JP5590418B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、高出力及び高エネルギー密度であり、且つ充放電サイクル特性に優れた蓄電デバイスである非水電解質二次電池に関するものである。
ノート型パソコン、携帯電話などの携帯型電子機器の急速な市場拡大に伴い、これらに用いるための、エネルギー密度が大きく、充放電サイクル特性に優れた小型大容量の二次電池への要求が高まっている。この要求に応えるためにリチウムイオン等のアルカリ金属イオンを荷電担体として用い、その荷電粒子による電荷授受に伴う電気化学反応を利用した非水電解質二次電池が開発されている。
ところで、電気自動車などのように車両に適用される非水電解質二次電池は車両に想定される耐久年数に合わせて、従来の範囲を超える耐久性能が求められている。非水電解質二次電池の充放電容量が劣化する要因としては充放電時に生起する正規の電池反応に加え、副反応である不可逆反応(皮膜形成時にLiを皮膜に取り込むなど)が進行する結果、電池反応に関与できるLi量が低下することが一因として挙げられる。
二次電池の耐久性を向上することを目的とする従来技術としては、「高容量正極を用いて初回充放電での不可逆容量によるエネルギー密度の低下を最小限に抑えた高エネルギー密度を有する非水系電解質リチウムイオン二次電池を提供すること」を課題として、「Si及びSi酸化物及びCから選択される少なくとも1種以上からなる負極の活物質1固有の初回不可逆容量によって消費される正極の活物質4を、より高容量な一般式Li3-xxN(MはCo、Ni、Cuから選ばれる1種以上の遷移金属であり、0≦x≦0.8)で表されるリチウム含有複合窒化物にし、初回放電以降の充放電に利用されない正極の活物質4の重さを低減することで、高エネルギー密度をもつ非水系電解質リチウムイオン二次電池を得る。」ことを解決手段として開示している(特許文献1)。
つまり、特許文献1に開示の二次電池では、高容量正極を用いることで電池系内の総Li量を増加させることにより、不可逆反応によるLi失活が生じても電池内におけるLiの絶対量を確保し、高容量化を達成している。
特開2010−102841号公報
Lithium Batteries (G. Pistoia編, 1994, Elsevier, Amsterdam) V.Gutmann, Electochim. Acta, 21, 661 (1976) V.Gutmann, "The Donor - Acceptor Approach to Melecular Interactions" Plenum Press, New York (1978)
しかしながら、特許文献1に開示の二次電池は、Li源を正極中に添加して見かけの容量を増やしているだけなので容量劣化の本質である不可逆反応の進行は抑制できない。そのため、添加したLi量に相当するだけの耐久性向上は認められるものの、いずれは容量の減少が問題になる。その結果、車両に適用される場合など、長期にわたり使用が想定される用途においてはその効果は大きくない。
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、不可逆反応の進行自体を抑制することで長期間にわたり容量劣化の進行を抑制することができる非水電解質二次電池を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する目的で本発明者らが鋭意検討を行った結果、充放電容量低下の一因である不可逆反応によるLiの消費を抑制する方法を見出した。具体的には非水電解質に所定のドナー数を有する有機溶媒である添加剤を含ませることにより、Liの消費を抑制することに成功した。不可逆反応の機序として皮膜形成時にLiを取り込むことが考えられるが、この添加剤はLiと溶媒和を形成することで皮膜に取り込まれることを抑制するものと考えられる。皮膜は溶媒が還元分解することで生成するが、添加剤に含有される有機溶媒のドナー数を所定値よりも大きくすることにより還元分解した生成物よりも添加剤に対する親和性の方が大きくなって皮膜への取り込みが抑制できるものと推測できる。
更に、多環式芳香族炭化水素が存在することにより、添加剤と溶媒和したLiイオンを固定化して安定した状態にすることができることも見出した。多環式芳香族炭化水素は溶媒和を安定化すると共に充放電時において溶媒和を形成したLiの解離を促進することができ、出力密度の向上が実現できることが明らかになった。
本発明は上記知見に基づき完成したものであり、上記課題を解決する請求項1に記載の非水電解質二次電池は、リチウムイオンの吸蔵、放出が可能な正極及び負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、
前記非水電解質はドナー数が18〜24の有機溶媒である添加剤と、前記非水電解質全体の質量を基準として0.1%〜2.0%の範囲で含まれる多環式芳香族炭化水素とを含むことを特徴とする。
ドナー数の値として18以上にすることによりLiイオンとの溶媒和を良く形成することができ、Liイオンの皮膜への取り込みを効果的に抑制できる。また、ドナー数の値として24以下にすることにより、充放電反応が進行して欲しいときにはLiイオンを容易に脱溶媒和させることができるためLiイオンの移動抵抗を小さくすることができ本非水電解質二次電池の出力を向上することができる。
ここで、本明細書における「ドナー数」とはGutmannのドナー数とも称されるもので、五塩化アンチモン中のSb原子がLewis塩基から電子対を受け取って容易に六配位構造になる強いLewis酸であることを利用して次のように定義されるものである。基準塩基として1,2−ジクロロエタンを選び、その中で五塩化アンチモンと被測定対象の有機溶媒(電子供与体として作用)との反応の反応熱(ΔH)を測定する。反応は発熱反応であり、ΔHの値を測定単位としてkcal・moL−1で表した値の符号を変えたものをドナー数と定義する。
また、多環式芳香族炭化水素とは環を2つ以上もつ芳香族であり、炭素と水素とからなる化合物である。なお、多環式芳香族炭化水素には含まれないが溶媒和したLiと相互作用可能な電子(π電子など)をもつもの、例えば複素環化合物(環が1つのものも含み、窒素、酸素、硫黄などの元素を含むことができる)、を用いても多環式芳香族炭化水素と同等の効果を奏することができる可能性がある。
上記課題を解決する請求項2に記載の非水電解質二次電池は、前記非水電解質は前記多環式芳香族炭化水素を含有することを特徴とする。先述したように多環式芳香族炭化水素は添加剤とLiとにより形成される溶媒和を安定化することができ、且つ、充放電時の解離を促進できるため、多環式芳香族炭化水素を必須の構成要素にすることで充放電容量低下の抑制効果と出力密度の向上との両立が実現できる。
上記課題を解決する請求項3に記載の非水電解質二次電池は、前記非水電解質全体の質量を基準として前記添加剤の含有量は1.2%〜15.4%であることを特徴とする。実施例の結果から、添加剤の量をこの範囲にすることにより確実に効果を奏することができる。
上記課題を解決する請求項4に記載の非水電解質二次電池は、前記多環式芳香族炭化水素は電子親和力が黒鉛の電子親和力よりも低いことを特徴とする。
また、上記課題を解決する請求項5に記載の非水電解質二次電池は、前記多環式芳香族炭化水素は電子親和力が負性の電子親和力であることを特徴とする。多環式芳香族炭化水素は溶媒和したLiイオンを固定化することが可能であり、特に多環式芳香族炭化水素の電子親和力を上述の範囲にすることによって溶媒和したLiイオンの安定性を保持するとともに、充放電時に溶媒和したLiイオンを解離することができる。
上記課題を解決する請求項6に記載の非水電解質二次電池は、前記非水電解質はオキサラト錯体及び/又はオキサラト誘導体錯体を含有することを特徴とする。
非水電解質二次電池における支持塩としては一般的にLiPFやLiBFが用いられている。そしてそれら以外にもLiBOB(リチウム−ビス(オキサラト)ボレート)などのオキサラト錯体をアニオンとする支持塩も提案されているが、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩からなるLiBOBなどにおいては、電荷が非局在して配位しているため、充分な耐久性を示さない場合があった。このようなオキサラト錯体を含む支持塩に対して、上述したようなドナー数をもつ有機溶媒である添加剤(必要に応じて多環式芳香族炭化水素も)を用いることにより、それらを添加しない場合と比較して、耐久性及び出力性能が向上することが分かった。これは、オキサラト錯体の非局在した電荷に対して、添加剤である有機溶媒から電荷が補償されることにより、オキサラト錯体が安定化できるものと推察される。特に多環式芳香族炭化水素が存在すると安定化の効果が非常に高くなる。
上記課題を解決する請求項1に記載の非水電解質二次電池は、前記正極はオリビン型リン酸鉄を含むことを特徴とする。オリビン型リン酸鉄を正極に用いた非水電解質二次電池は、比較的電位が低い範囲で使用される。添加剤として用いられる有機溶媒は高い電位の印加により分解が進行するおそれがあるが、比較的低い電位で使用するオリビン型リン酸鉄と共に用いることにより、添加剤自身の劣化を抑制することが可能になり長期間にわたり溶媒和によるLiイオンの不可逆的な消費を抑制することが可能になって耐久性の向上が実現できる。
本発明の非水電解質二次電池について実施形態に基づき以下詳細に説明を行う。本実施形態の非水電解質二次電池は、正極、負極、非水電解質、及びその他必要に応じて選択される部材を有する。
正極は、リチウムイオンを充電時には放出し、かつ放電時には吸蔵することができる正極活物質を備えていれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。特に、正極活物質、導電材及び結着材を混合して得られた合材が集電体に塗布されて活物質層を形成するものを用いることが好ましい。
正極活物質としては特に限定しないが、リチウム含有遷移金属酸化物が例示できる。リチウム含有遷移金属酸化物は、Liを脱挿入できる材料であり、層状構造又はスピネル構造のリチウム−金属複合酸化物が例示できる。具体的にはLi1−ZFePO、Li1−ZNiO、Li1−ZMnO、Li1−ZMn、Li1−ZCoO、Li1−ZCoMnNi(1−x−y)などがあり、それらのうちの1種以上含むことができる。この例示におけるZは0以上1未満、x及びyは0以上1以下の数を示す。各々にLi、Mg、Al、又はCo、Ti、Nb、Cr等の遷移金属を添加又は置換した材料等であってもよい。また、これらのリチウム−金属複合酸化物を単独で用いるばかりでなくこれらを複数種類混合して用いることもできる。また、導電性高分子材料やラジカルを有する材料などを混在させることもできる。
正極活物質としては、LiFePO、LiMn、LiCoO、LiNiO等のリチウム及び遷移金属の複合酸化物がより好ましい。すなわち、電子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど活物質としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好なサイクル特性とを有する電池が得られる。特に、LiFePOを採用することが望ましい。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機系結着剤を用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース等の化合物をあげることができる。
導電材は、正極の電気伝導性を確保する作用を有する。導電材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック(AB)、黒鉛等の炭素物質の1種又は2種以上の混合したものをあげることができる。
また、正極の集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレスなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔、網、パンチドメタル、フォームメタルなどを用いることができる。
負極は、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができる材料である。例えば金属リチウム、合金系材料、炭素系材料などであり、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。特に、負極活物質及び結着剤を混合して得られた合材が集電体に塗布されて活物質層を形成するものを用いることが好ましい。
ここで、負極活物質としては合金系材料を採用することが、電池容量増大化の観点からは望ましい。合金系材料としては、電池反応の進行に伴い、リチウム元素を吸蔵乃至脱離、又は、溶解乃至析出可能な材料であり、リチウム元素が合金化、化合物化、脱合金化、脱化合物化(合金化、化合物化を併せて本明細書では合金化等と称し、脱合金化、脱化合物化を併せて脱化合物化等とそれぞれ称することがある)できる材料である。本明細書において、「合金」には2種以上の金属元素からなるものに加え、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素との組み合わせからなるものも含むものとする。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうち2種以上が共存するものがある。
このような金属元素あるいは半金属元素としては、マグネシウム(Mg),ガリウム(Ga),アルミニウム(Al),ケイ素(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn),鉛(Pb),ヒ素(As),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),銀(Ag),金(Au),亜鉛(Zn),カドミウム(Cd),水銀(Hg),銅(Cu),バナジウム(V),インジウム(In),ホウ素(B),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y),ハフニウム(Hf)が例示でき、本実施形態の合金系材料はこれらの元素を単体又は合金にて含むことができる。
なかでも、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素の単体又は合金が好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)あるいはスズ(Sn)、又はこれらの合金である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、さらに、酸化物、硫化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物などの他の金属化合物が挙げられる。酸化物としては、MnO2、V25、V613、NiS、MoSなどが挙げられる。その他、比較的電位が卑でリチウムを吸蔵及び放出することが可能な酸化物として、例えば酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズなどが挙げられる。硫化物としてはNiS、MoSなどが挙げられる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機系結着剤を用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース等の化合物をあげることができる。
負極の集電体としては、例えば、銅、ニッケルなどを加工したもの、例えば板状に加工した箔、網、パンチドメタル、フォームメタルなどを用いることができる。
非水電解質は液体状、ゲル状などその形態は問わない。非水電解質は添加剤を含む。添加剤はドナー数が18〜24の有機溶媒からなり、2種以上の有機溶媒を混合したものであっても良い。ドナー数が18〜24であるか否かは前述したドナー数の測定方法により簡単に確認可能である。ドナー数が18〜24である有機溶媒を例示すると、2−メチルテトラヒドロフラン(DN:18.0。DNはドナー数を表す。以下同じ)、ジエチルエーテル(DN:19.2)、テトラヒドロフラン(DN:20.0)、1,2−ジメトキシエタン(DN:24.0)、オキソラン−2−オン(CAS Nr:96−48−0、DN:18.0)、リン酸トリブチル(CAS Nr:126−73−8、DN:23.7)、リン酸トリメチル(CAS Nr:512−56−1、DN:23.0)が挙げられる(非特許文献1〜3参照)。特にドナー数は上限値の24までの範囲において高い方が高い耐久性を示す。添加剤の添加量としては特に限定しないが後述する実施例での結果から非水電解質全体の質量を基準として1.2%〜15.4%の範囲で確実に効果が発現することを確認している。なお、添加剤は、原理的に添加する量に関わらず、添加されることによりLiイオンの皮膜への取込を抑制する作用を発揮することができるため、この範囲を外れていても耐久性向上の効果を発現することは明らかであると思われる。
液体状の非水電解質としては支持塩とその支持塩を溶解する有機溶媒とを含むものや、イオン液体が例示できる。有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、及びジエチルカーボネート(DEC)は酸化分解電位が4.3V以上と高く非水電解質の溶媒として採用することで非水電解質二次電池の安定性が高まることになる。
これらの溶媒の他にも、非水電解質二次電池の電解液に通常用いられる有機溶媒が採用できる。例えば、上述のカーボネート以外のカーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニルカーボネート(VC)、及びそれらの混合溶媒が採用できる。これらの溶媒に支持塩を溶解させることで電解質として作用させることができる。
支持塩としては特に限定しないが、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiSbF、LiSCN、LiClO、LiAlCl、NaClO、NaBF、NaI、これらの誘導体等の塩化合物が例示できる。これらの中でも、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiCFSOの誘導体、LiN(CFSOの誘導体及びLiC(CFSOの誘導体からなる群から選ばれる1種以上の塩を用いることが、電気特性の観点からは好ましい。
そして、支持塩としてはオキサラト錯体及び/又はオキサラト誘導体錯体を添加することもできる。オキサラト錯体及びオキサラト誘導体錯体としては、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiFOB)、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムビス(オキサラト)シラン、
Figure 0005590418
などが挙げられる。
非水電解質は非水電解質全体の質量を基準として2.0%以下の量で多環式芳香族炭化水素を含有することができる。多環式芳香族炭化水素の含有量の下限値は特に限定しないが、必須の構成要素とすることが望ましく、0.1%以上含有させることが更に望ましい。多環式芳香族炭化水素を含有することで添加剤により溶媒和したLiイオンに対して、電池反応により必要なときに脱溶媒和を速やかに進行させることができる。多環式芳香族炭化水素としては2以上の環をもち、炭素と水素とから構成される芳香族化合物である。多環式芳香族炭化水素としては特に限定しないが、電子親和力が黒鉛の値以下のものが望ましく、電子親和力が負性のものが更に望ましい。電子親和力の値は分子軌道計算にて計算できる。特にNIST(National Institute of Standards and Technology)が算出してそのウェブサイト(http://www.nist.gov/index.html)にて開示している値を用いることができる。
そして、非水電解質はゲル化剤を含有させることによりゲル状にすることもできる。
また、前述の支持塩・有機溶媒に加えるか又は代えて、非水電解質二次電池に用いることができるイオン液体を採用することもできる。イオン液体のカチオン成分としては、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムや、ジメチルエチルメトキシアンモニウムカチオン等が挙げられ、アニオン成分としは、BF4−、N(SOCF2−等が挙げられる。
非水電解質二次電池は正負極及び非水電解質の他、その他必要に応じて選択される部材を有することができる。そのような部材としては、セパレータ、ケースなどが例示できる。セパレータは正負極間に介装され、電気的な絶縁作用とイオン伝導作用とを両立する部材である。採用した非水電解質が液状である場合にはセパレータは、その非水電解質を保持する役割をも果たす。セパレータとしては、多孔質合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔質膜が例示できる。更に、セパレータは、正極及び負極の間の絶縁を担保する目的で、正極及び負極の面積よりも更に大きい形態を採用することが好ましい。
本発明の非水電解質二次電池について実施例に基づき以下詳細に説明を行う。
・試験電池の製造
試験例1−1〜1−19及び2−1〜2−10の試験電池をそれぞれ作成した。各試験電池は、表1〜4に示す構成要素を組み合わせて作成した。試験例1−1の試験電池を例として製造方法を説明するが、他の試験電池も同様に製造した。
組成式LiFePOで表されるリチウム複合酸化物を正極活物質として用い、グラファイトを負極活物質として用いたリチウム二次電池である。
正極は以下のように製造した。まず、上記正極活物質を80質量部と、導電材としてのABを10質量部と、結着材としてのPVdFを10質量部とを混合し、適量のN−メチル−2−ピロリドンを添加して混練することでペースト状の正極合材を得た。この正極合材を厚さ15μmのアルミニウム箔製正極集電体の両面に塗布、乾燥し、プレス工程を経て、シート状の正極を作製した。この正極を帯状に切断して正極板とした。正極板の一部から正極合材を掻き取って正極の電池リードを接合した。
負極は、グラファイトを98質量部と、結着材としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を1質量部と結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を1質量部とを混合して混練することでペースト状の負極合材を得た。この負極合材を厚さ10μmの銅箔製負極集電体の両面に塗布、乾燥し、プレス工程を経て、シート状の負極を作製した。この負極を帯状に切断して負極板とした。負極板の一部から負極合材を掻き取って負極の電池リードを接合した。尚、本実施例として水系のバインダーを用いたが、N−メチル―2−ピロリドンを用いた溶剤系のバインダーを用いてもよい。
セパレータを間に介装した正負極板を扁平型に巻回して巻回型の電極体を形成した。電極体の最外周はセパレータで巻回して周囲との絶縁を確保した。
非水電解質はEC:DMC:EMCが30:30:40の割合になるように混合した混合溶媒に対して、LiPFを10質量%、VCを2質量%で溶解させたものを用いた。非水電解質は更に添加剤としての2−メチルテトラヒドロフランを9.6質量%、多環式芳香族炭化水素としてのナフタレンを0.4質量%溶解させた。電池ケースはラミネートケースを用いた。
その他の試験電池についても構成要素が異なる部分以外は同様の方法にて試験電池を製造した。
・サイクル試験(耐久特性評価)
各試験電池についてコンディショニングを行った後、雰囲気温度60℃で、CC−CV充電(1C、4.0V)及びCC放電(2.0Vまで)を1サイクルとして300サイクル充放電を行い、1回目の充電容量(初期容量)に対する容量維持率を算出した。容量維持率は試験電池2−1の容量維持率を100としたときの相対値として算出した。この値は高い方が耐久特性に優れている。
・出力特性試験
SOCを60%としたときに、放電レート1C、2C、3C、5C、及び10Cにて放電を行ったそれぞれの場合において放電開始前から10秒経過したときの電圧の傾きを求め、それらの値より内部抵抗を測定した。測定条件は雰囲気温度−15℃とした。試験電池2−1の内部抵抗を100としたときの相対値として算出した。この値は小さい方が出力特性に優れている。
Figure 0005590418
表1に示す試験電池は試験電池2−1を除き、添加剤の種類を代えただけで添加量は試験電池1−1と同じとした。また、その他の明示しない構成要素も試験電池1−1と同じにした。
・添加剤の有無及び種類の検討
表1より明らかなように、添加剤を含有させていない試験電池2−1(比較例)の結果と比べて検討すると、ドナー数が18.0〜24.0の範囲に入っている試験電池1−1〜1−4においては耐久特性、出力特性共に、比較例の試験電池よりも非常に優れたものになっていることが分かった。試験電池2−2はドナー数が18.0よりも小さいため、出力特性は向上しているものの、耐久特性が充分では無かった。試験電池2−3はドナー数が24.0よりも大きいため、耐久特性は向上しているものの、出力特性が充分では無かった。つまり、ドナー数の範囲が18.0〜24.0にあれば耐久特性及び出力特性の双方共に優れた電池を提供できることが分かった。
Figure 0005590418
表2に示す試験電池は試験電池2−1を除き、多環式芳香族炭化水素の種類を代えただけで添加量は試験電池1−1と同じとした。また、その他の明示しない構成要素も試験電池1−1と同じにした。
・多環式芳香族炭化水素の有無及び種類の検討
表2より明らかなように、多環式芳香族炭化水素の電子親和力の値が黒鉛の値(1.65eV)よりも小さい試験電池1−3,1−5〜1−11は、多環式芳香族炭化水素を含有させていない試験電池2−1(比較例)の結果や、多環式芳香族炭化水素は添加しているものの電子親和力の値が黒鉛の値よりも大きな試験電池2−5の結果よりも優れた出力特性を示すことが明らかになった。
特に、電子親和力が負性になっている試験電池1−3及び1−5については、電子親和力の値がそれらよりも大きい(又は多環式芳香族炭化水素を含有しない)その他の試験電池よりも出力特性に優れていることが分かった。
Figure 0005590418
表3に示す試験電池は試験電池2−1を除き、添加剤の種類をテトラヒドロフランに変更した上で表に示す量を添加したこと、及び、多環式芳香族炭化水素の添加量を表に示す量を添加したこと以外は試験電池1−1と同じとした。また、その他の明示しない構成要素も試験電池1−1と同じにした。
・添加剤及び多環式芳香族炭化水素の添加量の検討
表3より明らかなように、試験電池2−1及び2−6との比較の結果、多環式芳香族炭化水素は添加量が2.0質量%以下の範囲であれば、添加剤の添加量に関わらず耐久特性の向上が認められた。従って、多環式芳香族炭化水素が2.0質量%以下の添加量であれば耐久特性の向上効果が認められることが分かった。試験電池1−3及び1−12〜14について、試験電池1−15と比較した結果から、多環式芳香族炭化水素を添加することにより出力特性が向上することが明らかになった。また、試験電池2−6との比較の結果、多環式芳香族炭化水素の添加量を2.0%以下にすることで出力特性を高く保つことが可能であることが明らかになった。
Figure 0005590418
表4に示す試験電池のうち、試験電池1−16〜1−19は非水電解質に表に示すオキサラト錯体(又はオキサラト誘導体錯体)をそれぞれ2質量%添加した以外は試験電池1−3と同様の構成をもつものとした。また、試験電池2−7〜2−10は非水電解質に表に示すオキサラト錯体(又はオキサラト誘導体錯体)をそれぞれ2質量%添加した以外は試験電池2−1と同様の構成をもつものとした。
・非水電解質へのオキサラト錯体などの添加の効果の評価
表4より明らかなように、試験電池1−3との比較により、オキサラト錯体などを添加した試験電池1−16〜1−19は、耐久特性及び出力特性の双方共に優れていることが明らかになった。従って、オキサラト錯体などとの併用は効果的であることが分かった。
添加剤と多環式芳香族炭化水素とを含有せずに、オキサラト錯体などを含有する試験電池2−7〜2−10では、オキサラト錯体などを含有しない試験電池と比べて耐久特性及び出力特性の双方共に殆ど同じか僅かに低下していることからも添加剤と多環式芳香族炭化水素とに加えてオキサラト錯体などを併用する効果が裏付けられた。

Claims (6)

  1. リチウムイオンの吸蔵、放出が可能な正極及び負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、
    前記非水電解質はドナー数が18〜24の有機溶媒である添加剤と、前記非水電解質全体の質量を基準として0.1%〜2.0%の範囲で含まれる多環式芳香族炭化水素とを含み、
    前記正極はオリビン型リン酸鉄を含むことを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 前記非水電解質は前記多環式芳香族炭化水素を含有する請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記非水電解質全体の質量を基準として前記添加剤の含有量は1.2%〜15.4%である請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記多環式芳香族炭化水素は電子親和力が黒鉛の電子親和力よりも低い請求項1〜3のうちの何れか1項に記載の非水電解質二次電池。
  5. 前記多環式芳香族炭化水素は電子親和力が負性の電子親和力である請求項1〜3のうちの何れか1項に記載の非水電解質二次電池。
  6. 前記非水電解質はオキサラト錯体及び/又はオキサラト誘導体錯体を含有する請求項1〜5のうちの何れか1項に記載の非水電解質二次電池。
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