JP5556010B2 - 熱可塑性樹脂の成形方法及び成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂の成形方法及び成形品 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂の成形方法及び成形品に関する。
複写機やレーザープリンターなど電子写真機器やインクジェット技術を用いた画像出力機器に使用される部品や、家電製品などの電気電子機器や自動車の内装部品には樹脂部品が数多く利用されているが、石油から作られる樹脂部品は、石油枯渇に対する問題や、非生分解性プラスチックや二酸化炭素排出量の低減問題のために、植物などを原材料にしたバイオマス資源由来樹脂に変換する技術が注目されている。
バイオマス資源とは、植物や動物などの生物を資源にしているという意味であり、木材やトウモロコシ、大豆や動物から取れる油脂、生ゴミなどを示すものである。バイオマス資源由来樹脂は、これらのバイオマス資源を原料に作られており、一般には、生分解性樹脂であることが多い。生分解性樹脂とは、自然環境下のある温度・湿度条件において、微生物により分解される樹脂である。なお、生分解性樹脂としては、バイオマス資源由来樹脂ではなく、石油由来樹脂であっても生分解するものもあるが、バイオマス資源を原料に作られるものが多い。バイオマス資源由来の生分解性樹脂には、ジャガイモ、サトウキビ、トウモロコシなどの糖質を醗酵させた乳酸をモノマーとし、化学重合により作られるポリ乳酸:PLA(PolyLactic Acid)や、澱粉を主成分としたエステル化澱粉、微生物が体内に生産する微生物産生ポリエステル樹脂であるポリヒドロキシアルカノエート(PHA:PolyHydoroxy Alkanoate)、醗酵法で得られる1,3−プロパンジオールと、石油由来のテレフタル酸を原料とするポリトリメチレンテレフタレート(PTT:Poly Trimethylene Terephtalate)などが知られている。
ブタンジオールとコハク酸を原料とするPBS(Poly Butylene Succinate)は、現在は石油由来原料から製造されているが、将来はバイオマス由来樹脂へ移行するような研究がなされており、主原料の一つであるコハク酸を植物由来で製造することを目指している。
上記バイオマス資源由来樹脂のうち、融点が180℃前後と高く、成形加工性に優れ、かつ市場への供給量も安定しているポリ乳酸を応用した製品が一部で実用化されている。しかし、ポリ乳酸はガラス転移点が56℃と低く、それに伴い熱変形温度は55℃前後と耐熱性が低い。また、ポリ乳酸は結晶性樹脂であることから、耐衝撃性が低くアイゾット衝撃強度では2kJ/m以下であるために、電気電子機器製品のような耐久部材への採用は困難であった。その対策のひとつとして、石油系樹脂であるポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイなどによって物性向上を図っている。しかし、物性を確保するためには石油系樹脂の使用割合が多くなり、バイオマス資源由来樹脂の割合を50%前後しか含むことができず、地球温暖化対策などの環境負荷削減のための石油使用量削減や二酸化炭素排出量削減の効果は半減してしまう。
一方、ポリ乳酸は結晶性樹脂であるため結晶化を促進させて耐熱性を向上させる技術が知られている。結晶化法としては、成形後に再加熱(アニール)して結晶化度を高める方法と、結晶化核剤を添加する方法がある。成形後にアニールする手法では、成形工程が増えてしまうデメリットに加え、結晶化に伴う変形を防ぐためのアニール用の金型等を設置する必要があり、コストと生産性に課題がある。
結晶化核剤を添加する方法は、結晶化度、結晶化速度を向上させる結晶化核剤の開発が進められているが、現状では核剤を添加しても2分程度の結晶化時間を必要とし、かつ100〜110度前後の温度で結晶化する必要があるため、一般的な水用金型温度調節機を用いて成形することができず、高温にするための環境負荷も増加してしまう。このため、ポリ乳酸樹脂の成形においては、従来の石油系樹脂の射出成形品の経済的目安である、サイクルタイム60秒以下、水用金型温度調節機の使用可能な金型温度90度以下を達成することは困難であり、生産性が非常に低くなってしまうという問題があった。
特許文献1においては、生分解性ポリエステルの中でも特に結晶化の遅い式[−CHR−CH−CO−O−](式中、RはCnH2n+1で表されるアルキル基で、n=1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位からなる脂肪族ポリエステル系重合体(P3HA)の欠点である結晶化の遅さを改善し、射出成形、フィルム成形、ブロー成形、繊維の紡糸、押出発泡、ビーズ発泡などの加工における加工性、加工速度を改善した生分解性ポリエステル系樹脂組成物を提案している。この生分解性ポリエステル系樹脂組成物は、微生物から生産されるP3HAと、ポリビニルアルコール(PVA)、キチン及びキトサンから選ばれる1種以上からなる結晶化核剤とを混合したものであり、PVA、キチン又はキトサンは好適なP3HA用の結晶化核剤であるとしている。なお、脂肪族ポリエステル系重合体として、ポリ3−ヒドロキシブチレート(P3HB)と(3−ヒドロキシブチレート(3HB))/(3−ヒドロキシヘキサノエート(3HHx))の共重合体が開示されている。
特許文献2においては、ポリ乳酸系樹脂とポリヒドロキシアルカノエートコポリマーとカルボジイミド化合物からなる光学用ポリ乳酸樹脂組成物を提案している。この光学用ポリ乳酸樹脂組成物は、透明性に優れ、引張特性が向上しており、ポリ乳酸系樹脂を99.9〜80重量部およびポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを0.1〜20重量部含有するものである。
特許文献3においては、生分解性樹脂である乳酸系重合体の生分解性を増大させ、かつ成形性を改善することを目的として、乳酸系重合体とヒドロキシアルカン酸系重合体とを含有させてなる脂肪族ポリエステル系ポリマーブレンド体が提案されている。この脂肪族ポリエステル系ポリマーブレンド体は生分解性が大きく、成形性が改善され、しかも、成形品の特性が優れているとしている。
特許文献4においては、ポリ乳酸とポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを含有し、結晶性無機充填剤成分として結晶性SiOを含む耐熱性樹脂組成物が提案されている。この耐熱性樹脂組成物は、(a1)ポリ乳酸75〜25重量%、及び、(a2)ポリ乳酸以外の融点が100〜250℃の脂肪族ポリエステル25〜75重量%を含有する高分子組成物成分(A)に対し、結晶性SiOを10重量%以上含有する結晶性無機充填剤成分(B)を、高分子組成物成分(A)100重量部に対して0.1〜70重量部含んでいる。この耐熱性樹脂組成物は、金型温度を、ガラス転移温度(Tg)以下、又は室温近傍(0〜60℃)として、射出成形可能であり、成形加工における結晶化速度が早く、結晶化度も充分高く、したがって、優れた耐熱性を有し、使用時における高分子成分の劣化が起こり難く、脆化し難い性質を有するとしている。具体的実施例においては、ポリブチレンサクシネートを用いていた樹脂が開示されており、脂肪族ポリエステルの製造方法として、脱水重縮合法、もしくは環状二量体を溶融重合する間接重合法、環状二量体を触媒存在下で溶融重合する開環重合法などの化学的重合処理法が示されている。
特開2007−077232号公報 特開2006−274182号公報 特許第3609543号公報 特許第3599533号公報
バイオマス資源を原料にした生分解性樹脂は、上述のように多くの提案がなされている。しかし、特許文献1に記載の脂肪族ポリエステル系重合体においては、具体的に開示されている脂肪族ポリエステル系重合体の金型成形において、結晶化温度が110℃と高く、金型温度を水冷式とするための90℃以下とすることが困難である。また、成形時間40秒でも非晶質部分が残っており、結晶化が十分に進行し難いと考えられる。
特許文献2に開示されているポリ乳酸樹脂組成物は、光学用の透明材料なので、非晶質の状態で固化させており、結晶化はしていないので、電器電子機器の筐体などに用いるには耐熱性が十分でないと考えられる。開示されている構成から推測すれば、ポリ乳酸のガラス転移点前後である55℃〜60℃程度の耐熱性であると推測される。
特許文献3に開示されている脂肪族ポリエステル系ポリマーブレンド体は、具体的構成として、主鎖にポリエチレングリコール鎖を含む脂肪族ポリエステルと、ポリ3−ヒドロキシ酪酸(P3HB)とのポリマーブレンド体である。しかし、結晶化核剤を含んでおらず、耐熱性の向上、成形温度の低下、成形時間の短縮に課題が残るものと考えられる。
特許文献4に提案されている耐熱性樹脂組成物においては、さらなる耐熱性の向上が望まれる。また、重合において化学的処理によらず、微生物処理による樹脂製造方法の検討が待たれる。
本発明の目的は、上記課題を踏まえ、石油系樹脂と同等の成形性、生産性を有し、耐熱性の優れたバイオマス系の熱可塑性樹脂の成形方法、及び前記成形方法で成形した耐熱性の優れた成形品を提供することである。
本発明は、下記化学式(1)、及び化学式(2)で表される構成単位を含むポリヒドロキシアルカノエートからなる樹脂(A)と、ポリ乳酸樹脂(B)と、結晶化核剤(C)を含有し、前記樹脂(A)10〜90重量部、ポリ乳酸樹脂(B)90〜10重量部を含む樹脂混合物100重量部に対し、結晶化核剤(C)を0.1重量部から5重量部含む樹脂組成物(但し、可塑剤、有機核剤、及び無機核剤の全てを含有するものを除く)を、金型温度40〜90℃、冷却時間10〜60秒で成形することを特徴とする熱可塑性樹脂の成形方法である。
Figure 0005556010
Figure 0005556010
但し、RはC2n+1(n=1〜14)である。
本発明の熱可塑性樹脂の成形方法によれば、石油系樹脂に較べて生産性を損なうことのない金型温度と冷却時間で、バイオマス資源を利用した熱可塑性樹脂を結晶化させることができるため、成形品の耐熱性を向上させることができる。また、バイオマス資源の利用度の高い熱可塑性樹脂を使用でき、化石資源枯渇問題、二酸化炭素排出削減問題に対応した環境負荷を低減した熱可塑性樹脂の成形方法が提供できる。
好ましい本発明は、前記ポリヒドロキシアルカノエートが、前記化学式(1)、及び化学式(2)で表される構成単位のブロック共重合体であることを特徴とする前記熱可塑性樹脂の成形方法である。
ポリヒドロキシアルカノエート中の前記化学式(1)、及び化学式(2)で表される構成単位がポリマーブロックとなるような、ブロックコポリマーを原料樹脂として利用することにより、成形品の成形性、耐熱性をより向上させることができる。
好ましい本発明は、前記化学式(2)におけるnは、1である、すなわち、前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ3−ヒドロキシブチレート(P3HB)のホモポリマーであることを特徴とする前記熱可塑性樹脂の成形方法である。
ポリヒドロキシアルカノエートを、ポリ3−ヒドロキシブチレート(P3HB)のホモポリマーとすれば、原料調達や熱可塑性樹脂の製造工程上のメリットが活かせる。
好ましい本発明は、前記化学式(2)におけるnは、2又は3である、すなわち、前記ポリヒドロキシアルカノエートが、3−ヒドロキシブチレート(3HB)と3−ヒドロキシバリレート(3HV)の共重合体、又は3−ヒドロキシブチレート(3HB)と3−ヒドロキシヘキサノエート(3HHx)の共重合体であることを特徴とする前記熱可塑性樹脂の成形方法である。
原料として、3−ヒドロキシブチレート(P3HB)と、3−ヒドロキシバリレート(3HV)、又は3−ヒドロキシブチレート(3HB)と3−ヒドロキシヘキサノエート(3HHx)を利用することにより、耐熱性が高く、かつ生産性を損なわない、熱可塑性樹脂の成形品を得ることができる。
好ましい本発明は、前記ポリ乳酸樹脂は、少なくともポリL乳酸、ポリD乳酸、ポリL乳酸とポリD乳酸から成るステレオコンプレックスのうちいずれかひとつを含んでいることを特徴とする前記熱可塑性樹脂の成形方法である。
ポリL乳酸、ポリD乳酸、ポリL乳酸とポリD乳酸から成るステレオコンプレックスのような微生物の生産するポリ乳酸を利用することにより、バイオマス資源利用度の高い熱可塑性樹脂から耐熱性が高く、生産性の優れたバイオマス資源利用熱可塑性樹脂の成形品を得ることができる。
好ましい本発明は、前記結晶化核剤は、タルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系からなる核剤より選択される一つ以上を含んでいることを特徴とする前記熱可塑性樹脂の成形方法である。
上記の結晶化核剤を用いることにより、バイオマス資源利用度の高い熱可塑性樹脂から耐熱性が高い成形品を、生産性を損なわないで成形することができる。
本発明は、上記化学式(1)、及び化学式(2)で表される構成単位を含むポリヒドロキシアルカノエートからなる樹脂(A)と、ポリ乳酸樹脂(B)と、結晶化核剤(C)を含有し、前記樹脂(A)10〜90重量部、ポリ乳酸樹脂(B)90〜10重量部を含む樹脂混合物100重量部に対し、結晶化核剤(C)を0.1重量部から5重量部含む樹脂組成物(但し、可塑剤、有機核剤、及び無機核剤の全てを含有するものを除く)から成形された成形品であり、荷重たわみ温度が100℃以上であることを特徴とする成形品である。
本発明は、前記熱可塑性樹脂の成形方法により提供することができる。
本発明の成形品は、耐熱性が高く、バイオマス資源利用度の高い熱可塑性樹脂からなることができる。
好ましい本発明は、電気・電子機器に備えられていることを特徴とする前記成形品である。
本発明の成形品は、複写機、プリンター等の画像出力機器その他の電気電子機器の部材として使用されることで、耐熱性、生産性などの特徴が十分に活かされる。
本発明によれば、、石油系樹脂と同等の成形性、生産性を有し、耐熱性の優れたバイオマス系の熱可塑性樹脂の成形方法、及び前記成形方法で成形した耐熱性の優れた成形品を提供することができる。
[熱可塑性樹脂の製造]
(ポリヒドロキシアルカノエート)
ポリ3ヒドロキシブチレート(P3HB)は、グルコースを炭素源とするLB培地、MR培地等でシュードモナス属菌、ラルストニア属菌、バチルス属菌、コリネバクテリウム属菌により生産すればよい。
ポリヒドロキシアルカノエート共重合体であるヒドロキシブチレート(P3HB)共重合体を生産するには、上記P3HB生産培地に加えて、目的とするもう一方のヒドロキシアルカノエートに対応する炭素数を持つ有機酸を培養基質として用いる。例えば、3ヒドロキシブチレートと3ヒドロキシバリレートの共重合体である3ヒドロキシブチレート−3ヒドロキシバリレート共重合体(P(3HB−Co−3HV))生産の場合は、培養基質としてプロピオン酸(Cカルボン酸)を付加すればよい。P(3HB−Co−3HV)は、バチルス属菌、ラルストニア属菌、シュードモナス属菌等の生産菌を用いて、培地成分中の窒素やリン酸を制限した培養法により、菌体増殖過程とポリエステル生産過程の2段階で生産される。また、バチルス属由来のPHA合成酵素遺伝子を有する微生物に対し、C以上の偶数の脂肪酸を与えることによって、3ヒドロキシブチレート−3ヒドロキシヘキサノエート共重合体P(3HB−Co−3HHx)を合成することが出来る。
なお、ポリヒドロキシアルカノエートの構成単位である化学式(2)におけるアルキル基Rは、n=2〜14であるが、耐熱性向上効果や生産の容易さからは、n=2〜3、特に生産の容易さからはn=2とすることが好ましい。
本発明における、ポリヒドロキシアルカノエートからなる熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量Mwは、GPC分析による標準ポリスチレン換算値で、好ましくは5〜500万、より好ましくは10〜200万である。上記の範囲であれば、微生物による生産が可能であり、成形性にも問題はない。
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸(樹脂(B))は、従来から知られているポリ乳酸生産法により、ポリL乳酸、ポリD乳酸、ポリL乳酸sポリD乳酸からなるステレオコンプレックスを作製すればよい。ポリ乳酸は、市販品も多く知られているので、これらを利用してもよい。ポリ乳酸の重量平均分子量Mwは、GPC分析による標準ポリスチレン換算値で、好ましくは5〜50万、より好ましくは10〜25万である。
(結晶化核剤)
結晶化核剤は、ポリ乳酸等のバイオマス資源由来の熱可塑性樹脂に用いられる結晶化核剤であれば、どのようなものでもよい。例えば、タルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系からなる核剤などが好ましく用いられる。その他公知の結晶化核剤、例えば乳酸塩、安息香酸塩、シリカ、リン酸エステル塩系などを用いても問題は無い。
(添加剤)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂には、相溶化剤、可塑化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、加水分解抑制剤等の各種添加剤を適宜配合することもできる。可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。相溶化剤は、熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸の相溶化剤として機能するものであれば特に制限はない。相溶化剤としては、無機充填剤、グリシジル化合物、酸無水物をグラフト若しくは共重合した高分子化合物、及び有機金属化合物が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いてもよい。加水分解抑制剤としては公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、ポリカルボジイミド樹脂などが挙げられる。
(熱可塑性樹脂の混練)
上記のポリヒドロキシアルカノエート(熱可塑性樹脂(A))と、ポリ乳酸(樹脂(B))と、結晶化核剤(C)と、必要に応じてその他の添加剤とを所定の割合で、2軸混練押出機などで混合混練し、ペレット状にすれば、本発明に使用する熱可塑性樹脂となる。2軸混練押出機は、通常の石油系樹脂用の押出機を使用すればよく、例えば、180度程度の混練温度で混練し、ペレット化すればよい。樹脂の混合割合は、熱可塑性樹脂(A)10〜90重量部、ポリ乳酸(樹脂(B))90〜10重量部の範囲とする。特に耐熱性が必要な成形品を製造する場合は、熱可塑性樹脂(A)と樹脂(B)の重量比率を90:10〜30:70とすることが望ましい。また、熱可塑性樹脂(A)と樹脂(B)を含む樹脂混合物100重量部に対し、結晶化核剤(C)を0.1重量部から5重量部添加する。ポリ乳酸の混合割合が90重量部を超えると、耐熱性が十分でなくなったり、成形時の成形温度上昇や成型時間の延長など成形性が好ましくなくなる。
[熱可塑性樹脂の成形]
熱可塑性樹脂のペレットを通常の石油系樹脂用の射出成形機で、石油系樹脂と同様にして射出成形すれば、本発明の成形品が製造できる。成形における金型温度は、水冷却用金型を利用しやすい温度である40〜90℃とし、冷却時間は、通常の成形品では、10〜60秒とすればよい。本発明における熱可塑性樹脂の成形法は、射出成形法のみに制限されるものではなく、例えば、プレス成形、押出成形、発泡成形、中空成形、その他のいずれの成形法であっても問題はない。なお、成形時に前記の添加剤を使用してもよい。
[実施例1]
(熱可塑性樹脂(A1)の作製)
(P(3HB−Co−3HV)の作製)
バチルス属菌等を用い、ペプトン5.0g/L、イーストエキス5.0g/L、肉エキス5.0g/Lを含む培地(pH6.95)で16時間培養した培養液を、窒素源を制限した最少培地(グルコースを含む)にプロピオン酸を添加し、45℃で48時間培養し、湿菌体を得た。得られた湿菌体を凍結乾燥し、乾燥菌体量の80倍量のクロロホルムを添加し、80℃で菌体内物質を抽出した。不溶分をろ別し、ろ液にメタノールを加えて菌体抽出物を再析出させ、析出物をろ過し精製した。精製物を重クロロホルムに溶解し、NMR解析によって、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートとの共重合体(P(3HB−Co−3HV))であることを確認した。得られた(P(3HB−Co−3HV))の重量平均分子量(Mw)は1,200,000であった。菌体中におけるポリマー含有量は、30〜50wt%であった。得られたP(3HB−Co−3HV)を熱可塑性樹脂(A1)とした。
なお、最少培地組成は、Na2HPO4・12H2O 9.0g/L、KH2PO4 1.5g/L、NH4Cl 0.5g/L、MgSO4・7H2O 0.2g/L、トレースエレメント 1.0ml/Lである。トレースエレメントはFeCl3 9.7g/L、CaCl2 7.8g/L、CoCl2・6H2O 0.218g/L、CuSO4・5H2O 0.156g/L、NiCl3・6H2O 0.118g/L、CrCl3・6H2O 0.105g/Lを0.1M HClに溶解した液体である。
(熱可塑性樹脂ペレット(P1)の作製)
前記熱可塑性樹脂(A1)30重量部と重量平均分子量(Mw)150,000のポリ乳酸(熱可塑性樹脂(B))70重量部とを合わせて100重量部に対して、3種の結晶化核剤(C1)、(C2)、(C3)を、それぞれ0.5重量部ずつ添加し、ドライブレンドした後に、2軸混練押出機を用いて、混練温度180℃で溶融混練を行い、3mm角程度の熱可塑性樹脂ペレット(P1)を得た。
ここで、熱可塑性樹脂(B)にはポリL乳酸樹脂(三井化学株式会社製のレイシアH-100)を用い、結晶化核剤(C1)には、フェニルホスホン酸亜鉛塩(CPOZn)を、結晶化核剤(C2)には、平均粒径1.0μmの含水珪酸マグネシウム((OH)Mg12Si1640、又は(OH)Mg(Si)を、結晶化核剤(C3)には、オクタンジカルボン酸−ジベンゾイルヒドラジド(C2430)を用いた。
(熱可塑性樹脂の成形)
作製した熱可塑性樹脂ペレット(P1)を、棚式の熱風乾燥機を使用して50℃で12時間乾燥した後、型締力50トンの電動式射出成形機を使用して、シリンダー温度180℃、射出速度20mm/s、射出圧力100MPa、金型温度は60℃、冷却時間40secの設定で、荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)を作製した。作製した成形品のサイズは、長さ130mm、幅3.2mm、高さ12.7mmである。
(成形品の荷重たわみ温度試験)
作製した成形品の荷重たわみ温度試験は、JIS K 7191に準拠した荷重たわみ温度試験を行った。なお、支点間距離100mm、昇温速度2℃/min、曲げ応力0.45MPaとした。測定結果を、成形条件等とともに表1に示した。
Figure 0005556010
[実施例2]
(熱可塑性樹脂(A2)の作製)
バチルス属菌等を用い、ペプトン5.0g/L、イーストエキス5.0g/L、肉エキス5.0g/Lを含む培地(pH6.95)で16時間培養した培養液を、窒素源を制限した実施例1と同じ最少培地(グルコースを含む)にC以上の偶数の脂肪酸を添加し、45℃で48時間培養し、湿菌体を得た。得られた湿菌体を凍結乾燥し、乾燥菌体量の80倍量のクロロホルムを添加し、80℃で菌体内物質を抽出した。不溶分をろ別し、ろ液にメタノールを加えて菌体抽出物を再析出させ、析出物をろ過し精製した。精製物を重クロロホルムに溶解し、NMR解析によって、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートとの共重合体(P(3HB−Co−3HHx))であることを確認した。得られた(P(3HB−Co−3HHx))の重量平均分子量(Mw)は1,600,000であった。菌体中におけるポリマー含有量は、30〜50wt%であった。得られたP(3HB−Co−3HHx)を熱可塑性樹脂(A2)とした。
(熱可塑性樹脂ペレット(P2)の作製)
前記熱可塑性樹脂(A2)30重量部と、実施例1で用いたポリ乳酸(樹脂(B))70重量部とを合わせて100重量部に対して、実施例1で用いた3種の結晶化核剤(C1)、(C2)、(C3)を、それぞれ0.5重量部ずつ添加し、ドライブレンドした後に、2軸混練押出機を用いて、混練温度180℃で溶融混練を行い、3mm角程度の熱可塑性樹脂ペレット(P2)を得た。
(熱可塑性樹脂の成形)
作製した熱可塑性樹脂ペレット(P2)を用いて、実施例1と同様の方法で荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)を作製した。
(成形品の荷重たわみ温度試験)
実施例1と同様にして、得られた荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)の荷重たわみ温度試験を行い、測定結果を、成形条件等とともに表1に示した。
[実施例3]
(熱可塑性樹脂(A3)の作製)
バチルス属菌等を用い、ペプトン5.0g/L、イーストエキス5.0g/L、肉エキス5.0g/Lを含む培地(pH6.95)で16時間培養した培養液を、窒素源を制限した実施例1と同じ最少培地(グルコースを含む)で、45℃で48時間培養し、湿菌体を得た。得られた湿菌体を凍結乾燥し、乾燥菌体量の80倍量のクロロホルムを添加し、80℃で菌体内物質を抽出した。不溶分をろ別し、ろ液にメタノールを加えて菌体抽出物を再析出させ、析出物をろ過し精製した。精製物を重クロロホルムに溶解し、NMR解析によって、P(3HB)ホモポリマーであることを確認した。得られた(P3HB)の重量平均分子量(Mw)は800,000であった。菌体中におけるポリマー含有量は、30〜70wt%であった。得られたP(3HB)ホモポリマーを熱可塑性樹脂(A3)とした。
(熱可塑性樹脂ペレット(P3)の作製)
前記熱可塑性樹脂(A2)30重量部と、実施例1で用いたポリ乳酸(熱可塑性樹脂(B))70重量部とを合わせて100重量部に対して、実施例1で用いた3種の結晶化核剤(C1)、(C2)、(C3)を、それぞれ0.5重量部ずつ添加し、ドライブレンドした後に、2軸混練押出機を用いて、混練温度180℃で溶融混練を行い、3mm角程度の熱可塑性樹脂ペレット(P3)を得た。
(熱可塑性樹脂の成形)
作製した熱可塑性樹脂ペレット(P3)を用いて、実施例1と同様の方法で荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)を作製した。
(成形品の荷重たわみ温度試験)
得られた荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)の荷重たわみ温度試験を、実施例1と同様にして行い、測定結果を、成形条件等とともに表1に示した。
[実施例4]
(熱可塑性樹脂ペレット(P4)の作製)
前記熱可塑性樹脂(A1)10重量部と、実施例1で用いたポリ乳酸(熱可塑性樹脂(B))90重量部とを合わせて100重量部に対して、実施例1で用いた3種の結晶化核剤(C1)、(C2)、(C3)を、それぞれ0.5重量部ずつ添加し、ドライブレンドした後に、2軸混練押出機を用いて、混練温度180℃で溶融混練を行い、3mm角程度の熱可塑性樹脂ペレット(P4)を得た。
(熱可塑性樹脂の成形)
作製した熱可塑性樹脂ペレット(P4)を用いて、実施例1と同様の方法で荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)を作製した。
(成形品の荷重たわみ温度試験)
得られた荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)の荷重たわみ温度試験を、実施例1と同様にして行い、測定結果を、成形条件等とともに表1に示した。
[実施例5]
(熱可塑性樹脂ペレット(P5)の作製)
前記熱可塑性樹脂(A1)90重量部と、実施例1で用いたポリ乳酸(熱可塑性樹脂(B))10重量部とを合わせて100重量部に対して、実施例1で用いた3種の結晶化核剤(C1)、(C2)、(C3)を、それぞれ0.5重量部ずつ添加し、ドライブレンドした後に、2軸混練押出機を用いて、混練温度180℃で溶融混練を行い、3mm角程度の熱可塑性樹脂ペレット(P5)を得た。
(熱可塑性樹脂の成形)
作製した熱可塑性樹脂ペレット(P5)を用いて、実施例1と同様の方法で荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)を作製した。
(成形品の荷重たわみ温度試験)
得られた荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)の荷重たわみ温度試験を、実施例1と同様にして行い、測定結果を、成形条件等とともに表1に示した。
[比較例1]
(熱可塑性樹脂の成形)
実施例1で用いたポリ乳酸(熱可塑性樹脂(B))からなる熱可塑性樹脂ペレットを用いて、実施例1と同様の方法で荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)を作製した。
(成形品の荷重たわみ温度試験)
得られた荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)の荷重たわみ温度試験を、実施例1と同様にして行い、測定結果を、成形条件等とともに表2に示した。
Figure 0005556010
[比較例2]
(熱可塑性樹脂ペレット(P6)の作製)
実施例1で用いたポリ乳酸(熱可塑性樹脂(B))100重量部に対して、実施例1で用いた3種の結晶化核剤(C1)、(C2)、(C3)を、それぞれ0.5重量部ずつ添加し、ドライブレンドした後に、2軸混練押出機を用いて、混練温度180℃で溶融混練を行い、3mm角程度の熱可塑性樹脂ペレット(P6)を得た。
(熱可塑性樹脂の成形)
作製した熱可塑性樹脂ペレット(P6)を用いて、実施例1と同様の方法で荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)を作製した。
(成形品の荷重たわみ温度試験)
得られた荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)の荷重たわみ温度試験を、実施例1と同様にして行い、測定結果を、成形条件等とともに表2に示した。
[比較例3]
(熱可塑性樹脂の成形)
比較例2で作製した熱可塑性樹脂ペレット(P6)を、棚式の熱風乾燥機を使用して50℃で12時間乾燥した後、型締力50トンの電動式射出成形機を使用して、シリンダー温度180℃、射出速度20mm/s、射出圧力100MPa、金型温度は110℃、冷却時間120secの設定で荷重たわみ温度試験用の短冊試験片を成形した。成形品(短冊試験片)のサイズは、長さ130mm、幅3.2mm、高さ12.7mmとした。
(成形品の荷重たわみ温度試験)
得られた荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)の荷重たわみ温度試験を、実施例1と同様にして行い、測定結果を、成形条件等とともに表2に示した。
[比較例4]
(熱可塑性樹脂ペレット(P7)の作製)
実施例1で用いた熱可塑性樹脂(A1)30重量部、及びポリ乳酸(熱可塑性樹脂(B))70重量部をドライブレンドした後に、2軸混練押出機を用いて、混練温度180℃で溶融混練を行い、3mm角程度の熱可塑性樹脂ペレット(P7)を得た。
(熱可塑性樹脂の成形)
作製した熱可塑性樹脂ペレット(P7)を用いて、実施例1と同様の方法で荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)を作製した。
(成形品の荷重たわみ温度試験)
得られた荷重たわみ温度試験用の成形品(短冊試験片)の荷重たわみ温度試験を、実施例1と同様にして行い、測定結果を、成形条件等とともに表2に示した。
[荷重たわみ温度試験結果の評価]
実施例1〜5の荷重たわみ温度試験結果から、金型温度60℃、冷却時間40secにおいては、荷重たわみ温度が100℃以上であり、特に実施例1、5は耐熱性がよいことが判る。これに対し、比較例1〜4の成形品の荷重たわみ温度は、ほとんど100℃以下であり、成形品の荷重たわみ温度が100℃以上となったもの(比較例3)は、金型温度が110℃という高温にする必要があり、また冷却時間120secと生産性を犠牲にしていることが判る。

Claims (8)

  1. 下記化学式(1)、及び化学式(2)で表される構成単位を含むポリヒドロキシアルカノエートからなる樹脂(A)と、ポリ乳酸樹脂(B)と、結晶化核剤(C)を含有し、前記樹脂(A)10〜90重量部、ポリ乳酸樹脂(B)90〜10重量部を含む樹脂混合物100重量部に対し、結晶化核剤(C)を0.1重量部から5重量部含む樹脂組成物(但し、可塑剤、有機核剤、及び無機核剤の全てを含有するものを除く)を、金型温度40〜90℃、冷却時間10〜60秒で成形することを特徴とする熱可塑性樹脂の成形方法。
    Figure 0005556010
    Figure 0005556010
    [但し、RはC2n+1(n=1〜14)である。]
  2. 前記ポリヒドロキシアルカノエートは、前記化学式(1)、及び化学式(2)で表される構成単位のブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂の成形方法。
  3. 前記化学式(2)におけるnは、1であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂の成形方法。
  4. 前記化学式(2)におけるnは、2又は3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂の成形方法。
  5. 前記ポリ乳酸樹脂は、少なくともポリL乳酸、ポリD乳酸、ポリL乳酸とポリD乳酸から成るステレオコンプレックスのうちいずれかひとつを含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂の成形方法。
  6. 前記結晶化核剤は、タルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系からなる核剤より選択される一つ以上を含んでいることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂の成形方法。
  7. 下記化学式(3)、及び化学式(4)で表される構成単位を含むポリヒドロキシアルカノエートからなる樹脂(A)と、ポリ乳酸樹脂(B)と、結晶化核剤(C)を含有し、前記樹脂(A)10〜90重量部、ポリ乳酸樹脂(B)90〜10重量部を含む樹脂混合物100重量部に対し、結晶化核剤(C)を0.1重量部から5重量部含む樹脂組成物(但し、可塑剤、有機核剤、及び無機核剤の全てを含有するものを除く)から成形された成形品であり、
    荷重たわみ温度が100℃以上であることを特徴とする成形品。

    Figure 0005556010
    Figure 0005556010
    [但し、RはC2n+1(n=1〜14)である。]
  8. 電気・電子機器に備えられていることを特徴とする請求項7に記載の成形品。
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