しかし、上記の電動工具を実現しようとすると、一般的に加工費の高価なシリンダをはじめとして、多くの部品が必要となり、高価な電動工具となる。また、制振ハウジング等を打撃ハウジングの側方に設けた場合、電動工具に作用する回転モーメントを相殺するため制振ハウジング等を打撃ハウジングの両側面に設ける必要があり、更なる部品点数の増加を招くことになる。
また、制振ハウジングを打撃ハウジングの上方や側方に設けることにより、電動工具の大型化を招き、更に、上方、側方の大型化は先端工具の視認性を低下させ、作業性の低下を招いていた。
そこで、本発明は、安価に、且つ大型化及び作業性の低下を招かず、打撃子の駆動による振動を効果的に低減することができる電動工具を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、ハウジングと、該ハウジング内に配置されたモータと、該モータの回転を往復運動に変換する往復運動変換部と、該往復運動の方向と直交する方向に延び、該往復運動の方向に弾性変形可能なカウンタウェイト保持部と、該カウンタウェイト保持部に保持され、該カウンタウェイト保持部と共に該往復運動の方向に往復運動可能なカウンタウェイトと、該カウンタウェイト保持部を該ハウジングに支持するために、該カウンタウェイトから所定距離離間し該カウンタウェイトを該往復運動の方向と直交する方向で挟むような位置にあるカウンタウェイト保持部支持部とを備え、該各カウンタウェイト保持部支持部は、少なくともカウンタウェイトの初期位置から該往復運動の方向の一方向への移動において、該カウンタウェイト保持部の支持形態が変化する電動工具を提供している。
ここで、該各カウンタウェイト保持部支持部は、該一方向への該カウンタウェイト保持部の移動を阻止する第1カウンタウェイト保持部支持部と、該第1カウンタウェイト保持部支持部よりも該カウンタウェイト側に位置し、該一方向とは反対の方向への該カウンタウェイト保持部の移動を阻止する第2カウンタウェイト保持部支持部とを備え、該第1カウンタウェイト保持部支持部と該第2カウンタウェイト保持部支持部は、該カウンタウェイト保持部に該一方向の初期付勢力を付与するように配置されていることが好ましい。
更に、該カウンタウェイト保持部は、折れ曲り部を有し、該折れ曲り部において、該カウンタウェイト保持部は、該第1カウンタウェイト保持部支持部と該第2カウンタウェイト保持部支持部に支持されていることが好ましい。
また、該カウンタウェイト保持部は、該第1カウンタウェイト保持部支持部に対して移動可能に支持されていることが好ましい。
また、該第1カウンタウェイト保持部支持部は、該カウンタウェイト保持部及び該カウンタウェイトの振動を制限可能に構成されていることが好ましい。
また、該第1カウンタウェイト保持部支持部は、少なくとも2個の第1カウンタウェイト保持部支持部から構成され、一方の該第1カウンタウェイト保持部支持部は、該カウンタウェイト保持部を移動可能に支持し、他方の該第1カウンタウェイト保持部支持部は、該カウンタウェイト保持部及び該カウンタウェイトの振動を制限可能に構成されていることが好ましい。
また、該カウンタウェイト保持部は、該カウンタウェイト保持部が該第1カウンタウェイト保持部支持部から脱落するのを防止する脱落防止部を備えていることが好ましい。
また、該カウンタウェイト保持部支持部、該カウンタウェイト保持部、及び該カウンタウェイトは、該モータと該往復運動変換部との間に配置されていることが好ましい。
また、該カウンタウェイトは、該カウンタウェイトの該往復運動の方向と直交する平面上において、該カウンタウェイト保持部が延びる方向の質量バランスと、それと直交する方向の質量バランスが略同一であることが好ましい。
また、該カウンタウェイトは、該カウンタウェイト保持部が延びる方向と直交する方向に延び該カウンタウェイト保持部に固定される基部と、該基部に連結され該カウンタウェイト保持部から離間しつつ該カウンタウェイト保持部を間に挟んで延びる二本の脚部とからなることが好ましい。
また、該往復運動変換部は、シリンダと、該シリンダ内周に摺動可能に設けられたピストンと、該モータの回転駆動力を該ピストンの往復運動に変換する運動変換部と、該ピストンの往復運動により駆動される打撃子とを備えることが好ましい。
請求項1に記載の電動工具によれば、往復運動の方向と直交する方向に延び、往復運動の方向に弾性変形可能なカウンタウェイト保持部と、カウンタウェイト保持部に保持され、カウンタウェイト保持部と共に往復運動の方向に往復運動可能なカウンタウェイトと、カウンタウェイト保持部をハウジングに支持するために、カウンタウェイトから所定距離離間しカウンタウェイトを往復運動の方向と直交する方向で挟むような位置にあるカウンタウェイト保持部支持部とを備え、各カウンタウェイト保持部支持部は、少なくともカウンタウェイトの初期位置から往復運動の方向の一方向への移動において、カウンタウェイト保持部の支持形態が変化する。よって、カウンタウェイト保持部およびカウンタウェイトは往復運動変換部の往復運動による振動を効果的に低減するように振動し、電動工具の操作性を向上させることができる。また、高価なシリンダ等の多くの部品を使用することなく、電動工具の大型化、高価格化、視認性の悪化等を招かずに低振動化を図ることができる。
請求項2に記載の電動工具によれば、各カウンタウェイト保持部支持部は、一方向へのカウンタウェイト保持部の移動を阻止する第1カウンタウェイト保持部支持部と、第1カウンタウェイト保持部支持部よりもカウンタウェイト側に位置し、一方向とは反対の方向へのカウンタウェイト保持部の移動を阻止する第2カウンタウェイト保持部支持部とを備え、第1カウンタウェイト保持部支持部と第2カウンタウェイト保持部支持部は、カウンタウェイト保持部に一方向の初期付勢力を付与するように配置されている。よって、カウンタウェイト保持部の、カウンタウェイトの移動方向のバネ定数が、少なくともカウンタウェイトの初期位置から一方向への移動時において、カウンタウェイトの移動量が大きくなると低減するような特性を実現することが可能となり、小型・安価で低振動の電動工具を提供することができる。
請求項3に記載の電動工具によれば、カウンタウェイト保持部は、折れ曲り部を有し、折れ曲り部において、カウンタウェイト保持部は、第1カウンタウェイト保持部支持部と第2カウンタウェイト保持部支持部に支持されている。よって、第1カウンタウェイト保持部支持部と第2カウンタウェイト保持部支持部でのカウンタウェイト保持部の浮き上がりを防止し、さらにはカウンタウェイト保持部の製造過程での予期せぬ初期変形を矯正することができる。
請求項4に記載の電動工具によれば、カウンタウェイト保持部は、第1カウンタウェイト保持部支持部に対して移動可能に支持されているので、カウンタウェイト保持部及びカウンタウェイトは、往復運動方向と同方向の振動を円滑に行うことができる。
請求項5に記載の電動工具によれば、第1カウンタウェイト保持部支持部は、カウンタウェイト保持部及びカウンタウェイトの振動を制限可能に構成されているので、これにより、カウンタウェイト保持部およびカウンタウェイトで構成されるバネ系の固有振動数および減衰を任意に調整することが可能となり、各種電動工具に合わせた制振機構を提供することができる。
請求項6に記載の電動工具によれば、第1カウンタウェイト保持部支持部は、少なくとも2個の第1カウンタウェイト保持部支持部から構成され、一方の第1カウンタウェイト保持部支持部は、カウンタウェイト保持部を移動可能に支持し、他方の第1カウンタウェイト保持部支持部は、カウンタウェイト保持部及びカウンタウェイトの振動を制限可能に構成されている。よって、カウンタウェイト保持部及びカウンタウェイトは、往復運動方向と同方向の振動を円滑に行うことができる。更に、カウンタウェイト保持部およびカウンタウェイトで構成されるバネ系の固有振動数および減衰を任意に調整することが可能となり、各種電動工具に合わせた制振機構を提供することができる。
請求項7に記載の電動工具によれば、カウンタウェイト保持部は、カウンタウェイト保持部が第1カウンタウェイト保持部支持部から脱落するのを防止する脱落防止部を備えている。よって、第1カウンタウェイト保持部支持部からカウンタウェイト保持部が脱落するのを防止することができる。
請求項8に記載の電動工具によれば、カウンタウェイト保持部支持部、カウンタウェイト保持部、及びカウンタウェイトは、モータと往復運動変換部との間に配置されている。このような構成によっても、ウェイト保持部及びカウンタウェイトの往復運動方向と同方向の振動を円滑に行うことができる。よって、往復運動変換部の往復運動による振動を効果的に低減することができ、電動工具の操作性を向上させることができる。
請求項9に記載の電動工具によれば、カウンタウェイトは、カウンタウェイトの往復運動の方向と直交する平面上において、カウンタウェイト保持部が延びる方向の質量バランスと、それと直交する方向の質量バランスが略同一である。よって、カウンタウェイトが揺動することなく、ウェイト保持部及びカウンタウェイトの往復運動方向と同方向の振動が円滑に行われる。
請求項10に記載の電動工具によれば、カウンタウェイトは、カウンタウェイト保持部が延びる方向と直交する方向に延びカウンタウェイト保持部に固定される基部と、基部に連結されカウンタウェイト保持部から離間しつつ該カウンタウェイト保持部を間に挟んで延びる二本の脚部とからなる。よって、所望の共振周波数を得るためにある程度長さの必要なウェイト保持部の長さを短くすることができるので、カウンタウェイト機構全体のコンパクト化を図ることができる。
請求項11に記載の電動工具によれば、往復運動変換部は、シリンダと、シリンダ内周に摺動可能に設けられたピストンと、モータの回転駆動力を該ピストンの往復運動に変換する運動変換部と、ピストンの往復運動により駆動される打撃子とを備える。カウンタウェイト機構は、打撃子のようなある程度の質量を有する部材の往復運動に起因して発生する振動に対してその効果を最も発揮する。
本発明の電動工具を打撃工具に適用した第1の実施の形態について図1から図7に基づき説明する。図1における左側を打撃工具1の先端側、右側を打撃工具1の後端側として以下説明する。打撃工具1は、互いに接続されたハンドル部10、モータハウジング20、及びギヤハウジング30からなるケーシングを備えている。
ハンドル部10には、電源ケーブル11が取付けられると共に、スイッチ機構12が内蔵されている。スイッチ機構12には、使用者により操作可能なトリガ13が機械的に接続されている。電源ケーブル11は、スイッチ機構を図示せぬ外部電源に接続し、トリガ13を操作することにより、後述の電動モータ21と外部電源との接続と断続とを切換えることができるようになっている。また、ハンドル部10は、使用者が打撃工具1を使用するときに握る握り部14を有している。
モータハウジング20は、ハンドル部10の先端側下部に設けられている。電動モータ21は、モータハウジング20内に収納されている。電動モータ21は、その回転駆動力を出力する出力軸22を備えている。出力軸22の先端には、ピニオンギヤ23が設けられており、ギヤハウジング30内に位置している。また、モータハウジング20内であって、電動モータ21の後端側には、電動モータ21の回転速度を制御するための制御装置24が配置されている。
ギヤハウジング30は、運動変換ハウジング31と、打撃ハウジング32とを備えている。運動変換ハウジング31は、モータハウジング20の上部に位置し、その後端はハンドル部10と接続されている。打撃ハウジング32は、運動変換ハウジング31の先端側に位置している。
運動変換ハウジング31内には、ピニオンギヤ23の後端側において、出力軸22と平行に延びるクランク軸34が回転可能に支承されている。クランク軸34の下端には、ピニオンギヤ23と噛合する第1ギヤ35が同軸固定されている。クランク軸34の上端部には、運動変換機構36が設けられている。運動変換機構36は、クランクウェイト37、クランクピン38、及びコンロッド39を有している。クランクウェイト37は、クランク軸34の上端に固定されている。クランクピン38は、クランクウェイト37の端部に固定されている。コンロッド39の後端には、クランクピン38が挿入されている。
また、運動変換ハウジング31内には、ピニオンギヤ23の先端側において、出力軸22と平行に延びる回転伝達軸51が回転可能に支承されている。回転伝達軸51の下端には、ピニオンギヤ23と噛合する第2ギヤ52が同軸固定されている。回転伝達軸51の上端には、第1ベベルギヤ51Aが同軸固定されている。
打撃ハウジング32内には、出力軸22と直交する方向に延びるシリンダ40が設けられている。シリンダ40の中心軸と、出力軸22の回転軸は、同一平面上に位置している。また、シリンダ40の後端部は、電動モータ21と対向している。また、シリンダ40内には、その内周に摺動可能にピストン43が設けられている。ピストン43は、ピストンピン43Aを有し、コンロッド39の先端には、ピストンピン43Aが挿入されている。シリンダ40内の先端側には打撃子44が、シリンダ40の内周に摺動可能に設けられている。シリンダ40内であってピストン43と打撃子44との間には空気室45が画成されている。
また、打撃ハウジング32内には、シリンダ40の外周を覆うように回転シリンダ50が回転可能に支承されている。また、回転シリンダ50は、シリンダ40よりも先端側に延び、その先端部には工具保持部15が設けられ、図示せぬ先端工具が着脱自在に取付けられる。回転シリンダ50の後端部には、第1ベベルギヤ51Aと噛合する第2ベベルギヤ50Aが設けられている。回転シリンダ50の中心軸と出力軸22の回転軸とは同一平面上に位置している。また、打撃子44の先端側には、中間子46が回転シリンダ50内に前後方向に摺動可能に設けられている。
運動変換ハウジング31内であって、ハンドル部10に対向する部分には、カウンタウェイト機構70が配置されている。カウンタウェイト機構70について、図1から図4に基づき詳細に説明する。カウンタウェイト機構70は、2ヶ所のウェイト保持部支持部71、72と、ウェイト保持部73と、カウンタウェイト74とを備えている。各ウェイト保持部支持部71、72は、ピストン43の往復運動の方向と直交する方向において、カウンタウェイト74を挟むように配置されている。各ウェイト保持部支持部71、72は、第1ウェイト保持部支持部75、76と、第1ウェイト保持部支持部75、76よりもカウンタウェイト74側に位置する第2ウェイト保持部支持部77、78とを備えている。
図2及び図3に示すように、第1ウェイト保持部支持部75は、ボルト75Aと、ワッシャー75Bと、スペーサ75Cとを有している。ウェイト保持部73には、ボルト挿通穴73aが形成されている。ボルト75Aが、ワッシャー75B、スペーサ75C、及びボルト挿通穴73aを挿通することにより、ウェイト保持部73の上端は、運動変換ハウジング31に固定される。ウェイト保持部73のボルト挿通穴73aは、ウェイト保持部73が第1ウェイト保持部支持部75から脱落するのを防止する脱落防止部として機能する。また、ウェイト保持部73の上端は、第1ウェイト保持部支持部75により、ピストン43の往復運動方向の一方向(後端側)への移動を阻止される。
第2ウェイト保持部支持部77は、第1ウェイト保持部支持部75の下側かつウェイト保持部73の先端側に位置し、ピストン43の往復運動方向の一方向と反対の方向(先端側)へのウェイト保持部73の移動を阻止する。第1ウェイト保持部支持部76は、ゴムからなり、ウェイト保持部73の下端かつ後端側に位置し、ウェイト保持部73の後端側への移動を阻止する。第2ウェイト保持部支持部78は、第1ウェイト保持部支持部76の上側かつウェイト保持部73の先端側に位置し、ウェイト保持部73の先端側への移動を阻止する。また、各第1ウェイト保持部支持部75、76及び第2ウェイト保持部支持部77、78は、ウェイト保持部73に後端方向へのオフセット荷重Fを付与するようにそれぞれ配置されている。
ウェイト保持部73は、板バネにより構成され、折れ曲り部73Bを有している。折れ曲り部73Bにおいて、ウェイト保持部73は、第1ウェイト保持部支持部76及び第2ウェイト保持部支持部78に支持されている。第1ウェイト保持部支持部76は、ゴムにより構成されるので、ウェイト保持部73の下端は、第1ウェイト保持部支持部76に対し上下方向に移動可能に支持される。カウンタウェイト74は、二つの部材からなり、ウェイト保持部73の上下方向の略中央にボルト79により固定されている。よって、カウンタウェイト74は、ウェイト保持部73により両持ち支持される。また、カウンタウェイト74は、その往復運動の方向と直交する平面上において、ウェイト保持部73が延びる方向の質量バランスと、それと直交する方向の質量バランスが略同一であるように構成されている。
図2に示すように、カウンタウェイト74は、ウェイト保持部73が延びる方向と直交する方向に延びウェイト保持部73に固定される基部74Aと、基部74Aの両端からウェイト保持部73に沿って延びる二本の脚部74BとからなるH字状をなしている。また、図4に示すように、各第1ウェイト保持部支持部75、76から、カウンタウェイト74がウェイト保持部73に固定された部分までの距離は、それぞれL1で等しく、各第2ウェイト保持部支持部77、78から、カウンタウェイト74がウェイト保持部73に固定された部分までの距離は、それぞれL2で等しく設定されている。
次に、第1の実施の形態による打撃工具1の動作について説明する。ハンドル部10を手で把持した状態で、図示せぬ先端工具を図示せぬ被削材に押し当てる。次に、トリガ12を引き、電動モータ21に電力を供給し回転駆動させる。この回転駆動力は、ピニオンギヤ23及び第1ギヤ35を介してクランク軸34に伝達される。クランク軸34の回転は、運動変換機構36(クランクウェイト37、クランクピン38、及びコンロッド39)によって、シリンダ40内におけるピストン43の往復運動に変換される。ピストン43の往復運動により空気室45中の空気の圧力は上昇及び低下を繰り返し、打撃子44に打撃力を付与する。打撃子44が前進して中間子46の後端に衝突し、中間子46を介して打撃力が図示せぬ先端工具に伝達される。
また、電動モータ21の回転駆動力は、ピニオンギヤ23、第2ギヤ52、回転伝達軸51に伝達される。回転伝達軸51の回転は、第1ベベルギヤ51A及び第2ベベルギヤ50Aを介して回転シリンダ50に伝達され、回転シリンダ50は回転する。回転シリンダ50の回転により、先端工具に回転力が付与される。この回転力と上記の打撃力により、図示せぬ先端工具には回転力と打撃力とが付与され、被削材は破砕される。
上記の打撃工具1の動作時には、打撃子44の往復動に起因するほぼ一定周期の振動が打撃工具1に発生し、運動変換ハウジング31を介して、ウェイト保持部支持部71、72に伝達される。ウェイト保持部支持部71、72に伝達された振動は、ウェイト保持部73及びカウンタウェイト74に伝達され、カウンタウェイト74は、ピストン43の往復運動方向と同じ方向に振動する。この振動により、打撃による打撃工具1の振動は低減される。
具体的には、カウンタウェイト74の振動により、カウンタウェイト74及び板バネであるウェイト保持部73により決定される共振振動数を中心とする一定の幅を有する周波数帯の振動が低減される。尚、当該共振振動数は、打撃工具1の打撃により発生する振動の振動数とほぼ等しく設定されている。ここで、板バネであるウェイト保持部73のばね定数をk1(カウンタウェイト74より上方に位置するウェイト保持部73のばね定数)、k2(カウンタウェイト74より下方に位置するウェイト保持部73のばね定数)とし、カウンタウェイト74の質量をmとすると、共振周波数(共振点)fは、f=1/(2π)((k1+k2)/m)1/2となる。実際には、減衰などの影響により共振周波数は、若干低くなると共に、共振する周波数帯が若干広くなる。よって、上記の式から導き出される共振点は、打撃工具1の振動の振動数よりも、若干高めに設定される。
次に、カウンタウェイト機構70の振動動作について、図4から図7を参照して説明する。図5は、カウンタウェイト74の変位(横軸)と、その変位によりウェイト保持部73に加わる荷重(縦軸)との関係(荷重−変位曲線)を示している。図5の横軸において、カウンタウェイト74の後端側への変位を正の変位とし、縦軸において、カウンタウェイト74が後端側へ移動したときにウェイト保持部73に加わる荷重を正の荷重としている。図7は、(a)打撃子44の往復動に起因する振動の周波数(加振源の周波数)(横軸)と、その振動によるカウンタウェイト74の振幅倍率(縦軸)との関係(周波数応答曲線)と、(b)加振源の周波数(横軸)と、加振力とカウンタウェイト74の振動との位相差(縦軸)との関係を示している。図7の(a)のR1は共振点を示し、共振点において、図8の(b)における位相差は90°である。
打撃子44による振動によりカウンタウェイト74が、その初期位置から先端側へ移動し、初期位置まで戻ってくる時は、ウェイト保持部73は、第1ウェイト保持部支持部75、76及び第2ウェイト保持部支持部77、78に支持される。よって、カウンタウェイト74の変位と、ウェイト保持部73に加わる荷重との関係は、ウェイト保持部73のL2(図4)に対応するバネ定数KL2に従う関係となる(図5の第三象限のA)。カウンタウェイト74が初期位置から後端側へ移動する時、ウェイト保持部73に、第1ウェイト保持部支持部75、76により加えられたオフセット荷重Fと同じ荷重が加わるまで、ウェイト保持部73は、第1ウェイト保持部支持部75、76及び第2ウェイト保持部支持部77、78に支持される。よって、ウェイト保持部73にオフセット荷重Fと同じ荷重が加わるまでは、カウンタウェイト74の変位と、ウェイト保持部73に加わる荷重との関係は、ウェイト保持部73のL2(図4)に対応するバネ定数KL2に従う関係となる(図5の第一象限のB)。ウェイト保持部73にオフセット荷重Fよりも大きな荷重が加わると、ウェイト保持部73は第1ウェイト保持部支持部75、76に支持される。よって、カウンタウェイト74の変位と、ウェイト保持部73に加わる荷重との関係は、ウェイト保持部73のL1(図4)に対応するバネ定数KL1に従う関係となる(図5の第一象限のC)。
以上のように、本実施の形態におけるカウンタウェイト機構70のカウンタウェイト74の変位とウェイト保持部73に加わる荷重との関係は、その第一象限においては、ソフトスプリングと同様の特性を有する。ここで、ソフトスプリング特性Sとは、図6に示すように、通常のコイルバネの変位と荷重の関係が直線Cであるのに対し、変位が大きくなるにつれて荷重の増加の傾きが小さくなる特性である。カウンタウェイト機構70が、第一象限においてソフトスプリング特性を有することにより、その周波数特性は、図7に示すような、共振点が低周波側に傾いた形状となる。
一方、従来のカウンタウェイト機構(動吸振器)では、本実施の形態の図7に対応する(a)打撃子の往復動に起因する振動の周波数(加振源の周波数)と、その振動によるカウンタウェイトの振幅倍率との関係(周波数応答曲線)と、(b)加振源の周波数と、加振力とカウンタウェイトの振動との位相差との関係とは、図8のようになる。図8の(a)に示すように、従来のカウンタウェイト機構は、加振周波数に対して励起される周波数範囲が狭い。また、ウェイト保持部・カウンタウェイト等の寸法公差・組立公差によりカウンタウェイト機構の固有値(周波数)には±5Hz程度のバラツキが生じる。従って、カウンタウェイト機構の固有値が、打撃工具の打撃による加振周波数から少しずれただけでも振幅倍率が低下し、打撃工具の振動を低減することができない。また、カウンタウェイト機構の共振周波数における振幅倍率が大きく、カウンタウェイトが必要以上に振れることとなる。よって、ウェイト保持部の強度を強くする必要がある。
また、図8に示すように、加振力に対する位相差が共振点R2では90°遅れとなる。一方、カウンタウェイト機構の固有値ωn(共振周波数)より打撃工具の打撃による加振周波数ωが低い場合、位相差は0°に近づき同位相となり、高い場合は逆位相となる。加振力を効果的に低減するには、カウンタウェイト機構を逆位相で駆動する必要がある。しかし、従来のカウンタウェイト機構では、逆位相の励振周波数域が非常に狭い。
これに対し、図7に示すように、本実施の形態のカウンタウェイト機構70は、加振力と逆位相で振動する領域及びカウンタウェイト74の励振周波数域を広くすることができ、更に適度な大きさの振幅倍率にすることができる。従って、ウェイト保持部・カウンタウェイト等の寸法公差・組立公差、及び電動モータ21の回転数のバラツキによる、打撃による打撃工具1の振動に対するカウンタウェイト機構70の制振動作への影響を抑制することができる。よって、打撃による打撃工具1の振動を効果的に低減することができ、打撃工具1の操作性を向上させることができる。
また、上記のような簡易なカウンタウェイト機構70の構成にすることにより、高価なシリンダ等の多くの部品を使用することなく、電動工具1の大型化、高価格化、視認性の悪化等を招かずに低振動化を図ることができる。また、ウェイト保持部73のカウンタウェイト74の移動方向のバネ定数が、少なくともカウンタウェイト74の初期位置から片側への移動時において、カウンタウェイト74の移動量が大きくなると低減するような特性を実現することができ、小型・安価で低振動の電動工具1を提供することができる。
また、ウェイト保持部73は折れ曲り部73Bを有している。よって、ウェイト保持部73を第1ウェイト保持部支持部75、76及び第2ウェイト保持部支持部77、78の複数の支持部で支持する場合に、各支持部でのウェイト保持部73の浮き上がりを防止し、さらにはウェイト保持部73の製造過程での予期せぬ初期変形を矯正することが可能となる。また、ウェイト保持部73の下端は、第1ウェイト保持部支持部76に対し上下方向に移動可能に支持されるので、ウェイト保持部73及びカウンタウェイト74は、往復運動方向と同方向の振動を円滑に行うことができる。
また、上記のように、第1ウェイト保持部支持部75は、ボルト75Aと、ワッシャー75Bと、スペーサ75Cとにより構成されている。よって、ボルト75Aを締め付ける力を調節することにより、ウェイト保持部73の上端部に負荷される荷重を調整することができる。これにより、ウェイト保持部73及びカウンタウェイト74の振動を制御することができ、カウンタウェイト機構70の固有振動数及び減衰を任意に調整することができる。よって、各種電動工具に合わせた制振機構(カウンタウェイト機構70)を提供することができる。
更に、カウンタウェイト74は、H字状をなしている。よって、所望の共振周波数を得るためにある程度長さの必要なカウンタウェイト74の長さを短くすることができるので、カウンタウェイト機構全体のコンパクト化を図ることができる。また、カウンタウェイト74は、その往復運動の方向と直交する平面上において、ウェイト保持部73が延びる方向の質量バランスと、それと直交する方向の質量バランスが略同一であるように構成されている。よって、カウンタウェイトが揺動することなく、ウェイト保持部及びカウンタウェイトの往復運動方向と同方向の振動が円滑に行われる。また、本実施の形態のカウンタウェイト機構70は、打撃子44のようなある程度の質量を有する部材の往復運動に起因して発生する振動に対して、制振効果を最も発揮する。
次に、本発明の電動工具を打撃工具に適用した第2の実施の形態の打撃工具101について、図9に基づき説明する。尚、第1の実施の形態と同一の部材については同一の番号を付し説明を省略し、異なる部分についてのみ説明をする。本実施の形態における打撃工具101は、第1の実施の形態の打撃工具1が備えていた回転シリンダ50及び制御基板24を備えていない。よって、打撃時に先端工具に回転力は付与されず、また電動モータ21は、一定速度で回転する。また、本実施の形態のカウンタウェイト機構170は、カウンタウェイト174の形状が異なる以外、第1の実施の形態のカウンタウェイト機構70と同様の構成である。
よって、本実施の形態の打撃工具101は、第1の実施の形態のカウンタウェイト機構70とほぼ同様のカウンタウェイト機構170を有しているので、第1の実施の形態の打撃工具1と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の電動工具を打撃工具に適用した第3の実施の形態の打撃工具201について、図10に基づき説明する。尚、第1の実施の形態と同一の部材については同一の番号を付し説明を省略し、異なる部分についてのみ説明をする。
カウンタウェイト機構270は、2ヶ所のウェイト保持部支持部271、272と、ウェイト保持部73と、カウンタウェイト74とを備えている。各ウェイト保持部支持部271、272は、ピストン43の往復運動の方向と直交する方向において、カウンタウェイト74を挟むように配置されている。各ウェイト保持部支持部271、272は、第1ウェイト保持部支持部275、276と、第1ウェイト保持部支持部275、276よりもカウンタウェイト74側に位置する第2ウェイト保持部支持部277、278とを備えている。本実施の形態における第2ウェイト保持部支持部277、278は、第1の実施の形態における第2ウェイト保持部支持部77、78よりもカウンタウェイト74近傍に位置している。
二個の第1ウェイト保持部支持部276は、ゴムからなり、ウェイト保持部73の下端を往復運動方向の両方向から支持している。第1ウェイト保持部支持部276は、ゴムにより構成されるので、ウェイト保持部73の下端は、第1ウェイト保持部支持部276に対し上下方向に移動可能、かつ弾性的に支持される。よって、第1ウェイト保持部支持部276をウェイト保持部73へ押付ける強度によって、ウェイト保持部73及びカウンタウェイト74の振動を制御することができ、カウンタウェイト機構270の固有振動数及び減衰を任意に調整することができる。よって、各種電動工具に合わせた制振機構(カウンタウェイト機構270)を提供することができる。また、本実施の形態のカウンタウェイト機構270によっても、打撃子44の往復動に起因する打撃工具201の振動を効果的に低減することができる。また、打撃工具201の他の効果については、第1の実施の形態の打撃工具1の効果と同様である。
次に、本発明の電動工具を打撃工具に適用した第4の実施の形態の打撃工具301について、図11及び図12に基づき説明する。打撃工具301は、ハンドル部10とモータハウジング20と、ウェイトハウジング60と、ギヤハウジング80とによりケーシングが構成される。
ハンドル部10には電源ケーブル11が取付けられると共に、スイッチ機構12が内蔵されている。スイッチ機構12には使用者により操作可能なトリガ13が機械的に接続されている。電源ケーブル11はスイッチ機構12を外部電源(図示せず)に接続し、トリガ13を操作することにより、スイッチ機構12と電源との接続と断続とが切換えられる。
モータハウジング20は、ハンドル部10の上部に設けられている。ハンドル部10とモータハウジング20とは、プラスチックで一体成型されている。モータハウジング20内には電動モータ21が収納されている。電動モータ21は出力軸22を備えて回転駆動力を出力する。
ウェイトハウジング60は、モータハウジング20の前方に設けられた樹脂成型品である。ウェイトハウジング60は、モータハウジング20側に位置する第1ウェイトハウジング60Aと、ギヤハウジング80側に位置する第2ウェイトハウジング60Bとを有している。ウェイトハウジング60内には、第1中間シャフト61が、出力軸22が延びる方向と同方向に延びるように配置され、軸受62及び63により回転可能に支承されている。第1中間シャフト61の後端は出力軸22と連結している。第1中間シャフト61の先端は、ギヤハウジング80内に位置し、第4ギヤ61Aが設けられている。
また、ウェイトハウジング60内には、カウンタウェイト機構370が配置されている。図11のXI-XI線に沿った断面図である図12に示すように、カウンタウェイト機構370は、2ヶ所のウェイト保持部支持部371、372と、一対のウェイト保持部373と、カウンタウェイト374と、ボルト375とを備えている。ウェイト保持部支持部371、372は、第2ウェイトハウジング60Bの上下方向の両端にカウンタウェイト374を挟むようにそれぞれ配置されている。各ウェイト保持部支持部371、372は、第1ウェイト保持部支持部375、376と、第1ウェイト保持部支持部375、376よりもカウンタウェイト374側に位置する第2ウェイト保持部支持部377、378とを備えている。第1ウェイト保持部支持部375は、ウェイト保持部373の上端の後端側への移動を阻止する。第2ウェイト保持部支持部377は、第1ウェイト保持部支持部375の下側かつウェイト保持部373の先端側に位置し、先端側へのウェイト保持部373の移動を阻止する。
第1ウェイト保持部支持部376は、ウェイト保持部373の下端に位置し、ウェイト保持部373の後端側への移動を阻止する。第2ウェイト保持部支持部378は、第1ウェイト保持部支持部376の上側かつウェイト保持部373の先端側に位置し、ウェイト保持部373の先端側への移動を阻止する。また、各第1ウェイト保持部支持部375、376及び第2ウェイト保持部支持部377、378は、ウェイト保持部373に後端方向へのオフセット荷重Fを付与するようにそれぞれ配置されている。
一対のウェイト保持部373は、板バネにより構成されている。図11に示すように、ウェイト保持部373の上下両端部は、略L字状をなし、その先端部は、第2ウェイトハウジング60Bに形成された凹部60c内に位置している。カウンタウェイト374は、断面略円形をなし、その中心部には、シャフト挿通穴374aが形成されている。また、カウンタウェイト374は、ボルト379により、ウェイト保持部373に固定されている。よって、カウンタウェイト374は、一対のウェイト保持部373により両持ち支持される。また、シャフト挿通穴374aには、第1中間シャフト61が挿通されている。また、各第1ウェイト保持部支持部375、376から、カウンタウェイト374がウェイト保持部373に固定された部分までの距離は、それぞれ等しく、各第2ウェイト保持部支持部377、378から、カウンタウェイト374がウェイト保持部373に固定された部分までの距離は、それぞれ等しく設定されている。
ギヤハウジング80は第2ウェイトハウジング60Bの前方に設けられた樹脂成型品である。ギヤハウジング80の内部には、ギヤハウジング80とウェイトハウジング60との間を仕切る金属製の仕切部材80Aが設けられている。ギヤハウジング80と仕切部材80Aとによって、後述の回転伝達機構を収容する機構室である減速室80aを画成する。ギヤハウジング80内には、出力軸21と平行に第2中間シャフト82が、軸受82B、82Cを介してギヤハウジング80と仕切部材80Aとに、その軸心を中心に回転可能に支承されている。またギヤハウジング80の、後述する工具保持部15近傍には、サイドハンドル16が設けられている。
第2中間シャフト82の電動モータ21側端部には、第4ギヤ61Aと噛合する第5ギヤ81が同軸固定されている。第2中間シャフト82の先端側にはギヤ部82Aが形成され、後述する第6ギヤ83と噛合している。ギヤハウジング80内であって第2中間シャフト82の上方の位置には、シリンダ84が設けられている。シリンダ84は第2中間シャフト82と平行に延び、仕切部材80Aに回転可能に支承されている。第6ギヤ83はシリンダ84の外周に固定され、上述したギヤ部82Aとの噛合により、シリンダ84はその軸心を中心として回転可能である。
シリンダ84の先端側には上述した工具保持部15が設けられ、図示せぬ先端工具が着脱自在に取付けられる。第2中間シャフト82の中間部分には、バネによって電動モータ21方向に付勢されるクラッチ86がスプライン係合されており、クラッチ86は、ギヤハウジング80の下部に設けたチェンジレバ87によってハンマドリル・モード(図示した位置)とドリルモード(クラッチ86が先端方向に移動した位置)との間で切換え可能である。クラッチ86の電動モータ21側には、回転運動を往復運動に変換する運動変換部90が第2中間シャフト82に回転可能に外装されている。運動変換部90の腕部90Aは、第2中間シャフト82の回転により打撃工具301の前後方向に往復動作可能に設けられている。
クラッチ86がチェンジレバ87によってハンマドリル・モードに切換えられているときには、クラッチ86により第2中間シャフト82と運動変換部90とが結合するように構成されており、運動変換部90は、ピストンピン91を介して、シリンダ84内に設けられたピストン92と連動するように接続される。ピストン92は、第2中間シャフト82と平行な方向に往復運動可能且つシリンダ84内で摺動可能に装着されている。ピストン92内には打撃子93が内装されており、シリンダ84内であってピストン92と打撃子93の間には空気室94が画成される。打撃子93の空気室側の反対位置には、中間子95がシリンダ84内にピストン92の運動方向に摺動可能に支承されている。中間子95の打撃子側反対位置には、図示せぬ先端工具が位置している。よって打撃子93は中間子95を介して図示せぬ先端工具を打撃する。
図示せぬモータの回転出力は第1中間シャフト61、第4ギヤ61A、及び第5ギヤ81を介して第2中間シャフト82に伝わる。第2中間シャフト82の回転は、ギヤ部82Aとシリンダ84に外装した第6ギヤ83の噛合によりシリンダ84に伝わり、図示せぬ先端工具に回転力が伝えられる。チェンジレバ87を操作することによりクラッチ86をハンマドリル・モードに移動させると、クラッチ86が運動変換部90と結合し、第2中間シャフト82の回転駆動力が運動変換部90に伝わる。運動変換部90では回転駆動力がピストンピン91を介してピストン92の往復運動に変換される。ピストン92の往復運動により打撃子93とピストン92との間に画成された空気室94中の空気の圧力は上昇及び低下を繰り返し、打撃子93に打撃力を付与する。打撃子93が前進して中間子95の後端面に衝突し、中間子95を介して打撃力が図示せぬ先端工具に伝達される。このようにしてハンマドリル・モードでは図示せぬ先端工具に回転力と打撃力が同時に付与される。
クラッチ86がドリルモードにあるときは、クラッチ86は第2中間シャフト82と運動変換部90との接続を断ち、第2中間シャフト82の回転駆動力のみがギヤ部82A、第6ギヤ83を介してシリンダ84に伝達される。よって、図示せぬ先端工具には回転力のみが付与されるように構成されている。
打撃工具301の動作時においても、打撃子93の往復動に起因するほぼ一定周期の振動が打撃工具301に発生する。この振動が第2ウェイトハウジング60Bを介して、ウェイト保持部支持部371、372に伝達される。ウェイト保持部支持部371、372に伝達された振動は、ウェイト保持部373及びカウンタウェイト374に伝達され、カウンタウェイト374は、ピストン92の往復運動方向と同じ方向に振動する。この振動により、打撃による打撃工具301の振動を低減される。本実施の形態の打撃工具301のカウンタウェイト機構370においても、第1の実施の形態のカウンタウェイト機構70の図5に示した荷重−変位曲線及び図7に示した周波数応答曲線と同様の特性を得ることができるので、第1の実施の形態のカウンタウェイト機構70と同様の効果を得ることができる。更に、ウェイト保持部373の上下端部は、L字状をなし、凹部60c内に位置しているので、第1ウェイト保持部支持部371、372からウェイト保持部373が脱落するのを防止することができる。
尚、本発明の打撃工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、第1から第3の実施の形態の打撃工具1、201の第1ウェイト保持部支持部76、276は、ゴムにより構成されていたがこれに限られず、摺動性の良い部材、例えば、鋼材のローラ、含浸メタル等であれば良い。また、上記の実施の形態では、本発明の電動工具を打撃工具に適用したが、セーバソーに適用しても良い。
1、101、201、301 打撃工具、 20 モータハウジング、 21 電動モータ、 30 ギヤハウジング、 36 運動変換機構、 37 クランクウェイト、 38 クランクピン、 39 コンロッド、 40 シリンダ、 43、92 ピストン、 44、93 打撃子、 46、95 中間子、 70、170、270、370 カウンタウェイト機構、 71、72、271、272、371、372 ウェイト保持部支持部、 73、373 ウェイト保持部、 73a ボルト挿通穴、 73B 折れ曲り部、 74、174、374 カウンタウェイト、 74A 基部、 74B 脚部、 75、76、275、276、375、376 第1ウェイト保持部支持部、 75A ボルト、 75B ワッシャー、 75C スペーサ、 77、78、277、278、377、378 第2ウェイト保持部支持部、 79、379 ボルト、 90 運動変換部、 90A 腕部、 91 ピストンピン