JP5589295B2 - 含窒素シラン化合物粉末及びその製造方法 - Google Patents

含窒素シラン化合物粉末及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、新規な含窒素シラン化合物粉末に関するものであり、詳しくは、窒化珪素粉末の製造原料として有用な、含窒素シラン化合物粉末およびその製造方法に関するものである。
シリコンジイミドや、シリコンアミド、シリコンニトロゲンイミドなどのような含窒素シラン化合物の加熱分解により窒化珪素を製造する、いわゆる「イミド分解法」は、金属不純物が少なく焼結性の良い窒化珪素粉末の製造方法とされ、その中間原料であるシリコンジイミドのような含窒素シラン化合物の合成については、いくつかの方法が公知である。
特許文献1には、液体アンモニアと、液体アンモニアと溶けあわずかつ比重が液体アンモニアより大きい有機溶媒とが、比重差により二層に分離している反応系の下部有機溶媒層中にクロルシランと前記有機溶媒との混合溶液を供給することによって、クロルシランと液体アンモニアを反応させるにあたり、クロルシランと前記有機溶媒との混合溶液における有機溶媒/クロルシランの容積比を2〜4の範囲とする方法が開示されている。
特許文献2には、液体アンモニアと、液体アンモニアと溶けあわずかつ比重が液体アンモニアより大きい有機溶媒とが、比重差により二層に分離している反応系の下部有機溶媒層中にハロゲン化シランと前記有機溶媒との混合溶液を供給することによって、ハロゲン化シランと液体アンモニアを反応させるにあたり、定常状態でのハロゲン化シランと液体アンモニアの体積比率を変化させる方法が開示されている。
特許文献3には、液体アンモニアと、液体アンモニアと溶けあわずかつ比重が液体アンモニアより大きい有機溶媒とが、比重差により二層に分離している反応系の下部有機溶媒層中にハロゲン化シランと前記有機溶媒との混合溶液を供給することによって、ハロゲン化シランと液体アンモニアを反応させるにあたり、反応温度を制御する方法が開示されている。
特許文献4には、−69〜−33.3℃の温度で液体アンモニアに対し反応場所の空間部よりハロゲン化珪素を滴下する反応方法を含む、珪素ジイミドの製造方法が開示されている。
特許文献5では、特許文献6に従って合成される有機アミノシランを、50〜300℃の温度で加圧下にアンモニアと反応させてシリコンジイミドを製造する方法が開示されている。
ハロゲン化シランと液体アンモニアとの反応では、目的物のシリコンジイミド、あるいは主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物の他にハロゲン化アンモニウムが副生する。ハロゲン化アンモニウムは液体アンモニアに容易に溶解する一方、液体アンモニアと溶けあわないような低極性の有機溶媒には難溶である。従って、特許文献1〜3に記載の方法による反応混合物から、シリコンジイミド、あるいは主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物をろ過分離したろ液は、副生ハロゲン化アンモニウムが溶存した液体アンモニアと、有機溶媒との混合物として回収される。反応原料としての液体アンモニア及び有機溶媒の再利用は工業的実施の上で必須であるが、前記のような混合物から液体アンモニア及び有機溶媒を分離精製して再利用するためには、複雑かつ多段の工程が必要になるという問題がある。
例えば特許文献7には、液体アンモニアと、液体アンモニアと溶けあわずかつ比重が液体アンモニアより大きい有機溶媒とが、比重差により二層に分離している反応系の下部有機溶媒層中に、ハロゲン化シランと前記有機溶媒との混合溶液を供給することによって、ハロゲン化シランと液体アンモニアを反応させて含窒素シラン化合物を製造するに際し、反応液から含窒素シラン化合物を分離した後、有機溶媒、液体アンモニア及び副生するハロゲン化アンモニウムの混合溶液を薄膜蒸発器に供給してそれぞれを分離回収する工程において、混合溶液に対して2.3〜20.0容量%の水を添加する方法が開示されている。この方法によれば、蒸発器の塔頂からアンモニアが取り出され、缶液には有機溶媒、ハロゲン化アンモニウム及び水に少量のアンモニアが混入した混合物が回収される。次にこの混合物から有機溶媒を分離する必要があるが、これは静置分離のような方法でなし得ることが示唆されている。しかしながら、ハロゲン化シランは容易に加水分解する性質を有するため、実際にハロゲン化シランと混合する溶媒として再利用するにあたっては、微量混入している水分などを除去するための更なる精製工程が必須である。こうして例示されるように、有機溶媒、液体アンモニア及び副生するハロゲン化アンモニウムの混合溶液からアンモニア及び有機溶媒をそれぞれ回収して再利用するためには複雑かつ多段の分離/精製工程が必要となる。
この問題を回避するためには、有機溶剤を使用することなくハロゲン化シランと液体アンモニアとを直接反応させることが望まれる。また、前記の複雑な回収工程における設備費用を低減するためには、有機溶剤の使用量をできるだけ少なくすることにより設備の小型化を進めることも有効な手段である。しかしながら、特許文献1には、クロルシランと有機溶媒との混合溶液における有機溶媒/クロルシランの容積比を2より小さくすると生成物中の塩素分を洗浄除去することが困難になることが記載されており、有機溶媒を使用しないか又は低減した条件下において、ハロゲン分が少なく高純度の、主としてシリコンジイミドより成る含窒素シラン化合物粉末を製造するためには克服すべき技術課題が存在していた。
一方、特許文献4で開示されている方法では、確かに有機溶媒は使用されないが、−69〜−33.3℃、好ましくは−65℃、という極端に低い温度を必要とする。このため、極低温の冷媒設備が必要とされ、工業的製法として著しく不経済であると言わざるを得ない。また得られる珪素ジイミドについては、最も純度の良好な例において99.98%又はそれ以上の純度との記載があるのみであり、このときの塩素分の含有量については記載されていない。
また、常温付近での液状のハロゲン化シランと液体アンモニアとの反応については、例えば特許文献5に記述されているように、副生するハロゲン化アンモニウムが反応装置を閉塞し得ることが指摘されているのみであり、有機溶媒を用いることなく、ハロゲン化シランと液体アンモニアとを直接混合し反応させる具体的方法については開示も示唆もされていない状況である。
特許文献5の方法における原料の有機アミノシランは、例えば特許文献6に従い、メチルアミンと石油エーテルで希釈したSiClを−20℃以下の温度で反応させることなどによって別途製造する必要がある。また、特許文献5の方法で副生する有機アミンは、回収して有機アミノシラン合成に再利用することが、工業的見地から合理的である。従って特許文献5のシリコンジイミド製造法は、特許文献6に開示されているような有機アミノシラン合成法と組み合わせて実施される技術であるため、工程の多段化/複雑化が不可避であり、効率的とは言えない。
特許文献1〜3の方法に関する更なる問題点として、得られるシリコンジイミド、あるいは主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物の見掛け密度が低いことも挙げられる。特許文献2で得られるシリコンジイミドの見掛け密度は高々0.062g/cm、特許文献3で得られる主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物では高々0.090g/cmといずれも低く、改善の余地がある。このことに起因して、以下の二つの工程で例示されるように、製造装置の容積あたりの利用率が小さく経済的でないという問題が存在する。
第一に、ろ過洗浄工程が効率的でないという問題がある。特許文献1〜3記載の反応で得られたスラリーは、固相としてシリコンジイミド、あるいは、主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物を含有し、液相として、副生したハロゲン化アンモニウムを溶質とするが溶解した液体アンモニア及び有機溶剤から構成される。ハロゲン化アンモニウムは大量に副生するため(テトラハロシランを用いた場合、理論的にシリコンジイミドの4倍モル量)、このスラリーをろ過器に導入し液体アンモニアを用いた洗浄/ろ過を行うことによってハロゲン化アンモニウムを除去する必要がある。
このとき、非特許文献1によれば、スラリー化によるケーク洗浄において、攪拌槽を用いた全部でN段からなる並流式ろ過洗浄装置でのN段目のろ過器から排出される湿潤ろ過ケーク中の溶質濃度Cは下記式1に従って求められる。
Figure 0005589295
:洗浄前の母液中溶質濃度
:供給洗浄液中の溶質濃度
:単位時間当たりに装置に供給する洗浄液量
:ケーク中のろ液量
特許文献1〜3記載の反応により得られる、シリコンジイミド、あるいは、主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物のろ過洗浄においては、副生するハロゲン化アンモニウムが前記溶質に相当する。シリコンジイミド、あるいは、主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物の見掛け密度が低いと、ろ過ケークあたりの空隙量が多くなるため、前記の式1におけるVが大きくなってしまう。このとき、見掛け密度が高くVが小さいケークの洗浄との比較において、同じN段で同じ溶質濃度Cに到達するためには、装置に供給する洗浄液量Vをより大きくする必要があることが式1からわかり、見掛け密度が低いことが洗浄工程の効率を損なっていることが示される。
第二に、焼成工程の容積効率が低いという問題がある。イミド分解法では、得られたシリコンジイミド、あるいは主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物を段階を経て焼成することにより窒化珪素粉末が製造される。特許文献2、3の方法によれば、シリコンジイミド、あるいは主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物は、まず600〜1200℃の温度で仮焼され、非晶質窒化珪素粉末へと誘導される。このとき、シリコンジイミド、あるいは主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物の見掛け密度が低いと、例えば焼成るつぼの単位容積あたりに充填できる重量が少なくなってしまうため、消費エネルギー当たりの生産量が少なく効率的でない。
一方、特許文献8には、含窒素シラン化合物を加圧成型又は造粒することにより、ケイ素として0.1g/cm以上のかさ密度を有する成型体、粉体として焼成工程に供することを特徴とする窒化珪素粉末の製造方法が開示されている。シリコンジイミドの組成式をSi(NH)とすると、この方法は、シリコンジイミドの見掛け密度として0.2g/cm以上の成型体又は粉体を調製することに相当し、前記の焼成工程における容積効率を改良するためのひとつの手段としても捉えることができるが、その実施においては、シリコンジイミド、あるいは主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物を加圧成型あるいは造粒するために追加的な工程と設備が必要になり、製造コストが高くなってしまうという問題がある。
特許第3077870号明細書 特許第3475614号公報 特許第3550919号公報 特開昭62−223008号公報 特開平4−265211号公報 特開平5−59186号公報 特開平7−223811号公報 特公昭61−11886号公報
丸善 化学工学便覧(化学工学会編改訂五版)pp707−708
本発明は上記のような従来技術の問題点に鑑みなされたものである。すなわち、ハロゲン化シランと液体アンモニアの反応による含窒素シラン化合物の製造において、有機溶媒の回収工程を不要とするか又は小型化するとともに、ハロゲン不純物が少なく高純度で、見掛け密度の高い含窒素シラン化合物を提供することで、ろ過洗浄工程や焼成工程の効率を向上させ、窒化珪素の製造工程の生産性を高めることを目的とする。
上記目的を達成するためハロゲン化シランと液体アンモニアとの反応について鋭意検討した結果、ハロゲン化シランと液体アンモニアとを混合して反応させるに際し、不活性ガスを反応器内に導入することによって、該反応器内の圧力を、該反応器内に含有される反応混合物の温度における液体アンモニアの蒸気圧より0.5MPa以上高く保ち、かつ、ハロゲン化シランを供給する配管の吐出口を液体アンモニア中に設置し、好ましくは吐出線速度を5cm/sec以上とすることによって、ハロゲン化シランを無溶媒あるいはハロゲン化シラン濃度が50vol%以上の不活性有機溶媒の溶液として供給でき、有機溶媒の使用量をゼロか又は大幅に削減できるとともに、有機溶媒/ハロゲン化シランの体積比が1以下の条件下においてもハロゲン不純物の少ない高純度な含窒素シラン化合物が得られることを見出した。併せて、驚くべきことに、このような条件下で反応させた後、液体アンモニアで洗浄し、乾燥して得られる含窒素シラン化合物粉末の見掛け密度が、従来に比べ大幅に高くなることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、ハロゲン化シラン化合物と液体アンモニアを反応させ、液体アンモニアで洗浄し、乾燥させて得られる、含窒素シラン化合物粉末であって、前記乾燥後の見掛け密度が0.10〜0.30g/cmであり、含有されるハロゲン分の濃度が重量基準で100ppm以下であることを特徴とする、含窒素シラン化合物粉末に関する。
また、本発明は、前記乾燥後の見掛け密度が0.12〜0.25g/cmであることを特徴とする前記含窒素シラン化合物粉末に関する。
また本発明は、炭素含有量が0.03wt%未満であることを特徴とする前記含窒素シラン化合物粉末に関する。
さらに、本発明は、ハロゲン化シラン化合物を液体アンモニアと混合して反応させるに際し、不活性ガスを反応器内に導入することにより、該反応器内の圧力を、該反応器内に含有される反応混合物の温度における液体アンモニアの蒸気圧より0.5MPa以上高く保ち、かつ、ハロゲン化シラン化合物を無溶媒かあるいはハロゲン化シラン化合物濃度が50vol%以上の不活性有機溶媒の溶液として液体アンモニア中に供給することを特徴とする、含窒素シラン化合物粉末の製造方法に関する。
また、本発明は、ハロゲン化シラン化合物を無溶媒かあるいはハロゲン化シラン化合物濃度が50vol%以上の不活性有機溶媒の溶液として液体アンモニア中に供給するに際し、その吐出線速度を5cm/sec以上とすることを特徴とする前記含窒素シラン化合物粉末の製造方法に関する。
本発明の含窒素シラン化合物粉末は見掛け密度が飛躍的に増加しているため、前記式1に示したVを小さくでき、効率的にハロゲン化アンモニウムの洗浄除去を進めることができる。
また、加圧成型などの追加的な工程を経由することなく、焼成工程における容積効率を大幅に改善することができる。例えば、下記式2に従って算出されるrを用いると、従来の加圧成型工程を経由しない含窒素シラン化合物に比べ、同じ容積の焼成るつぼであればr倍の重量での充填が可能になり、また、同じ重量で焼成を行う場合には1/rの容積にまでるつぼの小型化が可能になる。
r=(本発明の含窒素シラン化合物粉末の見掛け密度)/(加圧成型工程を経由しない従来の含窒素シラン化合物粉末の見掛け密度) ・・・・(式2)
以上のような効果により、ろ過洗浄や焼成工程の効率を高め、窒化珪素粉末製造の生産性を向上させることができる。
さらに、本発明の含窒素シラン化合物粉末の製造方法では、上記のような優れた含窒素シラン化合物粉末を得ることができるとともに、有機溶媒を使用しない、あるいは使用量を低減した条件下でハロゲン化シランと液体アンモニアとの反応を実施できる。このため、炭素含有量が低いという特徴を有し、更に有機溶媒の回収工程を不要とするか又は小型化することができる。
本発明の製造方法において用いる反応装置の一つの実施形態を示す模式図。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、ハロゲン化シラン化合物と液体アンモニアを反応させ、液体アンモニアで洗浄し、乾燥後の見掛け密度が0.10〜0.30g/cmであり、かつ、含有されるハロゲン分の濃度が重量基準で100ppm以下であることを特徴とする、含窒素シラン化合物粉末の製造に関するものである。本発明の含窒素シラン化合物粉末は、不活性ガスを反応器内に導入することにより、該反応器内の圧力を、該反応器内に含有される反応混合物の温度における液体アンモニアの蒸気圧より0.5MPa以上高く保ち、かつ、ハロゲン化シランを供給する配管の吐出口を液体アンモニア中に設置し、ハロゲン化シランを無溶媒あるいはハロゲン化シラン濃度が50vol%以上の不活性有機溶媒の溶液として供給することにより合成することができる。
本発明の含窒素シラン化合物は、ケイ素に結合したイミノ基又はアミノ基を有する化合物であり、化学式(1)に示す組成を有する。
Figure 0005589295
(式中、xは1又は2であり、yは2〜4である)
得られる含窒素シラン化合物の大部分は、上記式のxが1で、yが2のシリコンジイミドである。
本発明で使用するハロゲン化シランとしては、SiF、HSiF、HSiF、HSiF SiF、HSiF等の弗化シラン、SiCl、HSiCl、HSiCl、HSiCl等の塩化シラン、SiBr、HSiBr、HSiBr、HSiBr等の臭化シラン、SiI、HSiI、HSiI、HSiI等のヨウ化シランを使用することができる。また、RSiX、RSiX、RSiX(Rはアルキル又はアルコキシ基、Xはハロゲン)等のハロゲン化シランも使用することができる。
本発明の実施において、ハロゲン化シランは無溶媒あるいは少量の有機溶剤で希釈した溶液として供給することができる。ハロゲン化シランを無溶媒で供給した場合には、生成する含窒素シラン化合物粉末を反応スラリーからろ別して得られるろ液が、液体アンモニア及びこれに溶解したハロゲン化アンモニウムの二成分のみで構成される。このため、有機溶剤で希釈して供給する場合に比べ、液体アンモニアの回収/再利用がより簡便な工程で実施できるという利点が付加される。
ハロゲン化シランの希釈に使用する有機溶媒は、ハロゲン化シランを溶解し、ハロゲン化シランや液体アンモニアと反応しないものの中から適宜選択して使用することができる。例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどのような炭素数5〜12の鎖状の脂肪族炭化水素、シクロヘキサンやシクロオクタンのような環状の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などを挙げることが出来る。
有機溶剤とハロゲン化シランとの混合溶液における好ましいハロゲン化シラン濃度は、50vol%以上、より好ましくは66vol%以上である。50vol%未満の濃度では、生成する含窒素シラン化合物粉末について見掛け密度の充分な増加が得られない。
本発明の実施において、ハロゲン化シランを無溶媒あるいは少量の有機溶媒で希釈した溶液として供給する際の吐出口は反応器内の液体アンモニア中に設置される。このときの供給口からの吐出線速度は5cm/sec以上に保つことが好ましい。線速度が充分でないと、吐出口から供給配管内部に向けて、微量のアンモニアが拡散によって侵入しやすくなる。この結果、吐出口近傍での窒素シラン化合物の生成や副生のハロゲン化アンモニウムの析出などによる供給配管の閉塞が起こりやすくなり、実用的でない。
本発明の実施において、ハロゲン化シランを無溶媒あるいは少量の有機溶媒で希釈した溶液として供給する際の供給ポンプの吐出圧力は、充分な圧力差を出せるようにしておくことが好ましい。例えば、反応器の圧力に対し5.9MPa以上、さらに好ましくは、7.8MPa以上、さらに好ましくは9.8MPa以上の圧力差を出せる装置の能力を有することが望まれる。圧力差が充分でないと、所望の吐出線速度を確保することができなくなる可能性がある。前記の装置能力を有することにより、従来指摘されていた、副生ハロゲン化アンモニウムがヒューム状の形態で反応器内に飛散し析出することや、ハロゲン化シラン供給配管そのものの閉塞を回避することができる。
本発明の実施において反応器の圧力は、不活性ガスを該反応器に導入することにより、該反応器内の反応混合物の温度における液体アンモニアの蒸気圧より高く保持される。不活性ガスの導入によって反応器に付加される圧力をΔPとすると、ΔPの好ましい範囲は0.5MPa以上、より好ましくは0.7MPa以上である。ΔPが小さいと、生成物の中に液体アンモニアによる洗浄では除去できない形態のハロゲン分が増加してしまうため、ハロゲン不純物が少なく高純度な含窒素シラン化合物粉末を製造することができない。なお、前記の液体アンモニア洗浄によって除去できないハロゲン分の具体的形態は明らかでないが、珪素と化学的に結合したハロゲンが、生成した含窒素シラン化合物の粒子内部に、物理的に遮蔽された状態で未反応のまま残存しているのではないかと考えられる。
不活性ガスを導入せず反応器内の圧力の大部分が液体アンモニアの蒸気圧で占められる場合には、含窒素シラン化合物を合成する際に発生する大きな反応熱は、近傍に存在する液体アンモニアの蒸発潜熱として除去することができる。しかしながら本発明の実施においては、反応器への不活性ガスの導入により反応器内における液体アンモニアの沸点が高くなっているため、傍に存在する液体アンモニアの蒸発を除熱の主要因として期待することができない。このため、ジャケットや熱交換器等を用いた強制的な冷却が必要になる。
前記の反応混合物の強制的な冷却は、反応器に付設したジャケットや熱交換器によって行うことができる。熱交換器は、二重管型、多管型、プレート型などの一般的な熱交換器から適宜選択して用いれば良い。熱交換器は反応器の内部に設置しても良いし外部に設置しても良いが、液体アンモニアを主成分とする反応混合物をポンプ等により外部循環させることは煩雑であるので、反応器内に設置するのがより簡便である。反応器として攪拌槽を用いる場合には、内部熱交換器としてコイルやカランドリア型熱交換器を挙げることができる。
本発明を実施する反応温度は設備仕様に応じて低温から常温の範囲で選択することができるが、反応温度を高くすると液体アンモニアの蒸気圧が高まるため、反応器の圧力仕様を高くする必要が生じる。一方、反応温度が低過ぎると、これを保持するために熱交換器及び冷媒設備に過大な負荷がかかってしまう。適切な反応温度範囲は−10〜50℃、より好ましくは0〜40℃である。
反応器に不活性ガスを導入し加圧することによって、生成物の中の液体アンモニアによる洗浄では除去できない形態のハロゲン分を低減できる理由は明確ではないが、反応場、すなわち含窒素シラン化合物の粒子成長が進行している領域におけるガス状アンモニアの発生を抑制できるためと考えられる。従来の方法では、反応熱を反応場の近傍に存在する液体アンモニアの蒸発潜熱によって除去していたにもかかわらず、ハロゲン分の少ない生成物を得ることが可能であった。これは、ハロゲン化シランを有機溶剤で充分に希釈して供給していたため、より希薄な反応場を作り出すことができ、反応場あたりのガス状アンモニアの量が少なかったためと考えられる。一方、特許文献1では、クロルシランと有機溶媒との混合溶液における有機溶媒/クロルシランの容積比を2より小さくすると、生成物中の塩素分を洗浄除去することが困難になることが記載されている。有機溶媒を削減し供給のクロルシランを高濃度化すると、反応場がより局所集中的になり、反応場あたりのガス状アンモニアの量は相対的に増加する。この結果、成長過程にある含窒素シラン化合物の粒子表面の一部は、液体アンモニアではなく、ガス状アンモニアと接触することになる。ガス状アンモニアは空間あたりのアンモニア濃度が希薄であるため、前記粒子表面に存在する珪素と化学的に結合したハロゲンの一部は、アンモニア分子と接触できず、未反応のままで、粒子成長の進行に伴い粒子内部に物理的に遮蔽された状態で残存してしまい、液体アンモニアによる洗浄では除去できない形態のハロゲン分となってしまうと推察される。
ハロゲン化シランを無溶媒あるいは少量の有機溶剤で希釈した溶液として供給する条件では、特許文献1の方法に比べ、反応場が更に局所集中的になり、反応場あたりのガス状アンモニアの量もますます増加すると考えられる。ここで、本発明の不活性ガスを、反応器に導入し加圧する方法によって、反応器内における液体アンモニアの沸点を上昇させると、反応熱による液体アンモニアの気化が抑制され、反応場あたりのガス状アンモニア量を低減できる。この結果、生成物中の液体アンモニアでは洗浄によって除去できない形態のハロゲン分を低減することが可能になったと考えられる。
本発明の実施において、反応器におけるハロゲン化シランと液体アンモニアの混合比率は、ハロゲン化シラン体積/液体アンモニア体積=0.01〜0.1である。反応を実施する形式に特に制限はなく、バッチ式でも連続式でも良い。前記の混合比率は、反応をバッチ式で実施する場合には、1バッチあたりに反応器へ供給したハロゲン化シランの合計量と液体アンモニアの合計量の比率を指し、連続式の場合には、定常運転状態におけるハロゲン化シランと液体アンモニアの体積流量の比率を指す。混合比率が0.1より大きくなると、反応スラリーの粘度が高くなり過ぎ、反応器内における攪拌混合が困難になる。混合比率が小さすぎると、反応器あたりの生産性が低くなり好ましくない。
本発明で生成する主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物の炭素含有量は、0.03wt%以下である。液体アンモニアとの反応に際し、ハロゲン化シランは、無溶媒あるいは少量の有機溶剤で希釈した溶液として供給されるが、無溶媒で供給された場合、生成物は実質的に炭素を含まない。また、有機溶剤で希釈して供給された場合も、その使用量が少ないため、生成物中の炭素含有量はこのため、生成する主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物の炭素含有量は0.03wt%未満である。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明する。
<実施例1>
反応には攪拌装置を備えた内容積約2Lのジャケット付きSUS製耐圧反応器を使用した。反応器内を窒素ガスで置換した後、液体アンモニアを1L仕込んだ。次に反応器内に窒素ガスを導入した。窒素ガスの導入にあたっては、反応器内の窒素ガス分圧が1.2MPaになるように調整した。攪拌翼を400rpmで回転させ、反応器内の液体アンモニアを攪拌しながら、50mLのSiClを、有機溶剤で希釈することなくポンプにより供給し、バッチ式での反応を行った。ジャケットへの冷媒循環は反応器内の温度を見ながら適宜行った。SiClの供給には液体アンモニア中に設置された内径0.8mmのSUS製ノズルを用い、ポンプの吐出圧力上限を8.8MPa(ゲージ圧)、流速を2.5mL/分としたところ、ノズル閉塞することなく50mL全量のSiClを供給することができた。SiCl供給中の反応混合物の温度は16〜20℃、反応器内の圧力は1.9〜2.0MPa(ゲージ圧)であり、であり、供給配管の圧力は最大で8.4MPa(ゲージ圧)に達した。
反応終了後、生成したスラリーを攪拌装置と焼結金属フィルターを備えた内容積約2Lのジャケット付きSUS製耐圧容器に移し、ろ過を行った(ヌッチェ式)。焼結金属フィルターより上部の容積は、約1.5Lである。得られた湿潤のケーキを、更に約1Lの液体アンモニアにてバッチ洗浄した後、ろ過した。この洗浄/ろ過操作を合計7回繰り返した。洗浄に要した液体アンモニアの合計量は7670mLであった。
こうして得られた湿潤ケーキを乾燥して、含窒素シラン化合物粉末を得た。乾燥操作においては、ろ過槽のジャケットに90℃の熱水を流通させて加熱し、適宜内圧を開放しながら槽内の圧力を0.6MPa(ゲージ圧)に保ち、槽内温度が60℃に到達したところを終点とした。
次にろ過槽を密閉状態で大型のグローブボックスに搬入し、一晩かけて窒素ガスを流通させることにより、内部の酸素や水分を充分に追い出した。その後グローブボックス内でろ過槽を開放し、生成した含窒素シラン化合物粉末を取り出した。反応は定量的に進行しており、取得量は26.3gであった。
<実施例2>
反応の際に仕込む液体アンモニア量を1.5Lに変更し、反応器内に導入する窒素ガス分圧を1.3MPaに調整したほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。SiCl供給中の反応混合物の温度は17〜20℃、反応器内の圧力は2.0〜2.1MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で8.1MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は25.5gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7480mLである。
<実施例3>
反応の際に仕込む液体アンモニア量を0.7Lに変更したほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。SiCl供給中の反応混合物の温度は16〜23℃、反応器内の圧力は1.9〜2.1MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で7.1MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は25.6gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7380mLである。
<実施例4>
反応器内に導入する窒素ガス分圧を0.7MPaに調整したほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。SiCl供給中の反応混合物の温度は19〜21℃、反応器内の圧力は1.4〜1.5MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で7.7MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は25.7gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7410mLである。
<実施例5>
反応器内に導入する窒素ガス分圧を2.0MPaに調整したほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。SiCl供給中の反応混合物の温度は18〜21℃、反応器内の圧力は2.7〜2.8MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で7.2MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は26.9gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7520mLである。
<実施例6>
反応器に仕込んだ液体アンモニアを予め2℃付近まで冷却し、反応器内に導入する窒素ガス分圧を2.1MPaに調整したほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。SiCl供給中の反応混合物の温度は2〜4℃、反応器内の圧力は2.4〜2.5MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で5.5MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は26.9gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7600mLである。
<実施例7>
反応器に仕込んだ液体アンモニアを予め25℃付近まで加温し、反応器内に導入する窒素ガス分圧を1.3MPaに調整したほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。SiCl供給中の反応混合物の温度は26〜31℃、反応器内の圧力は2.2〜2.4MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で5.4MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は27.1gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7650mLである。
<実施例8>
SiClの供給において、SiCl50mLとトルエン17mLを混合した均一液を別途調製し、これを3.3mL/分の流速で供給したほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。混合溶液供給中の反応混合物の温度は16〜20℃、反応器内の圧力は1.9〜2.0MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で7.8MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は26.2gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7410mLである。
<実施例9>
反応器内に導入する窒素ガス分圧を1.3MPaに調整し、SiClの供給においてSiCl50mLとトルエン50mLを混合した均一液を別途調製して、これを5.0mL/分の流速で供給したほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。混合溶液供給中の反応混合物の温度は17〜21℃、反応器内の圧力は2.0〜2.1MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で4.9MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は26.5gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7490mLである。
<比較例1>
反応器に窒素ガスを導入せず圧力を増加させなかったほかは、実施例1と同様の操作により反応を試みた。混合溶液供給中の反応混合物の温度は18〜20℃、反応器内の圧力は0.7〜0.8MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で5.7MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は26.0gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7680mLである。
<比較例2>
反応器内に導入する窒素ガス分圧を0.3MPaに調整したほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。SiCl供給中の反応混合物の温度は18〜20℃、反応器内の圧力は1.0〜1.1MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で6.9MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は25.8gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7330mLである。
実施例1〜9、比較例1、2の反応条件などを表1にまとめた。表1において、反応圧力の項におけるΔPとは反応器へ導入された窒素ガスの分圧を示す。また、SiCl供給圧力の項における差圧とは下記式3に従って算出したものであり、本発明を実施する際にSiClの供給に使用するポンプにおいて確保すべき吐出圧力の目安となるものである。
差圧(MPa)=〔SiCl供給圧力の最大値(ゲージ圧)〕−〔反応槽圧力の最小値(ゲージ圧)〕 ・・・・(式3)
Figure 0005589295
実施例1〜9、比較例1、2の生成物の分析結果を表2にまとめた。得られた生成物の分析において、見掛け密度はJIS K5101に準じて測定した。比表面積は島津フローソーブII2300型を使用し、BET一点法により求めた。Cl含有量は生成物粉末を加水分解させてCl分を液相に溶出させ、イオンクロマトグラフィーによる定量分析を行った。生成物粉末に含有されるトルエンはn−ヘキサンによって抽出した後、ガスクロマトグラフィー分析によりその含有濃度を測定した。炭素含有量はLECO社製WR−12型炭素分析装置を使用して、燃焼−熱伝導度法により測定した。
Figure 0005589295
表2に示したとおり、ハロゲン化シランを無溶媒あるいは少量の有機溶媒で希釈して供給する条件において、反応器に不活性ガスを導入して加圧することにより、見掛け密度が大きく、ハロゲン分が100ppm以下の高純度な、含窒素シラン化合物粉末が得られる。一方、比較例1、2に示すとおり、不活性ガスを導入しなかったり、導入による加圧が充分でないと、見掛け密度は大きいものの、ハロゲン分の洗浄除去が困難になり、高純度な生成物を得ることができない。
<実施例10>
反応槽にカランドリア型の内部熱交換器を設置し、SiClの供給を(株)いけうち製のスプレーノズルにて行いSiClの供給流量を19mL/分としたこと、及び攪拌回転数を600rpmとしたことのほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。使用した(株)いけうち製スプレーノズルの型番は1/4MKB80063NS303−RWである。SiCl供給中の反応混合物の温度は20〜36℃、反応器内の圧力は2.0〜2.5MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で7.3MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は26.1gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7270mLである。
<比較例3>
SiCl供給のスプレーノズルを、反応器内に仕込んだ液体アンモニアの液面から2cmの高さの気相部に設置したこと、及び反応器内に導入する窒素ガス分圧を0.3MPaに調整したことのほかは、実施例10と同様の操作を行った。SiCl供給中の反応混合物の温度は17〜22℃、反応器内の圧力は2.0〜2.1MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で4.9MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は24.9gであった。また、洗浄に要した液体アンモニア量は7150mLである。
実施例10、比較例3の反応条件などを表3にまとめた。表3における反応圧力の項のΔP及びとSiCl供給圧力の項における差圧の定義は表1と同じである。
Figure 0005589295
実施例10及び比較例3の生成物の分析結果を表4にまとめた。
Figure 0005589295
表4に示した通り、SiCl供給の吐出口を気相空間部に設置し、分圧に応じた割合で存在するガス状アンモニアとの反応を含む形で製造を行うと、Cl含有量が著しく悪化した。このことから、ガス状アンモニアが反応場に多量に存在し得るような条件での製造は、液体アンモニアによる洗浄によって除去できない形態のハロゲン分が大幅に増加していることが窺える。
<実施例11>
仕込みの液体アンモニアを1730mL、供給するSiClの合計量を101mLとし、SiClの供給流量を5mL/分としたこと、また液体アンモニアによる洗浄の回数を合計9回にしたことのほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。SiCl供給中の反応混合物の温度は16〜21℃、反応器内の圧力は1.9〜2.0MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で9.6MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は56.2gであった。反応後にスラリーをろ過したときのろ液量は1.20×10mLであり、反応によって消費される液体アンモニア量を仕込みSiCl量を基準に化学式2に従って求めると147mLであったことから、ろ過ケーク中のろ液量(式1のVに相当)は3.8×10mLと算出された。また、洗浄に要した液体アンモニア量は9400mLであった。
Figure 0005589295
<比較例4>
反応器に窒素ガスを導入せず圧力を増加させなかったこと、仕込みの液体アンモニアを1060mLとしたこと、SiClの供給においてSiCl50mLとトルエン150mLを混合した均一液を別途調製して、これを10.0mL/分の流速で供給したこと、及び液体アンモニアによる洗浄の回数を合計9回にしたことのほかは、実施例1と同様の操作により、反応及びろ過、洗浄、乾燥の操作を行った。混合溶液供給中の反応混合物の温度は16〜21℃、反応器内の圧力は0.7〜0.8MPa(ゲージ圧)であり、供給配管の圧力は最大で3.2MPa(ゲージ圧)に達した。反応は定量的に進行し、含窒素シラン化合物粉末の取得量は26.0gであった。反応後にスラリーをろ過したときのろ液量は6.7×10mLであり、反応によって消費される液体アンモニア量を仕込みSiCl量を基準に化学式2に従って求めると73mLであったことから、ろ過ケーク中のろ液量(式1のVに相当)は4.7×10mLと算出された。また、洗浄に要した液体アンモニア量は9080mLであった。
実施例11、比較例4の反応条件などを表5に、ろ過洗浄の結果を表6にまとめた。表5における、反応圧力の項のΔP、及びSiCl供給圧力の項における差圧の定義は、表1と同じである。
Figure 0005589295
Figure 0005589295
実施例11及び比較例4の生成物の分析結果を表7にまとめた。
Figure 0005589295
表5〜7から明らかなように、本発明の含窒素シラン化合物は見掛け密度が大幅に増加しているためろ過/洗浄時の湿潤ケークの空隙が少なく、ケーク重量あたりにケーク内に含有されるろ液量が少ない。この結果、表6の洗浄NH量/取得量の項で示されるとおり、生成物あたりの洗浄液体アンモニア量を大きく低減した条件において、ハロゲン不純物が少なく高純度な含窒素シラン化合物を提供することができるため、洗浄工程の効率を向上できる。
1 ハロゲン化シラン又はハロゲン化シランと有機溶媒の混合溶液供給用導管
2 液体アンモニア供給用導管
3 窒素ガス供給用導管
4 攪拌装置
5 温度計用鞘管
6 背圧弁
7 反応混合物抜き出し用導管
8 ジャケット冷媒供給用導管
9 ジャケット冷媒排出用導管

Claims (5)

  1. ハロゲン化シラン化合物と液体アンモニアを反応させ、液体アンモニアで洗浄し、乾燥させて得られる、主としてシリコンジイミドよりなる含窒素シラン化合物粉末であって、前記乾燥後のままの見掛け密度が0.10〜0.30g/cmであり、含有されるハロゲン分の濃度が重量基準で100ppm以下であることを特徴とする、主としてシリコンジイミドよりなる含窒素シラン化合物粉末。
  2. 前記乾燥後のままの見掛け密度が0.12〜0.25g/cmであり、かつ、含有されるハロゲン分の濃度が重量基準で100ppm以下であることを特徴とする、請求項1記載の主としてシリコンジイミドよりなる含窒素シラン化合物粉末。
  3. 炭素含有量が0.03wt%未満であることを特徴とする請求項1または2記載の主としてシリコンジイミドよりなる含窒素シラン化合物粉末。
  4. ハロゲン化シラン化合物を液体アンモニアと混合して反応させるに際し、不活性ガスを反応器内に導入することにより、該反応器内の圧力を、該反応器内に含有される反応混合物の温度における液体アンモニアの蒸気圧より0.5MPa以上高く保ち、かつ、ハロゲン化シラン化合物を無溶媒あるいはハロゲン化シラン化合物濃度が50vol%以上の不活性有機溶媒の溶液として液体アンモニア中に供給することを特徴とする、主としてシリコンジイミドよりなる含窒素シラン化合物粉末の製造方法。
  5. ハロゲン化シラン化合物を無溶媒かあるいはハロゲン化シラン化合物濃度が50vol%以上の不活性有機溶媒の溶液として液体アンモニア中に供給するに際し、その吐出線速を5cm/sec以上とすることを特徴とする、請求項4記載の含窒素シラン化合物粉末の製造方法。
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