JP2008123708A - 電池用非水電解液及びそれを備えた非水電解液電池 - Google Patents

電池用非水電解液及びそれを備えた非水電解液電池 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた安全性を有する上、電池性能を向上させることが可能な電池用非水電解液を提供する。
【解決手段】リン−窒素間二重結合を有するイオン液体と、アントラセン、アントラセン誘導体、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、インデン、フルオレン及び9,10-ジヒドロアントラセンからなる群から選択される少なくとも一種の多環式化合物と、支持塩とを含有する電池用非水電解液である。なお、前記多環式化合物の含有量は、電池用非水電解液全体の0.1〜3質量%の範囲が好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、電池用非水電解液及びそれを備えた非水電解液電池に関し、特に特定のイオン液体及び多環式化合物を含有し、優れた安全性及び電池性能を有する電池用非水電解液に関するものである。
近年、電気自動車や燃料電池自動車の主電源若しくは補助電源として、又は小型電子機器の電源として、軽量且つ長寿命で、高エネルギー密度の電池が求められている。これに対し、リチウムを負極活物質とする非水電解液電池は、リチウムの電極電位が金属中で最も低く、単位体積当りの電気容量が大きいために、エネルギー密度の高い電池の一つとして知られており、1次電池・2次電池を問わず多くの種類のものが活発に研究され、一部が実用化し市場に供給されている。例えば、非水電解液1次電池は、カメラ、電子ウォッチ及び各種メモリーバックアップ用電源として用いられている。また、非水電解液2次電池は、ノート型パソコン及び携帯電話等の駆動電源として用いられており、更には、電気自動車や燃料電池自動車の主電源若しくは補助電源として用いることが検討されている。
これらの非水電解液電池においては、負極活物質のリチウムが水及びアルコール等の活性プロトンを有する化合物と激しく反応するため、該電池に使用される電解液は、エステル化合物及びエーテル化合物等の非プロトン性有機溶媒に限られている。しかしながら、上記非プロトン性有機溶媒は、負極活物質のリチウムとの反応性が低いものの、例えば、電池の短絡時等に大電流が急激に流れ、電池が異常に発熱した際に、気化・分解してガスを発生したり、発生したガス及び熱により電池の破裂・発火を引き起こしたり、短絡時に生じる火花が引火する等の危険性が高い。
この問題に対して、非水電解液を難燃化する方法が検討されており、例えば、非水電解液にリン酸トリメチル等のリン酸エステル類を用いたり、非プロトン性有機溶媒にリン酸エステル類を添加したりする方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。しかしながら、これらリン酸エステル類は、充放電を繰り返すことで、徐々に負極で還元分解され、充放電効率及びサイクル特性等の電池特性が大きく劣化するという問題がある。
一方、1992年のWilkesらの報告以来、常温で液体であり、イオン伝導性に優れた物質として、イオン液体が注目を集めている。該イオン液体は、陽イオンと陰イオンが静電気的引力で結合しており、イオンキャリア数が非常に多く、更には粘度も比較的低いため、イオンの移動度が常温でも高く、従って、イオン伝導性が非常に高いという特性を有する。また、イオン液体は、陽イオンと陰イオンのみで構成されているため、沸点が高く、液体状態を保持できる温度範囲が非常に広い。更に、該イオン液体は、蒸気圧が殆どないため、引火性が低く、熱的安定性も非常に優れている(非特許文献1及び2参照)。これら様々な利点を有するため、イオン液体は、昨今、非水電解液2次電池の電解液への適用が検討されている(特許文献4及び5参照)。しかしながら、これら従来のイオン液体は、常温で液体であるために通常有機基を含む。そのため、これら従来のイオン液体は、燃焼の危険性があり、従来のイオン液体を添加しても、非水電解液の発火・引火の危険性を十分に低減できない。
特開平4−184870号公報 特開平8−22839号公報 特開2000−182669号公報 特開2004−111294号公報 特開2004−146346号公報 J. Electrochem. Soc., 144 (1997) 3881 「イオン性液体の機能創成と応用」,エヌ. ティー. エス,(2004)
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、優れた安全性を有する上、電池性能を向上させることが可能な電池用非水電解液を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる電解液を備え、優れた安全性及び電池性能を有する非水電解液電池を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、リン−窒素間二重結合を有するイオン液体及び特定の多環式化合物を含む非水電解液が高い安全性を有し、また、該電解液を非水電解液電池に適用することで、非水電解液電池の電池性能を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の電池用非水電解液は、
リン−窒素間二重結合を有するイオン液体と、
アントラセン、アントラセン誘導体、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、インデン、フルオレン及び9,10-ジヒドロアントラセンからなる群から選択される少なくとも一種の多環式化合物と、
支持塩と
を含有することを特徴とする。
本発明の電池用非水電解液は、更に、非プロトン性有機溶媒を含有することが好ましい。
本発明の電池用非水電解液において、前記多環式化合物としては、アントラセン及びアントラセン誘導体が好ましい。
本発明の電池用非水電解液の好適例においては、前記多環式化合物の含有量が前記電池用非水電解液全体の0.1〜3質量%である。
本発明の電池用非水電解液において、前記イオン液体としては、下記一般式(I):
(NPR1 2)n ・・・ (I)
[式中、R1は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR1は、下記一般式(II):
−N+2 3- ・・・ (II)
(式中、R2は、それぞれ独立して一価の置換基又は水素で、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、R2は互いに結合して環を形成してもよく;X-は一価のアニオンを表す)で表されるイオン性置換基であり、且つ少なくとも一つのR1はフッ素であり;nは3又は4である]で表されるイオン液体が好ましい。
また、本発明の非水電解液電池は、上記の電池用非水電解液と、正極と、負極とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、リン−窒素間二重結合を有するイオン液体と、特定の多環式化合物とを含有し、燃焼の危険性が低く、安全な電池用非水電解液を提供することができる。また、かかる電解液を備え、安全性及び電池性能に優れた非水電解液電池を提供することができる。
<電池用非水電解液>
以下に、本発明の電池用非水電解液を詳細に説明する。本発明の電池用非水電解液は、リン−窒素間二重結合を有するイオン液体と、アントラセン、アントラセン誘導体、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、インデン、フルオレン及び9,10-ジヒドロアントラセンからなる群から選択される少なくとも一種の多環式化合物と、支持塩とを含有することを特徴とする。
本発明の電池用非水電解液に含まれるイオン液体は、分解して、窒素ガスやリン酸エステル等を発生する。そして、発生した窒素ガスの作用によって、電解液が燃焼する危険性が低減されると共に、発生したリン酸エステル等の作用によって、電池を構成する高分子材料の連鎖分解が抑制されるため、電池の発火・引火の危険性を効果的に低減することができる。また、上記イオン液体がハロゲンを含む場合、万が一の燃焼時にはハロゲンが活性ラジカルの捕捉剤として機能し、電解液の燃焼の危険性を低減する。更に、上記イオン液体が有機置換基を含む場合、燃焼時にセパレーター上に炭化物(チャー)を生成するため酸素の遮断効果もある。また、理由は必ずしも明らかではないが、上記イオン液体と上記多環式化合物により生じる電極表面の皮膜が、該電解液の分解を効果的に抑制するため、安定した充放電特性を実現でき、サイクル特性等の電池性能を改善することができる。
本発明の電池用非水電解液に用いるイオン液体は、少なくとも融点が50℃以下であり、融点が20℃以下であることが好ましい。また、該イオン液体は、カチオン部及びアニオン部からなり、該カチオン部及びアニオン部が静電気的引力で結合している。ここで、該イオン液体は、カチオン部にリン−窒素間二重結合を有することが好ましく、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物であることが更に好ましい。
上記一般式(I)の化合物は、リン−窒素間二重結合を複数有する環状ホスファゼン化合物の一種であるため、高い燃焼抑制効果を有する。また、式(I)中のR1の少なくとも一つが上記式(II)のイオン性置換基であるため、イオン性を有する。更に、式(I)中のR1の少なくとも一つがフッ素であるため、高い不燃性を有する。なお、イオン性化合物の不燃性の観点から、式(I)中のR1は、少なくとも一つが上記式(II)のイオン性置換基であり、その他の総てがフッ素であることが更に好ましい。
上記一般式(I)中のR1は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基であり、但し、少なくとも一つのR1は、上記一般式(II)で表されるイオン性置換基であり、且つ少なくとも一つのR1はフッ素である。ここで、R1におけるハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられ、これらの中でも、フッ素が特に好ましい。また、R1における一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、アリールオキシ基、アリール基、カルボキシル基、アシル基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、プロポキシ基等や、二重結合を含むアリルオキシ基やビニルオキシ基等、更にはメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基等が挙げられ、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基等が挙げられ、上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、上記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられる。なお、上記一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されていることが好ましく、該ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられる。
上記一般式(I)中のnは、3〜4であり、原料物質の入手容易性の観点から、3が特に好ましい。
上記一般式(II)で表される置換基は、−NR2 3とXとが主として静電気的引力によって結合してなる。そのため、式(II)のイオン性置換基を有する式(I)の化合物は、イオン性を有する。
上記一般式(II)中のR2は、それぞれ独立して一価の置換基又は水素であり、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、R2は互いに結合して環を形成してもよい。ここで、R2における一価の置換基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、複数のR2が互いに結合して環を形成する場合において、3つのR2のいずれか2つが結合して形成する環としては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等のアザシクロアルカン環や、該アザシクロアルカン環のメチレン基がカルボニル基に置き換わった構造のアザシクロアルカノン環等が挙げられ、3つのR2が結合して形成する環としては、ピリジン環等が挙げられる。なお、上記一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素等で置換されていてもよい。
上記一般式(II)中のX-は一価のアニオンを表す。式(II)のX-における一価のアニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、BF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、CF3SO3 -、(CF3SO2)2-、(C25SO2)2-、(C37SO2)2-、(CF3SO2)(C25SO2)N-、(CF3SO2)(C37SO2)N-、(C25SO2)(C37SO2)N-等が挙げられる。
上記イオン性化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、下記一般式(III):
(NPR3 2)n ・・・ (III)
[式中、R3は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR3は塩素で、少なくとも一つのR3はフッ素であり;nは3又は4である]で表される環状ホスファゼン化合物と、下記一般式(IV):
NR2 3 ・・・ (IV)
[式中、R2は、上記と同義である]で表される1級、2級又は3級のアミンとを反応させることで、下記一般式(V):
(NPR4 2)n ・・・ (V)
[式中、R4は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR4は、下記一般式(VI):
−N+2 3Cl- ・・・ (VI)
(式中、R2は上記と同義である)で表されるイオン性置換基で、少なくとも一つのR4はフッ素であり;nは上記と同義である]で表されるイオン性化合物(即ち、上記一般式(I)で表され、上記一般式(II)中のX-がCl-であるイオン性化合物)を生成させることができる。
更に、上記一般式(V)で表されるイオン性化合物の塩素イオンは、適宜他の一価のアニオンと置換することができ、例えば、上記一般式(V)で表されるイオン性化合物と下記一般式(VII):
+- ・・・ (VII)
[式中、A+は一価の陽イオンを表し、X-は一価のアニオンを表す]で表される塩(イオン交換剤)とを反応(イオン交換反応)させることで、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物を生成させることができる。
なお、上記一般式(III)で表される環状ホスファゼン化合物と上記一般式(IV)で表されるアミンとを単に混合するだけでも、上記一般式(V)で表されるイオン性化合物を生成させることができるが、生成した式(V)のイオン性化合物が不安定で単離が難しいことがあるため、水相及び有機相からなる二相系に、上記一般式(III)で表される環状ホスファゼン化合物と、上記一般式(IV)で表されるアミンとを加え、反応させて、上記一般式(V)で表されるイオン性化合物を生成させることが好ましい。この方法では、式(III)の環状ホスファゼン化合物及び式(IV)のアミンは有機相に主として存在し、一方、生成する式(V)の化合物はイオン性を有するため主として水相に存在する。そのため、水相と有機相とを分離した後、水相の水を公知の方法で乾燥させることで、式(V)のイオン性化合物を単離することができ、単離された式(V)のイオン性化合物は、大気下でも安定に存在する。
上記一般式(III)において、R3は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR3は塩素で、少なくとも一つのR3はフッ素である。ここで、式(III)中のR3が塩素である部分に式(IV)のアミンが付加するため、出発物質である式(III)の環状ホスファゼン化合物の骨格のリンに結合する塩素の数を調整することで、式(V)のイオン性化合物中の式(VI)で表されるイオン性置換基の導入数をコントロールすることができる。
上記一般式(III)のR3において、ハロゲン元素としては、塩素及びフッ素の他に、臭素等が好適に挙げられ、これらの中でも、塩素及びフッ素が好ましい。一方、R3における一価の置換基としては、R1における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができる。また、式(III)において、nは3又は4であり、入手容易性の観点から、3が好ましい。
上記一般式(III)で表される環状ホスファゼン化合物は、例えば、式(III)中のR3が総て塩素である市販のホスファゼン化合物を出発物質として、総ての塩素をフッ素化剤によりフッ素化した後、目的とする塩素置換部位にアルコキシ基やアミン基等を導入した後、HClやホスゲン等の塩素化剤により再び塩素化を行う方法や、使用する式(III)中のR3が総て塩素である市販のホスファゼン化合物に対して導入するフッ素の当量を計算した上で、必要量のフッ素化剤を添加する方法等で合成することができる。ここで、再塩素化における塩素化剤やフッ素化におけるフッ素化剤の使用量や反応条件を変えることで、式(III)のR3における塩素数をコントロールすることができる。
上記一般式(IV)において、R2は、上記一般式(II)中のR2と同義で、それぞれ独立して一価の置換基又は水素であり、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、該R2は互いに結合して環を形成してもよい。式(IV)のR2における一価の置換基としては、式(II)のR2における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができ、また、式(IV)の3つのR2のいずれか2つが結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環としては、式(II)の3つのR2のいずれか2つが互いに結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環の項で例示したものを同様に挙げることができる。式(IV)で表されるアミンとして、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等の環状3級アミン、ジメチルアニリン等のジアルキル置換アニリンやピリジン等の芳香族3級アミン、アニリン等の芳香族1級アミン等が挙げられ、これらの中でも、3級アミンが好ましい。
上記一般式(V)において、R4は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR4は、上記一般式(VI)で表されるイオン性置換基で、少なくとも一つのR4はフッ素である。R4におけるハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。なお、式(IV)のアミンの使用量等を調整することで、R4の一部を塩素とすることができる。一方、R4における一価の置換基としては、R1における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができる。また、式(V)中のnは3又は4であり、原料の入手容易性の観点から、3が好ましい。
上記一般式(VI)において、R2は、上記一般式(II)中のR2と同義で、それぞれ独立して一価の置換基又は水素であり、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、該R2は互いに結合して環を形成してもよい。式(VI)のR2における一価の置換基としては、式(II)のR2における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができ、また、式(VI)の3つのR2のいずれか2つが結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環としては、式(II)の3つのR2のいずれか2つが互いに結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環の項で例示したものを同様に挙げることができる。
式(V)のイオン性化合物の製造にあたって、式(IV)のアミンの使用量は、目的とするアミンの導入量に応じて適宜選択でき、例えば、式(III)の環状ホスファゼン化合物中のR3における塩素1molあたり、1〜2.4molの範囲が好ましい。
また、式(III)の環状ホスファゼン化合物と式(IV)のアミンとの反応における反応温度は、特に制限されるものではないが、20℃〜80℃の範囲が好ましく、室温でも十分に反応が進行する。また、反応圧力も特に限定されず、大気圧下で実施することができる。
上記水相及び有機相からなる二相系において、有機相に使用する有機溶媒としては、水に対して混和性が無く、式(III)の環状ホスファゼン化合物と式(IV)のアミンを溶解できるものが好ましく、具体的には、クロロホルム、トルエン等の極性の低い溶媒が好ましい。また、上記水相及び有機相の使用量は、特に限定されるものではなく、水相の体積は、式(III)の環状ホスファゼン化合物1mLに対して0.2〜5mLの範囲が好ましく、有機相の体積は、式(III)の環状ホスファゼン化合物1mLに対して2〜5mLの範囲が好ましい。
上記一般式(VII)において、A+は一価の陽イオンを表し、X-は一価の陰イオンを表す。式(VII)のA+における一価の陽イオンとしては、Ag+、Li+等が挙げられる。また、式(VII)のX-における一価の陰イオンとしては、Cl-以外の一価の陰イオン、具体的には、BF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、CF3SO3 -の他、(CF3SO2)2-、(C25SO2)2-、(C37SO2)2-、(CF3SO2)(C25SO2)N-、(CF3SO2)(C37SO2)N-、(C25SO2)(C37SO2)N-等のイミドイオンが挙げられる。ここで、A+がLi+である場合、X-としてはイミドイオンが好ましい。小さなイオン半径を有するLi+とは対照的に、上記イミドイオンは大きなイオン半径を有するため、陽イオンと陰イオンとのイオン半径の違いによる影響(ソフト・ハード塩基・酸の関係)で良好に反応し、置換反応が進むからである。一方、A+がAg+である場合は、ほぼ総ての陰イオンを使用することができる。式(VII)の塩としてAg+-を使用した場合、AgClが沈降するため、不純物の除去も簡単に行うことができる。
式(I)のイオン性化合物の製造にあたって、式(VII)の塩の使用量は、式(V)のイオン性化合物の塩素イオンの量に応じて適宜選択でき、例えば、式(V)のイオン性化合物の塩素イオン1molあたり、1〜1.5molの範囲が好ましい。
また、式(V)のイオン性化合物と式(VII)の塩との反応における反応温度は、特に制限されるものではないが、室温〜50℃の範囲が好ましく、室温でも十分に反応が進行する。また、反応圧力も特に限定されず、大気圧下で実施することができる。
上記式(V)のイオン性化合物と式(VII)の塩との反応は、水相で行うことが好ましい。なお、上記式(V)のイオン性化合物と、式(VII)で表され且つA+がAg+である銀塩との反応では、副生成物として塩化銀が生成するが、該塩化銀は、水に対する溶解度が非常に低いため、反応を水相で行う場合、副生成物の分離が容易となる。目的物質である式(I)のイオン性化合物の水相からの単離は、水相の水を公知の方法で蒸発させればよい。上記水相の体積は、特に限定されるものではないが、式(V)のイオン性化合物1mLに対して2〜5mLの範囲が好ましい。
本発明の電池用非水電解液において、上記イオン液体の含有量は、1体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることが更に好ましい。1体積%以上のイオン液体の添加で、電池部材と電解液の濡れ性向上作用が好適に発現し、5体積%以上のイオン液体の添加により電解液に高い難燃性が付与される。
本発明の電池用非水電解液は、更に特定の多環式化合物を含むことを特徴とする。該多環式化合物としては、アントラセン、アントラセン誘導体、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(即ち、テトラリン)、インデン、フルオレン及び9,10-ジヒドロアントラセンが挙げられ、これらの中でも、アントラセン及びアントラセン誘導体が好ましい。ここで、アントラセン誘導体としては、アントラセンの水素の1〜4個がアルキル基で置換された化合物が好ましく、該アルキル基の炭素数は1〜3の範囲が好ましく、該アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基が挙げられる。また、アントラセン誘導体として、具体的には、1-メチルアントラセン、1-エチルアントラセン、1-プロピルアントラセン、2-メチルアントラセン、2-エチルアントラセン、2-プロピルアントラセン、9-メチルアントラセン、9-エチルアントラセン、9-プロピルアントラセン、1,2-ジメチルアントラセン、1,2-ジエチルアントラセン、1,2-ジプロピルアントラセン、1,3-ジメチルアントラセン、1,3-ジエチルアントラセン、1,3-ジプロピルアントラセン、1,9-ジメチルアントラセン、1,9-ジエチルアントラセン、1,9-ジプロピルアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジエチルアントラセン、9,10-ジプロピルアントラセン、1,2,3-トリメチルアントラセン、1,2,3-トリエチルアントラセン、1,2,3-トリプロピルアントラセン、1,2,3,4-テトラメチルアントラセン、1,2,3,4-テトラエチルアントラセン、1,2,3,4-テトラプロピルアントラセン等が挙げられる。これら多環式化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
上記多環式化合物の含有量は、電池性能のバランスの観点から、電池用非水電解液全体の0.1〜3質量%の範囲が好ましい。
本発明の電池用非水電解液に用いられる支持塩としては、リチウムイオンのイオン源となる支持塩が好ましい。該支持塩としては、特に制限はないが、例えば、LiClO4、LiBF4、LiBC48、LiPF6、LiCF3SO3、LiAsF6、LiC49SO3、Li(CF3SO2)2N及びLi(C25SO2)2N等のリチウム塩が好適に挙げられる。これら支持塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の電池用非水電解液中の支持塩の濃度としては、0.2〜1.5mol/L(M)の範囲が好ましく、0.5〜1mol/Lの範囲が更に好ましい。支持塩の濃度が0.2mol/L未満では、電解液の導電性を充分に確保することができず、電池の放電特性及び充電特性に支障をきたすことがあり、1.5mol/Lを超えると、電解液の粘度が上昇し、リチウムイオンの移動度を充分に確保できないため、前述と同様に電解液の導電性を充分に確保できず、電池の放電特性及び充電特性に支障をきたすことがある。
本発明の電池用非水電解液は、更に、非プロトン性有機溶媒を含有することが好ましく、その含有量は、電解液の安全性の観点から、95体積%以下であることが好ましい。該非プロトン性有機溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジフェニルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン、メチルフォルメート(MF)等のエステル類、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類が好適に挙げられる。これらの中でも、1次電池の非水電解液用の非プロトン性有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン及びγ-ブチロラクトンが好ましく、一方、2次電池の非水電解液用の非プロトン性有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びメチルフォルメートが好ましい。なお、環状のエステル類は、比誘電率が高く支持塩の溶解性に優れる点で好適であり、一方、鎖状のエステル類及び鎖状のエーテル類は、低粘度であるため、電解液の低粘度化の点で好適である。これら非プロトン性有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<非水電解液電池>
次に、本発明の非水電解液電池を詳細に説明する。本発明の非水電解液電池は、上述の電池用非水電解液と、正極と、負極とを備え、必要に応じて、セパレーター等の非水電解液電池の技術分野で通常使用されている他の部材を備えることができ、1次電池であっても、2次電池であってもよい。
本発明の非水電解液電池の正極活物質は1次電池と2次電池で一部異なり、例えば、非水電解液1次電池の正極活物質としては、フッ化黒鉛[(CFx)n]、MnO2(電気化学合成であっても化学合成であってもよい)、V25、MoO3、Ag2CrO4、CuO、CuS、FeS2、SO2、SOCl2、TiS2等が好適に挙げられ、これらの中でも、高容量で安全性が高く、更には放電電位が高く電解液の濡れ性に優れる点で、MnO2、フッ化黒鉛が好ましい。これら正極活物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、非水電解液2次電池の正極活物質としては、V25、V613、MnO2、MnO3等の金属酸化物、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiFeO2及びLiFePO4等のリチウム含有複合酸化物、TiS2、MoS2等の金属硫化物、ポリアニリン等の導電性ポリマー等が好適に挙げられる。上記リチウム含有複合酸化物は、Fe、Mn、Co、Al及びNiからなる群から選択される2種又は3種の遷移金属を含む複合酸化物であってもよく、この場合、該複合酸化物は、LiMnxCoyNi(1-x-y)2[式中、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1]、LiMnxNi(1-x)2[式中、0≦x<1]、LiMnxCo(1-x)2[式中、0≦x<1]、LiCoxNi(1-x)2[式中、0≦x<1]、LiCoxNiyAl(1-x-y)2[式中、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1]、LiFexCoyNi(1-x-y)2[式中、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1]、或いはLiMnxFey2-x-y等で表される。これらの中でも、高容量で安全性が高く、高電圧に安定な点で、リチウム含有複合酸化物が好適である。これら正極活物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の非水電解液電池の負極活物質は1次電池と2次電池で一部異なり、例えば、非水電解液1次電池の負極活物質としては、リチウム金属自体の他、リチウム合金等が挙げられる。リチウムと合金をつくる金属としては、Sn、Pb、Al、Au、Pt、In、Zn、Cd、Ag、Mg等が挙げられる。これらの中でも、埋蔵量の多さ、毒性の観点からAl、Zn、Mgが好ましい。これら負極活物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、非水電解液2次電池の負極活物質としては、リチウム金属自体、リチウムとAl、In、Sn、Si、Pb又はZn等との合金、リチウムをドープした黒鉛等の炭素材料、TiO2等の金属酸化物、及びTiO2−P24等の金属酸化物複合材料等が好適に挙げられ、これらの中でも安全性がより高く、電解液の濡れ性に優れる点で、黒鉛等の炭素材料が好ましく、黒鉛が特に好ましい。ここで、黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等、広くは易黒鉛化カーボンや難黒鉛化カーボンが挙げられる。これら負極活物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記正極及び負極には、必要に応じて導電剤、結着剤を混合することができ、導電剤としてはアセチレンブラック等が挙げられ、結着剤としてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。これらの添加剤は、従来と同様の配合割合で用いることができる。
また、上記正極及び負極の形状としては、特に制限はなく、電極として公知の形状の中から適宜選択することができる。例えば、シート状、円柱形状、板状形状、スパイラル形状等が挙げられる。
本発明の非水電解液電池に使用できる他の部材としては、非水電解液電池において、正負極間に、両極の接触による電流の短絡を防止する役割で介在させるセパレーターが挙げられる。セパレーターの材質としては、両極の接触を確実に防止し得、且つ電解液を通したり含んだりできる材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース系、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製の不織布、薄層フィルム等が好適に挙げられる。これらの中でも、厚さ20〜50μm程度のポリプロピレン又はポリエチレン製の微孔性フィルム、セルロース系、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムが特に好適である。本発明では、上述のセパレーターの他にも、通常電池に使用されている公知の各部材が好適に使用できる。
以上に説明した本発明の非水電解液電池の形態としては、特に制限はなく、コインタイプ、ボタンタイプ、ペーパータイプ、角型又はスパイラル構造の円筒型電池等、種々の公知の形態が好適に挙げられる。ボタンタイプの場合は、シート状の正極及び負極を作製し、該正極及び負極でセパレーターを挟む等して、非水電解液電池を作製することができる。また、スパイラル構造の場合は、例えば、シート状の正極を作製して集電体を挟み、これに、シート状の負極を重ね合わせて巻き上げる等して、非水電解液電池を作製することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(イオン液体合成例1)
水 15mLとクロロホルム 15mLからなる二相系を調製し、該二相系にトリエチルアミン5mLと、上記一般式(III)で表され、式中のnが3であって、6つのR3のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。その後、該二相系を冷却しながら撹拌すると、クロロホルム相に白色結晶が沈殿した。常温に戻して撹拌すると該白色結晶は消えた。なお、クロロホルム相は、反応前は無色であったが、反応後は白濁した。ピペットを用いて水相を採取し、エバポレートした後、真空ポンプを用いて水を留去したところ、白色結晶 5.2g(収率 53%)を得た。次に、得られた白色結晶 2g及びAgPF6 2.2gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体A 1.8g(収率 79%)を得た。得られたイオン液体Aを、重水に溶解させて1H-NMRで分析し、更にDMSOに溶解させて31P-NMRで分析したところ、該イオン液体Aは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ一つが−N+(CH2CH2)3PF6 -であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図1に、31P-NMRの結果を図2に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2008123708
(イオン液体合成例2)
水 15mLとクロロホルム 15mLからなる二相系を調製し、該二相系にアニリン5mLと、上記一般式(III)で表され、式中のnが3であって、6つのR3のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。その後、該二相系を冷却しながら撹拌すると、クロロホルム相に白色結晶が沈殿した。常温に戻して撹拌すると該白色結晶は消えた。なお、クロロホルム相は、反応前は無色であったが、反応後は白濁した。ピペットを用いて水相を採取し、エバポレートした後、真空ポンプを用いて水を留去したところ、白色結晶 4.8g(収率 54%)を得た。次に、得られた白色結晶 2g及びAgPF6 2.3gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体B 1.6g(収率 72%)を得た。得られたイオン液体Bを、重水に溶解させて1H-NMRで分析し、更にDMSOに溶解させて31P-NMRで分析したところ、該イオン液体Bは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ一つが−N+265PF6 -であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図3に、31P-NMRの結果を図4に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2008123708
(実施例1)
上記のようにして得たイオン液体A 5体積%と、EC/PC/DMC[エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比1/1/3で含む混合溶媒]95体積%からなる混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させ、これにアントラセン 0.1質量%を添加して、非水電解液を調製した。次に、得られた非水電解液の安全性を下記の方法で評価し、表1に示す結果を得た。
(1)電解液の安全性
UL(アンダーライティングラボラトリー)規格のUL94HB法をアレンジした方法で、大気環境下において着火した炎の燃焼挙動から電解液の安全性を評価した。その際、着火性、燃焼性、炭化物の生成、二次着火時の現象についても観察した。具体的には、UL試験基準に基づき、不燃性石英ファイバーに電解液 1.0mLを染み込ませて、127mm×12.7mmの試験片を作製して行った。ここで、試験炎が試験片に着火しない場合(燃焼長:0mm)を「不燃性」、着火した炎が25mmラインまで到達せず且つ落下物にも着火が認められない場合を「難燃性」、着火した炎が25〜100mmラインで消火し且つ落下物にも着火が認められない場合を「自己消火性」、着火した炎が100mmラインを超えた場合を「燃焼性」と評価した。
(2)リチウム二次電池の作製
次に、正極活物質としでリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用い、該複合酸化物と、導電剤であるアセチレンブラックと、結着剤であるフッ素樹脂とを、質量比で90:5:5で混合し、これをN-メチルピロリドンに分散させてスラリーとしたものを、正極集電体としてのアルミニウム箔に塗布・乾燥した後、φ16mmの円板状に打ち抜いて、正極を作製した。一方、負極としては、リチウム箔(厚さ0.5mm)をφ16mmに打ち抜いたものを負極とした。次いで、正極端子を兼ねたステンレスケース内に、正極と負極とを、上記電解液を含浸したセパレーター(微孔性フィルム:ポリプロピレン製)を介して重ねて収容し、ポリプロピレン製ガスケットを介して負極端子を兼ねるステンレス製封口板で密封して、容量が4mAhのCR2016型のコイン型電池(リチウム二次電池)を作製した。得られた電池の初期放電容量、50サイクル後の放電容量、放電容量維持率を下記の方法で測定し、表1に示す結果を得た。
(3)初期及び50サイクル後の放電容量
20℃の環境下で、上限電圧4.2V、下限電圧3.0V、放電電流50mA、充電電流50mAの条件で充放電を行い、この時の放電容量を既知の電極重量で除することにより初期放電容量(mAh/g)を求めた。また、同様の充放電条件で50サイクルまで充放電を繰り返して、50サイクル後の放電容量を求めた。更に、下記の式:
放電容量維持率=50サイクル後の放電容量/初期放電容量×100(%)
に従って放電容量維持率を算出した。
(実施例2〜12)
表1及び2に示す配合の混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させ、更に表1及び2に示す添加剤を添加して、非水電解液を調製し、実施例1と同様にして安全性を評価した。また、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電池性能を評価した。結果を表1及び2に示す。なお、表1及び2中、多環式化合物Cはアントラセンであり、多環式化合物Dは1-メチルアントラセンであり、EC/PC/DMCはエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比1/1/3で含む混合有機溶媒を示す。
(比較例1〜2)
表1及び2に示す配合の混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させて、非水電解液を調製し、実施例1と同様にして安全性を評価した。また、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電池性能を評価した。結果を表1及び2に示す。
Figure 2008123708
Figure 2008123708
表1及び2から、リン−窒素間二重結合を有するイオン液体と、特定の多環式化合物とを含有する電解液は、安全性及び電池性能に優れることが分る。なお、実施例3、6、9及び12から、多環式化合物を5質量%含む電解液は、サイクル特性が悪いので、多環式化合物の含有量は、電解液全体の0.1〜3質量%の範囲が好ましいことが確認された。
イオン液体合成例1で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例1で得られた生成物の31P-NMRの結果である。 イオン液体合成例2で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例2で得られた生成物の31P-NMRの結果である。

Claims (6)

  1. リン−窒素間二重結合を有するイオン液体と、
    アントラセン、アントラセン誘導体、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、インデン、フルオレン及び9,10-ジヒドロアントラセンからなる群から選択される少なくとも一種の多環式化合物と、
    支持塩と
    を含有する電池用非水電解液。
  2. 更に、非プロトン性有機溶媒を含有することを特徴とする請求項1に記載の電池用非水電解液。
  3. 前記多環式化合物がアントラセン又はアントラセン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の電池用非水電解液。
  4. 前記多環式化合物の含有量が前記電池用非水電解液全体の0.1〜3質量%であることを特徴とする請求項1に記載の電池用非水電解液。
  5. 前記イオン液体が、下記一般式(I):
    (NPR1 2)n ・・・ (I)
    [式中、R1は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR1は、下記一般式(II):
    −N+2 3- ・・・ (II)
    (式中、R2は、それぞれ独立して一価の置換基又は水素で、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、R2は互いに結合して環を形成してもよく;X-は一価のアニオンを表す)で表されるイオン性置換基であり、且つ少なくとも一つのR1はフッ素であり;nは3又は4である]で表されることを特徴とする請求項1に記載の電池用非水電解液。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の電池用非水電解液と、正極と、負極とを備えた非水電解液電池。
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JP2013037864A (ja) * 2011-08-06 2013-02-21 Denso Corp 非水電解質二次電池

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