JP5270966B2 - アクリルフィルムおよびその製造方法、並びに、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置 - Google Patents

アクリルフィルムおよびその製造方法、並びに、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、光学用アクリルフィルムおよびその製造方法に関し、特に、膜厚が薄く、ダイライン、表面粗さおよびフィルムシワが良好な光学用アクリルフィルムおよびその製造方法および、この光学用アクリルフィルムを用いた光漏れの少ない偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置に関する。
ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と表す)に代表されるアクリル系樹脂は、光学性能に優れ、高い光線透過率や低複屈折率、低位相差の光学等方材料として従来より各種光学材料に適用されている。近年、液晶表示装置やプラズマディスプレイ、有機EL表示装置等のフラットディスプレイや赤外線センサー、光導波路等の進歩に伴い、光学用透明高分子材料の耐熱性に対する要請が高まっていることから、アクリル系樹脂に対しても、耐熱性の高さが要求されるようになってきている。
耐熱性を有するアクリル系樹脂(以下「耐熱アクリル系樹脂」と称する)としては、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体をラクトン環化縮合反応させることによって得られるラクトン環含有重合体(例えば、特許文献1)や、グルタル酸無水物単位を含有する重合体(例えば、特許文献2)、無水マレイン酸単位を含有する重合体(例えば、特許文献3)などが知られている。
一方、これら耐熱アクリル系樹脂は、溶融粘度が高く、熱安定性が悪いという2種の課題を有している。そのため、熱分解しない温度で製膜すると極めて高粘度のポリマーをダイから吐出することになる。このような高粘度のポリマーをダイから吐出すると、せん断応力による表面あれや、レベリング効果が低いことに起因するダイライン、フィルムの外部ヘイズの高さなどが問題となる。
膜厚が90μm〜100μm程度のアクリルフィルムの従来からの製造方法として、タッチロールを用いる方法や溶融製膜法など(例えば、特許文献4および5)が開示されている。しかし、近年では、光学材料用途のアクリルフィルムは、偏光板に組み入れる偏光子やセルロースアシレートフィルムとのサイズを合わせて熱寸法安定性を向上させる観点から、60μm以下の膜厚のアクリルフィルムを未延伸かつ高品位で得られ、かつ生産性も高い製造方法が求められてきている。このような近年の薄膜化の流れに対し、前記製造方法では60μm以下の薄いフィルムを製膜した際に冷却シワが発生しやすい問題があった。一方、60μm以下の薄い膜厚のアクリルフィルムを製造する方法として、100μm以上の厚いアクリルフィルムを一度製膜した後に1.8倍と2.4倍に二軸延伸して薄くする方法(特許文献6参照)が開示されているが、そのような延伸フィルムでは熱寸法安定性の面で問題があった。また、溶液製膜法を用いて60μm以下のアクリルフィルムを製造する方法(特許文献7参照)では、生産性が低い。
なお、溶融製膜法で40μmの未延伸フィルムを得る方法(特許文献8参照)も開示されているものの、従来からの課題であるヘイズの高さの点で問題があることがこれまでに判明している。また、ダイラインや表面粗さおよびフィルムシワについては未検討である。
特開2007−63541号公報 特開2006−241263号公報 特開2007−113109号公報 特開2007−297615号公報 特開2007−98831号公報 特開2007―297615号公報 特開2007−197703号公報 特開2008−83285号公報
さらに、特許文献8記載の方法を本発明者が検討したところ、ダイラインが顕著に発生することが判明した。また、未延伸アクリルフィルムは、延伸アクリルフィルムに比較して寸法変化が小さいため、偏光板に貼り付けた時のコーナーの光もれが起き難い特性があることも判明した。
すなわち、本発明の第一の目的は、膜厚が薄く、ダイライン、表面粗さおよびフィルムシワが良好なアクリルフィルムおよびその製造方法を提供することである。さらに、本発明の第二の目的は、前記アクリルフィルムを用いた光もれが起き難い偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム、およびこれらを用いた液晶表示装置を提供することである。
本発明は、上記の課題を鑑みて、ダイから出たポリマー温度を特定の温度範囲に制御し、フィルムの耳部を特定の幅、かつ、特定の厚み差となるように製膜することにより、未延伸で高品位の膜厚60μm以下のフィルムを溶融製膜法によって得ることを見出したものである。本発明の前記目的は以下の構成を有する本発明により達成される。
[1] ガラス転移温度(Tg)が100℃以上のアクリル系樹脂を含有し、膜厚が20〜60μmであり、ダイラインの高さ及び深さが50nm以下であり、表面粗さ(Ra)が0.005μm〜0.2μm以下であり、かつシワ高さが5mm以下であることを特徴とするアクリルフィルム。
[2] 厚みむらが2.0%以内であり、ヘイズが0.05%〜0.4%であり、かつ残留溶剤が0.3質量%以下であることを特徴とする[1]に記載のアクリルフィルム。
[3] 前記アクリル系樹脂が、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位またはグルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載のアクリルフィルム。
[4] 1μm〜10μmの異物が3個/m2以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のアクリルフィルム。
[5] 面内方向のレターデーション(Re)が0.1nm〜10nmであり、膜厚方向のレターデーション(Rth)が−15nm〜−0.1nmであり、Reの波長分散が0.001nm〜1.5nmであり、Rthの波長分散が0.1nm〜4nmであり、下記(I)式で表される面内方向の複屈折(Re)の測定角依存性(α)が0.001〜0.16であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のアクリルフィルム。
Figure 0005270966
(式中、Pは、下記式(II)で表されるPの値を表し、Re(0)はフィルム表面に対し遅相軸方向を基準に法線方向から測定したReを表す。Re(40)およびRe(−40)はフィルム表面に対し法線から、遅相軸方向を基準に左右(進相軸方向)に40°ずつ傾斜させて測定したReのうち大きい方の値がRe(40)を表し、小さい方の値がRe(−40)を表し、等しい場合はRe(40)およびRe(−40)は同じ値を表す。)
Figure 0005270966
[6] アクリル樹脂のペレットを押出し機に投入して溶融させてメルトを得る工程と、前記ダイからメルトを押出す工程と、前記ダイから押出されたメルトをキャストロール上で固化してフィルムを得る工程と、を含むアクリルフィルムの製造方法において、前記ダイから押出されたメルトをキャストロール上で固化してフィルムを得る工程において該メルトがキャストロールに接触する際の温度が(Tg+100℃)〜(Tg+130℃)であり、さらに、前記固化したフィルムにフィルム中央部よりも10〜100μm厚い耳部を形成する工程を含み、該耳部の幅がフィルム両端から10mm以上とであることを特徴とするアクリルフィルムの製造方法(ここで、Tgはアクリル樹脂のガラス転移温度を表す)。
[7] 前記フィルムを2本目以降のキャストロールを用いて搬送する工程を含み、かつ、2本目以降の全てのキャストロールと該フィルムが接触する時のそのキャストロールとフィルム間の温度差がそれぞれ2℃未満であることを特徴とする[6]に記載のアクリルフィルムの製造方法。
[8] 前記ダイから押出されたメルトをキャストロール上で固化してフィルムを得る工程において、前記メルトがダイからキャストロールへ到達するまでの少なくとも一部において該メルトを加熱および/または保温する工程を含むことを特徴とする[6]または[7]記載のアクリルフィルムの製造方法。
[9] 前記ダイからメルトを押出す工程において、ダイリップのクリアランス(C)と製膜後のフィルムの厚み(T)の比(C/T)が8〜30であることを特徴とする[6]〜[8]のいずれか一項に記載のアクリルフィルムの製造方法。
[10] 前記ダイからメルトを押出す工程において、ダイリップの温度をダイの温度より1℃〜30℃高くすることを特徴とする[6]〜[9]のいずれか一項に記載のアクリルフィルムの製造方法。
[11] 前記ダイから押出されたメルトを固化して製膜する工程において、さらにキャストロールおよびタッチロールを用いて0.1MPa〜10MPaのタッチ圧で挟み込む工程を含み、かつ、前記キャストロールの温度と前記タッチロールの温度がともに(Tg−30℃)〜(Tg+10℃)であることを特徴とする[6]〜[10]のいずれか一項に記載のアクリルフィルムの製造方法(ここで、Tgはアクリル樹脂のガラス転移温度を表す)。
[12] 前記タッチロールと前記キャストロール表面の算術平均高さRaが100nm以下であり、該タッチロールの外周速度Vtrと該キャストロールの外周速度Vcdの外周速度差が0.1〜1.5%であることを特徴とする、[11]に記載のアクリルフィルムの製造方法。
[13] 前記タッチロールが弾性を有する金属ロールであることを特徴とする[11]または[12]に記載のアクリルフィルムの製造方法。
[14] [6]〜[13]のいずれか一項に記載の製造方法で製膜したことを特徴とするアクリルフィルム。
[15] [1]〜[5]および[14]のいずれか一項に記載のアクリルフィルムを用いた偏光板。
[16] [1]〜[5]および[14]のいずれか一項に記載のアクリルフィルムを用いた光学補償フィルム。
[17] [1]〜[5]および[14]のいずれか一項に記載のアクリルフィルムを用いた反射防止フィルム。
[18] [1]〜[5]および[14]のいずれか一項に記載のアクリルフィルムを用いた液晶表示装置。
本発明のアクリルフィルムは、膜厚が薄く、ダイライン、表面粗さおよびフィルムシワが良好であるため、光学用途のアクリルフィルムとして好適に用いることができる。本発明のアクリルフィルムを用いた本発明の偏光板は、使用したときの光漏れを抑制することができる。また、本発明のアクリルフィルムの製造方法を用いれば、上述の特徴を有する本発明アクリルフィルムを効率よく製造することができる。
さらに、本発明に係る偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム、液晶表示装置は優れた光学特性を有する。
以下において、本発明のアクリルフィルム、その製造方法、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム、液晶表示装置などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書中において、特に特定しない場合は “アクリルフィルム”はメタクリル系フィルムおよびアクリル系フィルムを表す。一方、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表す。
[アクリル樹脂]
本発明のアクリル樹脂とは、主成分として、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸の誘導体を重合して得られる樹脂およびその誘導体を含有する樹脂であり、本発明の効果を損なわない限り特に限定されずに公知の(メタ)アクリル酸系熱可塑性樹脂を用いることができる。前記(メタ)アクリル酸の誘導体としては、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステルを挙げることができる。前記メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等をあげることができる。前記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を挙げることができる。
その他の(メタ)アクリル酸の誘導体であるアクリル樹脂として、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
Figure 0005270966
前記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を示す。
本発明のアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。本発明のアクリル樹脂は、アクリル樹脂1種の単重合体であっても、アクリル樹脂2種以上の共重合体であっても、少なくとも1種のアクリル樹脂とその他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度(以下Tgともいう)を高める観点からアクリル樹脂とその他の樹脂の共重合体との共重合体であることが好ましい。
(共重合成分)
本発明のアクリル樹脂に共重合可能なアクリル樹脂以外の単量体としては、スチレン及びo−メチルスチレン,p−メチルスチレン,2,4−ジメチルスチレン,o−エチルスチレン,p−エチルスチレン,p−tert−ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン、α−メチルスチレン,α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、ラクトン環単位、グルタル酸無水物単位、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、マレイン酸等の不飽和酸類、グルタルイミド単位等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性を向上させる観点から、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−メチルマレイミドなどのN−置換マレイミド、ラクトン環単位、グルタル酸無水物単位、無水マレイン酸単位およびグルタルイミド単位などが好ましく、Tgを高める観点から、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位またはグルタル酸無水物単位がより好ましい。
(ラクトン環単位)
ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中は主鎖中ともいう)に形成されることにより、共重合体であるアクリル樹脂に高い耐熱性が付与され、かつ、Tgも高くなるため好ましい。また、耐熱性向上およびフィルム製造時の泡やシルバーストリーク抑制の観点から、ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率は十分に高いことが好ましい。
本発明においてアクリル樹脂との共重合に用いられる前記ラクトン環単位としては、特に制限はないが、特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号等の各公報に記載のものを挙げることができる。なお、これらは本発明を限定するものではなく、これらは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
主鎖中のラクトン環単位の構造は、4〜8員環であることが好ましく、構造の安定性から5〜6員環であることがより好ましく、6員環であることが特に好ましい。主鎖中のラクトン環単位の構造が6員環である場合、下記一般式(2)で表される構造や特開2004−168882号公報で表される構造などが挙げられるが、主鎖にラクトン環単位の構造を導入する前の重合体を合成する上において重合収率が高い点や、ラクトン環構造の含有割合の高い重合体を高い重合収率で得易い点や、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性が良い点で、下記一般式(2)で表される構造であることが特に好ましい。
Figure 0005270966
前記一般式(2)中、R11〜R13は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。
前記有機残基は、炭素数が1〜20の範囲内であれば特には限定されないが、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、−CN基などが挙げられる。また、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
前記R11〜R13の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
ラクトン環単位含有アクリル樹脂の製造方法については、特に限定はされないが、好ましくは、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得た後に、得られた重合体を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環化縮合工程を行うことによってラクトン環含有重合体を得ることができる。
(無水マレイン酸単位)
無水マレイン酸構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、共重合体であるアクリル樹脂に高い耐熱性が付与され、かつ、Tgも高くなるため好ましい。
本発明においてアクリル樹脂との共重合に用いられる前記無水マレイン酸単位としては、特に制限はないが、特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号の各公報に記載のものや、マレイン酸変性樹脂を挙げることができる。なお、これらは本発明を限定するものではない。この中でも、特開2007−113109号公報に記載の樹脂およびマレイン酸変性MAS樹脂(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン共重合体、例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)を好ましく使用することができる。なお、これらは本発明を限定するものではなく、これらは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。また、無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂を製造する方法は特に制限がなく公知の方法を用いることができる。
前記マレイン酸変性樹脂としては、得られるポリマー中に無水マレイン酸単位が含まれるものであれば制限はなく、例えば、(無水)マレイン酸変性MS樹脂、(無水)マレイン酸変性MAS樹脂(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン共重合体)、(無水)マレイン酸変性MBS樹脂、(無水)マレイン酸変性AS樹脂、(無水)マレイン酸変性AA樹脂、(無水)マレイン酸変性ABS樹脂、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンなどが挙げられる。
前記無水マレイン酸単位は、下記一般式(3)で表される構造である。
Figure 0005270966
前記一般式(3)中、R21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。
前記有機残基は、炭素数が1〜20の範囲内であれば特には限定されないが、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖もしくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、−CN基などが挙げられる。また、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
前記R21およびR22の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
前記R21およびR22がそれぞれ水素原子を表す場合は、固有複屈折を調節する観点から、さらにその他の共重合成分を含むことも好ましい。このような3元系以上の耐熱性アクリル樹脂として、例えば、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体を好ましく用いることができる。
(グルタル酸無水物単位)
グルタル酸無水物構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、共重合体であるアクリル樹脂に高い耐熱性が付与され、かつ、Tgも高くなるため好ましい。
本発明においてアクリル樹脂との共重合に用いられる前記無水マレイン酸単位としては、特に制限はないが、特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918号等の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。なお、これらは本発明を限定するものではなく、これらは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
前記グルタル酸無水物単位は、下記一般式(4)で表される構造である。
Figure 0005270966
前記一般式(4)中、R31およびR32は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
前記R31およびR32の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
このようなグルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂は、グルタル酸無水物単位を与える不飽和カルボン酸単量体と不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体とを共重合体とした後、該共重合体を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコールおよび/または脱水による分子内環化反応を行わせることにより製造することができる。
(その他の共重合成分)
また、前記アクリル系樹脂は、耐熱性を損なわない範囲で共重合可能なその他の単量体成分を共重合した単位を有していても良い。共重合可能なその他の単量体成分としては、具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、2−スチリル−オキサゾリン、アクリロニトリル等のニトリル系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル類、グルタルイミド単位等が挙げられる。
本発明のアクリル樹脂は、前記ラクトン環単位を含むアクリル樹脂、前記無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂および前記グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂が好ましく、前記ラクトン環単位を含むアクリル樹脂および前記無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂がより好ましい。
一般にアクリル樹脂は熱分解しやすいことが知られており、ラクトン環単位を含むアクリル系樹脂、無水マレイン酸単位を含むアクリル系樹脂およびグルタル酸無水物単位を含むアクリル系樹脂は一般的なアクリル樹脂よりもさらに熱分解しやすい。また、アルカリ樹脂は熱分解しない温度で製膜すると極めて高粘度で製膜する必要が生じるため、このような高粘度のポリマーをダイから吐出すると、せん断応力による表面あれや、レベリング効果が低いことに起因するダイライン、フィルムの外部ヘイズの高さなどが問題となる。一方、ラクトン環単位を含むアクリル系樹脂、無水マレイン酸単位を含むアクリル系樹脂およびグルタル酸無水物単位を含むアクリル系樹脂は一般的なアクリル樹脂はTgが高く、かつ光線透過率も高いという物性を有しているため、液晶表示装置用の材料として好ましい。
このような熱分解し易いTgが100℃以上のアクリル系樹脂、中でもさらに熱分解し易いラクトン環単位を含むアクリル系樹脂、無水マレイン酸単位を含むアクリル系樹脂およびグルタル酸無水物単位を含むアクリル系樹脂に対し、本発明のアクリルフィルムの製造方法によれば、本発明の範囲の膜厚が薄く、ダイライン、表面粗さおよびフィルムシワが良好なアクリルフィルムを得ることができる。また、前記アクリルフィルムの製造方法によれば、熱分解に由来する異物の発生を顕著に抑制することができ、フィルム表面の欠陥を改善した本発明のアクリルフィルムを得ることができる。また、前記アクリルフィルムの製造方法によれば、フィルムの厚みむらを抑制することができる。すなわち、熱分解しやすい樹脂を用いてフィルムを製膜する場合は溶融温度を上げられないために高粘度の状態で製膜する必要があり、高粘度のメルトを用いて製膜するとダイ出口で大きな力で延伸されたり、タッチロール法を用いる場合であればタッチロール・チルロール間で大きな力でズリが加えられやすい。その結果、従来のアクリルフィルムの製造方法では、本発明のアクリルフィルムの膜厚、ダイライン、表面粗さおよびフィルムシワを同時に達成することができず、好ましいαの範囲や、好ましいReおよびRthの範囲を超えてしまう。これに対し、本発明のアクリルフィルムの製造方法を用いることで、アクリル樹脂メルトの冷却を制御しつつ、フィルムとキャストロールの密着性を制御できることとなり、高粘度のアクリル樹脂から好適な膜厚、ダイライン、表面粗さ、フィルムシワ、厚みむら、α、ReおよびRthの範囲に制御された本発明のアクリルフィルムを得ることができる。
本発明のアクリル樹脂は、アクリル樹脂を構成する全モノマー中にMMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、30〜80モル%含むものがより好ましい。また、MMA以外にラクトン環単位、無水マレイン酸単位またはグルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましい。前記ラクトン環単位、無水マレイン酸単位およびグルタル酸無水物単位は、アクリル樹脂を構成する全モノマー中に5モル%〜60モル%含まれることが好ましく、10モル%〜50モル%含まれることがより好ましい。
本発明のアクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は100℃以上であり、105℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
本発明のアクリル樹脂の溶融粘度は230℃において1%の歪を1Hzで与えた際に500Pa・s〜10000Pa・sが好ましく、より好ましくは800Pa・s〜7000Pa・s、さらに好ましくは1000Pa・s〜5000Pa・sである。
本発明のアクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000の範囲内、より好ましくは5,000〜1,000,000の範囲内、さらに好ましくは10,000〜500,000の範囲内、特に好ましくは50,000〜500,000の範囲内である。
(添加剤)
本発明のアクリル樹脂には種々の添加剤を併用することも好ましい。このような添加剤としては、可塑剤、安定剤、マット剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、レターデーション調整剤などを挙げることができる。
以下各添加剤を詳細に説明する。
(安定剤)
本発明において、フィルム構成材料中に、安定剤の少なくとも一種を前記アクリル樹脂の加熱溶融前または加熱溶融時に添加することが好ましい。これらは、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等、解明出来ていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために有用である。その時、製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。これらの安定化剤は次に挙げられる効果に用いるがこれらに限定されるものではない。
安定剤の代表的な素材としては、フェノール系安定剤、亜リン酸系安定剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定剤、アミン系安定剤、エポキシ系安定剤、ラクトン系安定剤、アミン系安定剤、金属不活性化剤(スズ系安定剤)などが挙げられる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。
該安定剤は、それぞれ単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることが出来、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、アクリル樹脂の質量に対して安定化剤の添加量は0.001質量%〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%〜0.8質量%である。
(フェノール系安定剤)
本発明において、フィルム構成材料の熱溶融時における安定化のために用いる化合物として有用なヒンダードフェノール系安定剤は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているものなどの、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定剤を添加することが好ましい態様である。好ましいフェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が挙げられる。これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
(亜リン酸系安定剤)
上記の亜リン酸系安定剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
本発明の亜リン酸エステル系安定剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定剤も好ましく用いられ、具体的な化合物として下記にものをあげることが出来る。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例を示すが本発明で用いることができる安定化剤はこれらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPを挙げることが出来る。
(チオエーテル系安定剤)
安定剤としてさらに使用されるチオエーテル系安定剤について記述する。本発明においてアクリル樹脂に添加することができるチオエーテル系安定剤も分子量500以上が好ましく、公知の任意のチオエーテル系安定剤を用いることができる。これらは、住友化学株式会社からスミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−412Sとしても入手可能である。
本発明のエポキシ系安定剤としては、脂肪族、芳香族、脂環族、芳香族脂肪族またはヘテロ環式構造を有し、側鎖としてエポキシ基を有する化合物も有用である。エポキシ基は好ましくは、グリシジル基としてエーテルまたはエステル結合により分子の残基に結合するか、あるいはヘテロ環式アミン、アミドまたはイミドのN−グリシジル誘導体である。これらのタイプのエポキシ化合物は広く公知であり、市販品として容易に入手可能である。これらの素材は特開平11−189706号公報の[0096]〜[0112]に詳細に記載されている。これらのエポキシ系素材は、アデカスタブ O−130P、アデカスタブ O−180A(旭電化工業株式会社)から、市販品として入手できる。
(スズ系安定剤)
上記スズ系安定剤としては、公知の任意のスズ系安定剤を用いることができる。好ましいスズ系安定剤の具体例としては、オクチル錫マレエートポリマー、モノステアリル錫トリス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチル錫ジラウレートが挙げられる。
なお、前記安定剤は後述する酸補足剤や光安定剤を包含する概念である。酸を捕捉することを主眼とする酸捕捉や、光安定性を改善することを主眼とする光安定剤と、前記酸補足剤や光安定剤以外のその他の効果を有する安定剤のどちらを用いても良いが、中でもラジカルを補足するフェノール系安定剤の方が好ましい。
(酸捕捉剤)
アクリル樹脂は高温下では酸によっても分解が促進されるため、本発明のアクリルフィルムにおいては酸捕捉剤を含有することが好ましい。
本発明において有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、および塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4'−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22個の炭素原子を有する脂肪酸と、4〜2個の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、および種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油および他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、およびエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
さらに上記以外に用いることが可能な酸捕捉剤としては、オキセタン化合物やオキサゾリン化合物、或いはアルカリ土類金属の有機酸塩やアセチルアセトナート錯体、特開平5−194788号公報の段落68〜105に記載されているものが含まれる。
なお酸捕捉剤は酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
本発明に用いられるフィルム形成材料中の酸捕捉剤は、少なくとも上記の1種以上選択でき、添加する量は、アクリル樹脂の質量に対して、光安定化剤の添加量は0.001質量%〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%〜2質量%である。
(光安定剤)
光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物などが挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系耐光安定剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることが出来、またこれらヒンダードアミン系耐光安定剤と可塑剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用しても、添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。これらを添加する時期は、溶融物(メルト)作製工程の何れの段階であってもよく、また、溶融物作製工程(メルト調製工程)の最後に添加剤を添加する工程を加えてもよい。
(紫外線吸収剤)
本発明のアクリル樹脂には、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。前記紫外線吸収剤としては、特に制限はないが、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが好ましい例として挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、アクリル樹脂に対する不要な着色が少ないことからもっとも好ましい。これら好ましい紫外線吸収剤は、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。前記紫外線吸収剤の添加量は、調製する溶融物(メルト)の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明に有用な高分子紫外線吸収剤としては、特開平6−148430号公報に記載されている高分子紫外線吸収剤や、紫外線吸収剤モノマーを含むポリマーは制限なく使用出来る。紫外線吸収性モノマーから誘導されるポリマーの重量平均分子量が2000〜30000であることが好ましく、より好ましくは5000〜20000である。
紫外線吸収性モノマーから誘導されるポリマー中の紫外線吸収性モノマーの含有量が1〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは、5〜60質量%である。
本発明に用いることの出来る市販品としての紫外線吸収剤モノマーとして、1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−ビニルオキシカルボニルエチル)ベンゼン、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93の1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)ベンゼンまたはこの類似化合物がある。これらを単独または共重合したポリマーまたはコポリマーも好ましく用いられるが、これらに限定されない。例えば、市販品の高分子紫外線吸収剤として、大塚化学(株)製のPUVA−30Mも好ましく用いられる。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
これらの紫外線吸収剤として、さらに以下の市販品も利用できる。ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 320(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 327(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 328(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、スミソーブ340(住友化学社製)、アデカスタブLA−31(旭電化工業社製)などがある。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100(シプロ化成社製)、シーソーブ101(シプロ化成社製)、シーソーブ101S(シプロ化成社製)、シーソーブ102(シプロ化成社製)、シーソーブ103(シプロ化成社製)、アデカスタブLA−51(旭電化工業社製)、ケミソープ111(ケミプロ化成社製)、UVINUL D−49(BASF社製)などを挙げられる。また、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)やTINUBIN 315(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)がある。さらにサリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201(シプロ化成社製)やシーソーブ202(シプロ化成社製)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501(シプロ化成社製)、UVINUL N−539(BASF社製)がある。これらの中でも、特にアデカスタブLA−31が好ましい。
本発明に用いられる紫外線吸収剤および紫外線吸収性ポリマーの使用量は、化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、紫外線吸収剤である場合には、アクリルフィルム1m2 当たり0.2〜3.0gが好ましく、0.4〜2.0がさらに好ましく、0.5〜1.5が特に好ましい。また、紫外線吸収ポリマーである場合には、アクリルフィルム1m2 当たり0.6〜9.0gが好ましく、1.2〜6.0がさらに好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
(可塑剤)
本発明のアクリルフィルムに可塑剤として知られる化合物を添加することは、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルムの改質観点において好ましい。また本発明で行う溶融流延法においては、用いる可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させる目的、または同じ加熱温度においてアクリル樹脂よりも可塑剤を含むフィルム構成材料の粘度が低下出来る目的を含んでいる。
このような可塑剤の例として、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることが出来るが、特に好ましくは多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、等の非リン酸エステル系可塑剤である。また、特開2003−12859号公報に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
可塑剤は液体であっても固体であっても良く、組成物の制約上無色であることが好ましい。熱的にはより高温において安定であることが好ましく、分解開始温度が150℃以上、さらに200℃以上が好ましい。添加量は光学物性・機械物性に悪影響がなければ良く、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択され、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.001〜50質量部、より好ましくは0.01〜30質量部である。特に0.1〜15質量%が好ましい。以下、本発明に用いられる可塑剤について、その具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
(リン酸エステル系の可塑剤)
具体的には、リン酸シクロアルキルエステル、リン酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていても良い。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでも良く、また置換基同志が共有結合で結合していても良い。 またエチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸エステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていても良い。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでも良く、また置換基同志が共有結合で結合していても良い。
さらにリン酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていても良く、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。上記化合物の中では、リン酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。また特表平6−501040号公報の請求項3〜7に記載のリン酸エステル系可塑剤を用いることも好ましい。さらに、リン酸エステル系可塑剤としては、特開2002−363423号公報の[0027]〜[0034]、特開2002−265800号公報の[0027]〜[0034]、特開2003−155292号公報の[0014]〜[0040]等に記載の揮発性し難いリン酸エステル化合物を好ましい例として挙げることができる。
リン酸エステル系可塑剤の具体例を以下に挙げるが、本発明で用いることができるリン酸エステル系可塑剤はこれらに限定されるものではない。これらの化合物は、旭電化工業株式会社から、アデカスタブFP−500、アデカスタブFP−600、アデカスタブFP−700、アデカスタブFP−2100、アデカスタブPFR等として市販され、入手することができる。また、味の素化学株式会社から、レオフォースBAPPとして入手することができる。
多価アルコールエステル可塑剤、ポリエステル可塑剤、ポリマー可塑剤は、例えば特開2007―231157号公報の[0086]〜[0138]等に記載のものを用いることができ、単独あるいは併用するのが好ましい
本発明ではさらに糖類系可塑剤も好ましい。前記糖類系可塑剤は単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体であるが、これらの単糖または多糖は、分子中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基など)が置換されていることを特徴とする。置換基の例としては、エーテル基、エステル基、アミド基、イミド基などを挙げることができる。 単糖または2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
ポリマー可塑剤も好ましく利用され、具体的には脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は、1,000〜500,000程度が好ましく、特に好ましくは、5,000〜200,000である。1,000以下では揮発性に問題が生じ、500,000を超えると可塑化能力が低下し、アクリル樹脂の機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でも良い。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いても良く、他の可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤、滑り剤およびマット剤等を含有させても良い。
これらの化合物の添加量は、可塑剤がフィルムを構成する樹脂に対して、0.5〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜30質量%の範囲、さらに好ましくは1〜15質量%の範囲にある。これらの化合物の添加量は、上記目的の観点から調整することが出来る。
(マット剤)
本発明では、アクリル樹脂にマット剤(以下、微粒子ともいう)を混合してもよい。前記マット剤としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明におけるアクリル樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、アクリル樹脂フィルムを透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、アクリル樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
また、本発明の製造方法により最終的に得られたアクリル樹脂フィルム中での微粒子の平均二次粒子サイズは0.01〜5μmであることが好ましく、0.02〜3μmであることがより好ましく、0.02〜1μmであることが特に好ましい。ここで、前記微粒子の平均二次粒子サイズは、アクリル樹脂フィルムを透過型電子顕微鏡(倍率10万〜100万倍)で観察し、粒子100個の二次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。
前記無機化合物としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2、V25、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウム等が挙げられる。好ましくは、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2およびV25の少なくとも1種であり、さらに好ましくはSiO2、TiO2、SnO2、Al23およびZrO2の少なくとも1種である。
前記SiO2の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品を使用することができる。また、前記ZrO2の微粒子としては、例えば、アエロジルR976およびR811(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品を使用することができる。またシーホスターKE−E10、同E30、同E40、同E50、同E70、同E150、同W10、同W30、同W50、同P10、同P30、同P50、同P100、同P150、同P250(日本触媒)なども使用することができる。さらに、シリカマイクロビーズP−400、700(触媒化成工業株式会社製品)も使用することができる。また、SO−G1、SO−G2、SO−G3、SO−G4、SO−G5、SO−G6、SO−E1、SO−E2、SO−E3、SO−E4、SO−E5、SO−E6、SO−C1、SO−C2、SO−C3、SO−C4、SO−C5、SO−C6、(株式会社アドマテックス製)も使用することができる。さらに、シリカ粒子8050、同8070、同8100、同8150(株式会社モリテックス 製、水分散物を粉体化)も使用することができる。
さらに架橋アクリル、架橋スチレン等の有機微粒子、特開2008−9378号公報、特開2008−74918号公報に記載の弾性有機微粒子を添加することも好ましい。
無機微粒子および有機微粒子の中でも、製膜時の熱安定性の観点から、無機微粒子、その中でもSiO2が好ましい。
なお、本発明では、予めアクリル樹脂に所望量よりも高濃度の安定剤を有する微粒子含有マスターペレットを作製しておいてもよい。これにより、微粒子の分散性のよいアクリル樹脂ペレットが作製可能となり、優れた面状と表面の滑り性(キシミ防止)を備えたアクリル樹脂フィルムをハンドリング性よく製造することが可能になる。 この時、別途微粒子を含まないアクリル樹脂のマスターペレット(アクリル樹脂マスターペレット)を作製しておくことが必要である。その場合、微粒子含有マスターペレットには、同時に上記の安定剤を含有させておくことが好ましい。また、微粒子含有マスターペレット中の微粒子の添加量は特に制限されないが、好ましくはアクリル樹脂フィルム中の微粒子最終濃度の2〜50倍が好ましく、より好ましくは2〜30倍であり、さらに好ましくは3〜25倍であり、特に好ましくは4〜20倍である。アクリル樹脂マスターペレットと微粒子含有マスターペレットの混合には、前記した混合機を利用することができる。なお、微粒子含有マスターペレットを作製する段階で、微粒子以外の添加剤(安定剤、可塑剤、その他の添加剤など)を一緒に添加してもよく、その場合も微粒子以外の添加剤の濃度は、好ましくはアクリル樹脂フィルム中の所望添加剤最終濃度の2〜50倍が好ましく、より好ましくは2〜30倍であり、さらに好ましくは3〜25倍であり、特に好ましくは4〜20倍である。
(その他の添加剤)
その他の添加剤として、赤外線吸収剤、レターデーション調整剤を添加してもよく、これらの種類は特に制限されない。その他の添加剤の添加量は0〜1000ppmであることが好ましく、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜3質量%であることが特に好ましい。
[アクリルフィルム]
本発明のアクリルフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上のアクリル系樹脂を含有し、膜厚が20〜60μmであり、かつダイラインの高さ及び深さが50nm以下であり、かつ表面粗さ(Ra)が0.005μm〜0.2μmであり、かつフィルムシワ高さが5mm以下である。以下、本発明のアクリルフィルムを詳細に説明する。
(ダイライン)
本発明のアクリルフィルムのダイラインの深さおよび高さは50nm以下であり、35nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。ダイラインの深さおよび高さを50nm以下にすることで、偏光板に貼り付けた時の外観がが向上する。
(表面粗さ)
本発明のアクリルフィルムの表面粗さ(Ra)は5nm〜200nmであり、10nm〜150nmであることが好ましく、15nm〜100nmであることがより好ましい。Raを5nm〜200nmにすることで、フィルムの滑り性が維持できたまま、偏光板に貼り付けた時の色ムラがなくなり好ましい。Raが5nm以上であればフィルムの滑り性が適度となりパスロール上でのスリップを低減して擦り傷が発生することを抑制できる。Raが200nm以下であれば、フィルムの摩擦が適度となり、フィルムをロールに巻き取った後のきしみによる擦り傷の発生を抑制することができる。そのため、Raが5nm〜200nmであれば液晶表示装置に組み込んだ際に光漏れを抑えることができ、好ましい。
(シワ高さ)
本発明のアクリルフィルムのフィルムシワは5mm以下であり、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。フィルムのシワ高さを5mm以下にすることで、偏光板に貼り付けた時の色ムラが良好となり、好ましい
(膜厚)
本発明のアクリルフィルムの製膜後(未延伸)の厚みは20μm〜60μmである。膜厚を20〜60μmとして偏光板に組み込む際に一般的に併用されるTACフィルムと同等の厚みとすると、温度変動による偏光板の寸度安定性がさらに向上し、液晶表示装置の光漏れを抑えることができる。
(厚みむら)
本明細書において、厚みむらとは、フィルム厚みの最大値と最小値の差を求め、その差を膜厚(平均値)で割ったものを百分率で表したもののことをいう。
前記アクリルフィルムの厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜2%が好ましく、より好ましくは0%〜1%、さらに好ましくは0%〜0.5%である。
(ヘイズ)
本発明のアクリルフィルムは、総ヘイズが0.05%〜0.4%であることが好ましく、0.05%〜0.35%であることがより好ましく、0.05%〜0.3%であることが特に好ましい。
前記範囲のRaを達成するために表面を粗らす(凹凸を付与する)とヘイズが上昇しやすく、偏光板に加工して液晶表示板に組み込んだ際にコントラスト低下を引き起こす原因となる。
(残留溶媒)
本発明のアクリルフィルムは、残留溶媒が0.3質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以下であることが特に好ましい。このような残留溶媒量に制御することは、溶融製膜法により製造することで達成しやすい。
(異物)
本発明のアクリルフィルムにおける1μm〜10mmの異物は3個/m2以下であることが好ましく、2個/m2以下であることがより好ましく、1個/m2以下であることが特に好ましい。異物が発生すると、異物の屈折率、波長分散が周囲の正常部と異なり、これが原因で液晶表示板に使用した時に像の歪みが発生し好ましくない。本発明では従来懸念されていた20μm以上のような大きな異物のみならず、1μm〜20μmの小さな異物をも低減させることで、上記のような像の歪みを解消させた。このような歪みの解消は、液晶表示装置の解像力が高くなり、必要性が高くなっている。
[アクリルフィルム]
(面内方向の複屈折(Re)の測定角依存性α)
本発明のアクリルフィルムは、フィルム面法線方向に対してReの測定角依存性(α)が0.001〜0.16である。前記αの好ましい範囲は0.002〜0.13であり、より好ましくは0.003〜0.1である。なお、ここで言うReの入射角依存性αはフィルム表面から測定したαと裏面から測定したαの平均値を指す。さらに本発明のRe、Re(0)は遅相軸方向に測定したものである。即ちフィルム面内で最大屈折率を示す方向(遅相軸方向)の屈折率をnx、それと直交方向(進相軸方向)の屈折率、フィルムの厚みをdとすると、Re、Re(0)は(nx−ny)×dで表される。
本発明において、αは下記式(I)および(II)によって表される。
Figure 0005270966
(式中、Pは、下記式(II)で表されるPの値を表し、Re(0)はフィルム表面に対し遅相軸方向を基準に法線方向から測定したReを表す。Re(40)およびRe(−40)はフィルム表面に対し法線から、遅相軸方向を基準に左右(進相軸方向)に40°ずつ傾斜させて測定したReのうち大きい方の値がRe(40)を表し、小さい方の値がRe(−40)を表し、等しい場合はRe(40)およびRe(−40)は同じ値を表す。)
Figure 0005270966
このαの計算の意味するところを説明する。座標上に、横(X)軸として測定角、縦(Y)軸としてReをとり、測定角−40°、0°、40°にRe(−40)、Re(0)、Re(40)をプロットし、これを放物線状に結ぶ。ここで、Re(40)とRe(−40)の差が0のとき、この放物線はY軸を中心に左右対称になる。一方、Re(40)とRe(−40)の差が0では無い時は放物線の左右対称の軸が傾く。したがって、この傾きが大きいほどReの入射角依存性(α)が大きいこととなる。
さらに式(II)で表されるPはRe(40)とRe(−40)がRe(0)に対し対称的に変化していないときの補正項である。即ち{Re(40)−Re(0)}と{Re(0)−Re(−40)}の差が等しくないときの補正項である。例えば、{Re(40)−Re(0)}が{Re(0)−Re(−40)}より大きい場合、これらが等しい場合に比べて放物線の左右対称軸の傾きは大きくなる。即ち、斜めから覗いた時の光学異方性(フィルム法線方向から覗いた時と斜めから覗いた時の光学異方性の差)は大きくなる。また、式(II)中、「10」は、Re(40)−Re(0)}と{Re(0)−Re(−40)}の差の大きさを放物線の傾きの差に対応させるための補正値である。これらの影響をPとして式(I)のαを補正している。
前記αを0.001〜0.16の範囲にすることにより、偏光板での像の歪みが低減させることがえきる。一般に、液晶表示装置が垂直配向モードのような方式であっても液晶分子が僅かに垂直から傾斜した成分が存在し、水平配向モードのような方式であっても液晶分子が僅かに平面から傾斜した成分が存在する。本発明は、これらの僅かに傾斜した成分が像の歪み(画像のボケ)を引き起こすことを見出し、αを0.001〜0.16の範囲にすることでこれらの成分を補償して像の歪みを改良したことが特徴である。すなわち、液晶層の上のアクリルフィルムに前記Reの入射角依存性αを与えることで、斜め方向に僅かに傾斜した構造をアクリルフィルム中に形成し、これが液晶の斜め方向の僅かな配向(傾斜)による光学異方性を補うことができる。
光学主軸のフィルム面内の方向(面内の光学主軸)は、フィルム面内の任意の方向であり、どの方向であっても構わないが、好ましくはフィルムの幅方向または長手方向である。縦あるいは横方向に延伸、圧延することで長手方向(MD)、幅方向(TD)に面内の光学主軸方位を向けることができ、さらに、MD〜TDの間にするには斜め方向に延伸すれば良く、例えば特開2001−281452、特開2003−342384号、特開2004−233666号、特開2004−325561号、特開2005−114972号、国際公開WO03/102639号、特開2006−224618号、特開2008−23775号、特開2008−80768号等の各公報の方法を利用できる。
本発明のReの入射角依存性αはフィルムそのもののαであり、この上の塗設した層(液晶分子層など)のαではない。即ちフィルムそのものの構造に由来するものである。
また、従来αは0(通常の製膜法)か、あるいは上記特許文献5に記載の方法では0.3〜0.6と大きなものしかできなかった。
このような本発明のアクリルフィルムのαは、後述の本発明のアクリルフィルムの製造方法で製造することにより0.001〜0.16の範囲に制御することができる。
(レターデーション)
本発明のアクリルフィルムの面内方向の複屈折(Re)は0.1nm〜10nmが好ましく、より好ましくは0.1nm〜8nm、さらに好ましくは0.2nm〜6nmである。Reの遅相軸はどこを向いていてもかまわないが、好ましくはフィルムの幅方向または長手方向であり、より好ましいのが幅方向を向いているものである。縦あるいは横方向に延伸、圧延することで長手方向(MD)、幅方向(TD)に遅相軸を向けることができ、さらに、MD〜TDの間にするには斜め方向に延伸すれば良く、例えば特開2001−281452号、特開2003−342384号、特開2004−233666号、特開2004−325561号、特開2005−114972号、国際公開WO03/102639号、特開2006−224618号、特開2008−23775号、特開2008−80768号各公報等の方法を利用できる。
本発明のアクリルフィルムの厚み方向の複屈折(Rth)は−15nm〜−0.1nmであることが好ましく、より好ましくは−12nm〜−1nm、さらに好ましくは−10nm〜−2nmである。
ここにおいてReはKOBRA 21ADH、またはWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが、1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRthが算出される。
Rthは、前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、またはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、またはWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、および入力された膜厚値を基に、以下の式(A)および式(B)よりRthを算出することもできる。
Figure 0005270966
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnxおよびnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rthは算出される。
Rthは、前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、またはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
αはKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い,フィルムの幅方向(TD)に平行に測定角を左右40°ずつ傾斜させて測定したReのうち大きなものをRe(40)、小さなものをRe(−40)とし、フィルム法線方向からReを測定しRe(0)とし、これらから前記式(I)および前記式(II)により算出したαをα(TD)とした。同様に長手方向(TD)に平行に測定角を傾斜させて測定したRe(40)、Re(−40)、Re(0)から算出したαをα(MD)とした。α(TD)、α(MD)のうち大きな方の値をαとした。なお,測定波長は550nmとした。
また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
(レターデーションの波長分散)
本発明のアクリルフィルムのReの波長分散は0.001nm〜1.5nmであることが好ましく、より好ましくは0.0004nm〜1nm、さらに好ましくは0.007nm〜0.8nmである。
本発明のアクリルフィルムのRthの波長分散は0.1nm〜4nmであることが好ましく、より好ましくは0.2nm〜3nm、さらに好ましくは0.3nm〜2.5nmである。ここでいう波長分散とは630nmで測定したReおよびRthと、450nmで測定したReおよびRthの差の絶対値を指す。
上記範囲の波長分散、Re、Rthにすることで、偏光板としてIPS液晶表示板に使用した場合の像の歪みを抑制でき、さらに斜めから見たときの光漏れを抑制する効果がある。さらに偏光板に加工した際に擦り傷が見えにくくなるという効果が得られる。即ち液晶表示板などでは2枚の偏光板の吸収軸が互いに直交するように配置する。このとき波長分散が上記範囲にすることで波長依存性が少ないため全波長の光に対し均等に光を遮断するため光漏れが少なく擦り傷が目立ちにくくなる。一方波長分散が本発明の好ましい範囲を超えると均一な遮光効果が得られず漏れ光が発生し、これが擦り傷で散乱され目立ち易くなる。一方、上記波長分散を下回ると、偏光板に組み立てを直交配置した時に色ずれが発生し好ましくない。
(製膜幅)
本発明のアクリルフィルムの製膜幅は1m〜4mであることが好ましい。通常の製膜幅は1m以下であり、本発明のように広幅で製膜することにより、全幅に対する端部(両端)の割合を相対的に低くでき、単位面積あたりの異物を少なくできる。また、4m以下であればダイ内の流路面積が大きくなりすぎず、ダイ内でのメルトの流れの乱れも生じず、フィルム内の均一性も良好であり、偏光板にした時に像の歪も発生しにくい。
[アクリルフィルムの製造方法]
本発明のアクリルフィルムは以下のような方法で製造することができる。また、本発明の製造方法によれば、膜厚が薄く、ダイライン、表面粗さおよびフィルムシワが良好なアクリルフィルムを得ることができる。好ましい厚みむら、ヘイズ、異物、Re、Rth、ReとRthの波長分散およびαを達成できる。
本発明のアクリルフィルムの製造方法は、アクリル樹脂のペレットを押出し機に投入して溶融させてメルトを得る工程と、前記ダイからメルトを押出す工程と、前記ダイから押出されたメルトをキャストロール上で固化して製膜する工程とを含む。また、ダイから押出されたメルトをキャストロール上で固化してフィルムを得る工程において該メルトがキャストロールに接触する際の温度が(Tg+100℃)〜(Tg+130℃)℃であり、さらに、前記固化したフィルムにフィルム中央部よりも10〜100μm厚い耳部をフィルム両端に10mm以上となるように加工する工程を含むことを特徴とする。
以下において、本発明のアクリルフィルムの製造方法を詳細に説明する。
(溶融製膜法)
本発明のアクリルフィルムは溶液製膜法を用いて製造しても、溶融製膜法を用いて製造しても良いが、溶融製膜法により製造されることが好ましい。溶融製膜法では、あらかじめ樹脂や添加剤を混合してペレット化した後、混練押出し機に投入し溶融して溶融樹脂(以下、メルトともいう)を得て、メルトをダイから押出し、これをキャストロール上で冷却固化し製膜する。
本発明で好ましく使用される溶融製膜法では、溶液製膜法と異なり、製膜直前のダイから押出されたメルトを濾過に掛けることが一般的に好ましくないことが知られている。溶融製膜法では、メルト化したアクリル樹脂が濾過機内に滞留している間にも熱分解が進行してしまうため、濾過器内で熱分解物由来の異物が発生する。すなわち、濾過により却って異物が増加し易い傾向があり、濾過にかけることは好ましくない。したがって、1μm〜10mmの異物を3個/m2を超えてアクリルフィルムに発生させないようにするためには、フィルム製造時に異物の原因となる異物の核を根本的に発生させないような方法でアクリルフィルムを製造することが必要である。
(ペレット化)
前記アクリル樹脂と前記添加物とは、溶融製膜に先立ち混合してペレット化するのが好ましい。
ペレットは、前記アクリル樹脂と前記添加物を乾燥して含水率を0.1%以下にした混合物を得て、その後前記混合物を押出機に導入して150℃〜300℃で溶融し、溶融した混合物をヌードル状に押出し、空気中あるいは水中で固化し裁断することで得られる。また、押出機による溶融後、溶融した前記混合物を水中に口金より直接押出ながらカットする、アンダーウオーターカット法等によりペレット化を行ってもかまわない。
前記押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。前記押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。前記押出機内における押出滞留時間は10秒以上10分以内が好ましく、より好ましくは20秒間〜5分以内である。
ペレットの大きさは10mm3〜1000mm2であることが好ましく、より好ましくは30mm3〜500mm3である。
(混練溶融)
溶融製膜に先立ちペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃であり、より好ましくは60〜150℃であり、さらに好ましくは80℃〜130℃である。乾燥後のペレット中の含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行っても良く、窒素中で行っても良く、真空中で行っても良い。
乾燥後のペレットは前記押出機の供給口を介してシリンダー内に供給され、混練および溶融される。シリンダー内は供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましい。シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましい。シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
(濾過)
樹脂中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行っても良く多段濾過でもよい。濾過精度は2μm〜15μmが好ましくさらに好ましくは3μm〜10μmである。濾材はステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
本発明のアクリルフィルムの製造方法における濾過は、原料をスクリューから押出した後した後から、ダイからメルトを押出す前までに行うことが好ましい。ダイから押出したメルトを濾過することは一般に異物発生の原因となることが知られているためである。
(ギアポンプ)
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機出機とダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にできる。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
(スタチックミキサー)
ダイ端部でのメルトの滞留を抑制するために、スタチックミキサーを押出し機からダイの間のメルト配管に設置することが好ましい。
前記スタチックミキサーは押出し機からダイの間のメルト配管のどこに設置しても良いが、溶融濾過器とダイの間に設置するのがより好ましく、さらに好ましくはダイの入口直前である。
前記スタチックミキサーのエレメント数は、4枚〜50枚であることが好ましく、5枚〜40枚であることがより好ましく、6枚〜30枚であることが特に好ましい。配管の中央部に比べ配管壁近傍はメルトの流速が遅く滞留時間が長くなり熱分解物由来の異物が発生しやすい。これに対しスタチックミキサーを用いることで配管内のメルトの撹拌が促され、配管壁のメルトの滞留が抑制されるためである。
前記スタチックミキサーは、長方形の板を30°から360°、より好ましくは60°から240°、さらに好ましくは80°から200°ねじったものを、メルト配管に沿って前記枚数の範囲で装着させることが好ましい。このように構成されたスタチックミキサーをメルトが通ることで、メルトは回転させられ配管内での撹拌が促される。このようなスタチックミキサーの1枚あたりの長さは特に限定されないが、メルト配管の直径の0.5倍〜10倍が好ましく、より好ましくは0.8倍〜6倍、さらに好ましくは1.0倍〜3倍である。
前記スタチックミキサーの材質は特に限定されないが、ステンレススチールを用いるのが好ましく、この上にハードクロムやタングステンカーバイドなどのメッキを施すことがより好ましい。
(ダイ)
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。
ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
(ダイのクリアランス)
本発明のアクリルフィルムの製造方法では、ダイリップのクリアランス(C)と製膜後のフィルム厚み(T)の比(C/T)が8〜30であることが好ましく、10〜25であることがより好ましく、12〜22であることが特に好ましい。
本発明のアクリルフィルムの製造方法におけるC/Tの範囲でダイからメルトを押出すことで、αが0.1〜9.5°の範囲に制御されたアクリルフィルムを得ることができる。即ちC/Tがこのように通常より大きいと(通常のC/Tは5以下)、ダイリップから受けるメルトのズリ(剪断)応力が小さくなり、小さなαを達成できる。C/Tが8〜30であれば、好ましいαの範囲内にαを制御でき、好ましい。なお、C/Tが30を超えるとαが大きくなり、C/Tが8未満だとαが小さくなる。
また、本発明のアクリルフィルムの製造方法におけるC/Tの範囲でダイからメルトを押出すことで、アクリルフィルムの範囲のReおよびRthを制御できる。溶融樹脂(メルト)はダイから押出された後、固化するまでの間に延伸・薄化が行われ、これが残留歪となり、ReおよびRthを発現させる。前記C/Tの範囲にすることでドロー比を抑えることとなり、ReおよびRthを好ましい範囲に制御することができる。
さらに前記C/Tの範囲にすることでアクリル樹脂のReおよびRthの波長分散を好ましい範囲にすることができる。通常、アクリルの波長分散は本発明の範囲を下回るが、本発明のように通常より広いクリアランスとすることで、ダイリップでメルトが空気と接触酸化しやすく、これによる黄変で波長分散を増加させ本発明の範囲とすることができる。
さらに前記C/Tの範囲にすることで本発明のアクリルフィルムのRa、および好ましい範囲のヘイズを達成できる。これらのRaおよびヘイズは表面凹凸に由来するものであり、アクリルフィルムの表面凹凸はダイリップ出口でメルトが膨張し、これがリップ表面と擦れて形成されるためである。このような膨張は、C/T比を小さくすると大きくなり、この結果ダイリップと膨張したメルトが接触し得られるアクリルフィルムの表面凹凸が大きくなる。これは、Tに対しCが小さく、無理やり狭いダイリップからメルトを押出す場合にリップ内での内圧が上昇、これがリップ出口で開放され膨張し易いためである。
このためC/T比が30以下であればRaが小さくなり、適度な凹凸のため液浸でヘイズが低下し、好ましい。一方C/T比が8以上であれば押出しでの内圧が低下しすぎずに、押出し圧が安定し、厚みむらを好ましい範囲に制御することができるため好ましい。
(ダイの温度およびダイリップの温度)
本明細書中において、ダイの温度とはダイリップとメルト配管の接続部の中間点をダイ全幅に渡って等間隔に10点測定した温度の平均値を指す。
また、本明細書中において、ダイ両端の温度とは、ダイリップとメルト配管の接続部の中間点をダイ全幅に渡って等間隔に20点測定した温度のうちダイ両端から各2点(合計4点)の平均値をさす。
本発明のアクリルフィルムの製造方法において、ダイリップの温度をダイの温度より1℃〜30℃高くすることが好ましく、2℃〜26℃高くすることがより好ましく、3℃〜22℃高くすることが特に好ましい。
ダイリップの温度をダイの温度より上記の温度だけ高くすることで、ダイから出たメルトの温度が高くなり、ダイから出た後の延伸・薄化を行い易くなる。さらにメルトが高温のままキャストロールに達するため、キャストロールとタッチロールで形成するαも発現し易くすることができ、好ましいαの範囲に制御することができることとなり好ましい。
また、ダイリップの温度をダイの温度より上記の温度だけ高くすることで、アクリル樹脂メルトを少しだけ熱分解させて黄変させ、波長分散を好ましい範囲にすることができることなり好ましい。
ダイリップの温度をダイの温度より上記の温度だけ高くすることで、ダイ出口のメルトの粘度を低下させ、ダイリップでの内圧上昇を抑制し膨張を抑制できる。この結果、本発明のアクリルフィルムの範囲のRa、および好ましいヘイズを達成できることとなり、好ましい。
ダイリップの温度をダイの温度より上記の温度だけ高くすることで、製膜速度を高めることができ、生産性が高まることとなり好ましい。高速製膜で問題になるのは、メルトがキャストロールに接触するとき空気を持ち込み、メルトがキャストロールに密着できず厚みむらを増大するためである。このため、上記のようにダイリップの温度をダイの温度より上記の温度だけ上げることでメルトの粘性を上げ、キャストロールへの密着を改良できる。このような効果はアクリル系樹脂において特に顕著である。
ダイリップの温度をダイの温度より1℃〜15℃高くすることで前記の効果を十分に生じさせることができ、好ましい。一方、ダイリップの温度をダイの温度より15℃以下だけ高くすることでアクリル樹脂の熱分解を適度な範囲に抑え、熱分解に起因する1μm〜10mmの異物を3個/m2以下にすることができ、好ましい。
このようなダイリップの昇温は、ダイリップ近傍に棒状のヒーターを設置することできる。加熱するリップ部の幅は0.5cm〜20cmが好ましく、より好ましくは1cm〜10cm、さらに好ましくは1.5cm〜5cmである。
このような方法によりリップ近傍のみを加熱することができ、これによりアクリル樹脂の加熱時間を最小限にし、特に熱分解による異物発生を抑制することができる。
(キャスト)
ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂(メルト)をキャストロール(以下、1本目のキャストロールをチルロールともいう)上で冷却固化し、フィルムを得る。
この時、ダイとキャストロールの間を遮蔽し風の影響を抑制することが好ましい。
メルトがキャストロールに接触する際、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等を用い、キャストロールとメルトとの密着を上げることが好ましく、中でも上述のようにタッチロール法が好ましい。このような密着向上法はメルトの全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
(キャストロール接触時メルト温度)
本発明のアクリルフィルムの製造方法は、前記メルトがキャストロールに接触する際の温度が(Tg+100℃)〜(Tg+130℃)であることを特徴とする。キャストロール接触時のメルト温度が(Tg+100℃)〜(Tg+130℃)であると、スジのレベリング効果が改善されフィルムのスジレベルがが向上する。
前記キャストロール接触時メルト温度は、Tg+103℃〜Tg+128℃であることが好ましく、Tg+105℃〜Tg+125℃であることがより好ましい。
また、本発明で用いたアクリル樹脂の場合は、前記キャストロール接触時メルト温度は、230℃〜260℃であることが好ましく、233℃〜258℃であることがより好ましく、235℃〜255℃であることが特に好ましい。
このようにキャストロール接触時のメルト温度を制御する方法としては、遮風板を用いた保温や、ヒーターを用いた加熱などを挙げることができ、その中でも加熱したダイにより生じる上昇気流を抑制する遮風板による方法が好ましい。なお、これらは同時に行ってもよい。
なお、従来アクリルフィルムの製造においてキャストロール接触時のメルト温度を制御する工程は実施されておらず、本発明において初めて見出したものである。
(キャストロールのみを用いる方法)
ダイから押出した溶融樹脂(メルト)をキャストロール上でメルトの表裏に80℃〜200℃、より好ましくは90℃〜190℃、さらに好ましくは100℃〜180℃付与し固化する。これにより高温面より低温面の収縮が大きく、表裏の収縮量の差により表裏の応力差(ズリ応力)が発生する。これによりReの測定角依存性(斜め方向の構造)が発生しαを発現する。さらに、このような応力は面内、厚み方向の分子配向も促し、僅かなRe,Rthを発現できる。
さらにこのように表裏に温度差を持たせることで、キャストロール側で冷却収縮が発生し、メルトは収縮しようとするが、メルトとキャストロールの摩擦によりメルトの一部に収縮できるところと十分にできないところが発生する。この結果僅かな弾性率むらや熱寸法変化むらを達成することができる。
このようなキャストロール上でのメルトの変形による効果は、メルトが粘性変形し易いアクリル系樹脂において発現し易い。すなわち、アクリル系樹脂は粘性が高いため、上記のような表裏の収縮応力により分子配向(塑性流動)を引き起こし易く、この結果前記好ましい範囲にαやRe,Rthをすることができる。
このように表裏に温度差を与える上でのポイントは高吐出量で製膜することにあり、ダイから押出されたメルトの温度が低下する前にキャストロールに達する。この後、キャストロール側は急激に冷却され、その反対面は冷却速度が遅く、上記のような温度差を付与できる。
このような高回転の吐出ではスクリューとバレルの間で剪断応力が増大し、これに伴う分子切断に由来する樹脂の分解が進行する。この結果、樹脂が黄変し分光吸収が変化することで、Re,Rthの波長分散を上記の範囲にすることができる。なお、本発明を実施しないメルトの波長分散はRe,Rthとも0である。
このように高吐出量で押出す場合、押出し機のスクリューの回転数を上げる必要があり、これに伴い剪断発熱が発生する。アクリル樹脂は熱分解し易く、これにより黄変が顕著となり波長分散が本発明の範囲を超え、色ずれが顕著になり好ましくない。また熱分解物による異物も増加し好ましくない。これを解決するために、スクリューの温度を入口部より出口部より3℃〜50℃、より好ましくは5℃〜45℃、さらに好ましくは8℃〜40℃低くして製膜することが好ましい。即ちスクリュー入口近傍はペレットが未溶融のため、ペレット同士が強く擦れ合い摩擦発熱し易く、この部分の温度を低くすることが必要である。一方出口近傍ではペレットは融解し剪断発熱は少なく、ここの温度を高くしないと押出し機出口のメルト温度を高くできず、上記表裏の温度差を付与できない。
さらにこのように押出し記出口温度を上げることでアクリルの熱分解を促しこれにより僅かにメルトを黄変させることができる。この結果Reの波長分散およびRthの波長分散を上記の好ましい範囲にすることができる。
因みに、従来の方法(例えば特開2007−297615号公報 実施例1)ではスクリュー温度を一定で行っている)。
なお、本発明で好ましいスクリュー出口温度は210℃〜280℃、より好ましくは220℃〜270℃である。
(タッチロール法)
本発明においてチルロールとは、ダイから押し出されたメルトが最初に接触するキャストロールのことをいい、タッチロールとは、前記チルロールに対向して設置したロールをいう。設置することがより好ましく、前記タッチロールと前記チルロールの間にダイから押出したメルトを通し、成型しながら冷却固化させることが特に好ましい。このようなタッチロール法を用いることで、熱膨張係数を本発明の範囲に制御することができる。なお、以下においてキャストロールという場合は、前記チルロールと、複数キャストロールが存在する場合の2番目以降のキャストロールとを含む。
(タッチ圧)
本発明において、タッチ圧とは、タッチロールを押し付けている力をフィルムとタッチロールの接触面積で割った値である。タッチ圧は0.1MPa〜10MPaであることが好ましく、0.3MPa〜7MPaであることがより好ましく、0.5MPa〜3MPaであることが特に好ましい。0.1MPa〜10MPaのタッチ圧にすることで、タッチロールとチルロールの間で微妙なズリがかかり、前記好ましい範囲のαを発現できる。このような僅かな角度のαは上記のような極めて弱いタッチ圧(面圧)が必要である。タッチ圧が10MPa以下であればαが前記好ましい範囲以下となり、タッチ圧が0.1MPa以上であれば前記好ましい範囲以上となり、いずれも偏光板に加工し液晶表示板に使用した時に像の歪みが激減することとなり好ましい。なお、従来一般的に用いられているタッチロールの面圧は30MPa程度である。
(タッチロール)
このような弱いタッチ圧を実現するには、タッチロールは通常の剛性の高いものではなく、弾性を有するものが好ましい。このためには、ロールの外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚Zは、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mm、さらに好ましくは0.3mm〜3.5mmである。
本発明のアクリルフィルムの製造方法におけるタッチロールおよびキャストロールの表面は、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。このようなRaのタッチロールおよびキャストロールを用いて製膜することで、適度な表面凹凸を持つ本発明のアクリルフィルムを製膜できる。
前記タッチロールおよびキャストロールの材質は金属であることが好ましく、より好ましくはステンレスである。また、タッチロールおよびキャストロールの表面に金属メッキを行ったタッチロールおよびキャストロールも好ましい。タッチロールおよびキャストロールの表面が金属であればタッチロールおよびキャストロールのRaを100nm以下にすることが容易となるため好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールではゴム表面の凹凸が大きすぎ、適度な表面凹凸を持つ本発明のアクリルフィルムを製膜できず好ましくない。
前記タッチロールは、例えば、特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
(キャストロール)
前記キャストロールは複数本用いて徐冷することがより好ましい(このうち前記タッチロールを用いるのは最上流側(ダイに近い方)の最初のキャストロール、すなわちチルロール、にタッチさせるように配置する)。一般的には2〜6本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ロールの直径は100mm〜1500mmが好ましく、より好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
前記フィルムを2本目以降のキャストロールを用いて搬送する工程を含む場合は、2本目以降の全てのキャストロールとフィルムが接触する時の温度差がそれぞれ2℃未満であることが好ましく、1.5℃未満であることがより好ましく、1.0℃未満であることが特に好ましい。2本目以降の全てのキャストロールとフィルムが接触する時の温度差が2℃未満であれば、フィルムに発生するシワが改善され好ましい。
ダイから押出されたメルトを3連以上の多連式キャストロール上で固化する際に、キャストロールの温度パターンが、下流側ロール温度が上流側ロールより1℃〜15℃低いことが好ましく、1℃〜10℃低いことがより好ましく、2℃〜8℃低いことが特に好ましい。
このように、多連式キャストロールの温度分布の設定により、製膜するアクリルフィルムを徐冷することにより、パッキング密度の向上を促進することができる。そのため、得られるアクリルフィルムのRaを本発明の範囲に制御しやすくすることができる。また、得られるアクリルフィルムの両面の物性をより均一化することや、アクリルフィルム内の残存ひずみを解消しやすくすることもできるため、本発明の液晶表示装置の部材として前記アクリルフィルムを使用した場合に、像の歪みを改善させることもでき、好ましい。
前記タッチロールの外周速度Vtrと、前記キャストロールの外周速度Vcdの外周速度差は0.1〜1.5%であることが好ましく、0.2〜1.2%であることがより好ましく、0.3〜1.0%であることが特に好ましい。前記タッチロールの外周速度Vtrと、前記キャストロールの外周速度Vcdの外周速度差は0.1〜1.5%であれば、タッチロール製膜によるスジ改善効果が大きくなり、好ましい。
(キャストロール温度およびタッチロール温度)
ダイから押出されたメルトをキャストロール上で固化する際、用いるキャストロールおよびタッチロールの温度は、アクリル樹脂のTgを基準としてTg−30℃〜Tg+10℃であることが好ましく、Tg−20℃〜Tg+5℃であることがより好ましく、Tg−10℃〜Tgであることが特に好ましい。例えば、本発明で用いることが好ましいアクリル樹脂の場合は、タッチロールの温度は60℃〜160℃とすることが好ましく、70℃〜150℃とすることがより好ましく、80℃〜140℃とすることが特に好ましいが、これらは本発明を限定するものではない。
このような温度制御はこれらのロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成できる。このように内部に温調機構を有するものがより好ましい。前記温調機構としては、例えば、タッチロールを金属シャフトの上に設置してその間に熱媒(流体)を通した態様が挙げられ、外筒と金属シャフトの上に間に弾性体層を設けて外筒の間に熱媒(流体)を満たした態様が挙げられる。これらの態様において前記熱媒の温度を調整することで、キャストロールおよびタッチロールの温度を調整できる。
ダイから押出されたメルトをキャストロール上で固化する際、前記範囲の温度のタッチロールを用い、前記範囲のタッチ圧で挟み込んで製膜することにより、前記Raの本発明のアクリルフィルムを得ることができる。また、前記好ましい範囲のヘイズを達成できる。
タッチロールの温度が前記範囲であれば、本発明の範囲のRa、前記好ましい範囲のヘイズとなる。
(製膜速度)
このような広幅での製膜は、上記のような製膜速度で製膜することで達成できる。即ちダイの広幅化によりダイ内の流路面積が増加しメルトの流れが乱れ易いが、製膜速度を上げることでダイ内のメルトの速度を上げ、ダイ内でのメルトの滞留により引き起こされるメルトの流れの不均一性を解消できる。
このような効果は製膜速度が12m/分〜50m/分で顕著であり、より好ましくは14m/分〜40m/分、さらに好ましくは16m/分〜35m/分である。通常のアクリルの溶融製膜は10m/分以下の速度で行われるが、上記のような高速で製膜することでダイリップでのズリの効果をより強く発現できる。
製膜速度が12m/分〜50m/分であれば、このようなズリの効果が十分発現され、α、ReおよびRthが前記好ましい範囲となり、好ましい。
さらに、12m/分〜50m/分の高い製膜速度にすることで、前記アクリルフィルムのRaを本発明の範囲に制御することができる。製膜速度が高くなることによりダイリップ出口でメルトが引っ張られ、メルトの膨張が抑制されることとなり、メルトとリップ表面が擦れることを抑制することで、アクリルフィルムの表面凹凸を好ましい範囲に制御することができる。
また製膜速度を上記のようにすることによりダイ内の滞留時間を抑制でき、異物の数を低減できる。本発明の製膜速度を未満ではダイ内の滞留時間が増加し好ましくなく、製膜速度が本発明の範囲を超えると、ダイ内でのメルトの流れが乱れフィルム内の均一性が低下し偏光板にした時に像の歪が発生し好ましくない。
(トリミング)
このようにして延製膜した後、両端をトリミングすることも好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。
(耳部の作製)
本発明のアクリルフィルムの製造方法では、前記固化したフィルムにフィルム中央部よりも10〜100μm厚い耳部を、フィルム両端に10mm以上となるように厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことを特徴とする。
厚みだし加工による耳部の厚さ差は1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。耳部の厚さ差が10〜100μmであるとハンドリング時のフィルム破断が回避され好ましい。
厚みだし加工の幅は15mm以上が好ましく、より好ましくは30mm以上である。耳部の厚さ差が10mm以上であるとハンドリング時のフィルム破断が回避され好ましい。
厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。また、耳部の作製は室温〜300℃で実施できる。
(巻取り)
この後、キャストロールから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
好ましい巻き取り張力は2kg/m幅〜50kg/幅、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/幅である。
巻き取る前に片面或いは両面にラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
(フィルムの加工)
本発明のアクリルフィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることも好ましい。中でも好ましいのが、偏光層の付与により得られる本発明の偏光板、光学異方性層の付与により得られる本発明の光学補償フィルム、反射防止層の付与により得られる本発明の反射防止フィルムである。また、これらの加工したフィルムを本発明の液晶表示装置に用いることも好ましい。
[偏光板]
本発明のアクリルフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。
本発明の偏光板は、本発明のアクリルフィルムと偏光子を用いたものであれば、特に構成に制限はない。例えば、本発明の偏光板が、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなる場合において、本発明のアクリルフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の偏光板は、その少なくとも一方の面に、他の部材との貼着のための粘着剤層を有してもよい。また、本発明の偏光板において、本発明のアクリルフィルムの表面が凹凸構造であれば、アンチグレア性(防眩性)の機能を有することになる。さらに、本発明の偏光板には、本発明のアクリルフィルムの表面にさらに反射防止層(低屈折率層)を積層した本発明の反射防止フィルムや、本発明のアクリルフィルムの表面にさらに光学異方性層を積層した本発明の光学補償フィルムを用いることも好ましい。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のアクリルフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のアクリルフィルムは、液晶表示装置における液晶セルと偏光板との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。
本発明の偏光板は、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のアクリルフィルムがこの順に積層している構成であることがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子、本発明のアクリルフィルムおよび粘着剤層がこの順に積層している構成もより好ましい。
(アクリルフィルム)
本発明の偏光板のアクリルフィルムには、本発明のアクリルフィルムが用いられる。また、前記アクリルフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
(セルロースアシレートフィルム)
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
(偏光子)
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明に用いられる偏光子は、本発明の目的を達成し得るものであれば、任意の適切なものが選択され得る。前記偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。前記親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子の場合、前記ヨウ素の含有量は、光学特性を考慮すると、例えば、2.0重量%〜5.0重量%の範囲であり、好ましくは、2.0重量%〜4.0重量%の範囲である。
前記偏光子は、好ましくは、さらにカリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含有する。前記偏光子のカリウム含有量は、好ましくは、0.2重量%〜1.0重量%の範囲であり、より好ましくは、0.3重量%〜0.9重量%の範囲である。前記偏光子のホウ素含有量は、好ましくは、0.5重量%〜3.0重量%の範囲であり、より好ましくは、1.0重量%〜2.8重量%の範囲である。前記偏光子が、カリウムおよびホウ素を含有することによって、好ましい範囲の複合弾性率(Er)を有し、且つ、偏光度が高い偏光子(偏光板)を得ることができる。カリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含む偏光子の製造は、例えば、偏光子の形成材料であるフィルムを、カリウムおよびホウ素の少なくとも一方の溶液に浸漬すればよい。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねてもよい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
偏光子の製造方法の一例について、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(原反フィルム)は、純水を含む膨潤浴、およびヨウ素水溶液を含む染色浴に浸漬され、速比の異なるロールでフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む架橋浴中に浸漬され、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロールによって、純水を含む水洗浴中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥して水分率を調節した後で巻き取られる。このように、偏光子は、原反フィルムを、例えば、元の長さの5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
前記偏光子は、接着剤との密着性を向上させるために、任意の表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記アクリルフィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のアクリルフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のアクリルフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。 本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のアクリルフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
前記接着剤としては、公知の偏光板製造用接着剤を用いることができる。また、前記偏光子と各フィルムの間に接着剤層を有する態様も好ましい。前記接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有することが好ましい。
本発明の偏光板の製造方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いることもできる。例えば、特開2000−171635号、特開2003−215563号、特開2004−70296号、特開2005−189437号、特開2006−199788号、特開2006−215463号、特開2006−227090号、特開2006−243216号、特開2006−243681号、特開2006−259313号、特開2006−276574号、特開2006−316181号、特開2007−10756号、特開2007−128025号、特開2007−140092号、特開2007−171943号、特開2007−197703号、特開2007−316366号、特開2007−334307号、特開2008−20891号各公報などに記載の方法を使用できる。これらの中でもより好ましくは特開2007−316366号、特開2008−20891号各公報に記載の方法である。
このようにして得た本発明の偏光板は、液晶表示装置内で使用するのが好ましく、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。液晶表示装置は透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置等に適用される。
[光学補償フィルム]
本発明のアクリルフィルムに光学異方性層を付与することで、本発明の光学補償フィルムを得ることができる。以下において、本発明の光学補償フィルムを説明する。
(光学異方性層)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶性化合物を補償するように設計することが好ましい。黒表示における液晶セル中の液晶性化合物の配向状態は、液晶表示装置のモードにより異なる。この液晶セル中の液晶性化合物の配向状態に関しては、IDW'00、FMC7−2のP411〜414等に記載されている。
光学異方性層は、支持体上に直接液晶性化合物から形成するか、もしくは配向膜を介して液晶性化合物から形成する。配向膜は、10μm以下の膜厚を有することが好ましい。
光学異方性層に用いる液晶性化合物には、棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物が含まれる。棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。光学異方性層は、液晶性化合物および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。本発明の配向膜として好ましい例は、特開平8−338913号公報に記載されている。
(棒状液晶性化合物)
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性化合物として用いることができる。すなわち、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性化合物については、例えば、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載のものを採用できる。
棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基またはエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
(ディスコティック液晶性化合物)
ディスコティック液晶性化合物には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告(J.C.S.,Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
ディスコティック液晶性化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。ディスコティック液晶性化合物から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物がディスコティック液晶性化合物である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式(5)で表わされる化合物であることが好ましい。
一般式(5)
D(−LQ)r
(一般式(5)中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、rは4〜12の整数である。)
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
Figure 0005270966
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一般式(5)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−、
L2:−AL−CO−O−AL−O−、
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−、
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−、
L5:−CO−AR−O−AL−、
L6:−CO−AR−O−AL−O−、
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−、
L8:−CO−NH−AL−、
L9:−NH−AL−O−、
L10:−NH−AL−O−CO−、
L11:−O−AL−、
L12:−O−AL−O−、
L13:−O−AL−O−CO−、
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−、
L15:−O−AL−S−AL−、
L16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−、
L17:−O−CO−AR−O−AL−CO−、
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−、
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−、
L20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−、
L21:−S−AL−、
L22:−S−AL−O−、
L23:−S−AL−O−CO−、
L24:−S−AL−S−AL−、
L25:−S−AR−AL−。
一般式(5)の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(Q)の例を以下に示す。
Figure 0005270966
重合性基(Q)は、不飽和重合性基(Q1、Q2、Q3、Q7、Q8、Q15、Q16、Q17)またはエポキシ基(Q6、Q18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1、Q7、Q8、Q15、Q16、Q17)であることが最も好ましい。具体的なrの値は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
ハイブリッド配向では、ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)と支持体の面との角度、すなわち傾斜角が、光学異方性層の深さ(すなわち、透明支持体に垂直な)方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に増加することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。しかしながら、傾斜角は連続的に変化することが好ましい。
ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)の平均方向(各分子の長軸方向の平均)は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)方向は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいはディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤および重合性モノマーは、ディスコティック液晶性化合物と相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。添加成分の中でも重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有する化合物)の添加が好ましい。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高めることができる。
前記光学異方性層は、ディスコティック液晶性化合物とともにポリマーを含有していてもよい。該ポリマーは、ディスコティック液晶性化合物とある程度の相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。ディスコティック液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
(液晶性分子の配向状態の固定)
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
(光重合開始剤)
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各公報記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号公報記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号公報記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各公報記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号公報記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号、米国特許4239850号の各公報記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号公報記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
前記光学異方性層は、前記液晶性化合物の少なくとも一種と、所望により重合性開始剤、フッ素系ポリマー等の添加剤を含有する塗布液を調製し、該塗布液を配向膜表面に塗布・乾燥することで形成することができる。
(フッ素系化合物)
フッ素系化合物としては、従来公知の化合物が挙げられるが、具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]に記載のフッ素系化合物等が挙げられる。
(溶媒)
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
均一性の高い光学補償フィルムを作製する場合には、前記塗布液の表面張力が25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であることがさらに好ましい。
(光学補償フィルムの製造方法)
塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
液晶性化合物塗布の前に、塗布に供するフィルムの表面をラビングすることが好ましい。ラビング法では、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90度が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360度以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
長尺フィルムをラビング処理する場合は、フィルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフィルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60度の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50度が好ましい。45度が特に好ましい。
[反射防止フィルム]
本発明のアクリルフィルムの上に反射防止層を付与することで、本発明の反射防止フィルムが得られる。反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層と、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(本明細書中における、高屈折率層、および中屈折率層)とを(透明)支持体上に設けて成る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明のアクリルフィルムは前記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
(層構成)
(透明)支持体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層との間に、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(高屈折率層および中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、前記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。
前記硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また、加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(前方散乱層)
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。前記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開平11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
(その他の層)
前記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(反射防止フィルムの製造方法)
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を、塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
[液晶表示装置]
本発明の光学補償フィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができ、本発明の液晶表示装置を得られる。以下、本発明の液晶表示装置について、各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態とあわせて説明する。
(IPSモード液晶表示装置)
本発明のアクリルフィルムは、IPSモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のアクリルフィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。
IPS液晶表示装置は、例えば特開2003−15160号、特開2003−75850号、特開2003−295171号、特開2004−12730号、特開2004−12731号、特開2005−106967号、特開2005−134914号、特開2005−241923号、特開2005−284304号、特開2006−189758号、特開2006−194918号、特開2006−220680号、特開2007−140353号、特開2007−178904号、特開2007−293290号、特開2007−328350号、特開2008−3251号、特開2008−39806号、特開2008−40291号、特開2008−65196号、特開2008−76849号、特開2008−96815号等の各公報に記載のものも使用できる。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性化合物が寝た配向状態にある。
セル中央部分の棒状液晶性化合物に対しては、ホメオトロピック配向(円盤面が寝ている水平配向)のディスコティック液晶性化合物もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性化合物に対しては、ハイブリット配向(長軸の傾きが偏光膜との距離に伴って変化している配向)のディスコティック液晶性化合物で補償することができる。
また、セル中央部分の棒状液晶性化合物に対しては、ホモジニアス配向(長軸が寝ている水平配向)の棒状液晶性化合物もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性化合物に対しては、ハイブリット配向のディスコティック液晶性化合物で補償することもできる。
ホメオトロピック配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が85〜95度の状態で配向している。
ホモジニアス配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が5度未満の状態で配向している。
ハイブリット配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が15度以上であることが好ましく、15度〜85度であることがさらに好ましい。
(透明)支持体もしくはディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層、さらにはホメオトロピック配向したディスコティック液晶性化合物とホモジニアス配向した棒状液晶性化合物の混合体からなる光学異方性層は、Rthレターデーション値が40nm〜200nmであり、Reレターデーション値が0〜70nmであることが好ましい。
ホメオトロピック配向(水平配向)しているディスコティック液晶性化合物層およびホモジニアス配向(水平配向)している棒状液晶性化合物層に関しては、特開平12−304931号および同12−304932号の各公報に記載されている。ハイブリット配向しているディスコティック液晶性化合物層に関しては、特開平8−50206号公報に記載がある。
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性化合物を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各公報に開示されている。棒状液晶性化合物が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードと呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性化合物が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性化合物が寝た配向状態にある。
黒表示にTNモードと液晶の配向は同じ状態であるため、好ましい態様もTNモード対応を同じである。ただし、TNモードに比べ、OCBモードの方がセル中央部で液晶性化合物が立ち上がった範囲が大きいために、ディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層について、若干のレターデーション値の調整が必要である。具体的には、(透明)支持体上のディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層は、Rthレターデーション値が150nm〜500nmであり、Reレターデーション値が20〜70nmであることが好ましい。
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性化合物が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性化合物を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性化合物を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置の黒表示において、液晶セル中の棒状液晶性化合物は、そのほとんどが、立ち上がった状態であるため、ディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層で液晶性化合物を補償し、別に、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向し、棒状液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の透過軸方向との角度が5度未満である光学異方性層で偏光板の視角依存性を補償することが好ましい。
(透明)支持体もしくはディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層は、Rthレターデーション値が150nm〜500nmであり、Reレターデーション値が20〜70nmであることが好ましい。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
《測定法》
以下に本発明で使用した測定法について記載する。
(表面粗さ(Ra))
レーザー干渉計((株)フジノン製F601型)を用いRaを測定した。
(異物)
1m×1mのサンプルフィルムを黒布の上に広げ、蛍光灯を光源に用い反射光で表面の欠陥(凹凸)を抽出する。これを10枚のサンプルについて実施する。抽出した欠陥について全数顕微鏡観察し、核の大きさを計測する。円の場合はその直径、不定形の場合は長辺と短辺の平均値を求める。この大きさが1μm〜10mmのものを計測し、1m2あたりの個数とする。
(ヘイズ)
本発明において、セルロースアシレートフィルムのヘイズは、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いてJIS−K−6714に従って測定した。これを空気中のヘイズとする。
(ガラス転移温度(Tg))
走査型示差熱量計(DSC)の測定パンにサンプルを20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(タッチロールのタッチ圧)
製膜状態(但しタッチロール、チルロールは25℃とする)に富士フイルム(株)製超低圧用プレスケール(LLW)を全幅にわたり通過させる。このようにして発色したプレスケールを富士フィルム(株)製圧力測定システム(専用濃度計(FPD−305E)、専用圧力換算機(FPD−306E))を用いて、全幅にわたり圧力を測定し、この平均値をタッチ圧とした。
(ロール接触時メルト温度)
チノー株式会社製ファイバ式放射温度計(本体FR−FAI、焦光部IR−FL8)を用いてロールに接触する直前部の溶融膜温度の測定を行った。
上記測定法で得られた値を、ロール接触時メルト温度とした。
(フィルムと2本目以降のキャストロールの温度差)
フィルム温度はチノー株式会社製放射温度計(IR−CAB)を用いて測定を行った。また、キャストロール温度は、予めロール表面に黒体塗料を塗り放射温度計により表面温度を測定した。
上記測定法で得られた値を、フィルムと2本目以降のキャストロールの温度差とした。
(残留溶媒)
サンプルフィルム300mgをシクロヘキサン30mlに溶解したもの(サンプルA)、およびアセトン30mlに溶解したもの(サンプルB)を作成した。
これらサンプルAおよびBについて、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて下記条件で測定した。
カラム:DB−WAX(0.25mmφ×30m、膜厚0.25μm)
カラム温度:50°C
キャリアーガス:窒素
分析時間:15分間
サンプル注入量:1μml
下記方法で溶剤量を求めた。
サンプルAで溶剤(酢酸メチル)以外の各ピークについて検量線を用い含率を求め、その総和をSaとする。
サンプルBで、サンプルAにおいて溶剤ピークで隠れていた領域の各ピークについて検量線を用い含率を求め、その総和をSbとする。SaとSbの和を残留溶剤量とする。
(Rth、Re、α;ReおよびRthの波長分散)
(1)製膜フィルムの両端5cmずつスリットした後、全幅に亘り等間隔で5点サンプリング(3cm×3cmの正方形)した。この時正方形の各辺をMD(製膜方向)、TD(幅方向)に平行に切り出した。
(2)サンプルフィルムを25℃・相対湿度60%に5時間以上調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測器(株)製)を用いて、相対湿度25℃・60%において、サンプルフィルム表面に対し垂直方向および、フィルム面法線から±50°まで10°ずつ傾斜させて方向から波長550nmにおけるレターデーション値を測定した。
(3)垂直(法線)方向から面内のレターデーション(Re)、垂直方向、±10〜50°方向の測定値から厚み方向のレターデーション(Rth)を算出した。
(4)KOBRA−21ADHを用い、フィルムの幅方向(TD方向)を傾斜軸とした測定を行い,傾斜角度40度での位相差および傾斜角度−40度での位相差から、Reの測定角度依存性を測定した。なお,測定波長は550nmとした。この測定方向をMDに平行およびTDに平行に測定し、前記式(I)および式(II)からα(MD)とα(TD)を求め、大きいほうの値をαとした。
(5)これらの5点の平均値を求め、Re、Rth,αとした。
(6)上記サンプリングフィルムを用い、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長630nm、450nmにおけるRe、Rthを測定した。ReおよびRthの630nm、450nmでの測定値の差を求め、各々について5点の平均値を求め、この絶対値をそれぞれReおよびRthの波長分散とした。
(フィルムシワ高さ)
全幅の長さ1mのサンプルフィルムを、製膜後直ちに水平で平滑な台に広げ、25℃×湿度60%の環境下で1時間放置した。1時間後のフィルムのシワ高さを、株式会社ミツトヨ製非接触高精度レーザ変位計(レーザインジケータLI−HU)で測定した。
(ダイライン)
フィルムの全幅にわたり25mm幅でサンプリングしたTDサンプルと、幅方向中央部を35mm幅で2m長サンプリングしたMDサンプルを用意した。次に、TDサンプル、MDサンプルの7mm×7mmの範囲を連続的に表面形状・粗さ測定器(Zygo社製 NewView6000型)で測定し、そのサンプル中に含まれるスジ深さ、高さを測定した。これらのスジ高さおよび高さのうち、最も高いものをダイラインとした。
(膜厚、耳部厚み差)
アンリツ製連続膜厚測定機(本体型式KG601B、検出部R3ダイアモンド製、測定圧30g)にてフィルム幅方向の膜厚測定を行った。
製品部の測定値の平均値(測定間隔1mm)をもとめ、平均厚みとした。また、製品部以外の部分を耳部として耳部の厚みを求めた。
(厚みむら)
本明細書において、厚みむらとは、フィルム厚みの最大値と最小値の差を求め、その差を膜厚(平均値)で割ったものを百分率で表したものである。
(アクリル樹脂の調製)
[製造例1、2]
ラクトン環単位を含む下記アクリル樹脂LA−1〜LA−3の調製を行った。
特開2008−9378号公報[0222]〜[0224]の製造例1に従い、メタクリル酸メチル7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、ラクトン化率98%、Tg=134℃のアクリル樹脂LA−1を得た。
LA−2:特開2008−58768号公報[0105]〜[0106]の製造例2に従いメタクリル酸メチル=8000g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2000gから合成しラクトン化率97%、Tg=130℃のアクリル樹脂LA−2を得た。
[製造例3]
無水マレイン酸単位を含む下記アクリル酸樹脂MA−2の調製を行った。
MA−2:特開2007−113109号公報の[0049]記載の「耐熱アクリル樹脂」に従い無水マレイン酸10モル%、スチレン16モル%、メタクリル酸メチル74モル%の樹脂を合成した。このTgは112℃であった。
[製造例4〜6]
グルタル酸無水物単位を含む下記アクリル酸樹脂GU−1〜GU−3の調製を行った。
GU−1:特開2006−241263号公報の[0130]〜[0135]に従い、グルタル酸無水物単位32重量%、メタクリル酸メチル単位65重量%、メタクリル酸単位3重量単位、Tg=138℃のアクリル樹脂GU−1を得た。
GU−2:特開2008−74918号公報[0114]に記載のTg=140℃のアクリル樹脂GU−2を得た。
GU−3:特開2008−83285号公報の実施例2に記載のアクリル系ポリマー(a2)(Tg=124℃)の樹脂を得た。
そのほか、無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂MA−1として旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980Nを準備した。このアクリル樹脂のTgは117℃であり、全モノマー中無水マレイン酸15モル%、スチレン18モル%、メタクリル酸メチル67モル%含有している。
また、上記構造を有しない樹脂として、PMMA樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製デルペット80N)を使用した。このアクリル樹脂のTgは107℃であり、メタクリル酸メチル96モル%とアクリル酸メチル4モル%から成る。
[実施例1]
(アクリルフィルムの製膜)
調製した前記アクリル樹脂LA−1を90℃の真空乾燥機で乾燥して含水率を0.03%以下とした後、安定剤(イルガノックス1010(チバガイギ(株)製)0.3重量%添加し230℃において窒素気流中下、ベント付2軸混練押出し機を用い、水中に押出しストランド状にした後、裁断し直径3mm長さ5mmのペレットを得た。
これらのペレットを90℃の真空乾燥機で乾燥し含水率を0.03%以下とした後、1軸混練押出し機を用い供給部210℃、圧縮部230℃、計量部230℃で混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間に300メッシュのスクリーンフィルター、ギアポンプ、濾過精度7μmのリーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。さらにスタチックミキサーをダイ直前のメルト配管内に設置した。このメルト(溶融樹脂)をダイリップ温度とダイ温度の差20℃、C/T比=16の条件を満たすハンガーコートダイに導入した。
この後、3連のキャストロール(上流から順にCD1〜CD3)上にメルトを押出した。ここで、ダイリップから最上流側のキャストロール(CD1、すなわちチルロール)までの間に保温装置を設けておき、チルロール接触時のメルト温度を245℃となるようした。このように保温したメルトをチルロールに接触させ、その後3MPaのタッチ圧でタッチロールを接触させた。タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のロールRa25mmの弾性ロール(二重抑えロールと記載のあるもの、但し薄肉金属外筒厚みは2mmとした)を用い、タッチロールの温度はTg−5℃で使用した。また、タッチロールとチルロールの周速差は0.6%とした。なお、チルロールを含む3連のキャストロール(上流から順にCD1〜CD3)の温度は、CD1=タッチロール温度と同一(Tg−5℃)、CD2=タッチロール温度−7℃、CD3=タッチロール温度−9℃とした。また、チルロールによってメルトはフィルム化された後、CD2およびCD3との温度差0.4℃となるように制御した。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に耳部幅50mm、耳部厚み差30μmの耳部を作製(ナーリング加工)した。また製膜幅を1mとし、製膜速度30m/分で3000m巻き取った。製膜後の未延伸フィルムの厚みは60μmとした。このとき、残留溶媒は検出されなかった。このアクリルフィルムを本発明の実施例1のアクリルフィルムとした。
[偏光板作成]
(偏光子の作成)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色した。次いで、3重量%のホウ酸および2重量%ヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに4重量%のホウ酸および3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で6.0倍まで延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬した。その後、40℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光子を得た。
(アクリルフィルムの調整)
セルロース系樹脂(イーストマンケミカル社製、セルロースアセテートプロピオネート)を酢酸ブチルに希釈(固形分濃度7.5重量%)した溶液を調製した。この溶液を、前記アクリルフィルムの片面に塗布し、100℃のオーブンで3分間乾燥させ、セルロース系樹脂層付きの偏光子保護フィルムを得た。セルロース系樹脂層の乾燥厚みは0.8μmであった。
(ポリビニルアルコール系接着剤水溶液の調製)
アセトアセチル基変性したポリビニルアルコール樹脂100重量部(アセチル化度13%)に対してメチロールメラミン20重量部を含む水溶液を、濃度0.5重量%になるように調整したポリビニルアルコール系接着剤水溶液を調製した。
(偏光板の作成)
上記偏光子の片面に上記偏光子保護フィルムのセルロース系樹脂層の面が、もう一方の面にはけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム(株)製フジタックT−60、厚み60μm)が接するように、上記で調製したポリビニルアルコール系接着剤水溶液を用いて貼り合わせた。その後、70℃で10分間乾燥させて本発明の実施例1の偏光板を得た。
[実施例2〜47および比較例1〜10]
アクリル樹脂、膜厚、耳部幅、フィルムと2本目以降のキャストロールとの温度差、ロール接触時メルト温度、ダイリップからロール接触時までの保温および/または加温の有無、タッチロール種類、タッチ圧、タッチロールとチルロール(CD1)とのロール周速差、タッチロールとチルロール(CD1)の温度、タッチロールとチルロール(CD1)のロールRa、ダイリップのクリアランス(C)と製膜後のフィルム膜厚(T)の比C/T、ダイリップ温度とダイ温度の差を下記表1および表2に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして、実施例2〜47および比較例1〜10のアクリルフィルム、実施例2〜47および比較例1〜10の偏光板を作成した。なお、実施例2〜47および比較例1〜10において、残留溶媒は検出されなかった。
[評価]
(アクリルフィルムの評価)
このようにして製膜したアクリルフィルムのダイライン、表面粗さ(Ra)、厚みむら、フィルムシワ、ヘイズ、異物、Re、Rth、Reの波長分散、Rthの波長分散、αを前記評価法などにしたがって、評価を行った。得られた結果を下記表1〜表4に示す。
実施例1〜7は樹脂間差を比較した。実施例8〜11と比較例1は膜厚を比較した。実施例12〜14と比較例2および3はキャストロール接触時のメルト温度を比較した。実施例15〜17と比較例4〜6は耳部厚み差を比較した。実施例18および19と比較例7は耳部幅を比較した。前記実施例19と実施例20〜22は2本目以降のキャストロールとフィルムが接触するときの温度を比較した。実施例23〜25はキャストロール接触時のメルト温度、タッチロール種類および保温/加温を総合的に比較した。比較例8は、特開2008−83285号公報の実施例2を追試した。実施例26〜31はキャストロールおよびタッチロール温度を比較した。実施例32〜35はタッチロールタッチ圧を比較した。実施例36および37はロールRaを比較したものである。実施例38〜41はロール周速差を比較した。実施例42〜45はC/Tの効果を比較した。実施例46および47、比較例9および10はロール接触時メルト温度のみを比較した。
Figure 0005270966
Figure 0005270966
Figure 0005270966
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(アクリルフィルムの評価)
製膜製の側面からは、実施例1〜30、32〜47、比較例1、2および8〜10が良好であった。なお、実施例31では表面が粘着性となったが実用上問題はない程度であった。また、実施例1〜47では、膜厚が20〜60μmであり、ダイラインの高さおよび深さが50nm以下であり、表面粗さ(Ra)が0.005〜0.2μmであり、フィルムシワ高さが5mm以下であり、実用上好ましいアクリルフィルムであった。
一方、膜厚を15nmとした比較例1ではダイラインが55nmであり実用上好ましくなかった。ロール接触時メルト温度を210℃とした比較例2では、ダイラインが100nmであり実用上好ましくなかった。ロール接触時メルト温度を280℃とした比較例3では面状不良に加え、ダイラインが100nmとなり、さらにフィルムに着色も見られたため、偏光板等に用いる際に実用上問題がある。耳部厚み差を−10μm、0μmとした比較例4および5では、それぞれフィルムが破断した上、フィルムシワも7mm、9mmと悪化し、実用上好ましくなかった。耳部厚み差を200μmとした比較例6では、ロールタッチ不良が生じ、ダイラインが175nm、Raが250nmであり、さらにヘイズも悪化し、実用上好ましくなかった。耳部幅を5nmとした比較例7では、フィルムが破断した上、フィルムシワが5.2mmと悪化し、実用上好ましくなかった。特開2008−83285号公報実施例2に従って製造した比較例8では製膜時にダイリップからロール接触までの間に保温および/または加温装置を設けていないためにロール接触時メルト温度が220℃となり、比較例2および後述の比較例9と同様にダイラインが悪化傾向となる上、タッチロールも設けていないことも相まってダイラインが200nmと顕著に発生し、実用上問題があるレベルであった。さらに、フィルムシワも6.2mmと悪化していた。ロール接触時メルト温度を220℃とした比較例9では、ダイラインが75mmであり実用上好ましくなかった。ロール接触時メルト温度を265℃とした比較例10では、ダイラインが75mmであり実用上好ましくなかった。
(偏光板の評価)
記実施例1〜47および比較例1〜10の偏光板の性能を評価したところ、本発明の実施例1〜47では像の歪み、擦り傷がなく、全面黒表示として暗室で黒の色味を評価した際の光もれや色味もニュートラルであり良好であった。
あわせて膜厚40μm、80μmで製膜したアクリルフィルムを用いた偏光板についても同様に評価を行ったが、同様に良好な性能を支援した。(但し、偏光板作成時において用いたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムは、80μmおよび40μmのアクリルフィルムを用いた際にはそれぞれ富士フィルム(株)製フジタックT−80およびT−40とした)
(延伸)
上記実施例1〜47および比較例1〜10のアクリルフィルムをTg+10℃でMDに2倍、TDに2倍延伸した。これを上記方法で各種物性を評価したが、本発明を実施したものは良好な結果を示した。さらにこの延伸フィルムを上記と同様にして偏光板に作成しIPS型液晶表示装置を用い画像の歪を評価したが、本発明を実施したものは良好な結果を示した。
(その他液晶表示素子の作製)
前記未延伸、延伸アクリルフィルムを用いた本発明の偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な特性が得られた。
(光学補償フィルムの作成)
(1)表面処理
上記延伸、未延伸のアクリルフィルムに下記条件でコロナ放電処理を行った。
電極:VETAPONE社製 Coron−Plus
ジェネレーター:CP1C
出力:900W
フィルム搬送速度:6m/分
(2)光学異方性層用の配向膜の作製
これらの熱可塑性フィルム上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
(2−1)配向膜塗布液組成
下記の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
Figure 0005270966
(2−2)光学異方性層の作製
配向膜上に、下記塗布液を、#3.2のワイヤーバーを1171回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、30m/分で搬送されている上記ロールフィルムの配向膜面に連続的に塗布した。室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、135℃の乾燥ゾーンで、ディスコティック液晶化合物層にあたる膜面風速がフィルム搬送方向に平行に1.5m/secとなるようにし、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。光学異方性層の厚みは1.3μmであった。
また、得られた光学補償シートの弾性率を測定したところ2.4MPaであった。
(2−3)光学異方性層の塗布液組成
下記の組成物を、97質量部のメチルエチルケトンに溶解して塗布液を調製した。
下記のディスコティック液晶性化合物(1) 41.01質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.34質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.11質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー1 0.56質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー2 0.06質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.35質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
ディスコティック液晶性化合物(1)
Figure 0005270966
Figure 0005270966
Figure 0005270966
偏光板をクロスニコル配置とし、得られた光学補償シートのムラを観察したところ、正面、および法線から60度まで傾けた方向から見ても、ムラは検出されなかった。
(3)偏光板の作製
上記光学異方性層を塗設したアクリルフィルムを、上記偏光板作成方法と同様にして偏光板を作成した。
(4)TN液晶パネルでの評価
TN型液晶パネルを使用した液晶表示装置(MDT−191S、三菱電(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記の作製した偏光板を、光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。本発明を実施したものは像の歪みのない良好な特性を示した。
(低反射フィルムの作製)
本発明の未延伸・延伸アクリルフィルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い低反射フィルムを作製したところ、良好な光学性能が得られた。

Claims (22)

  1. ガラス転移温度(Tg)が100℃以上のアクリル系樹脂を含有し、
    膜厚が20〜60μmである中央部と、当該中央部よりも膜厚が10〜100μm厚くてフィルム両端から10mm以上の幅を有する耳部から構成され
    ダイラインの高さ及び深さが50nm以下であり、
    表面粗さ(Ra)が0.005μm〜0.2μm以下あり、かつ
    シワ高さが5mm以下である
    ことを特徴とするアクリルフィルム。
  2. 厚みむらが2.0%以内であり、
    ヘイズが0.05%〜0.4%であり、かつ
    残留溶剤が0.3質量%以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載のアクリルフィルム。
  3. 前記アクリル系樹脂が、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位またはグルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のアクリルフィルム。
  4. 前記アクリル系樹脂が、下記一般式(1)で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクリルフィルム。
    Figure 0005270966
    [一般式(1)中、R 1 およびR 2 は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のアルキル基を表す。]
  5. 前記アクリル系樹脂が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクリルフィルム。
    Figure 0005270966
    [一般式(2)中、R 11 〜R 13 は、それぞれ独立に、水素原子、または、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜20の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアシルオキシ基およびシアノ基からなる群より選択される酸素原子を有していてもよい有機残基を表す。]
  6. 前記アクリル系樹脂が、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のアクリルフィルム。
    Figure 0005270966
    [一般式(3)中、R 21 およびR 22 は、それぞれ独立に、水素原子、または、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜20の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアシルオキシ基およびシアノ基からなる群より選択される酸素原子を有していてもよい有機残基を表す。]
  7. 前記アクリル系樹脂が、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のアクリルフィルム。
    Figure 0005270966
    [一般式(4)中、R 31 およびR 32 は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を表す。]
  8. 1μm〜10μmの異物が3個/m2以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のアクリルフィルム。
  9. 面内方向のレターデーション(Re)が0.1nm〜10nmであり、
    膜厚方向のレターデーション(Rth)が−15nm〜−0.1nmであり、
    Reの波長分散が0.001nm〜1.5nmであり、
    Rthの波長分散が0.1nm〜4nmであり、
    下記(I)式で表される面内方向の複屈折(Re)の測定角依存性(α)が0.001〜0.16である
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のアクリルフィルム。
    Figure 0005270966
    (式中、Pは、下記式(II)で表されるPの値を表し、Re(0)はフィルム表面に対し遅相軸方向を基準に法線方向から測定したReを表す。Re(40)およびRe(−40)はフィルム表面に対し法線から、遅相軸方向を基準に左右(進相軸方向)に40°ずつ傾斜させて測定したReのうち大きい方の値がRe(40)を表し、小さい方の値がRe(−40)を表し、等しい場合はRe(40)およびRe(−40)は同じ値を表す。)
    Figure 0005270966
  10. アクリル樹脂のペレットを押出し機に投入して溶融させてメルトを得る工程と、
    前記ダイからメルトを押出す工程と、
    前記ダイから押出されたメルトをキャストロール上で固化してフィルムを得る工程と、
    を含むアクリルフィルムの製造方法において、
    前記ダイから押出されたメルトをキャストロール上で固化してフィルムを得る工程において該メルトがキャストロールに接触する際の温度が(Tg+100℃)〜(Tg+130℃)であり、さらに、
    前記固化したフィルムにフィルム中央部よりも10〜100μm厚い耳部を形成する工程を含み、該耳部の幅がフィルム両端から10mm以上である
    ことを特徴とするアクリルフィルムの製造方法(ここで、Tgはアクリル樹脂のガラス転移温度を表す)。
  11. 前記フィルムを2本目以降のキャストロールを用いて搬送する工程を含み、かつ、
    2本目以降の全てのキャストロールと該フィルムが接触する時のそのキャストロールとフィルム間の温度差がそれぞれ2℃未満であることを特徴とする請求項10に記載のアクリルフィルムの製造方法。
  12. 前記ダイから押出されたメルトをキャストロール上で固化してフィルムを得る工程において、前記メルトがダイからキャストロールへ到達するまでの少なくとも一部において該メルトを加熱および/または保温する工程を含むことを特徴とする請求項10または11に記載のアクリルフィルムの製造方法。
  13. 前記ダイからメルトを押出す工程において、ダイリップのクリアランス(C)と製膜後のフィルムの厚み(T)の比(C/T)が8〜30であることを特徴とする請求項1012のいずれか一項に記載のアクリルフィルムの製造方法。
  14. 前記ダイからメルトを押出す工程において、ダイリップの温度をダイの温度より1℃〜30℃高くすることを特徴とする請求項1013のいずれか一項に記載のアクリルフィルムの製造方法。
  15. 前記ダイから押出されたメルトを固化して製膜する工程において、さらにキャストロールおよびタッチロールを用いて0.1MPa〜10MPaのタッチ圧で挟み込む工程を含み、かつ、前記キャストロールの温度と前記タッチロールの温度がともに(Tg−30℃)〜(Tg+10℃)であることを特徴とする請求項1014のいずれか一項に記載のアクリルフィルムの製造方法(ここで、Tgはアクリル樹脂のガラス転移温度を表す)。
  16. 前記タッチロールと前記キャストロール表面の算術平均高さRaが100nm以下であり、該タッチロールの外周速度Vtrと該キャストロールの外周速度Vcdの外周速度差が0.1〜1.5%であることを特徴とする、請求項15に記載のアクリルフィルムの製造方法。
  17. 前記タッチロールが弾性を有する金属ロールであることを特徴とする請求項15または16に記載のアクリルフィルムの製造方法。
  18. 請求項1017のいずれか一項に記載の製造方法で製膜したことを特徴とするアクリルフィルム。
  19. 請求項1〜および18のいずれか一項に記載のアクリルフィルムを用いた偏光板。
  20. 請求項1〜および18のいずれか一項に記載のアクリルフィルムを用いた光学補償フィルム。
  21. 請求項1〜および18のいずれか一項に記載のアクリルフィルムを用いた反射防止フィルム。
  22. 請求項1〜および18のいずれか一項に記載のアクリルフィルムを用いた液晶表示装置。
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