JP5577764B2 - 共重合樹脂組成物、成形品、及び共重合樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

共重合樹脂組成物、成形品、及び共重合樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、共重合樹脂組成物、成形品、及び共重合樹脂組成物の製造方法に関する。
近年の地球温暖化問題への意識の高まりから、生分解性を有するとともに、化石資源の使用量を削減するための技術開発が盛んに行われるようになってきた。石油を原料とするプラスチックの原料をバイオマス材料に置き換える動きもその一つである。
一方、複写機やレーザープリンターなど電子写真機器やインクジェット技術を用いた画像出力機器に使用される部品や、家電製品などの電気電子機器や自動車の内装部品には、樹脂部品が数多く利用されている。これらの樹脂部品は、ほとんど石油を原料にして作られるが、二酸化炭素排出量低減問題、石油資源枯渇問題、非生分解性プラスチック問題などのために、バイオマス資源由来樹脂に変換する技術が望まれている。
バイオマス資源とは、植物や動物などの生物の生産物を資源にしているという意味であり、木材や木綿、絹、羊毛、天然ゴムといった従来から知られている原材料に加え、トウモロコシ、大豆や動物から得られるデンプン、油脂、生ゴミなどを指すものである。バイオマス資源由来樹脂は、これらのバイオマス資源を原料にして作られており、一般には、生分解性樹脂であることが多い。生分解性樹脂とは、自然環境下のある温度・湿度条件において、微生物により分解される樹脂である。なお、生分解性樹脂としては、バイオマス資源由来樹脂ではなく、石油由来樹脂であってもよいが、ほとんどの石油由来樹脂は非生分解性である。バイオマス資源由来の生分解性樹脂としては、ジャガイモ、サトウキビ、トウモロコシなどの糖質を醗酵させた乳酸(LA)を原料とし、化学重合により作られるポリ乳酸:PLA(PolyLactic Acid)や、澱粉を主成分としたエステル化澱粉、微生物が体内に生産する微生物産生ポリエステル樹脂であるポリヒドロキシアルカノエート(PHA:PolyHydoroxy Alkanoate)、醗酵法で得られる1,3−プロパンジオールと、石油由来のテレフタル酸を原料とするポリトリメチレンテレフタレート(PTT:Poly Trimethylene Terephtalate)などが知られている。
また、ブタンジオールとコハク酸を原料とするPBS(Poly Butylene Succinate)は、現在は石油由来原料から製造されているが、バイオマス由来樹脂へ移行するような研究がなされており、将来は主原料の一つであるコハク酸を植物由来で製造することが検討されている。
上記バイオマス資源由来樹脂のうち、ポリ乳酸が融点が180℃前後と高く、比較的成形加工性に優れ、かつ市場への供給量も安定しており、これを応用した成型製品が実用化されている。しかし、ポリ乳酸はガラス転移点が56℃前後と低く、それに伴い熱変形温度が55℃前後と耐熱性が低いという欠点がある。また、ポリ乳酸は結晶性樹脂であることから、耐衝撃性が低くアイゾット衝撃強度では2kJ/m以下であるために、電気電子機器製品のような耐久部材への採用は困難であった。
ポリ乳酸の物性向上対策のひとつとして、石油系樹脂であるポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイとする方法が知られている。しかし、成形品の物性を確保するためには石油系樹脂の使用割合が多くなり、バイオマス資源由来樹脂の割合を50%前後しか含むことができず、環境負荷削減のための二酸化炭素排出量削減効果や石油使用量削減効果は半減してしまう。
一方、ポリ乳酸は結晶性樹脂であるため結晶化を促進させて耐熱性を向上させる技術が検討されている。結晶化法としては、成形後に再加熱(アニール)して結晶化度を高める方法と、結晶化核剤を添加して成形する方法が知られている。成形後にアニールする手法では、成形工程が複雑になり、成形時間が長くなるデメリットに加え、結晶化に伴う変形を防ぐためのアニール用の金型等を設置する必要があり、コストと生産性に課題がある。
結晶化核剤を添加する方法は、結晶化度、結晶化速度を向上させる結晶化核剤の開発が進められているが、現状では結晶化核剤を添加しても、2分程度の結晶化時間を必要とし、石油系の汎用樹脂と同じような成形サイクル時間では成形できない。また、100〜110度前後の温度で結晶化させる必要があるため、安価な水冷式の金型温度調節機を用いて成形することができず、高温を必要とするために環境負荷も増加してしまうという問題があった。また、ポリ乳酸のみを結晶化させた場合、アニーリング等により十分に結晶化させても、高荷重(荷重1.80MPa)での荷重たわみ温度は55℃前後と、耐熱性が不十分であることが課題である。
耐熱性の優れている微生物産生ポリヒドロキシアルカノエート(PHA:PolyHydoroxy Alkanoate)樹脂は、加熱時における熱分解が起こりやすく、射出成形などの加工法により成形品を生産する場合には、熱分解による物性の低下が課題とされている。ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、従来の熱安定剤、酸化防止剤、加水分解防止剤を添加しても、分子量低下を抑制させることは困難であった。
以下に、バイオマス資源由来樹脂から生分解性樹脂の製造に関する具体的な文献を紹介する。
引用文献1、引用文献2は、ポリ乳酸樹脂にポリカーボネート樹脂のような石油資源を原料とした樹脂を半分程度ブレンドして、荷重たわみ温度や耐衝撃性を改善する方法を提案している。例えば、引用文献1には、ポリ乳酸を20〜80質量部、ポリカーボネートを20〜70質量部、さらに強化材を0.1〜50質量部、および難燃剤を0.5〜35質量部の割合で含むことを特徴とする電子機器用部材が開示されている。また、引用文献2には、ポリ乳酸樹脂95〜5重量%、芳香族ポリカーボネート樹脂5〜95重量%、及びこれらの樹脂の合計100重量部に対して、アクリル樹脂ユニット又はスチレン樹脂ユニットを0.1〜50重量部グラフト重合させた高分子化合物に、難燃剤0.1〜50重量部を配合してなる樹脂組成物が開示されている。
また、引用文献3、引用文献4に記載されているように、ポリ乳酸樹脂に紙紛や木粉、天然繊維等のバイオマス系の充填材を添加することにより、樹脂の機械的強度を向上させることができる。この方法を用いれば、石油由来樹脂を使用しないで、バイオマス材料の構成比率を高めることができる。例えば、引用文献3には、難燃剤を含浸させた天然繊維と、少なくとも植物資源由来の樹脂とを混練させることを特徴とする筐体用材料が提案されており、前記天然繊維として、ケナフ繊維、麻繊維、ジュート繊維からなる群から選ばれた繊維が開示されている。
引用文献4においては、植物資源由来の樹脂100重量部に対して、天然物由来の有機充填剤1〜350重量部を配合してなる樹脂組成物を成形してなる電気・電子部品が提案されている。植物資源由来の樹脂はポリ乳酸樹脂であり、天然物由来の有機充填剤が紙粉又は木粉から選ばれる少なくとも一種であり、紙粉の50重量%以上が古紙粉末であることを特徴としている。また、ポリ乳酸樹脂の耐熱性を向上させるために、結晶化核剤の添加、あるいは結晶化促進剤としての可塑剤を添加して、ポリ乳酸樹脂の結晶化度を高め得ることが記載されている。
特許文献5においては、生分解性ポリエステルの中でも特に結晶化の遅い、式[−CHR−CH−CO−O−](式中、RはC2n+1で表されるアルキル基で、n=1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位からなる脂肪族ポリエステル系重合体(P3HA)の結晶化速度を促進し、射出成形、フィルム成形、ブロー成形、繊維の紡糸、押出発泡、ビーズ発泡などの成形加工における加工性、加工速度を改善した生分解性ポリエステル系樹脂組成物を提案している。この生分解性ポリエステル系樹脂組成物は、微生物から生産されるP3HAと、ポリビニルアルコール(PVA)、キチン、キトサンから選ばれる1種以上からなる結晶化核剤とを混合したものであり、PVA、キチン又はキトサンは好適なP3HA用の結晶化核剤であるとしている。なお、具体的な脂肪族ポリエステル系重合体として、ポリ3−ヒドロキシブチレート(P3HB)、及び(3−ヒドロキシブチレート(3HB))/(3−ヒドロキシヘキサノエート(3HHx))の共重合体が開示されている。
特許文献6においては、ポリ乳酸系樹脂とポリヒドロキシアルカノエートコポリマーとカルボジイミド化合物からなる光学用ポリ乳酸樹脂組成物を提案している。この光学用ポリ乳酸樹脂組成物は、透明性に優れ、引張特性が向上しており、ポリ乳酸系樹脂を99.9〜80質量部およびポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを0.1〜20重量部含有するものである。
特許文献7においては、生分解性樹脂である乳酸系重合体の生分解性を増大させ、かつ成形性を改善することを目的として、乳酸系重合体とヒドロキシアルカン酸系重合体とを含有させてなる脂肪族ポリエステル系ポリマーブレンド体が提案されている。この脂肪族ポリエステル系ポリマーブレンド体は生分解性が大きく、成形性が改善され、しかも、成形品の特性が優れているとしている。
特許文献8においては、ポリ乳酸とポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを含有し、結晶性無機充填剤成分として結晶性SiOを含む耐熱性樹脂組成物が提案されている。この耐熱性樹脂組成物は、(a1)ポリ乳酸75〜25重量%、及び、(a2)ポリ乳酸以外の融点が100〜250℃の脂肪族ポリエステル25〜75重量%を含有する高分子組成物成分(A)に対し、結晶性SiOを10重量%以上含有する結晶性無機充填剤成分(B)を、高分子組成物成分(A)100重量部に対して0.1〜70重量部含んでいる。この耐熱性樹脂組成物は、金型温度を、ガラス転移温度(Tg)以下、又は室温近傍(0〜60℃)として射出成形可能であり、成形加工における結晶化速度が早く、結晶化度も充分高く、したがって、優れた耐熱性を有し、使用時における高分子成分の劣化が起こり難く、脆化し難い性質を有するとしている。具体的実施例においては、ポリブチレンサクシネートを用いていた樹脂が開示されており、脂肪族ポリエステルの製造方法として、脱水重縮合法、もしくは環状二量体を溶融重合する間接重合法、環状二量体を触媒存在下で溶融重合する開環重合法などの化学的重合処理法が示されている。
特許文献9においては、ポリ乳酸(a1)と脂肪族ポリエステル(a2)との混合物(A)とポリ乳酸セグメントと脂肪族ポリエステルセグメントを有する脂肪族ブロックコポリエステル(B)との混合物からなる乳酸系樹脂組成物を提案している。この乳酸系樹脂組成物は、成形性、柔軟性、安全性に優れ、更には使用後には、生分解性を有し廃棄物処理が容易である。この乳酸系樹脂組成物においては、脂肪族ポリエステル(a2)はポリブチレンサクシネート及び/又はポリカプロラクトンであり、ポリ乳酸(a1)と脂肪族ポリエステル(a2)からなる2成分混合物(A)を、2成分の脂肪族ブロックコポリエステル(B)で相溶化させている。
ポリ乳酸樹脂にポリカーボネート樹脂のような石油資源由来の樹脂を半分程度ブレンドして、耐熱性や機械的強度を改善しても、地球環境対策の観点からは、樹脂製品のバイオマス材料への置き換え効果は半減されてしまう。更に、将来の原油枯渇傾向により、ブレンドに用いた石油由来樹脂の価格が高騰し、実質的に石油由来樹脂は使用できなくなる恐れもある。
ポリ乳酸樹脂に紙紛や木粉、天然繊維等の天然有機物系充填材を利用する方法を用いれば、バイオマス材料の構成比率を高め、石油資源をほとんど使用しない樹脂組成物ができる。しかし、例えば引用文献4において使用している紙紛や木粉、天然繊維の場合、そのサイズは1〜10mm程度であり、紙紛や木粉、天然繊維等が樹脂部品の表面に浮き出てしまい、電気製品の外装筐体のような高い外観精度や美観が要求される成形品には使用することができない。また、外観精度や美観を良くするために、紙紛や木粉、天然繊維を微粉末化するためには、生産コストの増大を招いてしまう。
ポリ乳酸樹脂の耐熱性を向上させるためには、結晶化度を上げる必要があるが、結晶化度を上げるためには、結晶化核剤の添加、あるいは結晶化促進剤としての可塑剤を添加する方法が知られている。しかし、このようにしてポリ乳酸樹脂の結晶化度を高めても、高荷重(例えば、1.80MPa)の荷重たわみ温度は、55℃程度までしか向上しないことが知られている。更に、ポリ乳酸を結晶化させるには、高い金型温度と長い成形時間が必要であり、例えば、厚さ3mmの引張試験片の成形においては、金型温度100℃、成形サイクル時間90〜100秒を要している。従来の化石資源由来の樹脂(例えば、ポリプロピレンやポリスチレン)では、同様の引張試験片の成形は、金型温度50℃程度で成形サイクル時間はせいぜい30秒程度であり、成形容易性は、ポリ乳酸樹脂成形品の工業生産にとって大きな問題となっている。
一方で、乳酸を含まないポリアルカノエート樹脂として、3ヒドロキシ酪酸(3HB)や3ヒドロキシ吉草酸酸(3HV)をモノマーユニットとする生分解性樹脂の利用が考えられている。この中でも、3ヒドロキシ酪酸−3ヒドロキシ吉草酸酸共重合体は、グルコースを基質とする培地から微生物発酵により産生することができ、ポリ乳酸樹脂の代替品又はブレンド等の補完樹脂として期待されている。しかし、3HB−3HV共重合体は、熱分解しやすく、射出成形等の成形処理段階で分解して物性が劣化してしまうという問題がある。この問題点は、共重合体の高分子量化や結晶化核剤の添加、ポリ乳酸樹脂とのブレンドなどでは解決できていない。
特許文献5に記載の生分解性ポリエステル系樹脂組成物においては、具体的に開示されている生分解性ポリエステル系樹脂組成物の成形においては、結晶化温度が110℃と高く(特許文献5図4参照)、金型の温度調節を水冷式温度調節機の上限温度約90℃以下とすることが困難である。また、成形時間40秒でも非晶質部分が残っており、結晶化が十分に進行し難いと考えられる。また、ポリヒドロキシブチレートやポリヒドロキシブチレート−ヒドロキシバリレート共重合体は熱加工時の分子量低下が著しく、樹脂成形品の強度が低下するなどの課題がある。
特許文献6に開示されているポリ乳酸樹脂組成物は、光学用の透明材料なので、非晶質の状態で固化させており、結晶化はしていないので、電器電子機器の筐体などに用いるには耐熱性が十分でないと考えられる。開示されている構成から推測すれば、このポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性は、ポリ乳酸のガラス転移点前後である55℃〜60℃程度であると推測される。
特許文献7に開示されている脂肪族ポリエステル系ポリマーブレンド体は、具体的構成として、主鎖にポリエチレングリコール鎖を含む脂肪族ポリエステルと、ポリ3−ヒドロキシ酪酸(P3HB)とのポリマーブレンド体である。しかし、結晶化核剤を含んでおらず、耐熱性の向上、成形温度の低下、成形時間の短縮に課題が残るものと考えられる。
特許文献8に提案されている耐熱性樹脂組成物においては、さらなる耐熱性の向上が望まれる。また、重合において化学的処理によらず、微生物処理による樹脂製造方法の検討が待たれる。
特許文献9に提案されている乳酸系樹脂組成物においては、ポリ乳酸(a1)と脂肪族ポリエステル(a2)との混合物(A)の相溶性を改善するため、ポリ乳酸セグメントと脂肪族ポリエステルセグメントを有する脂肪族ブロックコポリエステル(B)を使用している。この為、脂肪族ブロックコポリエステル(B)は、組成や分子構造を特別に選択する必要がある。
上述のように、バイオマス原料を使用でき、生分解性を有する、経済的に生産可能な汎用樹脂は、まだ開発途上である。特に、ポリ乳酸で達成できなかった60℃を超える耐熱性を有し、且つ成形性の優れた、汎用成形品に使用できる樹脂組成物は得られていない。現実に使用できるとされるバイオマス系樹脂組成物は、ポリ乳酸に石油系樹脂をブレンドして物性向上を図るものがほとんどであり、樹脂の混練工程を必要とする。また、バイオマス由来ポリエステル樹脂は、熱分解特性のあまりよくないものが多く、2種以上の樹脂の混練工程において、高温で長時間剪断応力を掛けることにより物性劣化を起こしやすい問題がある。さらに、樹脂ブレンドにおいては、互いの樹脂の相溶性の変化や結晶化温度の違い等により、物性を安定させるブレンド技術が必要となる。
本発明の目的は、上記課題を踏まえ、石油系樹脂と同等の成形性、生産性を有し、耐熱性の優れたバイオマス系の共重合樹脂組成物、及びこの共重合樹脂組成物を用いた成形品、並びにこの共重合樹脂組成物の製造方法を提供することである。
本発明の共重合樹脂組成物は、下記化学式[1]、[2]、及び[3]で表されるモノマーユニットを含有している乳酸共重合体を含んでいる。
Figure 0005577764
Figure 0005577764
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化学式[1]で表されるモノマーユニットは、3ヒドロキシ酪酸(3ヒドロキシブタン酸;3HBと略称することがある。)のヒドロキシル基とカルボキシル基が結合手となったモノマーユニットである。同様に、化学式[2]で表されるモノマーユニットは、3ヒドロキシ吉草酸(3ヒドロキシペンタン酸;3HVと略称することがある。)の、化学式[3]で表されるモノマーユニットは、乳酸(2ヒドロキシプロピオン酸;LAと略称することがある。)のヒドロキシル基とカルボキシル基が結合手となったモノマーユニットである。乳酸共重合体中における3HB、3HV、LAの3種のモノマーユニットは、ランダムに配列されていてもよいし、規則性を有して配列されていてもよいが、3HBと3HVの共重合ポリエステルブロックにLA重合体ブロックが付加した形態の乳酸共重合体が好ましく使用できる。3HBと3HVの共重合ポリエステルブロックは、発酵法により産生することが好ましく、発酵法により産生された3HBと3HVの共重合ポリエステルブロックに、乳酸を付加重合させたブロック共重合体は、モノマーユニットの構成比率や配列を制御しやすく、分子量調節が比較的容易で、耐熱性や機械的強度が優れた成形品原料樹脂として好適である。
本発明における1態様の乳酸共重合体は、化学式[3]で表される乳酸モノマーユニットの含有率が50モル%以上95モル%以下である。乳酸共重合体中の乳酸モノマーユニットの含有率が50モル%より少ないと、乳酸共重合体の熱分解保持率が低下しやすく、樹脂組成物としての混練時や成形時の加熱処理により熱分解を起こしたり、分子量低下を起こしたりしやすくなる。乳酸モノマーユニットの含有率が95モル%を超えると、ポリ乳酸樹脂の性質に近くなり、成形品とした際の耐熱性が劣ってくる。
本発明の共重合樹脂組成物は、乳酸モノマーユニットの含有率が50モル%以上95モル%以下である場合には、曲げ応力1.80MPaにおける荷重たわみ温度が65℃以上100℃以下であることが好ましい。この荷重たわみ温度は、JIS
K 7191−2(1996)により測定したものであり、共重合樹脂組成物から射出成形により長さ130mm、幅3.2mm、高さ12.7mmの短冊試験片を作製し(短冊試験片は、成型後アニーリングしてもよい。)、これを支点間距離100mm、昇温速度2℃/min、曲げ応力1.80MPa(A法)で測定した。汎用の樹脂成形品は、上述の荷重たわみ温度が65℃〜100℃であれば、広範な用途に使用可能となり、特に、電気・電子機器用の筐体としての成形品としては十分な耐熱性を有する。しかし、従来のポリ乳酸樹脂では、結晶化剤の添加等によっても、荷重たわみ温度を65℃以上とすることは容易ではなかった。
本発明における他の態様の乳酸共重合体は、乳酸モノマーユニットの含有率が30モル%以上95モル%以下であってもよい。乳酸共重合体は、乳酸モノマーユニットの含有率が30モル%以上50モル%未満の場合は、共重合樹脂組成物中に熱安定剤及び/又は加水分解防止剤を含有させればよい。通常、熱安定剤及び/又は加水分解防止剤を含有させる場合は、曲げ応力1.80MPaにおける荷重たわみ温度が65℃以上100℃以下となるが、65℃以上100℃以下となるように熱安定剤及び/又は加水分解防止剤を含有させることが好ましい。なお、乳酸モノマーユニットの含有率が50モル%以上95モル%以下の場合でも熱安定剤及び/又は加水分解防止剤を含有させることが好ましい。本発明の共重合樹脂組成物は、熱安定剤及び/又は加水分解防止剤を含有することで、熱安定性が高く、射出成形などの成形時の熱処理に対しても十分な熱安定性を保っている。このため、微生物産生ポリヒドロキシアルカノエートであるポリヒドロキシブチレートやポリヒドロキシブチレート−ヒドロキシバリレート共重合体におけるような熱加工時の著しい分子量低下がなく、成形品の強度が低下するなどの問題がなくなった。
本発明における熱安定剤及び/又は加水分解防止剤としては、ポリ乳酸などのバイオマス資源由来樹脂に用いられる熱安定剤及び/又は加水分解防止剤であれば、どのようなものでもよい。例えば、本発明における熱安定剤としては、酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、エポキシ化合物、及びヒドロキシアミン系化合物等が挙げられる。加水分解防止剤としては、例えば、カルボジイミド化合物系加水分解防止剤、イソシアネート化合物、オキサゾリン系化合物、エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステル等が挙げられる。
上記の熱安定剤及び/又は加水分解防止剤の中でも、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、及びカルボジイミド化合物系加水分解防止剤から選択される少なくともいずれかが好ましく用いられる。また、熱安定剤及び/又は加水分解防止剤は、複数種を同時に使用して効果を向上させることができる。例えば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、及びカルボジイミド化合物系加水分解防止剤を同時に使用することにより、より好ましい効果が期待できる。
フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダートフェノール、多環ヒンダートフェノール、モノエステル型ヒンダートフェノール、テトラエステル型ヒンダートフェノール、ジエステル型ヒンダートフェノールなどがあげられる。モノエステル型ヒンダートフェノールとしては、3−(4'−ヒドロキシ−3'−5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸−n−オクタデシル、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどがあげられる。テトラエステル型ヒンダートフェノールとしては、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、などがあげられる。
ホスファイト系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,2'-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-5,5'-スピロビ[1,3,2-ジオキサホスホリナン]、2,2'-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)スピロ[4H-1,3,2-ジオキサホスホリン-5(6H),5'(6'H)-[4H-1,3,2]ジオキサホスホリン]、2,2'-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)スピロ[1,3,2-ジオキサホスホリナン-5,5'-[1,3,2]ジオキサホスホリナン]、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,2'-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)スピロ[1,3,2-ジオキサホスホリナン-5,5'-[1,3,2]ジオキサホスホリナン]、などがあげられる。
カルボジイミド化合物系加水分解防止剤としては、カルボジイミド変性イソシアネートなどがあげられる。
本発明の共重合樹脂組成物は、乳酸共重合体の重量平均分子量(MW)は、20,000以上1,000,000以下、好ましくは50,000以上800,000以下、さらに好ましくは70,000以上800,000以下である。重量平均分子量が20,000より小さいと、成形品が脆くなりやすく、機械的強度、特に耐衝撃性が低下することがあり、汎用の樹脂成形品として使用できない場合がある。重量平均分子量が1,000,000を超える乳酸共重合体は、製造が容易ではなくなる。
本発明の共重合樹脂組成物は、上述の構成を備えることにより、ポリ乳酸樹脂組成物と同様に容易に入手可能なバイオマス原料から生産でき、生分解性を備え、ポリ乳酸樹脂組成物よりも耐熱性が高く、成形性が優れ、また、従来から知られている成形体用の微生物産生ポリヒドロキシアルカノエートに比べ加熱時の熱分解を抑制することができる。
本発明に係る共重合樹脂組成物は、乳酸共重合体中における上記の化学式[1]で表される3HBモノマーユニットと、化学式[2]で表される3HVモノマーユニットのモル比が、99:1〜75:25の範囲であることが好ましく、95:5〜80:20の範囲であることが特に好ましい。3HBモノマーユニットと3HVモノマーユニットのモル比を99:1〜75:25の範囲とすることにより、共重合樹脂組成物の耐熱性が向上するとともに、グルコースを主体としたバイオマス原料を利用しやすく、原料調達や製造工程上のメリットが生かせる。
本発明に係る共重合樹脂組成物は、3HBモノマーユニットの比率を増加させると、耐熱性が向上し、3HVモノマーユニットの比率を増加させると、耐衝撃性が向上する傾向にある。3HBモノマーユニットと、3HVモノマーユニットのモル比を上記範囲内とすることにより、汎用樹脂としての機械的強度を備え、ポリ乳酸樹脂よりも耐熱性が高く、成形性が優れ、加熱時の熱分解を抑制することができる共重合樹脂組成物を提供できる。
本発明に係る共重合樹脂組成物は、乳酸共重合体の熱分解保持率(分子量保持率)が80%以上であることが好ましい。乳酸共重合体の熱分解保持率が80%以上であると、ペレット化や成形加工時の加熱に対してもほとんど熱分解することなく、共重合樹脂組成物の性状を維持した成形品が得られ、電気電子機器の筐体を始めとする汎用の樹脂成形品として、各種の用途に利用できる。なお、乳酸共重合体の熱分解保持率は、共重合樹脂組成物を200℃で1分間加熱した際の重量平均分子量(MW)の低下率(%)で表す。従来から知られている3HB−3HV共重合体は、熱分解特性が劣っており、通常は、熱安定剤を添加しても、熱分解保持率を80%以上とすることはできなかった。
本発明に係る共重合樹脂組成物は、化学式[3]で表される乳酸モノマーユニットが、L乳酸モノマーユニット、又はD乳酸モノマーユニットのいずれかであることが好ましい。乳酸モノマーユニットが、L乳酸モノマーユニット、又はD乳酸モノマーユニットのいずれかであると、L乳酸とD乳酸の混合物であるラセミ体(DL体)の乳酸モノマーユニットの重合物に比べ、耐熱性、特に熱分解保持率の優れた共重合樹脂組成物が得られる。なお、L乳酸及びD乳酸は、純粋なものでなく工業的に得られる程度の純度の光学異性体であればよい。
本発明に係る共重合樹脂組成物は、結晶化核剤をさらに含んでいることが好ましい。特に、結晶化核剤が、タルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系核剤より選択される一つ以上からなることが好ましい。
結晶化核剤は、ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化を促進するため、成形時の金型温度を低下でき、成形時間を短縮でき、得られた成形品の耐熱性を向上させる。結晶化核剤のうちでも、タルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系核剤が本発明に係る共重合樹脂組成物との相性がよく、結晶化を促進する効果が優れている。
本発明に係る成形品は、上記の本発明に係る結晶化核剤を含む共重合樹脂組成物を、金型温度を50℃以上90℃以下として射出成形法で成形したことを特徴とする。特に、本発明に係る成形品は、電気・電子機器用の筐体としての成形品として優れている。
樹脂の射出成形時の金型温度がおよそ90℃以下であれば、射出成形加工に必要となる金型の温度調節装置として、安価で簡便な水媒体方式を採用することができる。(90℃を超える金型の温度調節には、油媒体方式を採用するのが一般的である。)更に、金型温度が低ければ、金型のキャビティー内に射出された溶融樹脂(硬化前の成形品)の冷却を早くすることができ、成形時間が短縮される。これは、本発明の共重合樹脂組成物が、ポリ乳酸と異なり、50℃以上90℃以下の温度範囲で十分に結晶化が進み、更に、結晶化核剤を添加すると、上記温度範囲で結晶化が特に早くなることを見出したために実現できたものである。
汎用の樹脂成形品は、上述の荷重たわみ温度が65℃〜100℃であれば、広範な用途に使用可能となり、特に、電気・電子機器用の筐体としての成形品としては十分な耐熱性を有する。また、本発明に係る樹脂成形品は、電気・電子機器用の筐体を始めとする汎用樹脂成形品として、原料入手性、大量生産性に優れ、生分解性等の環境への配慮がなされている点からも好ましい。
本発明の共重合樹脂組成物の製造方法は、3ヒドロキシ酪酸(3HB)モノマーユニットと3ヒドロキシ吉草酸(3HV)モノマーユニットを含むポリエステル(3HB−3HV共重合体)を微生物発酵法により産生するポリエステル産生行程と、前記ポリエステルに、乳酸をモノマーユニットの比率として30モル%以上95モル%以下、好ましくは50モル%以上95モル%以下の範囲で付加して、重量平均分子量が20,000以上1,000,000以下の乳酸共重合体(乳酸含有ポリエステル)を製造する乳酸共重合体製造工程とを有する。本発明の共重合樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、前記乳酸共重合体に核剤を添加して、曲げ応力1.80MPaにおける荷重たわみ温度が65℃以上100℃以下の共重合樹脂組成物とする核剤添加工程を有する。また、本発明の共重合樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、前記乳酸共重合体に熱安定剤及び/又は加水分解防止剤を添加して共重合樹脂組成物とする添加剤添加工程を有する。特に、乳酸モノマーユニットの比率として30モル%以上50モル%未満の場合は、前記乳酸共重合体に熱安定剤及び/又は加水分解防止剤を添加して共重合樹脂組成物とする添加剤添加工程が必須である。
熱安定剤及び/又は加水分解防止剤としては、すでに述べた各種のものが使用でき、その中でも、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、及びカルボジイミド化合物系加水分解防止剤から選択される少なくともいずれかが好ましく用いられる。また、熱安定剤及び/又は加水分解防止剤は、複数種を同時に使用して効果を向上させることができる。例えば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、及びカルボジイミド化合物系加水分解防止剤を同時に使用することにより、より好ましい効果が期待できる。
本発明の共重合樹脂組成物の製造方法におけるポリエステル産生行程では、微生物発酵法によりポリエステル(3HB−3HV共重合体)を産生するので、微生物発酵条件を適宜調整することにより、容易にポリエステルの分子量や、3HBモノマーユニットと3HVモノマーユニットの構成比、配列等を制御できる。さらに、また、微生物発酵法によれば比較的高分子量のポリエステル(3HB−3HV共重合体)を産生しやすいので、これを加水分解することにより、所望の重量平均分子量のポリエステル(3HB−3HV共重合体)を得ることもできる。
乳酸共重合体製造工程においては、所定の重量平均分子量のポリエステル(3HB−3HV共重合体)に乳酸を付加して乳酸共重合体を製造するので、乳酸モノマーユニットはポリエステル中にブロック化して導入できる。この為、本発明の共重合樹脂組成物は、乳酸モノマーユニットの比率を制御しやすく、乳酸共重合体の分子量や、共重合樹脂組成物の荷重たわみ温度、熱分解保持率などを制御することもでき、耐熱性や機械的強度が優れた成形品原料樹脂として好適である。
本発明に係る共重合樹脂組成物の製造方法においては、前記ポリエステルの3HBモノマーユニットと3HVモノマーユニットのモル比が、99:1〜75:25の範囲であることが好ましい。
微生物発酵法によるポリエステル産生行程では、ポリエステル中の3HBモノマーユニットと3HVモノマーユニットのモル比を上記の範囲内に制御することにより、ポリ乳酸樹脂よりも耐熱性が高く、加熱時の熱分解を抑制することができる樹脂組成物を提供できる。
本発明によれば、生分解性を有し、石油系樹脂を含まなくても、十分な耐熱性や機械的強度を有する、バイオマス系の樹脂組成物、及びこれを用いた成形品、並びにバイオマス系の樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
樹脂組成物中の吉草酸モノマーユニット(3HV)のモル分率(%)と樹脂組成物の荷重たわみ温度との関係を表す図である。 本発明の共重合樹脂組成物を利用した成形品を有する画像形成装置の斜視図である。
本発明に係る実施形態例としての共重合樹脂組成物について説明する。
(共重合樹脂組成物)
本実施形態における乳酸共重合体のモノマーユニットは3成分である。乳酸共重合体のモノマーユニットは、上記化学式[1]に示す3ヒドロキシ酪酸(3HB)モノマーユニットと、上記化学式[2]に示す3ヒドロキシ吉草酸(3HV)モノマーユニットと、上記化学式[3]に示す乳酸(LA)モノマーユニットであり、これらがエステル結合により共重合している。本実施形態における乳酸共重合体は、3HBモノマーユニットと3HVモノマーユニットとの共重合体(3HB−3HV共重合ポリエステル)に乳酸モノマーユニットを共重合させている。
(3HB−3HV共重合ポリエステル)
本発明に係る3HB−3HV共重合ポリエステル(単にポリエステルと略称する。)は、3ヒドロキシ酪酸(略称3HB)、3ヒドロキシ吉草酸(略称3HV)の共重合体(略称P−3HB−co−3HV)であってもよく、P−3HB−co−3HVに更に3ヒドロキシヘキサン酸(略称3HHx)が共重合した共重合体(略称P−3HB−co−3HV−co−3HHx)など、他のモノマー成分が含まれていてもよい。生産性や経済性からは、P−3HB−co−3HVが好ましく用いられる。
本発明に係る3HB−3HV共重合ポリエステル(P−3HB−co−3HV)は、ポリヒドロキシアルカノエート(略称PHA)とも言われ、生分解性を有する。原料入手の容易性、生分解性の点からは、グルコース、プロピオン酸等を炭素源として微生物発酵法により産生されたものが好ましい。微生物発酵法は、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素遺伝子を有する微生物に対し、グルコース培地にプロピオン酸やC以上の偶数の脂肪酸を与えることによって産生することが出来る。例えば、P−3HB−co−3HVは、バチルス属菌、ラルストニア属菌、シュードモナス属菌等のポリヒドロキシアルカノエート生産菌を用い、培地成分中の窒素やリン酸を制限した培養法により、菌体増殖とポリエステル生産の2段階で生産することができる。
ポリ3ヒドロキシブチレート(略称P−3HB)は、グルコースを炭素源とするLB培地、MR培地等でシュードモナス属菌、ラルストニア属菌、バチルス属菌、コリネバクテリウム属菌により生産することができ、これに副原料としてプロピオン酸やC以上の偶数の脂肪酸を添加し培地成分中の窒素やリン酸を調整することにより、3HB−3HV共重合ポリエステルをはじめとする各種の3HB共重合体であるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が産生できる。
(乳酸共重合体)
本発明における乳酸共重合体(Co−PLA)は、上記の3HB−3HV共重合ポリエステル(PHA)に、更に乳酸モノマーユニットを含む共重合体であり、広い意味でのポリヒドロキシアルカノエートの一種である。乳酸共重合体は、乳酸と3HBと3HVとがランダムに又は規則的に共重合していてもよい。本発明における乳酸共重合体は、上記の微生物発酵法により産生したPHAに、乳酸を付加重合させたブロック共重合体が好ましい。このブロック共重合体は、耐熱性、熱分解保持率、生分解性等が優れており、このブロック共重合体を用いた樹脂組成物は、成形が容易で、成形サイクルタイムが短く、好適に耐熱性のある汎用の樹脂成形品とすることができる。
PHAへの乳酸の付加重合は、有機溶媒中でPHAと乳酸をオクチル酸スズ等の重合開始剤を用いて重合させればよい。得られた乳酸共重合体中の乳酸モノマーユニットの含有量や乳酸共重合体の分子量の調整は、原料PHAと乳酸の比率、重合開始剤の添加量、反応温度、反応時間等により制御できる。通常は、反応温度を100〜150℃、10〜50時間程度で所望のCo−PLAが得られる。また、乳酸共重合体の分子量や乳酸共重合体中の3HB,3HV共重合ポリエステルブロック(PHAブロック)の分子量調節には、上記の微生物発酵法で得られたPHAを、加水分解によって所望の分子量にしてから用いればよい。
本発明においてCo−PLA製造用に用いられる乳酸は、どのような乳酸でもよいが、従来から知られている微生物発酵法により作製された、L乳酸、D乳酸、及びL乳酸とD乳酸の混合物(ラセミ体、DL−体)が用いられる。特に、L乳酸、D乳酸のいずれか一方を原料としてCo−PLAを作製すると、得られたCo−PLAの成形時の熱分解を抑制することができるためより好ましい。なお、L乳酸、D乳酸は、通常の分離技術や合成技術により生産されたものであり、厳密にL乳酸、又はD乳酸のみでなくてもよい。
本発実施形態に用いられる乳酸共重合体の重量平均分子量MWは、ヒドロキシアルカノエート共重合体ブロックの分子量調整と、ポリ乳酸ブロックの分子量調整とによって制御される。乳酸共重合体の重量平均分子量MWは、20,000〜1,000,000である。重量平均分子量MWが上記範囲を外れると、樹脂組成物の成形品の耐熱性や耐衝撃性、成形性が劣ってくる。特に、重量平均分子量MWが20,000未満になると、樹脂組成物が脆くなりやすく、成形性や耐衝撃性が低下してくる。
(熱安定剤及び加水分解防止剤)
本実施形態の共重合樹脂組成物は、樹脂組成物の熱安定剤として、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤を含み、加水分解防止剤としてカルボジイミド化合物系加水分解防止剤、例えば、ポリカルボジイミド樹脂(商品名:カルボジライト、日清紡ケミカル株式会社製)などを含んでいることが好ましい。添加する熱安定剤及び加水分解防止剤は、上記3種の添加剤のうちから選択される一つでもよいが、上記2種の熱安定化剤及び加水分解防止剤は、それぞれ機能が異なっており、それぞれの添加剤がともに加えられたものが好ましい。熱安定剤及び加水分解防止剤の添加量は、種類により異なるが、一般的には、それぞれ共重合樹脂組成物100質量部に対し、0.1質量部から5質量部程度が好ましい。
(結晶化核剤)
本発明に係る共重合樹脂組成物に用いられる結晶化核剤は、ポリ乳酸等のバイオマス資源由来の熱可塑性樹脂に用いられる結晶化核剤であれば、どのようなものでもよい。例えば、タルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系からなる核剤などが好ましく用いられる。その他公知の結晶化核剤、例えば乳酸塩、安息香酸塩、シリカ、リン酸エステル塩系などを用いてもよい。
(その他の添加剤)
本実施形態の共重合樹脂組成物には、さらにシリコーン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤、有機リン系難燃剤、金属酸化物系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤等を添加することが好ましい。これにより、難燃性が向上して延焼が抑制できるとともに、生分解性樹脂組成物の流動性が向上するため、より優れた成形性を確保することができる。
上記シリコーン系難燃剤としては、例えば、アルキルシロキサン、アルキルフェニルシロキサン等を用いるこができる。より具体的には、信越シリコーン社の"X40−9805"(商品名)、ダウコーニング・シリコーン社の"MB50−315"(商品名)等を使用できる。
上記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、トリクロロベンゼンスルフォン酸カリウム、パーフルオロブタンスルフォン酸カリウム、ジフェニルスルフォン−3−スルフォン酸カリウム等の有機スルフォン酸金属塩、芳香族スルフォンイミド金属塩、あるいはスチレン系重合体、ポリフェニレンエーテル等の芳香族基含有重合体の芳香環に、スルフォン酸金属塩、硫酸金属塩、リン酸金属塩、ホウ酸金属塩が結合したポリスチレンスルフォン酸アルカリ金属塩等を使用できる。
上記有機リン系難燃剤としては、例えば、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ビホスフィン、ホスホニウム塩、ホスフィン酸塩、リン酸エステル、亜リン酸エステル等を用いることができる。より具体的には、トリフェニルフォスフェート、メチルネオペンチルフォスファイト、ペンタエリスリトールジエチルジフォスファイト、メチルネオペンチルフォスフォネート、フェニルネオペンチルフォスフェート、ペンタエリスリトールジフェニルジフォスフェート、ジシクロペンチルハイポジフォスフェート、ジネオペンチルハイポフォスファイト、フェニルピロカテコールフォスファイト、エチルピロカテコールフォスフェート、ジピロカテコールハイポジフォスフェート等を使用できる。
上記金属酸化物系難燃剤としては、例えば酸化マグネシウム等が使用でき、上記金属水酸化物系難燃剤としては、例えば水酸化マグネシウム等が使用できる。
本実施形態の共重合樹脂組成物には、さらに改質剤として乳酸系ポリエステルを添加することができる。これにより、耐衝撃性が向上するのみならず、難燃化効果も向上する。改質剤としての乳酸系ポリエステルとしては、乳酸とジカルボン酸とジオールとを共重合したポリマーが使用できる。このジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等を挙げることができる。また、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。より具体的には、大日本インキ社の"EXP−PD−150"(商品名)を好適に用いることができる。さらに、他の改質剤としては、セバシン酸1,3−ブタンジオール等を使用できる。
本実施形態の共重合樹脂組成物には、充填剤を添加することができる。充填剤としては、タルク、マイカ、モンモリロナイト、カオリン等を挙げることができる。これらの充填剤が結晶核となることにより、ポリ乳酸の結晶化が促進され、成形体の衝撃強度および耐熱性が向上する。また、成形体の剛性も大きくできる。
本実施形態の共重合樹脂組成物には、可塑化剤、相溶化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、離型剤等の各種添加剤を適宜配合することもできる。可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。相溶化剤は、熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸の相溶化剤として機能するものであれば特に制限はない。相溶化剤としては、無機充填剤、グリシジル化合物、酸無水物をグラフト若しくは共重合した高分子化合物、及び有機金属化合物が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いてもよい。これらの混練により、耐熱性、曲げ強度、衝撃強度、難燃性等も改善されるため、さらにノートパソコン、携帯電話等を代表とする電子機器用筐体等の成形体への適用が促進される。
また、充填剤として、麻繊維、キチン・キトサン、椰子殻繊維、ケナフ、これらから誘導された短繊維(長さ10mm以下)、これらから誘導された粉体等を添加することができる。これらの充填剤は、成形体の機械的強度、剛性および耐熱性を向上できる。また、これらは天然素材であり、成形体の生分解性を低下させない。さらに、充填剤として、ガラス繊維、カーボン繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ等を添加することが好ましい。これにより、成形体の剛性を大きくできる。上記充填剤は、ポリ乳酸や他の脂肪酸等でコーティング等の表面処理がなされていてもよいし、シランカップリング剤等で表面処理がなされていてもよい。
植物繊維には、植物繊維をそのまま乾燥、粉砕し、リグニンやヘミセルロースその他の成分を含むものや、植物繊維をアルカリ処理で脱リグニンした後に乾燥、粉砕したもの、パルプや古紙を粉砕したもの、更に細かく粉砕しミクロフィブリル化したもの等が挙げられる。成形品の機械的強度向上材としては、植物繊維でなくても微生物産生のバクテリアセルロース等が使用でき、バイオマスであれば特に限定されるものではない。また、原料植物の種類も特に限定されるものではなく、ジュート、ケナフ、竹などの生育の早い植物や、可食部を採取した後の稲、トウモロコシ、さとうきびなど、環境との調和を考慮して、配合物や配合比を適宜選択することが望ましい。
植物繊維等の機械強度強化材料を用いるときには、カップリング剤や相溶化剤を適宜配合することもできる。カップリング剤としては公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、アルコキシシランカップリング剤などが挙げられる。また、相溶化剤としては、無機充填剤、グリシジル化合物、酸無水物をグラフト若しくは共重合した高分子化合物、及び有機金属化合物が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いてもよい。
(物性測定)
・乳酸共重合体の重量平均分子量
本発明における乳酸共重合体(Co−PLA)の重量平均分子量(MW)は、20,000〜1,000,000、好ましくは70,000〜800,000である。乳酸共重合体等の重量平均分子量は、Gel Permeation Chromatography(GPC法)による標準ポリスチレン換算値として算出する。なお、重量平均分子量(MW)は、乳酸共重合体に結晶化核剤等の添加剤を加えた共重合体樹脂組成物を測定してもよい。この場合は、GPC法において、添加剤成分由来と考えられる低分子量領域のフラクションをカットして測定すればよい。
・乳酸共重合体等のモノマーユニットのモル比の測定
本発明における乳酸共重合体(Co−PLA)中の乳酸モノマーユニットモル比は、50〜95モル%である。乳酸モノマーユニット、3HBモノマーユニット、及び3HVモノマーユニットのモル比率は、プロトンNMRの測定結果から算出すればよい。
・荷重たわみ温度
本発明に係る共重合樹脂組成物の荷重たわみ温度は、65〜100℃である。荷重たわみ温度は、JIS K 7191−2(1996)A法、すなわち、曲げ応力1.80MPaにおける荷重たわみ温度を測定する。具体的には、長さ130mm、幅3.2mm、高さ12.7mmの短冊試験片を用いて、支点間距離100mm、昇温速度2℃/nin、曲げ応力は1.80MPaで測定する。短冊試験片は、共重合樹脂組成物のペレットを、型締力50トンの電動式射出成形機を用いて、金型温度80℃、シリンダー温度180℃、射出速度20mm/s、射出圧力100MPa、冷却時間30secで成形し、十分結晶化が進むまでアニーリングして作製した。
なお、バイオマス系に限らず樹脂組成物は、耐熱性が56℃以上で使用可能であるが、電子・電気機器用の筐体に使用する場合、その電子・電気機器の輸送時の温度環境から60乃至65℃の耐熱性を保証することが必要になる。このため、電子・電気機器には、余裕を見て耐熱性65℃以上の樹脂組成物が選定される場合が多い。樹脂組成物の耐熱性の試験方法は、筐体に機械的な応力がかかることを想定し、JIS準拠の荷重たわみ温度で評価することが一般的である。
・熱分解保持率
本発明に係る共重合樹脂組成物の熱分解保持率(分子量保持率と言うこともある。)(%)は、80%以上であることが好ましい。熱分解保持率は、Co−PLAを200℃で10分間加熱した後の重量平均分子量(MW)の減少率(%)として表す。
具体的な算出式は、
[熱分解保持率]={[加熱前のMW]−[加熱後のMW]}/[加熱前のMW]×100
として算出する。なお、重量平均分子量(MW)は上述のGPC法により測定すればよい。重量平均分子量測定と同じように、乳酸共重合体に結晶化核剤等の添加剤を加えた共重合体樹脂組成物の場合、GPC法において、重量平均分子量(MW)は、添加剤成分由来と考えられる低分子量領域のフラクションをカットして算出する。
熱分解保持率の試験条件は、樹脂組成物の成形条件から設定される。本発明に係る共重合樹脂組成物の場合、例えば、成形時のシリンダー温度が180℃であるため、熱分解保持率の試験条件には、温度ばらつきの余裕度を加算して200℃と比較的厳しい条件としている。また、成形時に射出成形機の加熱シリンダー内に樹脂組成物が滞留する時間を、例えば、5〜10分間程度とすることから、加熱時間を10分間と定めている。熱分解保持率は、前記試験条件前後における樹脂組成物の熱分解保持率から算出される。一般的に、樹脂組成物は加熱条件下で分子量が低下し、衝撃強度等の機械的強度が低下することが知られている。樹脂組成物の分子量と衝撃強度には比例的な関係があるが、分解前の衝撃強度を100とし、その50%以上を保持するためには、熱分解保持率は80%以上であることが好ましい。
(実施例1)
<ポリエステル1の作製>
バチルス属菌を用いて、ペプトン5.0g/l、イーストエキス5.0g/l、肉エキス5.0g/lを含む培地で16時間培養した培養液を、窒素源を制限した最少培地(グルコースを含む)にプロピオン酸を添加し、45℃で48時間培養することでポリエステルを含む培養菌体を得た。得られた培養菌体を凍結乾燥し、クロロホルムを添加して菌体内物質を抽出した。不溶分を濾別し、濾液にメタノールを加え、菌体抽出物を再析出させ、再び濾過し精製した菌体産生物を得た。この菌体産生物をアルカリ性の温水で処理して加水分解して分子量を下げ、ポリエステル1とした。ポリエステル1をNMR解析することによって、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が約83:17のポリエステル(P−3HB−co−3HV)であることを確認した。
<乳酸共重合体1、及び共重合樹脂組成物1の作製>
次に、無水トルエン溶液中に、ポリエステル1を0.05g/l、乳酸0.95g/l、オクチル酸スズ0.1g/l加え、窒素雰囲気中にて130℃で24時間撹拌した後、更に130℃で24時間静置した。その後、真空雰囲気中に1時間保持し、室温に戻し、得られた生成物をクロロホルムに溶かし、メタノールとヘキサンを加えて析出物をろ過、回収した。この溶解、析出、ろ過を繰り返して精製し、最後に真空乾燥し精製物を得た。得られた精製物をNMR解析して、乳酸共重合体(Co−PLA)であることを確認し、これを乳酸共重合体1とした。乳酸共重合体1のL乳酸モノマーユニット(LLA)、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)、3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)は、95:4:1であった。また、乳酸共重合体1のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で171,000であった。乳酸共重合体1には、結晶化核剤等の添加剤を加えず、そのまま樹脂組成物1とした。
<樹脂組成物1の荷重たわみ温度測定>
樹脂組成物1を単軸混練押出機で180℃の温度で溶融混練して、大きさ3mm程度の成形用のペレットを作製した。作製したペレットを、棚式の熱風乾燥機を使用して50℃で12時間乾燥した後、型締力50トンの電動式射出成形機を使用して、金型温度80℃、シリンダー温度180℃、射出速度20mm/s、射出圧力100MPa、冷却時間30secの設定で射出成形した。成形品を80℃で15分一次アニーリングし、60℃で12時間二次アニーリングし、荷重たわみ温度試験用の短冊試験片とした。作製した短冊試験片のサイズは、長さ130mm、幅3.2mm、高さ12.7mmである。荷重たわみ温度の試験は、JIS K 7191−2(1996)に従って行った。なお、支点間距離100mm、昇温速度2℃/min、曲げ応力は1.08MPaとした。樹脂組成物1の荷重たわみ温度は、82℃であった。
<樹脂組成物1の熱分解保持率測定>
ホットプレート上に樹脂組成物1を1g置き、200℃で10分間加熱した。加熱前と加熱後の樹脂組成物1について、それぞれGPC法による重量平均分子量(MW)を測定し、下記の式を用いて熱分解保持率(%)を算出した。
熱分解保持率={(加熱前のMW)−(加熱後のMW)}/(加熱前のMW)×100
樹脂組成物1の熱分解保持率は、95%であった。
以上の樹脂組成物1の組成、性状を纏めて表1の実施例1の欄に示した。なお、表1の共重合比は、乳酸共重合体1中の3HB、3HV、及びLAのモル比であり、3HB,3HVの欄のカッコ内の数字は、樹脂組成物1中の3HBと3HVのモル比を表している。
(実施例2)
<ポリエステル2の作製>
実施例1の<ポリエステル1の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件及び得られた菌体産生物の加水分解条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が92:8のポリエステル2を作製した。
<乳酸共重合体2、及び樹脂組成物2の作製>
実施例1の<乳酸共重合体1の作製>において、ポリエステル1を0.05g/l、L乳酸0.95g/l、オクチル酸スズ0.1g/lの添加に代えて、ポリエステル2を0.2g/l、L乳酸0.8g/l、オクチル酸スズ0.1g/lを添加した以外は実施例1と同様にして、精製物を得た。得られた精製物をNMR解析して、乳酸共重合体(Co−PLA)であることを確認し、これを乳酸共重合体2とした。乳酸共重合体2のL乳酸モノマーユニット(LLA)、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)、3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)は、81:18:1であった。また、乳酸共重合体2のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で454,000であった。乳酸共重合体2には、結晶化核剤等の添加剤を加えず、そのまま樹脂組成物2とした。
<樹脂組成物2の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物2の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物2の組成等とともに、実施例1と同様にして表1の実施例2の欄に示した。
(実施例3)
<ポリエステル3の作製>
実施例1の<ポリエステル1の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件及び得られた菌体産生物の加水分解条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が97:3のポリエステル3を作製した。
<乳酸共重合体3、樹脂組成物3の作製>
実施例1の<乳酸共重合体1の作製>において、ポリエステル1を0.05g/l、L乳酸0.95g/l、オクチル酸スズ0.1g/lの添加に代えて、ポリエステル3を0.5g/l、L乳酸0.5g/l、オクチル酸スズ0.1g/lを添加した以外は実施例1と同様にして、精製物を得た。得られた精製物をNMR解析して、乳酸共重合体(Co−PLA)であることを確認し、これを乳酸共重合体3とした。乳酸共重合体3のL乳酸モノマーユニット(LLA)、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)、3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)は、54:44:2であった。また、乳酸共重合体3のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で73,000であった。乳酸共重合体3には、結晶化核剤等の添加剤を加えず、そのまま樹脂組成物3とした。
<樹脂組成物3の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物3の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物3の組成等とともに、実施例1と同様にして表1の実施例3の欄に示した。
(実施例4)
<ポリエステル4の作製>
実施例1の<ポリエステル1の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件及び得られた菌体産生物の加水分解条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が85:15のポリエステル4を作製した。
<乳酸共重合体4、樹脂組成物4の作製>
実施例1の<乳酸共重合体1の作製>において、ポリエステル1を0.05g/l、L乳酸0.95g/l、オクチル酸スズ0.1g/lの添加に代えて、ポリエステル4を0.2g/l、L乳酸0.8g/l、オクチル酸スズ0.1g/lを添加した以外は実施例1と同様にして、精製物を得た。得られた精製物をNMR解析して、乳酸共重合体(Co−PLA)であることを確認し、これを乳酸共重合体4とした。乳酸共重合体4のL乳酸モノマーユニット(LLA)、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)、3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)は、80:17:3であった。また、乳酸共重合体4のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で719,000であった。乳酸共重合体4には、結晶化核剤等の添加剤を加えず、そのまま樹脂組成物4とした。
<樹脂組成物4の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物4の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物4の組成等とともに、実施例1と同様にして表1の実施例4の欄に示した。
(実施例5)
<樹脂組成物5の作製>
実施例1の<乳酸共重合体1の作製>において、作製した乳酸共重合体1を100重量部に対して、結晶化核剤として、結晶化核剤1(タルク系核剤;日産化学株式会社製のPPA-Zn)、結晶化核剤2(フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤;日本タルク株式会社製のSG-2000)、結晶化核剤3(ベンゾイル化合物系核剤;株式会社ADEKA製のT-1287N)をそれぞれ0.5重量部ずつ添加し、混練して樹脂組成物5とした。
<樹脂組成物5の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物5の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物5の組成等とともに、実施例1と同様にして表1の実施例5の欄に示した。
(比較例1)
<樹脂組成物6の調製と荷重たわみ温度測定>
市販のポリL乳酸(三井化学株式会社製のレイシア H−100)を樹脂組成物6とした。実施例1と同様にして、樹脂組成物6の荷重たわみ温度を測定し、測定結果を表2の比較例1の欄に示した。
(比較例2)
<樹脂組成物7の作製>
比較例1において、調製した樹脂組成物6(市販のポリ乳酸)100重量部に対して、結晶化核剤として、結晶化核剤1(タルク系核剤;日産化学株式会社製のPPA-Zn)、結晶化核剤2(フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤;日本タルク株式会社製のSG-2000)、結晶化核剤3(ベンゾイル化合物系核剤;株式会社ADEKA製のT-1287N)をそれぞれ0.5重量部ずつ添加し、混練して樹脂組成物7とした。
<樹脂組成物7の荷重たわみ温度測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物7の荷重たわみ温度を測定し、測定結果を樹脂組成物7の組成等とともに、測定結果を表2の比較例2の欄に示した。
(比較例3)
<ポリエステル8の作製>
実施例1の<ポリエステル1の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件を調整して、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が、92:8のポリエステルを作製した。このポリエステルのGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で1,300,000であった。このポリエステルをアルカリ性の温水により、加水分解して分子量を低下させてポリエステル8を作製した。
<乳酸共重合体8、樹脂組成物8の作製>
実施例1の<乳酸共重合体1の作製>において、ポリエステル1を0.05g/l、L乳酸0.95g/l、オクチル酸スズ0.1g/lの添加に代えて、ポリエステル8を0.7g/l、L乳酸0.3g/l、オクチル酸スズ0.1g/lを添加した以外は実施例1と同様にして、精製物を得た。得られた精製物をNMR解析して、乳酸共重合体(Co−PLA)であることを確認し、これを乳酸共重合体8とした。乳酸共重合体8のL乳酸モノマーユニット(LLA)、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)、3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)は、35:60:5であった。また、乳酸共重合体8のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で280,000であった。乳酸共重合体8には、結晶化核剤等の添加剤を加えず、そのまま樹脂組成物8とした。
<樹脂組成物8の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物8の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物8の組成等とともに、実施例1と同様にして表2の比較例3の欄に示した。
(比較例4)
<ポリエステル9の作製>
実施例1の<ポリエステル1の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件及び得られた菌体産生物の加水分解条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が92:8のポリエステル9を作製した。ポリエステル9のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で1,300,000であった。
<樹脂組成物9の作製>
作製したポリエステル9を100重量部に対して、結晶化核剤として、結晶化核剤1(タルク系核剤;日産化学株式会社製のPPA-Zn)、結晶化核剤2(フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤;日本タルク株式会社製のSG-2000)、結晶化核剤3(ベンゾイル化合物系核剤;株式会社ADEKA製のT-1287N)をそれぞれ0.5重量部ずつ添加し、混練して樹脂組成物9とした。
<樹脂組成物9の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物9の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物9の組成等とともに、比較例1と同様にして表2の比較例4の欄に示した。
(比較例5)
<樹脂組成物10の作製>
実施例1の<ポリエステル1の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件を調整して、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が、100:0のポリエステル10を作製した。ポリエステル10のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で25,000であった。このポリエステル10を、そのまま樹脂組成物10とした。
<樹脂組成物10の荷重たわみ温度の測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物10の荷重たわみ温度を測定し、測定結果を樹脂組成物10の組成等とともに、表3の比較例5の欄に示した。
(比較例6)
<樹脂組成物11の作製>
実施例1の<ポリエステル1の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件を調整して、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が、92:8のポリエステル11を作製した。ポリエステル11のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で1300,000であった。このポリエステル11を、そのまま樹脂組成物11とした。
<樹脂組成物11の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物11の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物11の組成等とともに、比較例5と同様にして表3の比較例6の欄に示した。
(比較例7)
<樹脂組成物12の作製>
実施例1の<ポリエステル1の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件を調整して、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が、87.6:12.4のポリエステル12を作製した。ポリエステル12のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で780,000であった。このポリエステル12を、そのまま樹脂組成物12とした。
<樹脂組成物12の荷重たわみ温度の測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物12の荷重たわみ温度を測定し、測定結果を樹脂組成物12の組成等とともに、表3の比較例7の欄に示した。
(比較例8)
<樹脂組成物13の作製>
実施例1の<ポリエステル13の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件を調整して、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が、86.4:14.6のポリエステル13を作製した。ポリエステル13のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で1,100,000であった。このポリエステル13を、そのまま樹脂組成物13とした。
<樹脂組成物13の荷重たわみ温度の測定>
実施例1と同様にして、樹脂組成物13の荷重たわみ温度を測定し、測定結果を樹脂組成物13の組成等とともに、表3の比較例8の欄に示した。
上述の実施例1〜5、比較例1〜4、比較例5〜8における樹脂組成物の組成、性状等を、それぞれ表1、表2、表3に示す。なお、以下の表における判定結果は、樹脂成形品原料として特に優れているものを○、そのままでは使用困難又は好ましくないものを×としている。また、n.d.は測定不能又は未測定であることを表す。
Figure 0005577764
Figure 0005577764
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実施例1〜5における樹脂組成物1〜7の荷重たわみ温度は、71〜86℃と65℃以上であり、通常想定される程度の高温使用環境では機械的強度を維持することができ、電気電子機器の筐体等汎用の樹脂成形品として多くの用途に利用でき、総合的な判定として好ましい樹脂組成物である。なお、実施例1〜5における樹脂組成物は、熱分解保持率が特に高く非常に好適な樹脂組成物である。また、樹脂組成物1〜5の熱分解保持率は、86%以上と80%より十分高く、射出成形などの成形加工工程における加熱に対しても、耐熱性を有しほとんど劣化せず、電気電子機器の筐体等汎用の樹脂成形品として多くの用途に利用できる。
実施例1〜5及び比較例1〜8における樹脂組成物1〜13の性状について具体的に説明する。
本発明に係る共重合樹脂組成物である実施例1〜5における樹脂組成物1〜5は、乳酸共重合体1〜5中の乳酸(LA)モノマーユニットの含有率が、50〜95モル%の範囲にあり、3ヒドロキシ酪酸(3HB)モノマーユニットと3ヒドロキシ吉草酸(3HV)モノマーユニットのモル比が96:4〜75:25の範囲内にある。そして、乳酸共重合体1〜5の重量平均分子量(MW)は、73,000〜719,000の範囲内にある。更に、樹脂組成物1〜5は、1.8MPaという比較的高荷重における荷重たわみ温度が71〜86℃と高く、成形体の機械的強度は通常想定される高温においても十分に保持できる。また、樹脂組成物1〜5は、熱分解保持率も86〜98%と高く、混練、ペレット化、成形時などの成形加工工程における加熱に対しても、ほとんど分子量低下を起こさず、成形時の変形やひけの影響の少ない成形品が得られる。
一方、比較例1、2における樹脂組成物6、7は、3HBモノマーユニット及び3HVモノマーユニットを含まず、荷重たわみ温度が56℃と低くなっている。樹脂組成物の荷重たわみ温度が65℃以下になると、成形品としての用途が限られ、特に、ある程度の耐熱性を求められる電気電子機器の筐体や、食品包装体としての用途には使用制限されることが多くなる。また、比較例3、4における樹脂組成物8、9は熱分解保持率が40〜56%と低く、比較例5〜8における樹脂組成物10〜13は、LAモノマーユニットの含有率が0モル%と低く、熱分解保持率が38〜40%と低くなっているか、測定困難であった。このため、樹脂組成物8〜13は、混練、ペレット化、成形時などの成形加工工程における加熱によって、分子量低下を起こしやすく、成形品の物性劣化が大きくなる恐れがある。
図1は、表3における比較例5〜8における樹脂組成物10〜13の関係を整理したものであり、乳酸モノマーユニット(LA)を含まない樹脂組成物中の吉草酸モノマーユニット(3HV)のモル分率(%)と、樹脂組成物の荷重たわみ温度との関係を表している。図1から判るように、3HB−3HV共重合体における荷重たわみ温度は、吉草酸モノマーユニット(3HV)のモル分率(%)とよく相関関係があることが判る。そして、3HVモル分率を25%以下とすることが好ましいことが判る。
(実施例6)
<ポリエステル14の作製>
バチルス属菌を用いて、ペプトン5.0g/l、イーストエキス5.0g/l、肉エキス5.0g/lを含む培地で16時間培養した培養液を、窒素源を制限した最少培地(グルコースを含む)にプロピオン酸を添加し、45℃で48時間培養することでポリエステルを含む培養菌体を得た。得られた培養菌体を凍結乾燥し、クロロホルムを添加して菌体内物質を抽出した。不溶分を濾別し、濾液にメタノールを加え、菌体抽出物を再析出させ、再び濾過し精製した菌体産生物を得た。この菌体産生物をアルカリ性の温水で処理して加水分解して分子量を下げ、ポリエステル14とした。ポリエステル14をNMR解析することによって、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が83:17のポリエステル(P−3HB−co−3HV)であることを確認した。
<乳酸共重合体14の作製>
次に、無水トルエン溶液中に、ポリエステル14を0.05g/l、乳酸0.95g/l、オクチル酸スズ0.1g/l加え、窒素雰囲気中にて130℃で24時間撹拌した後、更に130℃で24時間静置した。その後、真空雰囲気中に1時間保持し、室温に戻し、得られた生成物をクロロホルムに溶かし、メタノールとヘキサンを加えて析出物をろ過、回収した。この溶解、析出、ろ過を繰り返して精製し、最後に真空乾燥し精製物を得た。得られた精製物をNMR解析して、乳酸共重合体(Co−PLA)であることを確認し、これを乳酸共重合体14とした。乳酸共重合体14のL乳酸モノマーユニット(LLA)、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)、3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)は、95:4:1であった。また、乳酸共重合体14のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で171,000であった。
<樹脂組成物14の作製>
前記乳酸共重合体14を100重量部に対し熱安定剤1を0.5重量部、熱安定剤2を0.5重量部、加水分解防止剤を0.5重量部加えて、単軸混練押出機で180℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。次いで、作製したペレットを棚式の熱風乾燥機を使用して50℃で12時間乾燥し、樹脂組成物14とした。ここで、使用した熱安定剤1は、テトラエステル型ヒンダートフェノール化合物(ADEKA社製;AO−60)、熱安定剤2は、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(ADEKA社製;PEP−36)、加水分解防止剤は、カルボジイミド変性イソシアネート化合物(日清紡社製;カルボジライトLA−1)である。
<樹脂組成物14の荷重たわみ温度測定>
樹脂組成物14を、型締力50トンの電動式射出成形機を使用して、金型温度80℃、シリンダー温度180℃、射出速度20mm/s、射出圧力100MPa、冷却時間30secの設定で射出成形した。成形品を80℃で15分一次アニーリングし、60℃で12時間二次アニーリングし、荷重たわみ温度試験用の短冊試験片とした。作製した短冊試験片のサイズは、長さ130mm、幅3.2mm、高さ12.7mmである。荷重たわみ温度の試験は、JIS K 7191−2(1996)に従って行った。なお、支点間距離100mm、昇温速度2℃/min、曲げ応力は1.08MPaとした。樹脂組成物14の荷重たわみ温度は、82℃であった。
<樹脂組成物14の熱分解保持率測定>
ホットプレート上に樹脂組成物14を1g置き、200℃で10分間加熱した。加熱前と加熱後の樹脂組成物14について、それぞれGPC法による重量平均分子量(MW)を測定し、下記の式を用いて熱分解保持率(%)を算出した。
(熱分解保持率)={(加熱前のMW)−(加熱後のMW)}/(加熱前のMW)×100
樹脂組成物14の熱分解保持率は、97%であった。
以上の樹脂組成物14の組成、性状を纏めて表4の実施例6の欄に示した。なお、表4の共重合比は、乳酸共重合体14中の3HB、3HV、及びLAのモル比を表している。
(実施例7)
<ポリエステル15の作製>
実施例6の<ポリエステル14の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件及び得られた菌体産生物の加水分解条件を変更した以外は、実施例6と同様にして、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が92:8のポリエステル15を作製した。
<乳酸共重合体15、及び樹脂組成物15の作製>
実施例6の<乳酸共重合体14の作製>において、ポリエステル14を0.05g/l、L乳酸0.95g/l、オクチル酸スズ0.1g/lの添加に代えて、ポリエステル15を0.2g/l、L乳酸0.8g/l、オクチル酸スズ0.1g/lを添加した以外は実施例6と同様にして、精製物を得た。得られた精製物をNMR解析して、乳酸共重合体(Co−PLA)であることを確認し、これを乳酸共重合体15とした。乳酸共重合体15のL乳酸モノマーユニット(LLA)、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)、3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)は、81:18:1であった。また、乳酸共重合体2のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で454,000であった。実施例7の<樹脂組成物14の作製>と同様にして、乳酸共重合体15に熱安定剤及び加水分解防止剤を添加して樹脂組成物15を作製した。
<樹脂組成物15の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例6と同様にして、樹脂組成物15の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物15の組成等とともに、実施例6と同様にして表4の実施例7の欄に示した。
(実施例8)
<ポリエステル16の作製>
実施例6の<ポリエステル1の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件及び得られた菌体産生物の加水分解条件を変更した以外は、実施例6と同様にして、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が97:3のポリエステル16を作製した。
<乳酸共重合体16、樹脂組成物16の作製>
実施例6の<乳酸共重合体14の作製>において、ポリエステル14を0.05g/l、L乳酸0.95g/l、オクチル酸スズ0.1g/lの添加に代えて、ポリエステル16を0.3g/l、L乳酸0.7g/l、オクチル酸スズ0.1g/lを添加した以外は実施例6と同様にして、精製物を得た。得られた精製物をNMR解析して、乳酸共重合体(Co−PLA)であることを確認し、これを乳酸共重合体16とした。乳酸共重合体16のL乳酸モノマーユニット(LLA)、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)、3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)は、31:67:2であった。また、乳酸共重合体16のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で65,000であった。実施例7の<樹脂組成物14の作製>と同様にして、乳酸共重合体16に熱安定剤及び加水分解防止剤を添加して樹脂組成物16を作製した。
<樹脂組成物16の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例6と同様にして、樹脂組成物16の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物16の組成等とともに、実施例6と同様にして表1の実施例8の欄に示した。
(実施例9)
<ポリエステル17の作製>
実施例6の<ポリエステル14の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件及び得られた菌体産生物の加水分解条件を変更した以外は、実施例6と同様にして、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が85:15のポリエステル17を作製した。
<乳酸共重合体17、樹脂組成物17の作製>
実施例6の<乳酸共重合体14の作製>において、ポリエステル14を0.05g/l、L乳酸0.95g/l、オクチル酸スズ0.1g/lの添加に代えて、ポリエステル17を0.2g/l、L乳酸0.8g/l、オクチル酸スズ0.1g/lを添加した以外は実施例1と同様にして、精製物を得た。得られた精製物をNMR解析して、乳酸共重合体(Co−PLA)であることを確認し、これを乳酸共重合体17とした。乳酸共重合体17のL乳酸モノマーユニット(LLA)、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)、3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)は、80:17:3であった。また、乳酸共重合体17のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で719,000であった。実施例6の<樹脂組成物14の作製>と同様にして、乳酸共重合体17に熱安定剤及び加水分解防止剤を添加して樹脂組成物17を作製した。
<樹脂組成物17の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例6と同様にして、樹脂組成物17の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物17の組成等とともに、実施例6と同様にして表4の実施例9の欄に示した。
(実施例10)
<樹脂組成物18の作製>
実施例6の<乳酸共重合体14の作製>において、熱安定剤及び加水分解防止剤の添加とともに、乳酸共重合体14の100重量部に対して、結晶化核剤として、結晶化核剤1(タルク系核剤;日産化学株式会社製のPPA-Zn)、結晶化核剤2(フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤;日本タルク株式会社製のSG-2000)、結晶化核剤3(ベンゾイル化合物系核剤;株式会社ADEKA製のT-1287N)をそれぞれ0.5重量部ずつ添加した以外は、実施例6の<乳酸共重合体14の作製>と同様にして、樹脂組成物18を作製した。
<樹脂組成物18の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例6と同様にして、樹脂組成物18の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物18の組成等とともに、実施例6と同様にして表4の実施例10の欄に示した。
(比較例9)
<樹脂組成物19の調製と荷重たわみ温度測定>
実施例6の<樹脂組成物14の作製>における乳酸共重合体14に代えて、市販のポリL乳酸(三井化学株式会社製のレイシア H−100)を用いた以外は、実施例1の<乳酸共重合体1の作製>と同様にして樹脂組成物19を作製した。実施例6と同様にして、樹脂組成物19の荷重たわみ温度を測定し、測定結果を表5の比較例9の欄に、樹脂組成物19の組成等とともに示した。
(比較例10)
<樹脂組成物20の作製>
実施例6の<ポリエステル14の作製>において、バチルス属菌培地の培養条件を調整して、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)と3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)が92:8のポリエステル20を作製した。ポリエステル20のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で1,200,000であった。実施例6の<樹脂組成物14の作製>と同様にして、ポリエステル20に熱安定剤及び加水分解防止剤を添加して樹脂組成物20を作製した。
<樹脂組成物20の荷重たわみ温度、熱分解保持率の測定>
実施例6と同様にして、樹脂組成物20の荷重たわみ温度を測定し、測定結果を樹脂組成物20の組成等とともに、比較例6と同様にして表5の比較例10の欄に示した。
(比較例11)
<ポリエステル21の作製>
比較例8におけるポリエステル20をアルカリ性の温水により加水分解して分子量を低下させて、ポリエステル21を作製した。
<乳酸共重合体21、樹脂組成物21の作製>
実施例6の<乳酸共重合体14の作製>において、ポリエステル14を0.05g/l、L乳酸0.95g/l、オクチル酸スズ0.1g/lの添加に代えて、ポリエステル21を0.8g/l、L乳酸0.2g/l、オクチル酸スズ0.1g/lを添加した以外は実施例6と同様にして、精製物を得た。得られた精製物をNMR解析して、乳酸共重合体(Co−PLA)であることを確認し、これを乳酸共重合体21とした。乳酸共重合体21のL乳酸モノマーユニット(LLA)、3ヒドロキシ酪酸モノマーユニット(3HB)、3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニット(3HV)の含有比(モル比)は、20:74:6であった。また、乳酸共重合体21のGPC法による重量平均分子量(MW)は、標準ポリスチレン換算値で56,000であった。乳酸共重合体21には、熱安定化剤、結晶化核剤等の添加剤を加えず、実施例6の<樹脂組成物14の作製>に倣ってそのまま混練、ペレット化、乾燥をして樹脂組成物21とした。
<樹脂組成物21の荷重たわみ温度、熱分解保持率測定>
実施例7と同様にして、樹脂組成物21の荷重たわみ温度、及び熱分解保持率を測定し、測定結果を樹脂組成物21の組成等とともに、比較例6と同様にして表5の比較例11の欄に示した。
(比較例12)
<樹脂組成物22の作製>
実施例6における乳酸共重合体14に代えて、比較例10において調製した乳酸共重合体21とした以外、実施例6の<樹脂組成物14の作製>と同様にして、樹脂組成物22を作製した。
<樹脂組成物22の荷重たわみ温度測定>
実施例6と同様にして、樹脂組成物22の荷重たわみ温度を測定し、測定結果を樹脂組成物22の組成等とともに、測定結果を表5の比較例12の欄に示した。
上述の実施例6〜10、比較例9〜12における樹脂組成物14〜22の組成、性状を、それぞれ表4、表5に示す。なお、以下の表における判定結果は、樹脂成形品原料として特に優れているものを○、そのままでは使用困難なものを×としている。また、n.d.は測定不能又は未測定であることを表す。
Figure 0005577764
Figure 0005577764
実施例6〜10における樹脂組成物14〜18の荷重たわみ温度は、71〜88℃と65℃以上であり、通常想定される程度の高温使用環境では機械的強度を維持することができ、電気電子機器の筐体等汎用の樹脂成形品として多くの用途に利用できる。また、樹脂組成物14〜18の熱分解保持率は、82%以上と通常の成形加工工程において必要とされる80%より十分高く、射出成形などの成形加工工程における加熱に対しても、耐熱性を有しほとんど劣化せず、樹脂成形品として多くの用途に利用できる好適な樹脂組成物である。
実施例6〜10及び比較例9〜12における樹脂組成物14〜22の性状について具体的に説明する。
本発明に係る共重合樹脂組成物である実施例6〜10における樹脂組成物14〜18は、乳酸共重合体14〜18中の乳酸(LA)モノマーユニットの含有率が、30〜95モル%の範囲内にある。そして、乳酸共重合体14〜18の重量平均分子量(MW)は、65,000〜719,000の範囲内にある。更に、樹脂組成物14〜18は、1.8MPaという比較的高荷重における荷重たわみ温度が71〜88℃と高く、成形体の機械的強度は通常の汎用成形品に想定される高温環境においても十分に保持できる。また、熱分解保持率も82〜98%と高く、混練、ペレット化、成形時などの成形加工工程における加熱に対しても、ほとんど分子量低下を起こさず、成形時の物性変化、変形やひけの影響の少ない成形品が得られる。なお、実施例6と実施例10を比較すると、結晶化核剤の有無の違いがあるが、荷重たわみ温度に差がなかった。これは、荷重たわみ温度試験用の試験片の作製において、アニーリングを行うことで、実施例6においても結晶化が十分進んだためと考えられる。実施例としては示していないが、荷重たわみ温度試験用の試験片の作製において、アニーリングを行わなければ、実施例6よりも実施例10の荷重たわみ温度が高い結果が出ると考えられる。
一方、比較例9における樹脂組成物19は、ポリ乳酸樹脂であるが、従来から言われているように、十分アニーリングをしても荷重たわみ温度が56℃と低い値であった。また、比較例11、12に示すように、3HB−3HV共重合体(実施例2)、LAモノマーユニット含有率20%、及び35%の乳酸共重合体は、それぞれ熱分解保持率が48%、56%と低く成形用樹脂としては使用できないものであった。更に、比較例10、12に示すように、3HB−3HV共重合体、及びLAモノマーユニット含有率20%の乳酸共重合体は、2種の熱安定剤及び加水分解防止剤を添加しても、熱分解保持率が十分向上せず、成形用樹脂としては使用できないものであった。
なお、比較例3に示すように、LAモノマーユニット含有率35%の乳酸共重合体は、熱安定剤及び加水分解防止剤を添加していないと、熱分解保持率が56%と低めであったが、実施例8に示すように、LAモノマーユニット含有率31%の乳酸共重合体は、熱安定剤及び加水分解防止剤を添加することにより熱分解保持率が82%であり、成形用樹脂として優れたものとなっている。
本発明の共重合体樹脂組成物は、各種の汎用樹脂成形品として利用することができる。特に、複写機やプリンター等の画像出力機器や家電製品等の電気・電子機器に使用される筐体等の樹脂部品に好適に利用することができる。電気電子機器や自動車部品等の使用、保存環境は様々であるが、家庭やオフィス環境で使用される機器は、一般的に60℃程度の使用、保存環境を保証することが多い。本発明の共重合体樹脂組成物からなる成形品は、荷重たわみ温度が60℃以上、好ましくは65℃以上であり、電気電子機器や自動車部品等に組み込まれ、実際に使用される環境でも変形することなく使用できる。
例えば、図2の斜視図に示すような画像形成装置10の筐体11、前扉12、上面扉13、操作パネル14、排紙トレイ15、給紙トレイ16を始め、図示されていない画像形成装置内部の各種の樹脂製品などとして好適に使用できる。
また、本発明の共重合体樹脂組成物は、原料がバイオマス材料から得られ、生分解性を有するので、環境問題、資源問題の観点からも優れた製品である。
10:画像形成装置
11:筐体
12:前扉
13:上面扉
14:操作パネル
15:排紙トレイ
16:給紙トレイ
特開2006−335909号公報 特開2007−056247号公報 特開2007−231034号公報 特開2005−023260号公報 特開2007−077232号公報 特開2006−274182号公報 特許第3609543号公報 特許第3599533号公報 国際公開第02/006400号パンフレット

Claims (12)

  1. 下記化学式[1]、[2]で表されるモノマーユニットの共重合体ブロック、及び下記化学式[3]で表されるモノマーユニットの重合体ブロックを有し、前記化学式[3]で表されるモノマーユニットの含有率が50モル%以上95モル%以下で、重量平均分子量が20,000以上1,000,000以下のブロック共重合体である乳酸共重合体を含むことを特徴とする共重合樹脂組成物。
    Figure 0005577764
    Figure 0005577764
    Figure 0005577764
  2. 下記化学式[1]、[2]で表されるモノマーユニットの共重合体ブロック、及び下記化学式[3]で表されるモノマーユニットの重合体ブロックを有し、前記化学式[3]で表されるモノマーユニットの含有率が50モル%以上95モル%以下で、重量平均分子量が20,000以上1,000,000以下のブロック共重合体である乳酸共重合体、
    並びに熱安定剤及び/又は加水分解防止剤を含むことを特徴とする共重合樹脂組成物。
    Figure 0005577764
    Figure 0005577764
    Figure 0005577764
  3. 前記熱安定剤は、フェノール系酸化防止剤、及びホスファイト系酸化防止剤の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項2に記載の共重合樹脂組成物。
  4. 前記乳酸共重合体における、前記化学式[1]で表されるモノマーユニットと前記化学式[2]で表されるモノマーユニットのモル比が、99:1〜75:25の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の共重合樹脂組成物。
  5. 前記乳酸共重合体の熱分解保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の共重合樹脂組成物。
  6. 前記化学式[3]で表されるモノマーユニットが、L乳酸モノマーユニット、D乳酸モノマーユニットのいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の共重合樹脂組成物。
  7. 結晶化核剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の共重合樹脂組成物。
  8. 前記結晶化核剤が、タルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系核剤より選択される一つ以上からなることを特徴とする請求項7に記載の共重合樹脂組成物。
  9. 請求項7又は8に記載の共重合樹脂組成物を、金型温度を50℃以上90℃以下として射出成形法で成形したことを特徴とする成形品。
  10. ヒドロキシ酪酸モノマーユニットと3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニットを含むポリエステルを微生物発酵法により産生するポリエステル産生工程と、
    前記ポリエステルに、乳酸をモノマーユニットの比率として30モル%以上95モル%以下の範囲で縮合して、重量平均分子量が20,000以上1,000,000以下の乳酸共重合体を製造する乳酸共重合体製造工程と、
    前記乳酸共重合体に熱安定剤及び/又は加水分解防止剤を添加する添加剤添加工程と、
    を有することを特徴とする共重合樹脂組成物の製造方法。
  11. 前記熱安定剤は、フェノール系酸化防止剤、及びホスファイト系酸化防止剤の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項10に記載の共重合樹脂組成物の製造方法。
  12. 前記ポリエステルにおける3ヒドロキシ酪酸モノマーユニットと3ヒドロキシ吉草酸モノマーユニットのモル比が、99:1〜75:25の範囲であることを特徴とする請求項10又は11に記載の共重合樹脂組成物の製造方法。
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