JP5134353B2 - 光学補償フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、透明支持体及びその上に設けられた光学異方性層からなる光学補償シートであって、該光学異方性層が、ディスコティック構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層であり、そして該ディスコティック構造単位の円盤面が、透明支持体面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と透明支持体面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向において変化していることを特徴とする光学補償フィルムが提案されている。
上記光学補償フィルムを用いることによって、TNモード液晶表示装置の視野角特性は改善され、その結果TNモード液晶表示装置はパーソナルコンピューター(PC)等の表示モニターとして実用化されている。
[1] シクロオレフィン樹脂フィルム上に、液晶性化合物を含有する組成物から形成される光学異方性層を少なくとも1層を有する光学補償フィルムであって、
前記光学補償フィルムの配向ムラが0〜5%であり、かつ、
前記光学補償フィルムを90℃・相対湿度10%の環境下で200時間熱処理した前後のReおよびRthの変動がいずれも0.01%〜3%であることを特徴とする光学補償フィルム[ここで、Reは測定波長589nmにおけるフィルム面内のレタデーションを表し、Rthは測定波長589nmにおけるフィルムの厚み方向のレタデーションを表す]。
[2] 前記光学補償フィルムが、25℃・相対湿度10%の環境下におかれた場合に対して25℃・相対湿度80%の環境下におかれた場合のフィルムの長手方向および幅方向の湿度寸法変化率が0.1〜15ppm/%RHであること特徴とする[1]に記載の光学補償フィルム。
[3] 前記シクロオレフィン樹脂フィルムの下記式で規定されるNz値が1.0を超え1.5以下であり、かつ前記シクロオレフィン樹脂フィルムを90℃・相対湿度10%の環境下で200時間熱処理した前後のNz値の変動が0.01%〜5%であることを特徴とする[1]または[2]に記載の光学補償フィルム。
[4] 前記光学異方性層中の液晶性化合物を含有する組成物が、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物を含有する組成物であり、かつ該ディスコティック液晶性化合物のディスコティック構造単位が光学異方性層面に対して傾斜配向していることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
[5] シクロオレフィン樹脂フィルム上に、液晶性化合物を含有する組成物から形成される光学異方性層を少なくとも1層を有する光学補償フィルムの製造方法であって、
幅1mあたりのクラウン量が3〜40μmであるタッチロールを用いた溶融押出成形によりシクロオレフィン樹脂フィルムを形成する製膜工程と、
形成されたシクロオレフィン樹脂フィルムの長手方向または幅方向の少なくとも一方を延伸させる延伸工程と、
前記延伸工程で得られたフィルムを延伸方向に直交する方向に収縮させる収縮工程と、
前記収縮工程で得られたフィルムの上に、液晶性化合物を含有する組成物から形成される光学異方性層を少なくとも1層形成する工程
を含むことを特徴とする光学補償フィルムの製造方法。
[6] [5]に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする光学補償フィルム。
[7] 前記光学異方性層中の液晶性化合物を含有する組成物が、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物を含有する組成物であり、かつ該ディスコティック液晶化合物のディスコティック構造単位が光学異方性層面に対して傾斜配向していることを特徴とする[1]〜[4]および[6]のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
[8] 偏光膜と、前記偏光膜を挟持する一対の保護膜を有する偏光板であって、液晶セル側に配置した前記保護膜の少なくとも一つが[1]〜[4]、[6]および[7]のいずれかの一項に記載の光学補償フィルムからなる偏光板。
[9] [8]に記載の偏光板を有するTNモード液晶表示装置。
(特徴)
本発明の光学補償フィルムは、シクロオレフィン樹脂フィルム上に液晶性化合物を含有する組成物から形成される光学異方性層を少なくとも1層有する。
本発明の光学補償フィルムは、90℃・相対湿度10%の環境下で200時間熱処理した前後において、後述するRe及びRthの変動が、いずれも0.01%〜3%である。Re及びRthの変動は、0.01%〜2%であることが好ましく、0.01%〜1%であることがより好ましい。90℃・相対湿度10%の環境下で200時間熱処理した前後のRe及びRthの変動が上記範囲内にある本発明の光学補償フィルムは、耐久性が優れていることからTNモード用液晶表示装置の光学補償フィルムとして有用である。特に、本発明の光学補償フィルムを液晶表示装置に組み込んだ際に、長期間使用によるバックライト発熱や環境変動による光学特性の変化を著しく低減して、TV(又はTV機能付きPC用の表示モニター)で求められる耐久性能を満足することができる。
本発明の光学補償フィルムは、Rthの値が50nm〜600nmであることが好ましく、70nm〜500nmであることがより好ましく、100nm〜400nmであることがさらに好ましい。
次に、本発明における各レターデーションについて説明する。本明細書において、Re、Rth(単位;nm)は次の方法に従って求めたものである。まず、フィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、プリズムカップラー(MODEL2010 Prism Coupler:Metricon製)を用い、25℃・相対湿度60%において、532nmの固体レーザーを用いて下記式で表される平均屈折率(n)を求める。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRthは算出される。
Rthは前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長589nmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基に、以下の式(a)および式(b)よりRthを算出することもできる。
Rthは前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長589nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzより以下の式(d)よりNz値がさらに算出される。
本発明の光学補償フィルムに用いることができるシクロオレフィン樹脂フィルムについて説明する。
本発明のシクロオレフィン樹脂フィルムは、Reの値が40nm〜300nmであることが好ましく、60nm〜250nmであることがより好ましく、80nm〜200nmであることがさらに好ましい。また、本発明のシクロオレフィン樹脂フィルムフィルムは、Rthの値が10nm〜200nmであることが好ましく、20nm〜150nmであることがより好ましく、30nm〜120nmであることがさらに好ましい。Re、Rthの面内、長手方向のばらつきは0%〜8%が好ましく、より好ましく0%〜5%、さらに好ましくは0%〜3%でる。
さらに、シクロオレフィン樹脂フィルムは、25℃・相対湿度10%の環境下におかれた場合に対して25℃・相対湿度80%の環境下におかれた場合のフィルムの長手方向および幅方向の湿度寸法変化率が0.1〜10ppm/%RHであることが好ましく、0.01〜8ppm/%RHであることがより好ましく、0.01〜5ppm/%RHであることがさらに好ましい。湿度寸法変化率がこのような範囲内にあるシクロオレフィン樹脂フィルムは、本発明の光学補償フィルムの支持体として用いた場合、湿度変化があっても、安定した性能を発揮でき、光学補償フィルムのReとRthの変動および配向ムラの発生を防ぐことができる。
本発明のシクロオレフィン樹脂フィルムに用いることのできるシクロオレフィン樹脂について、以下説明する。
本発明のシクロオレフィン樹脂フィルムに可塑剤として知られる化合物を添加することは、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルムの改質の観点において好ましい。本発明に用いる可塑剤としては、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体、アルキルフタルリルアルキルグリコレート類、多価アルコール類などが好ましく用いられる。また、特開2003−12859号公報に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
可塑剤は液体であっても固体であってもよく、組成物の制約上無色であることが好ましい。熱的にはより高温において安定であることが好ましく、分解開始温度が200℃以上、更に260℃以上が好ましい。添加量は光学物性・機械物性に悪影響がなければ良く、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択され、本発明に係るシクロオレフィン樹脂100質量部に対して好ましくは0〜30質量部、より好ましくは0.1〜20質量部である。特に0.2〜15質量%が好ましい。
本発明において、フィルム構成材料中に、安定剤の少なくとも一種を前記シクロオレフィン樹脂の加熱溶融前または加熱溶融時に添加することが好ましい。これらは、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために有用である。その時、製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。これらの安定化剤は次に挙げられる効果に用いるがこれらに限定されるものではない。
安定剤の代表的な素材としては、フェノール系安定剤、亜リン酸系安定剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定剤、アミン系安定剤、エポキシ系安定剤、ラクトン系安定剤、アミン系安定剤、金属不活性化剤(スズ系安定剤)などが挙げられる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報、米国特許第4,839,405号明細書などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定剤の少なくとも一つを用いることが好ましい。これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から販売されている、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WLが挙げられる。また、旭電化工業株式会社から販売されている、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80、アデカスタブAO−412S、アデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、同PEP−36G、アデカスタブ O−130P、アデカスタブ O−180Aなどが挙げられる。さらに、住友化学株式会社から販売されている、スミライザーGP、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80が挙げられる。また、シプロ化成株式会社から販売されている、シーノックス326M、シーノックス336Bが挙げられる。またクラリアント社から販売されているSandostab P−EPQとして、入手可能である。
安定剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。安定化剤の添加量は、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部が好ましく、0.005〜3質量部がより好ましく、0.01〜0.8質量部がさらに好ましい。
マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。
これらの微粒子は、通常平均粒子サイズが0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子サイズは0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmがより好ましく、0.6μm〜1.1μmがさらに好ましい。1次、2次粒子サイズはフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとした。
好ましい微粒子の量は、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.8質量部、より好ましくは0.02〜0.5質量部である。さらに好ましくは0.03〜0.5質量%である。
微粒子はケイ素を含むものが濁度を低くでき好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がより好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中で、好ましくは、アエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、このような微粒子は、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きい。
本発明のシクロオレフィン樹脂には、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。前記紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、シクロオレフィン樹脂に対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。その添加量は、調製する溶融物(メルト)の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明に有用な高分子紫外線吸収剤としては、特開平6−148430号公報に記載されている高分子紫外線吸収剤や、紫外線吸収剤モノマーを含むポリマーが使用できる。このようなポリマーの重量平均分子量は、2000〜30000であることが好ましく、5000〜20000であることがより好ましい。紫外線吸収性モノマーから誘導されるポリマー中、紫外線吸収性モノマーの含有量が1〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましい。
本発明に用いることのできる市販品としての紫外線吸収剤モノマーとして、1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−ビニルオキシカルボニルエチル)ベンゼン、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93の1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)ベンゼンまたはこの類似化合物がある。これらを単独又は共重合したポリマーまたはコポリマーも好ましく用いられるが、これらに限定されない。例えば、市販品の高分子紫外線吸収剤として、大塚化学(株)製のPUVA−30Mも好ましく用いられる。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
これらの紫外線吸収剤として、以下の市販品も利用できる。ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 320(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 327(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 328(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、スミソーブ340(住友化学社製)、アデカスタブLA−31(旭電化工業社製)などがある。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100(シプロ化成社製)、シーソーブ101(シプロ化成社製)、シーソーブ101S(シプロ化成社製)、シーソーブ102(シプロ化成社製)、シーソーブ103(シプロ化成社製)、アデカスタブLA−51(旭電化工業社製)、ケミソープ111(ケミプロ化成社製)、UVINUL D−49(BASF社製)などを挙げられる。また、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)やTINUBIN 315(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)がある。更にサリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201(シプロ化成社製)やシーソーブ202(シプロ化成社製)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501(シプロ化成社製)、UVINUL N−539(BASF社製)がある。これらの中でも、特にアデカスタブLA−31が好ましい。
本発明の光学補償フィルムにおいて、シクロオレフィン樹脂フィルム上に設けられる光学異方性層について説明する。光学異方性層は、支持体上に直接液晶性化合物から形成するか、もしくは配向膜を介して液晶性化合物から形成する。本発明の光学補償フィルムにおいて、光学異方性層は少なくとも一層有していることが必要であり、複数層有していても構わない。
本発明の光学補償フィルムにおける光学異方性層は、膜厚が0.1〜5μmであることが好ましく、0.2〜3μmであることがより好ましく、0.5〜2.5μmであることがさらに好ましい。
光学異方性層に用いる液晶性化合物には、棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物が含まれ、ディスコティック液晶性化合物を用いることが好ましい。棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。光学異方性層は、液晶性化合物および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。本発明の配向膜として好ましい例は、特開平8−338913号公報に記載されている。
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性化合物として用いることができる。すなわち、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性化合物については、例えば、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載のものを採用できる。
棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基またはエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
ディスコティック液晶性化合物には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告(J.C.S.,Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
ディスコティック液晶性化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。ディスコティック液晶性化合物から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物がディスコティック液晶性化合物である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
一般式(1)
D(−LQ)r
(一般式(1)中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、rは4〜12の整数である。)
円盤状コアDの例を以下に示す。以下の各例において、LQまたはQLは、二価の連結基Lと重合性基Qとの組み合わせを意味する。
L1:−AL−CO−O−AL−、
L2:−AL−CO−O−AL−O−、
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−、
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−、
L5:−CO−AR−O−AL−、
L6:−CO−AR−O−AL−O−、
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−、
L8:−CO−NH−AL−、
L9:−NH−AL−O−、
L10:−NH−AL−O−CO−、
L11:−O−AL−、
L12:−O−AL−O−、
L13:−O−AL−O−CO−、
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−、
L15:−O−AL−S−AL−、
L16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−、
L17:−O−CO−AR−O−AL−CO−、
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−、
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−、
L20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−、
L21:−S−AL−、
L22:−S−AL−O−、
L23:−S−AL−O−CO−、
L24:−S−AL−S−AL−、
L25:−S−AR−AL−。
ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)の平均方向(各分子の長軸方向の平均)は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)方向は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいはディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
前記光学異方性層は、ディスコティック液晶性化合物とともにポリマーを含有していてもよい。該ポリマーは、ディスコティック液晶性化合物とある程度の相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。ディスコティック液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
本発明の光学補償フィルムは、各層を製膜して積層することで作製することができる。
本発明の光学補償フィルムの製造方法は、表面の微細な凸凹を減らし、表面平滑性を向上させることを目的として、以下の3工程を順に有することが必要である。
1)幅1mあたりのクラウン量が2.6μm〜40μmであるタッチロールを用いた溶融押出成形によりシクロオレフィン樹脂フィルムを形成する製膜工程。
2)形成されたシクロオレフィン樹脂フィルムの長手方向又は幅方向の少なくとも一方を延伸させる延伸工程。
3)延伸工程で得られたフィルムを延伸方向に直交する方向に収縮させる収縮工程。
このような工程を含むことにより、シクロオレフィン樹脂フィルムのNz値の変動幅が小さく、光学異方性層の配向ムラが小さく、シクロオレフィン樹脂フィルムおよび光学補償フィルムの湿度寸法変化率が小さく、さらに光学補償フィルムの高温下でのReおよびRthの変動幅が小さい、本発明の光学補償フィルムを製造することができる。
すなわち、このような物性を有するシクロオレフィン樹脂フィルムを用いることにより、本発明の光学補償フィルムは長期間使用によるバックライト発熱や環境変動による光学特性の変化を著しく低減し、視野角補償能および耐久性に優れたものとなった。これは、シクロオレフィン樹脂フィルムに上記物性をもたらすことにより、光学補償フィルム製造時に温度、湿度変化により配向ムラを少なくし、得られた光学補償フィルムの全体耐久性改良効果が得られたためと考えられる。
前記シクロオレフィン樹脂、または前記シクロオレフィン樹脂と添加物との混合物は、溶融製膜に先立ちペレット化するのが好ましい。
ペレット化は前記シクロオレフィン樹脂と添加物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出ながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化してもかまわない。
押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
好ましいペレットの大きさは10mm3〜1000mm2であり、より好ましくは30mm3〜500mm3である。
溶融製膜に先立ちペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
乾燥したペレットは押出機の供給口を介してシリンダー内に供給され混練、溶融される。シリンダー内は供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。押出温度は190〜300℃が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
樹脂中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機出機とダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。Tダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜10倍がよく、好ましくは1.2〜5倍である。
ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂(メルト)をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。
この時、ダイとキャスティングドラムの間を遮蔽し風の影響を抑制することが好ましい。
メルトがキャスティングドラムに接触する際、タッチロール法を用いてキャスティングドラムとメルトとの密着を上げる。密着を上げる方法として、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法をタッチロール法と組み合わせて用いてもよい。このような密着向上法はメルトの全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
タッチロール法とは、キャストドラム上にタッチロールを置いてフィルム表面を整形するものである。この時、タッチロールは通常の剛性の高いものではなく、弾性を有するものが好ましい。これによりフィルムに過剰な面圧をかけることなく、フィルムの表面凹凸を好ましい範囲内に制御することができる。このためには、ロールの外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚は、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mm、さらに好ましくは0.3mm〜3.5mmである。タッチロールは金属シャフトの上に設置し、その間に熱媒(流体)を通してもよく、例えば外筒と金属シャフトの上に間に弾性体層を設け、外筒の間に熱媒(流体)を満たしたものが挙げられる。
クラウン量が上記範囲内であるタッチロールを用いると、シクロオレフィン樹脂フィルムが幅方向に均一な圧力下で幅方向に一定の膜厚で製膜されることとなり、表面が歪んだり、膜厚ムラが生じたりすることを防ぐことができる。その結果、得られるシクロオレフィン樹脂フィルム表面平滑性が著しく向上することとなり好ましい。溶融製膜時ダイから吐出されたメルトがネックイン現象により両端部の膜厚を増加し、幅1mあたりのクラン量が3μm以下になると、膜中央部付近に押付け圧力が均一に掛からないため、膜中央部付近の面状と厚みムラが悪化する恐れがある。一方、幅1mあたりのクラン量が40μm以上を超えると、両端部付近の面状と厚みムラが悪化する恐れがある。
このような特定のクラウン量のタッチロールを用いた製膜により、表面状態が均一なシクロオレフィン樹脂フィルムを製膜することが可能となり、表面平滑性を格段に向上することが可能となる。また、厚み均一および表面平滑化により、ReおよびRthの均一性も格段に向上する。さらに、このような製膜工程により製膜されたシクロオレフィン樹脂フィルムを延伸した場合、延伸工程で増幅されてしまう表面の微細な凸凹を抑制する効果も得ることができる。また、高温及び湿度変動による光学特性の変動抑制効果も相乗的に得ることが可能である。
タッチロールの材質は金属であることが好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面にメッキを行うことも好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールはゴム表面の凹凸が大きいため、表面凹凸を特定の範囲内に制御したシクロオレフィン樹脂フィルムを製膜したいときは使用を避けることが好ましい。
タッチロール、キャスティングロールの表面は、算術平均高さRaが通常100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
タッチロールは、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
この後、キャスティングドラムからフィルムを剥ぎ取り、ニップロールを経た後、巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
製膜幅は0.7m〜3mが好ましく、1m〜2mがさらに好ましい。製膜後(未延伸)の厚みは30μm〜300μmが好ましく、より好ましくは40μm〜250μm、さらに好ましくは60μm〜200μmである。
このようにして延製膜した後、両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。
また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。
巻き取る前に片面或いは両面にラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/幅である。
シクロオレフィン樹脂フィルムは、長手方向又は幅方向の少なくとも一方に延伸する。延伸することによって、Re、Rthの幅方向、長手方向のばらつき、配向角の長手方向または幅方向からのずれを小さくすることができる。延伸する方向は長手方向だけであっても、幅方向だけであっても、長手および幅方向の両方向でも構わない。また、延伸は後述する収縮と組み合わせてもよい。中でも好ましいのが長手方向に延伸した後に幅方向に延伸するもの、あるいは幅方向の延伸と長手方向の収縮処理を組合わせるものであり、前者は高Rthを発現させるのに適し、後者は低Rthを発現させるのに適する。
本発明では長手方向の延伸を単独で行ってもよいし、幅方向の延伸と組合せて実施してもよい。長手方向の延伸は幅方向の延伸の前後どちらで実施してもよいが、幅方向の延伸前に行うのがより好ましい。また長手方向の延伸は1段で実施してもよく、多段に分けて実施してもよい。
長手方向の延伸は2対のニップロールを設置し、この間を加熱しながら出口側のニップロールの周速を入口側のニップロールの周速より速くすることで行うことができる。この際、ニップロール間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/Wが2を超え50以下(長スパン延伸)ではRthを小さくでき、L/Wが0.01〜0.3(短スパン延伸)ではRthを大きくできる。本発明では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)どれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthのフィルムを製造したい場合は短スパン延伸、低Rthのフィルムを製造したい場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
これらの長手方向の延伸の好ましい延伸温度は(Tg−10℃)〜(Tg+50)℃、より好ましくは(Tg−5℃)〜(Tg+40)℃、さらに好ましくは(Tg)〜(Tg+30)℃である。好ましい延伸倍率は2%〜200%であり、より好ましくは4%〜150%、さらに好ましくは6%〜100%である。
延伸に伴いフィルムは伸張されるが、この時フィルムは体積変化を小さくしようと厚み、幅を減少させる。ニップロール間隔を大きくすると幅方向収縮しやすくなり厚み減少を抑制でき(厚み方向の圧縮が少なく)、フィルム面内の分子配向が抑制されRthを小さくできる。
L/Wは2を越え50以下が好ましく、より好ましくは3〜40、さらに好ましくは4〜20である。このような長スパン延伸は3対以上ニップロールで多段延伸してもよく、多段のうち最も長い縦横比が上記範囲に入っていればよい。
このような長スパン延伸は所定の距離離した2対のニップロールの間でフィルムを加熱して延伸すればよく、加熱方法はヒーター加熱法(赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等をフィルム上や下に設置し輻射熱で加熱)でもよく、ゾーン加熱法(熱風等を吹き込み所定の温度に調温したゾーン内で加熱)でもよい。
L/Wを0.01を越え0.3未満、より好ましくは0.03〜0.25、さらに好ましくは0.05〜0.2で長手方向の延伸(短スパン延伸)を行う。これによりネックイン(延伸に伴う延伸と直行する方向の収縮)を小さくでき、厚みが減少し易い。この結果、厚み方向に圧縮されたようになり、厚み方向の配向(面配向)が進みRthが増加し易い。
短スパン延伸は2対以上のニップロール間で搬送速度を変えることにより実施できるが、通常のロール配置(特開2007−152558号公報の図3の長手方向の延伸工程部(108)に示すようにニップロールを平行に配置、ロール間に隙間が発生しL/Wを小さくできない)と異なり、2対のニップロールを斜めに(前後のニップロールの回転軸を上下にずらす)配置することで達成できる(特開2006−51804号公報の図1の長手方向の延伸工程部(20)に示すようにニップロールを上下にずらして配置する。但しこの図ではニップロール(22、24)が広く描いてあるが、この間隔を狭めニップロールを近接させることでL/Wを小さくできる)。これに伴いニップロール間に加熱用ヒーターは設置できないため、ニップロール中に熱媒を流しフィルムを昇温することが好ましい。さらに入口側ニップロールの前に内部に熱媒を流した予熱ロールを設け、フィルムを延伸前に加熱することも好ましい。
幅方向の延伸はテンターを用い実施できる。即ち、フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、幅方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、(Tg−10℃)〜(Tg+60℃)が好ましく、(Tg−5℃)〜(Tg+45℃)がより好ましく、Tg〜(Tg+30℃)がさらに好ましい。好ましい延伸倍率は10%〜250%、より好ましくは20%〜200%、さらに好ましくは30%〜150%である。ここでいう延伸倍率とは下記式で規定されるものである。
このような延伸の前に予熱したり、延伸の後に後熱処理を行ったりしてもよい。このような予熱や後熱処理を行うことで、延伸後のRe,Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、後熱処理はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、後熱処理はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱温度は、延伸温度±50℃が好ましく、より好ましくは延伸温度±35℃、さらに好ましくは延伸温度±20℃である。後熱処理後のボーイングが進行方向に凸の場合は延伸温度より下げるのが好ましく、進行方向に凹の場合は延伸温度より高くするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
後熱処理の温度は、延伸温度より好ましくは1℃〜50℃、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くする。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下である。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
このように熱固定温度<延伸温度<予熱温度の関係を満たすように温度設定をすることがより好ましい。
延伸されたシクロオレフィン樹脂フィルムは、延伸方向に直交する方向に収縮させる。通常、延伸工程を経たフィルムは延伸方向と直交方向に残存応力が溜まり易くなっており、熱または湿度が変動することで寸法変化が起こりやすい。このようなシクロオレフィン樹脂フィルムの寸法変化が起こると、Nz値が大きく変動してしまうため、フィルムの耐久性の面で好ましくない。本発明の光学補償フィルムの製造方法では、延伸工程後に延伸方向と直交方向に収縮工程を行うことにより、シクロオレフィン樹脂フィルムの残存応力を解消し、得られたシクロオレフィン樹脂のNz値の変動を所望の範囲内に調整することができる。さらに、延伸方向と直交する方向に収縮を行うことによりシクロオレフィン樹脂フィルムの厚みの減少も抑制でき、厚み方向のレターデーション値(Rth)を選択的に低減して本発明範囲のNz値を満足することができる。
収縮する方向は、延伸方向が長手方向だけである場合は幅方向であり、延伸方向が幅方向だけである場合は長手方向であり、延伸方向が長手および幅方向の両方向である場合は長手方向でも幅方向でも両方向でも構わない。Nz値が1.0を超え1.5以下の範囲内のフィルムを製造する場合には、特に長手方向に収縮することが好ましい。
延伸により延伸方向に伸張されるが、これに伴う物質収支を合わせるため延伸と直交方向、厚み方向が減少する。この厚み減少に伴いフィルム面が圧縮され面内に分子が配向し面配向が強くなる。この結果Rthが増加する。しかし、長手方向に収縮を行うことで厚み減少を抑制でき低いRthを実現できる。即ち、長手方向に収縮することで好ましくはRth<Re×1.5、より好ましくはRth<Reを実現できる。さらにこの長手方向の収縮により延伸後のフィルムの熱収縮を抑制する効果もあり、80℃に100時間保持した後の熱収縮率を0.5%以下、より好ましくは0.3%以下にできる。
幅方向の延伸はクリップでフィルム両端を拡幅することにより行われる(テンター延伸)が、延伸方向と直交する方向の収縮を促し厚み方向の収縮を促進するために、幅方向の延伸と上記予熱を行った後にテンター内のクリップの搬送速度を延伸部入口より遅くする。幅方向の延伸と長手方向の収縮を同時に行うと、面内に延伸と伸張が同時に発生し残留歪が発生し易いうえ、面内の均一性が低下し易いが、本発明の製造方法のように幅方向の延伸を行った後に予熱してから長手方向に収縮させればこのような問題は生じない。幅方向の延伸後に長手方向の収縮を行うには、例えば延伸と収縮で別のテンターレールを用意し、速度を独立に制御できるようにすることで達成でき、特開平6−210726号公報、特開平6−278204号公報、特開平11−77825号公報、特開2004−195712号公報、特開2006−142595号公報等に記載のようなものを使用することができる。
また、二軸延伸機を用いて行うことも可能である。具体的には、幅方向の延伸と長手方向の収縮とを任意の条件で自動的に行うことができる二軸延伸機を用いて行うことができる。例えば、特開2003−211533号公報、特開平6−210726号公報、特開平6−278204号公報、特開平11−77825号公報、特開2000−246795号公報、特開2004−106434号公報、特開2004−195712号公報、特開2006−142595号公報、特開2006−22916号公報に記載の装置を使用することができる。具体的には、市金工業社製の高機能薄膜装置(商品名FITZ)等が使用できる。この装置は、長手方向(フィルムの搬送方向)の延伸倍率と幅方向の収縮倍率を任意に設定できる。
この方法では幅方向の延伸を行った後(すなわちテンターから出た後)、フィルムを2対以上のニップロールを設けた熱処理ゾーンに挿入し、出口側のニップロールより入口側のニップロールの搬送速度を早くすることで達成できる。この熱収縮ゾーンではフィルムの収縮は長手方向だけでなく幅方向にも発生するため、長手方向の収縮を優先して発現させるために、熱処理ゾーンの縦横比(ゾーン長を入口側フィルム幅で割った値)を0.01〜2にすることが好ましく、0.05〜1.6にすることがより好ましく、0.1〜1.3にすることがさらに好ましい。熱処理ゾーンの加熱方法は、ニップロール間に熱処理ゾーンやヒーターを設けて行ってもよく、またニップロールを加熱しシクロオレフィン樹脂フィルムを加熱してもよい。このようにして出口側の搬送速度を下げる収縮法は、搬送張力を弱くしただけの熱処理とは効果が全く異なる。即ち搬送張力低下だけでは上記のようなネックインを促すような効果は全く発生しない。なお、この収縮処理は幅方向の延伸後にオンラインで行ってもよいし、幅方向の延伸後にフィルムを巻き取った後にオフラインで行ってもよい。好ましいのはオンライン処理である。
幅方向の延伸後にチャック上でシクロオレフィン樹脂フィルムを搬送方向にスリップさせることで長手方向に収縮させることができる。即ち、チャックにシクロオレフィン樹脂フィルムが搬送方向に滑るような機構を設けておくことにより長手方向に収縮させることができる。このような機構は特に限定されないが、例えばチャックのクリップ部に搬送方向に滑車を設置することでも達成でき、またクリップのシクロオレフィン樹脂フィルム把持面に滑性の素材(例えばテフロン(登録商標))を貼り付けることでも達成できる。
幅方向の延伸後(すなわちテンターから出た後)、フィルムを低張力で熱処理するとフィルムは長手方向と幅方向に収縮しようとするが、この時フィルムをロール間に搬送させることで、ロールとフィルムの摩擦力により幅方向の収縮を抑制して長手方向の収縮を優先して発現させることができる。
フィルムの幅方向の収縮を抑制するために必要な摩擦力を得るために、フィルムがロール上をラップしている長さ(W)と、ロール間でフィルムがロールと接触していない長さ(G)の比(W/G)は0.01〜3が好ましく、より好ましくは0.03〜1、さらに好ましくは0.05〜0.5である。この範囲を超えるとロール間が長くなり摩擦力が低下し幅方向に収縮が発生してReが低下、Rth/Reが上昇し易いうえ、縦皺が発現し易くなってしまう傾向がある。一方、W/Gがこの範囲未満では延伸で発生した残留歪が解消せず熱寸法変化が増大し易くなってしまう傾向がある。
ロールの数は2本〜100本が好ましく、より好ましくは3本〜50本、さらに好ましくは4本〜20本である。好ましいロールの直径は5cm〜100cmであり、より好ましくは10cm〜80cm、さらに好ましくは15cm〜60cmである。
本発明の光学補償フィルムの製造方法では、収縮工程で得られたシクロオレフィン樹脂フィルムをさらに延伸および/または収縮する工程を含んでもよい。このように追加延伸収縮を行うことでフィルムのレターデーションを微調整することができる。
本発明の光学補償フィルムの製造方法では、収縮工程で得られたシクロオレフィン樹脂フィルム表面を表面処理する工程を含むことが好ましい。
本発明で用いることができる表面処理の方法としては、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を挙げることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.13〜2700Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も好ましいグロー放電処理である。これらの中でも好ましいのがグロー放電処理、コロナ処理、火炎処理であり、さらに好ましのがコロナ処理である。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、機能層との接着のために下塗り層を設けることも好ましい。この層は前記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
本発明の光学補償フィルムの製造方法では、収縮工程で得られたシクロオレフィン樹脂フィルム上に配向膜を形成する工程を含むことが好ましい。
配向膜は、直接シクロオレフィン樹脂フィルム上に形成しても硬化性組成物をシクロオレフィン樹脂表面上に塗布し、熱および/または電離放射線下で硬化してもよいが、硬化性組成物をシクロオレフィン樹脂表面上に塗布し、熱および/または電離放射線下で硬化して、配向膜を形成する方が好ましい。さらに、硬化膜組成物を塗布した後に硬化膜組成物を乾燥させることがより好ましい。
本発明の光学補償フィルムの製造方法で好ましく用いられるラビング処理の方法としては、ラビング装置によってフィルム搬送方向に対して逆方向にラビングロールを回転させる方法が好ましく挙げられる。
ラビング処理工程は、上記の配向膜形成工程中において硬化膜組成物を塗布し、熱および/または電離放射線下で硬化させて硬化膜を得た後に行うか、またはポリマー樹脂をコロナ放電処理もしくは大気圧プラズマ処理してポリマー層を得た後に行うことができる。配向膜形成工程中で得られたこれらの硬化膜やポリマー層をラビング処理することで配向膜を得ることができる。
本発明の光学補償フィルムの製造方法では、除塵処理工程を含むことが好ましい。除塵処理は、前記表面処理工程と配向膜形成工程の間に行っても、配向膜のラビング処理工程後に行っても、これら両工程後に行ってもよい。
本発明の光学補償フィルムの製造方法で好ましく用いられる除塵処理方法は、超音波を用いた方法である。
本発明の光学補償フィルムの製造方法では、収縮工程後のシクロオレフィン樹脂フィルム上に光学異方性層を形成する工程を含む。光学異方性層形成は、配向膜形成工程後に配向膜上に形成してもよいし、直接収縮工程後のシクロオレフィン樹脂フィルム上に形成してもよい。このうち、配向膜形成後に配向膜状に形成することが好ましい。
本発明の光学補償フィルムの製造方法で好ましく用いられる光学異方性層形成方法は、公知のワイヤーバー等を用いた塗布による方法である。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書参照)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書参照)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書参照)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書参照)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書参照)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書参照)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書参照)が含まれる。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
フッ素系化合物としては、従来公知の化合物が挙げられるが、具体的には、例えば特開2001−330725号公報の段落番号[0028]〜[0056]に記載のフッ素系化合物等が挙げられる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
均一性の高い光学補償フィルムを作製する場合には、前記塗布液の表面張力が25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であることがさらに好ましい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
本発明の光学補償フィルムは、さまざまな光学用途に使用することができる。なかでも、偏光板の作製や液晶表示装置の製造に好ましく用いられる。
現在、市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることによって作製するのが一般的である。偏光膜としては、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、発行日2001年3月15日、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
詳細な偏光板の作製方法および偏光板特性は、特開2005−128520号公報の段落番号〔0008〕〜〔0020〕、特開2005−266222号公報の段落番号〔0007〕〜〔0013〕、特開2005−138375号公報の段落番号[0083]〜[0113]、特開2006−2026号公報の段落番号[0138]〜[0145]、特開2006−45500号公報の段落番号[0105]〜[0111]に記載するものが好ましく用いることができる。
本発明は、偏光膜と、本発明の光学補償フィルムとを少なくとも有する偏光板が好ましい。本発明の偏光板の一例は、偏光膜の一方の表面の保護フィルムとして、本発明の光学補償フィルムを有する偏光板である。保護フィルムとして用いる場合は、支持体である環状ポリオレフィン系ポリマーフィルムの裏面(配向膜が形成されていない側の面)を、本発明の表面処理と同様の親水化処理をしてから偏光膜の表面に貼り付けるのが好ましい。本態様では、Re、Rthの湿度変化に対する変動が小さい環状ポリオレフィン系ポリマーフィルムが、偏光膜と液晶セルとの間に貼り付けられているので、環境湿度による表示特性(色味や視野角等)の変動が大幅に軽減される。
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムとしては、セルロースアシレートフィルムや環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等が用いられる。
本発明の光学補償フィルムおよび上記偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。特に以下に説明するTNモード液晶表示装置に好ましく適用することができる。
TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性化合物が寝た配向状態にある。
セル中央部分の棒状液晶性化合物に対しては、ホメオトロピック配向(円盤面が寝ている水平配向)のディスコティック液晶性化合物もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性化合物に対しては、ハイブリット配向(長軸の傾きが偏光膜との距離に伴って変化している配向)のディスコティック液晶性化合物で補償することができる。
また、セル中央部分の棒状液晶性化合物に対しては、ホモジニアス配向(長軸が寝ている水平配向)の棒状液晶性化合物もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性化合物に対しては、ハイブリット配向のディスコティック液晶性化合物で補償することもできる。
ホメオトロピック配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が85〜95度の状態で配向している。
ホモジニアス配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が5度未満の状態で配向している。
ハイブリット配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が15度以上であることが好ましく、15度〜85度であることがさらに好ましい。
(透明)支持体もしくはディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層、さらにはホメオトロピック配向したディスコティック液晶性化合物とホモジニアス配向した棒状液晶性化合物の混合体からなる光学異方性層は、Rthレタデーション値が40nm〜200nmであり、Reレタデーション値が0〜70nmであることが好ましい。
ホメオトロピック配向(水平配向)しているディスコティック液晶性化合物層およびホモジニアス配向(水平配向)している棒状液晶性化合物層に関しては、特開平12−304931号および同12−304932号の各公報に記載されている。ハイブリット配向しているディスコティック液晶性化合物層に関しては、特開平8−50206号公報に記載がある。
(1)Re、RthおよびNz値のバラツキ
フィルムの両端を5cmずつスリットした後、フィルム全幅にわたり等間隔で10箇所、長手方向に10mの間隔で、中央部10箇所を計20箇所サンプリング(3cm×3cmの正方形)した。この時、正方形の各辺を長手方向(すなわちフィルム搬送方向)と幅方向に平行に切り出した。25℃・相対湿度60%の環境下において5時間以上調湿後、前記KOBRA 21ADH又はWRにより、波長589nmにおけるRe、RthおよびNz値を測定した。これらの各測定点におけるRe、RthおよびNzの測定値の平均値を、それぞれのフィルムRe、Rth、Nz値とした。また、各測定点における測定値のうち最大値と最小値を選択し、下記式により計算される値をバラツキとした。バラツキは、Re、RthおよびNzのそれぞれについて計算した。
フィルムを90℃・相対湿度10%の環境下において200時間熱処理後、25℃・相対湿度60%に5時間以上調湿し、波長589nmにおけるRe、Rth、Nz値を上記(1)と同様にして測定し、下記式により熱処理後の変動とした。
フィルム全幅にわたり等間隔で5等分した各点で以下のサンプルを取得した。なお、MDとは長手方向(搬送方向)であり、TDとは幅方向を指す。
長手方向のサンプル:MD15cm×TD5cm
幅方向のサンプル:TD15cm×MD5cm
サンプル片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔に開け、これを25℃・相対湿度10%の室内で24時間以上調湿した。その後、ピンゲージを用いて、パンチ間隔の原寸(L1)を最小目盛り1/1000mmまで測定した。次にサンプル片を25℃・相対湿度80%の室内で24時間以上調湿した後、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。これらを基に下記式にしたがって相対湿度(%RH)あたりの寸法変化率を算出した。なお、寸法変化率は5サンプルの平均値である。
クロスニコルに2枚に偏光板を配置して、この間に試料サンプルを挟み、光学異方性層の正面、および法線から60°まで傾けた方向から観察し、濃度ムラの発生面積を表示画面全面積に対する百分率で表し、これを配向ムラとした。
コンパクトレーザー干渉計(富士写真光機(株)製、F601)を用いて、フィルムの全幅にわたり表面粗さRaを測定した。全幅のRaの平均値を表面粗さRaとした。
走査型示差熱量計(DSC)の測定パンにフィルムを20mg入れ、これを窒素気流中で10℃/分で30℃から120℃まで昇温し、15分間保持した後、30℃まで−20℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温し、ベースラインが低温側から偏奇し始める温度を熱処理前のポリマーフィルムのTgとした。
(1)未延伸シクロオレフィン樹脂フィルムの作成
ポリプラスチックス(株)製TOPAS6013(Tg=130℃;樹脂A)100質量部に、安定剤としてアデカスタブAO−60(旭電化工業株式会社製)0.6質量部と、紫外線吸収剤としてアデカスタブLA−31(旭電化工業(株)製)1.1質量部とを添加し、平均直径3mm、平均長さ5mmの円柱状のペレットに成形した。これを110℃の真空乾燥機で乾燥し、含水率を0.05%以下とした後、(Tg−10)℃になるように調整したホッパーに投入した。なお、ホッパーから窒素パージし、押出機内の酸素濃度を0%にコントロールした。
260℃の濾過精度5μmのリーフディスクフィルターにて濾過し、スタティックミキサーを経由してスリット間隔0.8mm、260℃のハンガーコートダイから、3連のキャストロール上にメルト(溶融樹脂)を押出した。各キャストロールの温度は上流側から順に(Tg+5)℃、(Tg+1)℃、(Tg−3)℃に設定した。また、最上流側の第1キャストロールにタッチロールを接触させ、厚み95μmの未延伸フィルムを製膜した。タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの)を採用し、幅1mあたりのクラウン量15μmの鼓状金属弾性ロールを使用した(但し薄肉金属外筒厚みは3mmとした)。タッチロール圧は4.5MPa、タッチロール温度は(Tg−5)℃に調温した。これらの溶融製膜条件を下記表1に記載した。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。幅1.5mのフィルムを3000mの長さで巻き取った。
(1)で得られた未延伸シクロオレフィン樹脂フィルムを短スパン延伸ニップロール(L/W=0.1)を用いて、(Tg+10)℃で長手方向に1.05倍延伸し、延伸したフィルムを同時2軸延伸機を用いてテンターでクリップを拡幅することにより(Tg+20)℃の温度で幅方向に1.55倍延伸し、同時にクリップ搬送速度をテンター入口より出口を遅くすることで長手方向に10%収縮させた。ここで、Lはニップロール間の距離を、Wはフィルムの幅を表す。
なお、長手方向又は幅方向の延伸倍率と、長手方向の収縮率は下記式にしたがって求めた。なお、下記式の長さとはフィルムの長手方向又は幅方向の長さである。
また、得られたフィルムを90℃・相対湿度10%の環境下で200時間熱処理したところ、熱処理前後のNz値の変動は0.2%であった。これらの延伸条件とフィルム物性測定結果を下記表1に記載した。
(3ー1)表面処理
(1)で得られた延伸シクロオレフィン樹脂フィルムに対して下記条件でコロナ放電処理を行った。
電極:VETAPONE社製 Coron−Plus
ジェネレーター:CP1C
出力:900W
フィルム搬送速度:6m/分
その後、超音波除塵機を用いて除塵処理を行った。
(3−1)でコロナ放電処理と除塵処理をしたシクロオレフィン樹脂フィルム上に、下記組成の配向膜塗布液を#24のワイヤーバーで24ml/cm2のウエット塗布量で塗布して、100℃で2分間乾燥し、その後130℃で2.5分間加熱し、続いて、300mJ/cm2の照射量のUV光を照射して、配向膜を形成した。配向膜の厚さは、1.0μmであった。また、上記のコロナ放電処理装置は配向膜を塗工する製造工程の送り出し部の近辺に配置し、上記超音波除塵機はコロナ放電処理装置の直後に配置し、更にその後に配向膜を塗工するコーター部を配置し、続いて乾燥ゾーン、熱硬化ゾーン、紫外線照射装置を配置し、最後に巻き取り部にてロール状態で巻き取り、連続製造した。
(配向膜塗布液)
下記式で表される変性ポリビニルアルコール 40質量部
水 728質量部
メタノール 228質量部
グルタルアルデヒド 2質量部
クエン酸 0.08質量部
クエン酸モノエチルエステル 0.29質量部
クエン酸ジエチルエステル 0.27質量部
クエン酸トリエチルエステル 0.05質量部
(3−2)で作成した配向膜を塗工したロール状態のフィルムを、光学異方性層を塗工する製造工程の送り出しに配置して送り出し、その先に配置されたラビング装置によって搬送方向に沿って逆回転にラビングロールを回転させて配向膜の表面をラビング処理し、続いてラビング処理面を超音波除塵した。除塵後に、ラビング処理面に、下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物を#2のワイヤーバーで3.5ml/cm2のウエット塗布量で塗布して、120℃で1.5分間乾燥して、配向させ、その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量200mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層を形成し、巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取った。光学異方性層の厚さは、1.3μmであった。得られたフィルムの光学異方性層のみをガラス板に転写してKOBRA 21ADHにて測定波長589nmでの光学特性を測定した結果、Re=28nm、Rth=91nmであった。光学補償フィルムの光学特性を測定した結果、Re=109nm、Rth=170nmであった。
(光学異方性層形成用液晶組成物)
メチルエチルケトン 102.00質量部
前記円盤状液晶性化合物−1 41.01質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート 4.06質量部
(大阪有機化学(株)製、V360)
セルロースアセテートブチレート 0.11質量部
(イーストマンケミカル社製、CAB531−1)
セルロースアセテートブチレート 0.34質量部
(イーストマンケミカル社製、CAB551−0.2)
下記構造式で表される重合開始剤 1.80質量部
下記構造式で表されるフルオロ脂肪族基含有ポリマー1 0.03質量部
下記構造式で表されるフルオロ脂肪族基含有ポリマー2 0.23質量部
このようにして得られた光学補償フィルムをクロスニコル配置した偏光板に挟んで、光学補償フィルムの配向ムラを観察したところ、配向ムラは0%であった。
また、光学補償フィルムを前述の測定方法に従って90℃・相対湿度10%の環境下で200時間熱処理後、ReおよびRthの変動、フィルムの長手及び幅方向の湿度寸法変化率を測定し、結果を下記表1に記載した。
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%、KI濃度3質量%のヨウ素水溶液(30℃)中に60秒浸漬して染色し、次にホウ酸濃度4質量%、KI濃度3.5質量%の水溶液(55℃)中に60秒浸漬している間に元の長さの5.5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
これとは別に、セルロースアシレートフィルム(富士フイルム(株)製、フジタックTF80UL)を濃度2.0モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記(3)で得られた光学補償フィルムの液晶塗布層の反対面にコロナ放電処理を行って、対純水の接触角を25°以下にした。これを下記条件で鹸化処理を行ったセルロースアシレートフィルムと組合せて前記の偏光子を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ偏光板を得た。
このとき、偏光子および偏光子両側の保護膜はロール形態で作製されているため各ロールフィルムの長手方向が平行となっており連続的に貼り合わされる。従って光学補償フィルムロール長手方向と偏光子吸収軸とは平行な方向となった。
(6−1)TN液晶パネルの作製
TN型液晶セルを使用した22インチの液晶表示装置(ACER製 AL2216W)に設けられている一対の偏光板(上側偏光板、及び下側偏光板)を剥がし、代わりに(5)で作製した偏光板を、液晶塗布光学異方性層が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けて、偏光板を有する液晶表示装置を作製した。このとき、観察者側の偏光板(上側偏光板)の透過軸と、バックライト側の偏光板(下側偏光板)の透過軸とが直交するように各偏光板を配置した。これは熱処理前の偏光板を有する液晶表示装置とする。
さらに(5)で作製した同様な偏光板を90℃・相対湿度10%の環境下で200時間熱処理した。熱処理後、25℃・相対湿度60%に8時間調温、調湿後、同様に液晶塗布光学異方性層が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けて、偏光板を有する液晶表示装置を作製した。このとき、観察者側の偏光板(上側偏光板)の透過軸と、バックライト側の偏光板(下側偏光板)の透過軸とが直交するように各偏光板を配置した。これは熱処理後の偏光板を有する液晶表示装置とする。
このようにして熱処理前後の偏光板を有する液晶表示装置に対し下記評価を実施した。結果は表1に示した。
作製された熱処理前後の偏光板を有する液晶表示装置を、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で色味、コントラスト比(白表示時の透過率/黒表示時の透過率)を測定した。コントラストはコントラスト比(白表示時の透過率/黒表示時の透過率)から算出した値である。この測定は画面全域を100等分した点で行い、コントラストの最大値と最小値の差を平均値で割り百分率で示したコントラストムラとして評価した。また、熱処理前後のコントラスト平均値の差を熱処理前のコントラスト平均値で割り百分率で示したコントラスト変動として評価した。以下の基準で評価し、結果を下記表1に示す。
(評価基準)
◎: コントラスト1100以上、
コントラストムラが0.2未満、
熱処理前後コントラストの変化率が3%未満
〇: コントラスト900以上1100未満、
コントラストムラが0.2以上2.0未満、
熱処理前後コントラストの変化率が3%以上8%未満
△: コントラスト700以上900未満、
コントラストムラが2.0以上5.0未満、
熱処理前後コントラストの変化率が8%以上15%未満
×: コントラスト700未満、コントラストムラが5.0以上、
熱処理前後コントラストの変化率が15%以上
作製された熱処理後の偏光板を有する液晶表示装置について、コントラスト視野角を評価した。
具体的には、常温常湿(25℃・相対湿度60%)の部屋で1週間放置した前記液晶表示装置を測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で色味、コントラスト比(白表示時の透過率/黒表示時の透過率)を測定した。コントラストはコントラスト比(白表示時の透過率/黒表示時の透過率)から算出した値である。コントラスト比が10以上で黒表示時の階調反転のない極角範囲を測定し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。
(評価基準)
[コントラスト視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない極角範囲)評価基準]
◎: 上下左右で極角80°以上
〇: 上下左右の内、3方向で極角80°以上
△: 上下左右の内、2方向で極角80°以上
×: 上下左右の内、1方向で極角80°以上
作製された熱処理前の偏光板を有する液晶表示装置を、25℃・相対湿度10%の環境下で48時間調湿後、ELDIM社製、EZ−Contrast160Dを用いて液晶表示装置の視野角測定を行った。続いて、25℃・相対湿度80%の環境下で48時間調湿後、液晶表示装置の視野角測定を行った。相対湿度10%と相対湿度80%で測定した上下左右の視野角変動により、下記基準にて評価した。
(評価基準)
◎: 上下左右の視野角変動が0°以上1°未満
〇: 上下左右の視野角変動が1°以上3°未満
△: 上下左右の視野角変動が3°以上5°未満
×: 上下左右の視野角変動が5°以上
実施例2〜6は、タッチロールの幅1mあたりのクラウン量およびタッチロール圧を表1に示すように変更した以外は、実施例1と全く同様の方法で光学補償フィルム、偏光板およびTN液晶パネルを作成した。製造条件と各物性を下記表1に記載した。
実施例7〜10は、製造条件と使用原料樹脂を下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と全く同様の方法で光学補償フィルム、偏光板およびTN液晶パネルを作成した。製造条件と各物性を下記表1に記載した。
実施例1の光学異方性層形成用液晶組成物の円盤状液晶性化合物−1の代わりに、前記円盤状液晶性化合物−2を用いて光学異方性層の膜厚を1.1μmにした以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを作製し、実施例1と同様に評価した。光学補償フィルムのReは75nm、Rthは148nmであった。製造条件と各物性を下記表1に記載した。
比較例1は、タッチロールのクラウン量を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例6と全く同様の方法で光学補償フィルム、偏光板およびTN液晶パネルを作成した。製造条件と各物性を下記表1に記載した。
[比較例2]
比較例2は、タッチロールのクラウン量、長手方向および幅方向に延伸を行った後長手方向の収縮を実施しないこと以外は、比較例1と全く同様の方法で光学補償フィルム、偏光板およびTN液晶パネルを作成した。製造条件と各物性を下記表1に記載した。
比較例3は、タッチロールのクラウン量及びタッチロール圧を下記表1に示すように変更したこと以外は、比較例2と全く同様の方法で光学補償フィルム、偏光板およびTN液晶パネルを作成した。製造条件と各物性を下記表1に記載した。
比較例4は、タッチロールを使用しないこと以外は、実施例1と全く同様の方法で光学補償フィルム、偏光板およびTN液晶パネルを作成した。製造条件と各物性を下記表1に記載した。
比較例5は、延伸シクロオレフィン樹脂フィルムをフジタックTF80ULフィルムに変更したこと以外は、実施例1と全く同様の方法で光学補償フィルム、偏光板およびTN液晶パネルを作成した。製造条件と各物性を下記表1に記載した。
d タッチロールの最小直径
L タッチロールの幅
Claims (1)
- シクロオレフィン樹脂フィルム上に、液晶性化合物を含有する組成物から形成される光学異方性層を少なくとも1層を有する光学補償フィルムの製造方法であって、
幅1mあたりのクラウン量が3〜40μmであるタッチロールを用いた溶融押出成形によりシクロオレフィン樹脂フィルムを形成する製膜工程と、
形成されたシクロオレフィン樹脂フィルムの長手方向または幅方向の少なくとも一方を、それぞれ前記長手方向の延伸倍率を2%〜200%、前記幅方向の延伸倍率を10%〜250%で延伸させる延伸工程と、
前記延伸工程で得られたフィルムを延伸方向に直交する方向に収縮率0.1%〜50%で収縮させる収縮工程と、
前記収縮工程で得られたフィルムの上に、液晶性化合物を含有する組成物から形成される光学異方性層を少なくとも1層形成する工程
を含むことを特徴とする光学補償フィルムの製造方法。
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