JP5603188B2 - 織編物 - Google Patents
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Description
しかし、上記のような方法では、医薬、医療、介護、食品などの分野で要求される湿熱滅菌処理に対する耐久性は向上するものの、それらの分野で多く使用される白色の織編物とした際に問題となる布帛の透け感や、ユニフォームとして用いた際に要求される吸水拡散性能が考慮されていないという問題があった。
また、透け防止性に優れた布帛を製造する方法として、芯成分に艶消剤、鞘成分に蛍光増白剤を導入し、芯成分の横断面を回転対照形である芯鞘複合糸で布帛を構成する方法(例えば、特許文献2参照)、二酸化チタンを1〜20質量%含有するポリエステルを芯成分とし、ポリエステルを鞘成分とした芯鞘型ポリエステル繊維で布帛を構成する方法(例えば、特許文献3)、繊維断面がW型であるポリエステル繊維で布帛を構成する方法(例えば、特許文献4参照)が知られている。
しかし、上記のような方法で得られる布帛では、医薬、医療、介護、食品などの分野で必要とされる湿熱滅菌処理に耐えうることができず、布帛の強度低下が起き、さらにはユニフォームなどに使用した際に必要とされる吸水拡散性能が考慮されていないため、該用途には不適切であるという問題があった。
さらに、吸水拡散性能に優れた布帛を製造する方法として、繊維断面が特定のW型であるポリエステル繊維で布帛を構成する方法(例えば、特許文献5参照)、繊維断面が特定のW型である溝状の微細孔を有するポリエステル繊維で布帛を構成する方法(例えば、特許文献6参照)が知られている。
しかし、上記のように繊維断面をW型とする方法では、布帛が嵩高となりユニフォーム用途などに使用した際に快適性が劣るという問題があった。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ポリエステル繊維を含む織編物において、下記(i)〜(iii)を満足するポリエステル繊維を20質量%以上含むことを特徴とする織編物。
(i)カルボキシル末端基量が25eq/ton以下
(ii)酸化チタン含有量が1.0〜5.0質量%
(iii)繊維断面が、扁平度2.0〜6.0の扁平形状である基幹部と前記基幹部 との厚さ比が0.5〜2.0である1個以上の凸部とからなる
(2)繰り返し工業洗濯100洗後の引裂き強力保持率が80%以上であることを特徴とする(1)記載の織編物。
(3)湿熱処理後の引裂き強力保持率が40%以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の織編物。
(4)織編物の表裏いずれか一方の吸水拡散面積が10cm2以上であることを特徴とする(1)〜(3)記載の織編物。
(5)CIELabの色差式より算出されたΔEが20以下であることを特徴とする(1)〜(4)記載の織編物。
本発明の織編物は、特定のポリエステル繊維を20質量%以上含む織編物である。
本発明におけるポリエステル繊維とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどからなるポリエステル繊維が挙げられるが、汎用性の点から、ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル繊維を使用することが好ましい。ポリエステルにはその特性を損なわない範囲で、第3成分としてイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、1、3−プロパンジオール、1、4―ブタンジオール、1、6―ヘキサンジオールまたはビスフェノール等が共重合されていてもよい。
ここで該ポリエステル繊維に酸化チタンを用いる方法としては、芯鞘型構造の芯部または鞘部あるいは全分散等、特に限定するものではなく、任意の構造でよい。
(式1) 扁平度=基幹部の長辺a/基幹部の短辺b
基幹部の扁平度が2.0未満であると、得られるポリエステル織編物が嵩高く、厚みができてしまうため、後述するように最終的に良好な透け防止効果及び吸水拡散効果を得ることができず好ましくない。扁平度が6.0を超える場合は、ポリエステル繊維の強度が不足する場合があり好ましくない。
(式2) 凸部と扁平部の厚さの比=凸部の高さc/基幹部の短辺b
ここで、突起部の高さcとは図1に示すように、繊維断面の扁平部から突起している部分の最も高い部分の扁平部からの高さをいう。
この凸部と基幹部との厚さの比が0.5未満である場合は凸部の高さが低く、良好な透け防止効果、吸水拡散効果を得ることができず好ましくない。該厚さ比が2.0を超える場合は、凸部が高すぎるため、嵩高となるため、良好な透け防止効果及び吸水拡散効果を得ることができず好ましくない。
ここで、本発明における繰り返し工業洗濯とは、JIS L1096F−3法において、1洗の洗濯条件を以下とし、25洗を1セットとし、4セット(100洗)行うことをいう。
〔工業洗濯条件〕
洗い:70℃×30分
すすぎ1:40℃×10分
すすぎ2:40℃×5分
さらに、本発明における繰り返し工業洗濯100洗後の引き裂き強力保持率は、上述の工業洗濯前後での織編物の引き裂き強力をJIS L−1096に準じて測定し、下記式(により計算した。
(式3) 引裂き強力保持率(%)=(処理後の引裂き強力/処理前の引裂き強力)×100
70℃での繰り返し工業洗濯処理後の引き裂き強力保持率が80%未満であると、本発明における織編物を衣料用ユニフォームなどに用いた場合に、繰り返し使用すると破れやすくなり、安全性などの観点から好ましくない。
ここで、湿熱処理後の引裂き強力保持率とは、1回の処理を以下の条件とし、湿熱処理と乾燥をそれぞれ10時間行うことを1セットとし、計5セット(計50時間)行い、下記式で算出するものを言う。
〔湿熱処理条件〕
湿熱処理:120℃×15分
乾燥:80℃×15分
引裂き強力保持率(%)=(処理後の引裂き強力/処理前の引裂き強力)×100
また、湿熱滅菌処理は医療、製薬用途に不可欠の工程であるので湿熱滅菌処理後の引き裂き強力保持率が40%未満であると、通常の繰り返し使用が困難となるため、該用途には不適切となり製品展開の幅が狭くなり好ましくない。
10cm×10cmの織編物を用意し、該織編物を水平に静置したのち、該織編物から0.5cmの高さからスポイトにて100μlの純水を滴下する。滴下1分後の拡散面積S(cm2)を求める。
織編物を裁断しポリエステル繊維を抜き取った後、抜き取られたポリエステル繊維0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、0.1Nの水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して、カルボキシル末端基量を求めた。
2500cm2(50cm×50cm)の織編物を用い、前述のように、25洗を1セットとし、計4セット(100洗)の工業洗濯を以下の条件で行った。
洗い:スガ試験機株式会社製ロータリーワッシャーを用いて、洗剤濃度1g /l、洗濯温度70℃、30分を1洗とした。
すすぎ:すすぎ温度40℃、10分のすすぎの後、排水して40℃、5分す すぎを行う操作を1洗とした。
2500cm2(50cm×50cm)の織編物を用い、高圧蒸気滅菌器HV―50(平山製作所製)を使い120℃、圧力225kPaで10時間を1セットとし、計5セットの湿熱処理を行い、その後80℃での乾燥を10時間を1セットとし、5セット行なった。
透過型顕微鏡(オリンパス社製 BH−2 UMA)を用い、織編物を構成するポリエステル繊維の断面の基幹部の扁平度を、前述の下記式を用いて計算した。なお、任意の10点の平均値とした。
扁平度=基幹部の長辺a/基幹部の短辺b
透過型顕微鏡(オリンパス社製 BH−2 UMA)を用い、織編物を構成するポリエステル繊維の断面の基幹部と凸部の厚さ比を、前述の下記式を用いて計算した。なお、任意の10点の平均値とした。
凸部と基幹部の厚さの比=凸部の高さc/基幹部の短辺b
JIS L−1096法により測定した。さらに、引裂き強力保持率は、前述のように下記式によって算出した。
引裂き強力保持率(%)=(処理後の引裂き強力/処理前の引裂き強力)×100
JIS L−1096法により測定した。さらに、引裂き強力保持率は、前述のように下記式によって算出した。
引裂き強力保持率(%)=(処理後の引裂き強力/処理前の引裂き強力)×100
マクベス社製分光光度計CE−3100を用いて背景を黒にした状態と白にした状態での反射率をそれぞれ求め、CIELabの色差式よりΔEを算出した。数字が小さいほど、透け防止効果がある。
織編物を構成するポリエステル繊維を取出し、溶媒:フェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)、濃度:0.5g/100ml、溶解温度:120℃、測定温度:20℃にて、ウベローデ型粘度計を用いて測定した。
10人のパネラーにより織編物の手触りを調べ、以下の3種の評価のうち最も該当する評価を嵩高性の評価とした。
◎:「嵩高くなく、衣料用途には最適である」と感じた。
○:「嵩高くなく、衣料用途に適する」と感じた
×:「嵩高く、衣料用途には不適切である」と感じた。
1―ビス(β−ヒドロキシルエチル)テレフタレート及びその低重合体(BHET)に、テレフタル酸とエチレングリコールとのスラリー(テレフタル酸/エチレングリコール(モル比)=1/1.6)を連続的に供給し、温度250℃、圧力0.1MPa、反応時間8時間にてエステル化反応を行い、エステル化反応率が95%のBHETを連続的に得た。このBHET50kgを重合槽に移送し、250℃に加熱し、触媒として三酸化アンチモンを、ポリエステルを構成する酸成分1モルに対し1×10−4モルと、酢酸コバルトを、ポリエステルを構成する酸成分1モルに対し0.5×10−4モルと、リン成分としてトリエチルフォスフォエートを、ポリエステルを構成する酸成分1モルに対し1.0×10−4モルと、酸化チタンを繊維全質量に対して2.0質量%添加した。その後徐々に減圧し270℃で最終的に0.9hPaの減圧下で3.5時間重縮合反応を行い、エステルチップを得た。
このポリエステルチップを、290℃にて紡糸を行い、速度3500m/分で巻取り190dtex/48fの半未延伸糸を得た。引き続いて得られた糸条を延伸装置に供給し、700m/分の速度で延伸し、110dtex/48fの図1に示す矢印型のポリエステル繊維を得た。この延伸糸を用い、ウォータージェットルームで経糸密度122本/2.54cm、緯糸密度80本/2.54cmでユニフォーム用2/2ツイル織物とし、引き続いて、常法により精練、プレセット、染色、仕上げセットを行い経糸密度130本/2.54cm、緯糸密度88本/2.54cmの本発明の織物を得た。
繊維断面を図2に示す片矢印とした以外は、実施例1と同様にして本発明の織物を得た。
繊維断面を図3に示すY型とした以外は、実施例1と同様にして本発明の織物を得た。
繊維断面を図4に示す四つ山扁平型とした以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
実施例1で用いた矢印型のポリエステル繊維を用いてクイーンズコード組織に製編し、引き続いて常法にて精練、染色、仕上げセットを行い、42ウェール/2.54cm、50コース/2.54cmの本発明の編地を得た。
実施例1の織物において、緯糸の半分にレギュラーポリエステル繊維を用いた以外実施例1と同様に織物を得た。(矢印型のポリエステル繊維80質量%とレギュラーポリエステル繊維20質量%)。なお、レギュラーポリエステル繊維として、丸断面、110dtex/48f、カルボキシル末端基量40eq/ton、酸化チタン含有量0%のものを用いた。
実施例1の織物において、緯糸の全てに実施例6で用いたレギュラーポリエステル繊維を用いた以外は実施例6と同様に織物を得た(矢印型のポリエステル繊維60質量%とレギュラーポリエステル繊維40質量%)。
実施例1の織物において、緯糸の全てと経糸本数の30%に実施例6で用いたレギュラーポリエステル繊維を用いた以外は、実施例6と同様に織物を得た(矢印型のポリエステル繊維41質量%とレギュラーポリエステル繊維59質量%)。
実施例1の織物において、緯糸の全てと経糸本数の65%に実施例6で用いたレギュラーポリエステル繊維を用いた以外は、実施例6と同様に織物を得た(矢印型のポリエステル繊維21質量%とレギュラーポリエステル繊維79質量%)。
重縮合反応の温度を285℃とした以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
酸化チタンを繊維全質量に対して0.5%とした以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
繊維断面を丸型とした以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
繊維断面を図6に示す扁平形状(扁平度=3.5)とした以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
繊維断面を図7に示す扁平形状(扁平度=7.5)とした以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
繊維断面を図8に示すW型とした以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
比較例1で紡糸した糸を使用する以外は、実施例5と同様にして編物を得た。
実施例1の織物において、緯糸の全てと経糸本数の75%に実施例6で用いたレギュラーポリエステル繊維を用いた以外は、実施例6と同様に織物を得た(矢印型のポリエステル繊維15質量%とレギュラーポリエステル繊維85質量%)。
a:長編
b:短辺
c:突起の高さ
Claims (3)
- 下記(1)〜(3)を満足するポリエステル繊維のみからなる織編物であって、前記織編物の表裏いずれか一方の吸水拡散面積が10cm 2 以上であり、且つ、CIELabの色差式より算出されたΔEが15以下であることを特徴とする織編物。
(1)カルボキシル末端基量が25eq/ton以下。
(2)酸化チタン含有量が1.0〜5.0質量%。
(3)繊維断面が、扁平度2.0〜6.0の略直線扁平形状である基幹部と前記基幹部との厚さ比が0.5〜2.0である1個以上の凸部とからなる。 - 繰り返し工業洗濯100洗後の引裂き強力保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1記載の織編物。
- 湿熱処理後の引裂き強力保持率が40%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の織編物。
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