JP5607354B2 - 高純度含フッ素化合物の製造方法及びその方法で得られた高純度含フッ素化合物 - Google Patents
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Description
したがって、半導体製造用エッチングガスとして使用されたのちの排出ガスは、現時点では、一般に種々の原理の除害装置を用いて無害化処理が行われている。上記無害化処理としては、通常大気圧プラズマ装置が用いられているが、エッチングガスの消費量が膨大であるため、上記排出ガスの無害化処理の負荷が過大になっているのが現状である。
(1)分子内に炭素−炭素二重結合を有する炭素原子に塩素原子が置換した不飽和炭化水素を、非プロトン性極性溶媒中、フッ化カリウム等のアルカリ金属フッ化物を作用させて、フッ素化不飽和炭化水素を製造する方法;
(2)フッ素化不飽和炭化水素を、水素化触媒の存在下に接触水素還元してハイドロフルオロカーボンを製造する方法;
(3)金属フッ化物存在下に酸フルオリドとアルキルハライドまたはアルキルスルホネートとを反応させる方法;
(4)分子内にフッ素置換可能な塩素原子等を有する飽和炭化水素(ハイドロカーボン)にフッ素化剤を作用させて、ハイドロフルオロカーボンを製造する方法;
などが挙げられる。
これらの製造方法により得られた目的物は、蒸留等により単離・精製されるが、得られる目的物には、微量のハロゲン化水素が含まれている場合が多い。ハロゲン化水素、中でもフッ化水素は腐食性に富み、微量含まれている場合であっても、ガラス製や金属製の製造設備、充填容器、使用設備等を腐食する性質がある。特に、水分が混入すると、さらに腐食されやすくなる環境におかれるため、フッ化水素を含有したままでは不都合を招く場合が多い。
また、水やフッ化水素が存在すると、特に含フッ素化合物が二重結合等の反応性部位を持っている等の理由で化学的に不安定な場合、含フッ素化合物の変質(分解や重合、異性化等)を引き起こし、更なる純度の低下を招くという悪循環に陥るおそれがある。
また、ヘキサフルオロエタンの場合、(1)エタン及び/又はエチレンを原料とする電解フッ素化法、(2)四フッ化エチレンなどを熱分解する熱分解法、(3)アセチレン、エチレン及び/又はエタンなどを金属フッ化物によりフッ素化する方法、(4)ジクロロテトラフルオロエタンやクロロペンタフルオロエタンを、フッ化水素によりフッ素化する方法、(5)フッ素ガスにより、エタン、ハイドロフルオロカーボンなどを直接フッ素化する方法などが知られている。このようにして得られるヘキサフルオロエタンには、不純物として、例えばクロロトリフルオロメタン、トリフルオロメタン、フッ化水素などが含まれている。
したがって、このような不純物を含む含フッ素化合物中の該不純物を除去する技術が種々開示されている。
本発明は、このような状況下になされたもので、半導体製造用エッチングガスや、冷凍サイクル用冷媒などとして用いられる含フッ素化合物、好ましくはパーフルオロオレフィン中の各種不純物を効果的に除去することにより、装置の腐食や早期劣化を起こすことなく長期間にわたり上記含フッ素化合物を使用あるいは循環使用したり、さらには上記含フッ素化合物の再利用を可能とする高純度含フッ素化合物の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
(1)ゼオライト中のイオン交換可能なイオン数の20%以上がカルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン及びリチウムイオンの中から選ばれる少なくとも一種のイオンに交換されたゼオライトに、含フッ素化合物を接触させて、該含フッ素化合物に含まれる不純物を除去する工程を有することを特徴とする高純度含フッ素化合物の製造方法、
(2)前記ゼオライトが、ゼオライト中のイオン交換可能なイオン数の50%以上がカルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン及びリチウムイオンの中から選ばれる少なくとも一種のイオンに交換されてなる上記(1)に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(3)前記イオン交換されたゼオライトが、チャバサイト型ゼオライト、A型ゼオライト及びX型ゼオライトから選ばれる少なくとも一種である上記(1)または(2)に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(4)前記含フッ素化合物が、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロベンゼン、オクタフルオロプロパン及びオクタフルオロシクロブタンから選ばれる少なくとも一種である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(5)前記含フッ素化合物が、パーフルオロオレフィンである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(6)前記パーフルオロオレフィンが、パーフルオロジエン化合物である上記(5)に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(7)前記パーフルオロジエン化合物が、ヘキサフルオロブタジエン、オクタフルオロペンタジエン及びデカフルオロヘキサジエンから選ばれる少なくとも一種である上記(6)に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(8)前記含フッ素化合物が、ヘキサフルオロ硫黄三フッ化窒素及びフッ化カルボニルから選ばれる少なくとも一種である上記(1)(3)のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(10)前記イオン交換されたゼオライトを充填した装置に、含フッ素化合物を流通させる上記(1)〜(9)のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(11)前記不純物が、水及びフッ化水素の少なくともいずれかを含む上記(1)〜(10)のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(12)前記不純物が、前記イオン交換されたゼオライトに接触させる含フッ素化合物の異性体を含む上記(1)〜(11)のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(13)前記含フッ素化合物の異性体が、該含フッ素化合物の炭素−炭素二重結合の位置異性体または環状異性体である上記(12)に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(14)不純物除去後の含フッ素化合物の純度が、99.00体積%以上である上記(1)〜(13)のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(15)不純物除去後の含フッ素化合物の純度が、99.95体積%以上である上記(14)に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(16)不純物除去後の含フッ素化合物に含まれる水分濃度が、50体積ppm以下である上記(1)〜(15)のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、
(17)不純物除去後の含フッ素化合物に含まれる水分濃度が、10体積ppm以下である上記(16)に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法、及び
(18)上記(1)〜(17)のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法により製造されることを特徴とする高純度含フッ素化合物、
を提供するものである。
本発明の高純度含フッ素化合物の製造方法においては、含フッ素化合物中の不純物を吸着除去するために、イオン交換されたゼオライトが用いられる。
本発明で用いるイオン交換されたゼオライトとしては、ゼオライト中のイオン交換可能なイオン数の20%以上が、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン及びリチウムイオンの中から選ばれる少なくとも一種のイオンに交換されたゼオライトが用いられる。
イオン交換率が、ゼオライト中のイオン交換可能なイオン数の20%未満であると、含フッ素化合物中の不純物に対する吸着除去効果が充分に発揮されない。好ましいイオン交換率は、イオン交換可能なイオン数の50%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
交換される金属イオンは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン又はリチウムイオン、あるいは前記イオンの中から選ばれる2種の混合イオン、3種の混合イオン又は4種の混合イオンである。
ゼオライトは、ケイ酸塩の縮合酸の構造を有し、その基本単位は、ケイ素(Si)を中心として形成される4個の酸素(O)が頂点に配置されたSiO44面体と、このSiO44面体のケイ素の代わりにアルミニウム(Al)が置換したAlO44面体であり、これらと他の種々の基本構造の単位が三次元的に組み合わさり、無数の微細なチャンネル(通路)とケージ(空洞)が形成されたものである。このチャンネル、ケージは、分子吸着やイオン交換などの多様な特性を発現する。
ゼオライトの組成は、一価及び二価のカチオンを、それぞれM+、M2+で示すと、下記式(1)のように表すことができる。
M+=Li+,Na+,K+,Rb+,(CH3)4N+,(C2H5)4N+,(C3H7)4N+,C8H16N+
M2+=Ca2+,Mg2+,Ba2+,Sr2+,C8H18N2 2+
(式中、m及びnは整数でn≧mであり、xは1以上の数である。)
なお、前記C8H16N+は、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7,7−ジメチルアンモニウムイオンであり、前記C8H18N2 2+は、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジメチルアンモニウムイオンである。
本発明において、含フッ素化合物中の不純物を吸着除去するのに用いるイオン交換されたゼオライトとしては、チャバサイト型ゼオライト、あるいはゼオライト中のイオン交換可能なカチオン数の20%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上が、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン及びリチウムイオンの中から選ばれる少なくとも一種のイオンで交換されたA型ゼオライト又はX型ゼオライトが好適である。
前記チャバサイト型ゼオライトとしては、例えば単位格子組成が、下記式(2)
Ca2(Al4Si8O24)・13H2O ・・・(2)
で表される天然のチャバサイト型ゼオライトを用いることができる。
なお、イオン交換はゼオライト粉末をイオン交換に供してもよいし、ゼオライトを成形体に成形した後に行ってもよく、特に制限されない。また、イオン交換の回数は、得られるゼオライト中のイオンの種類や含有量にもよるが、1回であっても、複数回反復して実施してもよい。イオン交換によりゼオライト中のイオン交換可能なカチオンを所望のイオンに交換した後、ゼオライトを通常の方法にて洗浄、乾燥する。
前記のNaA型ゼオライト及びNaX型ゼオライトとしては、例えば単位格子組成が、それぞれ下記式(3)及び式(4)
Na12(Al12Si12O48)・27H2O ・・・(3)
Na86(Al86Si106O384)・264H2O ・・・(4)
で表されるゼオライトを用いることができる。
なお、当該イオン交換されたゼオライトのイオン交換率は、下記の方法により測定することができる。
本発明におけるゼオライト中のイオン交換率は、XFS(蛍光X線測定装置)またはICP(発光分析装置)を用いた測定により、当該カチオンの定量値をもとに算出することができる。
本発明の高純度含フッ素化合物の製造方法が適用される含フッ素化合物としては、例えば(a)半導体製造用エッチングガスとして用いられる含フッ素化合物(以下、「エッチングガス用含フッ素化合物」と称することがある。)、(b)冷凍サイクル用冷媒に用いられる含フッ素化合物(以下、「冷凍機冷媒用含フッ素化合物」と称することがある。)、及び(c)電子機器、機械装置等の摺動部や表面に潤滑性を付与する潤滑性重合体の溶剤として用いられる含フッ素化合物(以下、「潤滑性重合体の溶剤用含フッ素化合物」と称することがある。)などを挙げることができる。
従来、半導体製造用エッチングガスとしては、例えばテトラフルオロメタン(CF4)、ヘキサフルオロエタン(C2F6)などのパーフルオロカーボン等が用いられてきたが、近年半導体装置の高集積化に伴い、小さい空間に多くの情報を入れるための超微細パターンの形成に必要なドライエッチング工程がULSI(極超高密度集積回路)の核心工程として重要な位置を占めるようになり、それに伴いドライエッチングガスとして、オクタフルオロシクロペンテンなどのパーフルオロモノエン化合物等のパーフルオロオレフィン類が注目を浴びている。このパーフルオロオレフィン類は、オレフィン結合があるために重合や異性化などの純度低下を生起しやすく、高純度化の難易度が高いので特にその効果的な製法が求められていた。また、高集積化、超微細パターン形成のために益々エッチングガスの高純度化が要求されてきている。また近年、地球温暖化問題から、より温暖化係数の小さなフッ素化合物が用いられる傾向がある。
なお、不純物として水やフッ化水素が存在すると、特に含フッ素化合物が二重結合等の反応性部位を持っている等の理由で化学的に不安定な場合、含フッ素化合物の変質(分解や重合、異性化等)を引き起こし、更なる純度の低下を招くという悪循環に陥るおそれがある。
冷凍機冷媒用含フッ素化合物として、従来クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)などが主に使用されてきたが、環境問題の原因となる塩素を含む化合物であったことから、ハイドロフルオロカーボン(HFC)などの塩素を含有しない代替冷媒、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン(以下、それぞれR134a、R32、R125、R143aと称せられる。)に代表されるハイドロフルオロカーボンが注目されるようになり、例えばカーエアコンシステムにはR134aが使用されてきた。
また、地球温暖化係数がより低く、現行カーエアコンシステムに使用できる冷媒として、例えば不飽和フッ化炭化水素化合物、さらにはフッ化エーテル化合物、フッ化アルコール化合物、フッ化ケトン化合物など分子中に特定の極性構造を有する冷媒が見出されている。
なお、冷凍機冷媒用含フッ素化合物においては、後で説明するように、冷凍サイクル系内に蓄積する水分をできるだけ除去することが重要となる。
電子機器、機械装置などの摺動物や表面に潤滑性を付与するために潤滑性重合体、例えばパーフルオロアルキルポリエーテル類などのフッ素系重合体の被膜を形成することが行われている。この場合、前記潤滑性重合体を溶解又は分散させてなる塗工液を調製し、この塗工液を電子機器や機械装置などの摺動部や表面に塗工し、潤滑性重合体の被膜を形成する。
前記塗工液の調製には、溶剤として炭素数4〜8のハイドロフルオロカーボン類やハイドロフルオロエーテル類が好ましく用いられるが、近年電子機器や機械装置などの小型化、高精度化に伴い、高耐久性、高信頼性が求められている。したがって、溶剤として用いられるこれらハイドロフルオロカーボン類やハイドロフルオロエーテル類は、フッ化水素等を極力除去することが必要となっている。
本発明の高純度含フッ素化合物の製造方法に適用される含フッ素化合物中には、その製造時に混入される各種不純物や、該含フッ素化合物を使用する際に混入される各種不純物が含まれている。
前記含フッ素化合物の製造時に混入される不純物としては、中間体、異性体、副生成物(例えば、フッ化水素、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロクロロフルオロカーボン類、クロロフルオロカーボン類、フルオロアルケン類等)などが挙げられる。
また、前記含フッ素化合物の使用時に混入される不純物としては、例えば、半導体製造用エッチングガスとして使用する場合には、HF、SiF4、O2などが挙げられ、冷凍機冷媒用として使用する場合には、水分を挙げることができる。
不純物除去後の含フッ素化合物の純度は、99.00体積%以上であることが好ましく、99.95体積%以上であることがより好ましい。
また、不純物除去後の含フッ素化合物に含まれる水分濃度は、50体積ppm以下であることが好ましく、10体積ppm以下であることがより好ましい。
本発明の高純度含フッ素化合物の製造方法に適用される含フッ素化合物としては、例えばパーフルオロカーボン類、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロオレフィン類、フッ化エーテル化合物、フッ化アルコール化合物、フッ化ケトン化合物などを挙げることができる。
パーフルオロカーボン類としては、例えばテトラフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、オクタフルオロプロパン、オクタフルオロシクロブタン、ヘキサフルオロベンゼンなどが挙げられ、ハイドロフルオロカーボン類としては、例えばジフルオロメタン、トリフルオロメタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられるが、特にジフルオロメタン、トリフルオロメタン、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロベンゼン、オクタフルオロプロパン及びオクタフルオロシクロブタンの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
パーフルオロオレフィン類としては、例えばヘキサフルオロプロピレン、オクタフルオロ−2−ブテン、デカフルオロ−2−ペンテン、ドデカフルオロ−2−ヘキセンなどの鎖状パーフルオロモノオレフィン化合物;ヘキサフルオロシクロブテン、オクタフルオロシクロペンテン、デカフルオロシクロヘキセンなどの脂環式パーフルオロモノオレフィン化合物;ヘキサフルオロブタジエン、オクタフルオロペンタジエン、デカフルオロヘキサジエン等のパーフルオロジエン化合物などが挙げられるが、本発明においては、前記パーフルオロジエン化合物の中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。このパーフルオロジエン化合物は、半導体製造用エッチングガスなどの用途に好適に用いられる。
フッ化エーテル化合物としては、例えば1〜6個のフッ素原子が導入されたジメチルエーテル、1〜8個のフッ素原子が導入されたメチルエチルエーテル、1〜8個のフッ素原子が導入されたジメトキシメタン、1〜10個のフッ素原子が導入されたメチルプロピルエーテル、1〜12個のフッ素原子が導入されたメチルブチルエーテル、1〜12個のフッ素原子が導入されたエチルプロピルエーテル、1〜6個のフッ素原子が導入されたオキセタン、1〜6個のフッ素原子が導入された1,3−ジオキソラン、1〜8個のフッ素原子が導入されたテトラヒドロフランなどを挙げることができる。これらは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
このフッ化エーテル化合物は、地球温暖化係数の低い冷凍機冷媒用や、潤滑性重合体の溶剤用などとして用いられる。
フッ化アルコール化合物としては、例えば1〜3個のフッ素原子が導入されたメチルアルコール、1〜5個のフッ素原子が導入されたエチルアルコール、1〜7個のフッ素原子が導入されたプロピルアルコール、1〜9個のフッ素原子が導入されたブチルアルコール、1〜11個のフッ素原子が導入されたペンチルアルコール、1〜4個のフッ素原子が導入されたエチレングリコール、1〜6個のフッ素原子が導入されたプロピレングリコールなどを挙げることができる。これらは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
このフッ化アルコール化合物は、地球温暖化係数の低い冷凍機冷媒用などとして用いられる。
フッ化ケトン化合物としては、例えば1〜6個のフッ素原子が導入されたアセトン、1〜8個のフッ素原子が導入されたメチルエチルケトン、1〜10個のフッ素原子が導入されたジエチルケトン、1〜10個のフッ素原子が導入されたメチルプロピルケトンなどが挙げられる。これらは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
このフッ化ケトン化合物は、地球温暖化係数の低い冷凍機冷媒用などとして用いられる。
なお、本発明においては、含フッ素化合物としてヘキサフルオロ硫黄、三フッ化窒素及びフッ化カルボニルから選ばれる少なくとも一種を用いることもできる。
本発明の高純度含フッ素化合物の製造方法においては、前述のイオン交換されたゼオライトを不純物吸着除去材として用い、これに含フッ素化合物を接触させることにより、該含フッ素化合物に含まれる不純物を除去する。
この場合、不純物を効果的に吸着除去するには、含フッ素化合物と、イオン交換されたゼオライトとを、質量比100:1〜1:10の割合で接触させることが好ましく、50:1〜1:5の割合で接触させることがより好ましく、10:1〜1:3の割合で接触させることがさらに好ましい。接触温度については特に制限はないが、当該含フッ素化合物の沸点等を勘案して決めればよい。一般には低温で接触させるほうが、接触時の異性化等の副反応が抑制されるので好ましい。好ましくは−50℃〜100℃の範囲だが、一般的には、常温で充分である。
この場合、イオン交換されたゼオライトは粉末状で用いてもよく、成形体として用いてもよいが、工業的には成形体として用いることが好ましい。成形体の形状に特に制限はないが、例えば直径0.5〜5mm程度、長さ1〜15mm程度の円柱状、あるいは直径0.5〜10mm程度の球状のものが好ましい。
成形体の製造方法に特に制限はなく、例えばバインダーとしてカオリン系粘土を用いる従来公知の方法を採用することができる。
本発明の高純度含フッ素化合物は、純度を、通常99.00体積%以上、好ましくは99.95体積%以上とすることができ、また、水分濃度を、通常50体積ppm以下、好ましくは10体積ppm以下とすることができる。
なお、諸特性の測定は、以下に示す方法に従って行った。
(1)チャバサイト型ゼオライト及び各製造例で得られたイオン交換ゼオライトのイオン交換率
明細書本文に記載の方法に従って、下記の測定装置及び測定条件により、イオン交換率を測定した。
・測定条件: 蛍光X線測定装置(島津製作所製XRF−1700)による定量分析。
・イオン交換率の計算:アルミニウム1原子あたりの交換される元素の原子数を、検量線を用いて定量した。
(2)実施例及び比較例における含フッ素化合物の純度及び水分濃度の測定
下記の測定装置及び測定条件により、純度を測定した。
・測定装置:ガスクロマトグラフィー(TCD検出器を使用)
・測定条件:カラム/Porapack Q 6m、カラム温度/100℃
・純度の計算:当該含フッ素化合物の標準ガスを用いた検量線により定量。
・水分濃度の計算:検量線により定量。
塩化マグネシウム30質量%濃度の水溶液200質量部中に、NaA型ゼオライト粉末[ユニオン昭和(株)製、商品名「ゼオライト4Aパウダー」]50質量部を投入し、70℃にて1時間イオン交換反応を行った。その後、固液分離し、十分に水洗したのち、120℃で乾燥し、さらに500℃の温度で1時間焼成処理してMgA型ゼオライト粉末を製造した。このMgA型ゼオライト粉末のMgイオン交換率は53%であった。
塩化バリウム30質量%濃度の水溶液200質量部に、製造例1で用いたものと同じNaA型ゼオライト粉末30質量部を投入し、70℃にて1時間イオン交換反応を行った。その後、固液分離し、十分に水洗したのち、120℃で乾燥し、さらに500℃の温度で 1時間焼成処理してBaA型ゼオライト粉末を製造した。このBaA型ゼオライト粉末のBaイオン交換率は45%であった。こうして得られたゼオライト粉末を直径1.6mm、長さ約4mmのペレットに成形した。
塩化リチウム45質量%濃度の水溶液200質量部中に、NaX型ゼオライト粉末[ ユニオン昭和(株)製、商品名「ゼオライト13Xパウダー」]100質量部を投入し、70℃にて30分イオン交換反応を行った。その後、固液分離し、十分に水洗したのち、120℃で乾燥し、さらに500℃の温度で30分焼成処理してLiX型ゼオライト粉末を製造した。このLiX型ゼオライト粉末のLiイオン交換率は60%であった。
塩化カルシウム50質量%濃度の水溶液200質量部中に、製造例3で用いたものと同じNaX型ゼオライト粉末50質量部を投入し、70℃にて1時間イオン交換反応を行った。その後、固液分離し、十分に水洗したのち、120℃で乾燥し、さらに500℃の温度で1時間焼成処理してCaX型ゼオライト粉末を製造した。このCaX型ゼオライト粉末のCaイオン交換率は51%であった。こうして得られたゼオライト粉末を直径1.6mm、長さ約4mmのペレットに成形した。
チャバサイト型ゼオライトペレット[UOP社製、Caイオン交換率約35%、直径1.6mm、長さ約4mm]10gを充填した容量100mLのステンレス製シリンダーに、ガスクロマトグラフィーによる純度98.50体積%のヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン50gを充填し、−10℃にて8時間保持した。ガスクロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの純度は99.96体積%、含有水分濃度は5体積ppmになった。
また、前記ガスクロマトグラフィーによる分析では、原料のヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン中に含まれていた環状フルオロ化合物及びフッ化水素が除去されたことが確認された。
チャバサイト型ゼオライトペレットの代わりに、製造例4で得たCaX型ゼオライトペレットを用いた以外は、実施例1と同様の実験を行った。ガスクロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの純度は99.95体積%、含有水分濃度は7体積ppmになった。
チャバサイト型ゼオライトペレットの代わりに、製造例1で得たMgA型ゼオライト粉末を用いた以外は、実施例1と同様の実験を行った。ガスクロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの純度は99.97体積%、含有水分濃度は3体積ppmになった。
チャバサイト型ゼオライトペレットの代わりに、製造例2で得たBaA型ゼオライトペレットを用いた以外は、実施例1と同様の実験を行った。ガスクロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの純度は99.96体積%、含有水分濃度は6体積ppmになった。
チャバサイト型ゼオライトペレットの代わりに、製造例3で得たLiX型ゼオライトペレットを用いた以外は、実施例1と同様の実験を行った。ガスクロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの純度は99.97体積%、含有水分濃度は2体積ppmになった。
充填ガスをヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンから、ガスクロマトグラフィー純度98.80体積%のオクタフルオロ−1,3−ペンタジエンに変えた以外は、実施例1と同様に実験を行った。ガスクロマトグラフィーで分析したところ、オクタフルオロ−1,3−ペンタジエンの純度は99.96体積%、含有水分濃度は7体積ppmになった。
また、前記ガスクロマトグラフィーによる分析では、オクタフルオロ−1,3−ペンタジエン中のオクタフルオロ−1,4−ペンタジエン及びフッ化水素が生成していないことが確認された。
チャバサイト型ゼオライトペレットの代わりに、製造例4で得たCaX型ゼオライトペレットを用いた以外は、実施例6と同様の実験を行った。ガスクロマトグラフィーで分析したところ、オクタフルオロ−1,3−ペンタジエンの純度は99.95体積%、含有水分濃度は10体積ppmになった。
また、前記ガスクロマトグラフィーによる分析では、オクタフルオロ−1,3−ペンタジエン中のオクタフルオロ−1,4−ペンタジエン及びフッ化水素が生成していないことが確認された。
チャバサイト型ゼオライトペレットの代わりに、活性アルミナビーズ[UOP社製、商品名「D−201」、直径約2mm]を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。ガスクロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの純度は98.55体積%、含有水分濃度は33体積ppmになっており、少量の重合化合物が生成していることが確認された。
チャバサイト型ゼオライトペレットの代わりに、NaA型ゼオライトである「ゼオライト4Aペレット」[ユニオン昭和(株)製、直径1.6mm、長さ約3mm]を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。ガスクロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの純度は98.95体積%、含有水分濃度は2.5体積ppmになっており、少量の重合化合物が生成していることが確認された。
チャバサイト型ゼオライトペレットの代わりに、「ゼオライト4Aペレット」(前出)を用いた以外は、実施例6と同様に実験を行った。ガスクロマトグラフィーで分析したところ、オクタフルオロ−1,3−ペンタジエンの純度は98.77体積%、含有水分濃度は12体積ppmになっており、少量のオクタフルオロ−1,4−ペンタジエンが生成していることが確認された。
Claims (12)
- チャバサイト型ゼオライトに、パーフルオロオレフィンを接触させて、該パーフルオロオレフィンに含まれる不純物を除去する工程を有することを特徴とする高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 前記パーフルオロオレフィンが、パーフルオロジエン化合物である請求項1に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 前記パーフルオロジエン化合物が、ヘキサフルオロブタジエン、オクタフルオロペンタジエン及びデカフルオロヘキサジエンから選ばれる少なくとも一種である請求項2に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 前記パーフルオロオレフィンと前記チャバサイト型ゼオライトとを、質量比100:1〜1:10の割合で接触させる請求項1〜3のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 前記チャバサイト型ゼオライトを充填した装置に、パーフルオロオレフィンを流通させる請求項1〜4のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 前記不純物が、水及びフッ化水素の少なくともいずれかを含む請求項1〜5のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 前記不純物が、前記チャバサイト型ゼオライトに接触させるパーフルオロオレフィンの異性体を含む請求項1〜6のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 前記パーフルオロオレフィンの異性体が、該パーフルオロオレフィンの炭素−炭素二重結合の位置異性体または環状異性体である請求項7に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 不純物除去後のパーフルオロオレフィンの純度が、99.00体積%以上である請求項1〜8のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 不純物除去後のパーフルオロオレフィンの純度が、99.95体積%以上である請求項9に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 不純物除去後のパーフルオロオレフィンに含まれる水分濃度が、50体積ppm以下である請求項1〜10のいずれかに記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
- 不純物除去後のパーフルオロオレフィンに含まれる水分濃度が、10体積ppm以下である請求項11に記載の高純度含フッ素化合物の製造方法。
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