JP6053530B2 - 摩擦ダンパー - Google Patents

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Description

この発明は、摩擦ダンパーに関し、より詳細には構造物に設置されて地震時等における構造物の振動を抑制するとともに、減衰させるダンパーに関する。
建物架構の振動を抑制するために架構の面内に設置される摩擦ダンパーが知られている。図13,図14は従来の摩擦ダンパーを示し、図13は断面図であり(この発明の実施形態を示す図1のA−A線矢視に相当)、図14は平面図である。
摩擦ダンパー70は建物架構の面内に設置されるブレースの中間部に組み込まれ、したがってブレースは2つの分割ブレースに分割されている。図13にはこれら2つの分割ブレース1a,1bの各端部が示され、各端部は二山クレビス等からなりそれぞれ1対の端板2a,2bを有している。摩擦ダンパー70は、端板2a,2aに結合される第1圧接板71と、この第1圧接板71を挟み込むように配置される1対の第2圧接板72,72とを有し、第2圧接板72,72は連結板81を介して端板2b,2bに結合されている。
第2圧接板72,72にはダンパーの軸方向に沿って長孔73がそれぞれ形成されている。1対の第2圧接板72,72を挟み込むように1対の第3圧接板74,74が配置され、第1圧接板71、第2圧接板72,72及び第3圧接板74,74は、長孔73を通るようにこれら圧接板を貫通する複数のボルト75及びこれに螺着されるナット76によって締結され、所定の圧接力を付与されている。ボルト75にはその頭部側とナット76側に座金77がそれぞれ装着され、また、これら座金77と第3圧接板74との間には第3圧接板74に弾発力を付与する複数枚の皿ばね78が装着されている。第1圧接板71の両面、第3圧接板74,74の内面には摩擦材85がそれぞれ設けられている。
以上の構成により、地震時において架構が面内方向の変形を生じると、それに伴って分割ブレース部材1a,1bに相対移動が生じ、第1,第2,第3圧接板71,72,74が摺動する。その結果、これら圧接板間に生じる摩擦力により分割ブレース部材1a,1bの相対移動が抑制される。
ところで、地震発生時に架構は、架構面に直交する方向にも変形を生じる。この架構の直交方向の変形に対応するため、摩擦ダンパー70は板厚方向に傾動自在に分割ブレース1a,1bに結合されている。すなわち、第1圧接板71の端部に形成した穴には球面すべり軸受け79が装着され、第1圧接板71は、この球面すべり軸受79とこれに嵌合されるピン80とを介して分割ブレース1aの1対の端板2a,2aに結合されている。
他方、第2圧接板72,72は1対であることから、第1圧接板71と同様な結合形態を採用して直接分割ブレース1bに結合することができない。そこで、第2圧接板72,72間に前述の連結板81を挟み込み、複数のボルト82で締結し、結合部を1枚板としている。そして、この連結板81の端部に形成した穴に球面すべり軸受83を装着し、この球面すべり軸受83とこれに嵌合されるピン84とを介して連結板81を分割ブレース1bの1対の端板2b,2bに結合している。
しかしながら、上記のような従来の摩擦ダンパー70は次のような問題点がある。すなわち、結合のために、摩擦力発生に関与しない連結板81を用いることから、ダンパーが全体として大きなものとなるとともに、ボルト穴の加工精度も必要となり経済性に欠ける。
また、ボルト82を緊結するために、第2圧接板72,72と連結板81との間には剛体86が充填されている。このため、第2圧接板72も連結板81と剛体86に拘束されてしまい、摩擦材85にクリープや温度変化により厚さの変動が生じた場合、第2圧接板72に曲げ応力が発生し、ボルト82の軸力の一部が第2圧接板72に負担される。その結果、摩擦面の荷重が変動するため、摩擦ダンパー70の摩擦力が安定しない。
さらに、従来の摩擦ダンパーは、全体長さを変えようとする場合、摩擦部を摺動させなければならず、摩擦力相当の力を必要とする。この場合は建方精度を極めて厳しくする必要が生じて、現実的には梁柱架構への取付けが困難になる。このため、摩擦部を摺動させずに簡易に寸法調整が行えることが望まれている。
なお、摩擦ダンパーに関する先行技術文献は数多く存在し、例えば特許文献1を挙げることができるが、いずれの先行技術文献も摩擦ダンパーの構造物要素への結合部については言及がない。
特開2009−150514号公報
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、ダンパーのコンパクト化を図るとともに、高い加工精度も要求されることがなく、コストダウンを図ることができる摩擦ダンパーを提供することにある。
この発明の別の目的は、安定した摩擦力を発生させることができる摩擦ダンパーを提供することにある。
この発明のさらに別の目的は、構造物要素への取付けが容易な摩擦ダンパーを提供することにある。
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、所定方向に相対移動する2つの構造物要素の一方に、第1結合手段を介して板厚方向に傾動自在に結合される第1圧接板と、この第1圧接板を両面から所定の圧接力で挟み込むように配置されるとともに、他方の構造物要素に第2結合手段を介して板厚方向に傾動自在に結合される1対の第2圧接板とを備え、2つの構造物要素の前記相対移動に伴って摺動する第1,第2圧接板同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、
前記第2結合手段は、前記1対の第2圧接板間を連結する円筒形のハウジングであって、その内径中心が外径中心に対して偏芯しているハウジングと、
前記ハウジングに収容された球面すべり軸受と、
前記球面すべり軸受に嵌合され、前記第2圧接板と前記他方の構造物要素とを連結するピンとを備えてなることを特徴とする摩擦ダンパーにある。
上記摩擦ダンパーにおいて、前記ハウジングはその両端部が前記1対の第2圧接板に形成された穴にそれぞれ嵌合され、前記ハウジングと前記第2圧接板との間にはその板厚方向に関して隙間が形成されている構成を採ることができる。
前記摩擦ダンパーは、例えば、建物架構の面内に配置されたブレースの中間部に組み込まれ、この場合前記摩擦ダンパーによって分割された分割ブレースが前記2つの構造物要素を構成している。
また、この発明は、所定方向に相対移動する2つの構造物要素の一方に、第1結合手段を介して板厚方向に傾動自在に結合される1対の第1圧接回転板と、他方の構造物要素に板厚方向に第2結合手段を介して傾動自在に結合される1対の第2圧接回転板と、両端部がそれぞれ前記1対の第1圧接回転板間及び第2圧接回転板間に所定の圧接力で挟み込まれるように配置され、これらの第1圧接回転板及び第2圧接回転板に回転自在に結合された第3回転圧接板とを備え、2つの構造物要素の前記相対移動に伴って回転摺動する第1,第3回転圧接板同士及び第2,第3回転圧接板同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、
前記1,第2結合手段の少なくとも一方は、当該一方の結合手段に対応した前記1対の回転圧接板間を連結する円筒形のハウジングであって、その内径中心が外径中心に対して偏芯しているハウジングと、
前記ハウジングに収容された球面すべり軸受と、
前記球面すべり軸受に嵌合され、前記一方の結合手段に対応した前記回転圧接板と前記構造物要素とを連結するピンとを備えてなることを特徴とする摩擦ダンパーにある。
上記摩擦ダンパーにおいて、前記ハウジングはその両端部が前記一方の結合手段に対応した前記1対の圧接回転板に形成された穴にそれぞれ嵌合され、前記ハウジングと当該圧接回転板との間にはその板厚方向に関して隙間が形成されている構成を採ることができる。
前記摩擦ダンパーは、例えば、建物架構の面内に配置されたブレースと建物架構とを連結するように設置され、この場合前記ブレース及び建物架構へのダンパー取付部が前記2つの構造物要素を構成している。
前記ハウジング及び球面すべり軸受を含む結合手段は、圧接板が1対の場合に限らず3枚以上である場合にも適用することができ、したがって、この発明は圧接板が1対の場合も含めて総括的に、さらに次のように特定される。
すなわち、この発明は、他の圧接板を所定の圧接力で挟み込むように板厚方向に間隔を置いて配置された複数の圧接板を備え、これらの圧接板が構造物要素に結合手段を介して板厚方向に傾動自在に結合される摩擦ダンパーであって、
前記結合手段は、互いに隣接する各圧接板間を連結する円筒形のハウジングであって、その内径中心が外径中心に対して偏芯しているハウジングと、
前記ハウジングに収容された球面すべり軸受と、
前記球面すべり軸受に嵌合され、前記圧接板と前記構造物要素とを連結するピンとを備えてなることを特徴とする摩擦ダンパーにある。
この発明によれば、1対又はそれ以上の複数の圧接板が、各圧接板を連結するハウジング、及びその内部に収容された球面すべり軸受けを含む結合手段を介して構造物要素に直接結合されるので、ダンパーの全体大きさのコンパクト化を図ることができる。
また、ハウジングと圧接板との間にはその板厚方向に関して隙間を形成することにより、圧接板はハウジングによって板厚方向の移動が拘束されることはない。したがって、摩擦材の厚さがクリープや温度変化等により変動した場合であっても、圧接板には板厚方向の曲げ変形や応力が生じないため、摩擦力の安定化を図ることができる。
また、ハウジングを円筒形のものとし、その内径中心を外径中心に対して偏芯させることにより、ハウジングを回転させてピン間寸法の調整をすることが可能となり、これにより摩擦ダンパーの構造物要素への取付けを容易に行うことができる。
この発明の第1実施形態を示し、梁柱架構に設置されるブレースに摩擦ダンパーを組み込んだ例である。 摩擦ダンパーの架構の構面直交方向に変形に伴う摩擦ダンパーの傾動を示す図である。 同摩擦ダンパーの詳細を示し、図1のA−A線矢視断面図である。 同摩擦ダンパーの平面図である。 第2結合手段を拡大して示す断面図である。 同摩擦ダンパーの傾動を示す断面図である。 この発明の第2実施形態を示し、梁柱架構に設置される2本のブレースと架構とを回転摩擦ダンパーによって連結した例である。 同摩擦ダンパーの詳細を示し、図7のB−B線矢視断面図である。 同摩擦ダンパーの平面図である。 同摩擦ダンパーの傾動を示す断面図である。 この発明の第3実施形態を示す断面図である。 この発明の第4実施形態を示す断面図である。 従来の摩擦ダンパーを示す断面図である。 同摩擦ダンパーの平面図である。
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1〜図6は、この発明の第1実施形態を示している。図1は柱3及び梁4によって構成される架構5を示し、この実施形態は摩擦ダンパー10を、架構5に設置されるブレース1に組み込んだ例である。ブレース1は2つの分割ブレース(構造物要素)1a,1bに分割され、摩擦ダンパー10はこれらの2つの分割ブレース1a,1bに両端部が結合されている。
地震時において架構5が面内方向に変形を生じると、分割ブレース1a,1bがその軸方向X(所定方向)に相対移動し、摩擦ダンパー10は相対移動を抑制する。また、ブレース1は、図2に示すように、架構5が架構面に直交する方向に変形が生じない場合には、分割ブレース1a,1bには同方向の変位は生じないが(同図(a))、架構面に直交する方向に変形が生じると、分割ブレース1a,1b間にδhの変位が生じ、摩擦ダンパー10が傾動して変形に追従する(同図(b))。以下、摩擦ダンパー10の詳細構造について説明する。
図3,図4に示すように、分割ブレース1a,1bの端部は二山クレビス等からなり、それぞれ1対の端板2a,2bを有している(図1,図2も併せて参照)。摩擦ダンパー10の両端部は、これらの端板2a,2bに結合される。すなわち、摩擦ダンパー10は、端板2a,2aに第1結合手段11を介して結合される第1圧接板13と、端板2b,2bに第2結合手段12を介して結合される1対の第2圧接板14,14を有している。
1対の第2圧接板14,14は第1圧接板13を両面から挟み込むように配置されている。これらの第2圧接板14,14にはブレース1の軸方向に沿って長孔15がそれぞれ形成されている。1対の第2圧接板14,14をそれらの表面から挟み込むように1対の第3圧接板16,16が配置されている。第1圧接板13の両面及び第3圧接板16の内面には、摩擦材21が設けられている。
第1圧接板13、第2圧接板14,14及び第3圧接板16,16は、長孔15を通るように、これら圧接板を貫通する複数のボルト17及びこれに螺着されるナット18によって締結され、所定の圧接力を付与されている。ボルト17は長孔15を通るように設置されているので、第2圧接板14,14は第1圧接板13及び第3圧接板16に対し相対移動可能である。ボルト17にはその頭部側とナット18側に座金19が装着され、この座金19と第3圧接板16との間には第3圧接板16に弾発力を付与する複数枚の皿ばね20が装着されている。
第1圧接板13を一方の分割ブレース1aに結合するための第1結合手段11は、球面すべり軸受け22とピン23とを有している。球面すべり軸受け22は、それ自体は周知のもので、第1圧接板13の端部に形成された穴24に装着され、内周が凹状球面の外輪25と、これに嵌合される外周が凸状球面の内輪26とからなる。内輪26にピン23が嵌合され、このピン23によって第1圧接板13と分割ブレース1aの端2a,2aとが結合される。この第1結合手段11によって、第1圧接板13は板厚方向に傾動自在となる。以上までの構成は従来と同様である。
この発明では、1対の第2圧接板14,14を他方の分割ブレース1bに結合するための第2結合手段12として次のような構成を採用している。すなわち、図5に拡大して示すように、第2結合手段12は筒状のハウジング27とその内部に収容される球面すべり軸受28とを有している。
第2圧接板14,14にはそれらの対向位置に穴29,29が設けられ、これらの穴29,29にハウジング27の両端部がそれぞれ嵌合することにより、第2圧接板14,14間が連結されている。ハウジング27の抜け止めのために、ハウジング27の外周には環状凸部30が設けられ、また一方の第2圧接板14の穴周壁には環状段付き部31が設けられている。そして、ハウジング27と第2圧接板14,14との間にはその板厚方向に関して隙間が形成され、ハウジング27は第2圧接板14に接していない。具体的には、ハウジング27の一方の端部と段付き部31との間の隙間32、環状凸部30と第2圧接板14,14の各内面との間の隙間33がそれである。また、ハウジング27の他方の端部が嵌合される穴29は開放空間となっていて、他方の端部は第2圧接板14には接していない。
球面すべり軸受28は、第1結合手段11に適用されたものと同様にそれ自体は周知のものであり、内周が凹状球面の外輪34と、これに嵌合される外周が凸状球面の内輪35とからなる。内輪35にピン36が嵌合され、このピン36によって第2圧接板14,14と他方の分割ブレース1bの端2b,2bとが結合される。この第2結合手段12によって、第2圧接板14,14は板厚方向に傾動自在となる。
地震時において図1に示した架構5が架構面内方向の変形を生じると、ブレース1には軸方向の力Pが作用する(図3)。これにより、分割ブレース1a,1bには相対移動が生じ、第1,第2,第3圧接板13,14,16が摺動する。その結果、これら圧接板間には摩擦力が生じ、この摩擦力は第1圧接板13と一方の分割ブレース1aとの結合部においては、第1圧接板13から球面すべり軸受22及びピン23を介して端板2a,2aに伝達される。
また、第2圧接板14,14と他方の分割ブレース1bとの結合部においては、摩擦力は第2圧接板14,14からハウジング27を介して球面すべり軸受28に伝達され、さらにピン36を介して端板2b,2bに伝達される。このような摩擦力により分割ブレース1a,1bの相対移動すなわち架構5の変形が抑制され、また振動が減衰される。
地震時において架構5が架構面直交方向の変形を生じると、図6に示すように、分割ブレース1a,1b間にδhの変位が生じるが、これに追従して第1,第2圧接板13,14が板厚方向に傾動する。これにより、架構の同方向の変形に対応することができ、ブレース1に曲げ変形や応力が生じるのを防止することができる。
上記のような摩擦ダンパー10によれば、第2圧接板14,14が従来のような連結板81(図13参照)を用いることなく、第2結合手段12を介して分割ブレース1bに直接結合されているので、ダンパーの全体大きさのコンパクト化を図ることができる。また、ハウジング27と第2圧接板14,14との間にはその板厚方向に関して隙間32,33が形成されているので、第2圧接板14,14はハウジング27によって板厚方向の移動が拘束されない。これにより、摩擦材21の厚さがクリープや温度変化等により変動した場合であっても、第2圧接板14,14には板厚方向の曲げ変形や応力が生じないため、摩擦材21に対する圧接力の安定化を図ることができる。
図7〜図10は、この発明の第2実施形態を示している。架構5には両側の上部コーナーから斜め下方に延びる1対のブレース1,1が設置され、これらのブレース1,1は下部が連結部(構造物要素)6bによって連結されている。また、架構5の下部コーナーには取付部(構造物要素)6aが設置され、摩擦ダンパー40はこれら取付部6a及び連結部6bに設けられた二山クレビス等の1対の端板7a,7bに両端部が結合されている。摩擦ダンパー40は回転摩擦ダンパーであり、地震時において架構5が面内方向に変形を生じると、取付部6a及び連結部6bがX方向(所定方向)に相対移動し、摩擦ダンパー40を構成する圧接回転板が回転することにより摩擦力を生じ、相対移動を抑制する。
摩擦ダンパー40は、図8,図9に示すように、取付部6aの端板7a,7aに第1結合手段41を介して結合される1対の第1圧接回転板43,43と、連結部6bの端板7b,7bに第2結合手段42を介して結合される1対の第2圧接回転板44,44を有している(図7も併せて参照)。
これら第1圧接回転板43,43間及び第2圧接回転板44,44間には、板幅方向(板厚直角方向)に並列した2枚の第3圧接回転板45,45がそれらの両端部を挟み込まれるように配置されている。また、板厚方向の1対を1組とする2組の第4圧接回転板46,46が、それらの両端部で第1圧接回転板43,43及び第2圧接回転板44,44を表面から挟み込むように配置されている。第3圧接回転板45,45における第1圧接回転板43,43及び第2圧接回転板44,44と接する両面、また第4圧接回転板46,46における第1圧接回転板43,43及び第2圧接回転板44,44と接する内面には摩擦材47がそれぞれ設けられている。
第1圧接回転板43,43、第3圧接回転板45及び第4圧接回転板46,46は、それらを貫通するボルト48及びこれに螺着されるナット49によって回転可能に締結され、所定の圧接力を付与されている。同様に、第2圧接回転板44,44、第3圧接回転板45及び第4圧接回転板46,46は、それらを貫通するボルト48及びこれに螺着されるナット49によって回転可能に締結され、所定の圧接力を付与されている。ボルト48にはその頭部側とナット49側に座金50及び補強材51が装着され、これら座金50と補強材51との間には第4圧接回転板46に弾発力を付与する複数枚の皿ばね52が装着されている。
第1圧接回転板43,43を取付部6aの端板7a,7aに結合するための第1結合手段41は、第1実施形態で説明したハウジング27及び球面すべり軸受28を含む第2結合手段12と全く同様の構造である。したがって、第1結合手段41の主たる構成部材には第1実施形態のそれと同一符号を付して説明を省略する。また、第2結合手段42も第1結合手段41と全く同様の構造である。
地震時において図7に示した架構5が架構面内方向の変形を生じると、ブレース1,1の連結部6bと取付部6aとの間には所定方向の相対移動が生じる。そして、これに伴って、第1圧接回転板43,43及び第2圧接回転板44,44と、これらを連結する第3圧接回転板45及び第4圧接回転板46との間で相対回転が生じ、各圧接回転板間には回転モーメントとしての摩擦力が生じる。この回転モーメントはダンパー稼働方向である所定方向の軸方向力として変換される。
この軸方向力は第1実施形態で説明した場合と同様に、第1,第2圧接回転板43,44からそれぞれのハウジング27を介して球面すべり軸受28に伝達され、さらにピン36を介してそれぞれの端板7a,7bに伝達される。この摩擦力による回転モーメントから変換された軸方向力が架構5の変形を抑制し、振動の減衰力となる。
地震時において架構5が架構面直交方向の変形を生じると、図10に示すように、第1圧接回転板43,43及び第2圧接回転板44,44が板厚方向に傾動するので、架構の同方向の変形に対応することができ、ブレース1や他の部材に曲げ変形や応力が生じるのを防止することができる。
この第2実施形態においても、第1,第2圧接回転板43,44とハウジング27との間には板厚方向の隙間32,33が形成されているので、第1,第2圧接回転板43,44はハウジング27によって板厚方向に拘束されることはない。これにより、摩擦材47の厚さがクリープや温度変化等により変動した場合であっても、第1,第2圧接回転板43,44には板厚方向の曲げ変形や応力が生じないため、摩擦材47に対する圧接力の安定化を図ることができる。
図11は、この発明の第3実施形態を示している。上記第1,第2実施形態では、構造物要素に結合される圧接板が1対である場合に、ハウジング27及び球面すべり軸受28を有する結合手段を適用した。この結合手段は、圧接板が1対に限らず3枚以上の複数であっても適用できる。このことを、第1実施形態で説明した部材名称及びその符号を借りて説明する。
構造物要素1bの端板2b,2bに結合される第2圧接板14,14,14は、板厚方向に間隔を置いた3枚からなっている。これらの第2圧接板14,14,14間に1対の第1圧接板13,13が挟み込まれている。外側の第2圧接板14,14の表面に配置される第3圧接板16,16は、第1実施形態で説明したものと同様のものである。
結合手段を構成するハウジング27は各第2圧接板14に形成された穴29に嵌合され、これにより各第2圧接板14は互いに連結されている。そして、第1実施形態で説明したように、ハウジング27内に球面すべり軸受28が収容され、これに嵌合されるピン36を介して3枚の第2圧接板14,14,14が端板2b,2bに結合される。その他の構成は、第1実施形態で説明したと同様である。
図12は、この発明の第4実施形態を示している。上記各実施形態で示したハウジング27は外周が角筒形のものであってもよいが、上記各実施形態で示されているように、円筒形のものとして、さらに以下に説明する構成を採ることにより、摩擦ダンパーの寸法調整を容易に行うことができる。
すなわち、第1実施形態で示した第2圧接板14を例にとって説明すると、これに取り付けられるハウジング27は、その外径中心C1に対し内径中心C2(ピン36の中心)が偏芯している。言い換えれば、ピン36はハウジング27に偏芯して嵌合されている。したがって、(a)に示すように、中心C1,C2がいずれも第2圧接板14の軸線C0上にあってピン中心C2がハウジング中心C1の右側にあるときの偏芯量を+δとすると、この状態から、(b)に示すようにハウジング27を180度回転させたときの偏芯量は−δとなることから、ハウジング27を180度回転させることによるピン中心C2の相対移動量は2δとなる。
すなわち、第2圧接板14は2δの範囲でピン間寸法の調整が可能となり、これにより摩擦ダンパーの構造物要素への取付けを容易に行うことができる。さらに、ハウジングを偏芯した内外二重のハウジングとすることもでき、これによって偏芯量を4δとすることができる。
上記各実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。例えば、上記第2実施形態において第1,第2結合手段のいずれもハウジング及び球面すべり軸受けを含む結合手段を採用したが、いずれか一方にのみ採用する構成であってもよい。また、この発明による摩擦ダンパーは、建物の梁柱架構に限らず、所定方向に相対移動する2つの構造物要素間であれば、土木構造物等の他の構造物にも適用できる。
1:ブレース
1a,1b:分割ブレース
5:柱梁架構
10:摩擦ダンパー
11:第1結合手段
12:第2結合手段
13:第1圧接板
14:第2圧接板
15:長孔
16:第3圧接板
27:ハウジング
28:球面すべり軸受
29:穴
32,33:隙間
34:外輪
35:内輪
36:ピン

Claims (7)

  1. 所定方向に相対移動する2つの構造物要素の一方に、第1結合手段を介して板厚方向に傾動自在に結合される第1圧接板と、この第1圧接板を両面から所定の圧接力で挟み込むように配置されるとともに、他方の構造物要素に第2結合手段を介して板厚方向に傾動自在に結合される1対の第2圧接板とを備え、2つの構造物要素の前記相対移動に伴って摺動する第1,第2圧接板同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、
    前記第2結合手段は、前記1対の第2圧接板間を連結する円筒形のハウジングであって、その内径中心が外径中心に対して偏芯しているハウジングと、
    前記ハウジングに収容された球面すべり軸受と、
    前記球面すべり軸受に嵌合され、前記第2圧接板と前記他方の構造物要素とを連結するピンとを備えてなることを特徴とする摩擦ダンパー。
  2. 前記ハウジングはその両端部が前記1対の第2圧接板に形成された穴にそれぞれ嵌合され、前記ハウジングと前記第2圧接板との間にはその板厚方向に関して隙間が形成されていることを特徴とする請求項1記載の摩擦ダンパー。
  3. 前記摩擦ダンパーは建物架構の面内に配置されたブレースの中間部に組み込まれ、前記摩擦ダンパーによって分割された分割ブレースが前記2つの構造物要素を構成していることを特徴とする請求項1又は2記載の摩擦ダンパー。
  4. 所定方向に相対移動する2つの構造物要素の一方に、第1結合手段を介して板厚方向に傾動自在に結合される1対の第1圧接回転板と、他方の構造物要素に板厚方向に第2結合手段を介して傾動自在に結合される1対の第2圧接回転板と、両端部がそれぞれ前記1対の第1圧接回転板間及び第2圧接回転板間に所定の圧接力で挟み込まれるように配置され、これらの第1圧接回転板及び第2圧接回転板に回転自在に結合された第3回転圧接板とを備え、2つの構造物要素の前記相対移動に伴って回転摺動する第1,第3回転圧接板同士及び第2,第3回転圧接板同士の摩擦力により、前記相対移動を抑制する摩擦ダンパーであって、
    前記1,第2結合手段の少なくとも一方は、当該一方の結合手段に対応した前記1対の回転圧接板間を連結する円筒形のハウジングであって、その内径中心が外径中心に対して偏芯しているハウジングと、
    前記ハウジングに収容された球面すべり軸受と、
    前記球面すべり軸受に嵌合され、前記一方の結合手段に対応した前記回転圧接板と前記構造物要素とを連結するピンとを備えてなることを特徴とする摩擦ダンパー。
  5. 前記ハウジングはその両端部が前記一方の結合手段に対応した前記1対の圧接回転板に形成された穴にそれぞれ嵌合され、前記ハウジングと当該圧接回転板との間にはその板厚方向に関して隙間が形成されていることを特徴とする請求項4記載の摩擦ダンパー。
  6. 前記摩擦ダンパーは建物架構の面内に配置されたブレースと建物架構とを連結するように設置され、前記ブレース及び建物架構へのダンパー取付部が前記2つの構造物要素を構成していることを特徴とする請求項4又は5記載の摩擦ダンパー。
  7. 他の圧接板を所定の圧接力で挟み込むように板厚方向に間隔を置いて配置された複数の圧接板を備え、これらの圧接板が構造物要素に結合手段を介して板厚方向に傾動自在に結合される摩擦ダンパーであって、
    前記結合手段は、互いに隣接する各圧接板間を連結する円筒形のハウジングであって、その内径中心が外径中心に対して偏芯しているハウジングと、
    前記ハウジングに収容された球面すべり軸受と、
    前記球面すべり軸受に嵌合され、前記圧接板と前記構造物要素とを連結するピンとを備えてなることを特徴とする摩擦ダンパー。
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