JP5594125B2 - 位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムに、縦延伸及び横延伸をこの順で逐次に施して、位相差フィルムを製造する方法に関するものである。
近年、携帯電話やテレビ等の表示画面には、液晶表示装置が多く用いられている。液晶表示装置は、液晶分子が持つ電気光学特性を利用して表示をするものであるが、液晶には本来光学的異方性があるため、複屈折性に起因する光学的な歪みや視角方向による変調のため、表示が着色するなどの視角依存性が生じる。このような視角依存性を解消するために、位相差フィルムが光学補償フィルムとして用いられている。
かかる位相差フィルムとして、ポリカーボネート系樹脂や環状オレフィン系樹脂を延伸して得られるものが知られている。例えば特開平 7-256749 号公報(特許文献1)には、粘度平均分子量が1万以上20万以下のポリカーボネートからなるフィルムを延伸して位相差フィルムとすることが記載されている。また、特開平 5-2108 号公報(特許文献2)には、溶融法により成形した熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シートを延伸し、配向させて位相フィルムとすることが記載されている。これらのポリカーボネート系樹脂や環状オレフィン系樹脂は、一般に高価な材料であるため、液晶表示装置の低価格化という要求に対して、対応できなくなってきている。そこで、安価なプラスチック材料による位相差フィルムの開発が要望されるようになってきた。
かかる安価なプラスチック材料を用いた位相差フィルムとして、結晶性樹脂であるポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルムが提案されており、例えば、特開 2007-286615号公報(特許文献3)には、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムに、縦延伸と横延伸を逐次に施して位相差フィルムとすることが記載されている。しかしながら、この文献に記載の方法で製造される位相差フィルムは、フィルム幅方向の配向が不均一になることがあり、その場合には、位相差ムラや光軸ムラを生じ、位相差フィルムとしての十分な性能が発現されにくいことが明らかになってきた。
特開平7−256749号公報 特開平5−2108号公報 特開2007−286615号公報
そこで、本発明の課題は、高い軸精度と均一な位相差値を有するポリプロピレン系樹脂位相差フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を達成するために鋭意研究を行った結果、縦延伸後に行われる横延伸において、予熱工程と延伸工程の条件を適切に組み合わせることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムに対して縦延伸と横延伸とをこの順で逐次に行うことを含む位相差フィルムの製造方法であって、上記の横延伸は、上記ポリプロピレン系樹脂の融点以上の雰囲気温度にそのフィルムを 2.5分以上滞留させる予熱工程と、予熱されたフィルムを、そのポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い雰囲気温度で3分以上4分以下の時間をかけて横方向に延伸する延伸工程とを有する位相差フィルムの製造方法を提供するものである。
この方法において、横延伸における延伸工程は、 3.4倍以上の延伸倍率で行われることが好ましい。また、この方法に用いるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主成分とし、他の共重合性モノマーとのランダム共重合体であることが好ましい。さらに、この方法における縦延伸は、エアーフローティング方式のオーブン内を通過させるロングスパン延伸法により行われることが好ましい。
本発明の方法によれば、位相差値の精度と光軸の精度に優れたポリプロピレン系樹脂位相差フィルムを製造することができる。この方法によって得られるポリプロピレン系樹脂位相差フィルムは、特に大型液晶テレビなど、大画面の液晶表示装置に適用しても、光学的な不均一性に由来するムラがなく、視角依存性を改善する効果に優れるものとなる。さらに、軸精度が高く、均一な位相差値を有する上記の位相差フィルムを液晶表示装置に適用すれば、視野角特性及び耐久性に優れた液晶表示装置が得られる。
縦延伸に好適に用いられるエアーフローティング方式のオーブンを有するロングスパン縦延伸機を概略的に示す断面図である。 横延伸に好適に用いられるテンター横延伸機を概略的に示す平面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルム(以下、「ポリプロピレン系樹脂フィルム」と称することもある)に対し、縦延伸及び横延伸をこの順に施して、位相差フィルムを製造する。
[ポリプロピレン系樹脂]
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主なモノマーとし、他の共重合性モノマーとのランダム共重合体、又はプロピレンを主なモノマーとし、他の共重合性モノマーとのブロック共重合体であることができる。
プロピレン系ブロック共重合体は、プロピレンを主体とする単量体が重合されているブロック、並びに、プロピレンと、エチレン及び炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選択される少なくとも1種のコモノマーとが共重合されているブロックを有するものである。一般には、前者が全重合体の約40〜90重量%を占め、後者が全重合体の約10〜60重量%を占める。本発明においてブロック共重合体を用いる場合は、プロピレンに由来する構成単位が80重量%以上となっているものが適当である。
得られる位相差フィルムの光学的な均一性に優れるという観点から、以下に示す引張試験によって求められる傾きAが0.07〜1.0の範囲にあるポリプロピレン系樹脂が好ましい。傾きAが0.07〜1.0の範囲にあるポリプロピレン系樹脂の例としては、プロピレンを主成分とし、他の共重合性モノマーとのランダム共重合体が挙げられる。
〈引張試験〉
ポリプロピレン系樹脂を熱プレス成形して厚さ0.1mm のフィルムを作製する。この熱プレス成形では、樹脂を230℃で5分間予熱した後、3分間かけて100kgf/cm2まで昇圧し、その圧力で2分間保持し、その後、温度を30℃に下げて30kgf/cm2の圧力で5分間冷却する。得られるフィルムに対し、JIS K 7113:1995 「プラスチックの引張試験方法」に準じて恒温槽が設置された引張試験装置を用い、引張速度100mm/分でひずみ200%における応力が10±1kg/cm2 となる温度で引張試験(延伸)を行い、そのときの応力−ひずみ曲線(S−Sカーブ)を求める。その応力−ひずみ曲線において、ひずみ600%における応力をB600 、ひずみ200%における応力をB200 としたときに、下式で定義される傾きAを求める。この傾きAは、上記条件で引張試験(延伸)を行ったときのひずみ200%とひずみ600%の間の平均引張弾性率とみることができる値である。
Figure 0005594125
プロピレン系ランダム共重合体は、プロピレンと、エチレン及び炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選択される少なくとも1種のコモノマーとを共重合して得られるものであることができる。
炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン(以上C4 );1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン(以上C5 );1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、メチル−1−ペンテン(以上C6 );1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン(以上C7 );1−オクテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン(以上C8 );1−ノネン、ジエチル−1−ブテン(以上C9 );1−デセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン(以上C10);1−ウンデセン(C11);1−ドデセン(C12)などが挙げられる。
プロピレン系ランダム共重合体の具体例を挙げると、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体、及びプロピレンとエチレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体がある。プロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体としては、例えば、プロピレンと1−ブテンとのランダム共重合体、プロピレンと1−ヘキセンとのランダム共重合体、プロピレンと1−オクテンとのランダム共重合体などが挙げられ、プロピレンとエチレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体としては、例えば、プロピレンとエチレンと1−ブテンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンと1−ヘキセンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンと1−オクテンとのランダム共重合体などが挙げられる。なかでも好ましいものは、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンと1−ブテンとのランダム共重合体、プロピレンと1−ヘキセンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンと1−ブテンとのランダム共重合体、及びプロピレンとエチレンと1−ヘキセンとのランダム共重合体である。
本発明においては特に、プロピレン系ランダム共重合体が好ましく用いられ、その組成は、プロピレンに由来する構成単位が80重量%以上、さらには90重量%以上であるものが好ましい。
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂は、そのメルトフローレイトが、通常 0.3〜70g/10分であり、好ましくは 0.5〜30g/10分である。ここで、メルトフローレイトは、JIS K 7210:1999 「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」(ISO 1133:1997 に準拠している)に従い、温度230℃、荷重21.18N(2.16kg)で測定される値である。
このポリプロピレン系樹脂はまた、示差走査型熱量計(DSC)によって測定される融解曲線における最高強度を示すピークの温度で定義される融点が、120〜170℃の範囲にあることが好ましい。ここで融点は、ポリプロピレン系樹脂のプレスフィルム10mgをサンプルとして用い、窒素雰囲気下、230℃で5分間加熱処理した後、降温速度10℃/分で30℃まで冷却して同温度で5分間保温し、さらに30℃から230℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの融解ピーク温度である。
ポリプロピレン系樹脂は、公知の重合方法によって製造することができる。例えば、不活性溶媒の存在下で行われる溶媒重合法、実質的に液状の媒体の不存在下で行われる気相重合法などが挙げられる。好ましくは、気相重合法が採用される。また、異なる重合方法を複数種組み合わせて行うこともできるし、2段以上の多段重合を行うこともできる。
本発明においては、得られる位相差フィルムの特性が著しく損なわれない限り、分子量やプロピレン由来の構成単位の割合、タクチシティーなどが異なる2種類以上のポリプロピレン系樹脂をブレンドして用いてもよい。またポリプロピレン系樹脂は、やはり得られる位相差フィルムの特性が著しく損なわれない限り、ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂や添加剤を適宜含有してもよい。ポリプロピレン系樹脂に配合することができる添加剤の例を挙げると、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、中和剤などがある。
以上説明したポリプロピレン系樹脂から原反フィルムを製膜し、それに所望の位相差が発現するように縦延伸及び横延伸をこの順に施して、位相差フィルムを製造する。まず、原反フィルムから順を追って説明する。
[ポリプロピレン系樹脂原反フィルム]
原反フィルムは、光学的に均質で、無配向であるか又は無配向に近いものであることが好ましい。具体的には、面内位相差が50nm以下、とりわけ30nm以下のものを原反フィルムとすることが好ましい。原反フィルムは、溶剤キャスト法や押出成形法などによって製造することができる。溶剤キャスト法は、有機溶剤に熱可塑性樹脂を溶解した溶液を、離形性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムなどからなる基材上にダイコーターによりキャスティングした後、乾燥して有機溶剤を除去し、基材上にフィルムを形成する方法である。このような方法で基材上に形成されたフィルムは、基材から剥離されて原反フィルムとして使用される。押出成形法は、熱可塑性樹脂を押出機内で溶融混練した後、Tダイから押出し、ロールに接触させて冷却固化しながら引き取ってフィルムを製造する方法である。これらの方法で製造されたポリプロピレン系樹脂フィルムは、そのまま原反フィルムとして、本発明の製造方法に供することができる。原反フィルムの製造コストの観点からは、押出成形法が好ましい。
原反フィルムを押出成形法で製造するとき、Tダイから押出された溶融体とキャスティングロールとの密着性を向上させることによって、溶融体の冷却を促進させることができる。そのためには、エアーチャンバーなどを用いて、フィルム状溶融体をエアでキャスティングロールに密着させる方法、ワイヤー状、針状又はバンド状の金属製電極を用いて、フィルム状溶融体を静電的にキャスティングロールに密着させる方法、キャスティングロールとタッチロールにより挟圧する方法、キャスティングロールとその周方向に沿って圧接するよう設けられた金属製の無端ベルトとの間で挟圧する方法などが採用できる。透明性に一層優れる位相差フィルムを得る観点から、原反フィルムを製造するときのキャスティングロールの表面温度は、0〜30℃とすることが好ましい。
キャスティングロールとタッチロールにより挟圧する方法で原反フィルムを製造する場合は、ほぼ無配向の原反フィルムを得るために、タッチロールとして、ゴムロール又は弾性変形可能な金属製無端ベルトからなる外筒と、この外筒の内部に弾性変形可能な弾性体ロールとを有し、かつ外筒と弾性体ロールとの間が温度調節用媒体により満たされている構造のロールを用いることが好ましい。
タッチロールとしてゴムロールを使用する場合は、その後の延伸によって鏡面状の表面を有する位相差フィルムを製造するために、Tダイから押出された溶融体とゴムロールとの間に支持体を介在させ、それとキャスティングロールとの間で上記の溶融体を挟圧することが好ましい。このために用いる支持体は、厚みが5〜50μm の範囲にある熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムであることが好ましい。
キャスティングロールとその周方向に沿って圧接するよう設けられた金属製の無端ベルトとの間で挟圧する方法により原反フィルムを製造する場合は、キャスティングロールの周方向に沿ってキャスティングロールと平行に配置された複数のロールによりその無端ベルトを保持した状態とすることが好ましい。より好ましくは、厚みが100〜500μm の範囲にある無端ベルトを、直径100〜300mmの2本のロールで保持した状態とされる。
光学的な均一性に優れる位相差フィルムを製造するためには、延伸に供する原反フィルムは、その厚みムラが小さいことが好ましい。原反フィルムの厚みの最大値と最小値の差は10μm 以下であることが好ましく、さらには4μm 以下であることが一層好ましい。
こうして製造されたポリプロピレン系樹脂からなる原反フィルムは、一旦ロールに巻き取ってから次の縦延伸に供することもできるし、事情が許せば、押出成形法などによって製造された原反フィルムを、そのまま直接、次の縦延伸に供することもできる。
[縦延伸]
以上のようにして製造されるポリプロピレン系樹脂の原反フィルムに、縦延伸及び横延伸をこの順に逐次で施して、位相差フィルムが製造される。
縦延伸には、例えば、離れて配置される少なくとも二つのロールに回転速度差をつけ、その間に原反フィルムを通すことにより延伸する方法や、ロングスパン延伸法を採用することができる。ロングスパン延伸法とは、二対のニップロールを有し、その間にオーブンが配置された縦延伸機を用い、一方のニップロールを通ってオーブン内に導入された原反フィルムを加熱しながらもう一方のニップロールで引き取り、これら二対のニップロールの回転速度差により延伸する方法である。光学的な均一性に優れる位相差フィルムが得られやすいことから、ロングスパン縦延伸法が好ましく採用される。とりわけ、エアーフローティング方式のオーブンを用い、そのオーブン内でフィルムを通過させながらロングスパン縦延伸する方法が好ましい。
図1に、エアーフローティング方式のオーブンを有するロングスパン縦延伸機を概略的な断面図で示した。この図に示す例では、ロングスパン縦延伸機20を構成するオーブンが三つのゾーン21,22,23に分かれている。そして、先に説明した方法によって製造されたポリプロピレン系樹脂からなる原反フィルム10が矢印A方向に進行し、入口側の一対のニップロール25を介して第1ゾーン21に導入され、引き続き第2ゾーン22及び第3ゾーン23を通って、出口側の一対のニップロール26により、縦延伸されたフィルム52として引き取られるようになっている。オーブンの各ゾーン21,22,23には、上部ノズル28と下部ノズル29がフィルム流れ方向に交互に配置され、それぞれのノズル28,29から熱風を吹き付けることが可能な構造となっている。また、入口側ニップロール25と出口側ニップロール26の間で回転速度に差をつけ、出口側ニップロール26の回転速度が大きくなるようにして、縦延伸が行われる。
このようにエアーフローティング方式のオーブンとは、そのオーブン中に原反フィルム10を導入したときに、その原反フィルムの両面に上部ノズル28と下部ノズル29から熱風を吹き付けることが可能な構造を有するものであり、複数の上部ノズル28と下部ノズル29は、フィルムの流れ方向に交互に設置されているのが一般的である。オーブンの各ゾーン21,22,23では、送られてくる原反フィルム10が上部ノズル28及び下部ノズル29のいずれにも接触しないようにしながら、延伸が行われる。この縦延伸における雰囲気温度は、90℃以上、ポリプロピレン系樹脂の融点以下である。オーブンが図示のように2ゾーン以上に分かれている場合、それぞれのゾーンの温度設定は同じでもよいし、異なってもよいが、後のゾーンへ行くにつれて設定温度が高くなるようにするのが好ましい。この場合、少なくとも最後のゾーンが上述した90℃以上、ポリプロピレン系樹脂の融点以下の雰囲気温度となるように設定すればよいが、少なくとも最後の2ゾーンがこの範囲の温度となるように設定するのがより好ましい。
縦延伸倍率は、通常 1.05〜5倍であるが、光学的均一性に優れる位相差フィルムを製造するためには、縦延伸倍率を1.05〜3倍の範囲とすることが好ましい。
こうして縦延伸が施された後のフィルム12は、一旦巻き取り機に巻き取られる。この際、縦延伸されたフィルム12をそのまま巻き取ることもできるし、他のフィルム(俗に合紙とも呼ばれるフィルム)を介在させて巻き取ることもできる。一般には、巻き締まりなどによる品質低下を回避する意味から、他のフィルムを介在させて巻き取る方法が好ましく用いられる。このような目的で、縦延伸されたフィルム12間に介在させるフィルムは、縦延伸されたフィルム12に融着せず、そこからの離型性が良好であれば、どのような材質のものでも構わない。一般には、ポリプロピレン系樹脂フィルムに融着しないプラスチックフィルムが用いられ、価格面も考慮して好適なものはポリエステルフィルムである。市販されている好適なポリエステルフィルムの例を挙げると、三菱樹脂(株)から販売されている“DIAFOIL ”、ユニチカ(株)から販売されている“EMBLET”など(いずれも商品名)がある。
[横延伸]
以上のようにして縦延伸が施されたフィルムは、その後横延伸することによって、適度の位相差が付与され、位相差フィルムとなる。横延伸は、典型的には、チャックなどでフィルム幅方向の両端を固定したフィルムを、オーブン中でチャック間隔を広げながら延伸するテンター法によって行われる。テンター横延伸機においては通常、加熱用のオーブンが、予熱ゾーン、延伸ゾーン及び熱固定ゾーンに分かれており、各々独立に温度調節ができるようになっている。
図2に、テンター横延伸機の主要部を概略的な平面図で示した。この図に示す例では、テンター横延伸機30は、予熱ゾーン31、延伸ゾーン32及び熱固定ゾーン33に分かれて構成されている。そして、先に説明した方法によって縦延伸されたフィルム12が、その幅方向両端をチャック35,35で固定した状態で矢印A方向に進行し、予熱ゾーン31で予熱され、延伸ゾーン32でチャック35,35の間隔を広げながら横延伸され、横延伸終了後は、熱固定ゾーン33でチャック35,35の間隔を保ったまま熱固定されて、横延伸されたフィルム14(位相差フィルム)が得られるようになっている。
本発明では、縦延伸されたフィルムの横延伸において、少なくとも予熱工程と延伸工程をこの順に施す。そして、予熱工程では、ポリプロピレン系樹脂の融点以上の雰囲気温度でフィルムを 2.5分以上滞留させ、また延伸工程では、ポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い雰囲気温度で3分以上4分以下の時間をかけて横方向に延伸される。さらにその後、熱固定工程を経ることも有効である。以下、横延伸のこれら各工程について、順を追って説明する。
(1)予熱工程
予熱工程は、フィルムを横方向に延伸する工程の前に行われ、ここでは、延伸するのに十分な温度までフィルムが加熱される。この予熱工程における雰囲気温度、すなわちオーブンの予熱工程が行われるゾーン31の雰囲気温度は、延伸されるポリプロピレン系樹脂の融点以上とする。以下、このときの雰囲気温度を単に「予熱温度」と呼ぶことがある。
予熱温度は、得られる位相差フィルムの軸精度に大きく影響する。用いるポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い予熱温度では、フィルムに熱が十分に与えられず、続く延伸工程でフィルムが延伸されるときに応力が不均一にかかり、得られる位相差フィルムの光学的な均一性に不利な影響を及ぼすことがある。一方で、予熱温度が高すぎると、必要以上に熱がフィルムに与えられるため、フィルムが部分的に溶融してドローダウンする(下に垂れる)ことがある。そこで、予熱工程における具体的な雰囲気温度は、ポリプロピレン系樹脂の融点から融点+5℃の範囲内とするのが好ましい。この範囲で、できるだけ高い温度を採用することが、フィルム自体の温度を融点近傍の温度まで上げて予熱効率を高めるうえで好ましい。テンター延伸機の予熱工程を行うゾーンが二つ以上に分かれている場合、それぞれのゾーンの予熱温度は同じでもよいし、異なっていてもよいが、いずれのゾーンも、上記範囲内の雰囲気温度となるようにするのが好ましい。
また、予熱工程におけるフィルムの滞留時間は、 2.5分以上とする。このときの滞留時間が短いと、次の延伸工程でフィルムが延伸されるときに応力が分散し、位相差フィルムとしての光軸の均一性に不利な影響を及ぼす可能性がある。一方で、予熱工程における滞留時間が長くなると、生産効率の面で不利になるとともに、フィルムが必要以上に熱を受け、部分的に融解してドローダウンする可能性もあることから、得られる位相差フィルムの光軸の均一性や位相差値の均一性を考慮しながら、その滞留時間を決定すればよい。典型的には、予熱工程における滞留時間を5分以下、さらには4分以下とすることが好ましい。
(2)延伸工程
続く延伸工程では、フィルムが横方向(幅方向)に延伸される。この横延伸工程における雰囲気温度、すなわちオーブンで横延伸が行われるゾーン32の雰囲気温度は、ポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い温度とする。以下、このときの雰囲気温度を単に「延伸温度」と呼ぶことがある。
予熱ゾーン31で予熱されたフィルムを、そのフィルムの融点近傍であるが、それよりも低い温度で延伸することによって、フィルムを横方向に均一に延伸できるようになり、その結果、光軸の均一性に優れる位相差フィルムを得ることができる。そこで、延伸温度は、ポリプロピレン系樹脂の融点よりも5〜30℃低い範囲とすることが好ましく、さらにはポリプロピレン系樹脂の融点よりも5〜20℃低い範囲とすることが一層好ましい。
縦延伸されたフィルム12の横延伸機入口における幅W1と横延伸されたフィルム14の横延伸機出口における幅W2との比W2/W1が、横延伸倍率となる。横延伸倍率は、3〜5倍の範囲から、後述の所望される位相差値に合わせて適宜選択すればよい。ただ、横延伸倍率が 3.4倍を下回ると、光軸の振れ幅が大きくなりやすくなることから、ここでの延伸倍率は 3.4倍以上とすることが好ましい。一方で、横延伸倍率が5倍を超えると、得られる位相差フィルムの位相差値が所望の値に比べて大きくなりすぎる可能性がある。横延伸工程開始時のフィルム幅、すなわち横延伸工程の入口幅W1は、通常300mm以上1,000mm 以下の範囲内である。一方、横延伸工程終了時のフィルム幅、すなわち横延伸工程の出口幅W2は、通常1,000mm以上4,000mm以下の範囲内である。
延伸工程では、上記雰囲気温度で3分以上4分以下の時間をかけて横延伸が行われる。この時間が長すぎると、フィルムが熱緩和を受けて光軸が乱れやすくなる。一方、延伸時間が短すぎると、フィルムに一様に熱が伝わりにくくなり、延伸による光軸が幅方向で不均一になりやすい。
(3)熱固定工程
横延伸における熱固定工程は、延伸工程終了時のフィルム幅を保った状態でフィルムをオーブン内の所定温度の雰囲気内を通過させることにより行われる。延伸工程で横延伸された位相差フィルムの光学的特性の安定性を効果的に確保するうえで、このような熱固定を行うことが好ましい。この熱固定工程では、横延伸されたフィルムの幅W2をそのまま保持した状態で、所定の雰囲気温度に保たれたゾーンにフィルムを通す。熱固定工程での雰囲気温度、すなわちオーブンの熱固定を行うゾーン33における雰囲気温度は、フィルムの光軸の振れを効率的に抑制するために、延伸工程における雰囲気温度よりも5℃低い温度から延伸工程における雰囲気温度よりも30℃高い温度までの範囲で、かつポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い温度とすることが好ましい。
熱固定工程におけるフィルムの滞留時間は、0〜120秒の範囲から適宜選択すればよく、好ましくは0〜90秒、さらに好ましくは0〜60秒である。ここでの滞留時間は、テンター延伸機の熱固定工程を行うゾーン33内をフィルムが通過する時間を意味する。ここでの滞留時間を長くすると、生産性を落とすことになる。
横延伸においては、さらに熱緩和工程を設けることもできる。熱緩和工程は、延伸工程でフィルムを所定の幅に延伸した後、チャックの間隔を数%(通常は 0.5〜7%)だけ狭くし、無駄な歪(残留歪)を取り除くために行われる。通常、テンター法においては、熱緩和工程は、延伸ゾーンと熱固定ゾーンとの間であって、かつ他のゾーンから独立して温度設定が可能な熱緩和ゾーンにおいて行われる。
[位相差フィルムの光学特性]
位相差フィルムに求められる位相差値は、その位相差フィルムが適用される液晶表示装置の種類により異なるが、面内位相差Ro は、通常30〜300nmの範囲にある。後述する垂直配向(VA)モードの液晶セルを備えた液晶表示装置に適用する場合には、表示の視角依存性を改良する観点から、面内位相差Ro が40〜70nmの範囲にあり、厚み方向位相差Rthが90〜230nmの範囲にあることが好ましい。位相差フィルムの厚みは、通常10〜100μm であり、好ましくは10〜60μm である。位相差フィルムを製造するときの延伸倍率と、製造される位相差フィルムの厚みを制御することによって、所望の位相差値を有する位相差フィルムを得ることができる。
ここで、面内位相差Ro 及び厚み方向位相差Rthは、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx、面内進相軸方向(すなわち、面内で遅相軸と直交する方向)の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz 、そして厚みをdとしたときに、それぞれ次の式(I)及び(II)で定義される。
Ro =(nx−ny)×d (I)
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d (II)
本発明の方法によって製造されるポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルムは、
1,000mm幅で、フィルム面内位相差Roの最大値と最小値の差が20nm以下であり、フィルムの幅方向1,000mm の範囲内で光軸を測定したとき、横延伸方向を中心に光軸が−1°以上+1°以下であるような、光学的な均一性に優れたものとすることができる。面内位相差Ro の最大値と最小値の差が10nm以下であるような、より一層均一性に優れる位相差フィルムとすることもできる。
[位相差フィルムの用途]
本発明の方法によって製造される位相差フィルムは、公知の偏光板や液晶セルなどと組み合わせて液晶表示装置に好適に用いられる。液晶表示装置の例を挙げると、携帯電話、携帯情報端末(Personal Digital Assistant:PDA)、パーソナルコンピュータのディスプレイ、大型から中・小型に至るテレビなどがある。この位相差フィルムは、光学補償ベンド(Optically Compensated Bend:OCB)モード、垂直配向(Vertical Alignment:VA)モード、 横電界(In-Plane Switching:IPS)モード、ねじれネマティック(Twisted Nematic :TN)モード、超ねじれネマティック(Super Twisted Nematic :STN)モードなど、公知の各種モードの液晶セルを備えた液晶表示装置に対して、有効に適用することができる。例えば、垂直配向(VA)モードの液晶表示装置に適用する場合は、先述した面内位相差Ro 及び厚み方向位相差Rthを付与することにより、視野角特性を高めることができる。
液晶表示装置は一般に、2枚の基板とそれらの間に挟持される液晶層とを有する液晶セルの上下に、それぞれ偏光板が配置されており、その一方の外側(背面側)に配置されたバックライトからの光のうち、液晶セルとバックライトの間にある偏光板の透過軸に平行な直線偏光だけが液晶セルへ入射するようになっている。本発明の方法で製造される位相差フィルムは、背面側偏光板と液晶セルとの間及び/又は視認側偏光板と液晶セルとの間に、粘着剤を介して配置することができる。また、本発明の方法によって製造される位相差フィルムを、偏光板を構成する偏光フィルムに接着剤を介して直接貼合することもできる。すなわち、偏光板は通常、ポリビニルアルコールからなる偏光フィルムを保護するために、トリアセチルセルロースフィルムなどからなる2枚の保護フィルムが、接着剤を介してその偏光フィルムの両面に貼合された構成となっているが、視認側偏光板及び/又は背面側偏光板の液晶セル側に位置する保護フィルムの代わりに、本発明の方法により製造される位相差フィルムを使用することができる。この場合には、この位相差フィルムが、光学補償フィルムと保護フィルムの両方の役割を果たすことになる。
以下、実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%は、特記ないかぎり重量基準である。
[実施例1]
(A)押出フィルムの作製
プロピレン/エチレンランダム共重合体〔エチレン含量約 4.6%、融点138℃、住友化学(株)から販売されている“住友ノーブレン W151 ”〕を使用した。そして、シリンダー温度を250℃とした75mmφの押出機にこの共重合体ペレットを投入して溶融混練し、100kg/hの押出量で、この押出機に取り付けられた1,800mm幅 のTダイから押出した。
押出された溶融ポリプロピレン系樹脂を、12℃に温度調節された400mmφのキャスティングロールと、12℃に温度調節された金属スリーブからなる外筒及びその内部にある弾性体ロールから構成されるタッチロールとにより挟圧して冷却することにより、厚さ90μm 、幅1,350mm のポリプロピレン系樹脂フィルムに加工した。エアーギャップは115mm、キャスティングロールとタッチロールとの間で溶融ポリプロピレン系樹脂を挟圧した距離は20mmであった。
(B)縦延伸
得られたポリプロピレン系樹脂フィルムを、2組のニップロール対及び当該2組のニップロール対の間にエアーフローティング方式のオーブンを備えるロングスパン縦延伸機に導入し、縦延伸を行った。この縦延伸機を構成するオーブンは、フィルム入口側の第1ゾーン、中間の第2ゾーン、及び出口側の第3ゾーンに区分することができ、各ゾーンの長さはいずれも2.5mで、オーブン全長は7.5mであった。
縦延伸は、第1ゾーンの温度を70℃、第2ゾーンの温度を90℃、第3ゾーンの温度を110℃、ポリプロピレン系樹脂フィルムのオーブン入口における速度を5m/分、そして縦延伸倍率を 2.3倍として行った。得られたフィルムは、流れ方向中央を中心に幅900mmとなるように両端をスリットして除去した後、巻き取り機に巻き取った。
(C)横延伸
こうして縦延伸されたフィルムに、テンター法による横延伸を施して位相差フィルムを作製した。テンター法で用いたオーブンは、フィルムの流れ方向における上流側(オーブンの入口側)から順に、予熱ゾーン及び延伸ゾーンを備えており、オーブンの全長は12mであるが、その流れ方向における予熱ゾーンの長さを6m、延伸ゾーンの長さを6mに設定した。
上の縦延伸が施されたフィルムは、幅方向両端175mmずつをスリットし、幅550mmの状態でテンター延伸機に導入した。そして、その幅方向両端25mmをチャックで掴み、テンター延伸機入口のチャック間距離を500mmとしてオーブン内の高さ方向中心部を通過させることにより、横延伸を行った。横延伸は、ライン速度を2m/分、予熱ゾーンの雰囲気温度を143℃、延伸ゾーンの雰囲気温度を130℃、テンター延伸機出口のチャック間距離を 2,000mm、横延伸倍率を4倍に設定して行った。横延伸終了後は、流れ方向中央を中心に幅が1,400mm となるように、幅方向両端をスリットして位相差フィルムを得た。ここでライン速度とは、オーブン内におけるフィルムの流れ方向移動速度を意味し、ライン速度2m/分なので、長さ6mの予熱ゾーンを通過する時間(予熱時間)は3分、長さ6mの延伸ゾーンを通過する時間(延伸時間)も3分となる。
(D)位相差フィルムの評価試験
以上の方法で得られた位相差フィルムにつき、大塚電子(株)製の位相差フィルム・光学材料検査装置(商品名“nRETS”)を用いて、面内位相差値及び光軸の測定を行った。これらの測定は、作製した位相差フィルムの幅方向中央を中心にして幅1,000mm の範囲をとり、その1,000mm 幅の範囲を20mm間隔で分割し、合計51点について行った。これら51点で測定された面内位相差値の平均値を平均位相差値とし、51点における面内位相差値の最大値と平均位相差値との差を+(プラス)側のフレ、51点における面内位相差値の最小値と平均位相差値との差を−(マイナス)側のフレとし、両者の間をもって面内位相差値のフレとした。例えば、平均位相差値が50nmで、面内位相差値の最大値が60nm、最小値が40nmの場合は、面内位相差値のフレを±10nmと表示する。一方、光軸とは、配向角とも呼ばれるもので、屈折率最大の方位を意味する。そして、上記51点のうち、光軸が最も離れている2点におけるそれぞれの光軸がなす角度を光軸のフレとした。
その結果、平均位相差値は60nm、面内位相差値のフレは±4nmであった。また、光軸のフレは0.6°であった。面内位相差値のフレが±10nm 以内であれば、位相差の均一性は良好と判断でき、また光軸のフレが1°以下であれば、光軸の均一性は良好と判断できる。
[実施例2]
実施例1の(B)までと同様にして縦延伸され、巻き取られた幅900mmのフィルムから幅方向両端 162.5mmずつをスリットし、幅575mmの状態で、同(C)に示したのと同様に配置されたテンター横延伸機に導入した。そして、その幅方向両端25mmをチャックで掴み、テンター延伸機入口のチャック間距離を525mmとしてオーブン内の高さ方向中心部を通過させることにより、横延伸を行った。横延伸は、ライン速度を 1.5m/分、予熱ゾーンの雰囲気温度を143℃、延伸ゾーンの雰囲気温度を130℃、テンター延伸機出口のチャック間距離を1,890mm、横延伸倍率を3.6倍に設定して行った。横延伸終了後は、流れ方向中央を中心に幅が1,400mm となるように、幅方向両端をスリットして位相差フィルムを得た。このとき、フィルムが長さ6mの予熱ゾーンを通過する時間(予熱時間)は4分、長さ6mの延伸ゾーンを通過する時間(延伸時間)も4分となる。
得られた位相差フィルムについて、実施例1の(D)と同様の方法で評価したところ、平均位相差値は53nm、面内位相差値のフレは±7nm であり、光軸のフレは1.0°であった。
[比較例1]
テンター法で用いるオーブンの流れ方向における予熱ゾーンの長さを8m、延伸ゾーンの長さを4mとすることによって、予熱時間を5.3分、延伸時間を2.7分に変更する以外は、実施例2と同様にして位相差フィルムを作製した。同様に評価したところ、平均位相差値は49nm、面内位相差値のフレは±9nmであり、光軸のフレは1.5°であった。
[比較例2]
テンター法で用いるオーブンの流れ方向における予熱ゾーンの長さを4m、延伸ゾーンの長さを8mとすることによって、予熱時間を2.7分、延伸時間を5.3分に変更する以外は、実施例2と同様にして位相差フィルムを作製した。同様に評価したところ、平均位相差値は54nm、面内位相差値のフレは±7nmであり、光軸のフレは1.4°であった。
[比較例3]
横延伸におけるライン速度を1m/分とすることによって、予熱時間を6分、延伸時間を6分に変更し、さらにテンター延伸機出口のチャック間距離を1,995mm に設定することによって、延伸倍率を 3.8倍に変更する以外は、実施例2と同様にして位相差フィルムを作製した。同様に評価したところ、平均位相差値は50nm、面内位相差値のフレは±10nmであり、光軸のフレは1.6°であった。
[比較例4]
横延伸におけるライン速度を3m/分とすることによって、予熱時間を2分、延伸時間を2分に変更する以外は、実施例2と同様にして位相差フィルムを作製した。同様に評価したところ、平均位相差値は61nm、面内位相差値のフレは±12nmであり、光軸のフレは1.5°であった。
以上の実施例及び比較例の主な条件と結果を表1にまとめた。表中、予熱時間及び延伸時間の欄には、本発明の規定を満たすものに○、それを満たさないものに×を付して表示した。また、総合評価の欄には、以下の基準で結果を表示した。
◎ :面内位相差のフレが±5nm以内で、光軸のフレが1°以下。
○ :面内位相差のフレが±5nmを超え±10nm以内で、光軸のフレが1°以下。
× :面内位相差のフレは±10nm以内であるが、光軸のフレが1°を超える。
××:面内位相差のフレが±10nmを超え、光軸のフレも1°を超える。
Figure 0005594125
表1に示すとおり、横延伸における予熱工程及び延伸工程の時間を適切に制御することにより、位相差ムラ及び光軸ムラともに小さい位相差フィルムを製造することができる。
10……原反フィルム、
12……縦延伸されたフィルム、
14……横延伸されたフィルム、
20……ロングスパン縦延伸機、
21,22,23……縦延伸機を構成するオーブンの各ゾーン、
25……入口側ニップロール、
26……出口側ニップロール、
28……上部ノズル、
29……下部ノズル、
30……テンター横延伸機、
31……予熱ゾーン、
32……延伸ゾーン、
33……熱固定ゾーン、
35……チャック、
A………フィルムの進行方向、
W1……縦延伸されたフィルムの横延伸機入口における幅、
W2……横延伸されたフィルムの横延伸機出口における幅。

Claims (4)

  1. ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムに対して縦延伸と横延伸とをこの順で逐次に行うことを含む位相差フィルムの製造方法であって、
    前記横延伸は、
    前記ポリプロピレン系樹脂の融点以上の雰囲気温度に前記フィルムを 2.5分以上滞留させる予熱工程と、
    予熱された前記フィルムを、前記ポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い雰囲気温度で3分以上4分以下の時間をかけて横方向に延伸する延伸工程と
    を有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
  2. 前記横延伸における延伸工程は、 3.4倍以上の延伸倍率で行われる請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  3. 前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主成分とし、他の共重合性モノマーとのランダム共重合体である請求項1又は2に記載の位相差フィルムの製造方法。
  4. 前記縦延伸は、エアーフローティング方式のオーブン内を通過させるロングスパン延伸法により行われる請求項1〜3のいずれかに記載の位相差フィルムの製造方法。
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