JPWO2011096089A1 - ポリカーボネート樹脂およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明の目的は、生物起源物質の含有率が高く、耐吸湿性、耐熱性、熱安定性および成形加工性に優れ、表面エネルギーの高いポリカーボネート樹脂を提供することにある。本発明は、全主鎖中に、30〜100モル%の下記式(1)で表される単位を含み、(i)ASTM D6866 05に準拠して測定された生物起源物質含有率が25%〜100%、(ii)樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.2〜0.6、(iii)OH価が2.5×103以下、であるポリカーボネート樹脂およびその製造方法である。
Description
本発明は、ポリカーボネート樹脂に関する。さらに詳しくは生物起源物質である糖質から誘導される繰り返し単位を含有し、耐吸湿性、耐熱性、熱安定性および成形加工性に優れたポリカーボネート樹脂に関する。
ポリカーボネート樹脂は、芳香族もしくは脂肪族ジオキシ化合物を炭酸エステルにより連結させたポリマーであり、その中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)より得られるポリカーボネート樹脂(以下「PC−A」と称することがある)は、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、多くの分野に用いられている。
一般的にポリカーボネート樹脂は石油資源からの原料を用いて製造されるが、石油資源の枯渇が懸念されており、植物などの生物起源物質からの原料を用いたポリカーボネート樹脂が求められている。そこで、糖質から製造可能なエーテルジオールを用いたポリカーボネート樹脂が検討されている。
例えば、下記式(5)
で表されるエーテルジオールは、生物起源物質、例えば、糖類、でんぷんなどから容易に作られる。このエーテルジオールには3種の立体異性体があることが知られている。具体的には下記式(9)
に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(以下「イソソルビド」と呼称する)、下記式(10)
に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(以下「イソマンニド」と呼称する)、下記式(11)
に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール(以下「イソイディッド」と呼称する)である。
イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドは、それぞれD−グルコース、D−マンノース、L−イドースから得られる。例えばイソソルビドの場合、D−グルコースを水添した後、酸触媒を用いて脱水することにより得ることができる。
これまで式(5)で表されるエーテルジオールの中でも、特に、イソソルビドをポリカーボネート樹脂に組み込むことが検討されてきた(特許文献1〜5)。
しかしながら、イソソルビド含有ポリカーボネート樹脂は、酸素原子を多く含み、PC−Aなどのエーテル部分を持たないジオールから得られるポリカーボネート樹脂に比べて極性が高い。そのため、イソソルビド含有ポリカーボネート樹脂はPC−Aに比べて吸湿性が高く、吸湿による成形品の寸法安定性の低下、および湿熱時における耐熱性の低下を引き起こし易いという欠点を有する。またイソソルビド含有ポリカーボネート樹脂は、表面エネルギーが低く、成形品が汚れ易く、磨耗に弱いという欠点を有する。この表面エネルギーは水に対する接触角で評価できる。
以上のように、イソソルビド含有ポリカーボネート樹脂は、耐吸湿性、耐熱性、熱安定性および成形加工性をさらに改良する余地がある。またイソソルビド含有ポリカーボネート樹脂は、表面エネルギーが低いことに伴う欠点を改良する余地がある。
特開昭56−055425号公報
特開昭56−110723号公報
特開2003−292603号公報
国際公開第2004/111106号パンフレット
特開2006−232897号公報
一般的にポリカーボネート樹脂は石油資源からの原料を用いて製造されるが、石油資源の枯渇が懸念されており、植物などの生物起源物質からの原料を用いたポリカーボネート樹脂が求められている。そこで、糖質から製造可能なエーテルジオールを用いたポリカーボネート樹脂が検討されている。
例えば、下記式(5)
で表されるエーテルジオールは、生物起源物質、例えば、糖類、でんぷんなどから容易に作られる。このエーテルジオールには3種の立体異性体があることが知られている。具体的には下記式(9)
に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(以下「イソソルビド」と呼称する)、下記式(10)
に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(以下「イソマンニド」と呼称する)、下記式(11)
に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール(以下「イソイディッド」と呼称する)である。
イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドは、それぞれD−グルコース、D−マンノース、L−イドースから得られる。例えばイソソルビドの場合、D−グルコースを水添した後、酸触媒を用いて脱水することにより得ることができる。
これまで式(5)で表されるエーテルジオールの中でも、特に、イソソルビドをポリカーボネート樹脂に組み込むことが検討されてきた(特許文献1〜5)。
しかしながら、イソソルビド含有ポリカーボネート樹脂は、酸素原子を多く含み、PC−Aなどのエーテル部分を持たないジオールから得られるポリカーボネート樹脂に比べて極性が高い。そのため、イソソルビド含有ポリカーボネート樹脂はPC−Aに比べて吸湿性が高く、吸湿による成形品の寸法安定性の低下、および湿熱時における耐熱性の低下を引き起こし易いという欠点を有する。またイソソルビド含有ポリカーボネート樹脂は、表面エネルギーが低く、成形品が汚れ易く、磨耗に弱いという欠点を有する。この表面エネルギーは水に対する接触角で評価できる。
以上のように、イソソルビド含有ポリカーボネート樹脂は、耐吸湿性、耐熱性、熱安定性および成形加工性をさらに改良する余地がある。またイソソルビド含有ポリカーボネート樹脂は、表面エネルギーが低いことに伴う欠点を改良する余地がある。
そこで、本発明の目的は、生物起源物質の含有率が高く、耐吸湿性、耐熱性、熱安定性および成形加工性に優れ、表面エネルギーの高いポリカーボネート樹脂を提供することにある。また本発明の目的は、光弾性定数が低く、位相差の発現性および位相差制御性が良好で、視野角特性に優れ、かつ耐熱性および熱安定性に優れたフィルムなどの成形品を提供することにある。
本発明者は、主鎖が下記式(1)で表される繰り返し単位を含んでなるポリカーボネート樹脂において、ポリマー末端水酸基量(OH価)がポリマーの吸水率に大きく寄与しており、特にOH価を2.5×103以下とすることで耐吸湿性、耐熱性、熱安定性および成形加工性に優れ、高い表面エネルギーを有するポリカーボネート樹脂が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、全主鎖中に、30〜100モル%の下記式(1)で表される単位を含み、
(i)ASTM D6866 05に準拠して測定された生物起源物質含有率が25%〜100%、
(ii)樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.2〜0.6、
(iii)OH価が2.5×103以下、
であるポリカーボネート樹脂である。
また本発明は、(A)下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)、
(B)A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)、
(C)炭酸ジエステル(C成分)および
(D)A成分とB成分の合計に対して0.01〜7モル%の下記式(6)または(7)
{上記式(6)、(7)において、R1は炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、フェニル基、または下記式(4)
(上記式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は夫々独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、bは0〜3の整数、cは4〜100の整数である)で表される基であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。}
で表されるヒドロキシ化合物(D成分)、
を反応させることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法である。
また本発明は、(A)下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)、
(B)A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)、および(E)ホスゲン(E成分)、
を不活性溶媒中で、酸結合剤の存在下に反応させるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
(D)末端停止剤として下記式(6)または(7)
{上記式(6)、(7)において、R1は炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、フェニル基、または下記式(4)
(上記式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は夫々独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、bは0〜3の整数、cは4〜100の整数である)で表される基であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。}
で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を反応させることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法である。
さらに本発明は、重合触媒の存在下、下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)30〜100モル%および該エーテルジオール(A成分)以外のジオールまたはジフェノール(B成分)0〜70モル%からなるジヒドロキシ成分と、炭酸ジエステル成分(C成分)とを常圧で加熱反応させ、次いで減圧下、180℃〜280℃の温度で加熱しながら溶融重縮合させる方法において、
(i)重合開始時に、C成分とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.05〜0.97となるようにし、
(ii)C成分を、重合中のC成分とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.08〜1.00となるようにさらに添加することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法である。
本発明は、上記ポリカーボネート樹脂からなる成形品を包含する。
本発明者は、主鎖が下記式(1)で表される繰り返し単位を含んでなるポリカーボネート樹脂において、ポリマー末端水酸基量(OH価)がポリマーの吸水率に大きく寄与しており、特にOH価を2.5×103以下とすることで耐吸湿性、耐熱性、熱安定性および成形加工性に優れ、高い表面エネルギーを有するポリカーボネート樹脂が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、全主鎖中に、30〜100モル%の下記式(1)で表される単位を含み、
(i)ASTM D6866 05に準拠して測定された生物起源物質含有率が25%〜100%、
(ii)樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.2〜0.6、
(iii)OH価が2.5×103以下、
であるポリカーボネート樹脂である。
また本発明は、(A)下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)、
(B)A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)、
(C)炭酸ジエステル(C成分)および
(D)A成分とB成分の合計に対して0.01〜7モル%の下記式(6)または(7)
{上記式(6)、(7)において、R1は炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、フェニル基、または下記式(4)
(上記式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は夫々独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、bは0〜3の整数、cは4〜100の整数である)で表される基であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。}
で表されるヒドロキシ化合物(D成分)、
を反応させることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法である。
また本発明は、(A)下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)、
(B)A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)、および(E)ホスゲン(E成分)、
を不活性溶媒中で、酸結合剤の存在下に反応させるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
(D)末端停止剤として下記式(6)または(7)
{上記式(6)、(7)において、R1は炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、フェニル基、または下記式(4)
(上記式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は夫々独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、bは0〜3の整数、cは4〜100の整数である)で表される基であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。}
で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を反応させることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法である。
さらに本発明は、重合触媒の存在下、下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)30〜100モル%および該エーテルジオール(A成分)以外のジオールまたはジフェノール(B成分)0〜70モル%からなるジヒドロキシ成分と、炭酸ジエステル成分(C成分)とを常圧で加熱反応させ、次いで減圧下、180℃〜280℃の温度で加熱しながら溶融重縮合させる方法において、
(i)重合開始時に、C成分とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.05〜0.97となるようにし、
(ii)C成分を、重合中のC成分とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.08〜1.00となるようにさらに添加することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法である。
本発明は、上記ポリカーボネート樹脂からなる成形品を包含する。
以下、本発明について詳細に説明する。
〈ポリカーボネート樹脂〉
(主鎖)
本発明のポリカーボネート樹脂は、主鎖が下記式(1)で表される単位を含む。主鎖中の下記式(1)で表される単位の含有量は、30〜100モル%、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは55〜90モル%である。
式(1)で表される単位は、イソソルビド、イソマンニド、イソイディッド由来の単位であることが好ましい。特に、イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)由来の単位であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、主鎖に上記式(1)で表される単位以外に、ジフェノール由来の下記式(12)で表される単位またはジオール由来の下記式(16)で表される単位を0〜70モル%、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜45モル%含有する。
(式(12))
式(12)において、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
なかでも、R1およびR2は好ましくはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基および炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、それぞれ複数ある場合は、それらは同一でも異なっていても良い基である。
aおよびbはそれぞれ独立して1〜4の整数である。
Wは、単結合および下記式(13)で表される結合基からなる群より選ばれる少なくとも一つの結合基である。
上記式(13)においてR3,R4,R5,R6,R7,R8,R9およびR10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
R11およびR12は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。
R13,R14,R15およびR16はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
cは1〜10の整数、dは4〜7の整数、eは1〜3の整数、fは1〜100の整数である。
なかでも、Wは単結合もしくは下記式(14)で表される結合基からなる群より選ばれる少なくとも一つの結合基であることが好ましい。
上記式(14)においてR17およびR18はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
R19およびR20はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
R21およびR22はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表し複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。cは1〜10の整数、dは4〜7の整数である。
特に、Wは下記式(15)で表される結合基からなる群より選ばれる少なくとも一つの結合基であることが好ましい。
上記式(15)において、R17,R18,R19,R20,R21,R22、cおよびdは、式(14)の定義と同じである。
(式(16))
式(16)中、Zは、炭素原子数2〜20の2価の脂肪族基、好ましくは炭素原子数3〜15の脂肪族基である。脂肪族基として、好ましくは炭素原子数2〜20のアルカンジイル基、より好ましくは炭素原子数3〜15のアルカンジイル基が挙げられる。具体的には1,3−プロパンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,6−ヘキサンジイル基などの直鎖状アルカンジイル基等が挙げられる。また、シクロヘキサンジイル基、ジメチルシクロヘキサンジイル基等の脂環式アルカンジイル基が挙げられる。中でも1,3−プロパンジイル基、1,4−ブタンジイル基、ヘキサンジイル基、スピログリコールイル基、ジメチルシクロヘキサンジイル基が好ましい。これらの脂肪族基は単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
(生物起源物質含有率)
本発明のポリカーボネート樹脂は、ASTM D6866 05に準拠して測定された生物起源物質含有率が25〜100%、好ましくは40〜100%、より好ましくは50〜100%である。
(比粘度)
本発明のポリカーボネート樹脂は、0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.2〜0.6、好ましくは0.2〜0.45、より好ましくは0.22〜0.4である。比粘度が0.2より低くなると得られた成形品に充分な機械強度を持たせることが困難となる。また比粘度が0.6より高くなると末端基の割合が必然的に下がり、充分な末端変性効果が発現できないばかりでなく、溶融流動性が高くなりすぎて、成形に必要な融解温度が分解温度より高くなり好ましくない。
(OH価)
本発明のポリカーボネート樹脂は、OH価が2.5×103以下であり、好ましくは2.0×103以下であり、より好ましくは1.5×103以下である。OH価が2.5×103よりも大きくなると、ポリカーボネート樹脂の吸水性が増大するだけでなく、熱安定性が低下してしまい好ましくない。OH価は、NMR測定によって得られる末端比率により算出される。
(吸水率)
本発明のポリカーボネート樹脂の23℃、24時間後の吸水率は、好ましくは0.75%以下、より好ましくは0.7%以下である。吸水率が上記範囲であると、耐湿熱性、低寸法変化率という点で好ましい。
(飽和吸水率)
本発明のポリカーボネート樹脂は、23℃水中での、飽和吸水率が好ましくは0〜5%であり、より好ましくは0〜4.8%であり、さらに好ましくは0〜4.5%である。吸水率が上記範囲であると、耐湿熱性、低寸法変化率という点で好ましい。
(水に対する接触角)
本発明のポリカーボネート樹脂の水に対する接触角は、好ましくは70〜180°、より好ましくは72〜180°の範囲である。水に対する接触角が上記範囲であると、防汚性、摩耗耐性、離型性という点で好ましい。
(分子量保持率)
本発明のポリカーボネート樹脂の120℃、相対湿度100%における11時間後の分子量保持率が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。
(ガラス転移温度:Tg)
本発明のポリカーボネート樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が好ましくは100℃以上であり、より好ましくは100〜170℃であり、さらにより好ましくは110〜160℃である。Tgが100℃未満だと耐熱性に劣り、170℃を超えると成形時の溶融流動性に劣る。
(末端基)
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(2)または(3)で表される末端基を含有することが好ましい。
式(2)、(3)において、R1は炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、フェニル基、または下記式(4)
で表される基である。
R1のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは4〜22、より好ましくは8〜22である。アルキル基として、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
R1のアラルキル基の炭素原子数は、好ましくは8〜20、より好ましくは10〜20である。アラルキル基として、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
R1のパーフルオロアルキル基の炭素原子数は好ましくは2〜20である。パーフルオロアルキル基として4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプチル基、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−トリデカフルオロノニル基、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシル基などが挙げられる。
式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は夫々独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。
式(4)中の炭素原子数1〜10のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基等が挙げられる。炭素原子数6〜20のシクロアルキル基として、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。炭素原子数2〜10のアルケニル基として、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基等が挙げられる。炭素原子数6〜10のアリール基として、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素原子数7〜20のアラルキル基として、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は、夫々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基および炭素原子数6〜10のアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であることが好ましい。特に夫々独立してメチル基およびフェニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であることが好ましい。
bは0〜3の整数、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは2〜3の整数である。cは4〜100の整数、より好ましくは4〜50の整数、さらに好ましくは8〜50の整数である。
式(3)のXは、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わす。Xは、好ましくは単結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合である。なかでも単結合、エステル結合が好ましい。
aは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1である。
上記式(2)または(3)で表される末端基は、生物起源物質由来であることが好ましい。生物起源物質として、炭素原子数14以上の長鎖アルキルアルコール、例えばセタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。
式(2)または(3)で表される末端基の含有量は、ポリマー主鎖に対して好ましくは0.01〜7モル%、より好ましくは0.05〜7モル%、より好ましくは0.1〜6.8モル%である。式(2)または(3)で表される末端基が上記範囲内にある場合、末端変性による効果(成形加工性、高接触角および耐吸湿性)が好適に発現する。
〈ポリカーボネート樹脂の製造方法(I)〉
本発明のポリカーボネート樹脂は、
(A)下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)、
(B)A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)、
(C)炭酸ジエステル(C成分)、および
(D)A成分とB成分の合計に対して0.01〜7モル%の下記式(6)または(7)
で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を反応させ製造することができる(製造方法(I))。式(6)および(7)中、R1、X、aは式(2)および(3)と同じである。
(エーテルジオール:A成分)
エーテルジオール(A成分)は、イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドであることが好ましい。これら糖質由来のエーテルジオールは、自然界のバイオマスからも得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。イソソルビドは、でんぷんから得られるD−グルコースを水添した後、脱水して製造することができる。その他のエーテルジオールについても、出発物質を除いて同様の反応により得られる。A成分は、イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)であることが特に好ましい。イソソルビドはでんぷんなどから簡単に作ることができるエーテルジオールであり資源として豊富に入手することができる上、イソマンニドやイソイディッドと比べても製造の容易さ、性質、用途の幅広さの全てにおいて優れている。
A成分の使用量は、A成分とB成分との合計に対し、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜95モル%、さらに好ましくは55〜90モル%である。
(ジオール、ジフェノール:B成分)
本発明のポリカーボネート樹脂は、上記式(5)で表されるエーテルジオール(A成分)以外に、A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)を用いて製造する。B成分の使用量は、A成分とB成分との合計に対し、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは5〜50モル%、さらに好ましくは10〜45モル%である。
(ジオール)
エーテルジオール(A成分)以外のジオールとしては、下記式(18)で表されるジオールが好ましい。
式(18)中のZは、式(16)と同じである。
ジオールとしては、炭素原子数2〜20の脂肪族ジオールが好ましく、炭素原子数3〜15の脂肪族ジオールがより好ましい。具体的には1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖状ジオール類や、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式アルキレン類などが挙げられ、中でも1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、スピログリコール、およびシクロヘキサンジメタノールが好ましい。これらのジオールは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
(ジフェノール)
ジフェノールとしては、具体的には下記式(17)で表されるビスフェノールが好ましい。
式(17)中の、W、R1、R2、a、bは、式(12)と同じである。
ビスフェノールとして、具体的には4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(通常“ビスフェノールM”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールA”と称される)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールC”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(通常“ビスフェノールAF”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、および2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
上記の中でも、ビスフェノールM、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールAF、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンが好ましい。これらのビスフェノール類は単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
(炭酸ジエステル:C成分)
本発明のポリカーボネート樹脂は、カーボネート結合を形成するために炭酸ジエステル(C成分)を用いて製造する。
炭酸ジエステル(C成分)として、置換されていてもよい炭素原子数6〜12のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基などの炭酸ジエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
炭酸ジエステル(C成分)の量は、炭酸ジエステル(C成分)と、エーテルジオール(A成分)とA成分以外のジオールおよびジフェノール(B成分)の合計量とのモル比(C成分/(A成分+B成分))で、好ましくは1.05〜0.97、より好ましくは1.03〜0.97、さらに好ましくは1.03〜0.99である。C成分が1.05モルより多くなると、充分な重合度が得られなくなる。C成分が0.97モルより少ないと、重合が進行しないばかりでなく、未反応のエーテルジオールやヒドロキシ化合物が残存する。
(ヒドロキシ化合物:D成分)
本発明のポリカーボネート樹脂は、A〜C成分以外に下記式(6)または(7)で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を用いて製造する。
下記式(6)または(7)で表されるヒドロキシ化合物(D成分)において、R1、X、a、R2、R3、R4、R5、R6、b、cは、式(2)および(3)と同じである。ヒドロキシ化合物(D成分)は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。2種類以上使用する場合は、式(6)または(7)で表されるヒドロキシ化合物(D成分)とそれ以外のヒドロキシ化合物とを組み合わせて使用してもよい。ヒドロキシ化合物(D成分)により、ポリカーボネートの耐熱性、熱安定性、成形加工性、耐吸水性が向上する。
本発明のポリカーボネート樹脂は、植物などの再生可能資源から得られる原料を用いた繰り返し単位を主鎖構造に持つことから、末端構造を構成するこれらのヒドロキシ化合物(D成分)もまた植物などの生物起源物質由来のものであることが好ましい。植物から得られるヒドロキシ化合物としては、植物油から得られる炭素原子数14以上の長鎖アルキルアルコール(セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール)などが挙げられる。
ヒドロキシ化合物(D成分)の量は、エーテルジオール(A成分)、該エーテルジオール以外のジオールおよびジフェノール(B成分)の合計量に対して、好ましくは0.01〜7モル%、より好ましくは0.05〜7モル%、さらに好ましくは0.1〜6.8モル%である。ヒドロキシ化合物が0.01モル%より少なくなると、末端変性の効果が得られない。ヒドロキシ化合物が7モル%より多くなると、末端停止剤の量が多すぎて、成形加工に充分な重合度を持つポリカーボネート樹脂が得られない。ヒドロキシ化合物(D成分)を添加する時期は、反応初期、反応後期いずれでも良い。
反応は、溶融重合によって行なうことができる。溶融重合は、A成分〜D成分のエステル交換反応によって生成するアルコールまたはフェノールを高温減圧下にて留出させ行なうことができる。
(反応温度)
反応温度は、エーテルジオールの分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るために、できるだけ低温の条件を用いることが好ましいが、重合反応を適切に進める為には重合温度は180〜280℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは180〜270℃の範囲である。
また、反応初期にはエーテルジオールと炭酸ジエステルとを常圧で加熱し、予備反応させた後、徐々に減圧にして反応後期には系を1.3×10−3〜1.3×10−5MPa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる方法が好ましい。反応時間は通常1〜4時間程度である。
(重合触媒)
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。重合触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二価フェノールのナトリウム塩、二価フェノールのカリウム塩等のアルカリ金属化合物が挙げられる。また水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物が挙げられる。
またテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物が挙げられる。
またアルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類、マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
重合触媒として、含窒素塩基性化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を使用することが好ましい。なかでも、含窒素塩基性化合物とアルカリ金属化合物とを併用して使用することが好ましい。
これらの重合触媒の使用量は、それぞれ炭酸ジエステル(C成分)1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
反応系は、原料、反応混合物、反応生成物に対し不活性な窒素などのガスの雰囲気に保つことが好ましい。窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴンなどを挙げることができる。さらに、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を加えてもよい。
(触媒失活剤)
本発明のポリカーボネート樹脂には、触媒失活剤を添加することもできる。触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤を用いることができる。なかでもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。さらにドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。またスルホン酸のエステルとしてベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。これらの触媒失活剤の使用量は、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた重合触媒1モル当たり、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは0.5〜10モル、さらに好ましくは0.8〜5モルの割合である。
従って、重合触媒の存在下、エーテルジオール(A成分)、該エーテルジオール以外のジオール、ジフェノール(B成分)、炭酸ジエステル(C成分)およびヒドロキシ化合物(D成分)を、常圧で加熱反応させ、次いで減圧下、180〜280℃の温度で加熱しながら溶融重縮合させることが好ましい。
〈ポリカーボネート樹脂の製造方法(II)〉
本発明のポリカーボネート樹脂は、不活性溶媒中で、ピリジン等の酸結合剤の存在下にエーテルジオール(A成分)、A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)とホスゲン(E成分)とを反応させ製造することができる。即ち本発明のポリカーボネート樹脂は、
(A)下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)、
(B)A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)、および(E)ホスゲン(E成分)、
を不活性溶媒中で、酸結合剤の存在下に反応させるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
(D)末端停止剤として下記式(6)または(7)
で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を反応させることにより製造することができる(製造方法(II))。式(6)および(7)中、R1、X、a、R2、R3、R4、R5、R6、b、cは式(2)および(3)と同じである。
A成分、B成分およびD成分は製造方法(I)と同じである。エーテルジオール(A成分)は、イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)であることが好ましい。ヒドロキシ化合物(D成分)は、生物起源物質由来であることが好ましい。末端停止剤として式(6)または(7)で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を用いることにより熱安定性が向上する。
(酸結合剤)
酸結合剤は、ピリジン、キノリンおよびジメチルアニリンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。酸結合剤として特にピリジンが好適である。酸結合剤の使用量は、ホスゲン(E成分)1モルに対して、好ましくは2〜100モル、より好ましくは2〜50モルである。
(不活性溶媒)
不活性溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。なかでも塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が好ましい。塩化メチレンが最も好ましい。反応温度は、好ましくは0〜40℃、より好ましくは5〜30℃である。反応時間は、通常数分〜数日間、好ましくは10分間〜5時間である。
〈ポリカーボネート樹脂の製造方法(III)〉
本発明のOH価の低いポリカーボネート樹脂は、末端停止剤を用いることなく製造することもできる。
即ち、本発明のポリカーボネート樹脂は、重合触媒の存在下、下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)30〜100モル%およびA成分以外のジオールまたはジフェノール(B成分)0〜70モル%からなるジヒドロキシ成分と、炭酸ジエステル成分(C成分)とを常圧で加熱反応させ、次いで減圧下、180℃〜280℃の温度で加熱しながら溶融重縮合させる方法において、
(i)重合開始時に、C成分とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.05〜0.97となるようにし、
(ii)C成分を、重合中のC成分とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.08〜1.00となるようにさらに添加することにより製造することができる。
反応温度は、エーテルジオール(A成分)の分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るために、できるだけ低温の条件を用いることが好ましいが、重合反応を適切に進める為には重合温度は180℃〜280℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは180℃〜270℃の範囲である。
また、反応初期にはジヒドロキシ成分と炭酸ジエステルとを常圧で加熱し、予備反応させた後、徐々に減圧にして反応後期には系を1.3×10−3〜1.3×10−5MPa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる方法が好ましい。反応時間は通常0.5〜4時間程度である。
炭酸ジエステル(C成分)としては、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜18のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(p−ブチルフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
炭酸ジエステル(C成分)は、反応初期(重合開始時)、反応中期(重合中)の二段階に分けて添加する。重合開始時に、炭酸ジエステルとジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.05〜0.97となるように配合する。
重合中には炭酸ジエステルを、炭酸ジエステル(C成分)とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が合計1.08〜1.00となるようにさらに添加する。
重合開始時の配合する炭酸ジエステル(C成分)と重合中に添加する炭酸ジエステル(C成分)の割合は、99:1〜90:10(重量比)の割合が好ましく、98:2〜95:5(重量比)の割合がより好ましい。炭酸ジエステル(C成分)を反応中期に追加しないと、OH価が好ましい範囲よりも多くなってしまい、高吸水性を示し寸法変化を招いたり、熱安定性の悪化につながる。重合途中に追加添加せずに、重合開始時に、炭酸ジエステルとジヒドロキシ成分との比が1.05より多くなるように一度に仕込むと、モルバランスが崩れ充分な重合度が得られず好ましくない。
重合触媒は、含窒素塩基性化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いる。
アルカリ金属化合物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二価フェノールのナトリウム塩またはカリウム塩等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物として、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。含窒素塩基性化合物として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、含窒素塩基性化合物とアルカリ金属化合物とを併用して使用することが好ましい。
これらの重合触媒の使用量は、それぞれ炭酸ジエステル(C成分)1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。また反応系は窒素などの原料、反応混合物、反応生成物に対し不活性なガスの雰囲気に保つことが好ましい。窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴンなどを挙げることができる。更に、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を加えてもよい。
上記製造法により得られたポリカーボネート樹脂に触媒失活剤を添加することもできる。触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましく、更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の上記塩類やパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の上記塩類が好ましい。またスルホン酸のエステルとしてベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられ、その中でもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた前記重合触媒1モル当たり0.5〜50モルの割合で、好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用するこができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、脂肪族ジオール類および/または芳香族ビスフェノール類との共重合としても良い。該脂肪族ジオール類および/または芳香族ビスフェノール類の割合は、全ヒドロキシ成分中70モル%以下であり、50モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましい。これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。
脂肪族ジオールとしては、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖状ジオール類や、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、テルペン系ジメチロールなどの脂環式ジオール類などが挙げられる。中でも1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、テルペン系ジメチロールが好ましく、特に生物起源物質由来になりえるという観点から1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールおよびテルペン系ジメチロールが好ましい。
芳香族ビスフェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン等が挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンが好ましい。
(その他の成分)
また、本発明のポリカーボネート樹脂には、用途に応じて各種の機能付与剤を添加してもよく、例えば熱安定剤、安定化助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、造核剤、重金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などである。
また、本発明のポリカーボネート樹脂には、用途に応じて各種の有機および無機のフィラー、繊維などを複合化して用いることもできる。フィラーとしては例えばカーボン、タルク、マイカ、ワラストナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイトなどを挙げることができる。また、繊維としては例えばケナフなどの天然繊維のほか、各種の合成繊維、ガラス繊維、石英繊維、炭素繊維などが挙げられる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂には、例えば脂肪族ポリエステルの他、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアクリル、ABS、ポリウレタンなどや、ポリ乳酸を始めとする各種の生物起源物質からなるポリマーなどと混合しアロイ化して用いることもできる。
〈成形品〉
本発明は、上記ポリカーボネート樹脂からなる成形品を包含する。本発明の成形品は、射出成形により、得ることができる。適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また、本発明の成形品は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、およびフィルムなどの形で利用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
本発明の成形品は、透明性および色相に優れる。本発明の成形品は、0.03μm以下の算術平均表面粗さ(Ra)を有し、厚み2mmの平板の、JIS K7105で測定されたヘーズは、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜15%である。
また該平板において、b値が0〜14の範囲が好ましく、0〜13の範囲がより好ましく、0〜12の範囲がさらに好ましい。b値は日本電色(株)製分光彩計SE−2000(光源:C/2)を用いて測定することができる。
また本発明の成形品は、縦100mm×横50mm×厚み4mmの成形品とした場合、飽和吸水時における寸法変化率が1.5%以下であることが好ましい。
成形品としてフィルムなどが挙げられる。フィルムは光学用に用いることができる。本発明のフィルムは、本発明のポリカーボネート樹脂を溶媒に溶解させた溶液を流延する溶液キャスト法、本発明のポリカーボネート樹脂をそのまま溶融させて流延する溶融製膜法で製造することができる。
溶液キャスト法によりフィルムを作成する場合には、使用する溶媒としては、汎用性、製造コスト面からハロゲン系溶媒、中でも塩化メチレンを用いることが好ましい。溶液組成物(ドープ)として、塩化メチレンを60重量%以上含有する溶媒15〜90重量部に対して本発明のポリカーボネート樹脂10重量部を溶解させたものが好ましい。溶媒量が90重量部より多いと膜厚が厚く、かつ表面平滑性に優れたキャストフィルムが得られにくいことがあり、また溶媒量が15重量部未満と少ない場合は溶液粘度が高すぎてフィルム製造が困難となることがある。
溶媒として塩化メチレン以外にも必要に応じて製膜性を妨げない範囲で他の溶媒を加えてもよく、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられる。
本発明では、ドープを支持基板上に流延した後、加熱して溶媒を蒸発させることによりフィルムを得ることが出来る。支持基板としてガラス基板、ステンレスやフェロタイプなどの金属基板、PETなどのプラスチック基板などを使用し、ドクターブレードなどでドープを均一に支持基板上に流延させる。工業的にはダイからドープをベルト状もしくはドラム状の支持基板上に連続して押し出す方法が一般的である。
支持基板上に流延したドープは発泡が起きないよう低温から徐々に加熱乾燥していくことが好ましく、加熱して大部分の溶媒を除去して自立性のあるフィルムとしてから支持基板から剥離し、さらにフィルム両面から加熱乾燥して残りの溶媒を除去することが好ましい。基板から剥離した後の乾燥工程では、熱収縮による寸法変化によりフィルムに応力がかかる可能性が高いため、液晶表示装置に用いる光学用フィルムのように精密な光学特性のコントロールが必要とされる製膜においては、乾燥温度、フィルムの固定条件などに留意して行うことが必要である。一般には剥離後の乾燥においては用いるポリカーボネートの(Tg−100℃)〜Tgの範囲で段階的に昇温しながら乾燥する方法をとることが好ましい。Tgを超える温度で乾燥するとフィルムの熱変形が起こり好ましくなく、(Tg−100℃)未満では乾燥温度が著しく遅くなるため好ましくない。
溶液キャスト法で得るフィルム中の残留溶媒量は2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。2重量%を超え、残留溶媒量が多いとフィルムのガラス転移点の低下が著しくなり好ましくない。
溶融製膜法によりフィルムを作成する場合には、一般にTダイから融液を押し出して製膜する。製膜温度は、ポリカーボネートの分子量、Tg、溶融流動特性などから決められるが、通常180〜350℃の範囲であり、200〜320℃の範囲がより好ましい。温度が低すぎると粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすいことがあり、逆に温度が高すぎるのも熱劣化、着色、Tダイからのダイライン(筋)などの問題がおきやすくなることがある。
かくして得られる未延伸フィルムの膜厚は特に制限はなく目的に応じて決められるが、フィルムの製造面、靭性などの物性、コスト面などから10〜300μmが好ましく、より好ましくは20〜200μmである。
フィルムを構成する本発明のポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が60×10−12Pa−1以下であることが好ましく、より好ましくは50×10−12Pa−1以下である。光弾性定数が60×10−12Pa−1より高い場合には、光学用フィルムを張り合わせる際の張力によって位相差が発現したり、他の材料との寸法安定性の違いから生じる応力により位相差が生じやすく、その結果光漏れ、コントラストの低下などの現象が生じて長期的な安定性に劣る場合がある。
また、本発明のフィルムは、その位相差値の波長分散が下記式(i)
1.010<R(450)/R(550)<1.070 (i)
を満足することが好ましく、下記式(ii)
1.010<R(450)/R(550)<1.060 (ii)
を満足することがより好ましい。
ここでR(450)、R(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおけるフィルム面内の位相差値である。このような位相差値の波長分散が小さい位相差フィルムを用いると、特に液晶表示装置のVA(垂直配向)モードにおいて、視野角特性、コントラストに優れたものが得られる。
また、本発明のフィルムは、その位相差を膜厚で割った値(Δn=R(550)/フィルム膜厚(μm))が、未延伸の状態で下記式(iii)
Δn<0.3×10−3 (iii)
を満足することが好ましく、下記式(iv)
Δn<0.25×10−3 (iv)
を満足することがより好ましい。下限は特に限定されず0(零)より大きい範囲であればよい。
本発明のフィルムとしては、未延伸フィルムを1軸延伸または2軸延伸など公知の延伸方法によりポリマーを配向させたものも好適である。かかる延伸により例えば液晶表示装置の位相差フィルムとして用いることが出来る。延伸温度はポリマーのTg近傍の、通常(Tg−20℃)〜(Tg+20℃)の範囲で行われ、延伸倍率は縦一軸延伸の場合、通常1.02倍〜3倍である。延伸フィルムの膜厚としては20〜200μmの範囲であることが好ましい。
本発明で得られる好ましい位相差フィルムの一つとして、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)が下記式(1)の範囲にあって、
100nm<R(550)<2000nm ・・・(1)
かつ膜厚が10〜150μmである位相差フィルムが挙げられる。ここで位相差Rとは下記式(5)で定義されるものであり、フィルムに垂直方向に透過する光の位相の遅れを表す特性である。
R=(nx−ny)×d ・・・(5)
[式中、nxはフィルム面内の遅相軸(最も屈折率が高い軸)の屈折率のことであり、nyはフィルム面内でnxと垂直方向の屈折率であり、dは膜厚である。]
ここでR(550)は100〜600nmがより好ましい。また膜厚は30〜120μmがより好ましく、さらに好ましくは30〜100μmである。かかる位相差フィルムは一軸延伸または二軸延伸により作成することが出来、1/4λ板、1/2λ板、λ板等に好適に用いられる。
また別の好ましい位相差フィルムとして、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)および膜厚方向の位相差Rth(550)が下記式(2)、(3)の範囲にあり、
0nm<R(550)<150nm ・・・(2)
100nm<Rth(550)<400nm ・・・(3)
(式中、Rth(550)は波長550nmにおける膜厚方向の位相差値であり、下記式(4)によって定義されるものである。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d ・・・(4)
(式中、nx、nyはフィルム面内のx軸、y軸の、nzはx軸およびy軸に垂直な厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの膜厚である。)
かつ膜厚が10〜150μmである位相差フィルムも挙げられる。
かかるフィルムは2軸延伸によって作製することができる。
上述したΔnの範囲を満足する特性を持つ本発明の樹脂を用いたフィルムは、延伸後の位相差が発現し易く、位相差制御性が良好であり工業的にも好適である。
本発明のフィルムは、全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、ヘイズ値は5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下である。本発明のフィルムは、透明性に優れることから光学用フィルムとして好適である。
本発明のフィルムは1枚単独で用いてもよいし、2枚以上積層して用いてもよい。また他の素材からなる光学用フィルムと組み合わせて用いてもよい。偏光板の保護膜として用いてもよいし、また液晶表示装置の透明基板として用いてもよい。
〈ポリカーボネート樹脂〉
(主鎖)
本発明のポリカーボネート樹脂は、主鎖が下記式(1)で表される単位を含む。主鎖中の下記式(1)で表される単位の含有量は、30〜100モル%、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは55〜90モル%である。
式(1)で表される単位は、イソソルビド、イソマンニド、イソイディッド由来の単位であることが好ましい。特に、イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)由来の単位であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、主鎖に上記式(1)で表される単位以外に、ジフェノール由来の下記式(12)で表される単位またはジオール由来の下記式(16)で表される単位を0〜70モル%、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜45モル%含有する。
(式(12))
式(12)において、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
なかでも、R1およびR2は好ましくはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基および炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、それぞれ複数ある場合は、それらは同一でも異なっていても良い基である。
aおよびbはそれぞれ独立して1〜4の整数である。
Wは、単結合および下記式(13)で表される結合基からなる群より選ばれる少なくとも一つの結合基である。
上記式(13)においてR3,R4,R5,R6,R7,R8,R9およびR10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
R11およびR12は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。
R13,R14,R15およびR16はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
cは1〜10の整数、dは4〜7の整数、eは1〜3の整数、fは1〜100の整数である。
なかでも、Wは単結合もしくは下記式(14)で表される結合基からなる群より選ばれる少なくとも一つの結合基であることが好ましい。
上記式(14)においてR17およびR18はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
R19およびR20はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
R21およびR22はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表し複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。cは1〜10の整数、dは4〜7の整数である。
特に、Wは下記式(15)で表される結合基からなる群より選ばれる少なくとも一つの結合基であることが好ましい。
上記式(15)において、R17,R18,R19,R20,R21,R22、cおよびdは、式(14)の定義と同じである。
(式(16))
式(16)中、Zは、炭素原子数2〜20の2価の脂肪族基、好ましくは炭素原子数3〜15の脂肪族基である。脂肪族基として、好ましくは炭素原子数2〜20のアルカンジイル基、より好ましくは炭素原子数3〜15のアルカンジイル基が挙げられる。具体的には1,3−プロパンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,6−ヘキサンジイル基などの直鎖状アルカンジイル基等が挙げられる。また、シクロヘキサンジイル基、ジメチルシクロヘキサンジイル基等の脂環式アルカンジイル基が挙げられる。中でも1,3−プロパンジイル基、1,4−ブタンジイル基、ヘキサンジイル基、スピログリコールイル基、ジメチルシクロヘキサンジイル基が好ましい。これらの脂肪族基は単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
(生物起源物質含有率)
本発明のポリカーボネート樹脂は、ASTM D6866 05に準拠して測定された生物起源物質含有率が25〜100%、好ましくは40〜100%、より好ましくは50〜100%である。
(比粘度)
本発明のポリカーボネート樹脂は、0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.2〜0.6、好ましくは0.2〜0.45、より好ましくは0.22〜0.4である。比粘度が0.2より低くなると得られた成形品に充分な機械強度を持たせることが困難となる。また比粘度が0.6より高くなると末端基の割合が必然的に下がり、充分な末端変性効果が発現できないばかりでなく、溶融流動性が高くなりすぎて、成形に必要な融解温度が分解温度より高くなり好ましくない。
(OH価)
本発明のポリカーボネート樹脂は、OH価が2.5×103以下であり、好ましくは2.0×103以下であり、より好ましくは1.5×103以下である。OH価が2.5×103よりも大きくなると、ポリカーボネート樹脂の吸水性が増大するだけでなく、熱安定性が低下してしまい好ましくない。OH価は、NMR測定によって得られる末端比率により算出される。
(吸水率)
本発明のポリカーボネート樹脂の23℃、24時間後の吸水率は、好ましくは0.75%以下、より好ましくは0.7%以下である。吸水率が上記範囲であると、耐湿熱性、低寸法変化率という点で好ましい。
(飽和吸水率)
本発明のポリカーボネート樹脂は、23℃水中での、飽和吸水率が好ましくは0〜5%であり、より好ましくは0〜4.8%であり、さらに好ましくは0〜4.5%である。吸水率が上記範囲であると、耐湿熱性、低寸法変化率という点で好ましい。
(水に対する接触角)
本発明のポリカーボネート樹脂の水に対する接触角は、好ましくは70〜180°、より好ましくは72〜180°の範囲である。水に対する接触角が上記範囲であると、防汚性、摩耗耐性、離型性という点で好ましい。
(分子量保持率)
本発明のポリカーボネート樹脂の120℃、相対湿度100%における11時間後の分子量保持率が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。
(ガラス転移温度:Tg)
本発明のポリカーボネート樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が好ましくは100℃以上であり、より好ましくは100〜170℃であり、さらにより好ましくは110〜160℃である。Tgが100℃未満だと耐熱性に劣り、170℃を超えると成形時の溶融流動性に劣る。
(末端基)
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(2)または(3)で表される末端基を含有することが好ましい。
式(2)、(3)において、R1は炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、フェニル基、または下記式(4)
で表される基である。
R1のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは4〜22、より好ましくは8〜22である。アルキル基として、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
R1のアラルキル基の炭素原子数は、好ましくは8〜20、より好ましくは10〜20である。アラルキル基として、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
R1のパーフルオロアルキル基の炭素原子数は好ましくは2〜20である。パーフルオロアルキル基として4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプチル基、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−トリデカフルオロノニル基、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシル基などが挙げられる。
式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は夫々独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。
式(4)中の炭素原子数1〜10のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基等が挙げられる。炭素原子数6〜20のシクロアルキル基として、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。炭素原子数2〜10のアルケニル基として、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基等が挙げられる。炭素原子数6〜10のアリール基として、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素原子数7〜20のアラルキル基として、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は、夫々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基および炭素原子数6〜10のアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であることが好ましい。特に夫々独立してメチル基およびフェニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であることが好ましい。
bは0〜3の整数、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは2〜3の整数である。cは4〜100の整数、より好ましくは4〜50の整数、さらに好ましくは8〜50の整数である。
式(3)のXは、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わす。Xは、好ましくは単結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合である。なかでも単結合、エステル結合が好ましい。
aは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1である。
上記式(2)または(3)で表される末端基は、生物起源物質由来であることが好ましい。生物起源物質として、炭素原子数14以上の長鎖アルキルアルコール、例えばセタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。
式(2)または(3)で表される末端基の含有量は、ポリマー主鎖に対して好ましくは0.01〜7モル%、より好ましくは0.05〜7モル%、より好ましくは0.1〜6.8モル%である。式(2)または(3)で表される末端基が上記範囲内にある場合、末端変性による効果(成形加工性、高接触角および耐吸湿性)が好適に発現する。
〈ポリカーボネート樹脂の製造方法(I)〉
本発明のポリカーボネート樹脂は、
(A)下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)、
(B)A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)、
(C)炭酸ジエステル(C成分)、および
(D)A成分とB成分の合計に対して0.01〜7モル%の下記式(6)または(7)
で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を反応させ製造することができる(製造方法(I))。式(6)および(7)中、R1、X、aは式(2)および(3)と同じである。
(エーテルジオール:A成分)
エーテルジオール(A成分)は、イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドであることが好ましい。これら糖質由来のエーテルジオールは、自然界のバイオマスからも得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。イソソルビドは、でんぷんから得られるD−グルコースを水添した後、脱水して製造することができる。その他のエーテルジオールについても、出発物質を除いて同様の反応により得られる。A成分は、イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)であることが特に好ましい。イソソルビドはでんぷんなどから簡単に作ることができるエーテルジオールであり資源として豊富に入手することができる上、イソマンニドやイソイディッドと比べても製造の容易さ、性質、用途の幅広さの全てにおいて優れている。
A成分の使用量は、A成分とB成分との合計に対し、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜95モル%、さらに好ましくは55〜90モル%である。
(ジオール、ジフェノール:B成分)
本発明のポリカーボネート樹脂は、上記式(5)で表されるエーテルジオール(A成分)以外に、A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)を用いて製造する。B成分の使用量は、A成分とB成分との合計に対し、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは5〜50モル%、さらに好ましくは10〜45モル%である。
(ジオール)
エーテルジオール(A成分)以外のジオールとしては、下記式(18)で表されるジオールが好ましい。
式(18)中のZは、式(16)と同じである。
ジオールとしては、炭素原子数2〜20の脂肪族ジオールが好ましく、炭素原子数3〜15の脂肪族ジオールがより好ましい。具体的には1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖状ジオール類や、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式アルキレン類などが挙げられ、中でも1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、スピログリコール、およびシクロヘキサンジメタノールが好ましい。これらのジオールは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
(ジフェノール)
ジフェノールとしては、具体的には下記式(17)で表されるビスフェノールが好ましい。
式(17)中の、W、R1、R2、a、bは、式(12)と同じである。
ビスフェノールとして、具体的には4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(通常“ビスフェノールM”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールA”と称される)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールC”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(通常“ビスフェノールAF”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、および2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
上記の中でも、ビスフェノールM、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールAF、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンが好ましい。これらのビスフェノール類は単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
(炭酸ジエステル:C成分)
本発明のポリカーボネート樹脂は、カーボネート結合を形成するために炭酸ジエステル(C成分)を用いて製造する。
炭酸ジエステル(C成分)として、置換されていてもよい炭素原子数6〜12のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基などの炭酸ジエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
炭酸ジエステル(C成分)の量は、炭酸ジエステル(C成分)と、エーテルジオール(A成分)とA成分以外のジオールおよびジフェノール(B成分)の合計量とのモル比(C成分/(A成分+B成分))で、好ましくは1.05〜0.97、より好ましくは1.03〜0.97、さらに好ましくは1.03〜0.99である。C成分が1.05モルより多くなると、充分な重合度が得られなくなる。C成分が0.97モルより少ないと、重合が進行しないばかりでなく、未反応のエーテルジオールやヒドロキシ化合物が残存する。
(ヒドロキシ化合物:D成分)
本発明のポリカーボネート樹脂は、A〜C成分以外に下記式(6)または(7)で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を用いて製造する。
下記式(6)または(7)で表されるヒドロキシ化合物(D成分)において、R1、X、a、R2、R3、R4、R5、R6、b、cは、式(2)および(3)と同じである。ヒドロキシ化合物(D成分)は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。2種類以上使用する場合は、式(6)または(7)で表されるヒドロキシ化合物(D成分)とそれ以外のヒドロキシ化合物とを組み合わせて使用してもよい。ヒドロキシ化合物(D成分)により、ポリカーボネートの耐熱性、熱安定性、成形加工性、耐吸水性が向上する。
本発明のポリカーボネート樹脂は、植物などの再生可能資源から得られる原料を用いた繰り返し単位を主鎖構造に持つことから、末端構造を構成するこれらのヒドロキシ化合物(D成分)もまた植物などの生物起源物質由来のものであることが好ましい。植物から得られるヒドロキシ化合物としては、植物油から得られる炭素原子数14以上の長鎖アルキルアルコール(セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール)などが挙げられる。
ヒドロキシ化合物(D成分)の量は、エーテルジオール(A成分)、該エーテルジオール以外のジオールおよびジフェノール(B成分)の合計量に対して、好ましくは0.01〜7モル%、より好ましくは0.05〜7モル%、さらに好ましくは0.1〜6.8モル%である。ヒドロキシ化合物が0.01モル%より少なくなると、末端変性の効果が得られない。ヒドロキシ化合物が7モル%より多くなると、末端停止剤の量が多すぎて、成形加工に充分な重合度を持つポリカーボネート樹脂が得られない。ヒドロキシ化合物(D成分)を添加する時期は、反応初期、反応後期いずれでも良い。
反応は、溶融重合によって行なうことができる。溶融重合は、A成分〜D成分のエステル交換反応によって生成するアルコールまたはフェノールを高温減圧下にて留出させ行なうことができる。
(反応温度)
反応温度は、エーテルジオールの分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るために、できるだけ低温の条件を用いることが好ましいが、重合反応を適切に進める為には重合温度は180〜280℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは180〜270℃の範囲である。
また、反応初期にはエーテルジオールと炭酸ジエステルとを常圧で加熱し、予備反応させた後、徐々に減圧にして反応後期には系を1.3×10−3〜1.3×10−5MPa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる方法が好ましい。反応時間は通常1〜4時間程度である。
(重合触媒)
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。重合触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二価フェノールのナトリウム塩、二価フェノールのカリウム塩等のアルカリ金属化合物が挙げられる。また水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物が挙げられる。
またテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物が挙げられる。
またアルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類、マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
重合触媒として、含窒素塩基性化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を使用することが好ましい。なかでも、含窒素塩基性化合物とアルカリ金属化合物とを併用して使用することが好ましい。
これらの重合触媒の使用量は、それぞれ炭酸ジエステル(C成分)1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
反応系は、原料、反応混合物、反応生成物に対し不活性な窒素などのガスの雰囲気に保つことが好ましい。窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴンなどを挙げることができる。さらに、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を加えてもよい。
(触媒失活剤)
本発明のポリカーボネート樹脂には、触媒失活剤を添加することもできる。触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤を用いることができる。なかでもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。さらにドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。またスルホン酸のエステルとしてベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。これらの触媒失活剤の使用量は、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた重合触媒1モル当たり、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは0.5〜10モル、さらに好ましくは0.8〜5モルの割合である。
従って、重合触媒の存在下、エーテルジオール(A成分)、該エーテルジオール以外のジオール、ジフェノール(B成分)、炭酸ジエステル(C成分)およびヒドロキシ化合物(D成分)を、常圧で加熱反応させ、次いで減圧下、180〜280℃の温度で加熱しながら溶融重縮合させることが好ましい。
〈ポリカーボネート樹脂の製造方法(II)〉
本発明のポリカーボネート樹脂は、不活性溶媒中で、ピリジン等の酸結合剤の存在下にエーテルジオール(A成分)、A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)とホスゲン(E成分)とを反応させ製造することができる。即ち本発明のポリカーボネート樹脂は、
(A)下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)、
(B)A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)、および(E)ホスゲン(E成分)、
を不活性溶媒中で、酸結合剤の存在下に反応させるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
(D)末端停止剤として下記式(6)または(7)
で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を反応させることにより製造することができる(製造方法(II))。式(6)および(7)中、R1、X、a、R2、R3、R4、R5、R6、b、cは式(2)および(3)と同じである。
A成分、B成分およびD成分は製造方法(I)と同じである。エーテルジオール(A成分)は、イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)であることが好ましい。ヒドロキシ化合物(D成分)は、生物起源物質由来であることが好ましい。末端停止剤として式(6)または(7)で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を用いることにより熱安定性が向上する。
(酸結合剤)
酸結合剤は、ピリジン、キノリンおよびジメチルアニリンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。酸結合剤として特にピリジンが好適である。酸結合剤の使用量は、ホスゲン(E成分)1モルに対して、好ましくは2〜100モル、より好ましくは2〜50モルである。
(不活性溶媒)
不活性溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。なかでも塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が好ましい。塩化メチレンが最も好ましい。反応温度は、好ましくは0〜40℃、より好ましくは5〜30℃である。反応時間は、通常数分〜数日間、好ましくは10分間〜5時間である。
〈ポリカーボネート樹脂の製造方法(III)〉
本発明のOH価の低いポリカーボネート樹脂は、末端停止剤を用いることなく製造することもできる。
即ち、本発明のポリカーボネート樹脂は、重合触媒の存在下、下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)30〜100モル%およびA成分以外のジオールまたはジフェノール(B成分)0〜70モル%からなるジヒドロキシ成分と、炭酸ジエステル成分(C成分)とを常圧で加熱反応させ、次いで減圧下、180℃〜280℃の温度で加熱しながら溶融重縮合させる方法において、
(i)重合開始時に、C成分とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.05〜0.97となるようにし、
(ii)C成分を、重合中のC成分とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.08〜1.00となるようにさらに添加することにより製造することができる。
反応温度は、エーテルジオール(A成分)の分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るために、できるだけ低温の条件を用いることが好ましいが、重合反応を適切に進める為には重合温度は180℃〜280℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは180℃〜270℃の範囲である。
また、反応初期にはジヒドロキシ成分と炭酸ジエステルとを常圧で加熱し、予備反応させた後、徐々に減圧にして反応後期には系を1.3×10−3〜1.3×10−5MPa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる方法が好ましい。反応時間は通常0.5〜4時間程度である。
炭酸ジエステル(C成分)としては、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜18のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(p−ブチルフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
炭酸ジエステル(C成分)は、反応初期(重合開始時)、反応中期(重合中)の二段階に分けて添加する。重合開始時に、炭酸ジエステルとジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.05〜0.97となるように配合する。
重合中には炭酸ジエステルを、炭酸ジエステル(C成分)とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が合計1.08〜1.00となるようにさらに添加する。
重合開始時の配合する炭酸ジエステル(C成分)と重合中に添加する炭酸ジエステル(C成分)の割合は、99:1〜90:10(重量比)の割合が好ましく、98:2〜95:5(重量比)の割合がより好ましい。炭酸ジエステル(C成分)を反応中期に追加しないと、OH価が好ましい範囲よりも多くなってしまい、高吸水性を示し寸法変化を招いたり、熱安定性の悪化につながる。重合途中に追加添加せずに、重合開始時に、炭酸ジエステルとジヒドロキシ成分との比が1.05より多くなるように一度に仕込むと、モルバランスが崩れ充分な重合度が得られず好ましくない。
重合触媒は、含窒素塩基性化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いる。
アルカリ金属化合物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二価フェノールのナトリウム塩またはカリウム塩等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物として、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。含窒素塩基性化合物として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、含窒素塩基性化合物とアルカリ金属化合物とを併用して使用することが好ましい。
これらの重合触媒の使用量は、それぞれ炭酸ジエステル(C成分)1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。また反応系は窒素などの原料、反応混合物、反応生成物に対し不活性なガスの雰囲気に保つことが好ましい。窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴンなどを挙げることができる。更に、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を加えてもよい。
上記製造法により得られたポリカーボネート樹脂に触媒失活剤を添加することもできる。触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましく、更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の上記塩類やパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の上記塩類が好ましい。またスルホン酸のエステルとしてベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられ、その中でもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた前記重合触媒1モル当たり0.5〜50モルの割合で、好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用するこができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、脂肪族ジオール類および/または芳香族ビスフェノール類との共重合としても良い。該脂肪族ジオール類および/または芳香族ビスフェノール類の割合は、全ヒドロキシ成分中70モル%以下であり、50モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましい。これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。
脂肪族ジオールとしては、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖状ジオール類や、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、テルペン系ジメチロールなどの脂環式ジオール類などが挙げられる。中でも1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、テルペン系ジメチロールが好ましく、特に生物起源物質由来になりえるという観点から1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールおよびテルペン系ジメチロールが好ましい。
芳香族ビスフェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン等が挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンが好ましい。
(その他の成分)
また、本発明のポリカーボネート樹脂には、用途に応じて各種の機能付与剤を添加してもよく、例えば熱安定剤、安定化助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、造核剤、重金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などである。
また、本発明のポリカーボネート樹脂には、用途に応じて各種の有機および無機のフィラー、繊維などを複合化して用いることもできる。フィラーとしては例えばカーボン、タルク、マイカ、ワラストナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイトなどを挙げることができる。また、繊維としては例えばケナフなどの天然繊維のほか、各種の合成繊維、ガラス繊維、石英繊維、炭素繊維などが挙げられる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂には、例えば脂肪族ポリエステルの他、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアクリル、ABS、ポリウレタンなどや、ポリ乳酸を始めとする各種の生物起源物質からなるポリマーなどと混合しアロイ化して用いることもできる。
〈成形品〉
本発明は、上記ポリカーボネート樹脂からなる成形品を包含する。本発明の成形品は、射出成形により、得ることができる。適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また、本発明の成形品は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、およびフィルムなどの形で利用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
本発明の成形品は、透明性および色相に優れる。本発明の成形品は、0.03μm以下の算術平均表面粗さ(Ra)を有し、厚み2mmの平板の、JIS K7105で測定されたヘーズは、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜15%である。
また該平板において、b値が0〜14の範囲が好ましく、0〜13の範囲がより好ましく、0〜12の範囲がさらに好ましい。b値は日本電色(株)製分光彩計SE−2000(光源:C/2)を用いて測定することができる。
また本発明の成形品は、縦100mm×横50mm×厚み4mmの成形品とした場合、飽和吸水時における寸法変化率が1.5%以下であることが好ましい。
成形品としてフィルムなどが挙げられる。フィルムは光学用に用いることができる。本発明のフィルムは、本発明のポリカーボネート樹脂を溶媒に溶解させた溶液を流延する溶液キャスト法、本発明のポリカーボネート樹脂をそのまま溶融させて流延する溶融製膜法で製造することができる。
溶液キャスト法によりフィルムを作成する場合には、使用する溶媒としては、汎用性、製造コスト面からハロゲン系溶媒、中でも塩化メチレンを用いることが好ましい。溶液組成物(ドープ)として、塩化メチレンを60重量%以上含有する溶媒15〜90重量部に対して本発明のポリカーボネート樹脂10重量部を溶解させたものが好ましい。溶媒量が90重量部より多いと膜厚が厚く、かつ表面平滑性に優れたキャストフィルムが得られにくいことがあり、また溶媒量が15重量部未満と少ない場合は溶液粘度が高すぎてフィルム製造が困難となることがある。
溶媒として塩化メチレン以外にも必要に応じて製膜性を妨げない範囲で他の溶媒を加えてもよく、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられる。
本発明では、ドープを支持基板上に流延した後、加熱して溶媒を蒸発させることによりフィルムを得ることが出来る。支持基板としてガラス基板、ステンレスやフェロタイプなどの金属基板、PETなどのプラスチック基板などを使用し、ドクターブレードなどでドープを均一に支持基板上に流延させる。工業的にはダイからドープをベルト状もしくはドラム状の支持基板上に連続して押し出す方法が一般的である。
支持基板上に流延したドープは発泡が起きないよう低温から徐々に加熱乾燥していくことが好ましく、加熱して大部分の溶媒を除去して自立性のあるフィルムとしてから支持基板から剥離し、さらにフィルム両面から加熱乾燥して残りの溶媒を除去することが好ましい。基板から剥離した後の乾燥工程では、熱収縮による寸法変化によりフィルムに応力がかかる可能性が高いため、液晶表示装置に用いる光学用フィルムのように精密な光学特性のコントロールが必要とされる製膜においては、乾燥温度、フィルムの固定条件などに留意して行うことが必要である。一般には剥離後の乾燥においては用いるポリカーボネートの(Tg−100℃)〜Tgの範囲で段階的に昇温しながら乾燥する方法をとることが好ましい。Tgを超える温度で乾燥するとフィルムの熱変形が起こり好ましくなく、(Tg−100℃)未満では乾燥温度が著しく遅くなるため好ましくない。
溶液キャスト法で得るフィルム中の残留溶媒量は2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。2重量%を超え、残留溶媒量が多いとフィルムのガラス転移点の低下が著しくなり好ましくない。
溶融製膜法によりフィルムを作成する場合には、一般にTダイから融液を押し出して製膜する。製膜温度は、ポリカーボネートの分子量、Tg、溶融流動特性などから決められるが、通常180〜350℃の範囲であり、200〜320℃の範囲がより好ましい。温度が低すぎると粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすいことがあり、逆に温度が高すぎるのも熱劣化、着色、Tダイからのダイライン(筋)などの問題がおきやすくなることがある。
かくして得られる未延伸フィルムの膜厚は特に制限はなく目的に応じて決められるが、フィルムの製造面、靭性などの物性、コスト面などから10〜300μmが好ましく、より好ましくは20〜200μmである。
フィルムを構成する本発明のポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が60×10−12Pa−1以下であることが好ましく、より好ましくは50×10−12Pa−1以下である。光弾性定数が60×10−12Pa−1より高い場合には、光学用フィルムを張り合わせる際の張力によって位相差が発現したり、他の材料との寸法安定性の違いから生じる応力により位相差が生じやすく、その結果光漏れ、コントラストの低下などの現象が生じて長期的な安定性に劣る場合がある。
また、本発明のフィルムは、その位相差値の波長分散が下記式(i)
1.010<R(450)/R(550)<1.070 (i)
を満足することが好ましく、下記式(ii)
1.010<R(450)/R(550)<1.060 (ii)
を満足することがより好ましい。
ここでR(450)、R(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおけるフィルム面内の位相差値である。このような位相差値の波長分散が小さい位相差フィルムを用いると、特に液晶表示装置のVA(垂直配向)モードにおいて、視野角特性、コントラストに優れたものが得られる。
また、本発明のフィルムは、その位相差を膜厚で割った値(Δn=R(550)/フィルム膜厚(μm))が、未延伸の状態で下記式(iii)
Δn<0.3×10−3 (iii)
を満足することが好ましく、下記式(iv)
Δn<0.25×10−3 (iv)
を満足することがより好ましい。下限は特に限定されず0(零)より大きい範囲であればよい。
本発明のフィルムとしては、未延伸フィルムを1軸延伸または2軸延伸など公知の延伸方法によりポリマーを配向させたものも好適である。かかる延伸により例えば液晶表示装置の位相差フィルムとして用いることが出来る。延伸温度はポリマーのTg近傍の、通常(Tg−20℃)〜(Tg+20℃)の範囲で行われ、延伸倍率は縦一軸延伸の場合、通常1.02倍〜3倍である。延伸フィルムの膜厚としては20〜200μmの範囲であることが好ましい。
本発明で得られる好ましい位相差フィルムの一つとして、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)が下記式(1)の範囲にあって、
100nm<R(550)<2000nm ・・・(1)
かつ膜厚が10〜150μmである位相差フィルムが挙げられる。ここで位相差Rとは下記式(5)で定義されるものであり、フィルムに垂直方向に透過する光の位相の遅れを表す特性である。
R=(nx−ny)×d ・・・(5)
[式中、nxはフィルム面内の遅相軸(最も屈折率が高い軸)の屈折率のことであり、nyはフィルム面内でnxと垂直方向の屈折率であり、dは膜厚である。]
ここでR(550)は100〜600nmがより好ましい。また膜厚は30〜120μmがより好ましく、さらに好ましくは30〜100μmである。かかる位相差フィルムは一軸延伸または二軸延伸により作成することが出来、1/4λ板、1/2λ板、λ板等に好適に用いられる。
また別の好ましい位相差フィルムとして、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)および膜厚方向の位相差Rth(550)が下記式(2)、(3)の範囲にあり、
0nm<R(550)<150nm ・・・(2)
100nm<Rth(550)<400nm ・・・(3)
(式中、Rth(550)は波長550nmにおける膜厚方向の位相差値であり、下記式(4)によって定義されるものである。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d ・・・(4)
(式中、nx、nyはフィルム面内のx軸、y軸の、nzはx軸およびy軸に垂直な厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの膜厚である。)
かつ膜厚が10〜150μmである位相差フィルムも挙げられる。
かかるフィルムは2軸延伸によって作製することができる。
上述したΔnの範囲を満足する特性を持つ本発明の樹脂を用いたフィルムは、延伸後の位相差が発現し易く、位相差制御性が良好であり工業的にも好適である。
本発明のフィルムは、全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、ヘイズ値は5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下である。本発明のフィルムは、透明性に優れることから光学用フィルムとして好適である。
本発明のフィルムは1枚単独で用いてもよいし、2枚以上積層して用いてもよい。また他の素材からなる光学用フィルムと組み合わせて用いてもよい。偏光板の保護膜として用いてもよいし、また液晶表示装置の透明基板として用いてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。但し、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。なお実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によった。
(1)比粘度(ηsp)
ペレットを塩化メチレンに溶解、濃度を0.7g/dLとして、温度20℃にて、オストワルド粘度計(装置名:RIGO AUTO VISCOSIMETER TYPE VMR−0525・PC)を使用して測定した。なお、比粘度ηspは下記式から求めた。
ηsp=t/to−1
t :試料溶液のフロータイム
to :溶媒のみのフロータイム
(2)末端変性基含有率
JEOL製JNM−AL400を用いてペレットの重クロロホルム溶液中における1H−NMRを測定し、主鎖カーボネート構成単位由来の特定プロトンと末端ヒドロキシ化合物由来の特定プロトンとの積分比から末端変性基含有率を求めた。なお末端変性基含有率は主鎖カーボネート構成単位に対する末端ヒドロキシ化合物の割合(モル%)である。
(3)ガラス転移温度(Tg)
ペレットを用いてTA Instruments社製 DSC (型式 DSC2910)により測定した。
(4)5%重量減少温度(Td)
ペレットを用いてTA Instruments社製 TGA (型式 TGA2950)により測定した。
(5)成形加工性
ペレットを日本製鋼所(株)製 JSWJ−75EIIIを用いて射出成形を行い、厚み2mmの成形板の形状を目視にて評価した(金型温度:70〜90℃、成形温度:220〜260℃)。
成形加工性
○;濁り、割れ、ヒケ、分解によるシルバーなどが見られない。
X;濁り、割れ、ヒケ、分解によるシルバーなどが見られる。
(6)接触角
2mm厚の成形板を協和界面科学(株)製 滴下式接触角計を用いて純水に対する接触角を測定した。
(7)吸水率
予め100℃で24時間乾燥した2mm厚の成形板を25℃の水中に浸し、24時間後の重量を測定し、吸水率を下記式から計算した。
(8)フィルムの膜厚
フィルムの膜厚は、(株)ミツトヨ製の膜厚測定計で測定した。
(9)光弾性定数
幅1cm、長さ6cmのフィルムを準備し、このフィルムの無荷重状態の位相差、1N、2N、3N荷重時の波長550nmの光の位相差を日本分光(株)製分光エリプソメーター「M220」で測定し(位相差)×(フィルム幅)/(荷重)を計算することにより求めた。
(10)フィルムの全光線透過率およびヘイズ値
日本電色工業(株)製濁度計NDH−2000型を用いて測定した。
(11)位相差値(R(450)、R(550))およびその波長分散(R(450)/R(550))
日本分光(株)製分光エリプソメーター「M220」により、波長450nmおよび波長550nmで測定した。位相差値はフィルム面に対して垂直入射光線に対する位相差値を測定した。
(12)膜厚方向の位相差値Rth
日本分光(株)製分光エリプソメーターM220を使用し、光線波長550nmで測定した。面内位相差値Rは、入射光線がフィルム面に垂直な状態で測定したものである。膜厚方向位相差値Rthは、入射光線とフィルム面との角度を少しずつ変えそれぞれの角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッティングすることにより三次元屈折率であるnx、ny、nzを求め、Rth={(nx+ny)/2−nz}×d に代入することにより求めた。なおその際、フィルムの平均屈折率が必要となるが、別にアッベ屈折計((株)アタゴ製商品名「アッベ屈折計2−T」を用いて測定した。
(13)OH価
JEOL製JNM−AL400を用いてペレットの重クロロホルム溶液中における1H−NMRを測定し、式(5)で表わされる化合物に由来するヒドロキシ末端の特定プロトンおよび式(5)で表わされる化合物以外(炭酸ジエステルまたはその他特定の化合物)に由来する末端基の特定プロトンを用いて、OH価を下記式から求めた。
OH価=Rm×ROH×17
Rm:{1000000/重合度(重量平均分子量)}×2
ROH:1H−NMRの積分比から求めた末端ヒドロキシ化合物の全末端基(式(5)で表わされる化合物に由来するヒドロキシ化合物末端基および炭酸ジエステル等式(5)で表わされる化合物以外に由来する末端基)に対する割合
(14)生物起源物質含有率
ASTM D6866 05に準拠し、放射性炭素濃度(percent modern carbon;C14)による生物起源物質含有率試験から、生物起源物質含有率を測定した。
(15)湿熱条件下における分子量保持率
予めポリマーラボラトリーズ社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、GPC (カラム温度40℃、クロロホルム溶媒)で重量平均分子量(Mw)を測定し、ポリスチレンを標準としてサンプルとの比較により重量平均分子量を求めたペレットを120℃、100%RHの条件下に放置し、11時間後のペレットの重量平均分子量を測定した。また、ペレットを120℃、0.1%RH未満の条件下に放置し、15日後のペレットの重量平均分子量を測定した。
(16)飽和吸水率
予め100℃で24時間乾燥した縦60mm×横60mm×厚み1mmの成形板を23℃の水中に浸し、一日ごとに取り出してその重量を測定し、吸水率を下記式から計算した。なお、飽和吸水率は上記成形板の吸水による重量増加が無くなった時点での吸水率とした。
(17)寸法変化率
予め100℃で24時間乾燥した縦100mm×横50mm×厚み4mmの成形板を23℃の水中に浸し、定期的に取り出してその重量を測定した。吸水による重量増加が無くなった時点を飽和吸水時とし、その時の寸法変化を測定した。寸法変化率は下記式で表し、長辺、短辺の寸法変化率の平均をこの成形板の寸法変化率として示した。
実施例1
イソソルビド731重量部(5.00モル)とジフェニルカーボネート2,206重量部(10.30モル)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1,141重量部(5.00モル)とステアリルアルコール81重量部(0.30モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを1.0重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して1×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを0.9×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して0.2×10−6モル)仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
撹拌下、反応槽内を30分かけて徐々に減圧し、生成するフェノールを留去しながら13.3×10−3MPaまで減圧した。この状態で20分反応させた後に200℃に昇温した後、20分かけて徐々に減圧し、フェノールを留去しながら4.00×10−3MPaで20分間反応させ、さらに、220℃に昇温し30分間、250℃に昇温し30分間反応させた。
次いで、徐々に減圧し、2.67×10−3MPaで10分間、1.33×10−3MPaで10分間反応を続行し、さらに減圧し、4.00×10−5MPaに到達したら、徐々に250℃まで昇温し、最終的に250℃,6.66×10−5MPaで1時間反応せしめた。反応後のポリマーをペレット化し、比粘度が0.26であるペレットを得た。このペレットのその他の評価結果については表1に示した。
実施例2
イソソルビド906重量部(6.20モル)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン868重量部(3.80モル)とペンタデシルフェノール122重量部(0.40モル)とを温度計、撹拌機付き反応器に仕込み、窒素置換した後、あらかじめよく乾燥したピリジン8,900重量部、塩化メチレン32,700重量部を加え溶解した。撹拌下20℃でホスゲン1,420重量部(14.30モル)を100分要して吹込んだ。ホスゲン吹込み終了後、約20分間そのまま撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈し、ピリジンを塩酸で中和除去後、導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで繰り返し水洗し、その後塩化メチレンを蒸発してパウダーを得た。得られたパウダーを溶融押出してストランドを切断しペレットを得た。このペレットは比粘度が0.27であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例3
イソソルビド1,242重量部(8.50モル)と1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン402重量部(1.50モル)とジフェニルカーボネート2,185重量部(10.20モル)と1−ヘキサノール61重量部(0.60モル)とを使用した以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。得られたペレットは比粘度が0.32であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例4
イソソルビド1,374重量部(9.40モル)と1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン196重量部(0.60モル)とジフェニルカーボネート2,164重量部(10.10モル)と下記式(16)
(式中、n=9)で表わされる片末端反応性ポリジメチルシロキサン11重量部(0.01モル)とを使用した以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。このペレットは比粘度が0.34であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例5
イソソルビド1,242重量部(8.50モル)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン405重量部(1.50モル)とジフェニルカーボネート2,164重量部(10.10モル)と4−ヒドロキシ安息香酸−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシルエステル(下記式(17))
19重量部(0.03モル)とを使用した以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。このペレットは比粘度が0.39であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例6
イソソルビド1,023重量部(7.00モル)と1,3−プロパンジオール228重量部(3.00モル)とジフェニルカーボネート2,185重量部(10.20モル)とステアリルアルコール81重量部(0.30モル)とした以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。このペレットは比粘度が0.31であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例7
イソソルビド1,374重量部(9.40モル)と1,4−シクロヘキサンジメタノール85重量部(0.60モル)とジフェニルカーボネート2,185重量部(10.20モル)とペンタデシルフェノール122重量部(0.40モル)とを使用した以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。このペレットは比粘度が0.31であった。その他の評価結果については表1に示した。
比較例1
イソソルビド1,461重量部(10.00モル)とジフェニルカーボネート2,142重量部(10.00モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを1.0重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して1×10−4モル)、および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩を5.4×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して0.2×10−6モル)仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
撹拌下、反応槽内を30分かけて徐々に減圧し、生成するフェノールを留去しながら13.3×10−3MPaまで減圧した。この状態で20分反応させた後に200℃に昇温した後、20分かけて徐々に減圧し、フェノールを留去しながら4.00×10−3MPaで20分間反応させ、さらに、220℃に昇温し30分間、250℃に昇温し30分間反応させた。
次いで、徐々に減圧し、2.67×10−3MPaで10分間、1.33×10−3MPaで10分間反応を続行し、さらに減圧し、4.00×10−5MPaに到達したら、徐々に260℃まで昇温し、最終的に260℃、6.66×10−5MPaで2時間反応せしめた。反応後のポリマーをペレット化し、比粘度が0.36のペレットを得た。なお、この場合、末端変性になりうるヒドロキシ化合物を加えていないために末端変性基含有率は0モル%となる。その他の評価結果については表1に示した。
比較例2
イソソルビド1,608重量部(11.00モル)とジフェニルカーボネート2,474重量部(11.55モル)と3−ペンタデシルフェノール268重量部(0.88モル)とした以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。このペレットは比粘度が0.16、末端変性基含有率は7.4モル%であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例8
実施例7で得られた末端変性ポリカーボネート樹脂をKZW15−30MGフィルム成形装置((株)テクノベル製)およびKYA−2H−6 ロール温調機((株)加藤理機製作所製)を用いて溶融製膜フィルムを得た。押出し機シリンダー温度は220℃〜260℃の範囲内に保持し、ロール温度は140〜160℃にて行った。得られたフィルムの物性を表2に示した。
比較例3
ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂である帝人化成(株)製パンライト(登録商標)L1225を用いて、KZW15−30MGフィルム成形装置((株)テクノベル製)およびKYA−2H−6 ロール温調機((株)加藤理機製作所製)を用いて溶融製膜フィルムを得た。押出し機シリンダー温度は260℃〜300℃の範囲内に保持し、ロール温度は140〜160℃にて行った。得られたフィルムの物性を表2に示した。実施例8のポリカーボネートフィルムと比べて光弾性定数が高く、また位相差値の波長分散が大きいことが分かる。
実施例9〜11
実施例8で得た未延伸の末端変性ポリカーボネートフィルムを、延伸機を用いて延伸温度150〜160℃で3通りの延伸倍率にて1軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。これらの延伸フィルムの位相差値およびその波長分散の物性を表3に示した。
実施例12
実施例8で得た未延伸の末端変性ポリカーボネートフィルムを、バッチ式同時2軸延伸機を用いて、同時2軸延伸を行った。倍率は一方向が1.3倍、もう一方向が1.4倍、延伸温度は140℃で行った。得られた2軸配向フィルムについて、物性を表4に示した。
比較例4および5
比較例3で得たポリカーボネートフィルムを、延伸機を用いて延伸温度120℃で2通りの延伸倍率にて1軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。これらの延伸フィルムの位相差値およびその波長分散の物性を表3に示した。実施例9〜11の末端変性ポリカーボネートフィルムと比べて、延伸後の位相差が発現し難く、また位相差値の波長分散が大きく、位相差制御性に劣ることが分かる。
実施例13
イソソルビド7,307重量部(50モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを1.4重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを6.1×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−6モル)仕込んで窒素雰囲気下、常圧で180℃に加熱し溶融させた。撹拌下、反応槽内を30分かけて徐々に減圧し、生成するフェノールを留去しながら13.3×10−3MPaまで減圧した。この状態で20分反応させた後に200℃に昇温した後、20分かけて徐々に減圧し、フェノールを留去しながら4.0×10−3MPaで20分間反応させ、さらに、220℃に昇温し30分間、250℃に昇温し30分間反応させたところ、フェノールが理論留出量の93%(105g)留去した時点で、反応槽内を窒素にて常圧に戻し、ジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を添加し、徐々に減圧し、2.67×10−3MPaまで減圧した。この減圧度で10分間、次いで1.33×10−3MPaで10分間反応を続行し、さらに減圧し、4.00×10−5MPaに到達したら、徐々に250℃まで昇温し、最終的に250℃、6.66×10−5MPaで1時間反応せしめた。その結果、比粘度が0.35のポリマーが得られた。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例14
実施例13と同様に原料を仕込み、重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート642重量部(3.0モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度が0.32のペレットを得た。評価結果については表5に示した。
実施例15
イソソルビド6,210重量部(42.5モル)と1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン2,449重量部(7.5モル;融点92℃)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.34のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例16
イソソルビド6,210重量部(42.5モル)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン2,020重量部(7.5モル;融点154℃)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.28のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例17
イソソルビド4,969重量部(34モル)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3,652重量部(16モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.25のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例18
イソソルビド5,115重量部(35モル)と1,3−プロパンジオール1,142重量部(15モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.27のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例19
イソソルビド5,846重量部(40モル)とシクロヘキサンジメタノール1,442重量部(10モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.27のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例20
イソソルビド6,576重量部(45モル)と3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン 1,520重量部(5モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.29のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例21
イソソルビド5,846重量部(40モル)と1,6−ヘキサンジオール1,182重量部(10モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.28のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
比較例6
イソソルビド7,307重量部(50モル)とジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とを反応器に入れ、反応途中にジフェニルカーボネートを後添加しないこと以外は実施例13と同様に重合させて比粘度0.34のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
比較例7
イソソルビド7,307重量部(50モル)とジフェニルカーボネート11,354重量部(53モル)とを反応器に入れ、反応途中にジフェニルカーボネートを後添加しないこと以外は実施例13と同様に重合させて比粘度0.12のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示すが、非常に脆く成型不可であるために吸水率の測定が出来なかった。
発明の効果
本発明のポリカーボネート樹脂は、主鎖が生物起源物質由来の単位を含み生物起源物質の含有率が高い。また本発明のポリカーボネート樹脂は、極性の高いエーテルジオール成分を含有するが耐吸湿性に優れ、成形品の寸法安定性、湿熱安定性に優れる。また本発明のポリカーボネート樹脂は、耐熱性および熱安定性に優れる。また本発明のポリカーボネート樹脂は、生物起源物質の含有率が高い割に溶融粘度が低く、成形加工性に優れる。またまた本発明のポリカーボネート樹脂は、表面エネルギーが高く、汚れ難く、耐摩耗性に優れる。
本発明の製造方法によれば、生物起源物質から誘導される部分を含有し、且つ耐吸湿性、耐熱性、熱安定性および成形加工性に優れ、高い表面エネルギーを有するポリカーボネート樹脂を得ることができる。
本発明の光学用フィルムは、光弾性定数が低く、位相差の発現性および位相差制御性が良好で、視野角特性に優れ、かつ耐熱性および熱安定性に優れる。
(1)比粘度(ηsp)
ペレットを塩化メチレンに溶解、濃度を0.7g/dLとして、温度20℃にて、オストワルド粘度計(装置名:RIGO AUTO VISCOSIMETER TYPE VMR−0525・PC)を使用して測定した。なお、比粘度ηspは下記式から求めた。
ηsp=t/to−1
t :試料溶液のフロータイム
to :溶媒のみのフロータイム
(2)末端変性基含有率
JEOL製JNM−AL400を用いてペレットの重クロロホルム溶液中における1H−NMRを測定し、主鎖カーボネート構成単位由来の特定プロトンと末端ヒドロキシ化合物由来の特定プロトンとの積分比から末端変性基含有率を求めた。なお末端変性基含有率は主鎖カーボネート構成単位に対する末端ヒドロキシ化合物の割合(モル%)である。
(3)ガラス転移温度(Tg)
ペレットを用いてTA Instruments社製 DSC (型式 DSC2910)により測定した。
(4)5%重量減少温度(Td)
ペレットを用いてTA Instruments社製 TGA (型式 TGA2950)により測定した。
(5)成形加工性
ペレットを日本製鋼所(株)製 JSWJ−75EIIIを用いて射出成形を行い、厚み2mmの成形板の形状を目視にて評価した(金型温度:70〜90℃、成形温度:220〜260℃)。
成形加工性
○;濁り、割れ、ヒケ、分解によるシルバーなどが見られない。
X;濁り、割れ、ヒケ、分解によるシルバーなどが見られる。
(6)接触角
2mm厚の成形板を協和界面科学(株)製 滴下式接触角計を用いて純水に対する接触角を測定した。
(7)吸水率
予め100℃で24時間乾燥した2mm厚の成形板を25℃の水中に浸し、24時間後の重量を測定し、吸水率を下記式から計算した。
(8)フィルムの膜厚
フィルムの膜厚は、(株)ミツトヨ製の膜厚測定計で測定した。
(9)光弾性定数
幅1cm、長さ6cmのフィルムを準備し、このフィルムの無荷重状態の位相差、1N、2N、3N荷重時の波長550nmの光の位相差を日本分光(株)製分光エリプソメーター「M220」で測定し(位相差)×(フィルム幅)/(荷重)を計算することにより求めた。
(10)フィルムの全光線透過率およびヘイズ値
日本電色工業(株)製濁度計NDH−2000型を用いて測定した。
(11)位相差値(R(450)、R(550))およびその波長分散(R(450)/R(550))
日本分光(株)製分光エリプソメーター「M220」により、波長450nmおよび波長550nmで測定した。位相差値はフィルム面に対して垂直入射光線に対する位相差値を測定した。
(12)膜厚方向の位相差値Rth
日本分光(株)製分光エリプソメーターM220を使用し、光線波長550nmで測定した。面内位相差値Rは、入射光線がフィルム面に垂直な状態で測定したものである。膜厚方向位相差値Rthは、入射光線とフィルム面との角度を少しずつ変えそれぞれの角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッティングすることにより三次元屈折率であるnx、ny、nzを求め、Rth={(nx+ny)/2−nz}×d に代入することにより求めた。なおその際、フィルムの平均屈折率が必要となるが、別にアッベ屈折計((株)アタゴ製商品名「アッベ屈折計2−T」を用いて測定した。
(13)OH価
JEOL製JNM−AL400を用いてペレットの重クロロホルム溶液中における1H−NMRを測定し、式(5)で表わされる化合物に由来するヒドロキシ末端の特定プロトンおよび式(5)で表わされる化合物以外(炭酸ジエステルまたはその他特定の化合物)に由来する末端基の特定プロトンを用いて、OH価を下記式から求めた。
OH価=Rm×ROH×17
Rm:{1000000/重合度(重量平均分子量)}×2
ROH:1H−NMRの積分比から求めた末端ヒドロキシ化合物の全末端基(式(5)で表わされる化合物に由来するヒドロキシ化合物末端基および炭酸ジエステル等式(5)で表わされる化合物以外に由来する末端基)に対する割合
(14)生物起源物質含有率
ASTM D6866 05に準拠し、放射性炭素濃度(percent modern carbon;C14)による生物起源物質含有率試験から、生物起源物質含有率を測定した。
(15)湿熱条件下における分子量保持率
予めポリマーラボラトリーズ社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、GPC (カラム温度40℃、クロロホルム溶媒)で重量平均分子量(Mw)を測定し、ポリスチレンを標準としてサンプルとの比較により重量平均分子量を求めたペレットを120℃、100%RHの条件下に放置し、11時間後のペレットの重量平均分子量を測定した。また、ペレットを120℃、0.1%RH未満の条件下に放置し、15日後のペレットの重量平均分子量を測定した。
(16)飽和吸水率
予め100℃で24時間乾燥した縦60mm×横60mm×厚み1mmの成形板を23℃の水中に浸し、一日ごとに取り出してその重量を測定し、吸水率を下記式から計算した。なお、飽和吸水率は上記成形板の吸水による重量増加が無くなった時点での吸水率とした。
(17)寸法変化率
予め100℃で24時間乾燥した縦100mm×横50mm×厚み4mmの成形板を23℃の水中に浸し、定期的に取り出してその重量を測定した。吸水による重量増加が無くなった時点を飽和吸水時とし、その時の寸法変化を測定した。寸法変化率は下記式で表し、長辺、短辺の寸法変化率の平均をこの成形板の寸法変化率として示した。
実施例1
イソソルビド731重量部(5.00モル)とジフェニルカーボネート2,206重量部(10.30モル)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1,141重量部(5.00モル)とステアリルアルコール81重量部(0.30モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを1.0重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して1×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを0.9×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して0.2×10−6モル)仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
撹拌下、反応槽内を30分かけて徐々に減圧し、生成するフェノールを留去しながら13.3×10−3MPaまで減圧した。この状態で20分反応させた後に200℃に昇温した後、20分かけて徐々に減圧し、フェノールを留去しながら4.00×10−3MPaで20分間反応させ、さらに、220℃に昇温し30分間、250℃に昇温し30分間反応させた。
次いで、徐々に減圧し、2.67×10−3MPaで10分間、1.33×10−3MPaで10分間反応を続行し、さらに減圧し、4.00×10−5MPaに到達したら、徐々に250℃まで昇温し、最終的に250℃,6.66×10−5MPaで1時間反応せしめた。反応後のポリマーをペレット化し、比粘度が0.26であるペレットを得た。このペレットのその他の評価結果については表1に示した。
実施例2
イソソルビド906重量部(6.20モル)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン868重量部(3.80モル)とペンタデシルフェノール122重量部(0.40モル)とを温度計、撹拌機付き反応器に仕込み、窒素置換した後、あらかじめよく乾燥したピリジン8,900重量部、塩化メチレン32,700重量部を加え溶解した。撹拌下20℃でホスゲン1,420重量部(14.30モル)を100分要して吹込んだ。ホスゲン吹込み終了後、約20分間そのまま撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈し、ピリジンを塩酸で中和除去後、導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで繰り返し水洗し、その後塩化メチレンを蒸発してパウダーを得た。得られたパウダーを溶融押出してストランドを切断しペレットを得た。このペレットは比粘度が0.27であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例3
イソソルビド1,242重量部(8.50モル)と1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン402重量部(1.50モル)とジフェニルカーボネート2,185重量部(10.20モル)と1−ヘキサノール61重量部(0.60モル)とを使用した以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。得られたペレットは比粘度が0.32であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例4
イソソルビド1,374重量部(9.40モル)と1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン196重量部(0.60モル)とジフェニルカーボネート2,164重量部(10.10モル)と下記式(16)
(式中、n=9)で表わされる片末端反応性ポリジメチルシロキサン11重量部(0.01モル)とを使用した以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。このペレットは比粘度が0.34であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例5
イソソルビド1,242重量部(8.50モル)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン405重量部(1.50モル)とジフェニルカーボネート2,164重量部(10.10モル)と4−ヒドロキシ安息香酸−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシルエステル(下記式(17))
19重量部(0.03モル)とを使用した以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。このペレットは比粘度が0.39であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例6
イソソルビド1,023重量部(7.00モル)と1,3−プロパンジオール228重量部(3.00モル)とジフェニルカーボネート2,185重量部(10.20モル)とステアリルアルコール81重量部(0.30モル)とした以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。このペレットは比粘度が0.31であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例7
イソソルビド1,374重量部(9.40モル)と1,4−シクロヘキサンジメタノール85重量部(0.60モル)とジフェニルカーボネート2,185重量部(10.20モル)とペンタデシルフェノール122重量部(0.40モル)とを使用した以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。このペレットは比粘度が0.31であった。その他の評価結果については表1に示した。
比較例1
イソソルビド1,461重量部(10.00モル)とジフェニルカーボネート2,142重量部(10.00モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを1.0重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して1×10−4モル)、および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩を5.4×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して0.2×10−6モル)仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
撹拌下、反応槽内を30分かけて徐々に減圧し、生成するフェノールを留去しながら13.3×10−3MPaまで減圧した。この状態で20分反応させた後に200℃に昇温した後、20分かけて徐々に減圧し、フェノールを留去しながら4.00×10−3MPaで20分間反応させ、さらに、220℃に昇温し30分間、250℃に昇温し30分間反応させた。
次いで、徐々に減圧し、2.67×10−3MPaで10分間、1.33×10−3MPaで10分間反応を続行し、さらに減圧し、4.00×10−5MPaに到達したら、徐々に260℃まで昇温し、最終的に260℃、6.66×10−5MPaで2時間反応せしめた。反応後のポリマーをペレット化し、比粘度が0.36のペレットを得た。なお、この場合、末端変性になりうるヒドロキシ化合物を加えていないために末端変性基含有率は0モル%となる。その他の評価結果については表1に示した。
比較例2
イソソルビド1,608重量部(11.00モル)とジフェニルカーボネート2,474重量部(11.55モル)と3−ペンタデシルフェノール268重量部(0.88モル)とした以外は実施例1と同様に重合させてペレットを得た。このペレットは比粘度が0.16、末端変性基含有率は7.4モル%であった。その他の評価結果については表1に示した。
実施例7で得られた末端変性ポリカーボネート樹脂をKZW15−30MGフィルム成形装置((株)テクノベル製)およびKYA−2H−6 ロール温調機((株)加藤理機製作所製)を用いて溶融製膜フィルムを得た。押出し機シリンダー温度は220℃〜260℃の範囲内に保持し、ロール温度は140〜160℃にて行った。得られたフィルムの物性を表2に示した。
比較例3
ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂である帝人化成(株)製パンライト(登録商標)L1225を用いて、KZW15−30MGフィルム成形装置((株)テクノベル製)およびKYA−2H−6 ロール温調機((株)加藤理機製作所製)を用いて溶融製膜フィルムを得た。押出し機シリンダー温度は260℃〜300℃の範囲内に保持し、ロール温度は140〜160℃にて行った。得られたフィルムの物性を表2に示した。実施例8のポリカーボネートフィルムと比べて光弾性定数が高く、また位相差値の波長分散が大きいことが分かる。
実施例8で得た未延伸の末端変性ポリカーボネートフィルムを、延伸機を用いて延伸温度150〜160℃で3通りの延伸倍率にて1軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。これらの延伸フィルムの位相差値およびその波長分散の物性を表3に示した。
実施例12
実施例8で得た未延伸の末端変性ポリカーボネートフィルムを、バッチ式同時2軸延伸機を用いて、同時2軸延伸を行った。倍率は一方向が1.3倍、もう一方向が1.4倍、延伸温度は140℃で行った。得られた2軸配向フィルムについて、物性を表4に示した。
比較例4および5
比較例3で得たポリカーボネートフィルムを、延伸機を用いて延伸温度120℃で2通りの延伸倍率にて1軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。これらの延伸フィルムの位相差値およびその波長分散の物性を表3に示した。実施例9〜11の末端変性ポリカーボネートフィルムと比べて、延伸後の位相差が発現し難く、また位相差値の波長分散が大きく、位相差制御性に劣ることが分かる。
イソソルビド7,307重量部(50モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを1.4重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを6.1×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−6モル)仕込んで窒素雰囲気下、常圧で180℃に加熱し溶融させた。撹拌下、反応槽内を30分かけて徐々に減圧し、生成するフェノールを留去しながら13.3×10−3MPaまで減圧した。この状態で20分反応させた後に200℃に昇温した後、20分かけて徐々に減圧し、フェノールを留去しながら4.0×10−3MPaで20分間反応させ、さらに、220℃に昇温し30分間、250℃に昇温し30分間反応させたところ、フェノールが理論留出量の93%(105g)留去した時点で、反応槽内を窒素にて常圧に戻し、ジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を添加し、徐々に減圧し、2.67×10−3MPaまで減圧した。この減圧度で10分間、次いで1.33×10−3MPaで10分間反応を続行し、さらに減圧し、4.00×10−5MPaに到達したら、徐々に250℃まで昇温し、最終的に250℃、6.66×10−5MPaで1時間反応せしめた。その結果、比粘度が0.35のポリマーが得られた。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例14
実施例13と同様に原料を仕込み、重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート642重量部(3.0モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度が0.32のペレットを得た。評価結果については表5に示した。
実施例15
イソソルビド6,210重量部(42.5モル)と1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン2,449重量部(7.5モル;融点92℃)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.34のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例16
イソソルビド6,210重量部(42.5モル)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン2,020重量部(7.5モル;融点154℃)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.28のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例17
イソソルビド4,969重量部(34モル)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3,652重量部(16モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.25のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例18
イソソルビド5,115重量部(35モル)と1,3−プロパンジオール1,142重量部(15モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.27のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例19
イソソルビド5,846重量部(40モル)とシクロヘキサンジメタノール1,442重量部(10モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.27のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例20
イソソルビド6,576重量部(45モル)と3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン 1,520重量部(5モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.29のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
実施例21
イソソルビド5,846重量部(40モル)と1,6−ヘキサンジオール1,182重量部(10モル)およびジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とし重合反応を進行させ、反応途中にジフェニルカーボネート321重量部(1.5モル)を後添加した以外は実施例13と同様に重合させ、比粘度0.28のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
比較例6
イソソルビド7,307重量部(50モル)とジフェニルカーボネート10,711重量部(50モル)とを反応器に入れ、反応途中にジフェニルカーボネートを後添加しないこと以外は実施例13と同様に重合させて比粘度0.34のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示した。
比較例7
イソソルビド7,307重量部(50モル)とジフェニルカーボネート11,354重量部(53モル)とを反応器に入れ、反応途中にジフェニルカーボネートを後添加しないこと以外は実施例13と同様に重合させて比粘度0.12のポリマーを得た。このポリマーの評価結果については表5に示すが、非常に脆く成型不可であるために吸水率の測定が出来なかった。
本発明のポリカーボネート樹脂は、主鎖が生物起源物質由来の単位を含み生物起源物質の含有率が高い。また本発明のポリカーボネート樹脂は、極性の高いエーテルジオール成分を含有するが耐吸湿性に優れ、成形品の寸法安定性、湿熱安定性に優れる。また本発明のポリカーボネート樹脂は、耐熱性および熱安定性に優れる。また本発明のポリカーボネート樹脂は、生物起源物質の含有率が高い割に溶融粘度が低く、成形加工性に優れる。またまた本発明のポリカーボネート樹脂は、表面エネルギーが高く、汚れ難く、耐摩耗性に優れる。
本発明の製造方法によれば、生物起源物質から誘導される部分を含有し、且つ耐吸湿性、耐熱性、熱安定性および成形加工性に優れ、高い表面エネルギーを有するポリカーボネート樹脂を得ることができる。
本発明の光学用フィルムは、光弾性定数が低く、位相差の発現性および位相差制御性が良好で、視野角特性に優れ、かつ耐熱性および熱安定性に優れる。
本発明のポリカーボネート樹脂は、光学用シート、光学用ディスク、情報ディスク、光学レンズ、プリズム等の光学用部品、各種機械部品、建築材料、自動車部品、電気電子部品、OA機器部品、各種の樹脂トレー、食器類をはじめとする様々な用途に使用される。
Claims (18)
- 下記式(2)または(3)
{上記式(2)、(3)において、R1は炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、フェニル基、または下記式(4)
(上記式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は夫々独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、bは0〜3の整数、cは4〜100の整数である)で表される基であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。}
で表される末端基を主鎖に対して0.01〜7モル%含有する請求項1記載のポリカーボネート樹脂。 - 式(1)の単位が、イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)由来の単位である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
- 23℃、24時間後の吸水率が、0.75%以下である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
- 120℃、相対湿度100%における11時間後の分子量保持率が80%以上である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
- (A)下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)、
(B)A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)、
(C)炭酸ジエステル(C成分)および
(D)A成分とB成分の合計に対して0.01〜7モル%の下記式(6)または(7)
{上記式(6)、(7)において、R1は炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、フェニル基、または下記式(4)
(上記式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は夫々独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、bは0〜3の整数、cは4〜100の整数である)で表される基であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。}
で表されるヒドロキシ化合物(D成分)、
を反応させることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。 - 炭酸ジエステル(C成分)の量が、A成分とB成分との合計に対して、モル比率(C成分/(A成分+B成分))で1.05〜0.97である請求項6記載の製造方法。
- 重合触媒の存在下、A成分〜D成分を、常圧で加熱反応させ、次いで減圧下、180℃〜280℃の温度で加熱しながら溶融重縮合させる請求項6記載の製造方法。
- 重合触媒として、含窒素塩基性化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を使用する請求項6記載の製造方法。
- エーテルジオール(A成分)が、イソソルビド(1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)である請求項6記載の製造方法。
- (A)下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)、
(B)A成分以外のジオールおよび/またはジフェノール(B成分)、および(E)ホスゲン(E成分)、
を不活性溶媒中で、酸結合剤の存在下に反応させるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
(D)末端停止剤として下記式(6)または(7)
{上記式(6)、(7)において、R1は炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、フェニル基、または下記式(4)
(上記式(4)中、R2、R3、R4、R5およびR6は夫々独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、bは0〜3の整数、cは4〜100の整数である)で表される基であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。}
で表されるヒドロキシ化合物(D成分)を反応させることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。 - 酸結合剤が、ピリジン、キノリンおよびジメチルアニリンからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項11記載の製造方法。
- エーテルジオール(A成分)が、イソソルビド(1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)である請求項11記載の製造方法。
- 重合触媒の存在下、下記式(5)
で表されるエーテルジオール(A成分)30〜100モル%および該エーテルジオール(A成分)以外のジオールまたはジフェノール(B成分)0〜70モル%からなるジヒドロキシ成分と、炭酸ジエステル成分(C成分)とを常圧で加熱反応させ、次いで減圧下、180℃〜280℃の温度で加熱しながら溶融重縮合させる方法において、
(i)重合開始時に、C成分とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.05〜0.97となるようにし、
(ii)C成分を、重合中のC成分とジヒドロキシ成分との比(C成分/(A成分+B成分))が1.08〜1.00となるようにさらに添加することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。 - 炭酸ジエステル成分(C成分)としてジフェニルカーボネートを使用する請求項14記載の製造方法。
- 請求項1記載のポリカーボネート樹脂からなる成形品。
- フィルムである請求項16記載の成形品。
- 縦100mm×横50mm×厚み4mmの成形品の飽和吸水時における寸法変化率が1.5%以下である請求項16記載の成形品。
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