JP5607437B2 - 炭素膜コーティングを施したポリカーボネート樹脂からなる中空容器 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素膜コーティングを施したポリカーボネート樹脂からなる中空容器に関する。詳しくは特定の粘度平均分子量および分岐率のポリカーボネート樹脂からなる中空容器に関する。さらに詳しくはビスフェノールA(以下BPAと略称することがある)の溶出量が特定値以下である中空容器に関する。
従来から調味料、油、ジュース、炭酸飲料、ビール、日本酒などの液体用食品、化粧品、および洗剤、麻酔薬などの保管のための中空容器、人工透析機ケース、三方活栓などの医療機器類における中空容器の素材としてプラスチックが用いられている。またその素材としては、充填内容物の種類およびその目的に応じて種々のプラスチックが採用されており、これらのプラスチック素材のうちではポリカーボネート樹脂がその耐衝撃性、耐熱性、透明性および寸法精度に優れており様々な中空容器に使用されている。
しかしながら、ポリカーボネート樹脂から溶出されるBPAが内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質として公表されたのを期に、ポリカーボネート樹脂を哺乳瓶などの容器使用に対して制限する動きも一部地域で出始めている。従って、耐衝撃性、耐熱性、透明性および寸法精度に優れるポリカーボネート樹脂を用いて、BPAが溶出しない中空容器が求められている。
ポリカーボネート樹脂の容器としては、種々の提案がされている。例えば特定の溶融粘度を有する分岐状ポリカーボネート樹脂容器(特許文献1参照)、およびH−NMRスペクトル中の特定のケミカルシフト範囲に生じるシグナル強度と粘度平均分子量が特定範囲にあるポリカーボネート樹脂ボトル(特許文献2参照)、特定の構造粘性指数と残存二価フェノール量を有するポリカーボネート樹脂中空成形容器(特許文献3参照)などが提案されている。
しかしながら、上記提案のポリカーボネート樹脂容器は、ポリカーボネート樹脂中に残存する原料モノマー由来のBPAの溶出や、ポリカーボネート樹脂の加水分解により発生するBPAの溶出およびその防止策については記載がなく、安全性が十分とは言えない。
耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れるが、BPA溶出の懸念があるポリカーボネート樹脂とBPA溶出の懸念がないポリエステルを組み合せた方法も提案されている。例えば、ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレートを溶融混練によりアロイ化したボトル(特許文献4、5参照)、ポリカーボネート樹脂層とポリエチレンナフタレートからなる多層ボトル(特許文献6参照)が知られている。しかしながらこれらの方法では、ポリエステルを含むために耐衝撃性に劣り実用的でない。
プラスチック容器のガスバリヤ性を向上するために、プラスチック容器の表面に薄膜をコーティングする方法が知られている。例えば、容器の内側に炭素膜をコーティングするプラスチック容器の製造方法(特許文献7参照)、第1層に炭素膜、第2層に酸化珪素膜をコーティングさせるプラスチック容器(特許文献8参照)がある。しかし、ガスバリア性に優れる記載はあるものの、プラスチックからの溶出される物質に関しては何ら記載がない。ボトル内面にセラミックの薄膜がコーティングされているリサイクル材料を含むプラスチックボトルがある(特許文献9参照)。プラスチックから溶出される物質について低減されると記載はあるものの、溶出される物質はリサイクル材料由来のものであり、バージンプラスチックそのものからではなく、ポリカーボネート樹脂から溶出される極微量のBPAとは大きくかけ離れている。
以上の点より、耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れ、BPA溶出性に全く問題のないプラスチック中空容器が強く求められている。
特表2003−509551号公報 特開2004−18713号公報 特開平11−302370号公報 特開2000−301596号公報 特開平9−176464号公報 特開平11−310216号公報 特許第2788412号公報 特開2007−168882号公報 特開2000−238784号公報
本発明の目的は、耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れ、BPA溶出性に全く問題のない炭素膜コーティングを施したポリカーボネート樹脂からなる中空容器を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、特定範囲の粘度平均分子量のポリカーボネート樹脂と特定範囲の厚みのDLCコーティングからなる、炭素膜コーティングを施したポリカーボネート樹脂からなる中空容器により、耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れ、BPA溶出性が低減された中空容器が得られること、さらに好適には、特定範囲の分岐率を有するポリカーボネート樹脂を用いることにより、耐衝撃性に特に優れ実用性の高い炭素膜コーティングを施したポリカーボネート樹脂からなる中空容器が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、(1)粘度平均分子量が16,000〜30,000であるポリカーボネート樹脂(A成分)からなる中空容器の内面にDiamond Like Carbon(以下、DLCと略称することがある)コーティングを施した中空容器であって、該中空容器に施したDLCコーティング厚みが0.05〜0.5μmであり、かつ該中空容器1cmからのビスフェノールAの溶出量が0.01μg/cm以下であることを特徴とする中空容器が提供される。
ここでいうビスフェノールAの溶出量とは、中空容器1cmから水へ溶出するビスフェノールAの量(μg/cm)で下記式で表される。
ビスフェノールA溶出量(μg/cm)=X×Z/Y
[Xは中空容器に入れた水の量(ml)、Yは中空容器内面と水の接触表面積(cm)、Zは水を入れた中空容器を70℃で30日間放置後、高速液体クロマトグラフ法によって測定した水に含まれるBPA量(μg/ml)を表す。]
本発明のより好適な態様の一つは、(2)A成分の分岐率が1.1mol%を超え1.5mol%以下であることを特徴とする上記構成(1)に記載の中空容器である。
以下、更に本発明の詳細について説明する。
<A成分:ポリカーボネート樹脂>
本発明のA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂(A−1成分)および/または直鎖状ポリカーボネート樹脂(A−2成分)であり、その粘度平均分子量は、16,000〜30,000の範囲であり、18,000〜28,000の範囲がより好ましく、19,000〜26,000の範囲が最も好ましい。分子量が30,000を越えると溶融張力が高すぎて成形性に劣り、中空容器の偏肉性が悪化し耐衝撃性に劣るようになる。分子量が16,000未満であると耐衝撃性が不十分となり、また溶融張力が低くすぎて押出成形やブロー成形が困難になる。さらに、上記分子量範囲が満たされない場合には、耐衝撃性に劣るためDLCコーティングを施した場合、膜亀裂やボトル破裂を生じる。また、本発明のA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、分子量が前述の分子量範囲を満たすのであれば、ポリカーボネート樹脂の構造は、分岐構造であっても直鎖構造であってもよく、これら1種以上を用いることができる。なお、本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
本発明のA成分として使用される特に好ましいポリカーボネート樹脂は、分岐率が1.1mol%を超え1.5mol%以下の分岐ポリカーボネート樹脂である。該範囲の分岐率であれば、より優れたドローダウン性を有するため、中空容器の偏肉性が良好となり耐衝撃性に優れるようになる。該ポリカーボネート樹脂は、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂(A−1成分)あるいはA−1成分と直鎖状ポリカーボネート樹脂(A−2成分)の混合物である。分岐率が低いと、高度な分岐特性が得られず溶融張力が不十分で、ドローダウンを生じ易くブロー成形が容易に行えなくなる場合があり好ましくない。一方、分岐率が高いとポリマーが架橋し、ゲルが発生し、ポリマーの耐衝撃性が低下する場合がある。なお、分岐率は樹脂全体に含まれる製造に用いた二価フェノール由来の構造単位の総モル数に対する分岐剤由来の構造単位のモル数[(分岐剤由来の構造単位のモル数/二価フェノール由来の構造単位の総モル数)×100(mol%)]を意味し、かかる分岐率はH−NMR測定により実測することができる。
中空容器等のブロー成形において、より優れたドローダウン性を付与する観点からは、A成分がA−1成分を20重量%〜100重量%含むことが好ましく、70重量%〜100重量%含むことがより好ましく、100重量%含むことがさらに好ましい。
(A−1成分:分岐構造を有するポリカーボネート樹脂)
本発明のA−1成分である分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は、二価フェノール、分岐剤、一価フェノール類およびホスゲンを用いて有機溶媒の存在下で行う界面重合反応法、または二価フェノール、分岐剤およびジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させる溶融エステル交換法によって得られ、界面重合反応法が一般的である。
本発明の樹脂組成物の製造には二価フェノールとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)が使用される。なお、ビスフェノールA以外の二価フェノールをビスフェノールAと併用することもできる。このビスフェノールA以外の二価フェノールとしてはハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。
分岐剤(三価以上のフェノール)の代表的な例は、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノ−ル、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリスフェノール、ビス(2,4−ジヒドロキシルフェニル)ケトン、フロログルシン、フロログルシド、イサンチンビスフェノール、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、トリメリト酸、ピロメリト酸、が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤(一価フェノール)が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(1)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
Figure 0005607437
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル基置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類も示すことができる。これらのなかでは、下記一般式(2)および(3)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
Figure 0005607437
Figure 0005607437
(式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
かかる一般式(2)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
また、一般式(3)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
これらの中でも、分岐剤が1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンであり、一価フェノールがp−tert−ブチルフェノールであることが好ましい。
本発明の分岐状ポリカーボネート樹脂は、好適には下記の方法で製造される。すなわち、ビスフェノールAを含むニ価フェノールおよび分岐剤を溶解したアルカリ水溶液に有機溶媒の存在下でホスゲンを吹き込み反応させて、ポリカーボネートオリゴマーを得、これに一価フェノール類を投入し乳化させた後、無攪拌下で重合させることを特徴とする方法である。
また、反応促進のために反応触媒として、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を使用することも出来る。反応触媒は二価フェノールに対して0.002モル%以下が好ましく、0.001モル%以下がより好ましい。特に無触媒で上記反応を行うことが好ましい。0.002モル%を越える場合は分岐剤量に対し溶融張力が高くなりすぎたり、ゲルが生成したりする。また触媒がクロロホーメート基と反応して熱的に不安定なウレタン結合が多くなると共に、触媒が残存することにより分岐状ポリカーボネート樹脂中の全N含有量が増大し、耐衝撃性、透明性、耐熱性が低下するので好ましくない。よって上記反応を無触媒で行うことが特に好ましい。その際、反応温度は通常0〜40℃が好ましく、さらに15〜38℃が好ましい。反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9.0以上に保つのが好ましく、11.0〜13.8がさらに好ましい。
上記の界面重合反応する際に一価フェノール類を投入後に乳化させる方法としては特に制限はないが、撹拌装置で撹拌する方法、またはアルカリ水溶液を添加する方法等が挙げられ、撹拌装置としては、パドル、プロペラ、タービンまたはカイ型翼等の単純な撹拌装置、ホモジナイザー、ミキサー、ホモミキサー等の高速撹拌機、スタティックミキサー、コロイドミル、オリフィスミキサー、フロージェットミキサー、超音波乳化装置等がある。なかでも無触媒で重合する方法においてはホモミキサー、スタティックミキサー等が好ましく用いられる。次いで、該分岐状ポリカーボネート樹脂有機溶媒溶液を洗浄、造粒、乾燥し、本発明の分岐状ポリカーボネート樹脂(パウダー)を得ることができる。さらに該パウダーを溶融押出してペレット化して本発明の分岐状ポリカーボネート樹脂(ペレット)が得られる。洗浄、造粒、乾燥などは特に制限はなく公知の方法が採用できる。
また、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂中の全Cl含有量を低下させるには、反応時溶媒として使用されるジクロロメタン(塩化メチレン)、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素化炭化水素溶媒を除去することが必要である。例えば、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂パウダーやペレットの乾燥処理を十分に行なうことが挙げられる。
(A−2成分:直鎖状ポリカーボネート樹脂)
A−2成分である直鎖状ポリカーボネート樹脂は通常二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるものである。
本発明の樹脂組成物の製造には二価フェノールとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)が使用される。なお、ビスフェノールA以外の二価フェノールをビスフェノールAと併用することもできる。このビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられる。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたはビスフェノールAのジハロホルメート等が挙げられる。これらのうち、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートが工業的に有利である。
上記ビスフェノールAを含むニ価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤(一価フェノール)が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(1)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
Figure 0005607437
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル基置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類も示すことができる。これらのなかでは、下記一般式(2)および(3)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
Figure 0005607437
Figure 0005607437
(式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
かかる一般式(2)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
また、一般式(3)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.33×10〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1molに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えばビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、フェニルフェニルカーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。なかでも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
さらにかかる重合反応において触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。この失活剤の具体例としては、例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル;さらに、トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル‐スルホン化スチレン共重合体、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−ブチル、オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、デシルアンモニウムブチルサルフェート、デシルアンモニウムデシルサルフェート、ドデシルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルアンモニウムエチルサルフェート、ドデシルメチルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルジメチルアンモニウムテトラデシルサルフェート、テトラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラメチルアンモニウムヘキシルサルフェート、デシルトリメチルアンモニウムヘキサデシルサルフェート、テトラブチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラメチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの化合物を二種以上併用することもできる。
失活剤の中でもホスホニウム塩もしくはアンモニウム塩型のものが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1molに対して0.5〜50molの割合で用いるのが好ましく、また重合後のポリカーボネート樹脂に対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。
<その他の成分>
一方、本発明において使用されるポリカーボネート樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに光安定剤、着色剤、滑剤等の添加剤を加えることができる。
<中空容器>
中空容器の成形には、先ず第一の金型でプリフォームを射出成形し、ついで第二の金型で所定の温度に加熱しながら空気あるいは不活性ガスを用いてブロー成形する方法が好ましく採用される。プリフォームの加熱温度はポリカーボネート樹脂の二次転移温度より30℃以上高く、ポリカーボネート樹脂の融点程度までの範囲が好ましい。空気あるいは不活性ガスの吹き込み圧力は中空容器を偏肉なく均一に成形できる圧力であればよく、2〜8kgf/cm程度が好ましい。
本発明の中空容器としては、乳製品、清涼飲料水、水等のボトル、カップなどが挙げられ、好ましくは乳製品ボトル、清涼飲料水ボトル、水ボトルであり、特に好ましくは水ボトルである。かかる中空容器の厚みは、0.07〜10mmが好ましく、より好ましくは0.07〜5mmであり、さらに好ましくは0.1〜2mmである。厚みがこの範囲にあれば、中空容器が外部圧力により変形し難く、また製品全体の重量も重くなり過ぎず適当であるため好ましい。なお、ここでいう厚みは胴部の厚みであり、一般に口栓部や底部のコーナーではこの胴部の厚みより厚くなっている。
<炭素膜コーティング>
中空容器の内面にコーティングされるDLCは、iカーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜(a−C:H)とも呼ばれる硬質炭素膜のことで、sp結合を主体にしたアモルファスな炭素膜のことである。
DLCはPVD法(物理蒸着法)またはプラズマCVD法(化学蒸着法)により中空容器の内部にコーティングされる。なお、原料ガスとしては、常温で気体または液体の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、含酸素炭化水素類、含窒素炭化水素類が使用される。特に炭素数が6以上のn−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、シクロヘキサン等が好ましい。これらは単独で用いても良いが、2種以上の混合ガスとして使用するようにしても良い。さらに、これらのガスをアルゴンやヘリウムのような希ガスで希釈してもちいるようにしても良い。
DLC膜の膜厚は、0.05〜0.5μmの範囲であり、0.05〜0.2μmの範囲が好ましく、0.05〜0.1μmの範囲がより好ましい。膜厚が0.5μmを越えると膜形成時間が長くなり生産性が低下するばかりか、DLC膜の耐衝撃性が損なわれ、膜厚が0.05μm未満であるとBPAの溶出が多くなる。
耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れ、BPA溶出性に全く問題のない炭素膜コーティングを施したポリカーボネート樹脂からなる中空容器を提供することにより、特に水ボトル分野においては環境、健康、水不足の観点から極めて有用であり、その奏する工業的効果は極めて大である。
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
尚、評価としては以下の項目について実施した。
(1)樹脂組成物
(i)粘度平均分子量
実施例の各樹脂組成物0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃にて粘度平均分子量を測定した。
(ii)分岐率
実施例の各樹脂組成物0.02gを0.5mlの重クロロホルムに溶解し、30℃でH−NMR法により分岐率を測定した。
(2)中空容器
(i)BPA溶出量
実施例の各組成から得られたDLCコーティング済みの内容積1,900ミリリットルの中空容器に1,890ミリリットルのイオン交換水を充填して密栓し(水と中空容器内面との接触表面積:4,000cm)、熱風乾燥機中に70℃で30日間放置した後、高速液体クロマトグラフ法にて処理水に含まれるBPA量(μg/ml)を測定し、BPA溶出量を算出した。BPA溶出量は0.01μg/cm以下であることが必要である。
(ii)DLC膜厚
実施例の各組成から得られた中空容器の内面に、予めマジックインキでマスキングを行なってDLCコーティングを実施した後、ジエチルエーテルを用いてマスキングを除去し、Vecco社製、表面形状測定器DECTACK3によってDLC膜厚を測定した。
(iii)ボトル落下テスト
実施例の各組成から得られた内容積1,900ミリリットルの中空容器の内面に、予めマジックインキでマスキングを行なってDLCコーティングを実施した後、1,890ミリリットルの水を入れ、水が漏れないように密栓した後、低部を下に高さ4.5mから中空容器を自由落下させ、以下の評価を行なった。
(iii−1)ボトル破裂
自由落下させた後の中空容器のワレが無く水漏れが無い場合を○、ワレがあった場合を×として判定した。
(iii−2)DLC亀裂
自由落下させた後の中空容器から水を取り除き、23℃×50%RHの条件下で1週間自然乾燥した。その後、ジエチルエーテルを用いてマスキングを除去し、マスキングを除去した後のDLCコーティングを走査型顕微鏡を用いて倍率5000倍で観察し、ワレやヒビが無い場合を○、ヒビがある場合を△、ワレがあった場合を×として判定した。
(iv)ボトル偏肉性
実施例の各組成から得られたDLCコーティング済みの中空容器の低部から5cmと10cmの部分を各3箇所切り取り、ノギスを用いて厚み測定を行った上、その平均値を下記式に代入して偏肉度合いを算出し、ボトル偏肉性を評価した。
編肉性=低部から5cm部の厚み平均値/底部から10cm部の厚み平均値
○: 0.9以上〜1.1以下
△: 0.8以上〜0.9未満 もしくは 1.1を超え〜1.2以下
×: 0.8未満 もしくは 1.2を超える
[実施例1〜10及び比較例1〜6]
表1記載の各組成を樹脂温度320℃、金型温度110℃の条件で射出成形し、長さ30cmの試験管状のプリフォームを得た。この成形直後のプリフォームを、内側の加熱部材として棒状ヒーターを、外側の加熱部材としてリング状ヒーターを有する加熱ポットに投入し、加熱部材の温度を内側及び外側ともに310℃として15秒間処理し、直後にブロー圧力5kgf/cmの条件でブロー成形し、長さが約40cmである細口型の中空容器を成形した。
得られた中空容器の内面にダイヤモンドカーボンを主成分とするDLCをプラズマ助成式CVD法を用いて形成させた。用いた原料ガスはn−ヘキサンとアルゴンの混合ガスであり、各ガスの混合比は6:10であった。DLC膜厚はプラズマ発生時間を調整することで制御でき、表1に示す条件でDLCコーティングを行い、DLC膜厚を制御した。なお表1に示すDLCコーティング後の中空容器は全て透明であり、水を入れた後の透明性も特に問題は見られなかった。
表1における各成分の記号の意味は下記の通りである。
(A成分:ポリカーボネート樹脂)
(A−1成分:分岐構造を有するポリカーボネート樹脂)
A−1−1成分:粘度平均分子量24,900、分岐率1.46mol%の分岐構造を有するポリカーボネート樹脂
(A−1−1成分の製造方法)
温度計、攪拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水2340部、25%水酸化ナトリウム水溶液947部、ハイドロサルファイト0.7部を仕込み、攪拌下にビスフェノールA710部を溶解した(ビスフェノールA溶液)後、塩化メチレン2299部と48.5%水酸化ナトリウム水溶液112部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液59.5部(1.56mol%)を加えて、15〜25℃でホスゲン357部を約90分かけて吹き込みホスゲン化反応を行った。ホスゲン化終了後、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液243部と48.5%水酸化ナトリウム水溶液88部を加えて、攪拌を停止し、10分間静置分離後、攪拌を行い乳化させ5分後、ホモミキサー(特殊機化工業(株))で回転数1200rpm、バス回数35回で処理し高乳化ドープを得た。該高乳化ドープを重合槽(攪拌機付き)で、無攪拌条件下、温度35℃で3時間反応し重合を終了した。反応終了後、塩化メチレン5728部を加えて希釈した後、反応混合液から塩化メチレン相を分離し、分離した塩化メチレン相にイオン交換水5000部を加え攪拌混合した後、攪拌を停止し、水相と有機相を分離した。次に水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで水洗浄を繰返し精製ポリカーボネート樹脂溶液を得た。次に、該精製ポリカーボネート樹脂溶液をイオン交換水100Lを投入した1000Lニーダーで、液温75℃にて塩化メチレンを蒸発させて粉粒体を得た。該粉粒体25部と水75部を攪拌機付熱水処理槽に投入し、水温95℃で30分間攪拌混合した。次いで、該粉粒体と水の混合物を遠心分離機で分離して、塩化メチレン0.5重量%、水45重量%を含む粉粒体を得た。次に、この粉粒体を140℃にコントロールされているSUS316L製伝導受熱式溝型2軸攪拌連続乾燥機に50kg/hr(ポリカーボネート樹脂換算)で連続供給して、平均乾燥時間3時間の条件で乾燥して、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量24,900、分岐率1.46mol%であった。
A−1−2成分:粘度平均分子量20,100、分岐率1.46mol%の分岐構造を有するポリカーボネート樹脂
(A−1−2成分の製造方法)
ホスゲンを359部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液59.8部(1.57mol%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液280部に変更した以外は、A−1−1成分の製造方法と同様に行い、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量20,100、分岐率1.46mol%であった。
A−1−3成分:粘度平均分子量24,900、分岐率1.30mol%の分岐構造を有するポリカーボネート樹脂
(A−1−3成分の製造方法)
ホスゲンを356部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液53.4部(1.40mol%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液237部に変更した以外は、A−1−1成分の製造方法と同様に行い、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量24,900、分岐率1.30mol%であった。
A−1−4成分:粘度平均分子量25,000、分岐率1.05mol%の分岐構造を有するポリカーボネート樹脂
(A−1−4成分の製造方法)
ホスゲンを354部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液41.9部(1.10mol%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液223部に変更した以外は、A−1−1成分の製造方法と同様に行い、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量25,000、分岐率1.05mol%であった。
A−1−5成分:粘度平均分子量24,800、分岐率1.52mol%の分岐構造を有するポリカーボネート樹脂
(A−1−5成分の製造方法)
ホスゲンを357部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液61.0部(1.60mol%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液245部に変更した以外は、A−1−1成分の製造方法と同様に行い、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量24,800、分岐率1.52mol%であった。
A−1−6成分:粘度平均分子量18,000、分岐率1.37mol%の分岐構造を有するポリカーボネート樹脂
(A−1−6成分の製造方法)
ホスゲンを358部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液58.0部(1.42mol%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液280部に変更した以外は、A−1−1成分の製造方法と同様に行い、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量18,000、分岐率1.37mol%であった。
A−1−7成分:粘度平均分子量15,500、分岐率1.30mol%の分岐構造を有するポリカーボネート樹脂
(A−1−7成分の製造方法)
ホスゲンを356部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液54.0部(1.41mol%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液293部に変更した以外は、A−1−1成分の製造方法と同様に行い、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量15,500、分岐率1.30mol%であった。
A−1−8成分:粘度平均分子量31,000、分岐率1.46mol%の分岐構造を有するポリカーボネート樹脂
(A−1−8成分の製造方法)
ホスゲンを357部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液59.4部(1.56mol%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液204部に変更した以外は、A−1−1成分の製造方法と同様に行い、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を得た。このようにして得られた分岐構造を有するポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量31,000、分岐率1.46mol%であった。
(A−2成分:直鎖構造を有するポリカーボネート樹脂)
A−2−1成分:粘度平均分子量13,000の直鎖状ポリカーボネート樹脂(ホスゲン法で作成されたビスフェノールAおよび末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノールからなるポリカーボネート樹脂。)
A−2−2成分:粘度平均分子量は25,500の直鎖状ポリカーボネート樹脂(ホスゲン法で作成されたビスフェノールAおよび末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノールからなるポリカーボネート樹脂。)
A−2−3成分:粘度平均分子量は37,500の直鎖状ポリカーボネート樹脂(ホスゲン法で作成されたビスフェノールAおよび末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノールからなるポリカーボネート樹脂。)
Figure 0005607437
実施例1〜10で明らかなように、DLCコーティングの膜厚を本発明の範囲に限定することで優れたBPA溶出量抑制効果を発揮しつつ優れた耐衝撃性を具備していることがわかる。特に分岐率が1.1mol%を超え1.5mol%以下の範囲である実施例1〜5、実施例9〜10は偏肉が無い均一な肉厚を有しているため中空容器としての耐衝撃性が増し、特に優れた耐衝撃性を有していることがわかる。
比較例1はDLCコーティング膜厚が本発明の範囲より薄く、BPA溶出量が多いため好ましくない。比較例2はDLCコーティング膜厚が本発明の範囲より厚いためにDLCコーティングが硬くなり、落下衝撃によるDLCコーティングの亀裂が発生し、好ましくない。比較例3、5は粘度平均分子量が本発明の範囲より小さく、耐衝撃性が大幅に悪化し好ましくない。比較例4、6は粘度平均分子量が本発明を超えているために、ブロー成形時の加工性が悪化し、偏肉が大きくなるために中空容器としての耐衝撃性が劣るようになる。

Claims (1)

  1. (A)粘度平均分子量が16,000〜30,000であり、かつ分岐率が1.1mol%を超え1.5mol%以下であるポリカーボネート樹脂(A成分)からなる中空容器の内面にDiamond Like Carbon(DLC)コーティングを施した中空容器であって、該中空容器に施したDLCコーティング厚みが0.05〜0.5μmであり、かつ該中空容器1cmからのビスフェノールAの溶出量が0.01μg/cm以下であることを特徴とする中空容器。
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