JP5579415B2 - 制振構造 - Google Patents

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Description

本発明は、一般に、地震によって生じる負荷、大海の波からの衝撃、輸送、機械又は風からの衝撃によって生じる振動などによって生じる負荷などの動的負荷から構造体を保護するための制振構造に関する。
構造体が水平方向あるいはねじれ等の外力によって励振させられると、構造体に水平方向の運動が生じうる。高層建築物やタワーにおいては、これら外力が効果的に吸収されないと、構造体に深刻なダメージを与えたり、構造体が崩壊したりしてしまう場合がある。
このような外力を吸収する装置として油圧ダンパーが多く用いられている。油圧ダンパーを用いた衝撃吸収装置には外力を受動的に吸収するものの他、外的条件に応じて能動的に衝撃を吸収する構成のものも存在するが、このような構造とすると製造コストがあがるだけでなく、広い設置場所が必要となる。
特許文献1には、側板と、ほぼ平行な平面内で延びている中央板と、側板と中央板の間に配置された摩擦部材とを備えた減衰装置が開示されている。側板と中央板は、摩擦部材を挟持するとともにこれら各部材を貫通するボルト、及びナットにより回動可能に接続されている。この減衰装置は、側板と中央板とが相対的に回動する際に生じる摩擦部材との間での摩擦により減衰力が発生するように構成されており、減衰力はボルトの締め込み量により調整可能となっている。
特表2004―535534号公報
しかしながら特許文献1に開示された減衰装置は、構造体内において配置の自由度が制限されてしまう場合があった。この減衰装置は、側板および中央板が摩擦部材を中心に回動する構造を有する。このため、側板両端部および中央板端部には、摩擦部材を中心とした回動運動を生じさせるように外力を入力させる、つまり側板および中央板を揺動させる必要がある。よって、例えば、フレーム構造の水平方向の振動を抑制させるためには、中央板の一端が構造体の上梁の概ね中央部に取り付けられ、側板の両端部は、下梁の両端部に、張力がかけられた長軸の部材によって連結される、という配置に制限されてしまう場合があった。
そこで本発明は、簡単な構造で、取り付け位置の自由度が高い制振構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため本発明の制振構造は、複数の構造部材を含む構造体の振動を減衰させる制振構造において、少なくとも2組の第1の長部材と、2組の第1の長部材に回動可能に接続されている少なくとも1組の第2の部材と、第1の長部材と第2の部材との間に配置され、第1の長部材と第2の部材との間における回転運動を減衰させる減衰部材と、第1の接続部材と、第2の接続部材と、を有し、各第1の長部材は、構造部材に結合される第1の結合部を第1の長部材の一端側に有し、一の第1の長部材の第1の結合部は、他の第1の長部材の他端側に位置するように配置されており、一の第1の長部材の第1の結合部は第1の接続部材に接続されており、他の第1の長部材の第1の結合部は第2の接続部材に接続されており、第1及び第2の接続部材は、それぞれの第2の結合部にて、2組の第1の長部材を構造部材に接続しており、一の第2の結合部は、第1の接続部材の第1の中心軸と構造部材との交点に位置しており、他の第2の結合部は、第2の接続部材の第2の中心軸と構造部材との交点に位置しており、第1の中心軸は一の第1の長部材の第1の結合部を通り、第2の中心軸は他の第1の長部材の第1の結合部を通り、第2の部材は、一の第1の長部材の第1の結合部と他の第1の長部材の第1の結合部との間に配置されており、一の第1の長部材の第1の結合部、他の第1の長部材の第1の結合部及び各第2の結合部は共通の軸に沿って配置されている。
上述した本発明の制振構造は、第1および第2の部材、減衰力を回動部にて発生させる減衰部材にて構成されているので、部品点数が少なく、かつ構造が簡単である。また、本発明の制振構造は、2つの第1の長部材の結合部を反対側に向けるとともに、これら結合部の間に配置された第2の部材にて、第1の長部材と第2の部材との相対的な回動が可能なように接合している。さらには、一の第1の長部材の第1の結合部、他の第1の長部材の第1の結合部及び各第2の結合部は共通の軸に沿って配置されている。このような構成とすることで、外力の直線的な入力を許容することができる。
また、本発明の制振構造は、一の第1の長部材の第1の結合部に対して他の第1の長部材の第1の結合部が離間する方向に移動したときは第1の長部材どうしは近接する方向に移動し、一の第1の長部材の第1の結合部に対して他の第1の長部材の第1の結合部が近接する方向に移動したときは第1の長部材どうしは離間する方向に移動するものであってもよい。
また、本発明の制振構造は、第1の長部材の長手方向軸と、第2の部材の長手方向軸とが直交する関係となるとき、第1の長部材どうしの間の距離が最大となるものであってもよい。このような構成とすることで、振動を抑制させるための動作時に各部材の運動を妨げないようにするための空間を設ける必要がなくなり、省スペース化を図ることができる。
また、本発明の制振構造は、複数の第2の部材を有し、各第2の部材は、第1の長部材の長手方向に向けて互いに平行に配置されているものであってもよい。
また、本発明の制振構造は、第1の長部材と第2の部材とが減衰部材を介して交互に積層されているものであってもよい。積層構造とすることで、より大きな振動エネルギを吸収させることができる。
また、本発明の制振構造は、減衰部材は、第1の長部材および第2の部材に接触する面で生じる摩擦により減衰力を発生させるものであってもよい。
また、本発明の制振構造は、減衰部材は、弾性部材からなるものであってもよい。
また、本発明の制振構造は、第1の長部材および第2の部材を減衰部材に押圧する押圧機構を有するものであってもよい。
また、本発明の制振構造の押圧機構は押圧力の調整が可能であってもよい。
また、本発明の制振構造の押圧機構は、第1の長部材および第2の部材を減衰部材に押圧する押圧力を付勢するばね部材を有するものであってもよい。
さらに、本発明の制振構造の押圧機構は、ばね部材としての少なくとも1つの皿ばねと、ボルトとナットを有し、ボルトは、第1の長部材の接続部に形成された第1の孔、第2の部材の、第1の孔に対応する位置に形成された第2の孔、減衰部材の、第1および第2の孔に対応する位置に形成された第3の孔、および皿ばねの、第1ないし第3の孔に対応する位置に形成された第4の孔からなる貫通孔に挿通されており、貫通孔から突出したボルトの先端部にナットが螺合されているものであってもよい。
また、本発明の制振構造の押圧機構は複数の皿ばねを有するものであってもよい。皿ばねの枚数を調整することにより、容易に減衰力を調整することができる。
また、本発明の制振構造の一の第1の長部材の第1の結合部、及び他の第1の長部材の第1の結合部は回転可能に結合するものであってもよい。
また、本発明の制振構造の第1及び第2の接続部は構造部材に回転可能に接続されているものであってもよい。
また、本発明の制振構造は、第1及び第2の接続部の一方または双方が、構造体の構造部材の補強部材に設けられているものであってもよい。
また、本発明の制振構造は、構造部材により構成された矩形状のフレーム構造と、フレーム構造の角部にそれぞれの一端が固定されてV字状に配置される、構造部材により構成された1対の傾斜梁とを有し、第1の接続部は傾斜梁の集合端部に接続され、第2の接続部は集合端部に対向して配置された構造部材に接続されているものであってもよい。
また、本発明の制振構造は、構造部材により構成された矩形状のフレーム構造を有し、第1の接続部材はフレーム構造の一の角部に接続され、第2の接続部材はフレーム構造の一の角部に対して対角線側の配置されている角部に接続されているものであってもよい。
また、本発明の制振構造は、対向して配置された2枚の板形状の構造部材を有し、第1の接続部は一の板形状の構造部材に接続され、第2の接続部は他の板形状の構造部材に接続されているものであってもよい。
本発明によれば、簡単な構造で、取り付け位置の自由度が高い制振構造を提供することができる。
本発明の一実施形態にかかる制振構造における減衰装置の側面図及び平面図である。 本発明の一実施形態にかかる制振構造における減衰装置の動作状態を説明するための図である。 本発明の一実施形態にかかる制振構造において、減衰装置をフレーム構造のV字梁部分に適用した一例を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる減衰装置を、補強部材の一部として適用した一例を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる減衰装置を、壁面間に複数用いた例を示す斜視図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、構造部材とは、柱、梁、補強剤、筋交い、Vブレース等、建築物等の構造体の剛性を確保するためのあらゆる部材を含むものとする。
図1(a)に、本発明の一実施形態にかかる制振構造に用いられる減衰装置の側面図を、図1(b)に平面図をそれぞれ示す。
減衰装置1は、2組の第1の長部材10と、2組の第1の長部材10に対して回動可能に接続されている1組の第2の部材20と、第1の長部材10と第2の部材20との間に挟持されている減衰部材30とを有する。さらに減衰装置1は、これら各部材を貫通して結合しているボルト40と、このボルト40に螺合するナット42と、皿ばね50と、ワッシャ41、60とを有する。
第1の長部材10は、長手形状の板部材からなり、その一端側10aに第1の結合部11が形成されている。第1の結合部11は、後述する構造部材に結合される部分であり、本実施形態では貫通孔として形成されている。また、第1の長部材10には、その長手方向に沿って2つの接合部12が形成されている。本実施形態では、接合部12は第1の長部材10を貫通する貫通孔として形成されており、各接合部12は長手方向に沿って一列に形成されている。なお、接合部12は3つ以上形成されていてもよい。
2組の第1の長部材10は、一方の第1の長部材10の第1の結合部11が他方の第1の長部材10の他端側10bに配置されるように、一の平面上に並列に配置されている。すなわち、2組の第1の長部材10の第1の結合部11は互いに反対側を向くようにして並べて配置されている。
第2の部材20は、このようにして並列配置された2組の第1の長部材10の各第1の結合部11の間に配置されている。本実施形態では、2つの第2の部材20が互いに平行となるように配置されている。これら2つの第2の部材20も長手形状の板部材であり、第1の長部材10に形成されている接合部12(貫通孔)に対応した位置に貫通孔21が形成されている。
第1および第2の部材10、20の材料としては、金属、樹脂、セラミック、カーボンファイバー等を用いることができる。
減衰部材30は、摩擦材または粘粘弾性材からなり、第1の長部材10が第2の部材20に対して回動する際の回動エネルギを減衰させるものである。減衰部材30として摩擦材が用いられる場合、第1の長部材10が第2の部材20に対して回動する際にこれら部材の表面と減衰部材30の表面との間に摩擦が生じ、これにより、第2の部材20が第1の長部材10に対して回動する際のエネルギは減衰させられる。また、減衰部材30は、各部材の摩擦運動から生じるきしみ音を減衰させることもできる。
摩擦材としては、好ましくは、真鍮、アルミニウム、真鍮又はアルミニウムを備えた任意の合金、プラスチックとガラス、カーボン又はケブラー(登録商標)などの繊維の複合材、又は任意のセラミック材料とガラス、カーボン又はケブラー(登録商標)などの繊維の複合材を用いることができる。
減衰部材30として粘粘弾性材が用いられる場合、例えば、ゴム、アクリルポリマー、コポリマー、任意のガラス状物質等、剪断変形を受けるとエネルギを消散させる素材を用いることができる。第2の部材20が第1の長部材10に対して回動する際のエネルギは、ポリマーネットワークの変形後、ポリマーネットワークの緩和及び回復により減衰させられる。
減衰部材30にも第1の長部材10および第2の部材20の各貫通孔に対応した位置に貫通孔31が形成されている。
図1(a)および図1(b)に示す減衰装置1には、8枚の第1の長部材10と、10枚の第2の部材20と、16枚の減衰部材30が用いられている。
1組の第1の長部材10は4枚をその厚み方向に重ねて構成されており、この4枚1組のものが2組用いられている。また、1組の第2の部材20は5枚をその厚み方向に重ねて構成されており、この4枚1組のものが2組用いられている。
図1(a)を参照すると、2枚の第1の長部材10は互いの第1の結合部11が反対側を向くように並べられ、2枚の第2の部材20はこれら第1の長部材10を跨ぐように配置され、減衰部材30は各第1の長部材10と各第2の部材20との間に合計4枚挟み込まれている。このようにしてできた、2枚の第1の長部材10、2枚の第2の部材20および4枚の減衰部材30からなる1組のアセンブリが4段に積層され、第1の長部材10と第2の部材20とが減衰部材30を介して交互に積層されることとなる。
さらに最下層のアセンブリの下面には合計4枚の減衰部材30を介して2枚の第2の部材20が設けられている。最上層に配置された第2の部材20の表面、および最下層に配置された第2の部材20の表面にはそれぞれワッシャ60が配置されている。これら各ワッシャ60の表面上には皿ばね50がそれぞれ配置されている。皿ばね50は、第1の長部材10および第2の部材20を減衰部材30に押圧する押圧力を付勢する付勢手段としての機能を有し、この皿ばね50にも接合部12(貫通孔)、貫通孔21、および貫通孔31に対応した貫通孔51が形成されている。皿ばね50のワッシャ60に接触している側と反対側の面にはワッシャ41がそれぞれ配置されている。ボルト40は、ワッシャ41、60の孔、接合部12(貫通孔)、貫通孔21、31、51を挿通しており、貫通孔から突出した先端部にはナット42が螺合している。ナット42は緩み防止のため、ダブルナットとしている。
本実施形態の減衰装置1は、ナット42の締め込み量、皿ばね50のばね常数あるいは皿ばね50の積層枚数により、第1の長部材10および第2の部材20を摩擦部材30に押圧する押圧力を調整することができる。
ナット42の締め込み量を多くする、皿ばね50のばね常数を高くする、あるいは皿ばね50の積層枚数を増やすにより、押圧力は高められ、その結果、減衰力を増すことができる。一方、ナット42の締め込み量を少なくする、皿ばね50のばね常数を低くする、あるいは皿ばね50の積層枚数を減らすにより、押圧力は低くなり、その結果、減衰力を減少させることができる。
次に図2を参照して本実施形態の制振構造に用いられる減衰装置1の動作について説明する。図2は、減衰装置1に引っ張り方向(矢印A方向)の力が印可された状態の減衰装置1の平面図を示すものである。
図1(a)に示した状態の減衰装置1に、矢印A方向の引っ張り力が印可されると、各第1の結合部11は互いに離れる方向、すなわち、各第1の長部材10は互いに離れる方向に移動する。これに伴い、第2の部材20は第1の長部材10に対して回動する(矢印a方向)。この回動の際の運動エネルギは、減衰部材30により吸収される。上述したように、各第1の長部材10は、互いに平行に配列された2つの第2の部材20によって回動可能に接続されている。このため、各第1の長部材10は、互いに近づく方向(図2中矢印B方向)にも移動する。つまり、各第1の長部材10および各第2の部材20は各接合部12をリンクとして平行リンクのように動作する。なお、図示はしていないが、図1(a)の状態の減衰装置1に圧縮力、すなわち、矢印A方向とは反対方向となる外力が印可された場合も、各第1の長部材10は、互いに近づく方向(図2中矢印B方向)にも移動することとなる。
本実施形態の減衰装置1は以上のように動作するため、図1(a)に示した状態、すなわち、第1の長部材10の長手方向と第2の部材20の長手方向とが直交関係にある状態のときの減衰装置1の幅W1(第1の長部材10の外側部分の幅)が最大幅となる。一方、減衰装置1に引っ張り力、あるいは圧縮力が印可されたときの減衰装置1の幅W2はW1より小さくなる。つまり、減衰装置1が減衰力を発生させている動作時においては、減衰装置1が幅W1以上に拡がることはない。よって、構造体に減衰装置1を設ける際の減衰装置1の幅方向のスペースは幅W1だけ設けておけばよい。このように減衰装置1に引っ張り力、あるいは圧縮力が印可されても幅W1より拡がることがない構造であるため、省スペース化を図ることができる。
また、本実施形態の減衰装置1においては、運動エネルギの減衰は各部材の回転動作においてなされるが、減衰装置1に印可される力の方向は直線方向である。つまり、減衰装置1は、直線方向になされる入力を回転運動に変換し、回転運動エネルギを減衰させている。このように減衰装置1は、外力の入力方向が直線的であるため、構造体のあらゆる箇所に取り付け可能となる。
本実施形態の減衰装置1を構造体に取り付けて構成された制振構造について、図3〜図5を用いて説明する。
図3に、フレーム構造内に設けられたV字形状の梁に減衰装置1を取り付けて構成された制振構造を示している。
フレーム構造100は、長手方向が垂直方向となるように配置された2つの構造部材100cと、これら構造部材100cの両端部を接続するようにして水平方向に配置された構造部材100a、100bとで構成されている。このフレーム構造100の2つの角部110に2つの構造部材110が傾斜して取り付けられ、V字形状の梁を形成している。これら各構造部材110の集合部分には矩形状の集合端部102が取り付けられている。また、集合端部102に対向して配置されている構造部材100aには2つの取付部材103が設けられている。取付部材103は構造部材100aの一部を構成している。これら2つの取付部材103は集合端部102を挟むようにして配置されている。減衰装置1は、集合端部102と取付部材103との間に配置されている。つまり、減衰装置1は、集合端部102の両側面側に1つづつ、合計2つ配置されている。
減衰装置1は、一方の第1の結合部11が第1の接続部材90aに回動可能に接続されており、他方の第1の結合部11が第2の接続部材90bに回動可能に接続されている。第1の接続部材90aは取付部材103に第2の結合部91aにて回動可能に接続されており、第2の接続部材90bは集合端部102に第2の結合部91bにて回動可能に接続されている。
ここで、第2の結合部91aは、第1の接続部材90aの第1の中心軸Laと取付部材103との交点に位置しており、第2の結合部91bは、第2の接続部材90bの第2の中心軸Lbと集合端部102との交点に位置している。
なお、第1の中心軸Laは、図3中上側に配置されている第1の長部材10の第1の結合部11を通り、第2の中心軸Lbは図3中下側に配置されている第1の長部材10の第1の結合部11を通っている。
また、上下に配置されている2つの第1の長部材10の第1の結合部11と、第2の結合部91a、91bは共通軸Lに沿って配置されている。
フレーム構造100が水平方向(矢印C方向)に励振されると、減衰装置1がこの水平方向の振動を回動動作に変換し、減衰部材30によりこの水平方向の振動を吸収する。
図4にフレーム構造内に斜めにかけられた梁の一部に減衰装置1が設けられた例を示す。
フレーム構造100は、長手方向が垂直方向となるように配置された2つの構造部材100cと、これら構造部材100cの両端部を接続するようにして水平方向に配置された構造部材100a、100bとで構成されている。なお、図4にはこのようなフレーム構造が連続して設けられている例が示されているが、いずれも同様の構造であるため、その一部についてのみ説明するものとする。また、図4の説明において、3つの減衰装置1が例示されているが、「上側に配置されている第1の長部材10」、あるいは「下側に配置されている第1の長部材10」とは、これら3つのうちの1つの減衰装置1内における配置関係をいうものである。
フレーム構造100の対角線上に位置する2つの角部110、111を結ぶ梁に減衰装置1が組み込まれている。
すなわち、減衰装置1の上側に配置された第1の部材10の第1の結合部11が第1の接続部材200aに回動可能に接続されており、減衰装置1の下側に配置された第1の部材10の第1の結合部11が第2の接続部材200bに回動可能に接続されている。第1の接続部材200aは角部110に第2の結合部201aにて接続されており、第2の接続部材200bは角部111に第2の結合部201bにて接続されている。
ここで、第2の結合部201aは、第1の接続部材200aの第1の中心軸Laと角部110との交点に位置しており、第2の結合部201bは、第2の接続部材200bの第2の中心軸Lbと角部111との交点に位置している。
なお、第1の中心軸Laは、上側に配置されている第1の長部材10の第1の結合部11を通り、第2の中心軸Lbは下側に配置されている第1の長部材10の第1の結合部11を通っている。
また、上下に配置されている2つの第1の長部材10の第1の結合部11と、第2の結合部201a、201bは共通軸Lに沿って配置されている。
フレーム構造100が水平方向(図4中C方向)、あるいは垂直方向(図4中D方向)に励振された場合、第1の接続部材200aおよび第2の接続部材200bには矢印E方向に力が印可することなる。この矢印E方向の力は、減衰装置1に引っ張り力、あるいは圧縮力として印可される。第1の長部材10の直線的な運動は第2の部材20による回転運動に変換されて減衰部材30により運動エネルギが吸収される。
図5に、対向する壁面に複数の減衰装置1が取り付けられた例を示す。なお、図5の説明において、左右方向に5列の減衰装置1が配置され、奥行き方向にも5列の減衰装置1が配置されていることで合計20台の減衰装置1が配置が示されているが、「右側に配置されている第1の長部材10」、あるいは「左側に配置されている第1の長部材10」とは、これら20台のうちの1つの減衰装置1内における配置関係をいうものである。
2枚の壁面形状の構造部材400a、400bが互いに対向して配置されており、これら構造部材400a、400bの間に複数の減衰装置1が配置されている。
減衰装置1は、右側に配置されている第1の長部材10の第1の結合部11が第1の接続部材300aに回動可能に接続されており、左側に配置されている第1の長部材10の第1の結合部11が第2の接続部材300bに回動可能に接続されている。第1の接続部材300aは構造部材400aに第2の結合部301aにて接続されており、第2の接続部材300bは構造部材400bに第2の結合部301bにて接続されている。なお、第1の接続部材300aと構造部材400aとの接続、第2の接続部材300bと構造部材400bとの接続は、図中D方向を回転軸とした回転方向に回転可能な接続であってもよい。
ここで、第2の結合部301aは、第1の接続部材300aの第1の中心軸Laと構造部材400aとの交点に位置しており、第2の結合部301bは、第2の接続部材300bの第2の中心軸Lbと構造部材400bとの交点に位置している。
なお、第1の中心軸Laは、図5中右側に配置されている第1の長部材10の第1の結合部11を通り、第2の中心軸Lbは図5中左側に配置されている第1の長部材10の第1の結合部11を通っている。
また、左右に配置されている2つの第1の長部材10の第1の結合部11と、第2の結合部301a、301bは共通軸Lに沿って配置されている。
図5においては、構造部材400aが減衰装置1の上方に配置された壁面であり、構造部材400bが減衰装置1の下方に配置された壁面として描かれている。減衰装置1は、垂直方向(図5中矢印D方向)の振動を吸収するだけでなく、例えば、構造部材400a上に搭載された重量物に重量を保持することも可能である。すなわち、重量物の重量に応じて、減衰装置1の個数、皿ばね50の枚数あるいはばね常数、ボルト40の締め込み量を調整することで振動抑制のみならず、重量物の保持も可能となる。つまり、減衰装置1自体を構造部材として用いることも可能である。
なお、図5は、構造部材400a、400bが上下方向に配置された例を示したものであるが、構造部材400a、400bは、左右方向に配置されているものであってもよい。この場合、減衰装置1は水平方向の振動を抑制するように作用する。
また、構造部材400aと構造部材400bとの間隔は、10cm程度から10m程度までの範囲で適用可能であるが、10cmより狭くてもよいし、あるいは10mよりも広いものであってもよい。
なお、上述した各例において、第1の接続部材90a、200a、300a、あるいは第2の接続部材90b、200b、300bは、不図示の補強部材を介して構造部材に取り付けられているものであってもよい。
1 減衰装置
10 第1の長部材
10a 一端部
10b 他端部
11 第1の結合部
12 接続部
20 第2の部材
21、31、51 貫通孔
30 減衰部材
40 ボルト
41、60 ワッシャ
42 ナット
50 皿ばね
90a、 200a、300a 第1の接続部材
90b、 200b、300b 第2の接続部材
91a、91b、201a、201b、301a、301b 第2の結合部
100 フレーム構造
101a、101b、101c、400a、400b 構造部材
103、301 取付部材
110、111 角部
L 共通軸
La 第1の中心軸
Lb 第2の中心軸

Claims (18)

  1. 複数の構造部材を含む構造体用の制振システムにおいて、
    減衰装置(1)と、
    前記減衰装置を前記構造体に接続する第1の接続部材と、
    前記減衰装置を前記構造体に接続する第2の接続部材と、を有し、
    前記減衰装置(1)が、
    少なくとも2組の第1の長部材(10)と、
    前記2組の第1の長部材(10)に回動可能に接続されている少なくとも1組の第2の部材(20)と、
    前記第1の長部材(10)と前記第2の部材(20)との間に配置され、前記第1の長部材(10)と前記第2の部材(20)との間における回転運動を減衰させる円盤状の減衰部材(30)の組と、
    を有しており、
    2組の第1の長部材の各々は、前記減衰装置(1)を前記構造部材のうちの1つに結合る第の結合部(11)を有し、前記2組のうちの一の組の第1の長部材(10)の前記第の結合部(11)が前記2組のうちのの組の第1の長部材(10)前記第1の結合部(11)とは反対側に位置するように、前記第1の結合部(11)が、前記第1の長部材(10)と前記第2の長部材(20)との間の回転する接続部(12)に関して長手方向にずらされて、前記2組の第1の長部材の各々の一端側に配置されており、
    2組のうちの一の組の第1の長部材(10)の前記第の結合部(11)は前記第の接続部材(90a,200a,300a)に接続されており、前記2組のうちの他の組の第1の長部材(10)の前記第の結合部(11)は前記第2の接続部材(90b,200b,300b)に接続されており、
    前記第1の接続部材(90a,200a,300a)及び第の接続部材(90b,200b,300b)、第2の結合部(91a,91b,201a,201b,301a,301b)にて、前記2組の第1の長部材の各々前記構造体の前記構造部材(100,101,101a,101b,101c,102,103,400a,400b)に接続している制振システム
  2. 一の組の前記第1の長部材の前記第の結合部に対して他の組の前記第1の長部材の前記第の結合部が離間する方向に移動したときは前記第1の長部材どうしは近接する方向に移動し、一の組の前記第1の長部材の前記第の結合部に対して他の組の前記第1の長部材の前記第の結合部が近接する方向に移動したときは前記第1の長部材どうしは離間する方向に移動する、請求項1に記載の制振システム
  3. 前記第1の長部材の長手方向軸と、前記第2の部材の長手方向軸とが直交する関係となるとき、前記第1の長部材どうしの間の距離が最大となる、請求項1または2に記載の制振システム
  4. 複数の前記第2の部材を有し、各前記第2の部材は、前記第1の長部材の長手方向に向けて互いに平行に配置されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の制振システム
  5. 前記第1の長部材と前記第2の部材とが前記減衰部材を介して交互に積層されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の制振システム
  6. 前記減衰部材は、前記第1の長部材および前記第2の部材に接触する面で生じる摩擦により減衰力を発生させる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の制振システム
  7. 前記減衰部材は、弾性部材からなる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の制振システム
  8. 前記第1の長部材および前記第2の部材を前記減衰部材に押圧する押圧機構を有する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の制振システム
  9. 前記押圧機構は押圧力の調整が可能である、請求項8に記載の制振システム
  10. 前記押圧機構は、前記第1の長部材および前記第2の部材を前記減衰部材に押圧する押圧力を付勢するばね部材を有する、請求項8または9に記載の制振システム
  11. 前記押圧機構は、前記ばね部材としての少なくとも1つの皿ばねと、ボルトとナットを有し、
    前記ボルトは、前記第1の長部材の前記接続部に形成された第1の孔、前記第2の部材の、前記第1の孔と同じ位置に形成された第2の孔、前記減衰部材の、前記第1および第2の孔と同じ位置に形成された第3の孔と、前記皿ばねの、前記第1ないし第3の孔と同じ位置に形成された第4の孔と、からなる貫通孔に挿通されており、
    前記貫通孔から突出した前記ボルトの先端部に前記ナットが螺合されている、請求項9または10に記載の制振システム
  12. 前記押圧機構は複数の前記皿ばねを有する、請求項11に記載の制振システム
  13. 一の組の前記第1の長部材の前記第の結合部、及び他の組の前記第1の長部材の前記第の結合部は回転可能に結合する、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の制振システム
  14. 前記第及び第の接続部は前記構造部材に回転可能に接続されている、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の制振システム
  15. 前記第及び第の接続部の一方または双方が、前記構造体の前記構造部材の補強部材に設けられている、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の制振システム
  16. 前記構造部材により構成された矩形状のフレーム構造と、前記フレーム構造の角部にそれぞれの一端が固定されてV字状に配置される、前記構造部材により構成された1対の傾斜梁とを有し、前記第1の接続部は前記傾斜梁の集合端部に接続され、前記第2の接続部は前記集合端部に対向して配置された前記構造部材に接続されている、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の制振システム
  17. 前記構造部材により構成された矩形状のフレーム構造を有し、前記第の接続部材は前記フレーム構造の一の角部に接続され、前記第2の接続部材は前記フレーム構造の一の角部に対して対角線側の配置されている角部に接続されている、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の制振システム
  18. 対向して配置された2枚の板形状の前記構造部材を有し、前記第の接続部は一の板形状の前記構造部材に接続され、前記第2の接続部は他の板形状の前記構造部材に接続されている、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の制振システム
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