の信号を通過させる。
また、線状導体9の第1開放部9Aは、オープンスタブになっている。同様に、線状導体12の第1開放部12Aは、オープンスタブになっている。これらのオープンスタブは、フィルタ1の通過帯域の低周波側に減衰極を形成する。
これに加え、共振器8の第1開放部9Aと共振器11の第2開放部12Bとの間には、浮き電極16が配置されている(図1、図2参照)。これにより、入力段の共振器8の第1開放部9Aと、出力段の共振器11の第2開放部12Bとは、容量結合する。同様に、共振器11の第1開放部12Aと共振器8の第2開放部9Bとの間には、浮き電極17が配置されている(図1、図2参照)。これにより、出力段の共振器11の第1開放部12Aと、入力段の共振器8の第2開放部12Bとは、容量結合する。この結果、減衰極の近傍に、もう1つの減衰極を追加することができる。
ここで、浮き電極16と線状導体9,12との間には、X軸方向の隙間gが形成されている。同様に、浮き電極17と線状導体9,12との間には、X軸方向の隙間gが形成されている。隙間gの大きさに応じて減衰極の減衰量や周波数が変化する。そこで、隙間gの大きさが異なる場合について、SパラメータのS21(透過係数)の周波数特性をシミュレーションによって求めた。その結果の一例を図6および図7に示す。
図6に示すように、隙間gが大きいときには、線状導体9,12の結合が弱くなり、1つの減衰極が形成される。これに対し、隙間gが小さくなるに従って、線状導体9,12の結合が強くなり、2つの減衰極が形成される。これに加え、図7に示すように、通過帯域の低周波側に位置する特定周波数(例えば25GHz)では、隙間gが小さくなるに従って、減衰量が大きくなる。
かくして、本実施形態によるフィルタ1は、多層基板2(誘電体基板)と、多層基板2に設けられ、次段と結合する3段の共振器8,11,14とを備えている。これに加え、入力段の共振器8は、平面視でC字形状の線状導体9によって形成され、多層基板2に設けられた入力側の伝送線路10に直接的に結合されている。出力段の共振器11は、平面視でC字形状の線状導体12によって形成され、多層基板2に設けられた出力側の伝送線路13に直接的に結合されている。
多層基板2には、入力段の共振器8の線状導体9の開放端部9A2(端部)と出力段の共振器11の線状導体12の開放端部12B2(端部)とを結合させる浮き電極16(飛越し結合電極)が設けられている。多層基板2には、入力段の共振器8の線状導体9の開放端部9B2(端部)と出力段の共振器11の線状導体12の開放端部12A2(端部)とを結合させる浮き電極17(飛越し結合電極)が設けられている。
このように構成したことにより、次段と結合する3つの共振器8,11,14は、帯域通過フィルタを構成し、共振器8,11,14の共振周波数付近の帯域の信号を通過させる。また、入力段の共振器8は、オープンスタブとなる第1開放部9Aを有している。出力段の共振器11は、オープンスタブとなる第1開放部12Aを有している。このとき、第1開放部9A,12Aの長さ寸法は、線状導体9,12の半分の長さ寸法よりも長くなっている。このため、第1開放部9A,12Aは、通過帯域の低周波側に減衰極を形成する。
これに加え、浮き電極16は、線状導体9の開放端部9A2と線状導体12の開放端部12B2とを容量結合させる。浮き電極17は、線状導体9の開放端部9B2と線状導体12の開放端部12A2とを容量結合させる。これにより、図5に示すように、通過帯域の低周波側には、第1開放部9A,12Aによる減衰極が形成されるのに加えて、この減衰極の近傍に位置して、追加の減衰極を形成することができる。このとき、浮き電極16,17と線状導体9,12との間に形成される隙間gの大きさは、浮き電極16,17の大きさに応じて調整することができる。これにより、共振器8,11,14の位置関係を変更することなく、線状導体9と線状導体12との間の結合強度を容易に変更することができる。この結果、共振器8,11,14の形状を複雑化させることなく、所望の減衰量を得ることができる。
また、入力段の共振器8の線状導体9および出力段の共振器11の線状導体12は、多層基板2の絶縁層4,5間に位置して同じ層に配置されている(図3参照)。多層基板2には、入力段の共振器8の線状導体9および出力段の共振器11の線状導体12と異なる層に位置して、結合部15B(第1端部)が入力段の共振器8と容量結合し、結合部15C(第2端部)が出力段の共振器11と容量結合する中間段の共振器14が設けられている(図1参照)。これにより、3つの共振器8,11,14が結合して、帯域通過フィルタを構成することができる。
また、多層基板2の2つの主面(第1主面2Aおよび第2主面2B)には、グランド電極6,7が設けられている。3段の共振器8,11,14は、多層基板2の内部に設けられている。これにより、3段の共振器8,11,14は、グランド電極6,7に挟まれるため、外部の電磁波からの干渉を抑制できると共に、外部への電磁波の放射を抑制することができる。
さらに、3段の共振器8,11,14は、多層基板2を平面視したときに、回転対称となる形状に形成されている。このため、共振器8,11,14の設計が容易であり、フィルタ1の量産性を高めることができる。
次に、図8ないし図10を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の特徴は、入力段の共振器および出力段の共振器はいずれもオープンスタブを有する線状導体によって形成され、これらのオープンスタブの長さ寸法が線状導体の全体の長さ寸法の半分よりも短いことにある。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態によるフィルタ21は、第1の実施形態によるフィルタ1とほぼ同様に、多層基板2、グランド電極6,7、共振器22,24,26、伝送線路10,13、浮き電極28を備えている。
入力段の共振器22は、多層基板2の内部に設けられている(図8~図10参照)。共振器22は、平面視でC字形状の線状導体23によって形成されている。図10に示すように、線状導体23は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。線状導体23の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体23の両端は、開放されている。このため、線状導体23は、両端が開放された半波長共振器を構成している。
図8および図9に示すように、線状導体23は、第1開放部23Aおよび第2開放部23Bを備えている。線状導体23の第1開放部23Aは、平面視でL字状に形成されている。第1開放部23Aは、接続部23A1と開放端部23A2とを有している。第1開放部23Aの接続部23A1は、第2開放部23Bの接続部23B1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部23A1の第1端は、接続部23B1に電気的に接続されている。接続部23A1の第2端は、開放端部23A2の第1端に電気的に接続されている。
第1開放部23Aの開放端部23A2は、線状導体23の一方の端部(縁端部)であり、X軸方向に延びている。開放端部23A2の第2端は、電気的に開放されている。
線状導体23の第2開放部23Bは、平面視でL字状に形成されている。第2開放部23Bは、接続部23B1と開放端部23B2とを有している。第2開放部23Bの接続部23B1は、第1開放部23Aの接続部23A1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部23B1の第1端は、接続部23A1に電気的に接続されている。接続部23B1の第2端は、開放端部23B2の第1端に電気的に接続されている。
第2開放部23Bの開放端部23B2は、線状導体23の他方の端部(縁端部)であり、X軸方向に延びている。開放端部23B2の第2端は、電気的に開放されている。第2開放部23Bの長さ寸法は、線状導体23の半分の長さ寸法よりも短くなっている。このため、第2開放部23Bの長さ寸法は、第1開放部23Aの長さ寸法よりも短くなっている。線状導体23の第2開放部23Bは、1/4波長のオープンスタブになっている。
入力側の伝送線路10は、線状導体23の途中位置に電気的に接続されている。具体的には、伝送線路10は、第1開放部23Aと第2開放部23Bとの接続位置で、線状導体23に接続されている。入力段の共振器22は、多層基板2に設けられた入力側の伝送線路10に直接的に結合されている。
出力段の共振器24は、多層基板2の内部に設けられている(図8~図10参照)。共振器24は、平面視でC字形状の線状導体25によって形成されている。図10に示すように、線状導体25は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。線状導体25の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体25の両端は、開放されている。このため、線状導体25は、両端が開放された半波長共振器を構成している。
図8および図9に示すように、線状導体25は、線状導体23とX軸方向で離間している。線状導体25と線状導体23との間には、中間段の共振器26が配置されている。線状導体25は、多層基板2を平面視したときに、線状導体23と点対称な形状に形成されている。線状導体25は、第1開放部25Aおよび第2開放部25Bを備えている。
線状導体25の第1開放部25Aは、平面視でL字状に形成されている。第1開放部25Aは、接続部25A1と開放端部25A2とを有している。第1開放部25Aの接続部25A1は、第2開放部25Bの接続部25B1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部25A1の第1端は、接続部25B1に電気的に接続されている。接続部25A1の第2端は、開放端部25A2の第1端に電気的に接続されている。
第1開放部25Aの開放端部25A2は、線状導体25の一方の端部(縁端部)である。線状導体25の第1開放部25Aの開放端部25A2は、線状導体23の第2開放部23Bの開放端部23B2と一直線状に並んで、X軸方向に延びている。線状導体25の第1開放部25Aの開放端部25A2は、線状導体23の第2開放部23Bの開放端部23B2とX軸方向で離間している。開放端部25A2の第2端は、電気的に開放されている。
線状導体25の第2開放部25Bは、平面視でL字状に形成されている。第2開放部25Bは、接続部25B1と開放端部25B2とを有している。第2開放部25Bの接続部25B1は、第1開放部25Aの接続部25A1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部25B1の第1端は、接続部25A1に電気的に接続されている。接続部25B1の第2端は、開放端部25B2の第1端に電気的に接続されている。
第2開放部25Bの開放端部25B2は、線状導体25の他方の端部(縁端部)である。線状導体25の第2開放部25Bの開放端部25B2は、線状導体23の第1開放部23Aの開放端部23A2と一直線状に並んで、X軸方向に延びている。開放端部25B2の第2端は、電気的に開放されている。第2開放部25Bの長さ寸法は、線状導体25の半分の長さ寸法よりも短くなっている。このため、第2開放部25Bの長さ寸法は、第1開放部25Aの長さ寸法よりも短くなっている。線状導体25の第2開放部25Bは、1/4波長のオープンスタブになっている。
出力側の伝送線路13は、線状導体25の途中位置に電気的に接続されている。具体的には、伝送線路13は、第1開放部25Aと第2開放部25Bとの接続位置で、線状導体25に接続されている。出力段の共振器24は、多層基板2に設けられた出力側の伝送線路13に直接的に結合されている。
中間段の共振器26は、入力段の共振器22と出力段の共振器24との間に位置して、多層基板2に設けられている。共振器26は、多層基板2の内部に設けられている(図8~図10参照)。共振器26は、直線状の線状導体27によって形成されている。図10に示すように、線状導体27は、絶縁層3と絶縁層4との間に位置して、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。このため、線状導体27と線状導体23,25との間には、絶縁層4が挟まれている。線状導体27の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体27の両端は、開放されている。このため、線状導体27は、両端が開放された半波長共振器を構成している。
図8および図9に示すように、線状導体27は、本体部27Aおよび結合部27B,27Cを備えている。本体部27Aは、平面視した状態で、共振器22の線状導体23と共振器24の線状導体25に取り囲まれた位置に配置されている。本体部27Aは、X軸方向に延びている。本体部27Aの第1端は、結合部27Bに電気的に接続されている。本体部27Aの第2端は、結合部27Cに電気的に接続されている。
結合部27Bは、線状導体27の第1端部であり、本体部27Aの第1端からY軸方向に延びている。結合部27Bは、開放端部23A2のX軸方向の中間位置に配置され、第1開放部23Aの開放端部23A2を横切っている。結合部27Bと開放端部23A2とは、Z軸方向で離間している。これにより、線状導体27の結合部27Bは、線状導体23の開放端部23A2と容量結合する。
結合部27Cは、線状導体27の第2端部であり、本体部27Aの第2端からY軸方向に延びている。結合部27Cは、開放端部25A2のX軸方向の中間位置に配置され、第1開放部25Aの開放端部25A2を横切っている。結合部27Cと開放端部25A2とは、Z軸方向で離間している。これにより、線状導体27の結合部27Cは、線状導体25の開放端部25A2と容量結合する。
浮き電極28は、入力段の共振器22と出力段の共振器24とを飛越し結合させる飛越し結合電極である。図8および図9に示すように、浮き電極28は、線状導体23の開放端部23A2と線状導体25の開放端部25A2との間に位置して、多層基板2の内部に設けられている。浮き電極28は、開放端部23A2の第2端部分と開放端部25A2の第2端部分との間に配置されている。このとき、浮き電極28と線状導体27とは、Z軸方向で離間している。このため、浮き電極28は、線状導体27と絶縁された状態で、線状導体27の中央部分と対面している。図10に示すように、浮き電極28は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、島状に形成されている。図9に示すように、浮き電極28と線状導体23,25との間には、Y軸方向の隙間が形成されている。このため、浮き電極28は、線状導体23,25には接触せず、線状導体23,25と離間している。浮き電極28は、隙間の大きさに応じて、線状導体23の開放端部23A2と線状導体25の開放端部25A2とを容量結合させる。
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様に、フィルタ21は、共振器22,24,26の形状を複雑化させることなく、所望の減衰量を得ることができる。また、第2の実施形態では、入力段の共振器22および出力段の共振器24は線状導体23,25によって形成されている。線状導体23,25は、オープンスタブとなる第2開放部23B,25Bを有している。第2開放部23B,25Bの長さ寸法は、線状導体23,25の全体の長さ寸法の半分よりも短くなっている。このため、第2開放部23B,25Bは、通過帯域の高周波側に減衰極を形成する。
これに加え、浮き電極28は、線状導体23の開放端部23A2と線状導体25の開放端部25A2とを容量結合させる。これにより、図11に示すように、通過帯域の高周波側には、第2開放部23B,25Bによる減衰極が形成されるのに加えて、この減衰極の近傍に位置して、追加の減衰極を形成することができる。
次に、図12ないし図14を用いて、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の特徴は、3つの共振器の線状導体は、多層基板からなる誘電体基板の同じ層に配置され、誘電体基板には、3つの共振器の線状導体と異なる層に位置して、隣り合う2つの共振器を容量結合させる浮き電極が設けられていることにある。なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
第3の実施形態によるフィルタ31は、第1の実施形態によるフィルタ1とほぼ同様に、多層基板2、グランド電極6,7、共振器8,11,32、伝送線路10,13、浮き電極16,17,34,35を備えている。
中間段の共振器32は、入力段の共振器8と出力段の共振器11との間に位置して、多層基板2に設けられている。共振器32は、多層基板2の内部に設けられている(図12~図14参照)。共振器32は、直線状の線状導体33によって形成されている。図14に示すように、線状導体33は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。このため、3つの共振器8,11,32は、多層基板2の同じ層に配置されている。線状導体33の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体33の両端に位置する第1端部33Aおよび第2端部33Bは、開放されている。このため、線状導体33は、両端が開放された半波長共振器を構成している。
浮き電極34は、線状導体9,12,33と異なる層に位置して、多層基板2に設けられている。図14に示すように、浮き電極34は、絶縁層3と絶縁層4との間に位置して、Y軸方向に延びる帯状に形成されている。このため、浮き電極34と線状導体9,33との間には、絶縁層4が挟まれている。図12および図13に示すように、浮き電極34は、線状導体9の開放端部9B2および線状導体33の第1端部33Aと対面する位置に配置されている。浮き電極34は、Y軸方向に延びて、線状導体33を横切ると共に、第2開放部9Bの開放端部9B2を横切っている。浮き電極34と線状導体9,33とは、Z軸方向に離間している。これにより、線状導体33の第1端部33Aは、線状導体9の開放端部9B2と容量結合する。
浮き電極35は、線状導体9,12,33と異なる層に位置して、多層基板2に設けられている。図14に示すように、浮き電極35は、絶縁層3と絶縁層4との間に位置して、Y軸方向に延びる帯状に形成されている。このため、浮き電極35と線状導体12,33との間には、絶縁層4が挟まれている。図12および図13に示すように、浮き電極35は、線状導体12の開放端部12B2および線状導体33の第2端部33Bと対面する位置に配置されている。浮き電極35は、Y軸方向に延びて、線状導体33を横切ると共に、第2開放部12Bの開放端部12B2を横切っている。浮き電極35と線状導体12,33とは、Z軸方向に離間している。これにより、線状導体33の第2端部33Bは、線状導体12の開放端部12B2と容量結合する。
かくして、このように構成された第3の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様に、フィルタ31は、共振器8,11,32の形状を複雑化させることなく、通過帯域の低周波側に複数の減衰極を形成し、所望の減衰量を得ることができる。
なお、線状導体9の開放端部9B2と線状導体33は、隙間を挟んでX軸方向に並行に延びている。このため、線状導体9,33の形状等を適宜設定することによって、浮き電極34がなくても、線状導体9,33を結合させることができる。同様に、線状導体12,33の形状等を適宜設定することによって、浮き電極35がなくても、線状導体12,33を結合させることができる。この場合、図15に示す第1の変形例によるフィルタ36のように、浮き電極34,35を省いてもよい。
次に、図16を用いて、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の特徴は、3つの共振器の線状導体は、多層基板からなる誘電体基板の同じ層に配置され、飛越し結合電極は、入力段の共振器の線状導体および出力段の共振器の線状導体と異なる層に位置して、入力段の共振器と出力段の共振器とを容量結合させる浮き電極であることにある。なお、第4の実施形態において、第2の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
第4の実施形態によるフィルタ41は、第2の実施形態によるフィルタ21とほぼ同様に、多層基板2、グランド電極6,7、共振器22,24,42、伝送線路10,13、浮き電極44,45,46を備えている。
図16に示すように、中間段の共振器42は、入力段の共振器22と出力段の共振器24との間に位置して、多層基板2に設けられている。共振器42は、多層基板2の内部に設けられている。共振器42は、直線状の線状導体43によって形成されている。線状導体43は、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。3つの共振器22,24,42は、多層基板2の同じ層に配置されている。線状導体43の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体43の両端に位置する第1端部43Aおよび第2端部43Bは、開放されている。このため、線状導体43は、両端が開放された半波長共振器を構成している。
浮き電極44は、線状導体23,25,43と異なる層に位置して、多層基板2に設けられている。浮き電極44は、線状導体23,25,43よりも第1主面2A側の層に位置して、Y軸方向に延びる帯状に形成されている。浮き電極44は、線状導体23の開放端部23A2および線状導体43の第1端部43Aと対面する位置に配置されている。浮き電極44は、Y軸方向に延びて、線状導体43を横切ると共に、第1開放部23Aの開放端部23A2を横切っている。浮き電極44と線状導体23,43とは、Z軸方向で離間している。これにより、線状導体43の第1端部43Aは、線状導体23の開放端部23A2と容量結合する。
浮き電極45は、線状導体23,25,43と異なる層に位置して、多層基板2に設けられている。浮き電極45は、浮き電極44と同じ層に位置して、Y軸方向に延びる帯状に形成されている。浮き電極45は、線状導体25の開放端部25A2および線状導体43の第2端部43Bと対面する位置に配置されている。浮き電極45は、Y軸方向に延びて、線状導体43を横切ると共に、第1開放部25Aの開放端部25A2を横切っている。浮き電極45と線状導体25,43とは、Z軸方向で離間している。これにより、線状導体43の第2端部43Bは、線状導体25の開放端部25A2と容量結合する。
浮き電極46は、入力段の共振器22と出力段の共振器24とを飛越し結合させる飛越し結合電極である。浮き電極46は、線状導体23,25,43と異なる層に位置して、多層基板2に設けられている。浮き電極46は、浮き電極44,45とは別個の他の浮き電極である。浮き電極46は、浮き電極44,45と同じ層に位置して、Y軸方向に延びる帯状に形成されている。浮き電極46は、開放端部23A2の第2端部分と開放端部25A2の第2端部分との間に配置されている。浮き電極46は、線状導体23の開放端部23A2と線状導体25の開放端部25A2とを容量結合させる。このとき、浮き電極46は、線状導体27と絶縁された状態で、線状導体43の中央部分と対面している。
かくして、このように構成された第4の実施形態においても、前述した第2の実施形態とほぼ同様に、フィルタ41は、共振器22,24,42の形状を複雑化させることなく、通過帯域の高周波側に複数の減衰極を形成し、所望の減衰量を得ることができる。
なお、第4の実施形態では、浮き電極46は、開放端部23A2の第2端部分と開放端部25A2の第2端部分との間に配置されている。本発明はこれに限らず、図17に示す第2の変形例によるフィルタ47のように、浮き電極48は、浮き電極46よりもY軸方向の長さ寸法を大きく形成してもよい。この場合、浮き電極48は、開放端部23A2と重なり合う部分を有すると共に、開放端部25A2と重なり合う部分を有する。浮き電極48と開放端部23A2,25A2が重なり合う面積に応じて、共振器22,24の飛越し結合の強度を調整することができる。
また、線状導体23の開放端部23A2と線状導体43は、隙間を挟んでX軸方向に並行に延びている。このため、線状導体23,43の形状等を適宜設定することによって、浮き電極44がなくても、線状導体23,43を結合させることができる。同様に、線状導体25,43の形状等を適宜設定することによって、浮き電極45がなくても、線状導体25,43を結合させることができる。この場合、図18に示す第3の変形例によるフィルタ49のように、浮き電極44,45を省いてもよい。
次に、図19ないし図21を用いて、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態の特徴は、共振器がステップインピーダンス共振器であることにある。ステップインピーダンス共振器とは、例えば半波長共振器において、線状導体の線幅を階段状に変えることによって、線状導体の途中でインピーダンスを変化させた共振器をいう。なお、第5の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
第5の実施形態によるフィルタ51は、第1の実施形態によるフィルタ1とほぼ同様に、多層基板2、グランド電極6,7、共振器52,54,56、伝送線路10,13、浮き電極16,17,58,59を備えている。
入力段の共振器52は、多層基板2の内部に設けられている(図19~図21参照)。共振器52は、平面視でC字形状の線状導体53によって形成されている。図21に示すように、線状導体53は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。線状導体53の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体53の両端は、開放されている。このため、線状導体53は、両端が開放された半波長共振器を構成している。線状導体53は、幅寸法の大きい部分と幅寸法の小さい部分とを有している。このため、共振器52は、特性インピーダンスが異なる部分を有するステップインピーダンス共振器になっている。
図19および図20に示すように、線状導体53は、第1開放部53Aおよび第2開放部53Bを備えている。線状導体53の第1開放部53Aは、平面視でL字状に形成されている。第1開放部53Aは、接続部53A1と開放端部53A2とを有している。第1開放部53Aの接続部53A1は、開放端部53A2の第2端に比べて幅寸法が小さくなっている。第1開放部53Aの接続部53A1は、第2開放部53Bの接続部53B1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部53A1の第1端は、接続部53B1に電気的に接続されている。接続部53A1の第2端は、開放端部53A2の第1端に電気的に接続されている。
第1開放部53Aの開放端部53A2は、線状導体53の一方の端部(縁端部)であり、X軸方向に延びている。開放端部53A2の第1端部分は、開放端部53A2の第2端部分にくらべて幅寸法が小さくなっている。このため、開放端部53A2は、X軸方向の途中位置で幅寸法がステップ状に変化している。開放端部53A2の第2端は、電気的に開放されている。
第1開放部53Aの長さ寸法は、線状導体53の半分の長さ寸法よりも長くなっている。このため、第1開放部53Aの長さ寸法は、第2開放部53Bの長さ寸法よりも長くなっている。線状導体53の第1開放部53Aは、1/4波長のオープンスタブになっている。
線状導体53の第2開放部53Bは、平面視でL字状に形成されている。第2開放部53Bは、接続部53B1と開放端部53B2とを有している。第2開放部53Bの接続部53B1は、開放端部53B2に比べて幅寸法が小さくなっている。第2開放部53Bの接続部53B1は、第1開放部53Aの接続部53A1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部53B1の第1端は、接続部53A1に電気的に接続されている。接続部53B1の第2端は、開放端部53B2の第1端に電気的に接続されている。
第2開放部53Bの開放端部53B2は、線状導体53の他方の端部(縁端部)であり、X軸方向に延びている。開放端部53B2は、接続部53B1にくらべて幅寸法が大きくなっている。開放端部53B2の第2端は、電気的に開放されている。
入力側の伝送線路10は、線状導体53の途中位置に電気的に接続されている。具体的には、伝送線路10は、第1開放部53Aと第2開放部53Bとの接続位置で、線状導体53に接続されている。入力段の共振器52は、多層基板2に設けられた入力側の伝送線路10に直接的に結合されている。
出力段の共振器54は、多層基板2の内部に設けられている(図19~図21参照)。共振器54は、平面視でC字形状の線状導体55によって形成されている。図21に示すように、線状導体55は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。線状導体55の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体55の両端は、開放されている。このため、線状導体55は、両端が開放された半波長共振器を構成している。線状導体55は、幅寸法の大きい部分と幅寸法の小さい部分とを有している。このため、共振器54は、特性インピーダンスが異なる部分を有するステップインピーダンス共振器になっている。
図19および図20に示すように、線状導体55は、線状導体53とX軸方向で離間している。線状導体55と線状導体53との間には、中間段の共振器56が配置されている。線状導体55は、多層基板2を平面視したときに、線状導体53と点対称な形状に形成されている。線状導体55は、第1開放部55Aおよび第2開放部55Bを備えている。
線状導体55の第1開放部55Aは、平面視でL字状に形成されている。第1開放部55Aは、接続部55A1と開放端部55A2とを有している。第1開放部55Aの接続部55A1は、開放端部55A2の第2端に比べて幅寸法が小さくなっている。第1開放部55Aの接続部55A1は、第2開放部55Bの接続部55B1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部55A1の第1端は、接続部55B1に電気的に接続されている。接続部55A1の第2端は、開放端部55A2の第1端に電気的に接続されている。
第1開放部55Aの開放端部55A2は、線状導体55の一方の端部(縁端部)である。線状導体55の第1開放部55Aの開放端部55A2は、線状導体53の第2開放部53Bの開放端部53B2と一直線状に並んで、X軸方向に延びている。線状導体55の第1開放部55Aの開放端部55A2は、線状導体53の第2開放部53Bの開放端部53B2とX軸方向で離間している。開放端部55A2の第1端部分は、開放端部55A2の第2端部分に比べて幅寸法が小さくなっている。このため、開放端部55A2は、X軸方向の途中位置で幅寸法がステップ状に変化している。開放端部55A2の第2端は、電気的に開放されている。
第1開放部55Aの長さ寸法は、線状導体55の半分の長さ寸法よりも長くなっている。このため、第1開放部55Aの長さ寸法は、第2開放部55Bの長さ寸法よりも長くなっている。線状導体55の第1開放部55Aは、1/4波長のオープンスタブになっている。
線状導体55の第2開放部55Bは、平面視でL字状に形成されている。第2開放部55Bは、接続部55B1と開放端部55B2とを有している。第2開放部55Bの接続部55B1は、開放端部55B2に比べて幅寸法が小さくなっている。第2開放部55Bの接続部55B1は、第1開放部55Aの接続部55A1と一直線状に並んで、Y軸方向に延びている。接続部55B1の第1端は、接続部55A1に電気的に接続されている。接続部55B1の第2端は、開放端部55B2の第1端に電気的に接続されている。
第2開放部55Bの開放端部55B2は、線状導体55の他方の端部(縁端部)である。線状導体55の第2開放部55Bの開放端部55B2は、線状導体53の第1開放部53Aの開放端部53A2と一直線状に並んで、X軸方向に延びている。開放端部55B2の第2端は、電気的に開放されている。
出力側の伝送線路13は、線状導体55の途中位置に電気的に接続されている。具体的には、伝送線路13は、第1開放部55Aと第2開放部55Bとの接続位置で、線状導体55に接続されている。出力段の共振器54は、多層基板2に設けられた出力側の伝送線路13に直接的に結合されている。
浮き電極16は、入力段の共振器52と出力段の共振器54とを飛越し結合させる飛越し結合電極である。図19および図20に示すように、浮き電極16は、線状導体53の開放端部53A2と線状導体55の開放端部55B2との間に配置されている。浮き電極16と線状導体53,55は、多層基板2の同じ層に配置されている。
浮き電極17は、入力段の共振器52と出力段の共振器54とを飛越し結合させる飛越し結合電極である。図19および図20に示すように、浮き電極17は、線状導体53の開放端部53B2と線状導体55の開放端部55A2との間に配置されている。浮き電極17と線状導体53,55は、多層基板2の同じ層に配置されている。
中間段の共振器56は、入力段の共振器52と出力段の共振器54との間に位置して、多層基板2に設けられている。共振器56は、多層基板2の内部に設けられている(図19~図21参照)。共振器56は、直線状の線状導体57によって形成されている。図21に示すように、線状導体57は、絶縁層4と絶縁層5との間に位置して、細長い帯状の導体パターンによって形成されている。このため、3つの共振器52,54,56は、多層基板2の同じ層に配置されている。線状導体57の長さ寸法は、例えば共振周波数に対応した多層基板2内の波長の1/2に設定されている。線状導体57の両端に位置する第1端部57Aおよび第2端部57Bは、開放されている。このため、線状導体57は、両端が開放された半波長共振器を構成している。
図19および図20に示すように、第1端部57Aと第2端部57Bとの間には、中間部57Cが形成されている。第1端部57Aと第2端部57Bの幅寸法は、中間部57Cの幅寸法に比べて大きくなっている。このため、線状導体57は、X軸方向の途中位置で幅寸法がステップ状に変化している。これにより、共振器56は、特性インピーダンスが異なる部分を有するステップインピーダンス共振器になっている。
浮き電極58は、線状導体53,55,57と異なる層に位置して、多層基板2に設けられている。図21に示すように、浮き電極58は、絶縁層3と絶縁層4との間に位置して、Y軸方向に延びる帯状に形成されている。このため、浮き電極58と線状導体53,57との間には、絶縁層4が挟まれている。図19および図20に示すように、浮き電極58は、線状導体53の開放端部53B2および線状導体57の第1端部57Aと対面する位置に配置されている。浮き電極58は、Y軸方向に延びて、線状導体57を横切ると共に、第2開放部53Bの開放端部53B2を横切っている。図19および図21に示すように、浮き電極58と線状導体53,57とは、Z軸方向で離間している。これにより、線状導体57の第1端部57Aは、線状導体53の開放端部53B2と容量結合する。
浮き電極59は、線状導体53,55,57と異なる層に位置して、多層基板2に設けられている。図21に示すように、浮き電極59は、絶縁層3と絶縁層4との間に位置して、Y軸方向に延びる帯状に形成されている。このため、浮き電極59と線状導体55,57との間には、絶縁層4が挟まれている。図19および図20に示すように、浮き電極59は、線状導体55の開放端部55B2および線状導体57の第2端部57Bと対面する位置に配置されている。浮き電極59は、Y軸方向に延びて、線状導体57を横切ると共に、第2開放部55Bの開放端部55B2を横切っている。図19および図21に示すように、浮き電極59と線状導体55,57とは、Z軸方向で離間している。これにより、線状導体57の第2端部57Bは、線状導体55の開放端部55B2と容量結合する。
かくして、このように構成された第5の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様に、フィルタ51は、共振器52,54,56の形状を複雑化させることなく、通過帯域の低周波側に複数の減衰極を形成し、所望の減衰量を得ることができる。また、共振器52,54,56はステップインピーダンス共振器であるから、高次モード共振を制御することができる。この結果、図22に示すように、例えば共振器52,54,56の基本共振周波数である30GHz付近に比べて、2倍の高次共振周波数(60GHz)付近で、減衰量を増加させることができる。これにより、フィルタ51は、広帯域な減衰特性を得ることができる。
なお、第5の実施形態では、第1の実施形態によるフィルタ1と同様に、通過帯域の低周波側に複数の減衰極を形成した。本発明はこれに限らず、第2の実施形態によるフィルタ21と同様に、通過帯域の高周波側に複数の減衰極を形成してもよい。
次に、図23を用いて、本発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態の特徴は、フィルタを用いて通信装置を構成したことにある。なお、第6の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
第6の実施形態による通信装置61は、アンテナ62、アンテナ共用器63、低雑音増幅器64、電力増幅器65、送信回路66、受信回路67を備えている。送信回路66は、電力増幅器65およびアンテナ共用器63を介して、アンテナ62に接続されている。受信回路67は、低雑音増幅器64およびアンテナ共用器63を介して、アンテナ62に接続されている。
アンテナ共用器63は、切替スイッチ63Aと、2つの帯域通過フィルタ63B,63Cとを備えている。切替スイッチ63Aは、アンテナ62に対して、送信回路66と受信回路67とのうちいずれか一方を選択的に接続する。切替スイッチ63Aは、通信装置61の送信状態および受信状態を選択的に切り換える。受信側の帯域通過フィルタ63Bは、切替スイッチ63Aと低雑音増幅器64との間に接続されている。送信側の帯域通過フィルタ63Cは、切替スイッチ63Aと電力増幅器65との間に接続されている。帯域通過フィルタ63B,63Cは、例えば第1の実施形態によるフィルタ1によって構成されている。なお、帯域通過フィルタ63B,63Cは、第2ないし第5の実施形態によるフィルタ21,31,41,51によって構成されてもよい。
かくして、このように構成された第6の実施形態では、フィルタ63B,63Cは、例えば第1ないし第5の実施形態のいずれかのフィルタ1,21,31,41,51によって構成されている。このため、フィルタ63B,63Cは、通過帯域の低周波側または高周波側に複数の減衰極を形成し、所望の減衰量を得ることができる。
次に、図24および図25を用いて、本発明の第7の実施形態について説明する。第7の実施形態の特徴は、フィルタを用いてアンテナモジュールを構成したことにある。なお、第7の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
図24は、第7の実施形態に係るアンテナモジュール71の斜視図である。アンテナモジュール71は、例えば28GHz、39GHz、60GHzのようなミリ波を利用した通信に用いられる。アンテナモジュール71の厚さ方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直かつ互いに直交する方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向として説明し、Z軸プラス側をアンテナモジュール71の上面側として説明する。しかし、実際の使用態様においては、アンテナモジュール71の厚さ方向が上下方向とはならない場合もあるため、アンテナモジュール71の上面側は上方向に限らない。
図24に示すアンテナモジュール71は、送信時および受信時のいずれにおいても2種類の偏波に対応することができ、例えば全二重通信に用いられる。本実施形態では、アンテナモジュール71は、2種類の偏波として、X軸方向の偏波およびY軸方向の偏波に対応する。つまり、本実施形態に係るアンテナモジュール71は、直交する2つの偏波に対応する。なお、アンテナモジュール71は、これに限らず、直交とは異なる角度(例えば、75°または60°等)をなす2つの偏波に対応してもよい。
アンテナモジュール71は、多層基板72と、多層基板72に形成されたパッチアンテナ73、第1フィルタ82、第2フィルタ83と、高周波回路(RFIC)76とを備える。
多層基板72は、互いに背向する第1主面72Aおよび第2主面72Bを有する。第1主面72Aは、多層基板72のZ軸プラス側の主面であり、第2主面72Bは、多層基板72のZ軸マイナス側の主面である。多層基板72は、第1主面72Aと第2主面72Bとの間に誘電体材料が充填された構造を有する。図24および図25では、誘電体材料を透明にし、多層基板72の内部を可視化し、多層基板72の外形を二点鎖線で示している。多層基板72としては、低温同時焼成セラミックス多層基板、または、プリント基板等が用いられる。また、多層基板72に形成される各種導体としては、アルミニウム、銅、金、銀、または、これらの合金を主成分とする金属が用いられる。
図24および図25に示すように、パッチアンテナ73は、多層基板72の第1主面側に形成され、多層基板72の主面と平行に設けられた薄膜の導体パターンからなる放射電極74とグランド電極75とから構成される。例えば、第1主面72Aにアンテナ素子としての放射電極74が設けられている。多層基板72の内部には、放射電極74よりも第2主面側となる位置にグランド電極75が形成されている。放射電極74は、多層基板72の平面視において、例えば矩形形状を有するが、円形または多角形形状等であってもよい。グランド電極75は、グランド電位に設定され、放射電極74の接地導体としての機能を果たす。また、放射電極74は、酸化等の防止のために多層基板72の内層に形成されていてもよいし、放射電極74上に保護膜が形成されてもよい。また、放射電極74は、給電導体、および、給電導体より上方に配置された無給電導体で構成されていてもよい。
RFIC76は、多層基板72の第2主面側に形成され、パッチアンテナ73によって送信される送信信号または受信される受信信号を信号処理するRF信号処理回路を構成する。RFIC76は、パッチアンテナ73と接続される給電端子77,78を有する。また、多層基板72の第2主面側には、グランド電極79が形成されており、例えば、RFIC76のグランド端子(図示せず)がグランド電極79に接続される。なお、本実施形態では、RFIC76は、多層基板72の第2主面72Bに設けられているが、多層基板72に内蔵されていてもよい。
パッチアンテナ73は、RFIC76との間で高周波信号が伝達される第1給電点P1および第2給電点P2を有する。第1給電点P1および第2給電点P2は、放射電極74における異なる位置に設けられる。第1給電点P1によって形成される偏波の方向および第2給電点P2によって形成される偏波の方向は、互いに異なる。例えば、第1給電点P1によってX軸方向の偏波が形成され、第2給電点P2によってY軸方向の偏波が形成される。これにより、1つのパッチアンテナ73によって、2つの偏波に対応することが可能となる。
第1給電点P1は、第1フィルタ82を経由してRFIC76と電気的に接続されている。第2給電点P2は、第2フィルタ83を経由してRFIC76と電気的に接続されている。図24に示すように、第1給電点P1は、ビア導体80A、第1フィルタ82およびビア導体80Bを介してRFIC76が有する給電端子77に接続されている。第2給電点P2は、ビア導体81A、第2フィルタ83およびビア導体81Bを介してRFIC76が有する給電端子78に接続される。
グランド電極75は、多層基板72を積層方向に見た場合(多層基板72を平面視した場合)に、例えば、ビア導体80A,81Aが設けられた部分を除き、多層基板72の略全体に亘って設けられている。図24に示すように、グランド電極75は、ビア導体80A,81Aが内部を通過する開口75Aを有する。また、グランド電極79は、多層基板72を積層方向に見た場合に、例えば、ビア導体80B,81Bが設けられた部分を除き、多層基板72の略全体に亘って設けられている。グランド電極79は、ビア導体80B,81Bが内部を通過する開口79Aを有する。
第1フィルタ82および第2フィルタ83は、例えば第1の実施形態によるフィルタ1によって構成されている。なお、第1フィルタ82および第2フィルタ83は、第2ないし第5の実施形態によるフィルタ21,31,41,51によって構成されてもよい。第1フィルタ82と第2フィルタ83とは、一体に形成されず、別体に形成された異なるフィルタである。図25に示すように、多層基板72の第1主面72Aから、放射電極74(アンテナ素子)、第1フィルタ82および第2フィルタ83、RFIC76が順次積層されている。第1フィルタ82および第2フィルタ83は、放射電極74とRFIC76とを電気的に接続する経路の途中に設けられている。
第1フィルタ82および第2フィルタ83の通過帯域は、少なくとも一部が重複している。例えば、第1フィルタ82と第2フィルタ83とは、互いに略同じフィルタ特性を有している。具体的には、第1フィルタ82および第2フィルタ83の通過帯域は、互いに略同じとなっており、第1フィルタ82および第2フィルタ83の減衰帯域は、互いに略同じとなっている。例えば、第1給電点P1および第2給電点P2には、それぞれ周波数帯域が同じ高周波信号が給電されるため、それぞれの高周波信号に同じフィルタリング処理がなされる。
パッチアンテナ73とRFIC76との間に設けられた第1フィルタ82および第2フィルタ83は、パッチアンテナ73で利用される周波数帯域の高周波信号を通過させ、他の周波数帯域の高周波信号(不要波)を減衰させる機能を有する。従って、不要波として高調波がパッチアンテナ73から出力されないように、高調波を減衰させることができる。また、不要波としてパッチアンテナ73が受信した妨害波が、RFIC76が有するLNA(低雑音増幅器)に入力されてLNAが飽和してしまわないように、妨害波を減衰させることができる。このように、2つの給電点のそれぞれについて、送受信され得る不要波を同じように減衰させることができる。よって、アンテナモジュール71を、複数の信号経路を通過する信号を同じように信号処理するシステムであるMIMOシステムに適用することができる。
かくして、このように構成された第7の実施形態では、第1フィルタ82および第2フィルタ83は、例えば第1ないし第5の実施形態のいずれかのフィルタ1,21,31,41,51によって構成されている。このため、第1フィルタ82および第2フィルタ83は、共振器の形状を複雑化させることなく、所望の減衰量を得ることができる。従って、例えばレイアウト変更などの設計変更によって減衰量が変化するときでも、減衰量の調整が容易になる。この結果、例えば放射電極74と第1フィルタ82および第2フィルタ83とが別基板で形成された場合であって、これらの放射電極74と第1フィルタ82および第2フィルタ83とを接着またははんだ実装により接続させたときでも、所望の減衰量を確保することができる。なお、グランド電極75,79は、いずれか一方を省いてもよく、両方を省いてもよい。
次に、図26および図27を用いて、本発明の第8の実施形態について説明する。第8の実施形態の特徴は、フィルタを用いてアンテナモジュールを構成し、フィルタの入力側および出力側の伝送線路は、高周波回路の外部端子に電気的に接続されていることにある。なお、第8の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
図26は、本実施形態に係るアンテナモジュール91が適用される通信装置130の一例を示すブロック図である。通信装置130は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット等のような携帯端末、または通信機能を備えたパーソナルコンピュータ等である。
通信装置130は、アンテナモジュール91と、ベースバンド信号処理回路を構成するベースバンドIC131(以下、BBIC131という)とを備えている。アンテナモジュール91は、アレイアンテナ107と、給電回路の一例であるRFIC111と、を備えている。通信装置130は、BBIC131からアンテナモジュール91へ伝達された信号を高周波信号にアップコンバートしてアレイアンテナ107に放射すると共に、アレイアンテナ107で受信した高周波信号をダウンロードしてBBIC131にて信号を処理する。
図27は、第8の実施形態に係るアンテナモジュール91の側面透視図である。図27では、誘電体材料を透明にし、多層基板92の内部を可視化し、多層基板92の外形を二点鎖線で示している。
図27は、多層基板92の一部分を示しており、実際には、アンテナモジュール91は、2つのパッチアンテナ101,102以外にも多くのパッチアンテナを備え、Massive MIMOシステムに適用可能となっている。
パッチアンテナ101,102は、多層基板92の第1主面側に形成されている。パッチアンテナ101は、多層基板92の第1主面92Aに形成された薄膜の導体パターンからなる放射電極103(アンテナ素子)と、多層基板92の内部に形成されたグランド電極105とから構成される。パッチアンテナ102は、多層基板92の第1主面92Aに形成された薄膜の導体パターンからなる放射電極104(アンテナ素子)と、多層基板92の内部に形成されたグランド電極105とから構成される。多層基板92の第2主面92Bには、グランド電極106が形成されている。グランド電極105,106は、多層基板92の略全体に亘って設けられている。
多層基板92の内部には、グランド電極105,106の間に位置して、フィルタ108が設けられている。フィルタ108は、RFIC111の外部に設けられている。フィルタ108は、例えば第1の実施形態によるフィルタ1によって構成されている。なお、フィルタ108は、第2ないし第5の実施形態によるフィルタ21,31,41,51によって構成されてもよい。また、フィルタ108は、パッチアンテナ101,102とスイッチ112A~112Dとの間に設けられてもよい。
多層基板92の第1主面92Aから、放射電極103,104(アンテナ素子)、フィルタ108、RFIC111が順次積層されている。フィルタ108の入力側の伝送線路10は、RFIC111(高周波回路)の外部端子121に電気的に接続されている。フィルタ108の出力側の伝送線路13は、RFIC111(高周波回路)の外部端子122に電気的に接続されている。
複数のパッチアンテナ101,102は、周期的にマトリクス状に配列され、アレイアンテナ107を構成している。アレイアンテナ107は、2次元状に直交配置(すなわち行列状に配置)されている。なお、アレイアンテナ107を構成するパッチアンテナの個数は、2個以上であればよい。また、複数のパッチアンテナの配置態様も上記に限らない。例えば、アレイアンテナ107は、1次元状に配置されたパッチアンテナによって構成されてもかまわないし、千鳥状に配置されたパッチアンテナによって構成されてもかまわない。
次に、RFIC111(高周波回路)の具体的な構成について説明する。なお、図26では、説明を容易にするために、アレイアンテナ107を構成する複数のパッチアンテナ101,102のうち、1つのパッチアンテナ101の第1給電点P11および第2給電点P12と、1つのパッチアンテナ102の第1給電点P21および第2給電点P22とに対応する構成のみ示され、他のパッチアンテナに対応する構成については省略されている。
図26に示すように、RFIC111(高周波回路)は、スイッチ112A~112D,114A~114D,118と、パワーアンプ113AT~113DTと、ローノイズアンプ113AR~113DRと、減衰器115A~115D、可変移相器116A~116Dと、信号合成/分波器117と、ミキサ119と、増幅回路120とを備えている。RFIC111は、BBIC131に接続されている。
スイッチ112A~112Dは、パッチアンテナ101の第1給電点P11および第2給電点P12と、パッチアンテナ102の第1給電点P21および第2給電点P22とに接続されている。
高周波信号RF11,RF12,RF21,RF22を送信する場合には、スイッチ112A~112D,114A~114Dがパワーアンプ113AT~113DT側へ切り替えられると共に、スイッチ118が増幅回路120の送信側アンプに接続される。高周波信号RF11,RF12,RF21,RF22を受信する場合には、スイッチ112A~112D,114A~114Dがローノイズアンプ113AR~113DR側へ切り替えられると共に、スイッチ118が増幅回路120の受信側アンプに接続される。
BBIC131から伝達された信号は、増幅回路120で増幅され、ミキサ119でアップコンバートされる。アップコンバートされた高周波信号RF11,RF12,RF21,RF22である送信信号は、信号合成/分波器117で4分波され、4つの信号経路を通過して、パッチアンテナ101の第1給電点P11および第2給電点P12と、パッチアンテナ102の第1給電点P21および第2給電点P22とに給電される。
パッチアンテナ101,102で受信された高周波信号RF11,RF12,RF21,RF22である受信信号は、それぞれ、異なる4つの信号経路を経由し、信号合成/分波器117で合波される。合波された受信信号はミキサ119でダウンコンバートされ、増幅回路120で増幅されてBBIC131へ伝達される。
RFIC111は、例えば、上記回路構成を含む1チップの集積回路部品として形成される。あるいは、RFIC111における各給電点P11,P12,P21,P22に対応する機器(スイッチ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、減衰器、可変移相器)については、対応する給電点P11,P12,P21,P22毎に1チップの集積回路部品として形成されていてもよい。
RFIC111は、外部端子121,122を備えている。外部端子121,122は、信号合成/分波器117とスイッチ118との間に設けられている。外部端子121,122は、多層基板92に設けられたビア導体93A,93Bを通じて、フィルタ108の伝送線路10,13に電気的に接続されている。これにより、信号合成/分波器117とスイッチ118との間には、フィルタ108が接続されている。
かくして、このように構成された第8の実施形態では、フィルタ108は、例えば第1ないし第5の実施形態のいずれかのフィルタ1,21,31,41,51によって構成されている。このため、フィルタ108は、共振器の形状を複雑化させることなく、所望の減衰量を得ることができる。なお、グランド電極105,106は、いずれか一方を省いてもよく、両方を省いてもよい。
前記第1ないし第5の実施形態では、多層基板2の2つの主面にグランド電極6,7を設ける構成とした。本発明はこれに限らず、グランド電極6,7は、いずれか一方を省いてもよく、両方を省いてもよい。
前記第1の実施形態では、線状導体9,12は、平面視でC字形状に形成されている。線状導体9,12のC字形状は、厳格なC字形状である必要はない。線状導体9,12のC字形状は、例えばその一部に直線部分や曲線部分となった形状も含んでいる。また、C字形状の線状導体9と伝送線路10との接続箇所は、C字形状の線状導体9の全長の中点以外であればどこでもよい。同様に、C字形状の線状導体12と伝送線路13との接続箇所は、C字形状の線状導体12の全長の中点以外であればどこでもよい。これらの構成は、第2ないし第5の実施形態にも適用可能である。
前記第1の実施形態では、複数の共振器8,11,14は、回転対称な形状に形成されている。本発明はこれに限らず、複数の共振器は、例えば入力側と出力側とで、線対称(左右対称)な形状に形成されてもよい。この構成は、第2ないし第5の実施形態にも適用可能である。
前記第1の実施形態では、入力段の共振器8と出力段の共振器11との間に、1つの中間段の共振器14が設けられている。本発明はこれに限らず、図28に示す第4の変形例によるフィルタ141のように、入力段の共振器8と出力段の共振器11との間に、複数段(例えば3段)の共振器142,143,144が設けられる構成としてもよい。この場合、入力段の共振器8は、次段の共振器142に結合される。共振器142は、次段の共振器143に結合される。共振器143は、次段の共振器144に結合される。共振器144は、次段となる出力段の共振器11に結合される。なお、中間段の共振器の段数は、3段に限らず、2段でもよく、4段以上でもよい。第4の変形例の構成は、第2ないし第5の実施形態にも適用可能である。
前記各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
以上説明した実施形態に基づくフィルタ、アンテナモジュールおよび通信装置として、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、誘電体基板と、前記誘電体基板に設けられ、次段と結合する少なくとも3段以上の共振器と、を備えたフィルタであって、入力段の前記共振器は、平面視でC字形状の線状導体によって形成され、前記誘電体基板に設けられた入力側の伝送線路に直接的に結合され、出力段の前記共振器は、平面視でC字形状の線状導体によって形成され、前記誘電体基板に設けられた出力側の伝送線路に直接的に結合され、前記誘電体基板には、入力段の前記共振器の線状導体の端部と出力段の前記共振器の線状導体の端部とを結合させる飛越し結合電極が設けられていることを特徴としている。
このように構成したことにより、次段と結合する3段以上の共振器は、帯域通過フィルタを構成し、3段以上の共振器の共振周波数付近の帯域の信号を通過させる。また、入力段の共振器は、オープンスタブを有している。出力段の共振器は、オープンスタブを有している。このため、これらのオープンスタブは、通過帯域の低周波側または高周波側に減衰極を形成する。
これに加え、飛越し結合電極は、入力段の共振器の線状導体の端部と出力段の共振器の線状導体の端部とを結合させる。これにより、オープンスタブの減衰極の近傍に位置して、追加の減衰極を形成することができる。このとき、飛越し結合電極の大きさ、形状、位置に応じて、入力段の共振器の線状導体と、出力段の共振器の線状導体との結合強度を容易に変更することができる。この結果、3段以上の共振器の形状を複雑化させることなく、所望の減衰量を得ることができる。
第2の態様としては、第1の態様において、前記誘電体基板は、多層基板であり、入力段の前記共振器の線状導体および出力段の前記共振器の線状導体は、前記多層基板の同じ層に配置され、前記多層基板には、入力段の前記共振器の線状導体および出力段の前記共振器の線状導体と異なる層に位置して、第1端部が入力段の前記共振器と容量結合し、第2端部が出力段の前記共振器と容量結合する中間段の前記共振器が設けられていることを特徴としている。これにより、3段以上の共振器が結合して、帯域通過フィルタを構成することができる。
第3の態様としては、第1の態様において、前記誘電体基板は、多層基板であり、3段以上の前記共振器の線状導体は、前記多層基板の同じ層に配置され、前記多層基板には、前記共振器の線状導体と異なる層に位置して、隣り合う2つの前記共振器を容量結合させる浮き電極が設けられていることを特徴としている。これにより、3段以上の共振器が結合して、帯域通過フィルタを構成することができる。
第4の態様としては、第3の態様において、前記飛越し結合電極は、入力段の前記共振器の線状導体および出力段の前記共振器の線状導体と異なる層に位置して、入力段の前記共振器と出力段の前記共振器とを容量結合させる他の浮き電極であることを特徴としている。これにより、入力段の共振器の線状導体の端部と出力段の共振器の線状導体の端部とを飛越し結合させることができる。
第5の態様としては、第1または第2の態様において、前記誘電体基板の2つの主面には、グランド電極が設けられ、3段以上の前記共振器は、前記誘電体基板の内部に設けられていることを特徴としている。これにより、3段以上の共振器は、2つのグランド電極に挟まれるため、外部の電磁波からの干渉を抑制できると共に、外部への電磁波の放射を抑制することができる。
第6の態様としては、第1ないし第3のいずれかの態様において、3段以上の前記共振器は、前記誘電体基板を平面視したときに、回転対称となる形状に形成されたことを特徴としている。このため、3段以上の共振器の設計が容易であり、フィルタの量産性を高めることができる。
第7の態様としては、第1ないし第6のいずれかの態様において、前記共振器は、ステップインピーダンス共振器であることを特徴としている。これにより、高次モード共振を制御することができる。このため、高次共振周波数付近で、減衰量を増加させることができるから、広帯域な減衰特性を得ることができる。
第8の態様としては、第1ないし第7のいずれかの態様において、入力段の前記共振器と出力段の前記共振器との間には、複数段の前記共振器が設けられていることを特徴としている。
第9の態様としては、第1ないし第8のいずれかの態様のフィルタを備えたアンテナモジュールであって、前記誘電体基板の一方の主面から、アンテナ素子、前記フィルタ、高周波回路が順次積層され、前記フィルタは、前記アンテナ素子と前記高周波回路とを電気的に接続する経路の途中に設けられていることを特徴としている。
第10の態様としては、第1ないし第8のいずれかの態様のフィルタを備えたアンテナモジュールは、前記誘電体基板の一方の主面から、アンテナ素子、前記フィルタ、高周波回路が順次積層され、前記フィルタの入力側および出力側の前記伝送線路は、前記高周波回路の外部端子に電気的に接続されていることを特徴としている。
第9、第10の態様によれば、第1ないし第8のいずれかの態様のフィルタを用いることによって、例えばレイアウト変更などの設計変更により生じる減衰量の調整が容易になる。このため、アンテナ素子とフィルタが別基板で形成された場合であって、これらのアンテナ素子とフィルタを接着またははんだ実装により接続させたときでも、所望の減衰量を確保することができる。
第11の態様としては、通信装置は、第1ないし第8のいずれかの態様のフィルタを備えている。