JP5604251B2 - 圧電素子 - Google Patents

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本発明は、圧電層と内部電極とが交互に積層され、電圧の印加により伸縮する矩形の圧電素子に関する。
積層型の圧電素子は、圧電層と交互に積層された内部電極に電圧を印加することで伸縮させることができ、たとえばシリコンウエハを保持したステージの位置決めに応用されている。伸縮の際には、内部電極が重なりあい電界がかかる活性部の変形に対し、電界が掛からない非活性部には大きな引っ張り応力が発生し易く、破壊が生じるおそれがある。このため非活性部に応力緩和層を設け、応力を緩和する構造が提案されている。
しかし、応力緩和層部分には大きな変形が生じるため、内部電極を接続する外部電極が疲労破壊を起こしうる。この対策として、外部電極にリード線を埋めたり、伸縮性のある導電性接着剤を用いて波線状のリード線を付けたり、リード線を複数付けたりする技術が提案されている。
たとえば、特許文献1記載の積層型圧電素子は、あらかじめ溝を切った板で外部電極を補強しつつ、外部電極付近に掛かる応力を緩和している。また、特許文献2記載の積層型圧電素子は、予定亀裂位置で疲労破壊が起きても電圧が供給されるように複数の電線をつないでいる。
特開2010−74033号公報 特開2010−109057号公報
上記のように、従来の積層型圧電素子には、応力緩和層部分の外部電極が疲労破壊を起こしうるという問題がある。図8は、従来の圧電素子600を示す正面図である。外部電極615にリード線620を接着して補強しているが、応力緩和層617の位置で外部電極615およびリード線620が破壊されている。
しかし、これに対し厚いリード線を用いて対処すると、リード線の拘束によって外部電極付近にクラックが生じうる。図9は、従来の圧電素子700を示す正面図である。外部電極715に厚いリード線720を接着しているが、リード線720の拘束によって外部電極715付近にクラック741が生じている。
上記の特許文献1記載の圧電素子のように、あらかじめ外部電極を補強する板に溝を切っておき、外部電極付近に掛かる応力を緩和することも考えられるが、必ずしも応力緩和層付近に切れ目が存在しないため、そこを基点に疲労破壊を起こし破断しうる。また、特許文献2記載のように電圧が供給されるようにリード線をつなぐことも考えられるが、作製作業が煩雑になる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、外部電極における選択されていない箇所の疲労破壊を防止するとともに、補強板が圧電素子を拘束してクラックが生じるのを防止し、補強板および外部電極に選択的な疲労破壊が生じても電気的接続を維持できる圧電素子を提供すること目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明の圧電素子は、圧電層と内部電極とが交互に積層され、電圧の印加により伸縮する矩形の圧電素子であって、積層面に平行に層面が形成され、伸縮による応力を緩和する応力緩和層と、側面に設けられた外部電極と、前記外部電極に接着され、前記外部電極を補強する補強部、および前記外部電極に拘束されずに前記応力緩和層で区切られる前記補強部を連結する連結部を有し、前記応力緩和層付近で、前記補強部が選択的に疲労破壊しうる程度に薄く形成された金属製の補強板と、を備えることを特徴としている。
このように、補強板が外部電極に接着されていることで、外部電極における選択されていない箇所の疲労破壊を防止できる。その一方で、補強部が選択的に疲労破壊しうることで補強板の拘束により生じる素子本体のクラックの発生を防止できる。そして、連結部が外部電極に拘束されずに補強部を連結するため、補強板および外部電極に選択的な疲労破壊が生じても電気的接続を維持でき、圧電素子を駆動できる。
(2)また、本発明の圧電素子は、前記連結部のそれぞれがアーチ状に形成され、前記補強部と一体に形成されていることを特徴としている。このように連結部のそれぞれがアーチ状に形成され、外部電極には接着されていないため、連結部には疲労破壊は及ばない。
(3)また、本発明の圧電素子は、前記連結部が、前記積層方向に沿って前記補強部の左右交互に配置されていることを特徴としている。これにより、伸縮の際にかかる応力のバランスをとることができる。
(4)また、本発明の圧電素子は、前記補強板が、リン青銅製または銅製であって、厚さ0.2mm以下であることを特徴としている。これにより、補強板は選択的な疲労破壊を起こすことができ、素子本体の破壊を防止できる。
(5)また、本発明の圧電素子は、前記補強板が、SUS製であって、厚さ0.1mm以下であることを特徴としている。これにより、補強板は選択的な疲労破壊を起こすことができ、素子本体の破壊を防止できる。
本発明によれば、外部電極における選択されていない箇所の疲労破壊を防止するとともに、補強板が圧電素子を拘束してクラックが生じるのを防止し、補強板および外部電極に選択的な疲労破壊が生じても電気的接続を維持できる。
本発明に係る圧電素子を示す斜視図である。 素子本体を示す正面図である。 本発明に係る圧電素子を示す断面図である。 本発明に係る圧電素子の作製方法を示す概略図である。 (a)本発明に係る圧電素子の使用時の態様を示す正面図である。(b)圧電体の使用時の態様を示す正面図である。 (a)比較例の圧電素子を示す正面図である。(b)比較例の圧電体を示す正面図である。 補強板の材質と厚みについての実験結果を示す表である。 従来の圧電素子を示す正面図である。 従来の圧電素子を示す正面図である。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
(圧電素子の構造)
図1は、圧電素子100を示す斜視図、図2は、素子本体110を示す正面図、図3は、圧電素子100を示す断面図である。図1および図3において、矢印Fは正面に向かう方向を示している。また、図3は、図1に示す面Sによる断面を示している。なお、図面では、長手方向の両端側を省略して圧電素子100を示している。
図1〜図3に示すように、圧電素子100は、圧電層111と内部電極112とが交互に積層されて矩形に形成されている。そして、内部電極112に電圧を印加することで伸縮する。圧電素子100は、圧電層111、内部電極112、外部電極115、応力緩和層117、補強板120を備えている。
圧電素子100は、圧電層111と内部電極112が一体焼成される単位素子105が連結された素子本体110に補強板120を接着して形成されている。単位素子105の連結は接着剤で行うが、必ずしも限定されない。また、連結せず単一の単位素子105のみで圧電素子100を形成してもよい。
圧電層111は、たとえばPZTのような圧電体により形成されている。一連の内部電極112に挟まれている圧電体は、分極処理により分極されている。圧電層111の一層は、実際には30μm〜100μm程度であり、非常に薄いが、図では簡略化して模式的に示している。
内部電極112は、圧電層111と交互に積層され、圧電体に埋設されている。内部電極112に電圧を印加し、圧電体に電界をかけることで、圧電素子100を駆動することができる。
外部電極115は、圧電素子100の側面で内部電極112の取り出し部分に接続されている。外部電極115は、AgやAg/Pd等のペーストを印刷し、焼き付けることで形成できる。外部電極115を介して内部電極112に電圧が印加される。
応力緩和層117は、活性領域の周囲の領域に、積層面に平行、すなわち伸縮方向に垂直に層面が形成されている。その結果、圧電素子100の伸縮による応力を緩和する。なお、単位素子105の結合部分117aも応力緩和の作用を有するため、機能的には応力緩和層117とみなすことができる。
なお、圧電素子100は、加工代として積層方向の両端部に設けられた保護層と電圧の印加により駆動する活性層とに区分できる。さらに、活性層は、内部電極の積層方向への投影が重なり合う中央の活性領域と内部電極が外部とショートしないように設けられた周囲の領域とに区分できる。活性領域は、圧電素子100において実際に駆動する領域である。活性領域は電圧により駆動するが、その周囲の領域は、電圧の印加により変形せず応力が生じるため、応力緩和層117が必要となる。
補強板120は、金属製であり、補強部121および連結部122を備えている。補強部121は、帯状に形成され、外部電極115に接着され、外部電極115を補強している。このように、補強部121が外部電極115に接着されていることで、外部電極115のクラックを防止できる。補強部121は、応力緩和層117付近で、選択的に疲労破壊しうる程度に薄く形成されている。その一方で、補強部121が選択的に疲労破壊することで、補強板120が素子本体110を拘束せず、素子破壊が生じるのを防止できる。なお、選択的に生じさせる疲労破壊は、上記のクラックとは異なる。
連結部122は、外部電極115に拘束されずに応力緩和層117で区切られる補強部121を連結している。これにより、補強板120および外部電極115に選択的な疲労破壊が生じても電気的接続を維持でき、圧電素子100を駆動できる。連結部122のそれぞれはアーチ状に形成され、補強部121と一体に形成されている。このような構造で外部電極115に接着されていないため、連結部122には疲労破壊は及ばない。
連結部122は、積層方向に沿って補強部121の左右交互に配置されていることが好ましい。これにより、伸縮の際に偏りなく応力がかかる。なお、連結部122の形状は必ずしもアーチ状でなくてもよく、外側に膨らんでおり、補強部121との間に空隙123があればよい。空隙により、疲労破壊が外側の端部まで及ばない。
補強板120は、リン青銅製または銅製であることが好ましい。その場合、厚さを0.2mm以下とすることにより、補強板は選択的な疲労破壊を起こすことができる。補強板120は、SUS製であってもよい。この場合には、厚さは0.1mm以下であることが疲労破壊を生じさせるには好適である。
(作製方法)
次に、上記のような構成を有する圧電素子100の作製方法を説明する。図4は、圧電素子100の作製方法を示す概略図である。
単位素子105は、圧電層111と内部電極112とを積層して焼成することで形成される。一方、補強板120の材料となる金属板は好適な厚さのものを選び、外部電極115より幅広で、かつ単位素子105を連結した素子本体110の長さを有するように加工する。また、素子本体110に貼付したときに応力緩和層117の位置で外側(側面側)に膨らむように連結部122を設ける。また、補強板120はエッチングで作製するのが望ましい。
そして、単位素子105を連結し、外部電極115に重なる領域130に、補強部121を半田付けで接着する。このようにして、単位素子105を連結して得られた素子本体110の所定の位置に補強板120を接着することで圧電素子100を形成することができる。なお、半田に変えて導電性接着剤を用いて接着してもよい。
(使用態様)
次に、圧電素子100を実際に使用する際の態様を説明する。図5(a)は、圧電素子100の使用時の態様を示す正面図である。図5(b)は、使用時の素子本体110を示す正面図である。
図5(a)に示すように、圧電素子100を伸縮させることで、応力緩和層117部分の変位が大きくなり、その部分の補強部122に疲労破壊141が生じる。疲労破壊141は予め生じさせておいてもよい。また、その際には、図5(b)に示すように、外部電極115の応力緩和層117と重なる部分にも疲労破壊142が生じている。
選択的に疲労破壊141を生じさせることで、補強部121は、外部電極115を補強しつつ、応力緩和層117の位置では応力を緩和している。一方では、外部電極115の疲労破壊で分断された電気的接続を、連結部122が維持している。すなわち、連結部122が繋がっていることで通電している。
[実施例]
圧電素子の補強板の材料および厚さについて実験を行った。補強板の材料は、リン青銅、銅、SUS304を用いた。厚さは、0.05mm、0.1mm、0.15mm、0.2mm、0.3mmのものを用意した。また、補強部の幅が0.2mmのものと0.4mmのものをそれぞれ用意した。このような補強板を用いて圧電素子を作製した。なお、リン青銅、銅の補強板は半田付けで外部電極に接着し、SUSの補強板は導電性接着剤で接着した。
このようにして作製した圧電素子を伸縮させたところ、薄い補強板を用いた実施例の圧電素子100では、補強板120に疲労破壊141が生じ、応力が緩和されるとともに、素子本体110内には破壊が生じなかった。一方、以下に説明するように厚い補強板を用いた比較例の圧電素子500は素子本体110内部に破壊が生じた。
図6(a)は、比較例の圧電素子500を示す正面図である。図6(b)は、比較例の素子本体110を示す正面図である。図6に示すように、厚い補強板520を用いた場合には、補強板520の応力緩和層117付近には疲労破壊が生じなかった。また、外部電極115の端部付近から、外部電極115をむしり取ろうとしたときにできるようなクラック541が生じた。たとえば、リン青銅製の0.3mmの補強板の場合には素子破壊が生じたため、補強部を単位素子105ごとに分割した形状の補強板も試したが、素子破壊を防止できなかった。また、補強部なしで、全体形状をサインカーブ状とした補強板も試したが、同様に素子破壊が生じた。
図7は、補強板の材質と厚みについての実験結果を示す表である。図7に示すように、
リン青銅製または銅製の補強板120を用いる場合、厚さを0.2mm以下とすることにより、補強板は選択的な疲労破壊を起こすことができ、単位素子105内の破壊を防止できることが実証された。また、SUS製の補強板120を用いる場合には、厚さを0.1mm以下とすることにより、補強板は選択的な疲労破壊を起こすことができ、単位素子105内の破壊を防止できることが実証された。なお、補強部の幅は実験結果に影響しなかった。
100 圧電素子
105 単位素子
110 素子本体
111 圧電層
112 内部電極
115 外部電極
117 応力緩和層
117a 結合部分
120 補強板
121 補強部
122 連結部
130 半田付けの領域
141、142 疲労破壊

Claims (3)

  1. 圧電層と内部電極とが交互に積層され、電圧の印加により伸縮する矩形の圧電素子であって、
    積層面に平行に層面が形成され、伸縮による応力を緩和する応力緩和層と、
    側面に設けられた外部電極と、
    前記外部電極に接着され、前記外部電極を補強する補強部、および前記外部電極に拘束されずに前記応力緩和層で区切られる前記補強部を連結する連結部を有し、前記応力緩和層付近で、前記補強部が選択的に疲労破壊しうる程度に薄く形成された金属製の補強板と、を備え
    前記補強板は、前記連結部のそれぞれがアーチ状に形成されて前記補強部と一体に形成され、リン青銅製または銅製であって、厚さ0.2mm以下であることを特徴とする圧電素子。
  2. 圧電層と内部電極とが交互に積層され、電圧の印加により伸縮する矩形の圧電素子であって、
    積層面に平行に層面が形成され、伸縮による応力を緩和する応力緩和層と、
    側面に設けられた外部電極と、
    前記外部電極に接着され、前記外部電極を補強する補強部、および前記外部電極に拘束されずに前記応力緩和層で区切られる前記補強部を連結する連結部を有し、前記応力緩和層付近で、前記補強部が選択的に疲労破壊しうる程度に薄く形成された金属製の補強板と、を備え
    前記補強板は、前記連結部のそれぞれがアーチ状に形成されて前記補強部と一体に形成され、SUS製であって、厚さ0.1mm以下であることを特徴とする圧電素子。
  3. 前記連結部は、前記積層方向に沿って前記補強部の左右交互に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧電素子。
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