JP5590752B2 - 遮音構造および遮音カバー - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等のエンジン、排気管等の騒音発生源の近傍に設置される遮音構造および遮音カバーに関する。
自動車等は、エンジンが稼動すると、エンジン本体、オイルパン、排気管などが振動し、騒音を発生させる。この騒音対策として、騒音発生源の近傍で遮音する遮音カバーが各種提案されている。
特許文献1には、2層の表面板およびこれらに挾まれる吸音材層をそれぞれ所定の平面形状に成形して積層し、積層板の周縁部のほぼ全体にわたって折り返し部を形成した積層成形平板をカバーの形状に成形した遮熱性、遮音性カバーが開示されている。
また、特許文献2には、オイルパンカバーのカバー本体の周囲にオイルパン周囲における取付フランジに対向する対向フランジを形成し、対向フランジの内面に形成された発泡体にオイルパンを取付ける雄ねじの頭部を収容可能な凹部を形成し、凹部に雄ねじの頭部を収容した発泡体が取付フランジに密着するように構成することで、取付フランジ部分における振動を抑制した車両用エンジンのオイルパンカバーが開示されている。
特開平11−350970号公報 特開2004−278446号公報
ところで、騒音発生源の近傍に遮音カバーを設置した場合、ある特定周波数で遮音カバーが共振する共鳴透過現象が発生する。共鳴透過現象が発生する周波数(共鳴透過周波数)は、遮音カバーの重量と、騒音発生源と遮音カバーとの間の空気層の剛性(空気層がバネとして作用したときのバネ定数)と、騒音発生源と遮音カバーとの結合部の剛性(結合部がバネとして作用したときのバネ定数)とで決定される。共鳴透過現象により遮音カバーに伝わった振動は、遮音カバーから再放射されるので、遮音性能が悪化する。
この問題に対しては、従来、騒音発生源と遮音カバーとの間に吸音材を挿入したり、遮音カバーの重量を増加させたりする等の対策が採られているが、いずれも重量の増加を伴うため、省エネの観点から要請されている軽量化の流れに逆行するものとなっている。
本発明の目的は、重量を増加させることなく遮音性能を向上させることが可能な遮音構造および遮音カバーを提供することである。
本発明における遮音構造は、空気層を介して騒音発生源の少なくとも一部を覆うカバー本体と、前記騒音発生源と前記カバー本体とを結合する結合部と、を有し、前記結合部が、前記カバー本体に穿孔された貫通穴と、前記貫通穴に取り付けられて、前記騒音発生源に締結される締結部材が挿通される一対の固定部材と、前記一対の固定部材の間に設けられ、前記カバー本体を狭持する一対の弾性体と、を有し、前記カバー本体の重量と前記結合部の剛性とで決定される前記カバー本体の固有振動数が、前記カバー本体の重量と前記空気層の剛性とで決定される前記カバー本体の共鳴周波数以下に設定されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、カバー本体が共振して遮音性能が悪化する共鳴透過現象が発生する場合、遮音性能は、カバー本体の重量と空気層の剛性と結合部の剛性とで決定される共鳴透過周波数で決まるのであるが、騒音発生源とカバー本体との配置関係上、空気層の剛性を変更することはできないので、一対の弾性体でカバー本体を狭持することにより、結合部の剛性を低くする。これにより、共鳴透過周波数が低くなるので、重量を増加させることなく遮音性能を向上させることができる。また、カバー本体と結合部とが別体であるので、結合部の剛性を、弾性体のバネ定数に基づいて容易に設計することができる。
さらに、上記の構成によれば、共鳴透過周波数は、カバー本体の固有振動数と共鳴周波数とで決定されるのであるが、軽量化の観点からカバー本体の重量を軽くした場合、結合部の剛性がそのままであれば、カバー本体の固有振動数および共鳴周波数は高くなり、共鳴透過周波数も高くなるので、遮音性能は悪化する。一方、カバー本体の重量を軽くした場合に、合わせて結合部の剛性を低くすると、カバー本体の固有振動数、つまり、共鳴透過周波数を低く維持することが可能になり、遮音性能は維持され、または向上する。そして、結合部の剛性を低くして、カバー本体の固有振動数を共鳴周波数以下に設定すると、共鳴透過周波数が低くなるので、遮音性能を向上させることができる。
また、本発明における遮音構造においては、前記カバー本体の端部と前記騒音発生源との隙間の少なくとも一部を覆うように、前記カバー本体の端部の少なくとも一部が前記騒音発生源に対して相対変位可能に接触されていてよい。上記の構成によれば、カバー本体の端部の少なくとも一部を騒音発生源に接触させることによって、カバー本体の端部と騒音発生源との隙間の少なくとも一部がカバー本体の端部で覆われるので、カバー本体の端部と騒音発生源との隙間から騒音が漏れるのが抑制される。また、騒音発生源が振動するのに伴って騒音発生源とカバー本体との間に相対変位が生じ、接触部分で摩擦が生じるので、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、振動が減衰される。これにより、遮音性能を向上させることができる。また、騒音発生源に接触させるカバー本体の端部の面積を広狭させることで、摩擦発生量をコントロールすることができる。
また、本発明における遮音構造においては、前記騒音発生源に一端が、前記カバー本体に他端が、それぞれ取り付けられ、前記カバー本体の端部と前記騒音発生源との隙間の少なくとも一部を覆う遮蔽部材を更に有していてよい。上記の構成によれば、遮蔽部材によってカバー本体の端部と騒音発生源との隙間の少なくとも一部が覆われるので、この隙間から漏れた騒音が外部に漏れるのが抑制される。これにより、遮音性能を向上させることができる。
また、本発明における遮音構造において、前記遮蔽部材が制振性を有していてよい。上記の構成によれば、遮蔽部材が有する制振性によって、遮蔽部材を介して騒音発生源からカバー本体に伝達する振動が減衰されるので、カバー本体の共振が抑制される。これにより、遮音性能を向上させることができる。
また、本発明における遮音構造においては、前記カバー本体が、複数の平面を組み合わせて構成されていてよい。上記の構成によれば、カバー本体を曲面で構成するよりも、複数の平面を組み合わせて構成する方が、カバー本体の剛性が低くなるので、カバー本体の放射効率(振動から音への変換効率)が低くなる。これにより、カバー本体からの再放射が低減するので、遮音性能を向上させることができる。
また、本発明における遮音構造において、前記カバー本体には、複数の微細孔が設けられていてよい。上記の構成によれば、カバー本体に複数の微細孔が設けられていると、微細孔を通過する空気層内の空気に粘性抵抗による減衰作用と動圧損失による減衰作用とが生じるので、微細孔を通過した音波は吸音される。これにより、カバー本体の放射効率が低下し、カバー本体からの再放射が低減するので、遮音性能を向上させることができる。特に、微細孔の開口率が0.1%程度のときに、高周波に対する遮音性能を維持しながら、共鳴透過周波数の騒音を低減させることができる。
また、本発明における遮音カバーは、上記の遮音構造を有することを特徴とする。上記の構成によれば、騒音発生源からの騒音を十分に低減させることができる。
本発明の遮音構造および遮音カバーによると、結合部の剛性を低くすることで、共鳴透過周波数が低くなるので、重量を増加させることなく遮音性能を向上させることができる。
車両を示す概略側面図である。 エンジンカバーの概略図である。 結合部周辺の概略上面図である。 等価モデルを表す図である。 周波数と遮音性能との関係を示すグラフである。 周波数と遮音性能との関係を示すグラフである。 周波数と遮音性能との関係を示すグラフである。 結合部の概略側面図である。 エンジンカバーの概略図である。 結合部の概略側面図である。 結合部の概略斜視図である。 結合部の概略側面図である。 周波数と遮音性能との関係を示すグラフである。 周波数と遮音性能との関係を示すグラフである。 カバー本体の端部の概略斜視図である。 カバー本体の端部の概略側面図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
[第1実施形態]
(車両の構成)
本実施形態による遮音カバーとしてのエンジンカバー10は、図1に示すように、自動車等の車両11に設けられている。車両11には、エンジン12、エンジンオイルを溜めるオイルパン13、および、エンジン12から排出された排気ガスが通る排気管14が設けられており、これらは、エンジン12が稼働されると振動して騒音を発生させる。本実施形態のエンジンカバー10は、空気層21を介して騒音発生源であるエンジン12の上面を覆って、エンジン12からの騒音を遮音している。なお、エンジンカバー10がエンジン12の全部を覆っていてもよい。
(エンジンカバーの構成)
エンジンカバー10は、図2に示すように、カバー本体2と、カバー本体2とエンジン12とを結合する結合部3とを備えた遮音構造1を有している。結合部3は、カバー本体2の四隅に設けられている。
カバー本体2は、21個の平面2a〜2uが組み合わされることにより構成されている。カバー本体2の四隅に位置する平面2r,2s,2t,2uには、結合部3がそれぞれ設けられている。各平面2a〜2uは、エンジン12から発生する騒音の周波数に基づいて決定される曲げ波の波長の1/2以上の長さの平坦部を有している。このように、カバー本体2を曲面で構成するよりも、複数の平面を組み合わせて構成する方が、カバー本体2の剛性が低くなり、カバー本体2内を伝搬する曲げ波の波長が短くなるので、カバー本体2の放射効率(振動から音への変換効率)が低くなる。
また、カバー本体2には、複数の微細孔4が0.1%の開口率で設けられている。微細孔4を通過する空気層21内の空気には、微細孔4に起因した粘性抵抗による減衰作用が生じる。この粘性抵抗により、空気層21内の空気が有する空気振動の振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、空気振動が減衰するので、微細孔4を通過した音波は吸音される。また、微細孔4を通過する空気層21内の空気には、微細孔4に起因した動圧の圧損抵抗(動圧損失)による減衰作用が生じる。この動圧損失は、一般にベルヌーイの法則による動圧損失として知られている。この動圧損失により、空気層21内の空気が有する空気振動の振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、空気振動が減衰するので、微細孔4を通過した音波は吸音される。
図2のA部を拡大した図3に示すように、結合部3は、カバー本体2に穿孔された取付穴5と、この取付穴5に挿通されて、エンジン12に締結されるボルトやピン等の締結部材(図示せず)とを有している。また、遮音構造1は、結合部3を中心にして、カバー本体2に設けられたスリット6を有している。なお、エンジン12とカバー本体2とは、ボルト等の締結部材を用いずに結合されていてもよい。この場合、取付穴5は不要である。
スリット6は、図3(a)に示すように、結合部3を中心とする同一円周上に4つ設けられていてもよいし、図3(b)に示すように、結合部3を中心とする2つの異なる円周上に4つずつ設けられていてもよいし、図3(c)に示すように、結合部3を中心として渦巻状に設けられていてもよい。また、スリット6は、図3(d)に示すように、結合部3を挟むように直線状に2つ設けられていてもよいし、図3(e)に示すように、結合部3を中心とする円弧と直線とが組み合わされた形状で2つ設けられていてもよい。スリット6の数、形状およびサイズは、結合部3が所望の剛性となるように、適宜選択される。このように、カバー本体2にスリット6を設けることにより、結合部3の剛性が低くされている。
ここで、図4(a)に示すように、エンジン12とカバー本体2との間に位置する結合部3および空気層21をそれぞれバネとみると、図4(b)に示すように、カバー本体2の等価質量32と、結合部3および空気層21の並列バネ31とを用いた等価モデルで表わすことができる。
図4(a)において、エンジン12から騒音が発生すると、結合部3および空気層21をバネとしてカバー本体2が共振して遮音性能が悪化する共鳴透過現象が発生する。共鳴透過現象が発生する周波数(共鳴透過周波数)は、カバー本体2の重量をM、空気層21の剛性(空気層21がバネとして作用したときのバネ定数)をKa、結合部3の剛性(結合部3がバネとして作用したときのバネ定数)をKとすると、(Ka+K)/Mの平方根に比例する。共鳴透過現象によりカバー本体2に伝わった振動は、カバー本体2から再放射されるので、遮音構造1の遮音性能は悪化する。
また、図4(a)に示すように、結合部3を介して、エンジン12からカバー本体2に振動が伝達する。カバー本体2に伝わった振動は、カバー本体2から再放射されるので、遮音構造1の遮音性能は悪化する。
カバー本体2が共振して遮音性能が悪化する共鳴透過現象が発生する場合、遮音構造1の遮音性能は、カバー本体2の重量Mと空気層21の剛性Kaと結合部3の剛性Kとで決定される共鳴透過周波数で決まる。エンジン12とカバー本体2との配置関係上、空気層21の剛性Kaを変更することはできないので、図3に示すように、カバー本体2にスリット6を設けることにより、結合部3の剛性Kを低くしている。これにより、共鳴透過周波数が低くなるので、重量を増加させることなく遮音構造1の遮音性能を向上させることができる。
また、カバー本体2にスリット6を設けることで、部品点数の増加が回避されるから、コストの上昇を抑制することができる。
また、共鳴透過周波数は、カバー本体2の固有振動数と共鳴周波数とで決定される。カバー本体2の共鳴周波数は、カバー本体2の重量をM、空気層21の剛性をKaとすると、Ka/Mの平方根に比例する。カバー本体2の固有振動数は、カバー本体2の重量をM、結合部3の剛性をKとすると、K/Mの平方根に比例する。軽量化の観点からカバー本体2の重量を軽くした場合、結合部3の剛性がそのままであれば、カバー本体2の固有振動数および共鳴周波数は高くなり、共鳴透過周波数も高くなるので、遮音性能は悪化する。一方、カバー本体2の重量を軽くした場合に、合わせて結合部3の剛性を低くすると、カバー本体2の固有振動数、つまり、共鳴透過周波数を低く維持することが可能になり、遮音構造1の遮音性能は維持され、または向上する。そして、結合部3の剛性を低くして、カバー本体2の固有振動数を共鳴周波数以下に設定すると、共鳴透過周波数が低くなるので、遮音構造1の遮音性能を向上させることができる。
また、複数の平面を組み合わせてカバー本体2を構成すると、カバー本体2の剛性が低くなるので、カバー本体2の放射効率(振動から音への変換効率)が低くなる。これにより、カバー本体2からの再放射が低減するので、遮音構造1の遮音性能を向上させることができる。
また、カバー本体2に複数の微細孔4を0.1%の開口率で設けることで、エンジン12側から微細孔4を通過した音波は吸音されるので、カバー本体2の放射効率が低下し、カバー本体2からの再放射が低減する。これにより、遮音構造1の遮音性能を向上させることができる。
なお、カバー本体2における微細孔4の開口率は3%以下であればよい。直径3mm以下の微細孔4が3%以下の開口率でカバー本体2に複数設けられている場合、振動によってカバー本体2が空気を押し出す力が弱くなるので、遮音性能が向上する。また、直径1mm以下の微細孔4が1%以下の開口率でカバー本体2に複数設けられている場合、粘性抵抗および動圧損失による減衰作用の効果が顕著になるので、遮音性能が更に向上する。また、微細孔4が0.1%程度の開口率で複数設けられている場合、高周波に対する遮音性能を維持しながら、共鳴透過周波数の騒音を低減させることができる。
そして、このような遮音構造1を有するエンジンカバー10とすることにより、エンジン12からの騒音を十分に低減させることができる。
なお、結合部3からなるバネを空気層21からなるバネより大幅に柔らかくすると、結合部3の剛性は遮音構造1の遮音性能になんら影響を与えなくなる。この場合、遮音構造1の遮音性能は空気層21の剛性のみで決まる。
(実験結果)
本実施形態である遮音構造1を実施例とし、実施例のカバー本体2の重量の2倍の重量のカバー本体を用いた遮音構造を比較例として、実施例と比較例とで結合部の剛性を同じにして、遮音性能をそれぞれ測定した。その結果を図5(a)に示す。実施例のカバー本体2の重量が、比較例のカバー本体の重量の1/2で、結合部の剛性が同じであれば、実施例のカバー本体2の固有振動数および共鳴周波数は比較例のカバー本体の固有振動数および共鳴周波数よりも高くなり、実施例の共鳴透過周波数は、比較例の共鳴透過周波数よりも高くなる。そのため、約315Hzよりも高い周波数領域において、実施例の遮音構造1の遮音性能は、重量の重い比較例の遮音構造の遮音性能よりも悪化することがわかる。
次に、本実施形態である遮音構造1を実施例とし、実施例のカバー本体2の重量の2倍の重量のカバー本体を用いた遮音構造を比較例として、実施例の遮音構造1の結合部3の剛性を比較例の遮音構造の結合部の剛性よりも低くして、実施例のカバー本体2の固有振動数を共鳴周波数以下に設定して、遮音性能をそれぞれ測定した。その結果を図5(b)に示す。実施例のカバー本体2の重量が、比較例のカバー本体の重量の1/2で、且つ、実施例の結合部3の剛性を低くして、実施例のカバー本体2の固有振動数を共鳴周波数以下に設定すると、実施例の共鳴透過周波数は、比較例の共鳴透過周波数よりも低くなる。そのため、約400Hzよりも高い周波数領域において、実施例の遮音構造1の遮音性能は、重量の重い比較例の遮音構造の遮音性能よりも向上することがわかる。
以上から、遮音構造1の遮音性能は、カバー本体2の固有振動数と共鳴周波数とで決定される共鳴透過周波数で決まり、この共鳴透過周波数は、結合部の剛性を低くすれば低くなり、共鳴透過周波数が低いほど遮音性能が向上することがわかる。
次に、本実施形態である遮音構造1を実施例とし、曲面で構成されたカバー本体を用いた遮音構造を比較例として、遮音性能をそれぞれ測定した。その結果を図6に示す。カバー本体2が複数の平面を組み合わせて構成された実施例の遮音構造1の方が、カバー本体が曲面で構成された比較例の遮音構造よりも、遮音性能が向上することがわかる。
次に、本実施形態である、0.1%の開口率で複数の微細孔4が設けられたカバー本体2を用いた遮音構造1を実施例とし、微細孔が設けられていないカバー本体を用いた遮音構造を比較例として、遮音性能をそれぞれ測定した。その結果を図7に示す。カバー本体2に複数の微細孔4が設けられた実施例の遮音構造1は、カバー本体に微細孔が設けられていない比較例の遮音構造に対して、遮音性能が向上することがわかる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図8を用いて説明する。本実施形態の遮音構造51は、カバー本体2の四隅に結合部53が設けられている点で、第1実施形態の遮音構造1と異なっている。
結合部53は、カバー本体2に穿孔された貫通穴56と、貫通穴56に取り付けられた一対の固定部材54a,54bと、一対の固定部材54a,54bの間に設けられた一対の弾性体55a,55bと、を有している。
固定部材54aには、弾性体55aが当接するフランジ部58aが設けられている。固定部材54bには、弾性体55bが当接するフランジ部58bが設けられている。また、固定部材54aに設けられた凸部59aは、固定部材54bに設けられた凹部59bに嵌合されている。一対の固定部材54a,54bには、エンジン12に設けられたボルト穴57に螺合されるボルト(締結部材)22が挿通されている。このボルト22により、一対の固定部材54a,54bはエンジン12に固定されている。なお、エンジン12に締結される締結部材は、ボルト22に限定されず、ピンやビス等であってもよい。
一対の弾性体55a,55bは、カバー本体2を狭持している。本実施形態において、一対の弾性体55a,55bは、コイルバネであるが、これに限定されない。
カバー本体2は、エンジン12に対して固定されておらず、一対の弾性体55a,55bにより狭持されている。このように、一対の弾性体55a,55bでカバー本体2を狭持することにより、結合部53の剛性を低くする。これにより、カバー本体2の重量と空気層21の剛性と結合部53の剛性とで決定される共鳴透過周波数が低くなるので、重量を増加させることなく遮音性能を向上させることができる。
また、第1実施形態においては、結合部3の取付穴5がカバー本体2に設けられているので、結合部3の剛性を、カバー本体2の全体の形状やカバー本体2との位置関係を考慮して設計する必要がある。これに対して、本実施形態においては、結合部53とカバー本体2とが別体であるので、結合部53の剛性を設計する際に、カバー本体2の全体の形状やカバー本体2との位置関係を考慮する必要がない。よって、結合部53の剛性を、弾性体55a,55bのバネ定数に基づいて容易に設計することができる。
その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の遮音構造101を有するエンジンカバー(遮音カバー)110は、図9に示すように、エンジン112の一部を覆っている。なお、エンジンカバー110がエンジン112の全部を覆っていてもよい。エンジン112とエンジンカバー110との間には空気層21があり、遮音構造101が有するカバー本体2とエンジン112とは、第2実施形態と同様の結合部53によって結合されている。そして、カバー本体2の端部とエンジン112との間には隙間が存在している。
カバー本体2は、図10、図11に示すように、結合部53によって、エンジン112が有する凸部112aと結合されている。そして、カバー本体2は、その端部2xの一部がエンジン112の方に向かって折り曲げられており、折り曲げられた端部2xは凸部112aの側面112bに面接触している。なお、カバー本体2の端部2xの全部が折り曲げられて、凸部112aの側面112bに面接触していてもよい。
なお、第1実施形態および第2実施形態と同様に、カバー本体2は複数の平面が組み合わされて構成されており、カバー本体2には0.1%の開口率で複数の微細孔4が設けられている。また、カバー本体2の固有振動数は、カバー本体2の共鳴周波数以下に設定されている。
カバー本体2の端部2xの一部をエンジン112(凸部112a)に面接触させることによって、カバー本体2の端部2xと凸部112aとの隙間の一部がカバー本体2の端部2xで覆われる。これにより、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間から騒音が漏れるのが抑制されるので、遮音性能を向上させることができる。
また、エンジン112が振動するのに伴ってエンジン112(凸部112a)とカバー本体2との間に相対変位が生じ、面接触部分で摩擦が生じる。これにより、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、振動が減衰されるので、遮音性能を向上させることができる。そして、凸部112aの側面112bに接触させるカバー本体2の端部2xの面積を広狭させることで、摩擦発生量をコントロールすることができる。
なお、図12に示す遮音構造102のように、カバー本体2の端部2yの一部または全部が断面C字状に折り曲げられることで、カバー本体2の端部2yの一部または全部が凸部112aの側面112bに線接触していてもよい。この場合においても、カバー本体2の端部2yと凸部112aとの隙間の少なくとも一部がカバー本体2の端部2yで覆われるので、カバー本体2の端部2yとエンジン112との隙間から騒音が漏れるのが抑制される。また、エンジン112(凸部112a)とカバー本体2との相対変位により線接触部分で摩擦が生じるので、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、振動が減衰される。これにより、カバー本体2からの再放射が低減する。
その他の構成は、第2実施形態と同じであるので、その説明を省略する。なお、結合部53の代わりに第1実施形態の結合部3およびスリット6を備えた構成であってもよい。
(実験結果)
本実施形態である遮音構造101を実施例とし、カバー本体2の端部とエンジン112との間に隙間がある遮音構造を比較例として、遮音性能をそれぞれ測定した。その結果を図13に示す。400Hzよりも高い周波数領域において、実施例の遮音構造101の遮音性能は、比較例の遮音構造の遮音性能よりも向上することがわかる。これは、カバー本体2の端部2xの少なくとも一部をエンジン112に接触させることで、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間の少なくとも一部がカバー本体2の端部2xで覆われ、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間から騒音が漏れるのが抑制されるからである。
(計算結果)
次に、本実施形態である遮音構造101を実施例とし、実施例の遮音構造101に対して、カバー本体2の端部2xとエンジン112との間に生じる摩擦による減衰が10分の1の遮音構造を比較例として、遮音性能をそれぞれ計算した。その結果を図14に示す。エンジンカバー110を設置したことで騒音が大きくなる周波数である1000Hzにおいて、実施例の遮音構造101の遮音性能は、比較例の遮音構造の遮音性能よりも向上することがわかる。これは、エンジン112とカバー本体2の端部2xとの間に相対変位が生じることで接触部分に生じる摩擦力によりカバー本体2における振動減衰が大きくなり、比較例よりも振動が大きく減衰されるからである。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の遮音構造201は、図15に示すように、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間の一部を覆う金属製の遮蔽部材61を有している点で、第3実施形態の遮音構造101と異なっている。なお、遮蔽部材61が、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間の全部を覆っていてもよい。ここで、図示していないが、第1実施形態の結合部3または第2実施形態の結合部53により、エンジン112とカバー本体2とが結合されている。
遮蔽部材61は、一端側から他端側にかけて断面C字状に折り曲げられており、遮蔽部材61の一端部は、ボルト62によりエンジン112に剛結されているとともに、遮蔽部材61の他端部は、カバー本体2とともに、ボルト63によりエンジン112の凸部112aに取り付けられている。このように、遮蔽部材61が一端側から他端側にかけて断面C字状に折り曲げられることで、遮蔽部材61には弾性が付与されている。
なお、ボルト63の頭部と遮蔽部材61との間や、遮蔽部材61とカバー本体2との間に、ボルト63が挿通するコイルバネを設けてもよい。この場合、遮蔽部材61の弾性を大きくすることができる。また、ボルト63の代わりに、第1実施形態の結合部3または第2実施形態の結合部53によって、エンジン112が有する凸部112aとカバー本体2と遮蔽部材61の他端部とが結合されていてもよい。
カバー本体2の端部2xの少なくとも一部は、エンジン112の凸部112aに面接触している。これにより、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間の少なくとも一部がカバー本体2の端部2xで覆われるので、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間から騒音が漏れるのが抑制される。また、面接触部分で摩擦が生じることにより、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、振動が減衰される。
また、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間の一部から漏れた騒音は、この隙間を覆う遮蔽部材61により外部へ漏れるのが抑制される。これにより、遮音性能を向上させることができる。
また、遮蔽部材61が有する弾性により、遮蔽部材61は制振性を発揮する。そのため、遮蔽部材61を介してエンジン112からカバー本体2に伝達する振動の振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、エンジン112からカバー本体2に伝達する振動が減衰されるので、カバー本体2の共振が抑制される。これにより、遮音性能を向上させることができる。
なお、図16に示す遮音構造202のように、制振性を有する二重コルゲート板や制振鋼板などで構成された遮蔽部材71を、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間の少なくとも一部を覆うように、カバー本体2およびエンジン112の面に沿って取り付けてもよい。ここで、カバー本体2の端部2xの少なくとも一部はエンジン112に線接触しており、遮蔽部材71とカバー本体2とはボルト63とこれに螺合するナット64とで結合されている。
この場合においても、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間の少なくとも一部がカバー本体2の端部2xで覆われるので、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間から騒音が漏れるのが抑制される。また、線接触部分で摩擦が生じることにより、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、振動が減衰される。また、遮蔽部材71によって、カバー本体2の端部2xとエンジン112との隙間の少なくとも一部が覆われるので、この隙間から漏れた騒音が外部へ漏れるのが抑制される。また、遮蔽部材71が有する制振性によって、遮蔽部材71を介してエンジン112からカバー本体2に伝達する振動が減衰されるので、カバー本体2の共振が抑制される。
その他の構成は、第3実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
例えば、エンジンカバー10を遮音カバーとして説明したが、遮音カバーはオイルパンカバーや排気管カバーであってもよい。
また、一の遮音カバーにおいて、第1実施形態の遮音構造1と、第2実施形態の遮音構造51とを併用してもよい。第3実施形態の遮音構造101および第4実施形態の遮音構造201についても同様である。
1,51,101,102,201,202 遮音構造
2 カバー本体
2a〜2u 平面
2x,2y 端部
3,53 結合部
4 微細孔
5 取付穴
6 スリット
10,110 エンジンカバー(遮音カバー)
11 車両
12,112 エンジン
13 オイルパン
14 排気管
21 空気層
54a,54b 固定部材
55a,55b 弾性体
56 貫通穴
57 ボルト穴
61,71 遮蔽部材
112a 凸部
112b 側面

Claims (7)

  1. 空気層を介して騒音発生源の少なくとも一部を覆うカバー本体と、
    前記騒音発生源と前記カバー本体とを結合する結合部と、
    を有し、
    前記結合部が、
    前記カバー本体に穿孔された貫通穴と、
    前記貫通穴に取り付けられて、前記騒音発生源に締結される締結部材が挿通される一対の固定部材と、
    前記一対の固定部材の間に設けられ、前記カバー本体を狭持する一対の弾性体と、
    を有し、
    前記カバー本体の重量と前記結合部の剛性とで決定される前記カバー本体の固有振動数が、前記カバー本体の重量と前記空気層の剛性とで決定される前記カバー本体の共鳴周波数以下に設定されていることを特徴とする遮音構造。
  2. 前記カバー本体の端部と前記騒音発生源との隙間の少なくとも一部を覆うように、前記カバー本体の端部の少なくとも一部が前記騒音発生源に対して相対変位可能に接触されていることを特徴とする請求項1に記載の遮音構造。
  3. 前記騒音発生源に一端が、前記カバー本体に他端が、それぞれ取り付けられ、前記カバー本体の端部と前記騒音発生源との隙間の少なくとも一部を覆う遮蔽部材を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の遮音構造。
  4. 前記遮蔽部材が制振性を有していることを特徴とする請求項3に記載の遮音構造。
  5. 前記カバー本体が、複数の平面を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の遮音構造。
  6. 前記カバー本体には、複数の微細孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の遮音構造。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の遮音構造を有することを特徴とする遮音カバー。
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