JP5583491B2 - 電動切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、電動切削工具に係り、特に、丸鋸刃の切込み深さや傾斜角度を操作者から見易い位置で表示するようにした電動切削工具に関するものである。
従来から、定盤と、この定盤に傾動自在に設けられる本体部と、本体部が備える駆動手段からの駆動力によって回動自在とされる丸鋸刃とを備える電動切削工具が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。特許文献1に例示される従来の電動切削工具では、操作時に丸鋸刃の切込み深さを確認できるように表示目盛を設けることが一般的に行われていたが、この表示目盛は、操作者の目視によって確認しなければならないので、正確性に欠けるという問題点を有していた。また、従来の電動切削工具が有する表示目盛は、丸鋸刃の回動運動という円運動を切込み深さという直線的な寸法に換算しなければならないために、下記特許文献1に開示される表示目盛のように、目盛間隔が不均等にならざるを得なかった。したがって、従来の表示目盛は非常に見難く、誤差の生じ易いものであった。
一方、下記特許文献2には、切込み深さを精度良く表示するための技術が開示されている。下記特許文献2は、ブレードの切込み深さを表示することのできる表示装置付のコンクリートカッターを開示するものであるが、この切込み深さ表示装置付コンクリートカッターは、それぞれが円運動を行う昇降アームとフレームという2つの部材の移動量をラック・ピニオンで検出し、ピニオンの回転量をブレードの取付軸の昇降量に換算することで、ブレードの切込み深さを表示するものである。
特開平8−142001号公報 特開平9−268516号公報
しかしながら、上記特許文献2に開示される技術は、それぞれが円運動を行う昇降アームとフレームという2つの部材に基づいてブレードの移動量を求めようとするものなので、誤差が不可避的に発生するという構造上の問題を有するものであった。したがって、上記特許文献1および2にそれぞれ開示された従来技術を組み合わせたとしても、丸鋸刃の切込み深さや傾斜角度を精度良く表示することのできる電動切削工具を得ることはできない。
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、丸鋸刃の切込み深さや傾斜角度を精度良く算出できるとともに、その算出結果を操作者から見易い位置に配置された表示部によって表示することができる新たな電動切削工具を提供することにある。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
本発明に係る電動切削工具(10、10’)は、定盤(11)と、前記定盤(11)に傾動自在に設けられる本体部(21)と、前記本体部(21)が備える駆動手段(25)からの駆動力によって回動自在とされる丸鋸刃(41)と、を備える電動切削工具(10、10’)であって、前記定盤(11)に対する前記本体部(21)の傾動動作の移動量を測定する移動量測定手段(50、50’、50''、80、90)と、前記移動量測定手段(50、50’、50''、80、90)によって得られる移動量に基づいて、前記丸鋸刃(41)の切込み深さ、又は前記本体部(21)の傾斜角度を算出する演算部(61)と、前記演算部(61)によって算出された切込み深さ、又は前記本体部(21)の傾斜角度を表示する表示部(62)と、を備え、前記本体部(21)は、操作者が当該本体部(21)の傾動操作を行うときに用いる把持部(28)と、前記丸鋸刃(41)の外周を覆うカバー部(27)とを有しており、前記表示部(62)は、前記把持部(28)と前記カバー部(27)との間の領域に設置されていることを特徴とするものである。
本発明に係る電動切削工具(10)において、前記移動量測定手段(50、50’、50''、80)は、前記定盤(11)又は前記本体部(21)のいずれか一方に設置されるとともに所定間隔に配置された目盛を備えるスケール部(51、51’、51''、81)と、前記定盤(11)又は前記本体部(21)のいずれか他方に設置されるとともに前記スケール部(51、51’、51''、81)が備える目盛を検出する目盛検出部(52、52’、52''、82)と、を備えて構成されていることとすることができる。
また、上記本発明の電動切削工具(10)において、前記スケール部は、前記目盛が磁気パターンとして記録された磁気スケール(51、51’、51'')であり、前記目盛検出部は、前記磁気スケールからなる目盛を読み取り、その読み取り結果を電気信号に変換することで、前記定盤(11)に対する前記本体部(21)の傾動動作の移動量を測定する磁気検出ヘッド(52、52’、52'')であることとすることができる。
また、上記本発明の電動切削工具(10)において、前記スケール部は、前記目盛が所定間隔で歯切りされたラック(81)であり、前記目盛検出部は、前記ラック(81)に歯合して回転運動し、その回転運動量を検出することで、前記定盤(11)に対する前記本体部(21)の傾動動作の移動量を測定するピニオン(82)であることとすることができる。
またさらに、本発明に係る電動切削工具(10、10’)において、前記本体部(21)は、前記丸鋸刃(41)が側面側に倒れる方向で傾動自在となるように構成されており、前記演算部(61)は、前記丸鋸刃(41)の側面側に倒れる方向での傾き角度に応じた補正を行うことによって、前記丸鋸刃(41)の切込み深さを算出するように構成されていることとすることができる。
本発明に係る電動切削工具(10、10’)は、定盤(11)と、前記定盤(11)に傾動自在に設けられる本体部(21)と、前記本体部(21)が備える駆動手段(25)からの駆動力によって回動自在とされる丸鋸刃(41)と、を備える電動切削工具(10、10’)であって、前記定盤(11)に対する前記本体部(21)の傾動動作の移動量を測定する移動量測定手段(50、50’、50''、80、90)と、前記移動量測定手段(50、50’、50''、80、90)によって得られる移動量に基づいて、前記丸鋸刃(41)の切込み深さ、又は前記本体部(21)の傾斜角度を算出する演算部(61)と、前記演算部(61)によって算出された切込み深さ、又は前記本体部(21)の傾斜角度を表示する表示部(62)と、を備え、前記移動量測定手段(90)、前記演算部(60)および前記表示部(62)が、ケーシング(64)によって一体的に設置されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電動切削工具(10’)では、前記演算部(60)、前記表示部(62)および前記ケーシング(64)が、前記本体部(21)の外郭からはみ出さないように配置されていることとすることができる。
さらに、本発明に係る電動切削工具(10、10’)は、前記定盤(11)の上面側から前記本体部(21)の傾動方向に沿うように延びて形成されるリンク部材(13)を有し、前記リンク部材(13)は、前記定盤(11)との接続端が、軸部材(14)を介して傾動自在にリンク接続されており、また、当該リンク部材(13)の胴体には、係合ナット(23)が嵌め込まれた案内孔(13a)が形成され、前記リンク部材(13)の前記案内孔(13a)に対する前記係合ナット(23)の締め付けを緩めることによって、所望の傾動位置に前記本体部(21)を傾動させることができるとともに、前記リンク部材(13)の前記案内孔(13a)に対する前記係合ナット(23)の締め付けを実施することにより、前記本体部(21)を所望の傾動位置で固定することができる。
本発明によれば、丸鋸刃の切込み深さや傾斜角度を精度良く算出できるとともに、その算出結果を操作者から見易い位置に配置された表示部によって表示することができる新たな電動切削工具を提供することができる。
本実施形態に係る電動切削工具の外観正面図である。 本実施形態に係る電動切削工具の外観背面図である。 本実施形態に係る電動切削工具の外観右側面図である。 本実施形態に係る電動切削工具の外観左側面図である。 本実施形態に係る電動切削工具の内部構造を説明するための断面図であり、図4におけるA−A断面を表している。 本実施形態に係る電動切削工具の部分破断上面図である。 本実施形態に係る電動切削工具の動作を説明するために一部の部材を省略して描かれた右側面概略図であり、特に、定盤に対して本体部が最も近い位置にあるときを示している。 本実施形態に係る電動切削工具の動作を説明するために一部の部材を省略して描かれた右側面概略図であり、特に、定盤に対して本体部が上方側に傾動した状態にあるときを示している。 本実施形態に係る電動切削工具の要部構成を説明するためのブロック図である。 本発明に係る移動量測定手段が取り得る変形形態を例示する図である。 本発明に係る移動量測定手段が取り得る別の変形形態を例示する図である。 本発明に係る移動量測定手段が取り得るさらに別の変形形態を例示する図である。 本発明に係る移動量測定手段の他の形態を例示する右側面概略図である。 本発明に係る移動量測定手段の他の形態を例示する部分破断上面図である。 図7にて示した本実施形態に係る電動切削工具の変形形態を表した図である。 本発明が取り得る変形形態に係る電動切削工具10’の外観左側面図である。 変形形態に係る電動切削工具10’の部分破断上面図である。 図17における要部を拡大した断面図である。 図18で示した枢軸と角度センサが取り得るさらなる変形形態を例示する図である。 図18で示した枢軸と角度センサが取り得るさらなる変形形態を例示する図である。 図1にて示した本実施形態に係る電動切削工具の変形形態を表した図である。 図2にて示した本実施形態に係る電動切削工具の変形形態を表した図である。 丸鋸刃を左右方向で傾斜させた場合に、被加工材に対する垂直方向での切込み深さが変化する様子を示した模式図である。 本発明を適用可能な卓上型のスライド丸鋸を示す図である。 図24で示した卓上型のスライド丸鋸における切込み深さの調節手法を説明するための図である。
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
まず、図1〜図8を用いて、本実施形態に係る電動切削工具の基本構造について説明を行う。ここで、図1は、本実施形態に係る電動切削工具の外観正面図であり、図2は、本実施形態に係る電動切削工具の外観背面図であり、図3は、本実施形態に係る電動切削工具の外観右側面図であり、図4は、本実施形態に係る電動切削工具の外観左側面図である。また、図5は、本実施形態に係る電動切削工具の内部構造を説明するための断面図であり、図4におけるA−A断面を表している。さらに、図6は、本実施形態に係る電動切削工具の部分破断上面図であり、図7および図8は、本実施形態に係る電動切削工具の動作を説明するために一部の部材を省略して描かれた右側面概略図であり、特に、図7は定盤11に対して本体部21が最も近い位置にあるときを、図8は定盤11に対して本体部21が上方側に傾動した状態にあるときを示している。なお、本実施形態に係る電動切削工具10は、手持ち式の電動丸鋸として構成される場合を例示したものである。また、本明細書で定義した方向については、上記図面の名称にて表した通りであるが、この方向は電動切削工具10を操作する操作者から見た方向と合致するように定義したものである。
本実施形態に係る電動切削工具10は、被加工材に載置される定盤11と、この定盤11に傾動自在に設けられる本体部21と、本体部21が備えるモータ25等の駆動手段からの駆動力によって回動自在とされる丸鋸刃41と、を備えて構成されている。
定盤11は、本体部21をその上方に設置する部材であり、上面から見たときに、概略矩形形状をして構成されている(図6参照)。また、その下面は、被加工材に安定して載置できるように平滑な面にて形成されており、定盤11の下面を被加工材上で滑らせながら電動切削工具10を操作することにより、安定した切込み動作ができるようになっている。
この定盤11には、本体部21が備える丸鋸刃41を上下に移動可能とするための開口部12が形成されている。操作者は、この開口部12から被加工材を目視することで被加工材の切込み位置を特定できるようになっている。なお、図示は略したが、定盤11上面における開口部12の近傍に切込みのための照準となる印などを形成しておき、被加工材上に引かれた墨線とこの印を合わせて切込み加工を行うことで、正確な加工を行うことが可能となる。
また、開口部12には、丸鋸刃41の下周りに設けられている後述する安全カバー42が通過することにもなるので、これら丸鋸刃41や安全カバー42などの形状に応じた開口部12形状が採用されている。特に、切込み加工が行われるときに、回転する丸鋸刃41からは被加工材から出る切粉が巻き上げられることになるが、開口部12は必要最低限の開口範囲に狭められて形成されているので、切粉が定盤11上に堆積するのを効果的に防止している。
以上説明した定盤11の上方には、本体部21が上下方向(すなわち、丸鋸刃41の回転方向に沿った方向)および左右方向(すなわち、丸鋸刃41が側面側に倒れる方向)でそれぞれ傾動自在な状態にて設置されている。かかる動作を実現するための定盤11と本体部21の接続構造について説明すると、電動切削工具10の正面側では、枢軸22を介して定盤11と本体部21とが回動可能に連結されており、本体部21は、この枢軸22を回動中心として本体部21の背面側を定盤11に対して上下方向に傾動させることが可能となっている。したがって、操作者は、本体部21の背面側を定盤11に対して上下方向に傾動させ、丸鋸刃41を定盤11の開口部12から突出させたり引っ込ませたりすることによって丸鋸刃41の回転方向に沿った方向に移動させることができるので、丸鋸刃41による切込み加工を行うことができるようになっている。また、丸鋸刃41の突出量を調整することで、切込み深さを調整することができるようになっている。
上述した本体部21を所望の傾動位置に固定するために、定盤11には、その背面方向の上面側にリンク部材13が設置されている(図7等参照)。このリンク部材13は、定盤11の上面側から本体部21の傾動方向に沿うように延びて形成される部材であり、定盤11との接続端は、軸部材14を介して傾動自在にリンク接続されている。また、リンク部材13の胴体には、案内孔13aが形成されている。この案内孔13aは、図7に示されるように、段差の付いた開口孔として形成されるものであり、この案内孔13aの段差部分には、係合ナット23が嵌め込まれている。係合ナット23には、案内孔13aの段差部分を挟んでねじ軸を備えたレバー23aが螺合して取り付けられており、このレバー23aを操作することによって係合ナット23の締付けと緩めとを行えるようになっている。つまり、レバー23aを操作してリンク部材13の案内孔13aに対する係合ナット23の締め付けを緩めることによって、所望の傾動位置に本体部21を傾動させることができ、さらに、所望の位置でレバー23aを操作してリンク部材13の案内孔13aに対する係合ナット23の締め付けを実施することにより、本体部21を所望の傾動位置で固定することが可能となっている。
一方、図1および図2にて示すように、定盤11と本体部21とは、その正面および背面においても軸部材15a,15bによって接続されており、この軸部材15a,15bを傾動中心として左右方向(すなわち、丸鋸刃41が側面側に倒れる方向)に傾動することが可能となっている。また、定盤11上には、本体部21の左右方向での傾動範囲を規定するための案内孔16a,16bがこちらも正面側および背面側の両方に形成されている。この2つの案内孔16a,16bには、本体部21が有する固定ねじ24a,24bが導通して設置されている。本体部21を定盤11に対して左右方向に傾動させて丸鋸刃41の側面側に倒れる方向での傾き角度を調整した上で、固定ねじ24a,24bを案内孔16a,16bに対して締め付けることで本体部21が固定されるので、本体部21を所望の左右傾動位置に固定することが可能となっている。つまり、丸鋸刃41の側面側に倒れる方向での所望の傾き角度を、丸鋸刃41に対して設定することができる。
本体部21は、駆動源であるモータ25を収納するハウジング26と、丸鋸刃41の上部を覆うカバー部27と、電動切削工具10を操作するためにハウジング26の上部に形成される把持部としてのハンドル28とを備えている。
ハンドル28には、丸鋸刃41の回転を駆動するためのスイッチレバー28aが設けられており、操作者がこのスイッチレバー28aを押し込むことでモータ25が駆動され、その回転駆動力が丸鋸刃41に伝達されることで切込み加工を実施できるようになっている。
また、図3に示すように、カバー部27の後方には、開口29が設けられており、この開口29によって、電動切削工具10使用時に丸鋸刃41の切込み動作によって発生する切粉をカバー部27の外部に排出することが可能となっている。
さらに、丸鋸刃41の下半分は安全カバー42によって覆われている。この安全カバー42は、被加工材を切込む際、被加工材に押されることで丸鋸刃41を覆ったカバー部27の内部に回動しながら収納されるように構成されており、切込み動作を阻害しないようにしながらも、操作者に対する安全性の確保を実現している。
図5に示すように、ハウジング26の内部には、駆動源となるモータ25と、このモータ25の回転駆動力を丸鋸刃41に伝達するための回転駆動力伝達手段としての複数の歯車群が収納されている。
モータ25が有するモータ軸25aの正面側にはファン25bが固定されており、モータ25駆動時にファン25bが回転して冷却風をハウジング26内に導入することにより、発熱源となるモータ25等が適切に冷却され、電動切削工具10を安定して動作させることが可能となっている。
また、モータ25が有するモータ軸25aの両端は、それぞれベアリング31,32によって軸支されている。そして、モータ軸25aの正面側の端部には、始端歯車25cが形成されている。一方、始端歯車25cの下方には、複数の歯車群を介して丸鋸刃41が設置された鋸刃軸41aが設置されている。鋸刃軸41aは、ハウジング26の内部に対してベアリング33,34を介して軸支されており、このような構成によって、丸鋸刃41の略下半分がハウジング26の下端から下方に向けて定盤11の開口部12を介して突出している。なお、ハウジング26内に入り込んだ鋸刃軸41aの軸先端箇所には、終端歯車41bが固定されている。
図5に示すように、始端歯車25cと終端歯車41bとの間を連結する歯車群は、中間歯車となる第1歯車35aと第2歯車35bとで構成されており、これら第1歯車35aおよび第2歯車35bは、同一の軸上で直列に並んで当該軸上に固着されている。
このように構成された本実施形態に係る電動切削工具10では、モータ25の回転駆動力が、モータ軸25aの始端歯車25cから第1歯車35a、第2歯車35b、終端歯車41bへと伝達されて鋸刃軸41aに及ぼされるので、その結果、丸鋸刃41が回転駆動するように構成されている。
本実施形態に係る電動切削工具10は、以上説明した基本構成を有するものであるが、さらに、丸鋸刃41の切込み深さや傾斜角度を精度良く算出できるとともに、その算出結果を操作者から見易い位置に配置された場所に表示することができるという有意な構成を有している。そこで、図5〜図8を用いるとともに、新たな参照図面として図9を加えることによって、本実施形態に係る電動切削工具10が有する有意な特徴について説明することとする。なお、図9は、本実施形態に係る電動切削工具の要部構成を説明するためのブロック図である。
本実施形態に係る電動切削工具10は、定盤11に対する本体部21の傾動動作の移動量(距離)を測定するための移動量測定手段50を備えており、この移動量測定手段50は、既知の技術であるインクリメンタル型のエンコーダとして構成されるものである。すなわち、本実施形態に係る移動量測定手段50は、定盤11が有するリンク部材13に設置される磁気スケール51と、本体部21が有するカバー部27の内部に設置された磁気検出ヘッド52として構成されている。
磁気スケール51は、所定間隔に配置された目盛を備えるスケール部として構成される部材であり、具体的には、磁石材料に微細な磁気パターンを記録し、それをものさしの目盛として利用したものである。この磁気スケール51は、本体部21の傾動方向に沿うように延びて形成されるリンク部材13の上方に貼り付けられている。
一方、磁気検出ヘッド52は、スケール部として構成される磁気スケール51が備える目盛を検出する目盛検出部として構成される部材であり、具体的には、磁気スケール51の目盛を読み取り、その読み取り結果を電気信号に変換することで、定盤11に対する本体部21の傾動動作の移動量(距離)を測定するためのものである。
なお、磁気検出ヘッド52はリンク部材13の上方に貼り付けられた磁気スケール51に沿うように軸部材52aを有して揺動自在に取り付けられており、例えば、図8に示すように本体部21が上方に持ち上げられた状態から、図7に示すように本体部21が下方に押し下げられた状態に移動されたときには、リンク部材13の上方の磁気スケール51の表面に沿って磁気検出ヘッド52が磁気スケール51上を相対的に摺動し、移動量測定手段50としての機能を好適に発揮できるようになっている。
一方、本体部21が有する把持部としてのハンドル28とカバー部27との間には、演算・表示手段60が設置されている(図5および図6参照)。この演算・表示手段60は、上述した移動量測定手段50によって得られた移動量(距離)に基づいて、丸鋸刃41の切込み深さ、又は本体部21の傾斜角度を算出するために用いられるCPU(Central Processing Unit)としての演算部61と、この演算部61によって算出された切込み深さ、又は本体部の傾斜角度を表示するために用いられるデジタル液晶画面としての表示部62とを少なくとも備えるものであり、さらに、本実施形態では、演算部61によって算出されたデータや、演算の際に用いられる電動切削工具10の基礎データや演算式が保存されたHDD(Hard disk drive)としての記憶部63を備えて構成されている。
なお、演算・表示手段60の設置位置は、図2、図5および図6に示されるように、ハンドル28とカバー部27との間に設置されているため、操作者から非常に見易い設置位置となっている。また、特に図5にて示されるように、演算・表示手段60の高さは、A−A断面で見たときに、ハンドル28の最上部の位置とカバー部27の最上部の位置とを結ぶ仮想線αよりも低くなっており、さらには、ハンドル28が有するスイッチレバー28aの最下部の位置とカバー部27の最上部の位置とを結ぶ仮想線βよりもさらに低くなるように構成されている。かかる構成は、演算・表示手段60が操作者から見易いというだけではなく、ハンドル28を把持する作業者の邪魔をしないという好適な効果を発揮するものでもあり、操作性を考慮した演算・表示手段60の形状・配置構成が採用されていることを示している。さらに、演算・表示手段60の設置位置を仮想線αよりも低くしたことにより、たとえ電動切削工具10を物に当てたり落下させたりしたとしても、演算・表示手段60への物の接触や衝撃力が加わることを避けることができるので、演算・表示手段60が破損したり故障したりする可能性を低くすることが可能となる。
本実施形態では、本体部21を操作すると、磁気スケール51上を摺動する磁気検出ヘッド52が定盤11に対する本体部21の傾動動作の移動量(距離)を測定し、この測定によって得られたデータは、目盛検出部である磁気検出ヘッド52から演算部61に送られる。本体部21の移動量(距離)についての測定データを取得した演算部61では、この測定データを丸鋸刃41の切込み深さに換算する。この換算に際して、演算部61は、記憶部63に保存された電動切削工具10の形状に基づく換算式や丸鋸刃41の径などといったあらかじめ設定された算出条件を記憶部63から読み出し、算出を行うこととなる。演算部61によって得られた算出結果は、表示部62に送信され、即時に表示部62が備えるデジタル液晶画面に表示されることとなる。
なお、この表示部62では、表示形式を種々選択することができるようになっており、例えば、切込み深さの表示単位であれば、SI単位系に基づく「mm(ミリメートル)」のほか、ヤード・ポンド法に基づく「インチ」や尺貫法に基づく「寸」などといった種々の単位に変換し、表示することが可能である。かかる変換・表示処理は、不図示の単位切替えボタンを操作者が押すことによって、表示部62から演算部61に対して電気信号による単位切替え指令を送信し、この指令を受けた演算部61が再度表示部62に対する新たな単位による表示指令を送信することにより、実現できる。
本実施形態に係る移動量測定手段は、本体部21の上下方向(すなわち、丸鋸刃41の回転方向に沿った方向)での傾動動作の移動量だけでなく、左右方向(すなわち、丸鋸刃41が側面側に倒れる方向)での傾動動作の移動量を測定することも可能である。例えば、図1および図6に示すように、本体部21の左右方向での傾動範囲を規定するための案内孔16aが形成された部材の上面に対して磁気スケール51’を貼り付け、この磁気スケール51’と対向する本体部21の側に磁気検出ヘッド52’を設置することで、上述した移動量測定手段50と同様の機能を発揮することのできる移動量測定手段50’を構成することができる。この移動量測定手段50’の場合には、磁気検出ヘッド52’によって得られた移動量(距離)の測定データを演算部61が上述した処理と同様の処理にて本体部21の傾斜角度として算出することとなる。このようにして得られた本体部21の傾斜角度は、即時に表示部62が備えるデジタル液晶画面に表示されることとなるが、この場合についても、あらゆる表示形式を選択することが可能であり、例えば「°(度)」のほか、「´(プライム)」による表記や「rad(ラジアン)」などの所望の表記に変更することが可能である。
なお、上述した移動量測定手段50、50’は、既知の技術であるインクリメンタル型のエンコーダとして構成されるものであるので、その作動原理については説明を省略するが、測定ごとでの零点合わせを行うなどの動作が必要であることを付記しておく。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態の丸鋸刃41は、チップソーを用いたものであったが、本発明に対しては、ダイヤモンドプレートや溝掘用カッターなどといったあらゆる形態の丸鋸刃を適用することが可能である。
また例えば、上述した実施形態では、図7にて示されるように、磁気検出ヘッド52はリンク部材13の上方に貼り付けられた磁気スケール51に沿うように軸部材52aを介して揺動自在に取り付けられていた。しかしながら、揺動自在な状態での磁気検出ヘッド52の取付手段については、軸部材52aを用いたものには限られない。具体的な変形例としては、図10にて示すように、磁気検出ヘッド52とカバー部27の内側面とを傾動自在なリンクアーム71により接続するとともに、このリンクアーム71に捻じりコイルバネ72を設置する構成を採用することができる。このような構成であれば、捻じりコイルバネ72の弾性力が常時リンクアーム71を介して磁気検出ヘッド52に及ぼされることとなり、磁気検出ヘッド52は常時磁気スケール51に押し付けられることになるので、好適な測定状態を維持することが可能となる。なお、磁気検出ヘッド52における磁気スケール51との接触箇所の近傍に対してゴム板等の弾性部材からなるパッキン部材73,73を設けることにより、磁気スケール51と磁気検出ヘッド52との間に入り込もうとする切粉やゴミなどの塵芥を排除することができるので、好ましい。
また、磁気検出ヘッド52を磁気スケール51に対して常時好適に押し付けることができる手段としては、例えば、図11に示すように、磁気検出ヘッド52とカバー部27の内側面との間に圧縮コイルバネ74を設けることでも実現できる。図11にて例示するような圧縮コイルバネ74を用いることでも、リンクアーム71と捻じりコイルバネ72によって実現されたものと同様の作用効果を得ることができる。
また、移動量測定手段50を構成する磁気スケール51および磁気検出ヘッド52の配置位置については、上述した実施形態には限られず、同様の機能を発揮し得る範囲において、あらゆる変形形態を採用することができる。上述した実施形態では、図7等に示されるように、磁気スケール51と磁気検出ヘッド52は上下方向で対向するように配置されていたが、例えば、図12に示すように、移動量測定手段50''を構成する磁気スケール51''と磁気検出ヘッド52''を左右方向で対向するように配置することもできる。このとき、磁気スケール51''と磁気検出ヘッド52''が設置される部材については、配置箇所の条件に応じて任意に変形させた形態を採用することが可能であり、例えば、図12に示すように、リンク部材13''に鍔状の形状を付加し、メンテナンス等が実行し易い安定した箇所に磁気スケール51''を配置することができる。
また、上述した本実施形態に係る移動量測定手段50、50’、50''については、インクリメンタル型のエンコーダとして構成される場合を例示して説明したが、本発明の移動量測定手段については、アブソリュート型静電容量式エンコーダとして構成することもできる。アブソリュート型のエンコーダを移動量測定手段に採用することにより、測定ごとでの零点合わせを行う必要がなくなるので、取り扱い性を飛躍的に向上させることが可能となる。
また、本発明に係る移動量測定手段を構成するスケール部と目盛検出部については、上述した磁気スケール51、51’、51''および磁気検出ヘッド52、52’、52''には限られない。例えば、図13および図14は、本発明に係る移動量測定手段の他の形態を例示する図であるが、図13および図14にて示すように、スケール部については、目盛が所定間隔で歯切りされたラック81として構成し、目盛検出部については、このラック81に歯合して回転運動し、その回転運動量を検出することで、定盤11に対する本体部21の傾動動作の移動量(距離)を測定するピニオン82として構成することができる。このように移動量測定手段80をラック81とピニオン82で構成し、ピニオン82の回転量を演算部61で取得することで、定盤11に対する本体部21の移動量(距離)が把握できるので、この測定データに基づいて丸鋸刃41の切込み深さを算出し、算出結果を表示部62に表示させることが可能となる。
また、上述した本実施形態に係る演算・表示手段60が備える記憶部63については、省略することができる。すなわち、算出処理を演算部61を用いて行い、算出結果等は保存しないようにする構成を選択する場合については、記憶部63を省略することで製造コストの削減効果を得ることが可能となる。
また、上述した本実施形態に係る移動量測定手段50、50’、50''については、いずれも部材の移動距離を検出するものであった。しかしながら、本発明の移動量測定手段が検出するのは、移動距離データには限られない。例えば、本発明の移動量測定手段は、傾斜角度データとしての移動量を検出するように構成することも可能である。
具体的には、図7にて示した本実施形態に係る電動切削工具10の変形形態を表した図15の電動切削工具10’のように、リンク部材13を定盤11に対して傾動自在にリンク接続する軸部材(14)の箇所に移動量測定手段としての角度センサ90を設け、定盤11に対するリンク部材13の傾動角度を測定することにより、丸鋸刃41の切込み深さや傾斜角度を精度良く取得することが可能となる。軸部材(14)の箇所に設置される角度センサ90は、移動量を傾斜角度データとして検出することになるが、このような構成も本発明の移動量測定手段として好適に採用することができる。
なお、図15にて示すように、角度センサ90については、軸部材(14)の箇所だけではなく、定盤11と本体部21とを回動可能に連結する枢軸(22)の箇所に対しても設置することができる。定盤11に対する本体部21の傾動角度を測定することによっても、丸鋸刃41の切込み深さや傾斜角度を精度良く取得することが可能となる。ちなみに、図15では、軸部材(14)の箇所と枢軸(22)の箇所の2箇所に角度センサ90が描かれているが、これは角度センサ90の設置可能箇所を例示するために描かれたものであり、いずれか1箇所に角度センサ90が設けられていれば、本発明に係る移動量測定手段としての機能を好適に発揮することが可能である(もちろん、複数の箇所に同一機能を発揮する角度センサ90を設けるようにしてもよい。)。
ここで、枢軸(22)の箇所に角度センサ90を設けた場合の具体例について、図16〜図18を用いて説明を行う。ここで、図16は、本発明が取り得る変形形態に係る電動切削工具10’の外観左側面図であり、図17は、変形形態に係る電動切削工具10’の部分破断上面図である。また、図18は、図17における要部を拡大した断面図である。
図16〜図18にて示される電動切削工具10’では、定盤11に対して固定設置されたサポータ部材101に対して枢軸22が固定設置されており、さらに、この枢軸22には、本体部21の備えるカバー部27が傾動自在に接続されている(特に、図18参照。)。
枢軸22の左側面側の軸端部近傍にはフランジ部22aが形成されており、このフランジ部22aのさらに左軸端部側の箇所には、軸端部に向けて角度センサ90、表示部設置用ケーシング64の順にこれらの部材が設置されている。
フランジ部22aは、枢軸22と一体的に形成された部材であり、その外周には、Oリングからなる防塵パッキン22bが設置されている。防塵パッキン22bは、フランジ部22aと表示部設置用ケーシング64との間に設置されるため、精密機器である角度センサ90に対する切粉等の塵芥および液体の飛散や侵入を確実に防止することができる。かかる防塵パッキン22bの設置によって、角度センサ90の破損防止や誤動作防止効果を好適に得ることができる。
表示部設置用ケーシング64は、カバー部27を含む本体部21と一体的に、枢軸22に対して傾動動作自在な状態となっている。また、表示部設置用ケーシング64には、表示部62を含む演算・表示手段60が一体的に設置されており、さらに、表示部設置用ケーシング64内には、演算・表示手段60の電源となる電池65が設置されている。この電池65設置位置は、電動切削工具10’の左側面側であり、かつ、その前面は邪魔する部材が存在しないので、電池65の取り換え等のメンテナンスが非常に容易な構成となっている。
また、電池65は、電池65の取り換え時に開閉する蓋部材64aの設置箇所に設置されているが、この蓋部材64aと表示部設置用ケーシング64との間には、図示しない防塵パッキンが設置されているので、蓋部材64aと表示部設置用ケーシング64との間から表示部設置用ケーシング64内部への塵芥および液体の侵入を確実に防止することができる構成が採用されている。
角度センサ90は、上述したフランジ部22aと表示部設置用ケーシング64との間に挟まれた位置に設置されている。電動切削工具10’が有する角度センサ90は、表示部設置用ケーシング64に対して固定された第一基板90aと、フランジ部22aに対して固定された第二基板90bとで構成されている。第一基板90aは、表示部設置用ケーシング64に対して固定されているので、枢軸22を回動中心として本体部21が傾動動作を行うと、その傾動動作に伴って回転運動を行うこととなる。一方、第二基板90bは、固定されて回転しないフランジ部22aに対して固定されているので、固定された状態を常時維持することとなる。したがって、本体部21が傾動動作を行うと、固定された第二基板90bに対して第一基板90aが回転運動を行うことになる。この回転運動の変化量を検出することにより、本体部21の傾動動作の角度変化量が把握でき、その結果として丸鋸刃41の切込み深さ等が計測できるようになっている。
なお、図16〜図18にて示された変形形態例では、電源となる電池65を備えた表示部設置用ケーシング64に対して、演算・表示手段60と角度センサ90という2つの部材が設置された構成が採用されているので、配線が不要となり、他の実施形態に比べて組立性がよく、防塵機能にも優れているという利点を有している。さらに、図16からも明らかな通り、表示部設置用ケーシング64および演算・表示手段60は、カバー部27を含む本体部21の外郭からはみ出さないように配置されているので、電動切削工具10’をどのような姿勢で載置したときであっても、表示部設置用ケーシング64および演算・表示手段60は地面に接地することがなく、破損等の不具合が発生することがない。
以上、本発明が取り得る好適な変形形態例を説明したが、上述した枢軸22と角度センサ90については、さらなる変形形態を採用することが可能である。例えば、図18にて詳細に示した電動切削工具10’の枢軸22は、表示部設置用ケーシング64を貫通するものであったが、図19にて示すように、枢軸22の左側面側の最軸端部がフランジ部22aとなっており、このフランジ部22aの外側に、角度センサ90と表示部設置用ケーシング64が設置され、かつ、枢軸22と表示部設置用ケーシング64とが直接接触していない構成を採用することができる。また、例えば、図18にて詳細に示した電動切削工具10’の枢軸22とフランジ部22aは、一体的に構成されたものであったが、図20にて示すように、枢軸22とフランジ部22aとを分割し、サポータ部材101に対して枢軸22とフランジ部22aのそれぞれを固定設置するように構成することもできる。なお、図19および図20にて示した構成の場合、図18で示した構成のように枢軸22が表示部設置用ケーシング64を貫通して外部に突出していないので、表示部設置用ケーシング64内部(すなわち、角度センサ90)への塵芥および液体の侵入を確実に防止できる点で有利である。
つまり、本発明に係る電動切削工具を構成する部材の形態については、上述した本発明の作用効果を発揮し得る範囲において、様々な変形形態を採用することができる。
さらに、傾斜角度データとしての移動量を検出する移動量測定手段(角度センサ90)については、図21および図22に示すように、定盤11に対する本体部21の左右方向(すなわち、丸鋸刃41が側面側に倒れる方向)での傾動動作の中心となる軸部材(15a,15b)に対して設置することが可能である。この場合についても、角度センサ90はいずれか一方の軸部材(15a,15b)に対して設置すれば、傾斜角度データを測定するという目的は達成される。かかる構成にて設置された角度センサ90によって、丸鋸刃41の左右方向での傾斜角度を精度良く取得することが可能となる。ちなみに、傾斜角度データとしての移動量を検出する移動量測定手段(角度センサ90)についても、図18等で示したような、第一基板90aと第二基板90bという2つの部材で構成される形式のものを採用することが可能である。
なお、丸鋸刃41を左右方向で傾斜させた場合には、図23に示すように、被加工材Wに対する垂直方向での切込み深さが変化することとなる。すなわち、丸鋸刃41に左右方向での傾斜角度が設定されていない場合における被加工材Wに対する垂直方向での切込み深さDと、丸鋸刃41に左右方向での傾斜角度が設定されている場合における被加工材Wに対する垂直方向での切込み深さDとの関係は、当然ながらD>Dとなっている。したがって、正しい切込み深さを表示部62に対して表示させるためには、移動量測定手段を用いて丸鋸刃41の左右方向での傾斜角度を検出させ、その検出データに基づいて演算部61がこの傾き角度に応じた補正処理を行うことが必要である。この場合の移動量測定手段については、磁気スケール51’と磁気検出ヘッド52’とで構成される移動量測定手段50’や角度センサ90などといった傾斜角度データを測定するための移動量測定手段と、磁気スケール51と磁気検出ヘッド52とで構成される移動量測定手段50などといった移動距離データを測定するための移動量測定手段との両方を組み合わせて用いることが必要となる。かかる構成の採用によって、丸鋸刃41の切込み深さを精度良く取得することが可能となる。
ただし、傾斜角度データを測定するための移動量測定手段(50’や90など)と、移動距離データを測定するための移動量測定手段(50など)との両方を電動切削工具に設置することは本発明において必須の要件ではなく、いずれか一方の移動量測定手段のみを設けたり、両方の移動量測定手段を設けたりするなど、あらゆる組み合せ構成を採用することが可能である。例えば、移動距離データを測定するための移動量測定手段のみを設置した電動切削工具の場合には、左右方向で傾斜させた場合の丸鋸刃41における被加工材Wに対する垂直方向での切込み深さDは把握できないが、斜め方向での切込み深さは把握することができる。つまり、本発明に係る電動切削工具においては、当該電動切削工具の用途や製品コストなどといった様々な仕様条件に応じて、上述した移動量測定手段等の構成の選択をすることが好ましい。
また、上述した本実施形態に係る電動切削工具10は、手持ち式の電動丸鋸として構成される場合を例示して説明したが、上述した実施形態および各種変形形態と同様の作用効果を発揮する範囲において、その他のあらゆる形式の電動切削工具に対して本発明を適用することが可能である。
例えば、図24に示されるような卓上型のスライド丸鋸110に対しても、本発明を適用することが可能である。このスライド丸鋸110の場合、テーブル111と傾動支持部112が本発明の定盤に相当し、切断機本体113が本発明の本体部に相当しているが、テーブル111に設置された傾動支持部112に対して切断機本体113が傾動自在な状態で設置されており、傾動支持部112と切断機本体113との接続部は、枢軸114によって接続されている。この枢軸114の箇所に対して、表示部設置用ケーシング64付の演算・表示手段60を設置したり、角度センサ90を設置したりすることで、切断機本体113の傾動移動量、すなわち、丸鋸刃41の切込み深さを把握することが可能となる。
なお、図24にて示すスライド丸鋸110に対しては、傾動支持部112と切断機本体113との間に、下限ストッパとしての調整ねじ115と、ストッパ当接部116とを設けることにより、切断機本体113の傾動動作の下限位置を調節することが可能である。この下限位置の調節方法としては、あらかじめ調整ねじ115の突出量を調整したり、調整ねじ115とストッパ当接部116とを当接させた状態で演算・表示手段60の表示部62を見ながら調節したりすることができる。
さらに、図24に示される卓上型のスライド丸鋸110の切込み深さの調節手法として、図25に示すように、被加工材Wに対する切込み深さ(A)を把握したいときには、被加工材Wの上面である(a)面を原点(ゼロ点)として設定すればよいし、テーブル111のベース面に対する高さ寸法(B)を把握したいときには、テーブル111のベース面である(b)面を原点(ゼロ点)として設定すればよい。このように、切削の用途や目的に応じて原点(ゼロ点)調節をしなければならない卓上型のスライド丸鋸110に対して、本発明の移動量測定手段としての角度センサ90を設置することによって、従来にはない高い操作性や加工精度を向上させた電動切削工具を実現することが可能となる。
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
10、10’ 電動切削工具、11 定盤、12 開口部、13,13'' リンク部材、13a 案内孔、14,15a,15b 軸部材、16a,16b 案内孔、21 本体部、22 枢軸、22a フランジ部、22b 防塵パッキン、23 係合ナット、23a レバー、24a,24b 固定ねじ、25 モータ、25a モータ軸、25b ファン、25c 始端歯車、26 ハウジング、27 カバー部、28 ハンドル、28a スイッチレバー、29 開口、31,32,33,34 ベアリング、35a 第1歯車、35b 第2歯車、41 丸鋸刃、41a 鋸刃軸、41b 終端歯車、42 安全カバー、50、50’、50''、80 移動量測定手段、51、51’、51'' 磁気スケール、52、52’、52'' 磁気検出ヘッド、52a 軸部材、60 演算・表示手段、61 演算部、62 表示部、63 記憶部、64 表示部設置用ケーシング、64a 蓋部材、65 電池、71 リンクアーム、72 捻じりコイルバネ、73 パッキン部材、74 圧縮コイルバネ、81 ラック、82 ピニオン、90 角度センサ、90a 第一基板、90b 第二基板、101 サポータ部材、111 テーブル、112 傾動支持部、113 切断機本体、114 枢軸、115 調整ねじ、W 被加工材。

Claims (8)

  1. 定盤と、
    前記定盤に傾動自在に設けられる本体部と、
    前記本体部が備える駆動手段からの駆動力によって回動自在とされる丸鋸刃と、
    を備える電動切削工具において、
    前記定盤に対する前記本体部の傾動動作の移動量を測定する移動量測定手段と、
    前記移動量測定手段によって得られる移動量に基づいて、前記丸鋸刃の切込み深さ、又は前記本体部の傾斜角度を算出する演算部と、
    前記演算部によって算出された切込み深さ、又は前記本体部の傾斜角度を表示する表示部と、
    を備え
    前記本体部は、操作者が当該本体部の傾動操作を行うときに用いる把持部と、前記丸鋸刃の外周を覆うカバー部とを有しており、
    前記表示部は、前記把持部と前記カバー部との間の領域に設置されていることを特徴とする電動切削工具。
  2. 請求項1に記載の電動切削工具において、
    前記移動量測定手段は、
    前記定盤又は前記本体部のいずれか一方に設置されるとともに所定間隔に配置された目盛を備えるスケール部と、
    前記定盤又は前記本体部のいずれか他方に設置されるとともに前記スケール部が備える目盛を検出する目盛検出部と、
    を備えて構成されていることを特徴とする電動切削工具。
  3. 請求項2に記載の電動切削工具において、
    前記スケール部は、前記目盛が磁気パターンとして記録された磁気スケールであり、
    前記目盛検出部は、前記磁気スケールからなる目盛を読み取り、その読み取り結果を電気信号に変換することで、前記定盤に対する前記本体部の傾動動作の移動量を測定する磁気検出ヘッドであることを特徴とする電動切削工具。
  4. 請求項2に記載の電動切削工具において、
    前記スケール部は、前記目盛が所定間隔で歯切りされたラックであり、
    前記目盛検出部は、前記ラックに歯合して回転運動し、その回転運動量を検出することで、前記定盤に対する前記本体部の傾動動作の移動量を測定するピニオンであることを特徴とする電動切削工具。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の電動切削工具において、
    前記本体部は、前記丸鋸刃が側面側に倒れる方向で傾動自在となるように構成されており、
    前記演算部は、前記丸鋸刃の側面側に倒れる方向での傾き角度に応じた補正を行うことによって、前記丸鋸刃の切込み深さを算出するように構成されていることを特徴とする電動切削工具。
  6. 定盤と、
    前記定盤に傾動自在に設けられる本体部と、
    前記本体部が備える駆動手段からの駆動力によって回動自在とされる丸鋸刃と、
    を備える電動切削工具において、
    前記定盤に対する前記本体部の傾動動作の移動量を測定する移動量測定手段と、
    前記移動量測定手段によって得られる移動量に基づいて、前記丸鋸刃の切込み深さ、又は前記本体部の傾斜角度を算出する演算部と、
    前記演算部によって算出された切込み深さ、又は前記本体部の傾斜角度を表示する表示部と、
    を備え、
    前記移動量測定手段、前記演算部および前記表示部が、ケーシングによって一体的に設置されていることを特徴とする電動切削工具。
  7. 請求項に記載の電動切削工具において、
    前記演算部、前記表示部および前記ケーシングが、前記本体部の外郭からはみ出さないように配置されていることを特徴とする電動切削工具。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電動切削工具において、
    前記定盤の上面側から前記本体部の傾動方向に沿うように延びて形成されるリンク部材を有し、
    前記リンク部材は、前記定盤との接続端が、軸部材を介して傾動自在にリンク接続されており、また、当該リンク部材の胴体には、係合ナットが嵌め込まれた案内孔が形成され、
    前記リンク部材の前記案内孔に対する前記係合ナットの締め付けを緩めることによって、所望の傾動位置に前記本体部を傾動させることができるとともに、前記リンク部材の前記案内孔に対する前記係合ナットの締め付けを実施することにより、前記本体部を所望の傾動位置で固定することができることを特徴とする電動切削工具。
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