上記の防護柵のように、支柱の間に水平ロープ材を設けたものでは、支柱間に水平ロープ材に落石などの衝撃力を受けると、複数の支柱と複数の水平ロープ材により衝撃エネルギーを吸収することができるが、衝撃力が支柱に直接加わると、他で衝撃エネルギーを吸収できず、小さな落石でも支柱が変形し、交換しなければならないという問題があった。
そこで、本発明は、衝撃力が支柱に直接加わり変形することを防止し、主として横ロープ材により衝撃エネルギーを吸収することができる防護柵を提供することを目的とする。
本発明の防護柵は、上記目的を達成するために、所定の間隔で複数の支柱を設け、前記支柱間に支柱側横ロープ材を設けた防護柵において、前記支柱側横ロープ材の山側には、前記支柱と間隔を置いて山側横ロープ材を設け、前記支柱側横ロープ材と前記山側横ロープ材の間で前記支柱間に荷重伝達構造体を設け、前記山側横ロープ材の端部を両側の端末支柱に連結し、前記荷重伝達構造体は下部が非固定状態で設けられ、山側から前記支柱に向かう落石により前記山側横ロープ材に衝撃力が加わると、前記山側横ロープ材から前記荷重伝達構造体に衝撃力が加わり、該荷重伝達構造体から前記支柱側横ロープ材に衝撃力が伝わることにより、衝撃力が前記落石が向かった前記支柱に直接加わらないように構成したことを特徴とする。
このように支柱の山側に山側横ロープ材を設け、支柱側横ロープ材と山側横ロープ材との間に荷重伝達構造体を設けることにより、支柱に向かう落石の衝撃力を山側横ロープ材が受け、さらに、山側横ロープ材が受けた衝撃力が荷重伝達構造体により支柱側横ロープ材と支柱に分散して吸収される。したがって、落石などの衝撃力が支柱に直接加わることがない。
また、上記の防護柵において、前記山側横ロープ材の端部を両側の端末支柱に連結したことを特徴とする。
これにより端末支柱間の支柱の損傷を防止することができる。
また、上記の防護柵において、前記荷重伝達構造体は下部が非固定状態で設けられていることを特徴とする。
このように固定する必要がないから施工が容易となり、また、衝撃力を直接的に支柱側横ロープ材に伝達することができる。
また、上記の防護柵において、前記荷重伝達構造体は山側縦部と支柱側縦部とを備えることを特徴とする。
これにより山側横ロープ材に衝撃力が加わると、山側横ロープ材から山側縦部に衝撃力が加わり、谷側縦部から支柱側横ロープ材に衝撃力が伝わる。
また、上記の防護柵において、前記荷重伝達構造体が枠組構造をなすことを特徴とする。
これにより荷重伝達構造体が比較的軽量にして強度を備えたものとなる。
前記荷重伝達構造体に、充填部材を入れたことを特徴とする。
これにより荷重伝達構造体の大変形を拘束することができ、荷重伝達構造体の重量が増すから、落石を荷重伝達構造体で直接・間接に受け止めることにより、防護柵で吸収しなければならない落石エネルギーを軽減できる。
さらに、上記の防護柵において、前記支柱側横ロープ材には、前記支柱の前部とこの支柱に隣接する前記支柱の後部とを通る斜め配置部を設け、隣接する支柱間において、多段に設けた支柱側横ロープ材の少なくとも一組の前記斜め配置部が前後方向において交差状に配置されていることを特徴とする。
これにより隣接する支柱間において、少なくとも一組の傾斜配置部を交差状に配置することにより、隣接する支柱間で一組の傾斜配置部に衝撃力が作用し、横ロープ材が後方に撓むと、一方の傾斜配置部は、隣接する支柱の一方と、隣接する支柱の他方の隣の支柱に支持され、他方の斜め配置部は、隣接する支柱の他方と、隣接する支柱の一方の隣の支柱に支持され、2本の横ロープ材は4本の支柱により支持されることになり、横ロープ材を複数の支柱により効率よく支持することができる。
さらにまた、上記の防護柵において、前記支柱側横ロープ材の端部又は端部に連結した部材に載荷面を有する載荷部材を設けると共に、前記支柱に載荷面を設け、それら両載荷面間にリング材を挟んで配置したことを特徴とする。
これにより雪崩・落石等の衝撃力を受け、支柱側横ロープ材に引張力が加わると、両載荷面間が狭まり、リングが押し潰され、このリング材の変形により衝撃エネルギーを吸収することができる。
さらにまた、上記の防護柵において、前記支柱側横ロープ材の端部を把持する緩衝具を設け、前記支柱側横ロープ材が所定以上の張力を受けた場合、前記緩衝具に対して前記支柱側横ロープ材が摩擦摺動するように構成したことを特徴とする。
これにより雪崩・落石等の衝撃力を受け、支柱側横ロープ材に所定以上の引張力が加わると、前記緩衝具に対して前記支柱側横ロープ材が摩擦摺動することにより衝撃エネルギーを吸収することができる。
さらにまた、上記の防護柵において、前記山側横ロープ材の端部を把持する緩衝具を設け、前記山側横ロープ材が所定以上の張力を受けた場合、前記緩衝具に対して前記山側横ロープ材が摩擦摺動するように構成したことを特徴とする。
これにより雪崩・落石等の衝撃力を受け、山側横ロープ材に所定以上の引張力が加わると、前記緩衝具に対して前記山側横ロープ材が摩擦摺動することにより衝撃エネルギーを吸収することができる。
本発明の防護柵によれば、衝撃力が支柱に直接加わることを防止でき、主として横ロープ材により衝撃力を吸収することができる。
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な防護柵を採用することにより、従来にない防護柵が得られ、その防護柵について記述する。
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。図1〜図3は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、防護柵である落石防護柵は、斜面あるいは斜面に並んで設置場所たるコンクリート基礎1を設け、このコンクリート基礎1に中間の支柱2・・・を複数立設する。前記支柱2は、H型鋼,コンクリート柱,鋼管あるいはコンクリート充填鋼管などからなり、この例では断面円形の鋼管を用い、その下端を前記コンクリート基礎1に固着している。前記支柱2間には支柱側横ロープ材3,3・・・が上下段に設けられ、これら支柱側横ロープ材3,3・・・の端部を端末支柱2T,2Tに固定している。尚、支柱側横ロープ材3,3・・・は中間の支柱2に対して長さ方向(左右方向)スライド可能に設けられている。また、山側横ロープ材5,5・・・の前面には、網体4を張設して支柱2T,2,2・・・2T間を閉塞している。
前記支柱2は上記のように基礎に固定してもよいし、下部を地中に建て込んで固定してもよいし、下部を斜面などに位置固定すると共に、山側と谷側の控え横ロープ材(図示せず)により固定してもよい。
前記支柱2,2の山側には、前記支柱側横ロープ材3,3・・・と平行に間隔を置いて山側横ロープ材5,5・・・を上下多段に設けている。そして、前記山側横ロープ材5,5・・・の端部を端末支柱6,6に固定している。尚、柱側横ロープ材3,3・・・と山側横ロープ材5,5・・・との間隔は1メートル以上が好ましい。
前記支柱側横ロープ材3,3・・・と山側横ロープ材5,5・・・との間には、荷重伝達構造体7を配置し、この荷重伝達構造体7は前記支柱2,2間に設けられると共に、支柱2と支柱たる端末支柱2Tの間に設けられ、前記荷重伝達構造体7の高さは上段の横ロープ材3,5より高い。
前記荷重伝達構造体7は、鋼製や硬質合成樹脂製であって、山側の左右に前縦部たる縦杆11,11を縦設し、これら縦杆11,11の中央位置で支柱2側に、後縦部たる縦杆11Aを縦設し、図2に示すように、それら縦杆11,11,11Aは平面において三角形の頂点に位置し、さらに、隣り合う縦杆11,11,11Aを上下多段に設けた横杆12により連結してなる。
尚、前記横杆12が上下間隔が略均等に設けられると共に、縦杆11,11,11Aの上端側と下端側にもそれぞれ設けられている。
前記荷重伝達構造体7は、下部を前記コンクリート基礎1に固定することができるが、この例では、下部は非固定状態で、コンクリート基礎1に載置して設けられている。
また、図示しない固定具により縦杆11,11,11Aの少なくとも1つを横ロープ材3,5に固定してもよいし、縦杆11,11,11Aの少なくとも1つを横ロープ材3,5にスライド可能に設けてもよく、この場合、例えば図3に示すように、縦杆11,11Aに設けた挿通孔8に、横ロープ材3,5をスライド可能に挿通すればよい。
次に前記構成につき、その作用を説明すると、山側から支柱2に向かう落石は、山側横ロープ材5に衝突し、横ロープ材5が受けた衝撃力は、荷重伝達構造体7により支柱側横ロープ材3と複数の支柱2,2・・・に分散して吸収され、落石の衝撃力が支柱に直接加わって支柱が損傷することが防止される。
このように本実施例では、所定の間隔で複数の支柱2,2・・・を設け、支柱2,2・・・間に支柱側横ロープ材3を設けた防護柵において、支柱側横ロープ材3の山側には、支柱2と間隔を置いて山側横ロープ材5を設け、支柱側横ロープ材3と山側横ロープ材5の間で支柱2,2間に荷重伝達構造体7を設け、山側から支柱2に向かう落石により山側横ロープ材5に衝撃力が加わると、山側横ロープ材5から荷重伝達構造体7に衝撃力が加わり、該荷重伝達構造体7から支柱側横ロープ材3に衝撃力が伝わることにより、衝撃力が落石が向かった支柱2に直接加わらないように構成したから、支柱2に向かう落石の衝撃力を山側横ロープ材5が受け、さらに、山側横ロープ材5が受けた衝撃力が荷重伝達構造体7により支柱側横ロープ材3と支柱2に分散して吸収される。したがって、落石などの衝撃力が支柱2に直接加わることがない。
また、このように本実施例では、荷重伝達構造体7は山側縦部たる縦杆11と支柱側縦部たる縦杆11Aとを備えるから、山側横ロープ材5に衝撃力が加わると、山側横ロープ材5から縦杆11に衝撃力が加わり、縦杆11Aから支柱側横ロープ材3に衝撃力が伝わる。
また、このように本実施例では、荷重伝達構造体7は下部が非固定状態で設けられているから、固定作業が不要なため施工が容易となり、また、衝撃力を直接的に支柱側横ロープ材3に伝達することができる。
また、このように本実施例では、山側横ロープ材5の端部を両側の端末支柱6,6に連結し、これら両側の端末支柱6,6間に1本以上の支柱2,2・・・が位置するから、1本以上の支柱2,2・・・の損傷を防止することができる。
また、このように本実施例では、荷重伝達構造体7が枠組構造をなすから、荷重伝達構造体7が比較的軽量にして強度を備えたものとなる。
また、実施例上の効果として、荷重伝達構造体7に支柱側横ロープ材3と山側横ロープ材5の少なくとも1方を固定したから、支柱側横ロープ材3又は/及び山側横ロープ材5に荷重伝達構造体7を固定することができる。さらに、支柱側横ロープ材3及び山側横ロープ材5に荷重伝達構造体7を固定すれば、山側横ロープ材5に加わる衝撃力を後部の支柱側横ロープ材3に伝達することができる。
さらに、実施例上の効果として、荷重伝達構造体7に支柱側横ロープ材3と山側横ロープ材5の少なくとも1方をスライド可能に連結したから、荷重伝達構造体7に無理な力が加わらずに衝撃力を伝達できる。また、横ロープ材3,5が左右方向にスライドして衝撃力を吸収する防護柵に適したものになる。
図4は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、隣り合う支柱2,2間及び隣り合う支柱2,2T間に、複数(2個)の前記荷重伝達構造体7,7を配置している。このように複数の荷重伝達構造体7,7を設けることにより、支柱2を挟む両側の荷重伝達構造体7,7の間隔を狭くすることができ、落石が支柱2に直撃しにくくすることができる。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
図5は、本発明の実施例3を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、隣り合う支柱2,2間において、前記荷重伝達構造体7がない箇所を設け、前記荷重伝達構造体7の左右両側に支柱2,2が位置するように配置している。
このように支柱2の左右方向片側に荷重伝達構造体7が位置する場合でも、山側横ロープ材5により落石などの衝撃力を受け止め、支柱2に直接的に衝撃力が加わることを防止できる。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
図6は、本発明の実施例4を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、支柱側横ロープ材3と山側横ロープ材5の間において、実施例1と前後を逆にして前記荷重伝達構造体7を配置し、この例では、縦杆11Aが前縦部であり、縦杆11が後縦部である。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
図7は、本発明の実施例5を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例の荷重伝達構造体7Aは、前側左右に縦杆11,11を配置し、後側左右に縦杆11A,11Aを配置し、それら縦杆11,11,11A,11Aは平面において四角形の頂点に位置し、隣り合う縦杆11,11,11A,11Aが横杆12により連結されている。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
図8は、本発明の実施例6を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、支柱側横ロープ材3の端部と谷側横ロープ材5の端部とを共通の端末支柱6に連結している。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
図9〜図22は、本発明の実施例7を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
この例では、前記支柱側横ロープ材3の端部3Tを、衝撃吸収装置111により端末の支柱2Tに連結し、前記山側横ロープ材5の端部5Tを、衝撃吸収装置111により端末の支柱6に連結する。前記端末の支柱2T,6は、ウエブ部105と両フランジ部106,106とを有するH型鋼から構成されている。前記衝撃吸収装置111は、鋼管などからなるリング材112と、このリング材112を外周両側から挟むように配置される載荷部材たる載荷板113,113と、それら載荷板113,リング材112及び載荷板113に挿通する前記端部3T,5Tと、この端部3T,5Tに設ける端末定着具114とを備える。
そして、この例では、前記衝撃吸収装置111を取り付ける箇所が前記ウエブ部105であり、このウエブ部105に貫通孔105Kを形成し、前記載荷板113,113のほぼ中心位置に貫通孔113K,113Kを形成し、また、前記リング材112には周方向に対向した位置に貫通孔112K,112Kをそれぞれ形成する。そして、この例では前記支柱2T,6のウエブ部105が取付位置であり、前記端部3T,5Tを、前記貫通孔105K,113K,112K,112K,113Kの順で挿通し、この挿通した端部3T,5Tを前記端末定着具114により定着する。尚、端末定着具114は端部3T,5Tにくさび作用などにより固定される公知のものである。そして、前記載荷板113,113のリング材112の外周に当接する側の面が、載荷面113M,113Mである。尚、図示しないが、横ロープ材3,5には、端部3T,5Tの他端側の端部に、同様に衝撃吸収装置111を設けてもよいし、前記他端側の端部を他の支柱2,2T,6に固定するようにしてもよい。
前記載荷面113Mは、前記リング材112の長さ方向の幅とほぼ同一の幅を有し、又は大きな幅を有し、一方、リング材112の直径方向の幅Wは、該リング材112の直径D寸法より小さく、好ましくは、後述するように、対向する内面が当接するまで潰されたリング材112の湾曲状突部112D,112Dの間隔K寸法より小さく設定する。
この載荷面Mの構成に係る実験を以下に説明する。
図10に示すように、実験装置として、載荷装置201を用い、この載荷装置201は、固定プレート202側に荷重を計測する計測装置203を設け、可動プレート204を昇降する昇降部205と、固定プレート202と可動プレート204との間の変位量を測定するレーザー変位計206とを備え、前記固定プレート202と可動プレート204との間に、リング材に相当する鋼管リング211を直径方向に立てて挟み、可動プレート204を降下させ、鋼管リング211に加わる荷重と該鋼管リング211の変形量とを測定した。
図11に示すように、鋼管リング211は、機械構造用炭素鋼鋼管(STKM13A)を用い、呼び径175で、外径φを190.7mm、厚さtを12mm、長さLを150mmとした。また、両プレート202,204の鋼管リング211の直径方向の幅PLを、200mm、100mm,75mmの場合のそれぞれについて、加えた荷重P(kN)とその時の鋼管リング211の変位量δ(mm)の関係を測定し、図12〜図17のグラフ図に示した。尚、プレート202,204の幅は載荷面の幅に相当する。
尚、実際の使用条件に合わせるため、鋼管リング211には、前記貫通孔112Kに相当する貫通孔211K,211Kがないものと、貫通孔211K,211Kがあるものとをそれぞれ用いて実験を行ない、貫通孔211Kの有る無しを「孔有」「孔無」のグラフ線としてグラフ図に記載した。また、グラフ図には、線材の破断強度の一例として、荷重P=157.0kNの位置に印をつけた。
図18は、図13において、線材が破断する強度までに、鋼管リング211の変形により吸収する吸収エネルギーEの量をハッチングで示したものであり、引張荷重が157.0kNで線材が破断するから、この時の鋼管リング211の変形量δは87.54mmであり、吸収エネルギーEは10.0kJとなる。しかし、87.54mmの変形量δから先も鋼管リング211は変形するから、鋼管リング211の変形による衝撃吸収にロスが発生する。そこで、同図の「薄肉」に示すように、鋼管リング211の厚さtを12mmより薄くすれば、線材が破断するまでの変形量δは概算で140mm程度となるが、「薄肉」のグラフ線は勾配を有するため、このグラフ線と、線材が破断する荷重P=157.0kNの横線との間の面積がロスとなる。また、仮に線材の破断する荷重Pを300.0kNに上げれば、吸収エネルギーEは前記10.0kJより大きくなるが、実線のグラフ線と、荷重P=300.0kNの横線との間の面積がエネルギー吸収の上からロスとなり、線材の引張強度を大幅に上げ、コストも上昇する割りには効果が少ないことが分かる。
一方、図19は、図17において、線材が破断する強度までに、鋼管リング211の変形により吸収する吸収エネルギーEの量をハッチングで示したものであり、上記図12と同様に、引張荷重が157.0kNで線材が破断するから、この時の鋼管リング111の変形量δは143.89mmであり、吸収エネルギーEは18.3kJとなり、図12の場合に比べて、変形量δの増加に伴い荷重Pの増加が緩やか或いはほぼ一定の割合が大きく、鋼管リング211の変形による衝撃吸収に優れることが分かる。
次に、図20〜図22を用いて、上記のようにプレート202,204の幅PLの違いによる鋼管リング211の変形について説明する。尚、図20〜図22においては、(A)から(C)に向って鋼管リング211が潰れていく状態を示している。図20は、幅PLが200mmの場合の鋼管リング211の変形を示し、円形の状態から、図20(A)に示すように、プレート202,204の中央位置で鋼管リング211に凹みが生じ、この凹みの両側に湾曲状突部112D,112Dが発生する。ここからさらに鋼管リング211を図20(B)(C)のように押し潰すと、変形量δに対して荷重Pが増大し、図12又は図13に示したグラフとなる。一方、図21に示すように、幅PLが75mmの場合、円形の状態から、図21(A)に示すように、プレート202,204の中央位置で鋼管リング211に凹みが生じ、この凹みの両側に湾曲状突部112D,112Dが発生するが、プレート202,204は湾曲状突部112D,112Dの最大突出部分を押すことなく、図21(B)(C)のように湾曲状突部112D,112Dの間で鋼管リング211を押すため、変形量δが増加しても荷重Pの増加が緩やか或いはほぼ一定の割合が高く、鋼管リング211において対向する内面が当接するまでほぼ均一な力で変形させることができる。また、図22に示すように、幅PLが100mmの場合も、図21とほぼ同様に鋼管リング211が変形する。
このように実験から、使用するリング材112の大きさ及び厚さ、載荷面113Mのリング材112の直径方向の幅W、線材である水平横ロープ材3の引張強度等を設定することにより、リング材112の変形による吸収エネルギーが最大となるように設定することが可能となることが分かった。尚、図19を用いて補足説明すると、線材の破断強度に対応する荷重P=157.0kNと、リング材112の内径寸法との積に対応するエネルギーに対して、吸収エネルギーを50%以上、好ましくは60%以上とする。尚、前記リング材112の内径寸法は、リング材112の最大変位量である。
そして、落石等により衝撃力が加わると、横ロープ材3,5に引張力が発生し、端末定着具114が支柱2T,6側に移動し、載荷面113M,113Mによりリング材112が押し潰され、これにより衝撃エネルギーを吸収し、対向する内面が当接するまでリング材112が潰れた後は、横ロープ材3,5が伸び破断することにより衝撃エネルギーが吸収される。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
また、このように本実施例では、横ロープ材3,5の端部又は端部に連結した部材に載荷面113Mを有する載荷部材たる載荷板113を設けると共に、防護柵の支柱2T,6に載荷面113Mを設け、それら両載荷面113M,113M間にリング材112を挟んで配置したから、雪崩・落石等の衝撃力により、横ロープ材3,5に引張力が加わると、両載荷面113M,113M間が狭まり、リング材112が押し潰され、このリング材112の変形により衝撃エネルギーを吸収することができる。
また、所定の間隔で複数の支柱2…2Tを設け、支柱2…2T間に水平方向の線材たる支柱側横ロープ材3を設けた防護柵において、支柱側横ロープ材3の端部3Tに載荷面113Mを有する載荷部材たる載荷板113を設けると共に、支柱2Tに載荷面113Mを設け、それら両載荷面113M,113M間にリング材112を挟んで配置したから、雪崩・落石等の衝撃力により、支柱側横ロープ材3に引張力が加わると、両載荷面113M,113M間が狭まり、リング材112が押し潰され、このリング材112の変形により衝撃エネルギーを吸収することができる。
また、リング材112が鋼製であるから、部材が簡易で比較的安価なものとなる。
また、線材たる支柱側横ロープ材3又は山側横ロープ材5に加わる張力により、両載荷面113M,113M間でリング材112を潰し、少なくとも一方の載荷面113Mのリング材112の直径方向における幅Wは、リング材112の直径Dより狭いから、横ロープ材3,5の引張力によりリング材112を押し潰すと、リング材112は対向する内面が当接する略∞状に変形するが、載荷面113M,113Mの幅Wがリング材112の直径Dより狭いから、載荷面113Mがその略∞状の湾曲突部112D,112Dを押し潰すことが無い。そして、略∞状に変形した後、その湾曲突部112D,112Dを押し潰すには、大きな力が必要であり、そのため横ロープ材3,5の引張力が増大し、早期に横ロープ材3,5が破断するが、載荷面113Mの幅Wがリング材112の直径Dより狭いから、横ロープ材3,5の早期の破断を防止することができ、衝撃エネルギーの吸収効果に優れたものとなる。
また、線材たる横ロープ材3,5に加わる張力により、両載荷面113M,113M間でリング材112を潰し、リング材112の直径方向における載荷面113Mの幅Wは、潰されたリング材112の幅方向両側に発生する湾曲突部112D,112D間の間隔Kより狭いから、リング材112は対向する内面が当接する略∞状に変形し、これにより引張力の上昇により横ロープ材3,5が破断するまでの間、リング材112に加わる力がほぼ一定或いは緩やかに上昇しながら該リング材112が変形する範囲が大となり、これによりリング材112に加わる力とリング材112の変形量の積に相当する衝撃エネルギーの吸収量を大幅に増加することができる。
また、線材たる横ロープ材3,5は、対向する内面が当接するまでリング材112が潰れても破断しない引張強度を有するから、リング材112が略∞状に潰れるまで、衝撃エネルギーを吸収することができる。
また、衝撃エネルギー吸収量設定方法であって、リング材112の直径Dとリング材112の直径方向における載荷面113Mの幅Wとを調整してリング材112の変形による衝撃エネルギー吸収量を調整するから、載荷面113の幅Wなどを調整してリング材112の変形条件を変更することにより、該リング材112の変形による衝撃エネルギー吸収量を任意に設定することができる。
また、線材たる横ロープ材3,5が、対向する内面が当接するまでリング材112が潰れても破断しない引張強度を有するように設定したから、リング材112が潰れるまで、衝撃エネルギーを吸収することができる。
図23は本発明の実施例8を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、支柱2T,6側には載荷板を設けずに、支柱2T,6のウエブ部105の外面105Gにより平坦な載荷面を構成しており、このように載荷面113Mと外面105Gの少なくとも一方である載荷面113Mの幅Wは、リング材112の直径Dより狭いから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
図24は本発明の実施例9を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、横ロープ材3,5の端部3T,5Tに、部材たる索端金具131を連結し、この索端金具131端部の鋼棒132の端部132Tを、衝撃吸収装置111により端末の前記支柱2T,6に連結している。尚、前記端部132Tに雄螺子部を設け、この雄螺子部にダブルのナット133,133を螺合することにより定着している。
このように本実施例では、線材たる横ロープ材3,5の端部3T,5T連結した部材である索端金具131の鋼棒132に、リング材112を設け、このリング材112の両側に、載荷面113Mを有する載荷部材たる載荷板113を設けたから、各請求項に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
図25は、本発明の実施例10を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
この例では、衝撃吸収装置である緩衝具304は、前記横ロープ材3,5を所定の摩擦力で把持する一対の把持体321,321を備え、これら把持体321,321の合せ面に、横ロープ材3,5に嵌合する一対の嵌合溝(図示せず)を形成し、両把持体321,321は、ボルト323とナット324からなる締付固定手段により締め付けられ、前記横ロープ材3,5の端部には、緩衝具304に係止するストッパ306を設けている。
そして、落石などを受けて、把持体321,321は横ロープ材3,5を所定の摩擦力で把持すると共に、所定以上の張力が作用したとき横ロープ材3,5の摩擦摺動を許容するものであり、前記横ロープ材3,5に張力が発生すると、嵌合溝に対して横ロープ材3,5の端部が摺動摩擦することにより、落石のエネルギーを吸収することができる。尚、ストッパ16が把持体121,121に係止した後は、横ロープ材3,5により落石のエネルギーに対抗する。この場合、把持体321,321から外側に伸びる横ロープ材3,5の余長部3Y,5Y分だけ、横ロープ材3,5が伸張することができる。
このように本実施例では、横ロープ材3,5の端部を把持する緩衝具304を設け、横ロープ材3,5が所定以上の張力を受けた場合、緩衝具304に対して横ロープ材3,5が摩擦摺動するように構成したから、雪崩・落石等の衝撃力を受け、横ロープ材3,5に所定以上の引張力が加わると、緩衝具304に対して横ロープ材3,5が摩擦摺動することにより衝撃エネルギーを吸収することができる。尚、横ロープ材3,5のいずれか一方又は両方に把持体321,321を配置してもよい。
また、このように図23〜図25の構成では落石の力により移動可能な余長部3Y,5Yを有するから、落石により横ロープ材3,5が後方に撓んで複数の支柱2,2…により支持することにより、効率よく衝撃力を緩和することができる。
図26〜図28は、本発明の実施例11を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。図27に示すように、前記支柱2,2間には、支柱側横ロープ材3,3Aが上下多段に設けられ、これら支柱側横ロープ材3,3Aの端部を固定している。尚、図26において、理解を容易にするために、支柱側横ロープ材3を太線、支柱側横ロープ材3Aを細線で表している。
前記支柱側横ロープ材3,3Aは、上下方向に間隔を置いて、交互に配置され、第1の支柱側横ロープ材3は隣合う支柱2の前部と後部とを交互に通るように配置され、前記第1の支柱側横ロープ材3とは逆に、第2の支柱側横ロープ材3Aは隣合う支柱2の後部と前部とを交互に通るように配置されている。即ち、支柱側横ロープ材3と支柱側横ロープ材3Aとは、支柱2の前部と後部とを逆に通るように配置されている。これにより、支柱側横ロープ材3,3Aには、支柱2の前部とこの支柱2に隣接する支柱2の後部とを通る斜め配置部103,103Aが設けられ、これら斜め配置部103,103Aは、前後方向において交差状に配置されている。尚、図中Mは防護柵の前側、図中Uは後側である。
尚、図28に示すように、支柱2の前部にリング状の係止部31を設け、この係止部31に支柱側横ロープ材3,3Aを係止して、支柱側横ロープ材3,3Aの高さ位置を決めるようにすればよい。一方、支柱2の後部には係止部を設けずに、支柱側横ロープ材3,3Aを載置する載置部32を設け、載置部32に載置した支柱側横ロープ材3,3Aが、支柱2から離れることができるように構成している。尚、載置部32は必ずしも設ける必要はない。また、係止部31は、上部が開口したフック状のものでもよい。
そして、支柱2,2,2T間に位置する前記斜め配置部103,103Aの交点に、前記縦杆11Aを配置して前記荷重伝達構造体7を配置している。
また、前記支柱2の外形は円筒状をなし、支柱2の前部及び後部が曲面状に形成されている。また、支柱2の直径は支柱側横ロープ材3,3Aの直径の20倍以上としている。また、支柱側横ロープ材3,3Aには、ワイヤロープを用いることが好ましいが、各種の材質のものを用いることができる。このようにすることにより、図26(B)に示すように、落石により支柱側横ロープ材3,3Aが支柱2に沿って曲がっても、支柱側横ロープ材3,3Aの引張耐力の低下を抑制できる。尚、図26(B)では、理解を容易にするため、荷重伝達構造体7を1つだけ図示して、他の荷重伝達構造体7,山側横ロープ材5及び金網4を図示省略している。
そして、落石により上下段の支柱側横ロープ材3,3Aに張力が発生し、後方に撓むと、図26(B)に示すように、支柱側横ロープ材3は、落石を挟む支柱2,2の一方と、他方の支柱2の隣の支柱2により支持され、支柱側横ロープ材3Aは、落石を挟む支柱2,2の他方と、一方の支柱2の隣の支柱2により支持され、この場合は、主として4本の支柱2,2,2,2に落石の衝撃を分散することができる。
このように本実施例では、所定の間隔で複数の支柱2,2…を設け、前記支柱2,2…間に支柱側横ロープ材3,3Aを多段に設けた防護柵において、支柱側横ロープ材3,3Aには、支柱2の前部とこの支柱2に隣接する支柱2の後部とを通る斜め配置部103,103Aを設け、隣接する支柱2,2…間において、多段に設けた支柱側横ロープ材3,3Aの少なくとも一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されているから、隣接する支柱2,2…間で一組の斜め配置部103,103Aに荷重伝達構造体7から衝撃力が伝達されると、支柱側横ロープ材3,3Aが後方に撓むと、一方の斜め配置部103は、隣接する支柱2の一方と、隣接する支柱2の他方の隣の支柱2とに支持され、他方の斜め配置部103Aは、隣接する支柱2の他方と、隣接する支柱2の一方の隣の支柱2とに支持され、2本の支柱側横ロープ材3,3Aは4本の支柱2,2,2,2により支持されることになり、支柱側横ロープ材3,3Aを複数の支柱により効率よく支持することができる。
また、隣接する支柱2,2…間において、上下に隣接する支柱側横ロープ材3,3Aの少なくとも一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されているから、荷重伝達構造体7から衝撃力をそれら上下の支柱側横ロープ材3,3Aの斜め配置部103,103Aにより受け止めることができる。
また、支柱側横ロープ材3,3Aが支柱2の前部に摺動するから、支柱側横ロープ材3,3Aが後方に撓み、支柱2の前部に落石の荷重が加わる。
また、支柱2の前部を曲面状に形成したから、支柱側横ロープ材3,3Aが円滑に摺動することができる。
また、支柱2の前部の曲率半径が支柱側横ロープ材3,3Aの直径の10倍以上であるから、支柱側横ロープ材3,3Aに無理な曲げが発生することなく、支柱側横ロープ材の性能低下を防止できる。
図29〜図31は、本発明の実施例12を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
この例では、前記支柱2間には支柱側横ロープ材3B,3C,3Dが上下段に設けられ、隣接する支柱2,2の後部間を通る直線配置部を支柱側横ロープ材3B,3C,3Dに設けている。尚、図29及び図31において、理解を容易にするために、支柱側横ロープ材3Bを太線、支柱側横ロープ材3Cを中線、支柱側横ロープ材3Dを細線で表している。
支柱側横ロープ材3B,3C,3Dは、防護柵の一側から他側に向って、支柱2の前部と2本の支柱2の後部と支柱2の前部とを通るように配置され、斜め配置部103B,103C,103D,直線配置部104B,104C,104D,斜め配置部103B,103C,103Dの順に配置されており、それぞれ2本の支柱2,2の後部を通った後、支柱2の前部を通るように配置されている。
防護柵の一側から他側に向って、第1の支柱側横ロープ材3Bが前部を通る支柱2の一側の隣の支柱2の前部に、第2の支柱側横ロープ材3Cが通り、この第2の支柱側横ロープ材3Cが前部を通る支柱2の一側の隣の支柱2の前部に、第2の支柱側横ロープ材3Dが通るように配置されている。
そして、支柱2,2,2T間に位置する斜め配置部103B,103C,103Dの交点に、前記縦杆11Aを配置して前記荷重伝達構造体7を配置している。
そして、荷重伝達構造体7から衝撃力が伝達されることにより、上下段の支柱側横ロープ材3B,3C,3Dに張力が発生し、後方に撓むと、図31に示すように、支柱側横ロープ材3Bは、落石を挟む支柱2,2の一方(図31中左側)と、他方(図31中右側)の支柱2の2本隣の支柱2により支持され、支柱側横ロープ材3Cは、落石を挟む支柱2,2のそれぞれ隣の支柱2,2により支持され、支柱側横ロープ材3Dは、落石を挟む支柱2,2の他方と、一方の支柱2の2本隣の支柱2により支持され、
この場合は、主として6本の支柱2,2,2,2,2,2に落石の衝撃を分散することができる。
このように本実施例では、上記実施例と同様な作用・効果を奏する。
また、このように本実施例では、支柱側横ロープ材3B,3C,3Dには、隣接する支柱2,2の後部間を通る直線配置部104B,104C,104Dを設けたから、支柱側横ロープ材3B,3C,3Dを隣接する支柱2,2の後部間を通し、それら支柱2,2の隣の支柱2の前部を通すことにより、落石位置から離れた支柱2により落石の荷重を支えることができる。
図32は、本発明の実施例13を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
この例では、上記実施例11において、支柱側横ロープ材3,3Aを略同一平面状に配置した例であり、図32に示すように、各段に2本の支柱側横ロープ材3,3Aを近接して配置している。尚、係止部31は、図示省略している。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
このように本実施例では、隣接する支柱2,2間において、略同一平面に位置する一組の斜め配置部103,103Aが前後方向において交差状に配置されているから、同一平面状に位置する複数の支柱側横ロープ材3,3Aにより荷重伝達構造体7から衝撃力を受け止めることができる。
図33は、本発明の実施例14を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
この例では、上記実施例12において、支柱側横ロープ材3B,3C,3Dを略同一平面状に配置した例であり、尚、係止部31は、図示省略しており、図33に示すように、各段に3本の支柱側横ロープ材3B,3C,3Dを近接して配置している。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
このように本実施例では、隣接する支柱2,2間において、略同一平面に位置する一組の斜め配置部103B,103C,103Dが前後方向において交差状に配置されているから、同一平面状に位置する複数の支柱側横ロープ材3B,3C,3Dにより荷重伝達構造体7から衝撃力を受け止めることができる。
図34〜図37は、本発明の実施例15を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
この例では、前記荷重伝達構造体7に充填部材を充填する例であり、岩石,土砂やこれらの混合物などの粒状の充填部材21や、硬化性材料の充填部材、例えばコンクリートなどの充填部材22や、間伐材などの木質材料の充填部材23などが例示される。
図34〜図36は、4つの側板12Aを備えた角筒状の荷重伝達構造体7Bを用い、図34では、荷重伝達構造体7B内に前記充填部材21を充填し、図35では、荷重伝達構造体7B内に前記充填部材22を充填し、充填部材22がコンクリートの場合は、コンクリートを荷重伝達構造体7Bに打設し、硬化することにより充填部材22が形成され、図36では、荷重伝達構造体7B内に複数の間伐材からなる充填部材23を略密に挿入している。
また、間伐材からなる充填部材23の場合は、図37に示すように、枠組構造をなす前記荷重伝達構造体7,7A内に充填部材23を略密に挿入してもよい。尚、間伐材からなる充填部材23は縦方向にして充填配置される。
このように本実施例においても、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
このように本実施例では、荷重伝達構造体7,7A,7Bに、充填部材21,22,23を入れたから、荷重伝達構造体7,7A,7Bの大変形を拘束することができ、荷重伝達構造体7,7A,7Bの重量が増すから、落石を荷重伝達構造体7,7A,7Bで直接・間接に受け止めることにより、防護柵で吸収しなければならない落石エネルギーを軽減できる。
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、横杆を斜めに配置しても良い。また、実施例11〜14の横ロープ材に、実施例7〜10を適用できることは言うまでもない。また、支柱の断面形状は楕円形でもよい。また、直線配置部を、3本以上の支柱の後部を通るように構成してもよい。さらに、筒状の荷重伝達構造体は四角に限らず、三角形や円形や長方形でもよく、内部に各種の充填部材を入れることができる。