JP3181426U - 防護柵 - Google Patents

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博 吉田
秀士 松嶋
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有限会社吉田構造デザイン
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Abstract

【課題】経済的な手法で確実にねじれ拘束杆の座屈変形を防止して、防護柵の防護機能を十二分に発揮できる防護柵を提供する。
【解決手段】隣り合うH鋼製の支柱10,10の上部間に一対のねじれ拘束杆40,40を張設した防護柵において、一対のねじれ拘束杆40,40の間にスペーサ60を配設して一対のねじれ拘束杆40,40の間隔を一定に保持可能にした。
【選択図】図1

Description

本考案は落石、雪崩、崩落土砂等を対象とした防護柵の補強技術に関し、特にH鋼製の支柱を具備した防護柵に関する。
特許文献1に記載の如く、間隔を隔てて立設したH鋼製の支柱間に複数のロープ材を多段的に横架し、複数のロープ材の間に金網を敷設して構成し、金網やロープ材の一部に作用した落石の衝撃を最終的に支柱の強度で受け止める構造の防護柵は周知である。
図6は特許文献1に記載の防護柵に衝撃が作用したときのH鋼製の支柱a1,a2と多段的に配設したロープ材b1〜b5の変位をモデル化した図である。各ロープ材b1〜b5の両端部は夫々端末支柱a1に固定し、各ロープ材b1〜b5の端部間の区間は中間支柱a2に摺動可能に取り付けてある。
特許文献1に記載の防護柵では落石等の衝撃cが作用すると、支柱a1,a2の下段から上段へ向かうにしたがって各ロープ材b1〜b5の変位量が大きくなり、各支柱a1,a2に対しては曲げだけでなく捩れ(回転モーメント)も同時に加わることが実験や事故現場で確認されている。
出願人は、各支柱の上部間に一対のねじれ拘束杆を張設して補強した防護柵を先に提案した(特許文献2)。
この防護柵は、受撃時に一対のねじれ拘束杆にそれぞれ作用する引張力と圧縮力を各ねじれ拘束杆の強度で以て対抗することで、各支柱の捩じれを防止しつつ、支柱の傾倒を特定方向に規制することができる。
一対のねじれ拘束杆を用いて補強した防護柵は、特許文献1に記載の防護柵と比べて高い補強効果のあることが実証試験により確認できた。
特開平7−197423号公報(段落0002,図6,7) 特許第4519948号公報
一対のねじれ拘束杆を用いた防護柵にあってはつぎのような課題がある。
<1>例えば支柱間のスパンを長く設計する場合や、支柱間のスパンが長い既設の防護柵に一対のねじれ拘束杆を後付けするような場合には、圧縮側のねじれ拘束杆に座屈変形を生じる可能性がある。
<2>ねじれ拘束杆が座屈変形すると荷重伝達にロスが生じ、支柱の本来の補強効果を発揮できなくなるおそれがある。
<3>一対のねじれ拘束杆を大径にすることで座屈変形は防止できるが、ねじれ拘束杆の重量が増して取扱い性や運搬性が悪くなるだけでなくコストも嵩むといった問題が起きる。
本考案は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところはつぎの少なくとも一つの防護柵を提供することにある。
<1>経済的な手法で確実にねじれ拘束杆の座屈変形を防止すること。
<2>支柱の補強効果を向上できること。
<3>防護柵の受撃性能を十二分に発揮できること
本願の第1考案は、隣り合うH鋼製の支柱の上部間に一対のねじれ拘束杆を張設した防護柵において、前記一対のねじれ拘束杆の間に跨って単数または複数のスペーサを配設し、前記スペーサを介して一対のねじれ拘束杆の間隔を一定に保持可能に構成したことを特徴とする。
前記防護柵において、前記間隔保持材が一対のねじれ拘束杆の交差方向に配置するスペーサ本体と、該スペーサ本体の両端に設けられ、前記ねじれ拘束杆に連結可能な一対のチャック部とを具備することを特徴とする。
前記防護柵において、スペーサ本体に対してチャック部が着脱自在であることを特徴とする。
前記した何れかの防護柵において、柱の上部に取付治具を固定し、該取付治具を介して隣り合う支柱の上部間に一対のねじれ拘束杆を張設したことを特徴とする。
本考案は少なくとも次のひとつの効果を得ることができる。
<1>一対のねじれ拘束杆の間にスペーサを配設するだけで、ねじれ拘束杆の座屈変形を確実に防止することができる。
<2>一対のねじれ拘束杆の間にスペーサを配設することで、隣り合う支柱の上部間に張設した一対のねじれ拘束杆による支柱の補強効果を格段に高めることが可能となる。
したがって、防護柵としての受撃性能を十二分に発揮することができる。
<3>スペーサはスペーサ本体の両端にチャック部を設けただけの簡単な構造であるため低コストに製作でき、さらにねじれ拘束杆への取付けも長時間を要せずに簡単にセットすることができる。
<4>スペーサ本体に対してチャック部が着脱自在であるため、スペーサのチャック部をねじれ拘束杆へ容易に設置することができる。
<5>取付治具を介してねじれ拘束杆を張設すると、支柱に一切の加工を施す必要がなく、ねじれ拘束杆の張設作業を簡単で短時間に行なえる。
本考案に係る防護柵の説明図で、(a)は防護柵の斜面山側から見た図、(b)は防護柵の平面図 図1におけるII−IIの断面図 防護柵の上部の斜視図 衝撃が作用したときの防護柵のモデル図 スペーサの斜視図 従来の防護柵の説明図で、衝撃が作用したときの支柱と多段的に配設したロープ材の変位をモデル化した図
図面を参照しながら考案を実施するための好適な形態について説明する。
<1>防護柵の概要
図1(a)に本考案を適用した防護柵の斜面山側から見た図を示し、(b)にその平面図を示し、図2に支柱10の上部断面図を示し、図3に防護柵の上部の斜視図を示す。
本考案が前提とする防護柵は、間隔を隔てて立設したH鋼製の支柱10(端末支柱と中間支柱を含む)と、これらの支柱10間に多段的に横架した複数のロープ材20と、複数のロープ材20に付設した金網等のネット21とにより構成されている。
支柱10はフランジ11とウェブ12とからなる断面H形を呈する鋼材で、その下部をコンクリート基礎30、または斜面に直接埋設されている。
各ロープ材20の両端部は夫々図示しない端末支柱に固定され、各ロープ材20の端部間の区間は中間の支柱10の斜面山側に配置され、Uボルト等の固定具22を介して摺動可能に取り付けられている。
本考案は、隣り合う支柱10,10の上部間に複数のねじれ拘束杆40を張設し、これらのねじれ拘束杆40によって受撃時における支柱10の変位方向を斜面谷側のみに規制するとともに、支柱10のねじれを拘束するようにした防護柵を前提とする。
本考案は既設の防護柵に限定されるものではなく、新規の防護柵に適用することも可能である。
<2>ねじれ拘束杆
ねじれ拘束杆40は支柱10のスパンと略同じ長さを有する引張耐力と圧縮耐力に優れた棒材、又はパイプ材であり、例えば鉄筋、PC鋼棒等の棒材、又は鋼管等のパイプ材を使用可能である。
ねじれ拘束杆40の両端部には接続部41を有していて、接続部41を介して取付治具50と連結可である。
本例では接続部41がねじれ拘束杆40に対して着脱可能に構成してある。
本例では支柱10の上部に取付けた取付治具50を介してねじれ拘束杆40を張設した場合について説明するが、取付治具50を省略し、支柱10のフランジ11に直接ねじれ拘束杆40を張設してもよい。
また、ねじれ拘束杆40の張設位置は、支柱10の最上部間に限定されず、支柱10の中間部の間に張設してもよい。支柱10に対し、高さ方向に複数組のねじれ拘束杆40を張設すれば、支柱10のねじれ拘束効果がさらに高くなる。
<3>取付治具
図2,3に示した取付治具50について説明する。
取付治具50は、支柱10に外装して取付ける嵌着部51と、嵌着部51の一端に一体に固着した拡張板52とを具備する。
嵌合部51はフランジ11とウェブ12を有する支柱10の上方から嵌合可能な空間53を有し、その板面には取付治具50を支柱10へ固定するために複数の固定ボルト54を有する。拡張板52の四隅には複数の取付孔55を開設している。
<4>スペーサ
スペーサ60は一対のねじれ拘束杆40,40の間の間隔を一定に保つ間隔保持機能を有する部材で、一対のねじれ拘束杆40,40の交差方向に配置し、相互に荷重を伝達する棒状または板状のスペーサ本体61と、スペーサ本体61の両端に設けられ、ねじれ拘束杆40に固定可能な一対のチャック部62,62とを具備する
本例ではチャック部62をねじれ拘束杆40に外装可能な筒状に形成し、固定ボルト63を締め付けて固定する場合について示すが、ねじれ拘束杆40の固定手段は固定ボルト63に代えて楔体であってもよい。
また本例ではスペーサ本体61をチャック部62に固定する手段が螺着手段である場合を示すが、溶接等の接着手段でもよい。
[ねじれ拘束杆の張設方法]
つぎに隣り合う支柱10,10の上部間に複数のねじれ拘束杆40を張設する方法について説明する。
<1>取付治具の取付け
図3に示すように、支柱10の上部に嵌着部51を支柱10のフランジ11の最上部に被せ、嵌着部51に設けた複数の固定ボルト54を締め付けて取付治具50を支柱10の上部へ固定する。
<2>スペーサに設置
一対のねじれ拘束杆40,40に単数または複数のスペーサ60を架け渡しておく。
スペーサ60をねじれ拘束杆40にセットするには、接続部41を取り外したねじれ拘束杆40の端部をスペーサ60のチャック部62に差し込んだ後に接続部41をねじれ拘束杆40に接続すればよい。
スペーサ60を一対のねじれ拘束杆40,40の所定位置にスライドして固定する。
スペーサ60のセット数や固定位置は、受撃時にねじれ拘束杆40が座屈変形しないように、支柱10のスパン等を考慮して適宜選択する。
<3>ねじれ拘束杆の張設
隣り合う支柱10の上部に取付けた取付治具50,50の間に一対のねじれ拘束杆40,40を架け渡し、ボルトやピン等の連結要素56によってねじれ拘束杆40の両端部を取付治具50と回動自在に連結する。
連結後における各ねじれ拘束杆40の接続部41は、取付治具50に対して相対的な変位を許容する。
なお、図示を省略するが、ねじれ拘束杆40の一部にターンバックル等の長さ調整用金具を介装しておくと、現地で支柱10の立設間隔の誤差を吸収できる。
最終的に図1(b)に示すように、隣り合う支柱10の上部間に2本のねじれ拘束杆40を互いに平行となるように張設する。
すべての支柱10の上部間、或いは補強を必要とする限定区間に亘り、前後一対のねじれ拘束杆40を張設して防護柵の補強を完了する。
<4>スペーサの間隔保持作用
図4に基づいてスペーサ60の間隔保持作用について説明する。
防護柵に衝撃Fが作用すると、受撃区間に位置する支柱10に捩じれ力が作用する。
支柱10に捩じれ力が作用すると、斜面谷側のねじれ拘束杆40に引張力を生じ、斜面山側のねじれ拘束杆40に圧縮力を生じる。
スペーサ60が設置されていなければ、斜面山側のねじれ拘束杆40が座屈変形をするおそれがあるが、本考案では一対のねじれ拘束杆40,40の間の間隔を一定に保つためのスペーサ60が配置してある。
したがって、スペーサ60は斜面谷側のねじれ拘束杆40から反力を得て圧縮力が作用する斜面山側のねじれ拘束杆40の座屈変形を確実に防止することができる。
<5>ねじれ拘束杆の作用
防護柵に衝撃Fが作用すると、受撃区間に位置する支柱10には、斜面谷側へ向けた力と、防護柵の延長方向へ向けた力が作用する。
本考案では隣り合う支柱10の上部間に一対のねじれ拘束杆40,40を張設して支柱10の補強が図られているため、防護柵の延長方向へ向けた力は各支柱10の上部間に張設した一対のねじれ拘束杆40,40により隣の支柱10で支持されるから、受撃区間に位置する支柱10は捩れることなく斜面谷側へ向けて変位する。
換言すれば、一対のねじれ拘束杆40,40は支柱10の捩れ(回転モーメント)を拘束する。この支柱10の変位は、ねじれ拘束杆40を経由して受撃区間以外の支柱10へ伝達されるので、力の伝達されたすべての支柱10が同様に斜面谷側へ向けて変位して、防護柵の延長方向へ向けた変位を拘束する。
以上説明したように、スペーサ60によりねじれ拘束杆40の座屈変形を防止しつつ、一対のねじれ拘束杆40,40を介して隣り合う支柱10,20の上部間を補強して、支柱10の曲げ変形に対する強度を十分に発揮することができる。
このように隣り合う支柱10の上部間に一対のねじれ拘束杆40,40を張設した防護柵において、一対のねじれ拘束杆40,40間をスペーサ60で接続するだけで、防護柵としての受撃性能を十二分に発揮することができる。
10・・・・・支柱
20・・・・・ロープ材
40・・・・・ねじれ拘束杆
50・・・・・取付治具
60・・・・・スペーサ
61・・・・・スペーサ本体
62・・・・・チャック部
63・・・・・固定ボルト

Claims (4)

  1. 隣り合うH鋼製の支柱の上部間に一対のねじれ拘束杆を張設した防護柵において、
    前記一対のねじれ拘束杆の間に跨って単数または複数のスペーサを配設し、
    前記スペーサを介して一対のねじれ拘束杆の間隔を一定に保持可能に構成したことを特徴とする、
    防護柵。
  2. 請求項1において、前記間隔保持材が一対のねじれ拘束杆の交差方向に配置するスペーサ本体と、該スペーサ本体の両端に設けられ、前記ねじれ拘束杆に連結可能な一対のチャック部とを具備することを特徴とする防護柵。
  3. 請求項2において、スペーサ本体に対してチャック部が着脱自在であることを特徴とする防護柵。
  4. 請求項1乃至3の何れか一項において、柱の上部に取付治具を固定し、該取付治具を介して隣り合う支柱の上部間に一対のねじれ拘束杆を張設したことを特徴とする防護柵。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7345950B1 (ja) * 2023-06-28 2023-09-19 有限会社吉田構造デザイン 防護柵およびその補強方法

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