JP3263230B2 - 芳香族ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents

芳香族ポリカーボネートの製造方法

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JP3263230B2 JP04026794A JP4026794A JP3263230B2 JP 3263230 B2 JP3263230 B2 JP 3263230B2 JP 04026794 A JP04026794 A JP 04026794A JP 4026794 A JP4026794 A JP 4026794A JP 3263230 B2 JP3263230 B2 JP 3263230B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、芳香族ポリカーボネー
トの製造方法に関する。さらに詳しくは、窒素含有量が
少なく、熱安定性に優れ、かつ、色調が良好な高分子量
の芳香族ポリカーボネートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、芳香族ジヒドロキシ化合物、
カーボネート前駆体、塩基、水、有機溶媒、ポリカーボ
ネート生成触媒(重合触媒、重縮合触媒などとも呼ばれ
る)および末端封止剤(分子量調節剤、重合停止剤、連
鎖停止剤などとも呼ばれる)を使用して芳香族ポリカー
ボネートを製造する方法が知られている。米国特許第3
275601号には、芳香族ジヒドロキシ化合物として
ビスフェノールA、カーボネート前駆体としてホスゲ
ン、塩基として水酸化ナトリウム、有機溶媒としてジク
ロロメタン、ポリカーボネート生成触媒としてトリエチ
ルアミン、そして、末端封止剤としてp−tert−ブチル
フェノールを使用する芳香族ポリカーボネートの製造方
法が記載されている。しかし、ジクロロメタンは低沸点
であり、揮発しやすいため、環境的見地から考えて、好
ましい有機溶媒とは言い難い。
【0003】特公昭38−14498号公報には、ハロ
ゲン化芳香族炭化水素およびアルカリ水溶液の存在下
に、ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させ、重縮
合させることを特徴とする高重合度ポリカーボネートの
製造方法が記載されている。該公報では、ハロゲン化芳
香族炭化水素の使用量はジヒドロキシ化合物の使用量に
対して20〜30重量%、ホスゲンの使用量はジヒドロ
キシ化合物の使用量に対して1.52倍当量、および、
水酸化ナトリウムの使用量はジヒドロキシ化合物の使用
量に対して2.05倍当量が適当であると記載されてい
る。しかし、本発明者らが追試した結果、この方法で
は、重縮合反応を終結させることは困難であり、所望の
高分子量のポリカーボネートは得られ難いことが判明し
た。また、この重縮合反応で得られるポリカーボネート
を含むハロゲン化芳香族炭化水素溶液は、電解質等の不
純物を多量に含有するものであるが、この溶液から、洗
浄により電解質を除去するのは困難であった。
【0004】特公昭41−21472号公報には、芳香
族炭化水素または塩素化芳香族炭化水素からなる有機溶
剤の一種とアルカリ水溶液の存在下で、ジヒドロキシ化
合物とホスゲンとを反応させる際に、界面活性剤を共存
させて重縮合させることを特徴とする均一組成の粒状ポ
リカーボネートの製造方法が記載されている。該公報で
は、塩素化芳香族炭化水素の使用量はジヒドロキシ化合
物の使用量に対して23.6重量%、ホスゲンの使用量
はジヒドロキシ化合物の使用量に対して1.51倍当
量、および、水酸化ナトリウムの使用量はジヒドロキシ
化合物の使用量に対して2.05倍当量である。しか
し、本発明者らが追試した結果、この方法では、重縮合
反応を終結させることは困難であり、所望の高分子量の
ポリカーボネートは得られ難いことが判明した。また、
この重縮合反応で得られるポリカーボネート粒状体は、
電解質等の不純物を多量に含有するものであるが、この
粒状体から、洗浄により電解質を除去するのは困難であ
った。
【0005】特開昭50−122595号公報には、塩
素化芳香族炭化水素を溶媒として用い、芳香族ポリカー
ボネートの合成を2段階で行うことを特徴とする、界面
重合法による芳香族ポリカーボネートの製造方法が記載
されている。この方法は、その第1段階で、少なくとも
1種の芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属水溶液
とホスゲンとを、水相のOH濃度0.01〜0.1重量
%で、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して0.1〜2.
5モル%のトリアルキルアミンの存在下で、かつ、70
℃より高い温度で、5分以下の滞留時間で反応させ、次
いで、第2段階で、適宜、さらにトリアルキルアミンを
添加して、水相のOH濃度を0.20〜0.50重量%
とし、80℃より高い温度で、1分より長い滞留時間で
重縮合を行うことを特徴とする芳香族ポリカーボネート
の製造方法である。しかし、この方法により得られる芳
香族ポリカーボネートは、窒素含有量が多く、熱安定性
が悪いものであった。また、上記のいずれの方法を用い
ても、得られるポリカーボネートは、色調が悪く、熱安
定性も悪い。現在、有機溶媒としてジクロロメタンを使
用せず、窒素含有量が少なく、熱安定性に優れ、かつ色
調の良好な高分子量の芳香族ポリカーボネートを製造す
る方法が要望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、洗浄
性に優れ、窒素含有量が少なく、熱安定性に優れ、か
つ、色調の良好な高分子量の芳香族ポリカーボネートを
製造する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の要
望に応えるべく、芳香族ポリカーボネートの製造方法に
関し鋭意検討した結果、本発明を完成するに到った。す
なわち、本発明は、芳香族ジヒドロキシ化合物、カーボ
ネート前駆体、塩基、水および少なくとも一種のハロゲ
ン化芳香族炭化水素を使用して、芳香族ポリカーボネー
トを製造する方法において、(A)70℃以下の温度で
界面重合反応を行いオリゴマーを形成させる工程、およ
び、(B)工程(A)の温度以上の温度でさらに界面重
合反応を行い、芳香族ポリカーボネートを形成させる工
程、からなり、かつ、ハロゲン化芳香族炭化水素の使用
量が、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、0.4〜4
リットル/モルであることを特徴とする芳香族ポリカー
ボネートの製造方法に関するものである。
【0008】本発明の製造方法では、芳香族ジヒドロキ
シ化合物、カーボネート前駆体、塩基、水およびハロゲ
ン化芳香族炭化水素が使用される。本発明の製造方法に
おいて使用される芳香族ジヒドロキシ化合物は、好まし
くは、式(1)または式(2)で表される化合物であ
る。 HO−Ar1−Y−Ar2−OH (1) HO−Ar3−OH (2) (式中、Ar1、Ar2およびAr3は各々2価の芳香族基
を、YはAr1とAr2を結び付ける連結基を表す) 式(1)または式(2)において、Ar1、Ar2およびA
r3は、各々2価の芳香族基であり、好ましくは、無置
換、または置換されたフェニレン基である。置換された
フェニレン基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、ア
ルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキ
ル基、アリール基、アルコキシ基等である。Ar1とAr2
は、好ましくは、両方が、p−フェニレン基、m−フェ
ニレン基またはo−フェニレン基、または、一方がp−
フェニレン基であり一方がm−フェニレン基またはo−
フェニレン基である。Ar1とAr2は、特に好ましくは、
両方がp−フェニレン基である。
【0009】Ar3は、p−フェニレン基、m−フェニレ
ン基またはo−フェニレン基で、好ましくは、p−フェ
ニレン基またはm−フェニレン基である。Yは、Ar1
Ar2を結び付ける連結基であり、単結合または2価の炭
化水素基、または−O−、−S−、−SO−、−SO2
−、−CO−等の炭素と水素以外の原子を含む基であ
る。2価の炭化水素基は、例えば、メチレン基、エチレ
ン基、2,2−プロピリデン基、シクロヘキシリデン基
等のアルキリデン基、アリール基等で置換されたアルキ
リデン基、芳香族基やその他の不飽和の炭化水素基を含
有する炭化水素基である。
【0010】芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例は、ビ
ス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−メチ
ル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチ
ル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス
(4'−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4'
−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ
フェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェ
ニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)−1−ナフチルメタン、1,1−ビス(4'−ヒドロ
キシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス
(4'−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパ
ン、2,2−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)プロパン
〔”ビスフェノールA”〕、2−(4'−ヒドロキシフェ
ニル)−2−(3"−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)−2−メチル
プロパン、2,2−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブ
タン、1,1−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)−3−
メチルブタン、2,2−ビス(4'−ヒドロキシフェニ
ル)ペンタン、2,2−ビス(4'−ヒドロキシフェニ
ル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4'−ヒドロ
キシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4'−ヒドロキ
シフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4'−ヒドロキシ
フェニル)オクタン、2,2−ビス(4'−ヒドロキシフ
ェニル)ノナン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロ
キシフェニル)メタン、
【0011】2,2−ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキ
シフェニル)プロパン、2,2−ビス(3'−エチル−4'
−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3'−
n−プロピル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3'−イソプロピル−4'−ヒドロキシフェ
ニル)プロパン、2,2−ビス(3'−sec −ブチル−
4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス
(3'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパ
ン、2,2−ビス(3'−シクロヘキシル−4'−ヒドロキ
シフェニル)プロパン、2,2−ビス(3'−アリル−4'
−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3'−
メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2
−ビス(3',5'−ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)
プロパン、2,2−ビス(2',3',5',6'−テトラメチ
ル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス
(3'−クロロ−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3',5'−ジクロロ−4'−ヒドロキシフェ
ニル)プロパン、2,2−ビス(3'−ブロモ−4'−ヒド
ロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3',5'−ジ
ブロモ−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−
ビス(2',6'−ジブロモ−3',5'−ジメチル−4'−ヒド
ロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェ
ニル)シアノメタン、3,3−ビス(4'−ヒドロキシフ
ェニル)−1−シアノブタン、2,2−ビス(4'−ヒド
ロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒ
ドロキシアリール)アルカン類、
【0012】1,1−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)
シクロペンタン、1,1−ビス(4'−ヒドロキシフェニ
ル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3'−メチル−4'−
ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス
(3',5'−ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロ
ヘキサン、1,1−ビス(3',5'−ジクロロ−4'−ヒド
ロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4'−
ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス (4'−ヒドロキシフェニル)−3,3,5
−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4'−ヒド
ロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4'−
ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス
(4'−ヒドロキシフェニル)シクロノナン、1,1−ビ
ス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2
−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、8,
8−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)トリシクロ〔5,
2,1,02,6 〕デカン、2,2−ビス(4'−ヒドロキ
シフェニル)アダマンタン等のビス(ヒドロキシアリー
ル)シクロアルカン類、
【0013】4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテ
ル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニ
ルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシ
フェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシアリール)エ
ーテル類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィ
ド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニ
ルスルフィド、3,3'−ジシクロヘキシル−4,4'−ジ
ヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジフェニル
−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,
3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシジフ
ェニルスルフィド等のビス(ヒドロキシアリール)スル
フィド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシ
ド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニ
ルスルホキシド等のビス(ヒドロキシアリール)スルホ
キシド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルス
ルホン、3,3'−ジフェニル−4,4'−ジヒドロキシジ
フェニルスルホン、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジヒド
ロキシジフェニルスルホン等のビス(ヒドロキシアリー
ル)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケト
ン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ケト
ン等のビス(ヒドロキシアリール)ケトン類、
【0014】更には、3,3,3',3'−テトラメチル−
6,6'−ジヒドロキシスピロ(ビス)インダン〔”スピ
ロビインダンビスフェノール”〕、3,3',4,4'−テ
トラヒドロ−4,4,4',4'−テトラメチル−2,2'−
スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)−7,7'−ジオー
ル〔”スピロビクロマン”〕、トランス−2,3−ビス
(4'−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビ
ス(4'−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3−ビ
ス(4'−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6
−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサン
ジオン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4'−ヒドロ
キシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−
ビス(4'−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジ
クロロ−2,2−ビス(3'−フェノキシ−4'−ヒドロキ
シフェニル)エチレン、α,α,α’,α’−テトラメ
チル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p
−キシレン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,
α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレ
ン、
【0015】3,3−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)
フタリド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキ
シン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジ
ヒドロキシフェノキサチイン、9,10−ジメチル−
2,7−ジヒドロキシフェナジン、3,6−ジヒドロキ
シジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオ
フェン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ジ
ヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレ
ン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒド
ロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシピレン、ハイ
ドロキノン、レゾルシン等である。また、ビスフェノー
ルA2モルとイソフタロイルクロライド又はテレフタロ
イルクロライド1モルとの反応により製造されるエステ
ル結合を含む芳香族ジヒドロキシ化合物も有用である。
これらは単独で使用してもよく、また、複数併用しても
よい。本発明の製造方法において好ましく使用される芳
香族ジヒドロキシ化合物は、ビス(ヒドロキシアリー
ル)アルカン類であり、特に好ましくは、ビスフェノー
ルAである。
【0016】本発明の製造方法において使用されるカー
ボネート前駆体は、好ましくは、ハロゲン化カルボニル
化合物またはハロホーメート化合物である。ハロゲン化
カルボニル化合物としては、通常、ホスゲンと呼ばれる
塩化カルボニルが使用される。また、塩素以外のハロゲ
ンより誘導されるハロゲン化カルボニル化合物、例え
ば、臭化カルボニル、ヨウ化カルボニル、フッ化カルボ
ニルも有用である。また、ハロホーメート基を形成させ
る能力を有する化合物、例えば、ホスゲンの2量体であ
るトリクロロメチルクロロホーメートやホスゲンの3量
体であるビス(トリクロロメチル)カーボネートも有用
である。これらは単独で使用してもよく、また、複数併
用してもよい。通常、好ましく使用されるハロゲン化カ
ルボニル化合物はホスゲンである。
【0017】ハロホーメート化合物は、モノまたはビス
ハロホーメート化合物、またはオリゴマー状のハロホー
メート化合物であり、代表的には式(3)で表される化
合物である。 X−〔O−R−O−C(=O)〕n −O−R−O−X (3) (式中、Xは水素原子またはハロカルボニル基を表し、
少なくとも1個のXはハロカルボニル基であり、Rは2
価の脂肪族基または芳香族基を表し、nは0または正の
整数を表す) 式(3)で表される化合物は、脂肪族ジヒドロキシ化合
物から誘導されるモノまたはビスハロホーメート化合
物、またはオリゴマー状のハロホーメート化合物、芳香
族ジヒドロキシ化合物から誘導されるモノまたはビスハ
ロホーメート化合物、またはオリゴマー状のハロホーメ
ート化合物である。尚、オリゴマー状のハロホーメート
化合物は、同一分子中に構造の異なるRを有していても
よい。これらのハロホーメート化合物は単独で使用して
もよく、また、複数併用してもよい。さらに、ハロホー
メート化合物は、ハロゲン化カルボニル化合物と併用し
てもよい。
【0018】式(3)において、2価の脂肪族基Rは、
炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数4〜12のシク
ロアルキレン基または式(4)で表される基である。 −R’−Ar4 −R’− (4) (式中、R’は炭素数1〜6のアルキレン基を表し、A
4 は炭素数6〜12の2価の芳香族基を表す) 式(3)において、Rが脂肪族基である脂肪族ジヒドロ
キシ化合物の具体例は、エチレングリコール、1,3−
プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−
ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオ
ール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジ
オール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタン
ジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカン
ジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−
ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチ
ル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−
プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、
1,4−シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4'−
ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、キシリレンジオ
ール、1,4−ビス(2'−ヒドロキシエチル)ベンゼ
ン、1,4−ビス(3'−ヒドロキシプロピル)ベンゼ
ン、1,4−ビス(4'−ヒドロキシブチル)ベンゼン、
1,4−ビス(5'−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、
1,4−ビス(6'−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン等で
ある。式(3)において、Rが芳香族基である芳香族ジ
ヒドロキシ化合物は、式(1)または式(2)で表され
る芳香族ジヒドロキシ化合物であり、例えば、ビスフェ
ノールA、ハイドロキノンである。
【0019】本発明の製造方法において特に好ましく使
用されるカーボネート前駆体は、ホスゲン、ビスフェノ
ールAのビスクロロホーメートまたはビスフェノールA
のオリゴマー状のクロロホーメート化合物である。カー
ボネート前駆体の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物
の使用量に対して、好ましくは、約1.0〜1.5倍当
量であり、より好ましくは、約1.0〜1.4倍当量で
あり、さらに好ましくは、約1.05〜1.3倍当量で
ある。カーボネート前駆体は、気体、液体、固体のいず
れの状態でも使用することができる。ハロゲン化カルボ
ニル化合物を使用する場合には、気体状態またはハロゲ
ン化芳香族炭化水素に溶解させて溶液として使用するこ
とが好ましい。ハロホーメート化合物を使用する場合に
は、液体状態、固体状態またはハロゲン化芳香族炭化水
素に溶解させて溶液として使用することが好ましい。
【0020】本発明の製造方法において使用される塩基
は、好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属
塩基である。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、
炭酸カルシウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、炭酸水素ナ
トリウム等である。これらは単独で使用してもよく、ま
た、複数併用してもよい。好ましい塩基は、水酸化ナト
リウムまたは水酸化カリウムである。塩基の使用量は、
芳香族ジヒドロキシ化合物の使用量に対して、好ましく
は、約1.0〜2.0倍当量であり、より好ましくは、
約1.05〜1.8倍当量であり、さらに好ましくは、
約1.1〜1.6倍当量である。塩基は、通常、水溶液
として使用される。また、この塩基水溶液に芳香族ジヒ
ドロキシ化合物を溶解させて使用することもできる。こ
の場合、酸化防止剤として亜硫酸ナトリウム、ナトリウ
ムハイドロサルファイトあるいはナトリウムボロハイド
ライド等を添加してもよい。
【0021】塩基は、その全量を工程(A)で使用して
もよく、一部の量を工程(A)で使用し、残りの量を工
程(B)で添加してもよい。また、塩基は、工程(A)
または工程(B)において、それぞれ1度に使用量の全
量を添加してもよく、断続的または連続的に添加しても
よい。さらに、塩基は、反応混合物のpHを一定値また
は一定範囲に制御しながら、断続的または連続的に添加
してもよい。一部の塩基を工程(A)で使用し、残りの
塩基を工程(B)で添加する場合、工程(A)での塩基
の使用量は、好ましくは、塩基の全使用量の約25当量
%以上であり、より好ましくは、塩基の全使用量の約5
0当量%以上である。
【0022】本発明の製造方法において使用される水
は、蒸留水、イオン交換水、または芳香族ポリカーボネ
ートを製造する際に生じる回収水等であり、さらにそれ
らを混合したものであってもよい。水は、好ましくは、
塩基水溶液および/または芳香族ジヒドロキシ化合物の
塩基水溶液として使用される。水の使用量は、通常、芳
香族ジヒドロキシ化合物1モルに対し、約0.5〜5リ
ットルである。また、芳香族ジヒドロキシ化合物の塩基
水溶液を調製する際に使用される水の量は、芳香族ジヒ
ドロキシ化合物と塩基を溶解させるのに必要な量以上あ
ればよい。例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物がビスフ
ェノールAである場合、その量は、ビスフェノールA1
モルに対し、約0.8〜2.2リットルである。
【0023】本発明の製造方法において使用されるハロ
ゲン化芳香族炭化水素は、反応に対して実質的に不活性
であり、水に対して実質的に不溶性であり、かつ、芳香
族ポリカーボネートを溶解するものである。ハロゲン化
芳香族炭化水素の具体例は、クロロベンゼン、o−、m
−またはp−ジクロロベンゼン、o−、m−またはp−
クロロトルエン、o−、m−またはp−クロロニトロベ
ンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、o−、m
−またはp−ブロモクロロベンゼン、o−、m−または
p−クロロフルオロベンゼン、1,2,3−、1,2,
4−または1,3,5−トリクロロベンゼン等である。
これらは単独で使用してもよく、また、複数混合して使
用してもよい。また、これらのハロゲン化芳香族炭化水
素に、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン
等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、
シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等を混合して使用し
てもよい。芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素を混合
して使用する場合、その使用量は、ハロゲン化芳香族炭
化水素の使用量に対して、好ましくは、50重量%以下
であり、より好ましくは、30重量%以下であり、さら
に好ましくは、10重量%以下である。ハロゲン化芳香
族炭化水素は、好ましくは、塩素化芳香族炭化水素であ
り、特に好ましくは、クロロベンゼンまたはo−ジクロ
ロベンゼンである。
【0024】また、本発明の製造方法において使用され
るハロゲン化芳香族炭化水素は、芳香族ポリカーボネー
トを製造する際に生じる回収されたハロゲン化芳香族炭
化水素でもよい。さらに回収されたハロゲン化芳香族炭
化水素と新しいハロゲン化芳香族炭化水素を混合したも
のでもよい。ハロゲン化芳香族炭化水素の使用量は、芳
香族ジヒドロキシ化合物に対して、好ましくは、0.4
〜4リットル/モルであり、より好ましくは、0.6〜
3リットル/モルであり、さらに好ましくは、0.8〜
2リットル/モルである。ハロゲン化芳香族炭化水素
は、その全量を工程(A)で使用してもよく、また、一
部の量を工程(A)で使用し、残りの量を工程(B)で
添加してもよい。またハロゲン化芳香族炭化水素は、工
程(A)または工程(B)において、それぞれ1度にそ
の使用量の全量を添加してもよく、断続的または連続的
に添加してもよい。一部のハロゲン化芳香族炭化水素を
工程(A)で使用し、残りを工程(B)で添加する場
合、工程(A)でのハロゲン化芳香族炭化水素の使用量
は、好ましくは、全使用量の約30重量%以上であり、
より好ましくは、約50重量%以上である。
【0025】本発明の製造方法は、ポリカーボネート生
成触媒を使用して実施する。ポリカーボネート生成触媒
を使用する場合、工程(A)で使用してもよく、また、
工程(B)で使用してもよい。さらには、工程(A)と
工程(B)の両方で使用してもよい。特に好ましくは、
本発明の製造方法は、工程(A)で使用せず、工程
(B)で使用して実施するのがよい。
【0026】本発明の製造方法に適するポリカーボネー
ト生成触媒は、3級アミン、4級アンモニウム塩、3級
ホスフィン、4級ホスホニウム塩、含窒素複素環化合物
及びその塩、イミノエーテル及びその塩、アミド基を有
する化合物等である。ポリカーボネート生成触媒の具体
例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n
−プロピルアミン、ジエチル−n−プロピルアミン、ト
リ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、
N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’
−テトラメチル−1,4−テトラメチレンジアミン、
N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエ
チルアニリン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピロ
リジノピリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−
エチルピペリジン、N−メチルモルホリン、1,4−ジ
アザビシクロ〔2,2,2〕オクタン、ベンジルトリメ
チルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアン
モニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロラ
イド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、メチルト
リエチルアンモニウムクロライド、フェニルトリエチル
アンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒ
ドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムフルオラ
イド、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムクロライ
ド、テトラ−n−ヘプチルアンモニウムアイオダイド、
m−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウ
ムブロマイド、トリエチルホスフィン、トリフェニルホ
スフィン、ジフェニルブチルホスフィン、テトラ(ヒド
ロキシメチル)ホスホニウムクロライド、ベンジルトリ
エチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニル
ホスホニウムクロライド、4−メチルピリジン、1−メ
チルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、3
−メチルピリダジン、4,6−ジメチルピリミジン、1
−シクロヘキシル−3,5−ジメチルピラゾール、2,
3,5,6−テトラメチルピラジン等である。これらの
ポリカーボネート生成触媒は、単独で使用してもよく、
また、複数併用してもよい。
【0027】ポリカーボネート生成触媒は、好ましく
は、3級アミンであり、より好ましくは、総炭素数3〜
30の3級アミンであり、特に好ましくは、トリエチル
アミンである。ポリカーボネート生成触媒を使用する場
合、その使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物のモル数
に対して約0.0005モル%以上あればよい。また、
その量が過度に多くても、顕著な効果は期待できない。
ポリカーボネート生成触媒の量は、好ましくは、芳香族
ジヒドロキシ化合物のモル数に対して、約0.0005
〜5モル%であり、より好ましくは、約0.001〜2
モル%であり、さらに好ましくは、約0.005〜1モ
ル%である。ポリカーボネート生成触媒は、液体状態ま
たは固体状態で使用してもよく、また、ハロゲン化芳香
族炭化水素溶液または水溶液として使用してもよい。
【0028】本発明の製造方法は、分子量の制御が容易
になるので、末端封止剤を使用する。本発明の製造方法
に適する末端封止剤は、1価の芳香族ヒドロキシ化合
物、1価の芳香族ヒドロキシ化合物のハロホーメート誘
導体、1価のカルボン酸または1価のカルボン酸のハラ
イド誘導体等である。1価の芳香族ヒドロキシ化合物
は、例えば、フェノール、p−クレゾール、o−エチル
フェノール、p−エチルフェノール、p−イソプロピル
フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミル
フェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オク
チルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4−キシ
レノール、p−メトキシフェノール、p−ヘキシルオキ
シフェノール、p−デシルオキシフェノール、o−クロ
ロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェ
ノール、p−ブロモフェノール、ペンタブロモフェノー
ル、ペンタクロロフェノール、p−フェニルフェノー
ル、p−イソプロペニルフェノール、2,4−ジ(1'−
メチル−1'−フェニルエチル)フェノール、β−ナフト
ール、α−ナフトール、p−(2',4',4'−トリメチル
クロマニル)フェノール、2−(4'−メトキシフェニ
ル)−2−(4"−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフ
ェノール類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカ
リ土類金属塩である。1価の芳香族ヒドロキシ化合物の
ハロホーメート誘導体は、上記の1価の芳香族ヒドロキ
シ化合物のハロホーメート誘導体等である。
【0029】1価のカルボン酸は、例えば、酢酸、プロ
ピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カ
プリル酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、3−メチル
酪酸、3,3−ジメチル酪酸、4−メチル吉草酸、3,
3−ジメチル吉草酸、4−メチルカプロン酸、3,5−
ジメチルカプロン酸、フェノキシ酢酸等の脂肪酸類また
はそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、
安息香酸、p−メチル安息香酸、p−tert−ブチル安息
香酸、p−ブトキシ安息香酸、p−オクチルオキシ安息
香酸、p−フェニル安息香酸、p−ベンジル安息香酸、
p−クロロ安息香酸等の安息香酸類またはそれらのアル
カリ金属塩およびアルカリ土類金属塩である。1価のカ
ルボン酸のハライド誘導体は、上記の1価のカルボン酸
のハライド誘導体等である。これらは単独で使用しても
よく、また、複数併用してもよい。好ましく使用される
末端封止剤は、フェノール、p−tert−ブチルフェノー
ルまたはp−クミルフェノールである。
【0030】末端封止剤の使用量は、製造される芳香族
ポリカーボネートの重量平均分子量に応じて決定され
る。芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量は、約1
5000〜150000であり、好ましくは、約200
00〜100000である。上記の範囲の重量平均分子
量の芳香族ポリカーボネートを製造するために必要とさ
れる末端封止剤の量は、芳香族ジヒドロキシ化合物のモ
ル数に対して、約1.0〜10.0モル%であり、好ま
しくは、約1.5〜7.0モル%である。末端封止剤
は、固体状態または液体状態で使用してもよく、ハロゲ
ン化芳香族炭化水素溶液、水溶液または塩基水溶液とし
て使用してもよい。末端封止剤の添加時期には、特に制
限はなく、反応前に予め加えておいてもよく、また、反
応の任意の時点で添加してもよい。
【0031】本発明の製造方法は、分岐化剤の使用によ
り、分岐化された芳香族ポリカーボネートを製造するこ
ともできる。本発明の製造方法に適する分岐化剤は、芳
香族性ヒドロキシ基、ハロホーメート基、カルボン酸
基、カルボン酸ハライド基または活性なハロゲン原子等
から選ばれる反応基を3つ以上(同種でも異種でもよ
い)有する化合物である。分岐化剤の具体例は、フロロ
グルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス
(4'−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−
ジメチル−2,4,6−トリス(4'−ヒドロキシフェニ
ル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4'−ヒドロキシフ
ェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4'−ヒドロキ
シフェニル)エタン、1,1,2−トリス(4'−ヒドロ
キシフェニル)プロパン、α,α,α’−トリス(4'−
ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピル
ベンゼン、2,4−ビス〔α−メチル−α−(4'−ヒド
ロキシフェニル)エチル〕フェノール、2−(4'−ヒド
ロキシフェニル)−2−(2",4"−ジヒドロキシフェニ
ル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホス
フィン、1,1,4,4−テトラキス(4'−ヒドロキシ
フェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス〔4',4'−ビ
ス(4"−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパ
ン、α,α,α’,α’−テトラキス(4'−ヒドロキシ
フェニル)−1,4−ジエチルベンゼン、2,2,5,
5−テトラキス(4'−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1,2,3−テトラキス(4'−ヒドロキシフェニ
ル)プロパン、1,4−ビス(4',4"−ジヒドロキシト
リフェニルメチル)ベンゼン、3,3',5,5'−テトラ
ヒドロキシジフェニルエーテル、3,5−ジヒドロキシ
安息香酸、3,5−ビス(クロロカルボニルオキシ)安
息香酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、4−クロロカル
ボニルオキシイソフタル酸、5−ヒドロキシフタル酸、
5−クロロカルボニルオキシフタル酸、トリメシン酸ト
リクロライド、シアヌル酸クロライド等である。
【0032】分岐化剤の使用量は、製造される芳香族ポ
リカーボネートの分岐度に応じて決定される。好ましく
は、芳香族ジヒドロキシ化合物のモル数に対して約0.
05〜2.0モル%である。分岐化剤は、固体状態また
は液体状態で使用してもよく、ハロゲン化芳香族炭化水
素溶液、水溶液または塩基水溶液として使用してもよ
い。分岐化剤の添加時期には、特に制限はない。分岐化
剤は、反応前に予め加えておいてもよく、また、反応の
任意の時点で添加してもよい。これらの分岐化剤は単独
で使用してもよく、また、複数併用してもよい。
【0033】本発明の製造方法の工程(A)では、70
℃以下の温度で界面重合反応が行われ、オリゴマーが形
成される。本明細書におけるオリゴマーとは、低分子量
の初期生成物を意味し、好ましくは、重量平均分子量が
10000以下、より好ましくは、重量平均分子量が7
000以下のものである。工程(A)の温度は、好まし
くは、10〜70℃であり、より好ましくは、20〜6
5℃であり、さらに好ましくは、25〜60℃であり、
特に好ましくは、30〜60℃である。工程(A)の温
度が70℃を超える場合、得られる芳香族ポリカーボネ
ートは、色調が悪いものとなる。
【0034】次に、本発明の製造方法の工程(B)で
は、工程(A)で得られたオリゴマーを、さらに界面重
合反応させ、芳香族ポリカーボネートを形成させる。そ
の際、工程(B)の温度は、工程(A)の温度以上の温
度であり、好ましくは、〔工程(A)の温度以上の温
度〕〜100℃であり、より好ましくは、〔工程(A)
の温度以上の温度〕〜95℃であり、さらに好ましく
は、〔工程(A)の温度以上の温度〕〜90℃である。
工程(B)の温度が、工程(A)の温度より低い温度で
ある場合、高分子量の芳香族ポリカーボネートを得るこ
とが困難となる。本発明の製造方法は、通常、大気圧下
で実施され、所望により、大気圧以下、または大気圧以
上の条件下でも実施できる。
【0035】本発明の製造方法は、撹拌せずに界面重合
反応を行うことも可能であるが、重合時間を短縮できる
という点で、反応混合物を撹拌して界面重合反応を行う
ことが好ましい。通常、撹拌は、有機相と水相が均一に
混合する程度が好ましい。また場合により、激しい撹拌
条件下で、界面重合反応を行ってもよい。尚、本明細書
における界面重合反応とは、本発明の方法により芳香族
ポリカーボネートを製造する際に起こるすべての反応が
含まれ、それらの反応は、主に、有機相と水相の界面で
起こる。
【0036】本発明の製造方法は、バッチ式で実施して
もよく、また、連続式で実施してもよい。本発明の製造
方法に使用される反応装置は、槽型反応器、管型反応器
または充填塔等の公知の反応装置、またはそれらの反応
装置を任意に組み合わせた反応装置等である。これらの
反応装置は、パドル、プロペラ、タービンまたはカイ型
翼等の単純な撹拌装置、ホモジナイザー、ホモミキサ
ー、ミキサー等の高速撹拌機、スタティックミキサー、
コロイドミル、オリフィスミキサー、フロージェットミ
キサー、超音波乳化装置等の撹拌装置を任意に備えるこ
とができる。
【0037】本発明の製造方法は、槽型反応器の使用に
より、バッチ式で実施することができる。例えば、芳香
族ジヒドロキシ化合物、塩基、水およびハロゲン化芳香
族炭化水素を含む反応系に、カーボネート前駆体または
カーボネート前駆体のハロゲン化芳香族炭化水素溶液を
供給し、70℃以下の温度で界面重合反応を行い、オリ
ゴマーが形成され、工程(A)が実施される。その際、
工程(A)の反応時間は、好ましくは、約1秒〜200
分であり、より好ましくは、約30秒〜150分であ
り、さらに好ましくは、約1分〜100分であり、特に
好ましくは、約7分〜80分である。
【0038】次いで、工程(A)の温度以上の温度でさ
らに界面重合反応を行い、芳香族ポリカーボネートが形
成され、工程(B)が実施される。その際、工程(B)
の反応時間は、好ましくは、約1分〜600分であり、
より好ましくは、約5分〜300分であり、さらに好ま
しくは、約10分〜200分であり、特に好ましくは、
約30分〜120分である。また、その際、所望によ
り、ポリカーボネート生成触媒、末端封止剤および/ま
たは分岐化剤を使用してもよい。また、塩基は、工程
(A)でその全量を使用してもよく、一部の量を工程
(A)で使用し、残りの量を工程(B)で使用してもよ
い。
【0039】本発明の製造方法は、槽型反応器の使用に
より、セミバッチ式で実施することができる。例えば、
芳香族ジヒドロキシ化合物の塩基水溶液、ハロゲン化芳
香族炭化水素およびカーボネート前駆体、またはカーボ
ネート前駆体のハロゲン化芳香族炭化水素溶液を反応系
に連続的に供給し、70℃以下の温度で界面重合反応を
行い、オリゴマーが形成され、工程(A)が実施され
る。その際、工程(A)の反応時間は、前記のバッチ式
の場合と同様である。また、その後の操作も、バッチ式
の場合と同様である。
【0040】本発明の製造方法は、槽型反応器を数個連
続に接続した槽型連続反応装置の使用により、連続式で
実施することもできる。例えば、芳香族ジヒドロキシ化
合物を含む塩基水溶液、カーボネート前駆体およびハロ
ゲン化芳香族炭化水素、またはカーボネート前駆体のハ
ロゲン化芳香族炭化水素溶液を第1槽に連続的に供給
し、70℃以下の温度で界面重合反応が行われ、オリゴ
マーが形成され、工程(A)が実施される。第1槽にお
いて一定の滞留時間の後、反応混合物は第2槽に連続的
に排出される。その際、第1槽の滞留時間、即ち、工程
(A)の反応時間は、好ましくは、約1秒〜200分で
あり、より好ましくは、約10秒〜150分であり、さ
らに好ましくは、約1分〜100分であり、特に好まし
くは、約7分〜80分である。
【0041】以下同様に、一定の滞留時間の後、反応混
合物は次の反応槽に連続的に排出され、芳香族ポリカー
ボネートが形成され、工程(B)が実施される。第2槽
目以降の滞留時間、即ち、工程(B)の反応時間は、好
ましくは、約1分〜600分であり、より好ましくは、
約5分〜300分であり、さらに好ましくは、約10分
〜200分であり、特に好ましくは、約30分〜120
分である。また、第2槽以降の温度は、工程(A)の温
度以上の温度である。また、その際、所望により、ポリ
カーボネート生成触媒、末端封止剤および/または分岐
化剤を使用してもよい。また塩基は、工程(A)でその
全量を使用してもよく、また、一部の量を工程(A)で
使用し、残りの量を工程(B)で使用してもよい。以上
のような槽型連続反応装置を使用する方法は、安定した
分子量および分子量分布を有する芳香族ポリカーボネー
トを連続的に製造することができる。さらにまた、本発
明の製造方法は、管型反応器の使用により、連続式で実
施することもできる。この場合、槽型連続反応装置を使
用する場合と同様の操作により、本発明の製造方法を実
施することができる。
【0042】本発明の製造方法は、槽型反応器、管型反
応器または充填塔等の反応装置を任意に組み合わせた連
続反応装置の使用により、セミバッチ式または連続式で
実施することができる。例えば、反応の初期に、槽型反
応器、管型反応器および/または充填塔等を設け、70
℃以下の温度で界面重合反応を行い、オリゴマーを連続
的に形成させ、工程(A)が実施される。次に、槽型反
応器および/または管型反応器等を使用して、工程
(A)の温度以上の温度で界面重合反応を行い、芳香族
ポリカーボネートを形成させ、工程(B)が実施され
る。その際、所望により、ポリカーボネート生成触媒、
末端封止剤および/または分岐化剤を使用してもよい。
また塩基は、工程(A)でその全量を使用してもよく、
また、一部の量を工程(A)で使用し、残りの量を工程
(B)で使用してもよい。工程(A)および工程(B)
の滞留時間は、槽型連続反応装置を使用した連続式の場
合と同様である。以上のような操作により、本発明の製
造方法が実施される。
【0043】次に、本発明の方法により製造された、芳
香族ポリカーボネートを含む反応混合物は、連続操作ま
たはバッチ操作により洗浄処理される。反応混合物の洗
浄処理としては、芳香族ポリカーボネートとハロゲン化
芳香族炭化水素からなる有機相を水相より分離する。得
られる有機相は、必要に応じ、有機溶媒で希釈してもよ
い。その際使用される有機溶媒は、上記のハロゲン化芳
香族炭化水素、芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素等
である。有機相は、必要に応じ、水または希薄アルカリ
水溶液により洗浄され、次に、希薄酸水溶液により中和
される。その際使用される酸は、塩酸、硫酸、燐酸等の
鉱酸等である。その後、実質的に電解質が存在しなくな
るまで、繰り返し、水で洗浄される。その際、有機相
は、工程(B)での反応温度を維持したままで、上記の
洗浄処理を行ってもよく、工程(B)での反応温度より
高い温度で、または、工程(B)での反応温度より低い
温度で洗浄処理を行ってもよい。
【0044】次いで、洗浄された芳香族ポリカーボネー
トを含む有機相から、連続操作またはバッチ操作によ
り、芳香族ポリカーボネートが回収される。芳香族ポリ
カーボネートを回収する方法は、芳香族ポリカーボネー
トを含む有機相を、押出機中でハロゲン化芳香族炭化水
素を連続的に蒸発させながら、徐々に加熱して、芳香族
ポリカーボネートを溶融状態から直接ペレット化する方
法、芳香族ポリカーボネートを含む有機相を冷却し、得
られたゲル状物を粉砕した後、水中にてハロゲン化芳香
族炭化水素を除去する方法等がある。
【0045】本発明の方法により製造される芳香族ポリ
カーボネートは、単独で、または他のポリマーと混合し
て成形材料として使用することができる。他のポリマー
の具体例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチ
レン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリ
フルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ
アセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテ
レフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミ
ド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミ
ド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシ
ベンゾイル系ポリエステル、ポリアリーレート、ポリス
ルフィド等である。
【0046】本発明の方法により製造される芳香族ポリ
カーボネートは、単独で、または他のポリマーと混合し
て、芳香族ポリカーボネートの製造時または製造後に公
知の方法で、顔料、染料、加工および熱安定剤、酸化防
止剤、加水分解安定剤、耐衝撃安定剤、紫外線吸収剤、
離型剤、有機ハロゲン化合物、アルカリ金属スルホン酸
塩、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、硫酸バリウ
ム、TiO2 等の公知の添加剤を一種以上添加してもよ
い。
【0047】本発明の方法により製造される芳香族ポリ
カーボネートは、特定の有機溶媒(例えば、ハロゲン化
炭化水素系溶媒)に可溶であり、該有機溶媒溶液よりフ
ィルムのような成形加工品に加工することができる。本
発明の方法により製造される芳香族ポリカーボネート
は、熱可塑性であり、射出成形、押し出し成形、吹き込
み成形、積層等の公知の成形法により容易に成形加工す
ることができる。また、本発明の方法により製造される
芳香族ポリカーボネートは、単独で、または他のポリマ
ーと混合した状態で、所望により、上記の添加剤を添加
して、電気機器等のシャーシやハウジング材、電子部
品、自動車部品、ガラス代替えの建材、データ保存用デ
ィスクまたはオーディオ用コンパクトディスク等の情報
記録媒体の基盤、カメラまたは眼鏡のレンズ等の光学材
料等に成形することが可能である。
【0048】
【実施例】以下の実施例により本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは
ない。 実施例1 ジャケット付きの10リットルのバッフル付フラスコ
に、三段六枚羽根の攪拌機および還流冷却管を取り付け
た。このフラスコに、ビスフェノールA912g(4.
0モル)、p−tert−ブチルフェノール20.7g(ビ
スフェノールAに対して3.44モル%)、クロロベン
ゼン4リットル及び水4リットルを入れ、フラスコ内の
酸素を除去する為に窒素パージを行った。次に、上記懸
濁液に、ナトリウムハイドロサルファイト1.8gおよ
び水酸化ナトリウム464g(11.6モル)の水溶液
2.2リットルを供給し、30℃でビスフェノールAを
溶解した。撹拌下、この混合物にホスゲン487g
(4.92モル)を30分間で供給し、オリゴマー溶液
を得た。その間、ジャケットに冷却水を流し、反応混合
物の温度を40℃以下に保った。次に、トリエチルアミ
ン0.65g(ビスフェノールAに対して0.16モル
%)を添加した後、ジャケットに90℃の温水を流し、
さらに60分間撹拌し、反応を終結させた。その際、反
応混合物の温度は、ジャケットに温水を流し始めてから
10分後に80℃に達し、そのまま80℃を維持してい
た。その後、80℃に保ったまま、反応混合物を静置
し、有機相を分液し、1/2規定塩酸5リットルで中和
し、次いで、水5リットルで3回洗浄したところ、洗浄
水の電導度は10μS以下となり、電解質は除去され
た。このようにして得られた芳香族ポリカーボネートの
クロロベンゼン溶液を室温まで冷却し、粉砕した。次い
で、水5リットルを加え、40〜75℃、40〜80m
mHgの条件でクロロベンゼンを除去し、芳香族ポリカ
ーボネートの粉粒体を得た。
【0049】実施例2 三段六枚羽根の攪拌機および還流冷却管を取り付けたジ
ャケット付きの4リットルのバッフル付フラスコを、オ
ーバーフロー用の排出口により4個連続に接続した槽型
連続反応装置を使用した。第1槽のジャケットには冷却
水が流され、フラスコ内の温度が40℃に保たれるよう
にし、第2、3および4槽のジャケットには90℃の温
水が流され、反応混合物の温度が80℃に保たれるよう
にした。撹拌下、第1槽に、ビスフェノールA3653
g(16モル)、p−tert−ブチルフェノール82.7
g(0.55モル)、水酸化ナトリウム1856g(4
6.4モル)、ナトリウムハイドロサルファイト7.2
gを24kgの水に溶解させた総重量29.6kgの水
溶液、ホスゲン、クロロベンゼンを、それぞれ123.
3g/分、8.11g/分(0.082モル/分)、7
3.8g/分で供給した。約30分の滞留時間の後、オ
リゴマー溶液は第2槽に205.2g/分の速度で排出
された。第2槽への排出が始まった時点より、第2槽
に、トリエチルアミン2.27g(0.0224モル)
のクロロベンゼン溶液210mlを、1ml/分で供給
した。第2槽において、約30分の滞留時間の後、反応
混合物は第3槽に排出され、以下、第3槽および第4槽
でも同じ滞留時間の後、第4槽から芳香族ポリカーボネ
ートを含む反応混合物が排出された。第1槽への供給が
開始された時点から4時間連続運転した。その間、第4
槽から連続的に排出される芳香族ポリカーボネートの重
量平均分子量を30分おきに測定したところ、常に同じ
結果が得られ安定していた。その後、第4槽から排出さ
れた反応混合物を静置して有機相を分液した。得られた
有機相を40リットルのフラスコに入れ、80℃に加熱
し、1/2規定塩酸20リットルで中和し、次いで、水
20リットルで3回洗浄したところ、洗浄水の電導度は
10μS以下となり、電解質は除去された。このように
して得られた芳香族ポリカーボネートのクロロベンゼン
溶液を室温まで冷却し、粉砕した。次いで、水20リッ
トルを加え、40〜75℃、40〜80mmHgの条件
でクロロベンゼンを除去し、芳香族ポリカーボネートの
粉粒体を得た。
【0050】実施例3 ジャケット付きの12リットルのバッフル付フラスコ
に、三段六枚羽根の攪拌機および還流冷却管を取り付け
た。このフラスコに、ビスフェノールA912g(4.
0モル)、クロロベンゼン6リットル及び水4リットル
を入れ、フラスコ内の酸素を除去する為に窒素パージを
行った。次に、上記懸濁液に、ナトリウムハイドロサル
ファイト1.8gおよび水酸化ナトリウム400g(1
0モル)の水溶液1.5リットルを供給し、30℃でビ
スフェノールAを溶解した。撹拌下、この混合物に、ホ
スゲン495g(5.0モル)を60分間で供給し、オ
リゴマー溶液を得た。その間、反応混合物の温度は、3
0℃から55℃まで上昇した。次に、p−tert−ブチル
フェノール20.7g(ビスフェノールAに対して3.
44モル%)、トリエチルアミン0.65g(ビスフェ
ノールAに対して0.16モル%)および水酸化ナトリ
ウム80g(2モル)の水溶液0.7リットルを添加し
た後、ジャケットに80℃の温水を流し、さらに60分
間撹拌し、反応を終結させた。その際、反応混合物の温
度は、ジャケットに温水を流し始めてから7分後に70
℃に達し、そのまま70℃を維持していた。その後の操
作は、実施例1と同様に行い、芳香族ポリカーボネート
の粉粒体を得た。
【0051】実施例4 ジャケット付きの10リットルのバッフル付フラスコ
に、三段六枚羽根の攪拌機および還流冷却管を取り付け
た。このフラスコに、ビスフェノールA438g(1.
92モル)及び水3リットルを入れ、フラスコ内の酸素
を除去する為に、窒素パージを行った。次に、上記懸濁
液に、ナトリウムハイドロサルファイト1.8gおよび
水酸化ナトリウム192g(4.8モル)の水溶液1.
5リットルを供給し、30℃でビスフェノールAを溶解
した。撹拌下、この混合物に、ビスフェノールAのビス
クロロホーメート735g(2.08モル)を溶解した
クロロベンゼン溶液4リットルを添加し、35℃で約1
0分間撹拌し、オリゴマー溶液を得た。次に、p−tert
−ブチルフェノール20.7g(ビスフェノールAに対
して3.44モル%)のクロロベンゼン溶液100ml
を添加した後、ジャケットに95℃の温水を流し、さら
に90分間撹拌し、反応を終結させた。反応混合物の温
度は、ジャケットに温水を流し始めてから15分後に9
0℃に達し、そのまま90℃を維持していた。その後の
操作は、実施例1と同様に行い、芳香族ポリカーボネー
トの粉粒体を得た。
【0052】実施例5 ジャケット付きの15リットルのバッフル付フラスコ
に、三段六枚羽根の攪拌機および還流冷却管を取り付け
た。このフラスコに、ビスフェノールA912g(4.
0モル)、p−tert−ブチルフェノール20.7g(ビ
スフェノールAに対して3.44モル%)、o−ジクロ
ロベンゼン7.2リットル及び水4リットルを入れ、フ
ラスコ内の酸素を除去する為に窒素パージを行った。次
に、上記懸濁液に、ナトリウムハイドロサルファイト
1.8gおよび水酸化ナトリウム464g(11.6モ
ル)の水溶液2.2リットルを供給し、30℃でビスフ
ェノールAを溶解した。撹拌下、この混合物に、ホスゲ
ン487g(4.92モル)を30分間で供給し、オリ
ゴマー溶液を得た。その間、反応混合物の温度は、30
℃から65℃まで上昇した。次に、トリエチルアミン
0.65g(ビスフェノールAに対して0.16モル
%)を添加した後、ジャケットに90℃の温水を流し、
さらに60分間撹拌し、反応を終結させた。その際、反
応混合物の温度は、ジャケットに温水を流し始めてから
5分後に80℃に達し、そのまま80℃を維持してい
た。その後の操作は、実施例1と同様に行い、芳香族ポ
リカーボネートの粉粒体を得た。
【0053】実施例6 ジャケット付きの20リットルのバッフル付フラスコ
に、三段六枚羽根の攪拌機および還流冷却管を取り付け
た。このフラスコに、ビスフェノールA912g(4.
0モル)、p−tert−ブチルフェノール20.7g(ビ
スフェノールAに対して3.44モル%)、クロロベン
ゼン14リットル及び水4リットルを入れ、フラスコ内
の酸素を除去する為に窒素パージを行った。次に、上記
懸濁液に、ナトリウムハイドロサルファイト1.8gお
よび水酸化ナトリウム464g(11.6モル)の水溶
液2.2リットルを供給し、30℃でビスフェノールA
を溶解した。撹拌下、この混合物に、ホスゲン475g
(4.8モル)を60分間で供給し、オリゴマー溶液を
得た。その間、ジャケットに冷却水を流し、反応混合物
の温度を30℃に保った。次に、トリエチルアミン1.
21g(ビスフェノールAに対して0.3モル%)を添
加した後、ジャケットに60℃の温水を流し、さらに9
0分間撹拌し、反応を終結させた。その際、反応混合物
の温度は、ジャケットに温水を流し始めてから15分後
に55℃に達し、そのまま55℃を維持していた。その
後の操作は、実施例1と同様に行い、芳香族ポリカーボ
ネートの粉粒体を得た。
【0054】比較例1(米国特許第3275601号記
載の方法) 10リットルのバッフル付フラスコに、三段六枚羽根の
攪拌機および還流冷却管を取り付けた。このフラスコ
に、ビスフェノールA912g(4.0モル)、p−te
rt−ブチルフェノール20.7g(ビスフェノールAに
対して3.44モル%)、ジクロロメタン4リットル及
び水4リットルを入れ、フラスコ内の酸素を除去する為
に窒素パージを行った。次に、上記懸濁液に、ナトリウ
ムハイドロサルファイト1.8gおよび水酸化ナトリウ
ム436g(10.91モル)の水溶液2.2リットル
を供給し、30℃でビスフェノールAを溶解した。撹拌
下、この混合物に、ホスゲン467g(4.72モル)
を30分間で供給した。その間、反応混合物の温度は3
9℃まで上昇した。次に、トリエチルアミン0.65g
(ビスフェノールAに対して0.16モル%)を添加し
て60分間攪拌し、反応を終結させた。その間の反応混
合物の温度は、30℃であった。その後、反応混合物を
静置し、有機相を分液し、1/2規定塩酸5リットルで
中和し、次いで、水5リットルで3回洗浄したところ、
洗浄水の電導度は10μS以下となり、電解質は除去さ
れた。このようにして得られた芳香族ポリカーボネート
のジクロロメタン溶液にトルエン2リットルと水5リッ
トルを加え、98℃まで加熱し、ジクロロメタンおよび
トルエンを留去して、芳香族ポリカーボネートの粉粒体
を得た。
【0055】比較例2(特公昭38−14498号公報
記載の方法) ジャケット付きの10リットルのバッフル付フラスコ
に、三段六枚羽根の攪拌機および還流冷却管を取り付け
た。このフラスコに、ビスフェノールA912g(4.
0モル)及び水3リットルを入れ、フラスコ内の酸素を
除去する為に窒素パージを行った。次に、上記懸濁液
に、ナトリウムハイドロサルファイト4.8gおよび水
酸化ナトリウム320g(8モル)の水溶液1リットル
を供給し、ジャケットに温水を流して、40℃に加熱し
てビスフェノールAを溶解した。次に、クロロベンゼン
255mlを入れた。撹拌下、この混合物に、ホスゲン
98.9g(1モル)を30分間で供給した。その間、
ジャケットに冷却水を流し、反応混合物の温度を30℃
に保った。次に、25.4重量%の水酸化ナトリウム水
溶液1324g(水酸化ナトリウム8.41モル)を添
加しながら、同時にホスゲン500g(5.06モル)
を90分間で供給した。次いで30分間撹拌した後、ジ
ャケットに温水を流し、1時間かけて反応混合物の温度
を80℃にし、80℃でさらに1時間撹拌した。その
後、80℃に保ったまま、反応混合物を静置し、有機相
を分液した。得られた有機相に、クロロベンゼン3.4
リットルを加えた後、1/2規定塩酸5リットルで中和
した後、水5リットルで10回洗浄したが、洗浄水の電
導度は10μS以下にならず、洗浄は極めて困難であっ
た。得られた芳香族ポリカーボネートのクロロベンゼン
溶液を室温まで冷却し、粉砕した。次いで、水5リット
ルを加え、40〜75℃、40〜80mmHgの条件で
クロロベンゼンを除去し、芳香族ポリカーボネートの粉
粒体を得た。
【0056】比較例3(特開昭50−122595号公
報記載の方法) ジャケット付きの300mlのポンプ式循環反応器、お
よび、ジャケット付きの750mlの管型反応器をオー
バーフロー管にて接続した連続反応装置を使用した。こ
のポンプ式循環反応器に、ビスフェノールA3646g
(16モル)、p−tert−ブチルフェノール64.5g
(0.43モル)、水酸化ナトリウム1300g(3
2.5モル)、ナトリウムハイドロサルファイト7.2
gおよびトリエチルアミン16.13g(ビスフェノー
ルAに対して1モル%)を19.3kgの水に溶解させ
た総重量24.3kgの水溶液、ホスゲン、クロロベン
ゼン、45重量%水酸化ナトリウム水溶液を、それぞれ
101.3g/分、7.45g/分(0.075モル/
分)、97.8g/分、0.55g/分で供給した。水
相中のOH濃度は0.08重量%で、反応混合物の温度
は72℃であった。1.6分の滞留時間の後、反応混合
物は管型反応器に排出された。管型反応器には、45重
量%水酸化ナトリウム水溶液が供給され、水相中のOH
濃度は0.30〜0.35重量%に保たれた。ジャケッ
トに90℃の温水を流すことにより、反応混合物の温度
は83℃に保たれ、4分の滞留時間の後、反応混合物が
排出された。その後の操作は、実施例2と同様に行い、
芳香族ポリカーボネートの粉粒体を得た。
【0057】第1表(表1)に、各実施例および各比較
例における、工程(A)の反応温度、工程(B)の反応
温度および芳香族ジヒドロキシ化合物に対するハロゲン
化芳香族炭化水素の使用量を示した。第2表(表1)
に、各実施例および各比較例における、得られた芳香族
ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)、窒素含有
量、15秒滞留YI値および5分滞留YI値を示した。
なお、測定法は下記に示した通りである。 ・重量平均分子量の測定:芳香族ポリカーボネート粉粒
体0.02gをクロロホルム10gに溶解する。この溶
液を、GPC〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィ
ー、昭和電工(株)社製、GPCシステム−11〕によ
り測定し、重量平均分子量(Mw)を算出した。 ・窒素含有量の測定:三菱化成(株)社製、全窒素分析
計(TN−10)により、製造された芳香族ポリカーボ
ネートの窒素含有量を測定した。 ・YI値の測定 芳香族ポリカーボネート粉粒体を押出機(シリンダー温
度280℃)でペレット化した。このペレットを、射出
成形機〔日精樹脂工業(株)社製PS20E−5AS
E〕を用い、280℃で可塑化後、シリンダー内で15
秒間または5分間滞留させた後、射出成形し、厚さ1m
mのプレスシートをそれぞれ作製した。このプレスシー
トのYI値を、スガ試験機製の色差計により、透過測定
法で測定した。なお、15秒間滞留させて作製したプレ
スシートのYI値を15秒滞留YI値、5分間滞留させ
て作成したプレスシートのYI値を5分滞留YI値とす
る。YI値は、その値が小さいほど、着色が少ないこと
を表し、15秒滞留YI値と5分滞留YI値の差が小さ
いほど、熱安定性に優れていることを表す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】実施例1〜6の結果より、本発明の製造方
法により、窒素含有量が少なく、色調が良好で、熱安定
性に優れた芳香族ポリカーボネートを好適に製造できる
ことが判る。また、比較例1の結果より、有機溶媒とし
てジクロロメタンを用いて得られた芳香族ポリカーボネ
ートは、色調が悪く、熱安定性も悪いことが判る。ま
た、比較例2の方法では、重縮合反応を終結させること
は困難であり、高分子量の芳香族ポリカーボネートが製
造できず、また、芳香族ポリカーボネートを含む有機溶
媒溶液の洗浄性も悪く、さらに、色調が悪く、熱安定性
も悪いことが判る。また、比較例3の方法では、窒素含
有量が多く、また、色調が悪く、熱安定性も悪いことが
判る。以上の結果から、本発明の製造方法により、従来
の製造方法と比較して、窒素含有量が少なく、色調が良
好で、熱安定性に優れた芳香族ポリカーボネートを製造
することが可能となった。
【0061】
【発明の効果】本発明により、窒素含有量が少なく、色
調が良好で、熱安定性のよい芳香族ポリカーボネートの
製造方法を提供することが可能になった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 彰宏 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三 井東圧化学株式会社内 審査官 森川 聡 (56)参考文献 特開 昭62−89723(JP,A) 特公 昭41−21472(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 64/00 - 64/42

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族ジヒドロキシ化合物、カーボネー
    ト前駆体、塩基、水および少なくとも一種のハロゲン化
    芳香族炭化水素を使用して、芳香族ポリカーボネートを
    製造する方法において、工程(A)として、 70℃以下の温度で界面重合反応を
    行い、オリゴマーを形成させる工程、及び 工程(B)として、前記 工程(A)の温度以上の温度で
    さらに界面重合反応を行い、芳香族ポリカーボネートを
    形成させる工程、 からなり、かつ、 ハロゲン化芳香族炭化水素の使用量が、 芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、0.4〜4リット
    ル/モルであり、工程(A)及び/又は工程(B)においてポリカーボネ
    ート触媒を添加し、 工程(A)及び/又は工程(B)において分子量調節剤
    を添加する ことを特徴とする、窒素含有量0〜10ppmである 芳香族ポリカーボネー
    トの製造方法。
  2. 【請求項2】 カーボネート前駆体の使用量が、芳香族
    ジヒドロキシ化合物の使用量に対して、1.0〜1.5
    倍当量である請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 塩基の使用量が、芳香族ジヒドロキシ化
    合物の使用量に対して、1.0〜2.0倍当量である請
    求項1または2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1、2または3記載の製造方法に
    より得られる芳香族ポリカーボネート。
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