JP2012081676A - 二軸延伸フィルムの製造方法及び二軸延伸フィルム並びにこれを備えた液晶表示装置 - Google Patents

二軸延伸フィルムの製造方法及び二軸延伸フィルム並びにこれを備えた液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】フィルムの横方向での光軸の振れを抑制して表示ムラを低減した二軸延伸フィルムの製造方法及び二軸延伸フィルム並びにこれを備えた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムに対して縦延伸(X)と横延伸(Y)とを逐次に行うことを含む二軸延伸フィルムF3の製造方法であって、横延伸(Y)は、下記工程を有する。(Y1):ポリプロピレン系樹脂の融点以上の予熱温度で前記フィルムを予熱する工程(予熱工程);(Y2):予熱された前記フィルムを、前記予熱温度よりも低い延伸温度で2.55%/秒以上、3.70%/秒以下の歪み速度にて横方向に延伸する工程(横延伸工程)。
【選択図】図1

Description

本発明は、二軸延伸フィルムの製造方法及び二軸延伸フィルム並びにこれを備えた液晶表示装置に関し、特に、ポリプロピレン系樹脂製のフィルムを横延伸する工程を備えた二軸延伸フィルムの製造方法及び二軸延伸フィルム並びにこれを備えた液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、消費電力が少ない、低電圧で動作する、軽量で薄型である等の特徴があるため、これらの特徴を生かして、各種の表示用デバイスに用いられている。液晶表示装置は、液晶セル、偏光フィルム、位相差フィルム、集光シート、拡散フィルム、導光板、光反射シート等、多くの材料から構成されている。
これらのフィルムのいくつかについては、樹脂フィルムを延伸処理することにより得ることができる。例えば、位相差フィルムは、Tダイの吐出口から押し出された樹脂を一軸又は二軸方向に延伸して分子を所定の方向に配向させることにより製造することができる。
ところで、位相差フィルムには、液晶表示装置の視野角特性を補償する機能が求められるが、フィルムの分子配向が不均一であると、フィルムの場所によって光軸(遅相軸ともいう)にムラが生じる。このような位相差フィルムは、光学補償機能として不十分であり、液晶表示装置に適用した場合に光漏れなどを生じることがある。
従来、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムを縦延伸と横延伸とを逐次に行う方法において、横延伸で所定の延伸処理を行うことで軸精度を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、横延伸において、ポリプロピレン系樹脂の融点以上の予熱温度で予熱を行い、続いて予熱されたフィルムを予熱温度よりも低い延伸温度で横方向に延伸し、その後熱固定する。このように横延伸することで、高い軸精度と均一な位相差値を有するポリプロピレン系樹脂製の位相差フィルムを得ることができ、液晶表示装置の視野角特性や耐久性を向上させることが可能となる。
特開2007−286615号公報(請求項1、段落0006,0026〜0030)
特許文献1の製造方法では、横延伸における温度条件のみを規定しており、その他の条件については詳細には検討されていない。例えば、フィルムを横方向に延伸する条件によっては、横方向の配向分布に乱れが生じ、特に端部付近で光軸が斜めに振れる、いわゆるボーイング現象や延伸ムラが発生する。このようなフィルムを液晶パネルや液晶表示装置に適用すると、光軸が振れた領域から光漏れが生じて白抜けが発生し、コントラスト比が低下するという問題がある。
本発明の目的は、フィルムの横方向での光軸の振れを抑制して表示ムラを低減した二軸延伸フィルムの製造方法及び二軸延伸フィルム並びにこれを備えた液晶表示装置を提供することである。
上記課題は、本発明の二軸延伸フィルムの製造方法によれば、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムに対して縦延伸と横延伸とを逐次に行うことを含む二軸延伸フィルムの製造方法であって、前記横延伸は、前記ポリプロピレン系樹脂の融点以上の予熱温度で前記フィルムを予熱する工程と、予熱された前記フィルムを、前記予熱温度よりも低い延伸温度で2.55%/秒以上、3.70%/秒以下の歪み速度にて横方向に延伸する工程と、を有することにより解決される。
この場合、前記横延伸における横延伸倍率が3.0倍以上であるであることが好ましい。
また、前記ポリプロピレン系樹脂がプロピレン系ランダム共重合体であると好適である。
また、前記縦延伸は、エアーフローティング方式のオーブン内を通過させるロングスパン延伸法にて行われることが好ましい。
また、上記課題は、本発明の二軸延伸フィルムによれば、上記のいずれかに記載の二軸延伸フィルムの製造方法によって得られることにより解決される。
この場合、前記二軸延伸フィルムの横方向における光軸の角度の振れ幅が−1.0°以上+1.0°以下であると好適である。
また、上記課題は、本発明の液晶表示装置によれば、上記のいずれかに記載の二軸延伸フィルムを備えることにより解決される。
本発明によれば、横延伸において予熱されたフィルムを横方向に2.55%/秒以上、3.70%/秒以下の歪み速度で延伸するため、ボーイング現象や延伸ムラが発生しにくく、フィルムの横方向での光軸の振れを抑制して軸精度を向上させることができる。このため、本発明により製造された二軸延伸フィルムを液晶表示装置などに使用することで、白抜けなどの表示ムラを低減してコントラスト比を向上させることが可能となる。
横延伸の各工程を示した模式図である。 二軸延伸フィルムの製造方法全体の模式図である。 ボーイング現象を説明するための模式図である。
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、本発明は以下に説明する部材や配置等によって限定されず、これらの部材等は本発明の趣旨に沿って適宜改変することができる。
<ポリプロピレン系樹脂フィルム>
本発明の二軸延伸フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、エチレン及び炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとの共重合体である。また、これらの混合物であってもよい。
α−オレフィンとしては、具体的には、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−プロピル−1−ヘプテン、2−メチル−3−エチル−1−ヘプテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタダセン、1−オクタテセン、1−ノナデセンなどが挙げられる。
このうち特に、炭素原子数4〜12のα−オレフィンが好ましい。特に共重合性の観点から、より好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、更に好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセンである。
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン・エチレン共重合体又はプロピレン・1−ブテン共重合体であることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂が、エチレン及び炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとの共重合体である場合、該共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
光学的な均一性が高い二軸延伸フィルムが得られることから、下記の樹脂選定試験で求められるパラメータ(A)が0.07〜1.0の範囲にあるポリプロピレン系樹脂が好ましい。パラメータ(A)が0.07〜1.0であるポリプロピレン系樹脂の例としては、プロピレン系ランダム共重合体が挙げられる。
<樹脂選定試験>
ポリプロピレン系樹脂を熱プレス成形して厚さ0.1mmのフィルムを作製する。前記熱プレス成形では、樹脂を230℃で5分間予熱後、3分間かけて100kgf/cmまで昇圧し、100kgf/cmで2分間保圧し、その後、30℃で30kgf/cmの圧力で5分間冷却する。このフィルムをJIS K−7113に準じ、恒温槽を設置した引張試験装置を用い、引張試験速度が100mm/分、歪み200%における応力が10±1kg/cmとなる温度に設定した恒温槽中で延伸したときに観測される応力−ひずみ曲線(S−Sカーブ)において数式(1)でパラメータ(A)を求める。
パラメータ(A)(%・kg/cm)={B600(ひずみ600%における応力)−B200(ひずみ200%における応力)}/400 ・・・数式(1)
プロピレン系ランダム共重合体としては、プロピレンとエチレン及び炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のα−オレフィンとを共重合して得られるプロピレン系ランダム共重合体が挙げられる。炭素原子数4〜20個を有するα−オレフィンとしては、前記したモノマーを挙げることができ、より好ましくは、前記した炭素原子数4〜12のα−オレフィンである。
プロピレン系ランダム共重合体の例としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。より具体的には、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体などが挙げられる。また、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられ、好ましくはプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体である。
ポリプロピレン系樹脂が共重合体である場合、この共重合体におけるコモノマー由来の構成単位の含量は、透明性と耐熱性のバランスの観点から、0重量%を超え40重量%以下が好ましく、0重量%を超え20重量%がより好ましく、更に好ましくは0重量%を超え10重量%である。なお、2種類以上のコモノマーとプロピレンとの共重合体である場合には、共重合体に含まれる全てのコモノマー由来の構成単位の合計含量が、この範囲であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定される値で通常0.1〜200g/10分であり、好ましくは0.5〜50g/10分である。MFRがこのような範囲のプロピレン系重合体を用いることにより、縦延伸及び横延伸時のフィルムの垂れさがりが少なくなり、均一に延伸しやすい。
ポリプロピレン系樹脂の分子量分布は、数平均分子量Mに対する重量平均分子量Mの比で定義され、通常1〜20である。M及びMは、溶媒に140℃のo−ジクロロベンゼンを用い、標準サンプルにポリスチレンを用いるGPCによって測定される。
ポリプロピレン系樹脂の融点は、通常120〜170℃である。なお、この融点は、示差走査型熱量計(DSC)によって測定された融解曲線において最高強度のピークが現われている温度で定義される。具体的には、ポリプロピレン系樹脂のプレスフィルム10mgを、窒素雰囲気下において230℃で5分間熱処理後、降温速度10℃/分で30℃まで冷却して30℃において5分間保温し、更に30℃から230℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の融解ピーク温度である。
ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、公知の重合用触媒を用いてプロピレンを単独重合する方法や、エチレン及び炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとを共重合する方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、
(1)マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分等からなるTi−Mg系触媒;
(2)マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分とを組み合わせた触媒系;
(3)メタロセン系触媒;などが挙げられる。
プロピレン系重合体の製造に用いる触媒系としては、これらの中で、マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物とを組み合わせた触媒系が最も一般的に使用できる。より具体的には、有機アルミニウム化合物としては、好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物及びテトラエチルジアルモキサンが挙げられ、電子供与性化合物としては、好ましくはシクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが挙げられる。マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報等に記載された触媒系が挙げられる。メタロセン触媒としては例えば、特許第2587251号、特許第2627669号、特許第2668732号に記載された触媒系が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂の製造に用いる重合方法としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶剤重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマー中で行う気相重合法などが挙げられ、好ましくは塊状重合法又は気相重合法である。これらの重合法は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのどの形式であってもよい。ポリプロピレン系樹脂は、耐熱性の点からシンジオタクチック、あるいはアイソタクチックのプロピレン系重合体であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、分子量やプロピレン由来の構成単位の割合、タクチシティーなどが異なる2種類以上のポリプロピレン系ポリマーのブレンドでもよいし、ポリプロピレン系ポリマー以外のポリマーや添加剤を適宜含有してもよい。
ポリプロピレン系樹脂が含有することができる添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収材、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤(HALS)や、例えばフェノール系とリン系の酸化防止機構を有するユニットを1分子中に備えた複合型の酸化防止剤などが挙げられる。紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、ヒドロキシトリアゾール系などの紫外線吸収剤や、ベンゾエート系など紫外線遮断剤などが挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型などが挙げられる。滑剤としては、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドや、ステアリン酸などの高級脂肪酸、及びその金属塩などが挙げられる。造核剤としては、例えばソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカンなどの高分子系造核剤等が挙げられる。アンチブロッキング剤としては球状、あるいはそれに近い形状の無機又は有機微粒子が使用できる。上記の各添加剤は、複数種を併用してもよい。
<製造方法>
二軸延伸フィルムは、ポリプロピレン系樹脂からなる原反フィルムを先に述べたような条件下に延伸することにより製造される。図2は、本発明の二軸延伸フィルムの製造方法について模式的に示した図である。この図に示すように、二軸延伸フィルムF3の製造方法は、原反フィルムF1(未延伸フィルム)を製造する原反フィルム製造工程と、得られた原反フィルムF1を二軸方向に延伸する延伸工程と、から構成される。延伸工程は、原反フィルムF1を縦方向に延伸する縦延伸(X)と、フィルム(縦延伸フィルムF2)を横方向に延伸する横延伸(Y)と、により構成される。
(原反フィルム製造工程)
原反フィルムF1としては、光学的に均質な無配向、あるいは無配向に近いフィルムを用いることが好ましい。具体的には、面内位相差が50nm以下のフィルムを用いることが好ましく、さらに好ましくは30nm以下である。原反フィルムF1の製造方法としては、溶剤キャスト法や押出成形法が挙げられる。前者の方法は、有機溶剤に熱可塑性樹脂を溶解した溶液を、離形性を有する二軸延伸ポリエステルフィルム等の基材上にダイコーターによりキャスティングした後、乾燥して有機溶剤を除去し、基材上にフィルムを形成する方法である。このような方法で基材上に形成されたフィルムは、基材から剥離されて原反フィルムF1として使用される。後者の方法は、熱可塑性樹脂を押出機内で溶融混練した後、Tダイより押し出し、ロールに接触させて冷却固化しながら引き取り、フィルムを得る方法である。この方法で製造されたポリプロピレン系樹脂フィルムがそのまま原反フィルムF1として本発明の製造方法に使用される。原反フィルムF1の製造コストの観点から、押出成形法が好ましい。
原反フィルムF1をTダイ押出成形法で製造するとき、Tダイより押し出された溶融体とキャスティングロールとの密着性を向上させることによって、溶融体の冷却を促進させる方法を採用することができる。このような方法としては、キャスティングロールとエアーチャンバーを用いて冷却する方法、金属ワイヤーで挟む形で電圧をかける方法、キャスティングロールとタッチロールにより挟圧する方法、キャスティングロールとこの周方向に沿って圧接するよう設けられた金属製の無端ベルトとの間で挟圧する方法などが挙げられる。冷却にキャスティングロールを用いる場合には、透明性により優れる二軸延伸フィルムF3を得るために、使用するキャスティングロールの表面温度は0〜30℃であることが好ましい。
キャスティングロールとタッチロールにより挟圧する方法で原反フィルムF1を製造する場合、ほぼ無配向の原反フィルムF1を得るために、タッチロールとしては、ゴムロール又は弾性変形可能な金属製無端ベルトからなる外筒と、この外筒の内部に弾性変形可能な弾性体ロールとを有し、かつ外筒と弾性体ロールとの間が温度調節用媒体により満たされてなる構造のロールを用いることが好ましい。
タッチロールとしてゴムロールを使用する場合は、鏡面状の表面を有する二軸延伸フィルムF3を得るために、Tダイより押し出された溶融体は、キャスティングロールとゴムロールとの間で支持体とともに挟圧することが好ましい。支持体としては、厚みが5〜50μmの熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムが好ましい。
キャスティングロールと、この周方向に沿って圧接するよう設けられた金属製の無端ベルトとの間で挟圧する方法により原反フィルムF1を成形する場合、無端ベルトは、キャスティングロールの周方向に沿ってキャスティングロールと平行に配置された複数のロールによって保持されていることが好ましい。より好ましくは、無端ベルトが、直径100〜300mmの二本のロールで保持されてなり、無端ベルトの厚みが100〜500μmである。
光学的な均一性により優れる二軸延伸フィルムF3を得るためには、延伸に供する原反フィルムF1は厚みムラが小さいことが好ましい。原反フィルムF1の厚みの最大値と最小値の差は10μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以下である。
(延伸工程)
上記の方法等により得られた原反フィルムF1に対して縦延伸(X)と横延伸(Y)とを逐次で行うことにより、二軸延伸フィルムF3を得ることができる。延伸工程は、縦延伸(X)を先に行った後で横延伸(Y)を行ってもよく、横延伸(Y)を先に行った後で縦延伸(X)を行ってもよい。本実施形態では、縦延伸(X)を行った後で横延伸(Y)を行う例について説明している。
(X)縦延伸
縦延伸方法としては、二つ以上のロールの回転速度差により原反フィルムF1を延伸する方法や、ロングスパン延伸法が挙げられる。ロングスパン延伸法とは、二対のニップロールとその間に配置されたオーブンを有する縦延伸機を用い、オーブン中で原反フィルムF1を加熱しながら二対のニップロールの回転速度差により延伸する方法である。光学的な均一性が高い二軸延伸フィルムF3を得るためには、特にロングスパン縦延伸法が有利である。
縦延伸法のうち、特にエアーフローティング方式のオーブンを用いる方法が好ましい。エアーフローティング方式のオーブンとは、オーブン中に原反フィルムF1を導入した際に、原反フィルムF1の両面に上部ノズルと下部ノズルから熱風を吹き付けることが可能な構造を備えたオーブンであり、複数の上部ノズルと下部ノズルがフィルムの流れ方向に交互に設置されている。この装置を用いた縦延伸(X)では、原反フィルムF1が上部ノズルと下部ノズルのいずれにも接触しないようにしながら、オーブン中で延伸する。エアーフローティング方式のオーブンを用いることで、縦延伸(X)において原反フィルムF1に与えられる熱量が均一になりやすく、このため得られるフィルム(縦延伸フィルムF2)に縦方向の筋が入りにくくなり、光学特性にムラが生じにくくなる。なお、熱風の風量は、縦延伸するフィルムの厚みなどに応じて適宜設定するが、通常、5m/秒〜10m/秒の範囲内である。
この場合の延伸温度(すなわち、オーブン中の雰囲気の温度)は、90℃以上、かつポリプロピレン系樹脂の融点以下であることが好ましい。オーブンが2つ以上のゾーンに分かれている場合は、それぞれのゾーンの温度設定は同じでもよいし、異なってもよい。
縦延伸(X)の引張張力は、150〜250Nの範囲内が好ましい。引張張力が150Nを下回ると、フィルムの伸びが不十分で分子配向が不均一となりやすい。一方、引張張力が250Nを超えると、急激な延伸により延伸方向(フィルムの進行方向)に沿ってしわが生じやすくなったり、フィルムが受ける熱量が幅方向で不均一となったりする。具体的な張力としては、例えば、200Nに設定することができる。また、縦延伸(X)のライン速度は、3〜10m/分の範囲内が好ましい。縦延伸(X)後は、縦延伸フィルムF2を一旦ロール状に巻き取り、次の横延伸(Y)に供する。
(Y)横延伸
次に、図1を参照して、横延伸(Y)について説明する。上記の縦延伸(X)で縦延伸されたフィルム(縦延伸フィルムF2)に対して、次に横延伸(Y)が行われる。本実施形態の横延伸(Y)は、下記の3つの工程から構成される。
(Y1)前記ポリプロピレン系樹脂の融点以上の予熱温度でフィルムを予熱する工程(予熱工程);
(Y2)予熱されたフィルムを、予熱温度よりも低い延伸温度で2.55%/秒以上、3.70%/秒以下の歪み速度にて横方向に延伸する工程(横延伸工程);
(Y3)横方向に延伸された前記フィルムを熱固定する工程(熱固定工程)。
代表的な横延伸の方法としては、テンター法が挙げられる。テンター法は、フィルム幅方向の両端をチャックで固定したフィルムを、オーブン中でチャック間隔を広げて延伸する方法である。テンター法においては、各工程はそれぞれのゾーンで行われる。この場合、予熱工程(Y1)を行うゾーン、横延伸工程(Y2)を行うゾーン、熱固定工程(Y3)を行うゾーンのオーブン温度は、独立に温度調節をすることができる装置を使用する。
本発明では、上述した予熱工程(Y1)、横延伸工程(Y2)の条件下で横延伸(Y)を行うことにより、軸精度に優れた二軸延伸フィルムF3を得ることができる。なお、本発明においては、熱固定工程(Y3)は必須ではない。また、この横延伸(Y)においても、上述したエアーフローティング方式を採用し、フィルムに熱風を吹き付けながら横延伸を行うようにしてもよい。また、横延伸(Y)のライン速度は、1〜20m/分の範囲内が好ましい。ライン速度は、各工程(Y1)〜(Y3)で同一でもよく、各工程間で異なる速度としてもよい。なお、図中では、横延伸機の入口を「A−A」、横延伸機の出口を「B−B」で記している。
(Y1)予熱工程
この予熱工程(Y1)は、フィルムを横方向に延伸する工程の前に行われる工程であり、フィルムを延伸するのに十分な高さの温度までフィルムを加熱する工程である。ここで予熱工程(Y1)での予熱温度は、オーブンの予熱工程(Y1)を行うゾーン内の雰囲気温度を意味し、延伸するフィルムのポリプロピレン系樹脂の融点以上の温度である。
予熱温度は、得られる二軸延伸フィルムF3の軸精度に大きく影響する。融点よりも低い予熱温度では、フィルムに熱が十分に与えられず、続く横延伸工程(Y2)でフィルムが延伸されるときに応力が不均一にかかり、得られる二軸延伸フィルムF3の光学的な均一性に不利な影響を及ぼす場合がある。一方で、予熱温度が高すぎると、必要以上に熱がフィルムに与えられるため、フィルムが部分的に溶融してドローダウンする(下に垂れる)場合がある。予熱工程(Y1)の具体的な温度は、ポリプロピレン系樹脂の融点にもよるが、通常は90〜180℃、好ましくは110〜160℃、更に好ましくは135〜145℃の範囲内の温度である。なお、テンター延伸機の予熱工程(Y1)を行うゾーンが2ゾーン以上に分かれている場合、それぞれのゾーンの予熱温度は同じでもよいし、異なっていてもよい。
延伸されるフィルムの予熱工程(Y1)での滞留時間は、30〜300秒であることが好ましい。この予熱工程(Y1)での滞留時間が30秒に満たない場合は、延伸工程でフィルムが延伸されるときに応力が分散し、二軸延伸フィルムF3としての光軸の均一性に不利な影響を及ぼす可能性がある。また、滞留時間が300秒を超える場合は、必要以上に熱を受け、フィルムが部分的に融解し、ドローダウンする可能性ある。特に、予熱工程滞留時間は60〜240秒であることが好ましい。
(Y2)横延伸工程
横延伸工程(Y2)は、フィルムを横方向(幅方向)に延伸する工程である。この横延伸工程(Y2)での延伸温度(オーブンで横延伸工程(Y2)を行うゾーン内の雰囲気の温度を意味する)は予熱温度より低い温度である。予熱されたフィルムを予熱工程(Y1)よりも低い温度で延伸することにより、フィルムを横方向に均一に横延伸できるようになり、その結果、光軸の均一性が優れた二軸延伸フィルムF3を得ることができる。延伸温度は、予熱工程(Y1)における予熱温度より5〜20℃低いことが好ましく、7〜15℃低いことがより好ましい。
熱固定温度の具体的な温度は、ポリプロピレン系樹脂の融点にもよるが、通常は60〜180℃の範囲内、好ましくは80〜160℃の範囲内である。熱固定温度が60℃に満たないと、最終的に得られる二軸延伸フィルムF3の熱安定性が不十分となる場合がある。また、熱固定温度が180℃を超えると、必要以上の熱が二軸延伸フィルムF3に与えられるため、二軸延伸フィルムF3が部分的に溶融してドローダウンする場合がある。なお、テンター延伸機の熱固定工程(Y3)を行うゾーンが2ゾーン以上に分かれている場合、それぞれのゾーンの熱固定温度は同じでもよいし、異なっていてもよい。
本発明では、横延伸工程(Y2)において、2.55%/秒以上、3.70%/秒以下の歪み速度にて横方向に延伸する点を特徴としている。ここで、歪み速度とは、単位時間あたりのフィルムの伸び量を表しており、具体的には以下の数式で定義される速度である。
歪み速度={横延伸工程の出口幅(mm)÷横延伸工程の入口幅(mm)×100}/延伸時間(秒) ・・・数式(2)
ここで、「横延伸工程の出口幅」とは、横延伸工程(Y2)の終了時におけるフィルムの横方向の幅であり、図中ではW2で示される。また、「横延伸工程の入口幅」とは、横延伸工程(Y2)の開始時におけるフィルムの横方向の幅であり、図中ではW1で示される。また、「延伸時間」とは、横延伸工程(Y2)における時間を意味する。実際の測定では、「横延伸工程の出口幅」は、横延伸工程(Y2)の出口における横延伸機のチャック間の幅の設定値を、「横延伸工程の入口幅」は、横延伸工程(Y2)の入口における横延伸機のチャック間の幅の設定値を使用している。これは、チャック間の幅の設定値は、フィルムの横方向の幅とほぼ等しく、フィルム幅に近似できるからである。
この歪み速度が2.55%/秒を下回ると、ボーイング現象が発生しやすくなる。ボーイング現象とは、図3で示すように、フィルムの幅方向中央部が遅行変形し、幅方向端部が先行変形する現象で、フィルムの幅方向端部の光軸が中央部の光軸よりも斜めに傾斜する。ひずみ速度は、より好ましくは2.60%以上、更に好ましくは2.65%以上である。
一方、歪み速度が3.70%/秒を超えると延伸ムラが大きくなり、流れ方向での光軸のフレが大きくなる。また、後述する実施例でも示すように、歪み速度が大きすぎると、フィルムの幅方向における面内位相差値の振れ幅が大きくなる傾向にある。したがって、歪み速度は、より好ましくは3.50%/秒以下、更に好ましくは2.90%秒以下である。
横延伸工程(Y2)の開始時におけるフィルムの幅、すなわち横延伸工程の入口幅(W1)は、通常、300mm以上、1000mm以下の範囲内である。一方、横延伸工程(Y2)の終了時におけるフィルムの幅、すなわち横延伸工程の出口幅(W2)は、通常、1000mm以上、4000mm以下の範囲内である。
延伸時間は、30秒から300秒の範囲内が好ましい。延伸時間が長すぎると、フィルムが熱緩和して光軸が乱れやすくなる。一方、延伸時間が短すぎると、フィルムに一様に熱が伝わりにくくなり、延伸による光軸が幅方向で不均一になりやすい。
横延伸倍率は、3.0倍以上が好ましい。横延伸倍率が3.0倍を下回ると、光軸の振れ幅が大きくなりやすくなる。また、横延伸倍率の上限は、5倍程度が好ましく、より好ましくは3〜4倍である。
(Y3)熱固定工程
横延伸の熱固定工程(Y3)は、延伸工程終了時におけるフィルム幅を保った状態でフィルムをオーブン内の所定温度の雰囲気内を通過させる工程であり、横延伸工程(Y2)で延伸された二軸延伸フィルムF3の光学的特性の安定性を効果的に確保するために実施される。この熱固定工程(Y3)では、横延伸工程(Y2)における二軸延伸フィルムF3の幅をそのまま保持した状態で、所定の熱固定温度のゾーンにフィルムを通過させる。熱固定工程(Y3)での熱固定温度は、オーブンの熱固定工程(Y3)を行うゾーンにおける雰囲気温度を意味する。フィルムの光軸の振れを効率的に抑制するために、熱固定温度は、延伸工程における延伸温度よりも5℃低い温度から延伸温度よりも30℃高い温度までの範囲内であることが好ましい。
熱固定工程(Y3)での二軸延伸フィルムF3の滞留時間は、10〜120秒であることが好ましく、より好ましくは30〜90秒、更に好ましくは30〜60秒である。滞留時間とは、テンター延伸機の熱固定工程(Y3)を行うゾーン内に二軸延伸フィルムF3が存在する時間を意味する。熱固定工程(Y3)での滞留時間が10秒に満たないと、最終的に得られる二軸延伸フィルムF3の熱安定性が不十分となる場合がある。また、滞留時間が120秒を超えると、生産性が落ちる問題がある。
横延伸の工程は、更に熱緩和工程を有してもよい。熱緩和工程は、横延伸工程(Y2)においてフィルムを所定の幅に延伸した後、チャックの間隔を数%(通常は、0.5〜7%)だけ狭くし、無駄な歪(残留歪)を取り除く工程である。通常、テンター法においては、熱緩和工程は、延伸ゾーンと熱固定ゾーンとの間であって、かつ他のゾーンから独立して温度設定が可能な熱緩和ゾーンにおいて行われる。
二軸延伸フィルムF3に求められる位相差値は、二軸延伸フィルムF3の用途等に応じて適宜設定される。例えば、二軸延伸フィルムF3が位相差フィルムとして使用される場合、二軸延伸フィルムF3が組み込まれる液晶表示装置の種類により異なるが、求められる位相差値は、通常、面内位相差Rが30〜300nmである。垂直配向モード液晶ディスプレイに使用される場合は、このモードは視野角特性に優れるという観点から、面内位相差Rが40〜70nmであり、厚み方向位相差Rthは、90〜230nmであることが好ましい。二軸延伸フィルムF3の厚みは、通常10〜100μmであり、好ましくは10〜60μmである。二軸延伸フィルムF3を製造する際の延伸倍率と、製造する二軸延伸フィルムF3の厚みを制御することにより、所望の位相差を有する二軸延伸フィルムF3を得ることができる。
上記の方法で製造した二軸延伸フィルムF3は、光学的な均一性が高く、具体的には、400mmの二軸延伸フィルムの幅方向20mm間隔で41点の光軸を測定した場合、光軸の振れ幅が−1.0°以上、+1.0°以下となる。
二軸延伸フィルムF3は、種々の偏光板や液晶層などと積層されて、携帯電話、携帯情報端末(Personal Digital Assistant:PDA)、パソコン、大型テレビ等の液晶表示装置として好ましく使用される。液晶表示装置(LCD)としては、光学補償ベンド(Optically Compensated Bend:OCB)モード、垂直配向(Vertical Alignment:VA)モード、横電界(In−Plane Switching:IPS)モード、ねじれネマティック(Twisted Nematic:TN)モード、超ねじれネマティック(Super Twisted Nematic:STN)モードなど種々のモードが挙げられる。特に、VAモードの液晶表示装置に使用する場合に視野角依存性を改良するのに効果的である。
一般に、液晶表示装置は、2枚の基板とそれらの間に挟持される液晶層とを有する液晶セルの両側に、それぞれ偏光板が配置されており、その一方の外側(背面側)に配置されたバックライトからの光のうち、液晶セルとバックライトの間にある偏光板の透過軸に平行な直線偏光だけが液晶セルへ入射するようになっている。二軸延伸フィルムF3は、背面側偏光板と液晶セルとの間や表側偏光板と液晶セルとの間に粘着剤を介して配置することができる。また、通常、偏光板はポリビニルアルコールからなる偏光フィルムを保護するために2枚のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどの保護フィルムで接着剤を介して挟持した構成となっているが、表側偏光板や背面側偏光板の液晶セル側の保護フィルムの代わりに二軸延伸フィルムF3を偏光フィルムに接着剤などで貼合することで、光学補償フィルム(位相差フィルム)と保護フィルムの両方の役割を果たすようにすることも可能である。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いたポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶成分量及びエチレン含有量は、以下の手順で求めた。
<キシレン可溶成分量(CXS)>
ポリプロピレン系樹脂の試料1gを沸騰(還流)状態にあるキシレン100mlに完全に溶解させた後、20℃に降温し、同温度で4時間静置した。その後、濾過により析出物と濾液とに分別し、濾液からキシレンを留去して生成した固形物を減圧下70℃で乾燥した。乾燥して得られた残存物の質量の当初試料の質量(1g)に対する百分率を、該ポリプロピレン系樹脂の20℃キシレン可溶成分量(CXS)とした。
<エチレン含有量>
ポリプロピレン系樹脂について、高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法によってIRスペクトル測定を行い、該ポリプロピレン系樹脂中のエチレン由来の構成単位の含量を求めた。
[実施例1]
(A)溶融押出し
ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体、Tm=136℃、MFR=8g/10分、エチレン含有量=4.6質量%、CXS=4質量%)を、シリンダー温度を250℃とした75mmφ押出機に投入して溶融混練し、100kg/hの押出量で前記押出機に取り付けられた1800mm幅のTダイより押出した。
押出された溶融ポリプロピレン系樹脂を、12℃に温度調節された400mmφのキャスティングロールと、12℃に温調した金属スリーブからなる外筒及びその内部にある弾性体ロールから構成されるタッチロールとにより挟圧して冷却することにより、厚さ90μm、幅1350mmのポリプロピレン系樹脂フィルムに加工した。エアーギャップは115mm、キャスティングロールとタッチロールとの間で溶融ポリプロピレン系樹脂を挟圧した距離は20mmであった。
得られたポリプロピレン系樹脂フィルムを、2組のニップロール対と、この2組のニップロール対の間に配置されたエアーフローティング方式のオーブンと、を備えるロングスパン縦延伸機に導入し、縦延伸を行った。オーブンは、ポリプロピレン系樹脂フィルムの入口側の第1ゾーンと中間の第2ゾーン、出口側の第3ゾーンとに区分することができ、各ゾーンの長さは2.5m(オーブン全長:7.5m)であった。
(B)縦延伸
縦延伸は、第1ゾーンの温度を70℃、第2ゾーンの温度を90℃、第3ゾーンの温度を110℃、ポリプロピレン系樹脂フィルムのオーブン入口における速度を5m/分、引張張力を200N、縦延伸倍率1.8倍の条件で行った。得られたフィルムを幅900mmにてスリットした後、巻取り機にて巻き取った。この原反を2週間養生した。
(C)横延伸
次に、こうして縦延伸されたフィルムに、テンター法により横延伸を施して位相差フィルム(二軸延伸フィルム)を作製した。テンター法で用いたオーブンは、養生後のフィルムの流れ方向における上流側(オーブンの入口側)から順に、予熱ゾーン及び延伸ゾーンを備えており、その流れ方向における予熱ゾーンの長さは6m、延伸ゾーンの長さは6mであり、オーブン全長は12mであった。
上の養生が施されたフィルムは、まず幅方向両端225mmずつをスリットし、テンター延伸機入口のチャック間距離を400mmとして、両端25mmをチャックにて掴ませた。そして、このフィルムをオーブン内の高さ方向中心部を通過させることにより、横延伸を行った。横延伸は、予熱ゾーンの予熱温度を141℃、延伸ゾーンの延伸温度を130℃、横延伸倍率を3.4倍、ライン速度を3m/分、オーブン出口におけるチャック間距離を1,400mm、引取り張力を120Nに設定して行った。横延伸終了後は、流れ方向中央を中心に幅が1,200mmとなるように両端をスリットして、位相差フィルムを得た。ここで、ライン速度とは、オーブン内におけるフィルムの移動速度を意味する。この場合の歪み速度は2.83%/秒である。
(D)位相差フィルムの評価試験
以上の方法で得られた位相差フィルムにつき、大塚電子(株)製の位相差フィルム・光学材料検査装置(商品名"nRETS")を用いて、面内位相差値及び光軸の測定を行った。これらの測定は、作製した位相差フィルムの幅方向中央を中心に幅800mmの範囲をとり、その800mm幅の範囲を20mm間隔で分割し、合計41点について行った。これら41点で測定された面内位相差値の平均値を平均位相差値とし、41点における面内位相差値の最大値と最小値の差を面内位相差値の振れ幅(以下、「フレ」と記す)とした。一方、光軸とは、配向角とも呼ばれるもので、屈折率最大の方位を意味する。そして、上記41点のうち、光軸が最も離れている2点におけるそれぞれの光軸がなす角度を光軸のフレとした。
その結果、得られたフィルムの光軸のフレは0.5°であった。光軸のフレが1.0°以下であれば、光軸の均一性は良好と判断できる。また、平均位相差値は55nmであり、面内位相差値のフレは3nmであった。なお、平均位相差値と面内位相差値のフレは参考情報であり、本実施例では光軸のフレのみで二軸延伸フィルムの光学特性の良否を判断している。
[実施例2]
縦延伸における引張張力を120N、横延伸倍率を3.2倍とする以外は実施例1と同様にして延伸を実施した。歪み速度は2.67%/秒である。得られたフィルムの光軸のフレは1.0°であった。また、平均位相差値は45nmであり、面内位相差値のフレは5nmであった。
[比較例1]
横延伸倍率を3.0倍とする以外は実施例1と同様にして延伸を実施した。歪み速度は2.50%/秒である。得られたフィルムの光軸のフレは、3.0°であった。また、平均位相差値は35nmであり、面内位相差値のフレは15nmであった。
[比較例2]
ライン速度を4.5m/分、横延伸倍率3.2倍とする以外は実施例1と同様にして延伸を実施した。歪み速度は3.98%/秒である。得られたフィルムの光軸のフレは1.5°であった。また、平均位相差値は40nmであり、面内位相差値のフレは20nmであった。
[比較例3]
流れ方向における予熱ゾーンの長さを4m、延伸ゾーンの長さを8mとする以外は実施例1と同様にして延伸を実施した。歪み速度は3.98%/秒である。得られたフィルムの光軸のフレは、3.0°であった。また、平均位相差値は35nmであり、面内位相差値のフレは15nmであった。
[比較例4]
流れ方向における予熱ゾーンの長さを4m、延伸ゾーンの長さを8m、横延伸倍率を3.0倍とする以外は実施例1と同様にして延伸を実施した。歪み速度は3.73%/秒である。得られたフィルムの光軸のフレは、3.0°であった。また、平均位相差値は35nmであり、面内位相差値のフレは10nmであった。
表1は、実施例と比較例の数値データをまとめた結果を示した表である。
Figure 2012081676
この表に示すように、歪み速度が2.55%/秒以上、3.70%/秒以下の実施例1(2.83%/秒)、実施例2(2.67%/秒)では、光軸のフレが1.0°以下であり、得られる位相差フィルムの光学特性が良好となる。また、この数値範囲内であると面内位相差値のフレも小さく、この点からも光学特性が良好であるといえる。一方、歪み速度が2.55%/秒以下の比較例1(2.50%/秒)、3.70%/秒以上の比較例2〜4(3.73%/秒、3.98%/秒)となると、光軸のフレが1.5°以上となり、得られる位相差フィルムの光学特性が悪化することが分かる。したがって、歪み速度は、2.55%/秒以上、3.70%/秒以下の範囲内が好ましいことが分かる。
さらに、実施例1と実施例2を比較した場合、歪み速度が2.67%/秒の実施例2よりも2.83%/秒の実施例1の方が光軸のフレが小さく、光学特性がより均一であることが分かる。したがって、歪み速度は2.83%/秒あたりが好ましいと考えられる。
X 縦延伸、Y 横延伸、Y1 予熱工程、Y2 横延伸工程、Y3 熱固定工程、F1 原反フィルム、F2 縦延伸フィルム、F3 二軸延伸フィルム、A−A 横延伸機の入口、B−B 横延伸機の出口、W1 横延伸工程の入口幅、W2 横延伸工程の出口幅

Claims (7)

  1. ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムに対して縦延伸と横延伸とを逐次に行うことを含む二軸延伸フィルムの製造方法であって、
    前記横延伸は、
    前記ポリプロピレン系樹脂の融点以上の予熱温度で前記フィルムを予熱する工程と、
    予熱された前記フィルムを、前記予熱温度よりも低い延伸温度で2.55%/秒以上、3.70%/秒以下の歪み速度にて横方向に延伸する工程と、を有することを特徴とする方法。
  2. 前記横延伸における横延伸倍率が3.0倍以上である、請求項1に記載の二軸延伸フィルムの製造方法。
  3. 前記ポリプロピレン系樹脂がプロピレン系ランダム共重合体である、請求項1又は2に記載の二軸延伸フィルムの製造方法。
  4. 前記縦延伸は、エアーフローティング方式のオーブン内を通過させるロングスパン延伸法にて行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸フィルムの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸フィルムの製造方法によって得られることを特徴とする二軸延伸フィルム。
  6. 前記二軸延伸フィルムの横方向における光軸の角度の振れ幅が−1.0°以上+1.0°以下である、請求項5に記載の二軸延伸フィルム。
  7. 請求項5又は6に記載の二軸延伸フィルムを備えることを特徴とする液晶表示装置。
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