以下、添付図面を参照して、圧電アクチュエータの実施形態の一例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、本実施形態の圧電アクチュエータ1の一例を示す模式的な斜視図である。図2は、図1の圧電アクチュエータ1を分解して示した一例である分解斜視図である。図3(a)は図1の圧電アクチュエータの平面図であり、図3(b)は図1の圧電アクチュエータの圧電素子を透過して示す平面図であり、図3(c)は図3(a)のc−c線における断面図であり、図3(d)および図3(e)は、それぞれ図3(a)のd−d線およびe−e線における断面図である。
本実施形態の圧電アクチュエータ1は、対向する第1の面および第2の面にそれぞれ表面電極22,23を有する直方体状の圧電素子2と、圧電素子2の第1の面に接合された、圧電素子2よりも長手方向に長いシム板3とを備えている。シム板3は、シム板本体31と、シム板本体31の圧電素子2に対向する面に設けられて、第1の面にある表面電極23(以下、第1表面電極23ともいう。)と電気的に接続されたシム電極32とを有している。そして、シム電極32は、シム板本体31と圧電素子2との間に介在された第1領域321およびシム板本体31と圧電素子2との間から長手方向に延出されて露出している第2領域322を有し、第1領域321にスリット323を有している。言い換えれば、シム電極32は、圧電素子2とシム板本体31とで挟まれた第1の領域321にスリット323を有している。さらに言えば、シム電極32は、圧電素子2とシム板3との接合領域に位置する第1領域321にスリット323を有している。
圧電素子2の第1の面にシム板3が接合材4で貼り合わせられている。シム板3は圧電素子2に貼り合わせられる面にシム電極32を備えている。シム電極32は、第1の領域321において圧電素子2の第1の面にある表面電極32と接続されている。一方、シム電極32の第2の領域322は圧電素子2と重なっておらず、露出している。圧電素子2の露出した第2の面にある表面電極22(以下、第2表面電極22ともいう。)およびシム電極32の第2領域322を外部回路に接続することで、圧電素子2に電圧を印加することができる。例えば、圧電素子2は電圧が印加されると伸縮するのに対してシム板3は伸縮しないので、これらが貼り合わせられた圧電アクチュエータ1は屈曲するものとなる。圧電素子2は直方体状であり、圧電素子2の長方形の第1の面に長方形状のシム板3が貼り合わされているので、圧電素子2およびシム板3の長手方向に大きく屈曲するものとなる。
従来、圧電アクチュエータの特性のために樹脂製のシム板を用いる場合には、圧電素子に電圧を印加するために、絶縁性のシム板本体の表面に電極(シム電極)を形成することが行なわれていた。シム電極が無電解めっきで形成しためっき膜である場合には、外部回路との接続の際のはんだによるはんだ食われでシム電極が断線する可能性がある。また、
めっき膜の樹脂製のシム板本体への接合強度も大きいものではないので、シム電極とシム板本体との間の接合強度が小さく、圧電アクチュエータの繰り返し駆動によって剥がれてしまうおそれがある。例えば、金属箔でシム電極を形成するとこのような問題は解決される。しかしながら、シム板本体に金属箔を貼り付けると、シム板の剛性が高くなるので、シム板本体と圧電素子とを接合する接合材に加わる応力が大きくなって、シム板と圧電素子とが剥がれやすくなってしまう。特に、金属箔の表面は樹脂製のシム板本体の表面より表面粗さが小さく、接合強度が小さくなりやすいので、シム電極と接合材との界面において剥がれやすくなってしまう。
本実施形態の圧電アクチュエータ1は、シム電極32は、第1領域321にスリット323を有していることから、スリット323を設けない場合と比べてシム電極32の第1領域321の剛性が低下してシム板3の剛性が低下するので、圧電アクチュエータが駆動する際に圧電素子2とシム板3との接合部すなわち接合材4に加わる応力が低減される。また、スリット323を設けることで、シム板3の圧電素子2との接合面の表面積が増加して接合強度が向上する。これらにより、駆動の繰り返しによる圧電素子2とシム板3との間の剥がれが抑制され、変位の低下が抑制された圧電アクチュエータ1となる。
ここで、図4はシム板23の他の例を示す平面図である。図2および図3に示す例においては、スリット323は、圧電素子2の短手方向すなわち長手方向に垂直な幅方向に向いているが、図4に示す例のように、圧電素子2の長手方向に延びるものであってもよい。あるいは、長手方向および幅方向に対して傾斜した方向に延びるものであってもよい。
本実施形態のように、圧電素子2が長手方向を有する場合は、長手方向で屈曲変位する。そのため、シム電極32は、長手方向に垂直な幅方向に向くスリット323を有するものとしてもよい。スリット323を幅方向に設けることで、シム板3が長手方向に屈曲変位しやすくなるので、さらに接合材4に加わる応力が低減され、圧電素子2とシム板4との接合面における剥がれを抑制することができる。
ここで、図5はシム板32の他の例を示す平面図である。図5に示す例のように、スリット323は、その外縁に位置する角部が丸みを帯びていてもよい。言い換えれば、平面視したときのスリット323の形状は、スリット323の先端部は角がなく、角部は丸みを有する形状とすることができる。スリット323が角部を有していると、圧電アクチュエータ1の駆動時にシム電極32が繰り返し屈曲した際に、角部を起点としてクラックが入る可能性があり、シム電極32が断線してしまうおそれがある。これに対して、スリット32の角部に丸みを設けることで、角部に加わる応力を分散でき、シム電極32にクラックが入る可能性を低減できるので、シム電極32の断線が抑制された、信頼性の高い圧電アクチュエータ1となる。
なお、図5に示す例のように、スリット323の先端だけでなく、スリット323の後端、すなわち平面視におけるスリット323とシム電極32の外辺とが交差する部分の角部も丸みを有する形状とすることができる。このようにすると、圧電アクチュエータ1の駆動時に、この角部を起点として接合材4にクラックが発生する可能性を低減することができるので、接合材4に発生するクラックによって圧電素子2とシム電極3との間の剥がれが発生する可能性を低減することができる。
また、図4に示す例の圧電アクチュエータ1においては、シム電極32はスリット323を1つだけ有している。これに対して図2、図3および図5に示す例の圧電アクチュエータ1においては、シム電極32はスリット323を2つ有している。さらには、図6〜図10に示す例の圧電アクチュエータ1においては、シム電極32はスリット323を多数有している。図6〜図10はシム板32の他の例を示す平面図である。このように、シ
ム電極32は、スリット323を複数有していてもよい。
圧電アクチュエータ1のシム電極32が複数のスリット323を有していると、シム板3の剛性がより低減して接合材4に加わる応力が低減されるとともに、シム板3の圧電素子2との接合面の表面積が増加して接合強度が向上する。これらにより、駆動の繰り返しによる圧電素子2とシム板3との間の剥がれがより抑制され、変位の低下がより抑制された圧電アクチュエータ1となる。図5〜図10に示す例では、複数のスリット323は、それぞれ圧電素子2の長手方向に向いており、圧電素子2の長手方向に配列されている。このようにすると、シム板3が長手方向により屈曲変位しやすくなるので、接合材4に加わる応力がさらに低減され、圧電素子2とシム板4との接合面における剥がれをさらに抑制することができる。
図6に示す例においては、複数のスリット323は、シム電極32の1つの長辺から内側に延びている。言い換えれば、複数のスリット323は、いずれも長手方向に垂直な幅方向の一端側(図面の上側)から他端側(図面の下側)に向けて延びる切り欠き状である。これに対して、図7に示す例のシム電極32は、長手方向に垂直な幅方向の一端側から他端側に向けて延びる切り欠き状の第1のスリット323aと幅方向の他端側から一端側に向けて延びる切り欠き状の第2のスリット323bとを有している。図6に示す例のように幅方向の一方端だけにスリット323を配置すると、シム電極32およびシム板3の幅方向において剛性に差が出る。そのため、圧電アクチュエータ1の屈曲は、スリット323を有する側がより大きくなりやすいので、圧電アクチュエータ1の屈曲はねじれを含むものとなりやすい。これに対して、図7に示す例のように幅方向の両方にスリット323を配置すると、シム電極32およびシム板3の幅方向において剛性の差が小さいものとなる。そのため、圧電アクチュエータ1の屈曲は、短手方向へのねじれの少ない長手方向の屈曲となりやすい。圧電アクチュエータ1の用途によりいずれかの配置を選択することができる。
また、図8に示す例のように、第1のスリット323aと第2のスリット323bとが、長手方向に交互に配置されていてもよい。すなわち、シム電極3は、長手方向に垂直な幅方向の一端側から他端側に向けて延びる切り欠き状の第1のスリット323aと幅方向の他端側から一端側に向けて延びる切り欠き状の第2のスリット323bとを有し、第1のスリット323aおよび第2のスリット323bが交互に配置されていてもよい。このようにすると、シム電極32およびシム板3の剛性がより低下し、シム板3の圧電素子2との接合面の表面積が増加して接合強度が向上する。これらにより、駆動の繰り返しによる圧電素子2とシム板3との間の剥がれがより抑制され、変位の低下がより抑制された圧電アクチュエータ1となる。
図9に示す例においても、第1のスリット323aと第2のスリット323bとが長手方向に交互に配置されているが、第1のスリット323aおよび第2のスリット323bの長さがシム電極32の幅の1/2より長い。それにより、第1のスリット323aおよび第2のスリット323bは長手方向において互いに重なる部分を有している。言い換えれば、シム電極32の第1領域321は、第2領域322より幅が小さく、第2領域322から蛇行して延びている形状である。シム電極32がこのような形状であると、長手方向に両端部に渡って連続して延びている部分ないので、シム電極32およびシム板3の剛性がより低下し、駆動の繰り返しによる圧電素子2とシム板3との間の剥がれがより抑制され、変位の低下がより抑制された圧電アクチュエータ1となる。
図10に示す例は、図9に示す例はスリット323の幅が一定であるのに対して、スリット323の幅が一定ではない例である。第1領域321の長手方向の中央部に位置するスリット323の幅より、第1領域321の長手方向の端部に位置するスリット323の
幅の方が大きい。より具体的には、複数のスリット323の幅は、第1領域321の長手方向の中央部から両端部に向かうにつれて大きくなっている。圧電素子2とシム板3とで伸縮差があることで圧電アクチュエータ1に屈曲変位が生じるが、同時に圧電素子2とシム板3とで伸縮差があることで圧電素子2とシム板3との間の接合部に応力が発生する。この応力は、圧電素子2とシム板3との接合長さの長い部分の両端部で大きいものとなる。具体的には、圧電素子2の長手方向の両端部に対応する部分に位置する接合材4に大きな応力が加わり、圧電素子2の長手方向の両端部に対応する部分から中央部に対応する部分にかけて応力は小さくなる。図10に示す例の圧電アクチュエータ1は、第1領域321の長手方向の端部に位置するスリット323の幅の方が大きいので、圧電素子2の長手方向の両端部に対応する部分に位置する接合材4が大きくなり、応力によるクラックの発生または剥がれが発生する可能性が低減されたものとなる。
図11および図12はシム板3の他の例を示す平面図である。図5、図11および図12に示すシム板3のシム電極32は、いずれも第1領域321の第2領域322とは反対側の端部から第2領域322側へ延びるスリット323を有し、第1領域321が複数に分かれている。このように、シム電極32は、第1領域321が複数に分かれて、それぞれが第2領域322に接続された形状とすることができる。スリット323によって第1の領域321におけるシム電極32が細くなると、駆動時に断線してしまう可能性が高まる場合がある。シム電極32が断線すると、圧電素子2に電圧を印加できないオープン不良となってしまう。第1領域321が複数の部分に分かれた形状のシム電極32を有する圧電アクチュエータ1は、複数の部分のうちの1つが断線したとしても他の部分が接続されているので、断線によるオープン不良の発生確率が低減されたものとなる。
図11(a)および図11(b)に示すシム板3においては、図5と同様に、シム電極32は、いずれも第1領域321の第2領域322とは反対側の端部から第2領域322側へ直線的に延びるスリット323を1つ有しており、第1領域321は2つの部分に分かれている。そして、分かれた2つの部分は、それぞれ幅方向に延びるスリット323を有している。これにより、図5に示すシム板3に比較してシム電極32およびシム板3の剛性がより低下している。
図11(a)および図11(b)に示すシム板3のシム電極32は、第1領域321に設けられた幅方向に延びるスリット323の長手方向における位置は、2つの部分で同じ位置に配置されている。図11(a)に示すシム電極32は、2つの部分の間で、長手方向で同じ位置にあるスリット323は、向きが同じである。これによって、2つの部分の形状は、シム電極32の幅方向の中心を通る直線に対して非対称となっている。一方、図11(b)に示すシム電極32は、2つの部分の間で、長手方向で同じ位置にあるスリット323は、向きが逆である。これによって、2つの部分の形状は、シム電極32の幅方向の中心を通る直線に対して対称となっている。そのため、図11(a)に示すシム板3を有する圧電アクチュエータ1の屈曲は、ねじれを含むものとなりやすい。また、図11(b)に示すシム板3を有する圧電アクチュエータ1の屈曲は、短手方向へのねじれの少ない長手方向の屈曲となりやすい。圧電アクチュエータ1の用途によりいずれかの配置を選択することができる。
図12に示すシム板3においては、シム電極32は、第1領域321の第2領域322とは反対側の端部から第2領域322側へ延びるスリット323は蛇行した形状である。この蛇行したスリット323によって分けられた2つの部分は、幅方向のスリット323を有している。これにより、2つの部分は、第2領域322から互いに平行に蛇行して延びる形状となっている。この形状の場合は、2つの部分の間で屈曲する部分の長手方向における位置が異なっている。シム電極32の屈曲する部分は、圧電アクチュエータ1の繰り返しの屈曲により断線しやすくなる可能性が高い部分である。2つの部分の間で屈曲す
る部分の位置が異なっているので、断線の可能性の高い位置が異なることとなり、駆動の繰り返しによるシム電極32の断線でのオープン不良の発生確率が低減された圧電アクチュエータ1となる。
図13は図9のA部を拡大して示す平面図である。このように、スリット323の外縁は凹凸形状になっていてもよい。言い換えれば、スリット323の内面は凹凸形状になっていてもよい。スリット323がこのような形状となっていることで、シム板本体31とシム電極32との接合強度を向上できるため、シム板本体31とシム電極32との間の剥離を抑制できる。なお、図1〜図13に示す例のように、平面視でシム電極32がシム板本体31より一回り小さく、シム電極32の外縁がシム板本体31の外縁より内側に位置している場合には、スリット323の外縁だけでなくシム電極32の外縁全体が凹凸形状となっていてもよい。
圧電素子2は、板状の圧電体21、第1表面電極22および第2表面電極23を含んでいる。圧電素子2が単板型である場合は、第1表面電極22は板状の圧電体21の第1の面(以下、第1主面という。)に設けられ、また第2表面電極23は第1主面と対向する第2の面(以下、第2主面という。)に設けられている。すなわち、圧電素子2は対向する第1の面および第2の面にそれぞれ表面電極22,23を有している。圧電素子2が積層型である場合は、板状の圧電体21と内部電極24とが積層された板状の積層体、第1表面電極22および第2表面電極23を含んでいる。第1表面電極22は板状の積層体の第1主面に、また第2表面電極23は第1主面と対向する第2主面に設けられている。この場合も、圧電素子2は対向する第1の面および第2の面にそれぞれ表面電極22,23を有している。内部電極24の端部がそれぞれ積層体の対向する一対の側面(第1側面および第2側面)に互い違いに導出されている。内部電極24は、第1主面、第2主面、第1側面および第2側面に囲まれた他の一対の側面にも導出されていてよい。なお、図14に示す例では、圧電体21は3層で内部電極24は2層であるが、圧電体21および内部電極24の層数はこれに限られるものではない。
図14に示す例では、積層型の圧電素子2はさらに第1側面電極25および第2側面電極26を含んでいる。第1側面電極25は第1側面に設けられており、第1側面に導出された内部電極24と第1表面電極22とを接続している。第2側面電極26は第2側面に設けられており、第2側面に導出された内部電極24と第2表面電極23とを接続している。単板型の圧電素子2では圧電体21の第1主面の全面に第1表面電極22が設けられ、第2主面の全面に第2表面電極23が設けられている。これに対して、積層型の圧電素子2では、第1表面電極22と第2側面電極26との間、および第2表面電極23と第1側面電極25との間で電気的に絶縁させている。そのため、第1表面電極22は積層体の第1主面の全面に設けず、第2側面電極26との間に隙間を設けている。また、第2表面電極23は積層体の第2主面の全面に設けず、第1側面電極25との間に隙間を設けている。
第1側面電極25および第2側面電極26を設ける代わりに、圧電体21を貫通する貫通導体を設けて内部電極24と第1表面電極22との接続、および内部電極24と第2表面電極23との接続を行なってもよい。この場合は、積層体の第1主面の全面に第1表面電極22を設け、第2主面の全面に第2表面電極23を設けることができる。
圧電素子2の形状(単板型の圧電素子2の圧電体21の形状および積層型の圧電素子2の積層体の形状)は、図1〜図3および図14に示す例では長方形板状(直方体状)である。圧電素子2の形状は、大きな屈曲変位のためには長手方向を有する形状とすることができる。例えば、長方形以外の多角形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。圧電素子2の寸法は、例えば、長さが18mm〜45mm、幅が1mm〜10mm、厚みが
0.1mm〜1.0mmとすることができる。
圧電体21は、圧電特性を有するセラミックスからなるものである。このようなセラミックスとしては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)からなるペロブスカイト型酸化物、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などを用いることができる。積層型の圧電素子2の場合の圧電体21の一層の厚みは、例えば0.01〜0.1mmに設定することができる。また、圧電体21は200pm/V以上の圧電d31定数を有する材料を用いることができる。これにより、大きな屈曲変位を得ることができる。
第1表面電極22および第2表面電極23は、いわゆる厚膜導体でもよいしスパッタや蒸着などで形成した薄膜導体でもよい。第1表面電極22および第2表面電極23は、厚膜導体の場合であれば、圧電体21および内部電極24との同時焼成によって形成してもよいし、焼成された圧電体21や積層体に焼き付けて形成してもよい。第1表面電極22および第2表面電極23の材料としては、厚膜導体の場合であれば、例えば低温焼成が可能な銀または銀−パラジウム合金を主成分とする導体、あるいは銅、白金などを含む導体を用いることができる。また、第1表面電極22および第2表面電極23は、これらの導体材料に加えて、セラミック成分やガラス成分を含有していてもよい。薄膜導体の場合であれば、上記の導体材料に加えて、例えば、銅、クロム、ニッケル等の導体を用いることができる。
内部電極24は、圧電体21のセラミックスと同時焼成により形成されたものである。この材料としては、例えば低温焼成が可能な銀または銀−パラジウム合金を主成分とする導体、あるいは銅、白金などを含む導体を用いることができる。また、内部電極24は、これらの導体材料に加えてセラミック成分やガラス成分を含有していてもよい。
第1側面電極25および第2側面電極26は、第1表面電極22および第2表面電極23と同様にして形成することができる。第1側面電極25および第2側面電極26を設ける代わりに貫通導体を設ける場合の貫通導体は、圧電体21のセラミックスと同時焼成により形成することができ、内部電極24と同様の材料を用いることができる。
圧電素子2はセラミック生成形体を作製し、セラミック生成形体を焼成したセラミック成形体に表面電極22,23を形成することで作製することができる。セラミック生成形体は、上述したようなセラミックスの粉末を含むセラミックグリーンシートを用いて作製する。圧電素子2が単板型である場合は、セラミックグリーンシートを所定形状にしたものをセラミック生成形体とする。圧電素子2が積層型である場合は、セラミックグリーンシートに内部電極層となる導電性ペーストを、内部電極のパターン形状に塗布して作製したものを積層してセラミック生成形体を作製する。導電性ペーストは、例えば銀−パラジウムの金属粉末にバインダーおよび溶剤等を添加混合したものである。
セラミック生成形体は、所定の温度で脱バインダー処理を行なった後、900℃〜1200℃の温度で焼成することでセラミック成形体となる。セラミック成形体に平面研削盤等を用いて所定の形状になるよう研削処理を施した後、表面電極22,23を形成する。
表面電極22,23は、表面電極22,23となる導電性ペーストをセラミック成形体の表面に、所定形状で印刷して、600℃〜800℃の温度で焼き付け処理を行なうことで形成する。圧電素子2が積層型である場合は、同時に側面電極25,26となる導電性ペーストをセラミック成形体の側面に印刷しておく。表面電極22,23および側面電極25,26となる導電性ペーストは、銀を主成分とする導電粒子およびガラス粉末と、バインダーおよび溶剤等を加えて作製したものである。
その後、表面電極22,23および側面電極25,26が形成されたセラミック成形体の圧電体を分極処理して圧電活性を付与することで圧電素子2となる。
上述したように、伸縮する圧電素子2と伸縮しないシム板3とが貼り合わされていることで、圧電アクチュエータ1は屈曲する。これは、圧電素子2がユニモルフ型である場合である。圧電素子2が積層型である場合は、圧電素子2はバイモルフ型とすることもできる。この場合は圧電素子2自身が屈曲し、シム板3とともに圧電アクチュエータ1としても屈曲する。圧電アクチュエータ1の屈曲の大きさが圧電アクチュエータ1の変位量となる。圧電素子2への電圧の印加は、圧電素子2の第1表面電極22および第2表面電極23を、それぞれ異なる極として行なわれる。
シム板3は、シム板本体31とシム電極32とを含む。シム板本体31の主面上にシム電極32が接合材4で接合ざれている。
シム板本体31は、例えば、樹脂材や樹脂と繊維の複合材料である繊維強化樹脂を用いることができる。樹脂材としては、エポキシ、ポリイミド、ビスマレイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミドなどを用いることができる。繊維強化樹脂の強化繊維材としては、炭素(カーボン)繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、ガラス繊維などを用いることができる。これらの材料の板状のものを、例えば切断や打ち抜き等の加工によって所定形状することで作製することができる。
シム板3(シム板本体31)の寸法は、例えば、長さが20mm〜60mm、幅が1mm〜12mm、厚みが0.1mm〜1.0mmとすることができる。
シム電極32は、シム板本体31の圧電素子2に対向する面に設けられている。シム電極32は、導電性の板状のものであり、例えば、金属箔または金属粒子と樹脂とを含むものとすることができる。
シム電極32が金属箔である場合は、金属箔をシム板本体31に接着剤で貼り付けた後に、エッチングで所定形状にすることで形成することができる。あるいは、金属箔を打ち抜き加工やエッチング加工で所定形状にした後に金属箔をシム板本体31に接着剤で貼り付けることで形成することができる。金属箔は、銅あるいはアルミ等の金属を用いることができる。シム電極32に、低抵抗で導電性のよい銅を用いると、応答速度の速い圧電アクチュエータ1とすることができる。金属箔をシム板本体31に貼り付けるための接着剤は、エポキシ系、アクリレート系、ポリエステル系など通常使用される接着剤を用いることができる。
また、シム電極32が金属粒子と樹脂とを含むものである場合は、シム板本体31の上に金属粒子と樹脂とを含む導電性ペーストを、例えばスクリーン印刷による印刷、またはローラーによる転写、あるいはディスペンサーによる塗布等の方法を用いて所定形状に形成することができる。導電性ペーストは、銅あるいは銀等の導電性粒子と、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系等の樹脂と、溶剤とを混合して作製することができる。
このように金属箔や導電性ペーストによりシム電極32を形成すると、めっき被膜や蒸着等の薄膜の場合に比べてシム電極32に厚みを持たせることができる。そのため、シム電極32と圧電素子2の表面電極23とを接触させて電気的に接続しても、シム電極32の周囲およびスリット323内にシム電極32と同等の厚みの接合材4を配置することができるので、圧電素子2とシム板3との接合強度を確保しやすい。
シム電極32の寸法は、例えば、長さが20mm〜50mm、幅が1mm〜12mm、厚みが0.01mm〜0.5mmとすることができる。各寸法は、シム板本体31の長さ、幅に沿った方向において最大となる部分の寸法である。シム電極32の寸法(平面視の寸法)は、シム板本体31の寸法より一回り小さくすることができる。具体的には、例えば、シム電極32の外縁がシム板本体31の外縁より0.1mm〜1mm内側に位置するようすることができる。このようにすると、シム電極32の第1領域321において、シム電極32の外側においてシム板本体31の外縁部と圧電素子2とを接合材4で接合することができるので、圧電素子2とシム板3との接合強度がより高いものとなる。あるいは、シム電極32とシム板本体31とを接着剤で接合する際に、シム電極32の側面とシム板本体31の外縁部とを接合することができるので、シム電極32とシム板本体31との接合強度が高いものとなる。
シム電極32は、第1領域321にスリット323を有している。スリット323の深さ(長さ)は、シム電極32の幅方向の長さおよび長手方向の長さに対して、それぞれ50〜90%とすることができる。これにより、シム電極32およびシム板3の剛性の低下による接合材4に加わる応力の低減がより効果的なものとなるとともに、駆動の繰り返しによってシム電極32が断線する可能性が抑えられる。図7に示す例のように、第1のスリット323aと第2のスリット323bとが、シム電極32の長手方向における同じ位置に配置されている場合は、第1のスリット323aおよび第2のスリット323bの深さはシム電極32の幅方向の長さの50%未満となる。この場合は、シム電極32の長手方向における同じ位置でのスリット32の深さは、第1のスリット323aの深さと第2のスリット323bの深さとを合わせたものとみなすことができるので、シム電極32の幅方向の長さの50%より長いものと言える。また、図8に示す例では、第1のスリット323aと第2のスリット323bとは、シム電極32の長手方向における同じ位置に配置されていない。しかしながら、第1のスリット323aの先端と第2のスリット323bの先端との距離は、シム電極32の幅方向の長さの50%より小さくなっている。すなわち、スリット32によりシム電極32の幅方向の長さの10%〜50%の長さの部分が形成されていれば、上記のような効果を奏するものである。
スリット323は、シム電極32の長さ方向および幅方向に沿って延びるものだけでなく、傾斜したものでもよい。また、スリット32は直線状のものだけでなく、湾曲した形状、屈曲した形状であってもよい。シム電極32の幅方向に直線的に延びる第1のスリット323aおよび第2のスリット323bを、シム電極32の長さ方向に複数配列すると、圧電アクチュエータ1は、長手方向に屈曲変位しやすく、ねじれのない屈曲変位となりやすい。
シム板3は圧電素子2よりも長手方向に長いものであり、シム板3の長手方向の端部が圧電素子2からはみ出るようにして重なった状態で接合されている。例えば、図1〜図3に示す例の圧電アクチュエータ1においては、圧電素子2の長手方向の一端とシム板3の長手方向の一端とが揃っており、シム板3の長手方向の他端部が圧電素子2からはみ出ている。これに対して、図14に示す例では、シム板3の長手方向の一端側および短手方向の両側が圧電素子2から少しはみ出ている。いずれも、シム板3の圧電素子2から大きくはみ出した部分を圧電アクチュエータ1の取付部として用いることができる。また、シム電極32の、シム板3の大きくはみ出した部分に位置する第2領域322は、圧電素子2への電圧印加のためにリード線等を接続する端子電極として用いることができる。シム板3の寸法は、圧電アクチュエータ1の取付けやリード線等の接続のしやすさにより設定すればよい。圧電アクチュエータ1は、圧電素子2が直方体状すなわち長方形板状で、圧電素子2の長さ方向に屈曲するものである場合には、図1〜図3に示す例のように、シム板3は圧電素子2の長さ方向の一端のみからはみ出していてもよい。このようにすると、シ
ム板3に不要な部分がないので、変位量が大きく小型の圧電アクチュエータ1となる。
圧電素子2とシム板3とは接合材4で接合されている。圧電素子2とシム板3のシム電極32とは、圧電素子2の第1の面の表面電極23とシム電極32の第1領域321とが接触して電気的に接続されている。表面電極23とシム電極32とが接触している部分の周囲において接合材4で接合されている。接合材4は導電性のものを用いることができるが、その場合は表面電極23とシム電極32とが直接接触していなくてもよい。表面電極23とシム電極32とを接触させて接合する場合は、非導電性の接合材4を用いることができるので低コストとなる。
図14に示す例のように、表面電極23に突起231を設けてシム電極32と接触させて電気的に接続することができる。表面電極23およびシム電極32の表面が平坦で凹凸が小さい場合には、表面電極23およびシム電極32との間に非導電性の接合材4が入り込んで表面電極23とシム電極32との接触が阻害される場合がある。表面電極23に突起231を設けると、非導電性の接合材4を用いた場合であっても、表面電極23とシム電極32との接触による電気的接続をより確実なものとすることができる。表面電極23の突起231の代わりに、シム電極32に突起を設けてもよい。
接合材4は圧電素子2の第1の面とシム板3との間だけでなく、図14に示す例のように、圧電素子2の側面とシム板3とも接合していてもよい。図14に示す例の圧電アクチュエータ1では、圧電素子2の幅はシム板3の幅より小さく、圧電素子2の幅方向の両側からシム板3がはみ出している。また、圧電素子2の長さ方向の両側からもシム板3がはみ出している。そして、接合材4はこのシム板3の圧電素子2からはみ出た部分と圧電素子2の側面とも接合している。これにより、圧電素子2とシム板3との接合強度がより高いものとなる。このような、図14に示す例の場合は、非導電性の接合材を用いることができる。
接合材4としては、エポキシ系、アクリレート系、ポリエステル系など通常使用される接着剤を用いることができる。また、紫外線硬化性、嫌気硬化性、熱硬化性のいずれか、あるいは2つ以上を有するものを用いるができる。
圧電素子2またはシム板3に液状の接着剤を塗布して加圧した後に硬化のための処理をすることで、硬化した接合材4で圧電素子2とシム板3とが接合された圧電アクチュエータ1となる。
これまで圧電アクチュエータ1としてシム板3の片面に1つの圧電素子2が接合されている例で説明したが、圧電アクチュエータ1はシム板3を挟んでシム板3の両面にそれぞれ圧電素子2を接合したものであってもよい。圧電素子2が単板型あるいはユニモルフ型の積層型である場合は、例えば、一方の圧電素子2が伸びるときには他方の圧電素子2は伸びない(あるいは縮む)ように電圧を印加することで屈曲変位するものとなる。