JP5580528B2 - 手持ち式工具装置 - Google Patents

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Description

本発明は、手持ち式工具装置、特に軸線に沿って周期的に作動する工具を有する手持ち式工具装置、例えばハンマドリル、複合ハンマ、チゼルハンマ、インパクトスクリュードライバ、糸鋸およびサーベル型鋸に関する。
手持ち式のハンマドリルは、駆動装置によってドリルを運動軸線に沿って加速する。この場合にドリルは、ドリルを被加工部品内へ進入させる衝撃および/またはトルクを受ける。反対方向に作用する相補的な衝撃が、ハンマドリルのグリップを保持する使用者に作用する。
周期的に作動するハンマドリルの場合には、使用者は所定時間にわたって周期的に変化する反作用力を加えなければならない。使用者はこれを不快な振動として感知する。
ハンマドリルの始動性および操作性を改善することは、周期的に生じる力を所定時間にわたって一様に分配することである。対応した緩衝システムが、周期的に生じる力によって励起され、この励起された力をより長い時間にわたって再び放出する。代替的または付加的に、緩衝システムは励起された力を散逸的に熱に変換することができる。
フランス国特許第2237734号明細書によれば、手持式打撃工具装置において、振動を低減するために受動的な振動補償器が用いられる。軸線方向に振動する2つの受動的な振動補償器が打撃機構に沿って配置されていることがドイツ国特許第815179号明細書につき公知である。受動的な振動補償器が中空シリンダ状に形成されていてもよい(ドイツ国特許第1281970号明細書)。受動的な振動補償器は、打撃機構の案内管の周囲に配置されていている場合もあり、振動補償器は、案内管に対して長手方向に案内されている(欧州特許第1710052号明細書)。
このような緩衝システムが設けられているにもかかわらず、依然として使用者に振動、すなわち、周期的なトルクが作用することが判明した。
フランス国特許第2237734号明細書 ドイツ国特許第815179号明細書 ドイツ国特許第1281970号明細書 欧州特許第1710052号明細書
本発明の課題は、手持ち式工具装置において、使用者に作用するトルクおよび振動を広範囲に低減できるようにすることである。
工具または駆動装置の運動軸線に対して長手方向に作用する第1の力の他に、第1の力に対して垂直方向に作用する第2の力も周期的に生じ、これらの力が使用者、例えば職人に感知されることが知られている。使用者は、手持ち式工具装置を被加工部品に対して押圧力を加えなければならないだけでなく、被加工部品に対する手持ち式工具装置の周期的な回動または傾動を抑制する必要もある。
このことは、手持ち式工具装置の重心が工具の運動軸線に対してずらして配置されていることに起因する。このため、工具の軸線方向の加速により手持ち式工具装置にトルクが生じる。その結果、使用者は反作用するトルクを1つまたは複数の工具グリップに加えなければならない。
本発明による手持ち式工具装置はねじり振動子を有している。このねじり振動子は、作用するトルクによって励起することができ、励起された力を再び弱め、放出することができる。このことは、特に周期的に生じるトルク、例えば手持ち式工具装置において周期的な運動によって生じるトルクに関していえる。したがって、本発明による手持ち式工具装置の使用者または保持部は、所定時間にわたって一様な負荷を受ける。さらに、ねじり振動子における散逸的な要素は振動運動にエネルギーを与えることはできない。
ねじり振動子の概念は、本明細書の文脈では通常の定義とは異なっている。ねじり振動子は、ねじり軸または点にのみ懸吊され、ねじり振動子はこれらのねじり軸または点を中心として回動することができる。戻し素子が回動時に変形させられ、これにより、ねじり振動子は再び停止位置に向けて回し戻される。ねじり振動子は、ねじり振動子の質量に作用する慣性モーメントによって励起される。
本発明による手持ち式工具装置は、運動軸線に沿って工具を運動させるための直動駆動装置と、運動軸線に対して垂直方向に位置する少なくとも1つのねじり軸とを含み、ねじり振動子は、回動可能に振動するように少なくとも1つのねじり軸の付近に懸吊されている。ねじり振動子は、平面において軌道に沿って振動する。手持ち式工具装置は重心を有している。ねじり振動子は、この重心と軸線とを通る面がねじり振動子の振動面に対して平行に位置するように配置されている。ねじり振動子のこのような配置により、手持ち式工具装置に生じるトルクをねじり振動子に効果的に伝達することが可能になる。
求項に、本発明による手持ち式工具装置の構成が記載されている。
手持ち式工具装置の一実施形態は、ねじり振動子は湾曲した軌道に沿って振動する。これは、特にねじり振動子が2つのねじり軸を中心に振動する場合である。第1の軸を中心とした振動は、本質的に1つの平面で得られる。第2の軸を中心とした振動により、ねじり振動子は第2の軸線を中心とした回転の増大に伴って平面に対して垂直方向に変位させられる。また、手持ち式工具装置の一実施形態は、振動面は、手持ち式工具装置の対称平面に対して平行に位置している
特別な改良形態によれば、ねじり振動子のねじり軸は、手持ち式工具装置の重心を通って延びている。これにより、工具の加速により生じるトルクもねじり振動子のトルクも共通の対称軸線に作用する。この改良形態では不快なトルクがねじり振動子に伝達される度合いは、有利には極めて高い。
一構成では、ねじり振動子は、ねじり軸と、少なくとも1つのばね素子と、少なくとも1つの質量体とを有しており、この質量体は、ばね素子を介してねじり軸に機械的に結合されている。ばね素子は、多様に形成されていてよい。ばね素子は、質量体を、停止位置から変位した後に再び停止位置に戻す機能を有していることを特徴としている。質量体は、ねじり振動子の質量全体の25%以上、例えば50%以上を占めている。質量体は、ねじり振動子の慣性モーメントの少なくとも50%を占めている。質量体とねじり軸との機械的な結合部は、堅固な材料からなるレバーを有していてもよい。
一構成では、ばね素子は、ねじり軸と質量体とを結合する板ばねの形で形成されている。板ばねは、戻り素子としての機能の他に、同時にレバーとして役立ち、ねじり軸に対して間隔をおいて質量体を保持する。この構成は、簡素であることにより優れている。一改良形態では、ばね素子と質量体とは一体的な素子として形成されていてもよい。
一改良形態では、ばね素子はばね定数の異なる少なくとも2つの部分を有している。ねじり振動子の個々の部分の回動は、手持ち式工具装置のハウジング内の空間条件に適合させることができる。トルクが作用している場合、高いばね定数を有する部分は、より小さいばね定数を有する部分に比べて、枢着点に関して小さい角度変位を受ける。さらに、質量体の非円形の軌道曲線を付与することもできる。異なるばね定数を有する少なくとも2つの部分の第1部分と第2部分とは、相互に角度をなしていてもよい。これにより、空間条件に適合させることのできる多様な軌道曲線が付与可能である。
一構成では、ねじり振動子の慣性モーメントおよび/またはばね定数が設定可能である。慣性モーメントは、レバーアームの短縮または伸長によって得られる。このために、対応した摺動機構が設けられている。ばね素子に追加の負荷を加えるか、またはばね素子の有効長さを変更することによりばね定数を変更することもできる。
一構成では、直動駆動装置が所定の周期によって周期的に軸線に沿って工具を運動させ、ねじり振動子の振動周期は所定の周期に合わせて調整されている。ねじり振動子の共振振動数と直動駆動装置の励起振動数とが一致している場合、不快なトルクはねじり振動子に最適に伝達される。
一実施形態では、手持ち式工具装置は、装置ハウジングとグリップとを有しており、ねじり振動子は装置ハウジングに懸吊されている。
手持ち式工具装置のグリップは、振動緩衝素子によって装置ハウジングから機械的に分離されている。
一改良形態では、ねじり振動子の振動軌道は、少なくとも部分的にグリップ内に延びている。特に質量体の軌道曲線は部分的にグリップ内に延びている。
一実施形態では、直動駆動装置はフリーピストンを含む。さらに、直動駆動装置は打撃機構を有している。手持ち式工具装置は、手により操作可能な工具装置またはスタンドで操作される手持ち式工具装置であってよい。手持ち式工具装置は、手持ち式打撃工具装置、例えば、ハンマドリル、複合ハンマ、チゼルハンマ、インパクトスクリュードライバー、またはコアドリルであってもよい。サーベル型鋸またはまたは糸鋸が同様にねじり振動子を有していてもよい。
次に例示的な実施形態および図面を用いて本発明を説明する。
同じ素子、または同じ機能を有する素子には図面において同じ符号を付す。個々に示した素子の寸法およびサイズ比は、より見やすく示すために変更して示している。
図1は、例示的な手持ち式工具装置1の長手方向断面図を示している。図2は、図1に示した平面A−Aに沿った、手持ち式工具装置1の横断面図を示している。
手持ち式工具装置101は、例えば穿孔機、ハンマドリルまたはその他の手で保持するか、または手で操作する手持ち式工具装置であってよい。手持ち式工具装置101のハウジング102は、一体的に形成されていてもよい。代替的に、ハウジング102は装置ハウジング103とグリップ104とを有していてもよい。グリップ104は、好ましくは、振動緩衝素子105によって装置ハウジング103から分離される。別の構成では、グリップ104の代わりに、またはグリップ104に加えてスタンドが設けられている。スタンドは、振動緩衝素子によってハウジング102または装置ハウジング103から分離されていてもよい。
装置ハウジング103には、工具111を駆動するための直動駆動装置110が運動軸線112に沿って配置されている。直動駆動装置110が、工具111を直動に加速する。これにより、直動駆動装置110は、軸線方向延長部で工具111対して並進運動を行う。直動駆動装置110のための例は、フリーピストン114を有する打撃機構113である。インパクトスクリュードライバまたはハンマドリルにおいては、工具111は並進運動に加えて、運動軸線112を中心として回転させることもできる。
直動駆動装置110自体は、第1駆動装置115、例えば偏心器116によって駆動することもできる。第1駆動装置115は、例えば電動モータ117、磁気動力式、電子動力式、空圧式または液圧式の駆動手段を有している。
直動駆動装置110は、所定の周期によって周期的に励起される。周期は、手持ち式工具装置101のために固定的にあらかじめ設定されていてもよい。代替的には、選択スイッチ(図示しない)が設けられており、この選択スイッチにより、使用者が周期を設定することもできる。打撃振動数は、周期に反比例的な値を示す。
手持ち式工具装置101の重心118は、運動軸線112から離隔されている。このことは、直動駆動装置110および第1駆動装置115などの最も重い構成部分がハウジング102内に配置されていることに基づく。重心118は、手持ち式工具装置101の対称平面119に位置していてもよい。
直動駆動装置110は、運動軸線112の方向に工具111に衝撃を伝達する。同じ強さの衝撃が、逆方向にグリップ104もしくはスタンドに加えられる。運動軸線112は重心118を通って延びていないので、衝撃は重心118を中心としたトルクをもたらす。トルクは、運動軸線112と重心とを通って広がる回転平面で作用する。回転平面は、図示の実施形態では手持ち式工具装置101の対称平面119と一致している。なぜなら、運動軸線112も重心118も対称平面119に位置しているからである。
トルクの値は、重心118から運動軸線112までの最短距離を考慮して、てこの原理に従って決定することができる。トルクの値は、直動駆動装置110によってあらかじめ設定された所定の周期によって変化する。打撃振動数は心拍よりも著しく大きので、操作者がトルクの発生を個々の出来事としてではなく、持続的な振動として感知する。
装置ハウジング103内には、ねじり振動子120が配置されている。ねじり振動子120は、例えばねじり軸121、戻し素子122、レバー123および質量体124を有している。ねじり軸121は、ねじり振動子120と装置ハウジング103との当接点125に固定されていてもよい。戻し素子112は、例えば板ばねである。レバー123は、板ばねに比べて堅固に形成されていてもよい。質量体124は、好ましくはねじり振動子120の質量の主要部分、少なくとも25%、例えば50%を占めている。ねじり振動子120全体の慣性モーメントは、少なくとも50%、例えば75%まで質量体によって規定されている。
質量体124は、ねじり振動子120の振動平面126で軌道曲線125に沿って運動することができる。軌道曲線125は、本質的に堅固なレバー123によって得られる。軌道曲線125は、本質的に円軌道に沿って延びている。質量体124は、軌道曲線125の説明のために質量体の重心と等価のものとして考察してもよい。
質量体124が変位した場合に戻り素子122が停止位置から変形した場合、戻り素子122は軌道曲線125の構成にも影響を及ぼす。対応して円軌道の偏差が生じる。円軌道の偏差は、レバー123が少なくとも部分的に弾性的に形成されている場合にも生じる。
ねじり振動子120の振動面126は、重心118と運動軸線112とによって規定される回転平面に対して平行に配置されている。有利には、特に回転平面が手持ち式工具装置101の対称平面119と一致している場合、振動面126は回転平面に位置する。
一回の変位後に、ねじり振動子120は固有振動数によって振動する。固有振動数は、ねじり振動子120の自由な振動を示す。固有振動数は、ねじり振動子120の構成によって規定される。特にねじり振動子120の慣性モーメントおよび戻り素子122のばね定数は固有振動数を規定する。慣性モーメントは、ねじり軸121から質量体124までの間隔によって規定される。この間隔は、質量体124の重心に関連している。重心の位置は、質量体124の構成形態によって規定される。
手持ち式工具装置101においてねじり振動子120がこのように配置されていることにより、ねじり振動子120は周期的に発生するトルクによって回動するように振動させられる。ねじり振動子120は、ねじり振動子120の軌道曲線125の引返し点127,128までトルクを吸収する。トルクは、部分的に戻り素子122の弾性変形作用を引き起こす。より小さいさらなる部分トルクによって、塑性変形およびその他の散逸作業を行うことができる。軌道曲線125の引返し点127,128後には、ねじり振動子120は弛緩し、トルクを放出する。
励起されたトルクの位相は、ねじり振動子120によって放出されるトルクの位相に先行する。これにより、部分的に破壊的に、かつ部分的に建設的に両方のトルクが重畳される。時間的に平均化されたトルクは、散逸部分を除いて保持されるが、トルク全体の最大振幅は、直動駆動装置110によって生じた周期的なトルクの振幅よりも小さくなる。ねじり振動子120は、トルクのピーク値を吸収し、吸収されたトルクを時間的に遅延して再び放出する緩衝器として作用する。
好ましい構成では、ねじり振動子120の固有振動数、または、ねじり振動子の調和振動数は、直動駆動装置110の打撃振動数に相当する。ねじり振動子120は、共振励起されると停止位置から最大限に変位させられる。その結果、ねじり振動子120はより大きいトルクを吸収し、蓄積する。励起されたトルクと、ねじり振動子120によって放出されるトルクとの間の位相差は、約90°である。
したがって、ねじり振動子120への周期的なトルクの伝達は、共振時には特に効果的である。それゆえ、ねじり振動子120を、最大で10%、例えば5%、好ましくは2%だけ直動駆動装置110の打撃振動数とは異なる固有振動数を有するように設計してもよい。
上記説明は、ねじり振動子120の作用原理に対して発明者の作動仮説を要約している。これらの作業仮説は、ねじり振動子120の実施形態を改良することを可能にする。しかしながら、学術上の完全性に対する要求は生じない。特にこの手持ち式工具装置は、ねじり振動子の作用原理が上記作動仮説によって説明されないとしても、上記説明に制限されない。
次に、種々異なったねじり振動子の複数の実施形態およびハウジング2内のこれらのねじり振動子の配置を説明する。特殊な実施形態に関連して幾つかの詳細を記載したが、これらは他の構成で組み合わせることも可能であることを明確に指摘しておく。
図1は、戻り素子122が渦巻きばね122によって形成されているねじり振動子120を示している。渦巻きばね122の中心は、装置ハウジング103に固定されている。渦巻きばね122は、その中央を中心として回動することができ、この場合に機械的に緊張させられる。渦巻きばね122の周囲にレバー123が固定されている。レバー123は、好ましくは堅固である。レバー123の、渦巻きばね122に向いていない方の端部には質量体124が固定されている。質量体124は、レバー123と同じ材料から作製されていてもよい。一構成では、質量体124とレバー123とは一体的に形成されている。
渦巻きばね122は、ねじり振動子120が変位された場合に少しだけ形状を変える。特に、ねじり振動子120は、せいぜい30°、例えばせいぜい10°、またはせいぜい5°だけ停止位置から変位させられる。それゆえ、質量体124は広範囲に円軌道125で運動する。
円軌道125は、重心118と運動軸線112とによって規定される回転平面に対して平行に平面に位置している。停止位置では、レバー123は、例えば手持ち式工具101の運動軸線112に対して20°から90°までの範囲で傾斜していてもよい。
ねじり軸121は、図示のようにハウジング102の底部131の近傍に配置されていてもよい。代替的には、ねじり軸121はハウジング102の上面130の近傍に配置されていてもよく、これにより、懸吊構造が生じる。別の構成では、ねじり振動子120は第1駆動装置115または伝動装置のハウジングに固定されていてもよい。
レバー123の長さは、好ましくは、ハウジング102の高さの半分よりも大きく、例えば、少なくともハウジングの高さの3/4である。大きいレバー123を有するねじり振動子120は、停止位置からわずかに変位した場合にすでに大きいトルクを蓄積することができる。
ねじり振動子120は、有利には装置ハウジング103に固定されている。グリップ104は、例えば緩衝素子105によって、ねじり振動子120から機械的に分離されていてもよい。軌道曲線125は、部分的にグリップ104内に延びている。例えば、質量体124は、例えば図示のように、停止位置で既にグリップ104内に位置していてもよい。
ねじり振動子120は、装置ハウジング103内に横たわるように配置されていてもよい。すなわち、停止位置では、レバー123は工具111の運動軸線112に対して平行に位置している。
質量体124の重心は、装置工具101の重心と運動軸線112とによって規定される回転平面の外部に配置されていてもよい。これにより、ねじり振動子120の振動は運動軸線112に対して垂直方向の平面に位置するトルクをもたらす。このようにして、直動駆動装置110により生じる対応したトルクを補償することができる。
6700gの質量および53Hzの振動周波数を有する手持ち式工具装置101のためには、例えば約1.1Nm/°のばね定数C、約200mmのレバー124の長さ、約100gの質量体124の質量が適していることが明らかである。これらの数値は、例としてのみ役立つ。他のばね定数、長さおよび質量の多様な組み合わせが、特殊な手持ち式工具装置101のために同様に適している場合もある。
図3および図4は、さらなる実施形態を示している。ねじり振動子220は、ねじり軸221、板ばね222および質量体224を有している。板ばね222は、同時に戻り素子とレバーとを形成している。これにより、特に簡単な構成が可能である。
板ばね222の端部は装置ハウジング103で支承されている。この端部はねじり軸221を形成している。支承部は、例えばグリップ104を装置ハウジング103の固定子233に固定するための固定ねじ231によって形成されていてもよい。このためには、板ばね222の端部に孔232が設けられており、この孔を通って固定ねじ231が押し込まれる。支承部233が、板ばね222が固定ねじ231に沿って摺動することを防止するように孔232の両側に配置されていてもよい。支承部233は、装置ハウジング103からグリップ104に伝達される振動を低減するために弾性緩衝材料によって形成されていてもよい。
板ばね222は、対称的に配置された2つのウェブ240と、ウェブ240を結合する横方向ウェブ241とを有するU字形状に形成されていてもよい。横方向ウェブ241には、質量体224が固定されている。質量体224は、横方向ウェブ241を包囲する2つの部分から組み立てられていてもよい。
追加質量体250が、ねじり振動子220の固有振動数を変更するために設けられていてもよい。追加質量体250は、例えばスライダとして板ばね222にクランプ固定されていてもよい。追加質量体250は、板ばねのウェブ240に沿って摺動させてもよい。
さらなる構成では、質量体224は板ばね222に沿って摺動可能に取り付けられる。質量体224は、係止機構によって、ねじり軸221まで所定の間隔をおいて板ばね222に保持されていてもよい。
ねじり振動子220は、ねじり軸221を中心とした回転に加えて、垂直方向のねじり軸を中心としても回転することができる。このことは、重心118と運動軸線112とが振動面126に対して平行な平面に位置してない場合には特に有利である。これにより運動軸線112およびねじり軸に対して垂直に作用するトルクは、ねじり振動子220のさらなる回転方向によって吸収される。
図5は、2つのねじり軸221,250の斜視図を示している。ねじり軸221,250は、相互に傾斜しており、直動駆動装置110の運動軸線112に対して傾斜している。図示の実施形態では、3つの軸線112,221,250が互いに対して垂直に位置している。
ねじり振動子220は、回転衝撃によって励起することができる。この回転衝撃は、第1のねじり軸221に対して平行に、または第2のねじり軸250に対して平行に作用し、両方の回転衝撃の任意に組み合わせて励起することもできる。これにより、使用者がグリップの上下運動またはグリップの左右の運動として感知するであろう振動を低減することができる。
質量体224は、第1のねじり軸221に対して平行に摺動可能に支承されていてもよい。これにより、第2のねじり軸250を中心とした慣性モーメントを、生じる振動、特に振動数に合わせて調節することができる。
図6は、ねじり振動子320の別の構成を示している。ばね素子322は、装置ハウジング103に結合されている。ばね素子322と装置ハウジング103との結合点は、ねじり振動子320のねじり軸321を規定する。図6の曲線軌道は、ねじり振動子320が振動した場合のばね素子322の運動を示している。レバー323が、摺動可能にばね素子322に支承されている。レバー323は、ばね素子322と質量体324とを結合する。ねじり振動子320の固有振動数は、ねじり軸321とレバー323との間隔340を調整することにより設定することができる。
間隔340を固定するための機構341が、例えば、くさび342および戻しばね343を有している。くさび342は、ばね素子322に対するレバー344の停止位置までの間隔340を強制する。くさび342は、ばね素子322の長さ方向に対して垂直な方向344に沿って移動可能である。これにより、間隔340を調節することができる。楔342に向かい合ってレバー323の反対側に配置された戻しばね343が、レバー323をくさび342でクランプ固定する。くさび342の代わりに、他の摺動手段、例えばスピンドルを用いることもできる。
ばね素子322の有効長さの変更により、ばね素子のばね定数と、ねじり軸321から質量体324までの間隔とに変更が生じる。それゆえ、機構341により、ねじり振動子320の固有振動数を直動駆動装置110の打撃振動数に適合させることが可能となる。打撃振動数のための対応した選択スイッチが、ロッドを介して機械式または電気機械式に機構341に接続されていてもよい。
レバー323とばね素子322とは、好ましくは相互に角度をなしている。角度は、30°から120°まで、例えば80°から100°までの範囲であってよい。しかしながら、一構成では、レバー324はばね素子323に対してテレスコープ状に配置される。
レバー323は、板ばねの形で形成してもよい。レバー323の剛性は、ばね素子343の剛性とは異なっていてもよい。
図7は、ねじり振動子420の側面図を示している。ねじり振動子420は、板ばねから形成されている。レバー423は、同時に戻り素子422を形成している。質量体424は、板ばねの端部を数回折りたたむことによって作製されている。
図8は、手持ち式工具装置101のさらなる実施形態を示している。ねじり振動子520はねじり軸521を有しており、このねじり軸521には、少なくとも2つの別個の質量体524が作用する。質量体524はレバー523を介して共通の戻し素子522によってねじり軸521に機械的に結合されている。ねじり振動子520の重心は、好ましくはねじり軸521に位置している。
ねじり振動子520により、手持ち式工具装置101の重心118の近傍にねじり軸521を配置し、同時に高い慣性モーメントを提供することが可能となる。ねじり振動子520によって吸収され、放出されたトルク、例えば直動駆動装置110に基づくトルクは、広範囲に同じ旋回点に作用する。これにより、ねじり振動子520による回転振動の良好な緩衝が得られる。
図9によれば、励起軸線Aに沿って振動する、回転打撃ハンマドリルの形の手持ち式工具装置1が、装置ハウジング2および操作可能な案内グリップ3を有している。空圧式の打撃機構の形の駆動装置6によって、図示のように重心Sを有する機器平面に引き起こされた振動Vを緩衝するために振動補償器4が設けられている。この振動補償器4は、ワイヤばね素子の形のばね弾性的レバー7と、ハウジングに固定された、レバー7のための渦巻きばねの形の回転ばね5とを有する振動子として形成されている。レバー7の旋回点Pから離隔された補償質量体8は、機器平面と同一である振動面において、角度変位φ(t)だけ旋回点Pから離れて外方に向けられており、グリップ側で励起軸線Aに対して70°の角度αで配向されている停止方向Rの辺りで振動する。補償質量体8(さらに図示していない)が、互いに堅固に結合された同じ大きさの2つの部分質量体からなっており、これらの部分質量体が図示の機器平面の下方および上方に配置されており、機器平面に対してそれぞれ平行に均等に離間された部分平面にそれぞれ部分質量体中心を有している場合にも、補償質量体8全体の質量中心は機器平面に位置しており、これにより、機器平面は振動面と同一となる。しかしながら、一般に機器平面に対して振動面が傾斜している他の配向も可能であり、本発明の思想に含まれる。さらに図示しないサーベル型鋸またはまたは糸鋸の場合にもこのことは同様であり、この場合、駆動装置6によって生じる励起は、空圧式の打撃機構によってではなく、行程ロッドの往復運動および行程ロッドの切断力によってもたらされる。
例えば、6700gの装置質量および53Hzの一次振動周波数を有する手持ち式工具装置において、Z=340mmおよびY=−180mmの場合の旋回点Pを中心として、グリップ側で励起軸線Aに対して角度α=70°をなして、停止方向Rの付近でφ=+/−4°の角度変位をもって振動する振動補償器4の場合には、ばね5のばね弾性C、レバー7の長さLおよび補償質量体8の質量が3倍値(C=1.1Nm/°,L=約200mm、m=100g)であることが適している。
手持ち式工具装置の長手方向断面図である。 図1の手持ち式工具装置の横断面図である。 手持ち式工具装置の長手方向断面図である。 図3の手持ち式工具装置の横断面図である。 手持ち式工具装置で使用するためのねじり振動子の斜視図である。 手持ち式工具装置の長手方向断面図である。 手持ち式工具装置で使用するためのねじり振動子の側面図である。 手持ち式工具装置の長手方向断面図である。 手持ち式工具装置の長手方向断面図である。
符号の説明
1,101 手持ち式工具装置
103 装置ハウジング
104 グリップ
110 直動駆動装置
111 工具
112,z 運動軸線
118,S 重心
120,220,320,420,520 ねじり振動子
121,221,321,421,521 ねじり軸線、ねじり軸
122,222,232,242,252 ばね素子
124,224,324,424,524 質量体
126 振動面

Claims (12)

  1. 手持ち式工具装置(1;101)において、
    運動軸線(112)に沿って工具(111)を運動させるための直動駆動装置(110)と、該運動軸線(112)に対して垂直方向に位置する少なくとも1つのねじり軸と、前記ねじり軸のねじり軸線を中心として旋回可能に振動するように懸吊される、振動を補償するためのねじり振動子(120;220;320;420;520)と、を備え、
    前記直動駆動装置(110)は、前記運動軸線(112)と前記手持ち式工具装置(1;101)の重心(S;118)とを通る平面に沿って工具(111)を運動させ、
    前記重心(S;118)と前記運動軸線(112)とを通る前記平面が、前記ねじり振動子(120;220;320;420;520)の振動面(126)に位置するか、または該振動面に対して平行に位置し、
    前記ねじり振動子(120;220;320;420;520)が、ねじり軸(121;221;321;421;521)、少なくとも1つのばね素子(122,222,232,242,252)および少なくとも1つの質量体(124;224;324;424;524)を有しており、該質量体が、前記ばね素子(122;222;232;242;252)を介してねじり軸(121;221;321;421;521)と機械的に結合され、前記ねじり軸(121;221;321;421;521)は、前記ばね素子と装置ハウジング(103)との結合部により規定されることを特徴とする手持ち式工具装置。
  2. 請求項1に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    前記ねじり振動子(120;220;320;420;520)の前記振動面(126)が前記直動駆動装置(110)の前記運動軸線(112)に位置するように、前記ねじり振動子(120;220;320;420;520)が配置されている手持ち式工具装置。
  3. 請求項2に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    前記振動面(126)が、前記手持ち式工具装置(1;101)の対称平面に位置しているか、または該対称平面に対して平行に位置している手持ち式工具装置。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    前記ねじり振動子(120;220;320;420;520)のねじり軸線(121;221;321;421;521)が、前記手持ち式工具装置(1;101)の前記重心(S;118)を通って延びている手持ち式工具装置。
  5. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    ばね素子(222)が、ねじり軸(221)と質量体(224)とを結合する板ばねの形で形成されている手持ち式工具装置。
  6. 請求項1乃至5までのいずれか1項に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    ばね素子が、ばね定数の異なる少なくとも2つの部分を有している手持ち式工具装置。
  7. 請求項に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    ばね定数の異なる第1部分および第2部分が相互に角度をなしている手持ち式工具装置。
  8. 請求項1からまでのいずれか1項に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    前記ねじり振動子(120;220;320;420;520)の慣性モーメントが、少なくとも1つの振動方向に調節可能である手持ち式工具装置。
  9. 請求項1からまでのいずれか1項に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    前記工具(111)の前記直動駆動装置(110)が、所定の周期によって周期的に運動軸線(z;112)に沿って運動し、前記ねじり振動子(120;220;320;420;520)の振動周期が、前記所定の周期に合わせて調整されている手持ち式工具装置。
  10. 請求項1からまでのいずれか1項に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    該手持ち式工具装置が、前記装置ハウジング(103)とグリップ(104)とを有しており、前記ねじり振動子(120;220;320;420;520)が、前記装置ハウジング(103)に懸吊されている手持ち式工具装置。
  11. 請求項10に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    前記ねじり振動子(120;220;320;420;520)の振動軌道(125)が、少なくとも部分的に前記グリップ(104)内に延びている手持ち式工具装置。
  12. 請求項1から11までのいずれか1項に記載の手持ち式工具装置(1;101)において、
    直動駆動装置(110)が、打撃機構(114)を有している手持ち式工具装置。
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