JP5581893B2 - 水蒸気透過性評価用セルおよびその製造方法 - Google Patents
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る。
(1)試験片に、水と化学反応して腐食物を生じる金属からなる腐食性金属層と、水蒸気を透過しない金属からなる水蒸気不透過層とを備えた、水蒸気透過性評価に用いる評価用セルであって、前記水と化学反応して腐食物を生じる金属からなる腐食性金属層が、還元蒸着金属層であり、腐食性金属の炭酸塩と還元剤と混合したものを蒸気化して作製したものであることを特徴とする水蒸気透過性評価用セル。
(2)前記水蒸気を透過しない金属からなる水蒸気不透過層は、金属合金で構成されるものである第(1)項に記載の水蒸気透過性評価用セル。
(3)前記水と化学反応して腐食物を生じる金属からなる腐食性金属層は、還元蒸着アルカリ土類金属を含むものである第(1)項又は第(2)項に記載の水蒸気透過性評価用セル。
(4)前記還元剤が、チタン、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれるものである第(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の水蒸気透過性評価用セル。
(5)試験片に、水と化学反応して腐食物を生じる金属からなる腐食性金属層と、水蒸気を透過しない金属からなる水蒸気不透過層とを備えた、水蒸気透過性評価に用いる評価用セルを製造する方法であって、前記試験片の評価する面に、還元蒸着法により、水と化学反応して腐食物を生じる金属から、腐食性金属の炭酸塩と還元剤と混合したものを蒸気化して、腐食性金属層を形成する工程を有することを特徴とする水蒸気透過性評価用セルの製造方法。
(6)前記水と化学反応して腐食物を生じる金属は、アルカリ土類金属を含むものである第(5)項に記載の水蒸気透過性評価用セルの製造方法。
図1は、本発明の水蒸気透過性を評価する試験片と、水と化学反応して腐食物を生じる金属からなる腐食性金属層(以下、腐食性金属層)と、水蒸気を透過しない金属からなる水蒸気不透過層(以下、水蒸気不透過層)とを備えた評価用セルの第一例を示す模式図である。
図2は、本発明の水蒸気透過性を評価する試験片と、腐食性金属層と、水蒸気不透過層とを備え、水蒸気不透過層が、水蒸気不透過金属層と水蒸気不透過金属層との間に、割れ防止緩衝層(以下、割れ防止緩衝層)を有する積層構造を備えた評価用セルの第二例を示す模式図である。
まず、上記第一の例について説明すると、水蒸気透過性を評価する試験片1を用意し、該試験片の評価する面、通常は水蒸気を接触させる面の反対側の面の所定の位置に、水と化学反応して腐食物を生じる金属を用いて、還元蒸着法により、腐食性金属層2を形成することができる。次いで、上記試験片上の腐食性金属層2を覆うように、水蒸気を透過しない金属を用いて、蒸着法などの方法により水蒸気不透過層3を形成し、積層構造を形成することができる。
また、割れ防止緩衝層の厚みとしては、10nm〜800nmが好ましい。
本発明の水蒸気透過性評価用セルを用いて、試験片の水蒸気透過性を評価する方法の例としては、まず、上記評価用セルを用意し、これを水蒸気接触面に水蒸気が触れるように、恒温恒湿槽内に配置して、所定の条件下にて加湿処理を行う。
M + aH2O → M(OH)a + (a/2)H2 化学式(1)
水蒸気透過度=X*18*a*(10000/A)*(24/T) 数式(1)
X=(δ*t*d)/Mw 数式(2)
上記数式(2)中、Mwは腐食性金属層に生成した金属腐食物(金属水酸化物)の分子量(式量)を表し、δ、t及びdは数式(1)中のそれらと同じものを表す。
(1)水蒸気透過性評価用セルの作製
試験片として、ポリエーテルサルホンフィルム(厚み200μm)とSiO2層(無機層、厚み50nm)からなる二層構造を有する水蒸気不透過性フィルムを用意し、試験片の一方の面の中央部に、腐食性金属層として、カルシウム層を形成するにあたり、腐食性金属カルシウムの炭酸塩である炭酸カルシウム50mgに、還元剤として、チタニウム粉末65mgを混ぜたものを用いて、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置JEE−400)を用いて、還元蒸着法により、面積が2.0mm×2.0mmで、厚み200nmからなるカルシウムの還元蒸着金属層を形成した。この時、排気系統はロータリーポンプと油拡散ポンプの2種を用いた。次いで、前記還元蒸着金属層の露出面のすべてを覆うように、金属アルミニウムを用いて、真空蒸着法により、厚み4μmの水蒸気不透過層を形成した。次いで、蜜蝋(融点60〜62℃)とパラフィン(融点60〜62℃)とを1:1の割合で溶融混合した樹脂を用いて、80℃〜100℃の温度で溶融させたものに、水蒸気不透過層を全て覆うように接触させ、樹脂を冷却固化させて封止を行い、水蒸気透過性評価用セルを作製した。なお、試験片のフィルムは、その無機層をスパッタリングにて形成したものを用いた。
上記で得た水蒸気透過性評価用セルを用い、これを40℃、湿度90%の恒温恒湿槽に、400時間載置し、恒温恒湿による処理(加湿処理)を行った。加湿処理後、還元蒸着金属層における腐食物の生成について、レーザー顕微鏡により、2.0mm×2.0mmの画像を撮影し記録した。腐食した部分は、金属カルシウムが水分と反応し、水酸化カルシウムとなり、撮影すると変色あるいは白色部として観察された。予め、加湿処理前に、上記水蒸気透過性評価用セルの還元蒸着金属層における腐食物の生成について、レーザー顕微鏡により記録しておいた画像を基準として比較して、恒温恒湿処理400時間での腐食部の総面積を測定した。恒温恒湿度300時間処理後の2.0mm×2.0mmの面積の還元蒸着金属層に50〜150μm径の腐食が確認でき、腐食総面積は7.1x10−4cm2であった。腐食として観察される水酸化カルシウムの分子量と密度は76.1と2.24g/cm3とであることから、生成した水酸化カルシウムのモル質量は4.18x10−10g/molであった。これらより、水蒸気透過度を求めたところ、2.3×10−4(g/m2/day)であった。尚、腐食部付近を観察したが、水蒸気不透過層に割れは認められず、上記水蒸気透過性評価用セルが正常に機能したことがわかった。
(1)水蒸気透過性評価用セルの作製
実施例1において、水蒸気不透過層(第一の水蒸気不透過金属層)の露出面のすべてを覆うように、金属バリウム(2価)を用いて、真空蒸着法により、厚み50nmの割れ防止緩衝層を形成した。次いで、割れ防止緩衝層の露出面のすべてを覆うように、銀を用いて、真空蒸着法により、厚み1μmの第二の水蒸気不透過金属層を形成し、水蒸気不透過層の構造を、2つの水蒸気不透過金属層の間に割れ防止緩衝層をサンドイッチ状にした積層構造とした以外は、実施例1と同様にして、水蒸気透過性評価用セルを作製した。
上記で得た水蒸気透過性評価用セルを用い、実施例1における恒温恒湿槽の載置時間を、400時間から300時間とした以外は、実施例1と同様の操作により水蒸気透過性の評価を行った。
加湿処理後の還元蒸着金属層における腐食物の生成について確認したところ、変色あるいは白色部となった腐食物である水酸化カルシウムが観察された。
恒温恒湿度300時間処理後の2.0mm×2.0mmの面積の還元蒸着金属層に50〜150μm径の腐食が確認でき、腐食総面積は5.1x10−4cm2であった。腐食として観察される水酸化カルシウムの分子量と密度は76.1と2.24g/cm3とであることから、生成した水酸化カルシウムのモル質量は3.00x10−10g/molであった。これらより、水蒸気透過度を求めたところ、2.2×10−4(g/m2/day)であった。尚、腐食部付近を観察したが、水蒸気不透過層に割れは認められず、上記水蒸気透過性評価用セルが正常に機能したことがわかった。
(1)水蒸気透過性評価用セルの作製
実施例1において、試験片として、水蒸気不透過性フィルム上に、直径約100μm〜約500μmの異物粒子を付着させた試験片を用い、腐食性金属層を形成する際に、炭酸カルシウムとチタニウム粉末の混合物に替えて、腐食性金属として金属カルシウム(2価)を用いて、真空蒸着法により、腐食性金属層を形成した以外は、実施例1と同様にして水蒸気透過性評価用セルを作製した。
上記で得た水蒸気透過性評価用セルを用い、実施例2と同様の操作により水蒸気透過性の評価を行った。
加湿処理後の腐食性金属層における腐食物の生成について確認したところ、変色あるいは白色部となった腐食物である水酸化カルシウムが観察された。恒温恒湿度300時間処理後の2.0mm×2.0mmサイズのカルシウム薄膜中に100〜580μm径の腐食が確認でき、腐食総面積は7.5×10−3cm2であった。これより算出される水酸化カルシウムのmol質量は4.42×10−9g/molであった。これらより、水蒸気透過度を求めたところ、3.2×10−3(g/m2/day)であった。なお、腐食部付近を観察したところ、水蒸気不透過層に割れが認められ、水蒸気透過性評価用セルが正常に機能していないことがわかった。
2 腐食性金属層
3 水蒸気不透過層
4 第一の水蒸気不透過金属層
5 割れ防止緩衝層
6 第二の水蒸気不透過金属層
Claims (6)
- 試験片に、水と化学反応して腐食物を生じる金属からなる腐食性金属層と、水蒸気を透過しない金属からなる水蒸気不透過層とを備えた、水蒸気透過性評価に用いる評価用セルであって、前記水と化学反応して腐食物を生じる金属からなる腐食性金属層が、還元蒸着金属層であり、腐食性金属の炭酸塩と還元剤と混合したものを蒸気化して作製したものであることを特徴とする水蒸気透過性評価用セル。
- 前記水蒸気を透過しない金属からなる水蒸気不透過層は、金属合金で構成されるものである請求項1に記載の水蒸気透過性評価用セル。
- 前記水と化学反応して腐食物を生じる金属からなる腐食性金属層は、還元蒸着アルカリ土類金属を含むものである請求項1又は2に記載の水蒸気透過性評価用セル。
- 前記還元剤が、チタン、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれるものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水蒸気透過性評価用セル。
- 試験片に、水と化学反応して腐食物を生じる金属からなる腐食性金属層と、水蒸気を透過しない金属からなる水蒸気不透過層とを備えた、水蒸気透過性評価に用いる評価用セルを製造する方法であって、前記試験片の評価する面に、還元蒸着法により、水と化学反応して腐食物を生じる金属から、腐食性金属の炭酸塩と還元剤と混合したものを蒸気化して、腐食性金属層を形成する工程を有することを特徴とする水蒸気透過性評価用セルの製造方法。
- 前記水と化学反応して腐食物を生じる金属は、アルカリ土類金属を含むものである請求項5に記載の水蒸気透過性評価用セルの製造方法。
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