JP5602380B2 - 固体電解質材料 - Google Patents
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Description
まず、本発明の固体電解質材料について説明する。本発明の固体電解質材料は、ニオブ酸リチウムからなる固体電解質材料であって、2θ=23.7°±2.0°、32.7°±2.0°、34.8°±2.0°、38.9°±2.0°、40.1°±2.0°、42.5°±2.0°の第一のX線回折ピーク群と、2θ=25.5°±0.5°、27.8°±1.0°、31.0°±0.8°、32.0°±0.8°の第二のX線回折ピーク群とを有し、上記2θ=23.7°±2.0°のX線回折ピークの強度をIAとし、上記2θ=25.5°±0.5°のX線回折ピークの強度をIBとした場合に、IA/IB≦12.0の関係を満たすことを特徴とするものである。
本発明の固体電解質材料は、第一のX線回折ピーク群と、第二のX線回折ピーク群とを有することを大きな特徴とする。まず、これらのX線ピーク群について説明する。本発明における第一のX線回折ピーク群は、固体電解質材料の結晶相に起因するピーク群である。具体的には、LiNbO3単結晶に特徴的なピーク群である。X線回折(XRD)データベースによると、2θ=23.7°(23.681°)のピークは(012)面のピークであり、2θ=32.7°(32.667°)のピークは(104)面のピークであり、2θ=34.8°(34.798°)のピークは(110)面のピークであり、2θ=38.9°(38.940°)のピークは(006)面のピークであり、2θ=40.1°(40.058°)のピークは(113)面のピークであり、2θ=42.5°(42.527°)のピークは(202)面のピークである。
本発明の固体電解質材料のインピーダンスとしては、例えば100,000Ω以下、中でも20,000Ω以下であることが好ましい。なお、本発明におけるインピーダンスの値は、後述する交流インピーダンス法により算出されるものである。
次に、本発明の正極活物質材料について説明する。本発明の正極活物質材料は、酸化物正極活物質と、上記酸化物正極活物質の表面上に形成されたコート部とを有する正極活物質材料であって、上記コート部が、上述した固体電解質材料からなることを特徴とするものである。
本発明におけるコート部は、上述した固体電解質材料からなるものである。固体電解質材料については、上記「A.固体電解質材料」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。コート部の平均厚さは、例えば0.1nm〜30nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜15nmの範囲内であることがより好ましい。平均厚さが小さすぎると、高抵抗層の生成を効果的に抑制できない可能性があり、平均厚さが大きすぎると、イオン伝導性が低下する可能性があるからである。また、酸化物正極活物質の表面におけるコート部の被覆率は、例えば、50%以上であり、75%〜95%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であれば、高抵抗層の生成をさらに効果的に抑制できるからである。
次に、本発明における酸化物正極活物質について説明する。本発明においては、酸化物正極活物質を用いることにより、例えば、エネルギー密度の高い全固体電池を得ることができる。酸化物正極活物質としては、例えば、一般式LixMyOz(Mは遷移金属元素であり、x=0.02〜2.2、y=1〜2、z=1.4〜4)で表される正極活物質を挙げることができる。上記一般式において、Mは、Co、Mn、Ni、V、FeおよびSiからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、Co、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。このような酸化物正極活物質としては、具体的には、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiMn2O4、Li(Ni0.5Mn1.5)O4、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4等を挙げることができる。また、上記一般式LixMyOz以外の正極活物質としては、LiFePO4、LiMnPO4等のオリビン型正極活物質を挙げることができる。
本発明の正極活物質材料は、コート部を有するため、酸化物正極活物質と硫化物固体電解質材料との反応で生じる高抵抗層の発生を抑制できる。硫化物固体電解質材料としては、例えば、Li、Sおよび第三成分Aを有するもの等を挙げることができる。第三成分Aとしては、例えばP、Ge、B、Si、I、Al、GaおよびAsからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。中でも、本発明においては、硫化物固体電解質材料が、Li2Sと、Li2S以外の硫化物MSとを用いた化合物であることが好ましい。具体的には、Li2S−P2S5化合物、Li2S−SiS2化合物、Li2S−GeS2化合物等を挙げることができ、中でもLi2S−P2S5化合物が好ましい。Liイオン伝導性が高いからである。さらに、Li2Sおよび硫化物MSとのモル比を、xLi2S−(100−x)MSとした場合、xは、50≦x≦95の関係を満たすことが好ましく、60≦x≦85の関係を満たすことがより好ましい。なお、Li2S−P2S5化合物は、Li2SおよびP2S5を用いた硫化物固体電解質材料を意味する。その他の化合物についても同様である。例えば、Li2SおよびP2S5を用いて、メカニカルミリング法または溶融急冷法を行うことで、非晶質のLi2S−P2S5化合物を得ることができる。また、本発明の硫化物固体電解質材料は、非晶質であっても良く、結晶質であっても良い。結晶質の硫化物固体電解質材料は、例えば、非晶質の硫化物固体電解質材料を焼成することで得ることができる。また、本発明の硫化物固体電解質材料は、架橋硫黄を有することが好ましい。硫化物固体電解質材料のLiイオン伝導性が高いからである。また、架橋硫黄を有する場合、高抵抗層が発生しやすい。特に本発明においては、硫化物固体電解質材料が、Li7P3S11であることが好ましい。Liイオン伝導性が高いからである。
次に、本発明の固体電解質材料の製造方法について説明する。本発明の固体電解質材料の製造方法は、上述した固体電解質材料の製造方法であって、LiアルコキシドおよびNbアルコキシドを含有する原料溶液を加水分解し、ニオブ酸リチウムの前駆体溶液を調製する調製工程と、上記前駆体溶液を用いてニオブ酸リチウムの前駆体膜を形成する前駆体膜形成工程と、上記前駆体膜を、345℃〜355℃の範囲内の温度、および4時間〜6時間の範囲内の時間で熱処理する熱処理工程と、を有することを特徴とするものである。
以下、本発明の固体電解質材料の製造方法について、工程ごとに説明する。
本発明における調製工程は、LiアルコキシドおよびNbアルコキシドを含有する原料溶液を加水分解し、ニオブ酸リチウムの前駆体溶液を調製する工程である。上記原料溶液は、LiアルコキシドおよびNbアルコキシドを少なくとも含有し、さらに通常は、溶媒を含有するものである。Liアルコキシドとしては、例えばリチウムメトキシド、リチウムエトキシド等を挙げることができる。一方、Nbアルコキシドとしては、例えばペンタメトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタプロポキシニオブ、ペンタブトキシニオブ等を挙げることができる。また、原料溶液に含まれるLiアルコキシドおよびNbアルコキシドの割合は、目的とするニオブ酸リチウムの組成に応じて適宜選択することが好ましい。通常、Liアルコキシドに含まれるLiと、Nbアルコキシドに含まれるNbとのモル比に着目して、LiアルコキシドおよびNbアルコキシドの割合を決定する。さらに、LiおよびNbのモル比は、上述したLiおよびNbの数値範囲と同様の範囲内にあることが好ましい。
本発明における前駆体膜形成工程は、上記前駆体溶液を用いてニオブ酸リチウムの前駆体膜を形成する工程である。ニオブ酸リチウムの前駆体膜を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、前駆体溶液を塗布して乾燥させる方法を挙げることができる。前駆体溶液を塗布する方法としては、例えば、スプレー法、引き上げ法、スピンコーティング法等を挙げることができる。なお、ここでいう引き上げ法とは、前駆体溶液に被塗布体を浸漬させ、被塗布体を引き上げることで、被塗布体の表面上に前駆体溶液を塗布する方法である。また、前駆体溶液の被塗布体としては、特に限定されるものではなく、例えば、上述した図1(a)、(b)に示すように、酸化物正極活物質2および硫化物固体電解質材料3等を挙げることができる。この場合、転動流動層を有するコート装置を用いて、酸化物正極活物質2の表面上に前駆体溶液を塗布しても良い。また、前駆体溶液の塗布量は、目的とする固体電解質材料の厚さに応じて、適宜選択することが好ましい。さらに、本発明においては、前駆体溶液を塗布した後に、前駆体溶液の乾燥を行うことが好ましい。
本発明における熱処理工程は、上記前駆体膜を、345℃〜355℃の範囲内の温度、および4時間〜6時間の範囲内の時間で熱処理する工程である。さらに、熱処理の温度は、348℃〜352℃の範囲内であることが好ましい。また、熱処理の時間は、4.9時間〜5.1時間の範囲内であることが好ましい。また、本発明においては、まず室温から昇温を行い、次に上述した温度および時間の範囲内で熱処理を行い、最後に室温まで降温させる。すなわち、本発明における熱処理の時間は、通常、昇温時間および降温時間を含まない保持時間である。また、本発明においては、通常、酸素を含む雰囲気下で熱処理を行い、中でも大気雰囲気下で熱処理を行うことが好ましい。
(LiNbO3の前駆体溶液の作製)
まず、不活性ガス雰囲気中で、リチウムエトキシド(LiOC2H5)とペンタエトキシニオブ(Nb(OC2H5)5)とを、Li:Nbのmol数の比が1:1となるように混合した。次に、不活性ガス雰囲気中で、得られた混合物を脱水・精製したエタノール中に溶解させた。次に、不活性ガス雰囲気中で、24時間撹拌・還流を行い、複合アルコキシドを得た。その後、得られた複合アルコキシドに、適量のエタノールで希釈した脱炭酸水を滴下して、加水分解を行った。次に、さらに撹拌・還流を続け、加水分解反応を完了させた。その後、エタノールを蒸発させ、LiNbO3の前駆体溶液の濃度を0.2mol/Lにした。これにより、LiNbO3の前駆体溶液を得た。
まず、ガラス/絶縁膜/金で構成された既製のくし型電極を用意した。次に、上記で得られたLiNbO3の前駆体溶液に、くし型電極を浸漬させた。その後、くし型電極を一定速度で引き上げる引き上げ法を用いて、くし型電極上に、前駆体薄膜を形成した。次に、前駆体薄膜が形成されたくし型電極を大気雰囲気中・室温下で1日放置し、乾燥させた。次に、乾燥させたくし型電極を、350℃、5時間の条件で熱処理を行った。なお、熱処理は以下の手順で行った。すなわち、まず大気雰囲気中・室温下にあるくし型電極を、350℃に設定された大気雰囲気の熱処理室に移動し、5時間放置した。次に、熱処理したくし型電極を、大気雰囲気中・室温下に戻し、くし型電極の温度が室温と同程度になるまで放置した。これにより、厚さ約100nmの薄膜状のニオブ酸リチウム(固体電解質材料)を得た。
熱処理の条件を、それぞれ200℃、10時間の条件、300℃、2時間の条件、350℃、2時間の条件、400℃、2時間の条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ニオブ酸リチウム(固体電解質材料)を得た。
(X線回折測定)
実施例1、比較例1−1〜1−4で得られた固体電解質材料に対して、X線回折(XRD)測定を行った。その結果を図4に示す。図4に示されるように、実施例1および比較例1−4では、2θ=23.7°±2.0°、32.7°±2.0°、34.8°±2.0°、38.9°±2.0°、40.1°±2.0°、42.5°±2.0°の第一のX線回折ピーク群と、2θ=25.5°±0.5°、27.8°±1.0°、31.0°±0.8°、32.0°±0.8°の第二のX線回折ピーク群とが確認された。一方、比較例1−1〜1−3では上記の全てのピークは検出されなかった。なお、上記結果より、得られた固体電解質材料は、LiNbO3単相であることが確認された。また、高温で加熱するほど、平坦な部分が減り、各結晶面に対応するピークが大きく、かつ狭くなることから、熱処理により結晶化が進行することがわかった。
実施例1、比較例1−1〜1−4で得られた固体電解質材料に対して、定常直流分極状態での交流インピーダンス法により、Liイオン伝導性を評価した。その結果を図5〜図7に示す。図5〜図7において、零点に一番近い半円又は円弧の直径の逆数が、Liイオン伝導度に比例する。それらの直径を示したものを表1に示す。
まず、強誘電相LiNbO3のX線回折結果に対して、リードベルト解析を行い、結晶構造の既存の同定結果を元に、結晶構造データを作成した。次に、その結晶構造データを元にして、平面波基底の密度汎関数法を用いて、最安定構造データの作製を行った。得られた最安定結晶構造データに対して、既存のLi−Nb−O系のポテンシャル関数を用いて、分子動力学計算で条件を変更しながらmelt-quench法を適用して、LiNbO3のアモルファス構造データを作製した。アモルファス性の評価は、得られたアモルファス結晶構造データを用いて、(1)結晶化率、(2)XRDスペクトル、(3)結晶構造のNb−O結合の多面体表示による定性評価により行った。作製した単結晶構造・アモルファス構造の一部の多面体構造を図8に示す。
1a … コート部
1b … 前駆体膜
2 … 酸化物正極活物質
3 … 硫化物固体電解質材料
4 … 正極活物質層
5 … 硫化物固体電解質層
6 … 負極活物質層
10 … 正極活物質材料
Claims (3)
- ニオブ酸リチウムからなる固体電解質材料であって、
2θ=23.7°±2.0°、32.7°±2.0°、34.8°±2.0°、38.9°±2.0°、40.1°±2.0°、42.5°±2.0°の第一のX線回折ピーク群と、2θ=25.5°±0.5°、27.8°±1.0°、31.0°±0.8°、32.0°±0.8°の第二のX線回折ピーク群とを有し、
前記第二のX線回折ピーク群は、NbO 3 四面体に起因するものであり、
前記2θ=23.7°±2.0°のX線回折ピークの強度をIAとし、前記2θ=25.5°±0.5°のX線回折ピークの強度をIBとした場合に、IA/IB≦8の関係を満たすことを特徴とする固体電解質材料。 - 酸化物正極活物質と、前記酸化物正極活物質の表面上に形成されたコート部とを有する正極活物質材料であって、
前記コート部が、請求項1に記載の固体電解質材料からなることを特徴とする正極活物質材料。 - 請求項1に記載の固体電解質材料の製造方法であって、
LiアルコキシドおよびNbアルコキシドを含有する原料溶液を加水分解し、ニオブ酸リチウムの前駆体溶液を調製する調製工程と、
前記前駆体溶液を用いてニオブ酸リチウムの前駆体膜を形成する前駆体膜形成工程と、
前記前駆体膜を、345℃〜355℃の範囲内の温度、および4時間〜6時間の範囲内の時間で熱処理する熱処理工程と、
を有することを特徴とする固体電解質材料の製造方法。
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