JP5574592B2 - アクティブマスダンパー、解体建物の振動制御方法、及び解体建物の解体方法 - Google Patents

アクティブマスダンパー、解体建物の振動制御方法、及び解体建物の解体方法 Download PDF

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Description

本発明は、解体中の解体建物に発生しこの解体建物の周辺に建てられた近隣建物へ伝達される振動を低減するアクティブマスダンパー、及び解体建物の振動制御方法に関する。
建物の解体工事では、重機などを用いて行う解体作業や解体ガラの搬出作業等により発生する振動がこの解体建物の周辺に建てられた近隣建物へ伝達された場合、近隣建物の居住者に不快感を与えてしまうことが問題となる。
建物に作用する振動を低減する方法としては、アクティブマスダンパーを用いた制振技術が提案されている。
例えば、図12に示すように、特許文献1のアクティブマスダンパー300では、両端が構造物302に固定されたネジ軸304にナット306がネジ結合されている。このナット306は中空モータ308により直接回転駆動される。
また、中空モータ308は、ネジ軸304の軸方向に移動自在に設置されたマス310に一体的に取り付けられている。そして、構造物302に発生する振動を振動センサー312によって計測し、この計測した値(検出信号)に基づき中空モータ308を駆動制御してマス310を移動させる。
これにより、構造物302に作用する風や中小地震等の振動を打ち消す加振力を構造物302に付与し、構造物302に発生する振動を低減する。
また、例えば、図13に示すように、特許文献2の構造物の振動制御方法では、構造物314にアクティブ制振装置316を設置し、このアクティブ制振装置316と同じ場所に設置したセンサーにより計測した振動情報に基づいてアクティブ制振装置316の駆動制御を行う。
これにより、構造物314に近隣するプレス工場318のプレス機械320から発生し構造物314に伝達される振動を打ち消す加振力をアクティブ制振装置316から発生させて制振効果を発揮する。
しかし、特許文献1のアクティブマスダンパー300や、特許文献2のアクティブ制振装置316は、振動の発生源側ではなく振動が伝達される側(特許文献1の構造物302、特許文献2の構造物314)に設置されているので、先に述べた解体工事にアクティブマスダンパー300やアクティブ制振装置316を適用する場合、解体建物ではなく近隣建物にアクティブマスダンパー300やアクティブ制振装置316を設置しなければならない。
すなわち、解体工事に関係のない近隣建物に振動低減対策を施す必要があり、また、このような振動低減対策を施す許可を近隣建物の居住者やオーナー等から得なければならない。
特開2004−232700号公報 特開平8−53954号公報
本発明は係る事実を考慮し、解体中の解体建物に設置され、この解体建物から近隣建物へ伝達される振動を低減するアクティブマスダンパー、このアクティブマスダンパーを用いた解体建物の振動制御方法、及び解体建物の解体方法を提供する。
第1態様の発明は、上方の階から下方の階へ解体される解体建物に設置され、前記解体建物の解体作業時に駆動するアクティブマスダンパーである。
第1態様の発明では、上方の階から下方の階へ解体される解体建物にアクティブマスダンパーが設置されている。そして、このアクティブマスダンパーは、解体建物の解体作業時に駆動する。
よって、解体建物の解体作業時に発生する振動(以下、「解体振動」とする)をアクティブマスダンパーにより制御し、解体振動を低減することができる。これにより、解体建物からこの解体建物の周辺に建てられた近隣建物へ伝達される解体振動を低減することができる。
また、解体建物に設置されたアクティブマスダンパーによって、この解体建物から近隣建物へ伝達される振動を低減するので、解体工事に関係のない近隣建物に振動低減対策を施さなくてもよい。
また、解体作業が行われる(解体振動の発生源を有する)解体建物で解体振動を低減するので、振動低減対象となる近隣建物が複数存在する場合においても、解体建物からこれら複数の近隣建物へ解体振動が伝達するのを防ぐことができ、建物に設置するアクティブマスダンパーの数を増やす必要がない。
第2態様の発明は、第1態様のアクティブマスダンパーにおいて、加振手段により前記解体建物へ作用させた加振力と前記加振手段により前記解体建物へ加振力を作用させた後に前記解体建物に発生した振動とに基づき、前記解体建物の解体作業の進行に従って前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定する同定手段と、前記同定手段により同定された前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数と前記解体建物の解体作業時に前記解体建物に発生した振動とに基づき、前記解体建物の解体作業時に前記解体建物に発生した振動を打ち消す加振力を前記加振手段により作用させる制御手段と、を備える。
第2態様の発明では、アクティブマスダンパーが、同定手段と制御手段とを備えている。
同定手段は、加振手段により解体建物へ作用させた加振力と、加振手段により解体建物へ加振力を作用させた後に解体建物に発生した振動とに基づいて、解体建物の解体作業の進行に従って解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定する。
制御手段は、同定手段により同定された解体建物の質量、固有周期及び減衰定数と、解体建物の解体作業時に解体建物に発生した振動とに基づいて、解体建物の解体作業時に解体建物に発生した振動を打ち消す加振力を加振手段により作用させる。
よって、解体振動を打ち消す加振力を制御手段により解体建物に作用させるので、解体建物に発生する解体振動を制御することができる。これによって、解体建物から近隣建物へ伝達される解体振動を低減することができる。
一般に、建物の屋上等に設置されて、この建物に作用する風や中小地震等の振動を低減する従来のアクティブマスダンパーでは、建物の竣工後に一度だけ、又は年に一度程度の頻度でアクティブマスダンパーを用いて建物特性を同定する。そして、同定したこの建物特性に基づいて、建物に発生した振動を打ち消す加振力をこの建物に作用させる。
よって、このような従来のアクティブマスダンパーを解体建物に設置し、この解体建物の解体作業により発生する解体振動をこのアクティブマスダンパーで低減しようとした場合、解体建物の建物特性は解体建物の解体作業の進行に従って変化するので、効果的な加振力を解体建物に作用させることが難しい。
これに対して第2態様では、同定手段により、解体建物の解体作業の進行に従って解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定するので、解体作業によって変化する解体建物に対応した建物特性(解体建物の質量、固有周期及び減衰定数)を求めることができる。
そして、解体建物の解体作業時に、同定したこの建物特性の値に基づいて制御手段により解体建物に加振力を作用させるので、解体建物の解体作業の進行に従って建物特性が変化する解体建物に対して、解体振動を低減する効果的な加振力を作用させることができる。
第3態様の発明は、第2態様のアクティブマスダンパーにおいて、錘と、前記錘を移動させて前記解体建物へ加振力を作用させる駆動手段と、前記解体建物に発生した振動を計測するセンサーと、前記同定手段及び前記制御手段を有する制御部と、を個別に備える複数のユニットによって構成される。
第3態様の発明では、アクティブマスダンパーが、錘と駆動手段とセンサーと制御部とを個別に備える複数のユニットによって構成される。
駆動手段は、錘を移動させて解体建物へ加振力を作用させる。センサーは、解体建物に発生した振動を計測する。制御部は、同定手段及び制御手段を有する。
よって、駆動手段により錘を移動させて解体建物へ加振力を作用させることができる。
また、アクティブマスダンパーを複数のユニットに分けて運ぶことができるので、アクティブマスダンパーの移動、設置及び撤去を容易に行うことができる。例えば、解体建物に装備されているエレベータを利用してアクティブマスダンパーの移動を行うことができる。
また、アクティブマスダンパーが故障した場合、不具合を生じているユニットのみを交換することができる。また、アクティブマスダンパーを修理したり、メンテナンスしたりする場合、修理やメンテナンスの対象となるユニットのみをメーカーの修理工場等へ送ることができる。
第4態様の発明は、第2又は第3態様のアクティブマスダンパーを用いて、前記解体建物に発生する振動を制御する解体建物の振動制御方法において、前記解体建物の解体作業休止中に、前記同定手段により前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定する。
第4態様の発明では、解体建物に発生する振動を制御する解体建物の振動制御方法において、解体建物の質量、固有周期及び減衰定数の同定を、同定手段により解体作業休止中に行う。
解体作業休止中(解体建物に解体振動が発生していないとき)に加振手段により解体建物へ加振力を作用させた場合、この加振後に解体建物に発生する振動のほとんどは、加振手段により解体建物へ作用させた加振力に起因して発生した振動になる。
よって、精度よく解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定することができる。
第5態様の発明は、第2又は第3態様のアクティブマスダンパーを用いて、前記解体建物に発生する振動を制御する解体建物の振動制御方法において、前記解体建物の解体作業中に、前記同定手段により前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定する。
第5態様の発明では、解体建物に発生する振動を制御する解体建物の振動制御方法において、解体建物の質量、固有周期及び減衰定数の同定を、同定手段により解体作業中に行う。
よって、解体作業を止めずに、解体建物の質量、固有周期及び減衰定数の同定を行うことができる。
第6態様の発明は、第4又は第5態様の解体建物の振動制御方法において、前記アクティブマスダンパーを前記解体建物の解体作業の進行に従って下方の階に移動し該アクティブマスダンパーを前記解体建物の解体作業を行う施工階に近い階に設置するアクティブマスダンパー移設工程を有する。
第6態様の発明では、解体建物の解体作業の進行に従ってアクティブマスダンパーを下方の階に移動する。そして、解体建物の解体作業を行う施工階に近い階にアクティブマスダンパーを設置する(アクティブマスダンパー移設工程)。
アクティブマスダンパーにより作用させる加振力は、建物の変位の大きい最上階近くの階で作用させた方が、解体振動を効率よく低減することができる。
よって、アクティブマスダンパーを解体建物の解体作業を行う施工階(最上階)に近い階に設置することにより、解体振動をより効果的に低減することができる。
第7態様の発明は、第6態様の解体建物の振動制御方法において、前記アクティブマスダンパー移設工程の後に前記同定手段により前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定する。
第7態様の発明では、アクティブマスダンパー移設工程の後に同定手段により解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定するので、解体建物の建物特性の変化に合わせた適切なタイミングで建物特性の同定を行うことができる。
また、アクティブマスダンパーの移設作業の一環として、同定手段により解体建物の質量、固有周期及び減衰定数の同定を行うようにすれば、作業の効率化を図ることができる。
また、例えば、解体作業時に必ずアクティブマスダンパーを稼働させておく必要がある現場の場合には、アクティブマスダンパーの移設作業を行っている間は解体作業を休止させるので、この解体作業の休止時間を使って同定手段による同定を行うようにすれば、解体作業休止中の同定を行う為に別途解体作業を止める必要がなくなり、解体作業を止める時間を極力減らすことができる。
第8態様の発明は、第6又は第7態様の解体建物の振動制御方法において、前記解体建物の固有周期が前記解体建物の周辺に建てられた近隣建物の固有周期の1/2以下になるまで前記解体建物を解体した後に前記アクティブマスダンパーを撤去する。
第8態様の発明では、解体建物の固有周期が解体建物の周辺に建てられた近隣建物の固有周期の1/2以下になるまでの解体建物の解体時にアクティブマスダンパーを使用し、解体建物の固有周期が近隣建物の固有周期の1/2以下になった後にアクティブマスダンパーを撤去する。
解体建物と近隣建物との固有周期が近似している場合、解体建物を解体する際に、重機などを用いて行う解体作業や解体ガラの搬出作業等によって解体建物の固有振動数と等しい振動数の解体振動が解体建物に発生すると、この解体振動は地盤を介して解体建物から近隣建物へ伝達され近隣建物にて共振を起こす。
しかし、解体建物の固有周期が近隣建物の固有周期の1/2になったときには、解体建物の解体作業により発生する解体振動の振動数と近隣建物の固有振動数とは異なるので、解体建物から伝達される解体振動が近隣建物にて共振しなくなる。
また、建物の固有周期は、建物の高さに概ね比例するので、解体作業と共に低くなっていく解体建物から発生する解体振動の振動数と近隣建物の固有振動数とがこれ以降近似することはない。
そこで、第8態様では、解体建物の固有周期が近隣建物の固有周期の1/2になった後にアクティブマスダンパーの使用を止めて撤去するので、アクティブマスダンパーの撤去後においても解体建物から伝達される解体振動が近隣建物にて共振することはなく、また、アクティブマスダンパーの設置(使用)期間が短くなるので、振動低減対策費を低く抑えることができる。
第9態様の発明は、第6又は第7態様の解体建物の振動制御方法において、前記解体建物の固有周期が前記解体建物の周辺に建てられた近隣建物の固有周期の2/3以下になるまで前記解体建物を解体した後に前記アクティブマスダンパーを撤去する。
第9態様の発明では、解体建物の固有周期が近隣建物の固有周期の2/3になった後にアクティブマスダンパーの使用を止めて撤去するので、第8態様と同様に、アクティブマスダンパーの撤去後においても解体建物から伝達される解体振動が近隣建物にて共振することはなく、また、アクティブマスダンパーの設置(使用)期間が短くなるので、振動低減対策費を低く抑えることができる。
また、第8態様よりも早い時期にアクティブマスダンパーの使用を止めて撤去することができるので、振動低減対策費をより低く抑えることができる。
第10態様の発明は、第4又は第5態様の解体建物の振動制御方法において、前記解体建物の周辺に建てられた近隣建物の1/2の高さ以下に位置する、前記解体建物の階に前記アクティブマスダンパーを設置するアクティブマスダンパー設置工程を有する。
第10態様の発明では、近隣建物の1/2の高さ以下に位置する、解体建物の階にアクティブマスダンパーを設置する(アクティブマスダンパー設置工程)。
解体建物と近隣建物との固有周期が近似し、解体建物と近隣建物との高さがほぼ等しい場合、解体建物を解体する際に、重機などを用いて行う解体作業や解体ガラの搬出作業等によって解体建物の固有振動数と等しい振動数の解体振動が解体建物に発生すると、この解体振動は地盤を介して解体建物から近隣建物へ伝達され近隣建物にて共振を起こす。
ここで、建物の固有周期は建物の高さに概ね比例するので、解体建物の高さが近隣建物の高さの1/2になったときに、解体建物の固有周期は近隣建物の固有周期の約1/2になる。よって、解体建物の解体作業により発生する解体振動の振動数と近隣建物の固有振動数とは異なるので、解体建物から伝達される解体振動が近隣建物にて共振しなくなる。
また、解体作業と共に低くなっていく解体建物から発生する解体振動の振動数と近隣建物の固有振動数とがこれ以降近似することはない。
そこで、第10態様では、近隣建物の1/2の高さ以下に位置する、解体建物の階にアクティブマスダンパーを設置するので、アクティブマスダンパーの設置後にアクティブマスダンパーの移設を行わずに、解体作業を行う施工階が解体建物の近隣建物の1/2の高さ以下となった後にアクティブマスダンパーを撤去することができる。このようにすれば、アクティブマスダンパーの撤去後においても解体建物から伝達される解体振動が近隣建物にて共振することはなく、また、アクティブマスダンパーの設置(使用)期間が短くなるので、振動低減対策費を低く抑えることができる。
また、解体建物へのアクティブマスダンパーの設置と撤去とを一度行うだけでよく、アクティブマスダンパーを移設する必要がないので、アクティブマスダンパーの移設手間をなくすことができる。
また、解体工事の期間中、アクティブマスダンパーの撤去のタイミングを決めるために解体建物の固有周期を常に確認していなくてよい。
第11態様の発明は、第4又は第5態様の解体建物の振動制御方法において、前記解体建物の周辺に建てられた近隣建物の2/3の高さ以下に位置する、前記解体建物の階に前記アクティブマスダンパーを設置するアクティブマスダンパー設置工程を有する。
第11態様の発明では、近隣建物の2/3の高さ以下に位置する、解体建物の階にアクティブマスダンパーを設置する(アクティブマスダンパー設置工程)。
よって、第11態様では、近隣建物の2/3の高さ以下に位置する、解体建物の階にアクティブマスダンパーを設置するので、アクティブマスダンパーの設置後にアクティブマスダンパーの移設を行わずに、解体作業を行う施工階が解体建物の近隣建物の2/3の高さ以下となった後にアクティブマスダンパーを撤去することができる。このようにすれば、第10態様と同様に、アクティブマスダンパーの撤去後においても解体建物から伝達される解体振動が近隣建物にて共振することはなく、また、アクティブマスダンパーの設置(使用)期間が短くなるので、振動低減対策費を低く抑えることができる。
また、第10態様よりも早い時期にアクティブマスダンパーの使用を止めて撤去することができるので、振動低減対策費をより低く抑えることができる。
なお、第8〜第11態様の近隣建物とは、解体建物の周辺に建てられた建物であり、かつアクティブマスダンパー等の振動低減対策を施さなければ建物の共振が原因となって解体振動による振動障害が生じる恐れがある建物を意味する。
本発明は上記構成としたので、解体中の解体建物に設置され、この解体建物から近隣建物へ伝達される振動を低減するアクティブマスダンパー、及びこのアクティブマスダンパーを用いた解体建物の振動制御方法を提供することができる。
図面を参照しながら、本発明のアクティブマスダンパー、及び解体建物の振動制御方法を説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1(a)〜(d)の立面図に示すように、地盤12上にSRC造の解体建物10が建てられている。解体建物10は、重機20などを用いた解体作業によって、上方の階から下方の階へ階数の順に解体される。図1(a)の状態において、解体建物10の最上階となる屋上階16を形成するスラブ42上には、アクティブマスダンパー18が設置されている(図2(a)を参照のこと)。解体建物10周辺の地盤12上には、近隣建物14が建てられている。
図2(a)の正面図に示すように、アクティブマスダンパー18は、マスユニット22、駆動ユニット24、センサーユニット26及び制御ユニット28によって構成されている。
マスユニット22には、複数の錘30からなるマス34が備えられている。錘30は、後に説明する移動台32上に積層されており、錘30の増減によってマス34の重量を調整することができる。
図2(b)の正面図に示すように、各錘30には貫通孔36が形成されており、錘30が移動台32上に配置された状態で、移動台32に立てて設けられた軸部材38が貫通孔36に挿入される。さらに、軸部材38に設けられたナット62と、移動台32とで、複数の錘30を挟み込み、ナット62の締め付けによって複数の錘30を移動台32に固定する。
これにより、移動台32の水平方向への移動に対してマス34(複数の錘30)が移動台32から脱落することなく、移動台32の移動にマス34を確実に追従させることができる。
駆動ユニット24では、スラブ42上に固定された架台44A、44Bに、距離をおいて対向するフレーム部材46A、46Bがそれぞれ支持されている。また、フレーム部材46A、46Bには、ネジ軸48の両端部が固定されている。
ネジ軸48には、ナット40がネジ結合されている。そして、ネジ軸48が貫通された中空構造の中空モータ50によってナット40が直接回転駆動される。
また、中空モータ50は、移動台32の下部に一体的に取り付けられている。フレーム部材46A、46B間にはレール52が架設されており、このレール52上を移動台32が移動する。
このようにして、ネジ軸48、ナット40、中空モータ50、移動台32及びレール52により駆動手段54を構成し、マス34(複数の錘30)及び駆動手段54によって加振手段82を構成する。
そして、中空モータ50によるナット40の回転により中空モータ50をネジ軸48の軸方向に移動させ、これに伴ってマス34をネジ軸48の軸方向に移動させる。すなわち、加振手段82は、駆動手段54によりマス34を移動させて解体建物10へ加振力を作用させる。
センサーユニット26は、スラブ42上に載置されている。そして、センサーユニット26には、センサー56が備えられている。センサー56は、解体建物10(スラブ42)に発生した振動を計測する。
なお、センサーユニット26は、加振力の発生源である駆動ユニット24の近くに配置するのが好ましい。また、センサーユニット26はスラブ42上に固定してもよいし、スラブ42に発生した振動をセンサー56によって計測できれば、スラブ42上に置くだけでもよい。
センサーユニット26をアンカーボルトや接着剤等でスラブ42上に固定したり、センサーユニット26に重量を付加したりすれば、センサーユニット26の底面をスラブ42上面にしっかり接触させることができる。
また、センサーユニット26をスラブ42上に置くだけにすれば、スラブ42へのセンサーユニット26固定用孔の形成やアンカー工事等を行わなくてよい。
制御ユニット28は、スラブ42上に載置されている。そして、制御ユニット28には、同定手段58及び制御手段60を有する制御部が備えられている。
同定手段58は、加振手段82により解体建物10へ作用させた加振力と、加振手段82により解体建物10へ加振力を作用させた後にセンサー56で計測した振動とに基づいて、解体作業の進行に従って解体建物10の建物特性を同定する。なお、建物特性とは、解体建物10の質量、固有周期及び減衰定数のことを意味する。
制御手段60は、同定手段58により同定された解体建物10の建物特性と、解体建物10の解体作業時に解体建物10に発生した振動とに基づいて、解体建物10の解体作業時に解体建物10に発生した振動を打ち消す加振力を加振手段82により作用させる。
図3(a)のブロック図には、同定手段58によって解体建物10の建物特性(質量M、固有周期T、及び減衰定数h)を求めるフロー、及び制御手段60によって加振力uを求めるフローが示されている。
また、図3(a)に示された外乱は、解体建物10に作用する風荷重、及び重機などを用いて行う解体作業や解体ガラの搬出作業等により解体建物10に発生する振動等を意味し、Wは、解体建物10に発生しセンサー56で計測された振動波形を示す。
次に、解体建物の振動制御方法について説明する。
まず、図1(a)に示すように、解体建物10の屋上階16上にアクティブマスダンパー18を設置する(アクティブマスダンパー初期設置工程)。
図2(a)で示したアクティブマスダンパー18は、ネジ軸48の軸方向に発生する1方向の振動に対して振動低減効果を発揮する装置なので、低減対象となる振動の方向とネジ軸48の軸方向とが同じになるようにアクティブマスダンパー18を設置する。
次に、図3(a)で示した同定手段58によって、センサー56で計測した振動に基づいて解体建物10の建物特性を同定する(アクティブマスダンパー初期設置時同定工程)。同定手段58によるこの同定は、解体建物10の解体作業休止中に行う。なお、解体作業休止中とは、解体建物10の解体作業が休止されていて解体建物10の解体作業による解体振動が解体建物10に発生していないときを意味する。
次に、図1(b)に示すように、アクティブマスダンパー18を下方の階に移動する。そして、解体建物10の解体作業を行う施工階(図1(b)の例では、屋上階16)に近い階(図1(b)の例では、8階)にアクティブマスダンパー18を設置する(アクティブマスダンパー移設工程)。
次に、屋上階16の解体作業を行う。そして、この解体作業時に、図3(a)で示した制御手段60によって、センサー56で計測した振動と解体建物10の建物特性とに基づいて、解体建物10に発生した振動を打ち消す加振力を加振手段82により作用させる(振動制御工程)。
加振手段82による加振力は、駆動手段54によりマス34を移動させて作用させる。これによって、解体建物10の解体作業時に発生する解体振動を制御し、この解体建物10から近隣建物14へ伝達される振動を低減することができる。
次に、図1(c)に示すように、屋上階16の解体作業が完了した後に、アクティブマスダンパー18を下方の階に移動する。そして、解体作業を行う施工階(図1(c)の例では、10階)に近い階(図1(c)の例では、7階)にアクティブマスダンパー18を設置する(アクティブマスダンパー移設工程)。図1(c)の例では、図1(b)においてアクティブマスダンパー18が設置された階(8階)の1つ下の階(7階)にアクティブマスダンパー18を移設している。
次に、アクティブマスダンパー移設工程の後に、同定手段58により解体建物10の質量、固有周期及び減衰定数を同定する(アクティブマスダンパー移設時同定工程)。同定手段58によるこの同定は、解体作業休止中に行う。
そして、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2以下になるまで、振動制御工程、アクティブマスダンパー移設工程、及びアクティブマスダンパー移設時同定工程を繰り返し行い、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2以下になった後に(図1(d)を参照のこと)アクティブマスダンパー18の駆動を止めて撤去する(アクティブマスダンパー撤去工程)。
なお、解体建物10の屋上階16上へアクティブマスダンパー18を設置せずに、図1(b)でアクティブマスダンパー18を設置した位置にアクティブマスダンパー18を最初に設置してこれをアクティブマスダンパー初期設置工程とし、このアクティブマスダンパー初期設置工程が完了したときにアクティブマスダンパー初期設置時同定工程を行うようにしてもよい。
また、アクティブマスダンパー初期設置時同定工程で同定される建物特性は、同定手段58以外の方法で求めてもよい。例えば、解体建物10の建物特性を、他のアクティブマスダンパーによって同定した値としてもよいし、解体建物10の構造設計及び設備設計等の設計データから計算した値としてもよいし、模擬実験から推測した値としてもよい。
また、アクティブマスダンパー初期設置時同定工程において同定手段58により求める建物特性は、一般的に用いられている建物特性の同定方法を用いて求めればよい。例えば、日本建築学会大会学術講演梗概集、B−2分冊、1999年9月、山田聖治、西谷章「制御時の応答情報を利用した制御システムの再構築」、p.881−882に開示されている同定手法を用いて建物特性を求めてもよい。その他、より簡便な同定手法として、以下に説明する解体建物10の建物特性を同定する方法を用いてもよい。
解体建物10の建物特性を同定する場合には、図3(a)に示したブロック図の中の同定フロー(図3(b)の実線で示した部分)が機能する。
まず、図1(a)の解体作業休止中の状態(解体建物10に外乱がほとんど作用していない状態)において、図3(b)に示すように、アクティブマスダンパー18によって解体建物10に加振力uを作用させる。
次に、アクティブマスダンパー18によって解体建物10へ加振力uを作用させた後に解体建物10から発生する振動波形Wをセンサー56で計測する。
これにより、図4に示すような振動波形Wが得られる。図4では、横軸をセンサー56による振動波形Wの計測時間tとしている。振動波形Wの値(図4の縦軸)は、加速度、速度及び変位の何れの値としてもよい。
次に、解体建物10へ制御力uを加えるのをやめた時間t以降、振動波形Wは自由振動となるので、この自由振動となった振動波形Wから解体建物10の固有周期Tを求め、さらに、振動波形Wの減衰特性(図4の二点鎖線)から減衰定数hを求める。なお、固有周期Tは、振動波形Wをフーリエ変換してピーク値から読み取ってもよい。
次に、運動方程式により解体建物10の質量Mを求める。図5に示すように、解体建物10の振動モデルを、質量Mの解体建物10に外力Fが加えられた1質点系モデルと仮定し、解体建物10の変位量をx、円振動数をω(=2π/T)、及びセンサー56による計測時間をtとした場合、運動方程式は式(1)となる。
Figure 0005574592
次に、振動波形Wから求めた固有周期T及び減衰定数hを式(1)に代入し、解体建物10へ作用させた加振力uを外力Fとすると、図4に一点鎖線で示したような応答波形Wが得られる。
そして、この応答波形Wが振動波形Wに近似するような質量Mをシミュレーション解析によって求め、この値を解体建物10の建物特性としての質量とする。なお、減衰定数hは、振動波形Wから概略値を求めて、同様のシミュレーション解析によって詳細な値を求めるようにしてもよい。
このようにして、図3(b)に示した同定手段58により、センサー56で計測した振動波形Wから解体建物10の建物特性(解体建物10の質量M、固有周期T及び減衰定数h)を同定する。また、アクティブマスダンパー移設時同定工程においても、同様の方法で解体建物10の質量M、固有周期T及び減衰定数hを同定する。
なお、図5では、解体建物10の振動モデルを1質点系モデルと仮定したが、多質点系モデルと仮定してもよい。
また、振動制御工程において加振手段82により作用させる加振力は、一般的に用いられている制御パラメータの演算手法を用いて求めればよい。例えば、日本建築学会構造系論文集、第514号、1998年12月、山本雅史、鈴木祥之「アクティブマスダンパーのストローク制約を考慮した極配置アルゴリズムによる実大構造物の制震に関する実験的研究」、p.127−132に開示されている制御パラメータの演算手法を用いてもよい。この制御パラメータの演算手法を用いて、解体建物10に発生した振動を打ち消す加振力を作用させる方法を以下に説明する。
解体建物10に発生した振動を打ち消す加振力uを求める場合には、図3(a)に示したブロック図の中の制御フロー(図3(c)の実線で示した部分)が機能する。
まず、図1(b)の状態(重機などを用いて行う解体作業や解体ガラの搬出作業等によって、解体建物10に外乱としての解体振動が発生している状態)において、図3(c)に示すように、アクティブマスダンパー18によって解体建物10に加振力uを作用させる。
次に、アクティブマスダンパー18によって解体建物10へ加振力uを作用させた後に解体建物10から発生する振動波形Wをセンサー56で計測する。
次に、アクティブマスダンパー初期設置時同定工程により求めた解体建物10の建物特性(解体建物10の質量M、固有周期T及び減衰定数h)に基づき、運動方程式によって加振力uを求める。
解体建物10の振動モデルを図6に示すような、外力Fと質量mのマス34による加振力uとが質量Mの解体建物10に加えられた2質点系モデルと仮定し、マス34の変位量をδ、解体建物10の変位量をx、質量マトリックスをN、減衰マトリックスをC、及び剛性マトリックスをKとし、式(2)、(3)のように定めると、運動方程式は式(4)となる。なお、変位量δは、駆動手段54により移動するマス34のストロークに相当し、変位量xは、センサー56で計測した振動波形Wから知ることができる。
Figure 0005574592
Figure 0005574592
Figure 0005574592
ここで、係数をf〜fとすると、加振力uは式(5)となる。そして、式(5)を式(4)に代入して得られる特性方程式が、望ましい1次固有周期、1次減衰定数、2次固有周期、及び2次減衰定数となる振動系の特性方程式と一致するように係数f〜fを求めると、式(6)が得られる。
Figure 0005574592
Figure 0005574592
よって、式(6)より係数f〜fを求め、この係数f〜fを式(5)に代入して加振力uを求める。
なお、式(6)のiは固有振動数の次数を表しており、i次の円振動数をω、i次のモード質量をM、i次の減衰定数をh、質量mとi次のモード質量Mの比(=m/M)をμ、任意に設定するi次の減衰定数をH、アクティブマスダンパー18全体の減衰係数をCとし、α=1+(I/(m・L ))としている。
例えば、図2(a)で示したアクティブマスダンパー18では、ネジ軸48とナット40とが多数の小さなボールを介して低摩擦で運動するボールネジ機構が用いられているので、Iは、このボールネジと中空モータ50との回転慣性の和となり、Lは、ボールネジの回転運動に対するマス34の直線運動の割合(=ボールネジのリード/2π)となる。
このようにして、図3(c)に示した制御手段60により、センサー56で計測した振動と解体建物10の建物特性とに基づいて、解体建物10に発生した振動を打ち消す加振力uを作用させる。
なお、図6では、解体建物10の振動モデルを2質点系モデルと仮定したが、多質点系モデルとしてもよい。
また、アクティブマスダンパー移設工程及びアクティブマスダンパー移設時同定工程を行った以降は、そのアクティブマスダンパー移設時同定工程で同定した解体建物10の建物特性に基づいて加振力uを求める。
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
第1の実施形態では、図3(c)に示すように、解体建物10の解体作業時にこの解体建物10に発生する解体振動を打ち消す加振力uをアクティブマスダンパー18から解体建物10へ作用させる(制御手段60によって求めた加振力uを加振手段により解体建物10へ発生させる)。これにより、解体建物10に発生する解体振動を制御し、解体建物10から近隣建物14へ伝達される振動を低減することができる。
また、解体建物10に設置されたアクティブマスダンパー18によって、この解体建物10から近隣建物14へ伝達される振動を低減するので、解体工事に関係のない近隣建物14に振動低減対策を施さなくてもよい。
また、解体作業が行われる(解体振動の発生源を有する)解体建物10で解体振動を低減するので、振動低減対象となる近隣建物14が複数存在する場合においても、解体建物10からこれら複数の近隣建物14へ解体振動が伝達するのを防ぐことができ、建物に設置するアクティブマスダンパーの数を増やす必要がない。
一般に、建物の屋上等に設置されてこの建物に作用する風や中小地震等による振動を低減する従来のアクティブマスダンパーでは、建物の竣工後に一度だけ、又は年に一度程度の頻度でアクティブマスダンパーを用いて建物特性を同定し、同定した建物特性に基づいて建物に発生した振動を打ち消す加振力をこの建物に作用させる。
よって、このような従来のアクティブマスダンパーを解体建物10に設置し、解体建物10の解体作業により発生する解体振動をこのアクティブマスダンパーで低減しようとした場合、解体建物10の建物特性は解体建物10の解体作業の進行に従って変化するので、効果的な加振力を解体建物10に作用させることが難しい。
これに対して第1の実施形態のアクティブマスダンパー18、及び解体建物の振動制御方法では、同定手段58により、解体建物10の解体作業の進行に従って解体建物10の質量、固有周期及び減衰定数を同定するので、解体作業によって変化する解体建物10に対応した建物特性(解体建物10の質量M、固有周期T及び減衰定数h)を求めることができる。
そして、解体建物10の解体作業時に、同定したこの建物特性の値に基づいて制御手段60により解体建物10に加振力uを作用させるので、解体建物10の解体作業の進行に従って建物特性が変化する解体建物10に対して、解体振動を低減する効果的な加振力uを作用させることができる。
また、解体作業休止中(解体建物10に解体振動が発生していないとき)に加振手段82により解体建物10へ加振力を作用させた場合、この加振後に解体建物10に発生した振動のほとんどは、加振手段82により解体建物10へ作用させた加振力に起因して発生した振動になる。
よって、精度よく解体建物10の質量M、固有周期T及び減衰定数hを同定することができる。
また、アクティブマスダンパー移設工程の後に同定手段58により解体建物10の質量M、固有周期T及び減衰定数hを同定するので、解体建物10の建物特性の変化に合わせた適切なタイミングで建物特性の同定を行うことができる。
また、アクティブマスダンパー18を移設するときに、同定手段58により、解体建物10の質量M、固有周期T及び減衰定数hの同定を行うようにすれば、作業の効率化を図ることができる。
また、例えば、解体作業時に必ずアクティブマスダンパー18を稼働させておく必要がある現場の場合には、アクティブマスダンパー移設工程中は解体作業を休止させる。そこで、この解体作業の休止時間を使って同定手段58による建物特性の同定を行うようにすれば、解体作業休止中の同定を行う為に別途解体作業を止める必要がなくなり、解体作業を止める時間を極力減らすことができる。
また、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2以下になった後にアクティブマスダンパー18の駆動を止めて撤去することにより、振動低減に掛かるコストを低く抑えることができる。
解体建物10と近隣建物14との固有周期が近似している場合、アクティブマスダンパー18を駆動させない状態においては、解体建物10を解体する際に重機などを用いて行う解体作業や解体ガラの搬出作業等によって解体建物10の固有振動数と等しい振動数の解体振動が解体建物10に発生すると、この解体振動は地盤12を介して解体建物10から近隣建物14へ伝達され近隣建物14にて共振を起こす。
しかし、解体建物10の固有周期が、近隣建物14の固有周期の1/2になったときには、解体建物10の解体作業により発生する解体振動の振動数と近隣建物14の固有振動数とは異なるので、解体建物10から近隣建物14へ伝達される解体振動が近隣建物14にて共振しなくなる。
また、建物の固有周期は、建物の高さに概ね比例するので、解体作業と共に低くなっていく解体建物10から発生する解体振動の振動数と近隣建物14の固有振動数とがこれ以降近似することはない。
そこで、第1の実施形態の解体建物の振動制御方法では、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2になった後(解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2になったときの解体建物10の高さ以下の解体建物10の階で解体作業が行われるようになった後)の図1(d)の状態でアクティブマスダンパー18の使用を止めて撤去するので、アクティブマスダンパー18を撤去した後においても解体建物10から伝達される解体振動が近隣建物14にて共振することはなく、また、アクティブマスダンパー18の設置(使用)期間が短くなるので、振動低減対策費を低く抑えることができる。
なお、解体建物10の周辺に近隣建物14が複数存在する場合には、解体建物10の固有周期が、複数の近隣建物14の内の振動低減を必要とする(アクティブマスダンパー等の振動低減対策を施さなければ建物の共振が原因となって解体振動による振動障害が生じる恐れがある)近隣建物14の固有周期の1/2になった後にアクティブマスダンパー18の使用を止めて撤去すればよい。また、振動低減を必要とする(アクティブマスダンパー等の振動低減対策を施さなければ建物の共振が原因となって解体振動による振動障害が生じる恐れがある)近隣建物14が解体建物10の周辺に複数存在する場合には、解体建物10の固有周期が、固有振動数の最も小さい近隣建物14の固有周期の1/2になった後にアクティブマスダンパー18の使用を止めて撤去すればよい。
また、アクティブマスダンパー18により作用させる加振力uは、解体建物10の変位の大きい最上階近くの階で作用させた方が、解体建物10に発生する振動を効率よく低減することができる。
よって、第1の実施形態の解体建物の振動制御方法では、アクティブマスダンパー18を解体建物10の解体作業を行う施工階に近い階に設置することにより、解体振動をより効果的に低減することができる。
また、アクティブマスダンパー18を複数のユニット(マスユニット22、駆動ユニット24、センサーユニット26及び制御ユニット28)に分けて運ぶことができるので、アクティブマスダンパー18の移動、設置及び撤去を容易に行うことができる。例えば、解体建物10に装備されているエレベータを利用してアクティブマスダンパー18の移動を行うことができる。
また、アクティブマスダンパー18が故障した場合、不具合を生じているユニットのみを交換することができる。また、アクティブマスダンパー18を修理したり、メンテナンスしたりする場合、修理やメンテナンスの対象となるユニットのみをメーカーの修理工場等へ送ることができる。
また、図2(a)で示したアクティブマスダンパー18は、ナット62を外して錘30の増減を行うだけで容易にマス34の重量を変更することができる。
なお、第1の実施形態では、解体作業を行う施工階の3つ下の階にアクティブマスダンパー18を設置した例を示したが(図1(b)、(c)を参照のこと)、施工階のいくつ下の階に設置するかは適宜決めればよい。
アクティブマスダンパー18により解体建物10に作用させる加振力は、変位の大きい最上階近くの階で作用させた方が効率よく解体振動を低減することができる。よって、解体建物10を上方の階から下方の階へ解体する場合、解体作業を行う施工階(最上階)や施工階の1つ下の階にアクティブマスダンパー18を設置するのが理想的だが、施工階や施工階の1つ下の階にアクティブマスダンパー18を設置した場合、アクティブマスダンパー18が解体作業の邪魔になり、また、アクティブマスダンパー18が破損することも危惧されるので、施工階の2つ又は3つ下の階にアクティブマスダンパーを設置するのが好ましい。
また、第1の実施形態では、アクティブマスダンパー移設工程の後に同定手段58により建物特性を同定する例を示したが、同定手段58による建物特性の同定は、どのタイミングで行ってもよい。
例えば、解体作業休止中に建物特性の同定を行うのであれば、朝の解体作業開始前、解体作業を行う施工階が下階に移るとき、昼の食事休憩時、解体作業が休止する時間帯、建物特性を同定するために現場で設定した作業休止時間(例えば、9時、12時、15時からの数分間)や現場で設定したタイミング(例えば、施工階が、8階、6階、4階に移ったとき)等で行うようにしてもよい。
また、第1の実施形態では、同定手段58による同定を解体作業休止中に行う例を示したが、同定手段58による同定は解体作業中に行ってもよい。このようにすれば、解体作業を止めずに、解体建物10の建物特性の同定を行うことができる。ここで、解体作業中とは、重機を用いて行う解体作業や解体ガラの搬出作業等によって解体振動が解体建物に発生しているときを意味する。
また、解体建物10の振動制御方法において、解体建物10の解体作業中に行う建物特性の同定と、解体建物10の解体作業休止中に行う建物特性の同定とを併用してもよい。解体建物の解体作業中又は解体作業休止中に行う建物特性の同定を行う頻度を多くすれば、解体作業によって変化する解体建物10に対応した建物特性をより正確に求めることができるので好ましい。
また、第1の実施形態では、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2になった後にアクティブマスダンパー18の使用を止めて撤去する例を示したが、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期に対してどの程度になった後にアクティブマスダンパー18の使用を止めて撤去するかは、解体建物10に求められる振動低減性能や振動低減対策に費やすことが可能な費用等を考慮して適宜決めればよい。
すなわち、解体工事の工期の早い段階でアクティブマスダンパー18を撤去するようにすれば運用コストを低く抑えることができ、遅い段階でアクティブマスダンパー18を撤去するようにすればより確実に解体建物10に発生する振動を低減することができる。
例えば、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の2/3になった後にアクティブマスダンパー18の使用を止めて撤去するようにすれば、アクティブマスダンパー18の撤去後においても解体建物10から近隣建物14へ伝達される解体振動が近隣建物14にて共振することはなく、また、早い時期にアクティブマスダンパー18の使用を止めて撤去することができるので、振動低減対策費をより低く抑えることができる。
ここで、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2になったときに、アクティブマスダンパー18を駆動させない状態で、近隣建物14に発生する振動がどの程度低減されるかを説明する。
図5で示した1質点系の振動モデルにおいて、応答振幅をA、静的振幅をδ、外力Fの振動数をp、円振動数をωとすると、図7に示すような共振曲線64が得られる。図7の横軸には、振動数比p/ωが示され、縦軸には、動的応答倍率A/δが示されている。また、共振曲線64は、減衰定数hを0.05としたときの値であり、式(7)の関係を満たす。
Figure 0005574592
解体建物10の振動数をp、近隣建物14の円振動数をωと考え、近隣建物14の減衰定数hを0.05と仮定すると、図1(a)で示した解体建物10を解体する前の状態で解体建物10と近隣建物14との固有周期が等しい場合、振動数比p/ωは1になるので、式(7)より動的応答倍率A/δは10となる。
これに対して、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2になったとき(すなわち、pがωの2倍になったとき)には、振動数比p/ωは2になるので、式(7)より動的応答倍率A/δは0.33となる。
すなわち、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2になったときに、アクティブマスダンパー18を駆動させない状態で、近隣建物14に発生する振動は解体工事開始直後(図1(b)の状態のとき)に近隣建物14に発生していた振動の、理論値として約3%程度に低減されることが予測できる。実際の建物においては、外力の不均一性、周期や減衰定数などの建物特性のばらつき、1質点系のモデルと実建物の挙動の違いによって、理論値ほど低減は期待できないが、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2になれば、共振時に比べて大きく振動低減が図れることが予測される。
このように、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2になれば、アクティブマスダンパー18を用いる必要はなくなるので、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2になった後にアクティブマスダンパー18の使用を止めて撤去するのが好ましい。
なお、同様の方法で、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の2/3になったときの動的応答倍率A/δを求めると0.79になる。よって、この場合には、アクティブマスダンパー18を駆動させない状態で、近隣建物14に発生する振動は解体工事開始直後(図1(b)の状態のとき)に近隣建物14に発生していた振動の、理論値として約8%程度に低減されることが予測できる。実際の建物においては、外力の不均一性、周期や減衰定数などの建物特性のばらつき、1質点系のモデルと実建物の挙動の違いによって、理論値ほど低減は期待できないが、体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の2/3になれば、共振時に比べて大きく振動低減が図れることが予測される。
これにより、必要とする振動低減性能によっては、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の2/3になった後にアクティブマスダンパー18の使用を止めて撤去しても十分な効果を発揮することができる。
また、動的応答倍率A/δの試算の際に仮定したように、解体建物10と近隣建物14との固有周期が近似している場合、解体建物10を解体する際に重機などを用いて行う解体作業や解体ガラの搬出作業等によって解体建物10の固有振動数と等しい振動数の解体振動が解体建物10に発生すると、振動低減対策が施されていない場合にはこの解体振動は地盤を経由して解体建物10から近隣建物14へ伝達され、近隣建物14にて共振を起こすことが考えられる。
そして、近隣建物14に共振が起こった場合、近隣建物14の居住者に不快感を与えてしまうことが問題となる。よって、第1の実施形態は、このような解体建物10と近隣建物14との固有周期が近似している場合に特に有効となる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態で説明したアクティブマスダンパー18を最初に設置した位置からこのアクティブマスダンパー18を移動させずに、解体建物10に発生する解体振動を低減するものである。したがって、第2の実施形態の説明において第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
第2の実施形態では、図8(a)〜(d)に示すように、近隣建物14の高さVの1/2の高さ以下に位置する、解体建物10の階にアクティブマスダンパー18を設置する(アクティブマスダンパー設置工程)。
解体建物10の解体作業は図8(a)〜(d)の順に進められ、近隣建物14の高さVの1/2の高さ以下に位置する、解体建物10の階を解体するようになった後に(例えば、図8(d)の状態のときに)アクティブマスダンパー18を撤去する(アクティブマスダンパー撤去工程)。
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
解体建物10と近隣建物14との固有周期が近似し、解体建物10と近隣建物14との高さがほぼ等しい場合、アクティブマスダンパー18を駆動させない状態においては、解体建物10を解体する際に重機などを用いて行う解体作業や解体ガラの搬出作業等によって解体建物10の固有振動数と等しい振動数の解体振動が解体建物10に発生すると、この解体振動は地盤12を介して解体建物10から近隣建物14へ伝達され近隣建物14にて共振を起こす。
ここで、建物の固有周期は、建物の高さに概ね比例するので、解体建物10の高さが近隣建物14の高さの1/2になったときに、解体建物10の固有周期は、近隣建物14の固有周期の約1/2になる。
よって、解体建物10の解体作業により発生する解体振動の振動数と近隣建物14の固有振動数とは異なるので、解体建物10から近隣建物14へ伝達される解体振動が近隣建物14にて共振しなくなる。
また、解体作業と共に低くなっていく解体建物10から発生する解体振動の振動数と近隣建物10の固有振動数とがこれ以降近似することはない。
そこで、第2の実施形態の解体建物の振動制御方法では、近隣建物14の1/2の高さ以下に位置する、解体建物10の階にアクティブマスダンパー18を設置するので、アクティブマスダンパー18の設置後にアクティブマスダンパー18の移設を行わずに、近隣建物14の高さVの1/2の高さ以下に位置する、解体建物10の階を解体するようになった後にアクティブマスダンパー18を撤去することができる。このようにすれば、アクティブマスダンパー18の撤去後においても解体建物10から近隣建物14へ伝達される解体振動が近隣建物14にて共振することはなく、また、アクティブマスダンパー18の設置(使用)期間が短くなるので、振動低減対策費を低く抑えることができる。
また、解体建物10へのアクティブマスダンパー18の設置と撤去とを一度行うだけでよく、アクティブマスダンパー18の移設の必要がないので、アクティブマスダンパー18の移設手間をなくすことができる。
また、解体工事の期間中、アクティブマスダンパー18の撤去のタイミングを決めるために解体建物10の固有周期を常に確認していなくてよい。
なお、第2の実施形態において、解体建物10の周辺に近隣建物14が複数存在する場合には、複数の近隣建物14の内の振動低減を必要とする(アクティブマスダンパー等の振動低減対策を施さなければ建物の共振が原因となって解体振動による振動障害が生じる恐れがある)近隣建物14の1/2の高さ以下に位置する、解体建物10の階にアクティブマスダンパー18を設置すればよい。また、振動低減を必要とする(アクティブマスダンパー等の振動低減対策を施さなければ建物の共振が原因となって解体振動による振動障害が生じる恐れがある)近隣建物14が解体建物10の周辺に複数存在する場合には、振動低減を必要とする複数の近隣建物14の内の建物高さが最も小さい近隣建物14の1/2の高さ以下に位置する、解体建物10の階にアクティブマスダンパー18を設置すればよい。
また、第2の実施形態では、近隣建物14の1/2の高さ以下に位置する、解体建物10の階にアクティブマスダンパー18を設置する例を示したが、アクティブマスダンパー18の撤去後においても解体建物10から近隣建物14へ伝達される解体振動が近隣建物14にて共振しない状況が得られれば解体建物10の他の階に設置してもよい。
例えば、近隣建物14の2/3の高さ以下に位置する、解体建物10の階にアクティブマスダンパー18を設置すれば、早い時期にアクティブマスダンパー18の使用を止めて撤去することができるので、振動低減対策費をより低く抑えることができる。
建物の固有周期は、建物の高さに概ね比例するので、解体建物10の施工階の高さが近隣建物14の1/2の高さのときには、解体建物10の固有周期は近隣建物14の固有周期の1/2程度になることが予測され、第1の実施形態で示したように、アクティブマスダンパー18を駆動させない状態においても、近隣建物14に発生する振動は解体工事直後(図8(b)の状態のとき)に近隣建物14に発生していた振動の、理論値として約3%程度に低減されるので、近隣建物14の1/2の高さ以下に位置する、解体建物10の階にアクティブマスダンパー18を設置し、解体作業を行う施工階が近隣建物14の1/2の高さ以下に位置する階となった後にアクティブマスダンパー18を撤去するのが好ましい。
また、解体建物10の施工階の高さが近隣建物14の2/3の高さのときには、解体建物10の固有周期は近隣建物14の固有周期の2/3程度になることが予測され、第1の実施形態で示したように、アクティブマスダンパー18を駆動させない状態においても、近隣建物14に発生する振動は解体工事直後(図8(b)の状態のとき)に近隣建物14に発生していた振動の、理論値として約8%程度に低減されるので、必要とする振動低減性能によっては、近隣建物14の2/3の高さ以下に位置する、解体建物10の階にアクティブマスダンパー18を設置し、解体作業を行う施工階が近隣建物14の2/3の高さ以下に位置する階となった後にアクティブマスダンパー18を撤去しても十分な効果を発揮することができる。
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
なお、第1の実施形態では、解体建物10の固有周期が近隣建物14の固有周期の1/2以下になった後にアクティブマスダンパー18の駆動を止めて撤去する例を示したが、建物の固有周期は建物の高さに概ね比例するので、解体前の解体建物10と近隣建物14の高さが近く、固有周期が近似している場合には、解体建物10の解体作業の施工階が近隣建物14の高さの1/2以下になった後にアクティブマスダンパー18の駆動を止めて撤去するようにしてもよい。この場合においても、第1の実施形態とほぼ同様の効果が得られる。
また、第1及び第2の実施形態では、中空モータ50によりマス34を移動させる機構のアクティブマスダンパー18(図2(a)を参照のこと)の例を示したが、アクティブマスダンパーは、マスを移動させることにより制御力を発生させる装置であればよい。例えば、油圧やギヤードモータによりマスを移動させる機構のアクティブマスダンパーを用いてもよい。
また、第1及び第2の実施形態で説明したように、アクティブマスダンパー18は、低減対象となる振動の方向とネジ軸48の軸方向とが同じになるように設置する必要があるので、低減対象とする振動がXとYの2方向(XとYは共に水平方向)に発生する場合には、2基のアクティブマスダンパー18を設置する。
また、XとYとZの3方向(XとYは共に水平方向、Zは鉛直方向)に発生する場合には、XとYの2方向に発生する振動に対して2基のアクティブマスダンパー18を設置し、Zの1方向に発生する振動に対しては、例えば、図9に示すような、マスを鉛直方向に移動させるアクティブマスダンパー66を1基設置する。
また、低減対象とする振動が2方向又は3方向の場合には、1基で2方向又は3方向の振動を低減するタイプのアクティブマスダンパーを用いてもよい。
アクティブマスダンパー66は、図9に示すように、可動マス68が、この可動マス68を貫通するセンターポール70に沿って上下方向に移動する。さらに、箱体84の底部86に固定されて可動マス68の外周部に配置された励磁マグネット72へ供給する電流の向きと大きさを調整し、この電磁力によって可動マス68を上下方向に移動させる。
そして、可動マス68を下降させて加振版74へ衝突させ、これによって、アクティブマスダンパー66から鉛直方向の制御力を発生させる。
また、第1及び第2の実施形態で示したアクティブマスダンパー18は、マスユニット22、駆動ユニット24、センサーユニット26及び制御ユニット28によって構成されているが、別の単位のユニットとしてもよい。
例えば、駆動ユニット24と制御ユニット28とを1つのユニットとしてもよいし、制御ユニット28を、同定手段58を有するユニットと制御手段60を有するユニットとに分けてもよい。
また、ユニットを構成せずに、マス34、駆動手段54、センサー56、同定手段58及び制御手段60等の全ての要素が一体化されたアクティブマスダンパー18としてもよい。
また、解体建物10を解体したときに発生するガラにより、加振手段のマスを構成するようにしてもよい。
また、例えば、遠隔操作でアクティブマスダンパー18の駆動スイッチのオン・オフができるようにして、解体作業時のみアクティブマスダンパー18を駆動するようにしてもよいし、解体建物10に振動を検知するセンサーを設けておき、このセンサーにより検知された振動が一定値以上になったときにアクティブマスダンパー18の駆動スイッチが自動的にオンになるようにしてもよい。また、近隣建物14に設置したセンサーにより計測した振動の大きさが一定値以上になったときにアクティブマスダンパー18の駆動スイッチが自動的にオンになるようにしてもよい。
このようにすれば、解体作業休止中にアクティブマスダンパー18を駆動させずに済むので電気代を節約でき、振動低減に掛かる運用コストをさらに低く抑えることができる。
また、第1及び第2の実施形態では、解体建物10をSRC造の建物とした例を示したが、解体建物10はRC造、S造等の建物であってもよい。
RC造やSRC造の建物は、解体時に発生する振動が他の工法よりも大きくなる傾向があるので、第1及び第2の実施形態は、RC造やSRC造の建物の解体工事に適用するのが効果的である。
また、解体工事においては、振動と共に騒音も発生するが、騒音については建物を覆う防音シート等で対処できるので、近隣建物の居住者が感じる体感振動を低減する第1及び第2の実施形態は、居住の快適性を確保する上で有効な技術である。
都心部における建設工事のほとんどは、今後、スクラップ・アンド・ビルド方式になるものと予想させるので、建設密集地での解体工事における振動低減は重要な課題になるものと考えられる。よって、このような状況下において、本発明のアクティブマスダンパー、及び解体建物の振動制御方法を用いることにより、解体建物の近隣からの苦情発生をなくすことができ、解体工事のスムーズな進捗を図ることが可能となる。
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
(実施例)
本実施例では、第1の実施形態で示したアクティブマスダンパー18を用いて、実際の解体建物に発生する振動を低減し、本発明の有効性を検証した結果を示す。
解体建物としてのビル(以下、「解体ビル」という)は、図1(a)で示した解体建物10と同様に、地下1階、地上10階建てのSRC造建物であり、約2,500mの延床面積を有している。
そして、アクティブマスダンパー18は、図1(b)の状態と同様に、解体ビルの屋上階から3つ下の階である8階に設置した。
図10(a)、(b)には、解体ビルに解体作業による解体振動が発生しているときに、アクティブマスダンパー18に備えられたセンサー56によって測定した振動の測定結果が示されている。図10(a)の横軸には、センサー56の計測時間が示され、縦軸には、解体ビルに発生した振動を制御するために設置したアクティブマスダンパー18のマス34の変位量が示されている。また、図10(b)の横軸には、センサー56の計測時間が示され、縦軸には、解体ビルに発生した振動の応答加速度が示されている。
センサー56による計測を開始してから約110秒経つまでの間(以下、「駆動停止時間帯」という)は、アクティブマスダンパー18を駆動させず(振動制御工程を行わず)、センサー56による計測を開始してから約110秒〜約220秒の間(以下、「駆動時間帯」という)でアクティブマスダンパー18を駆動させ(振動制御工程を行い)、さらに、センサー56による計測を開始してから約220秒経ったところでアクティブマスダンパー18の駆動を止めた。
図10(a)、(b)の駆動停止時間帯と駆動時間帯とを比べることにより、アクティブマスダンパー18の駆動により解体ビルに発生する加速度が、効果的に低減されていることがわかる。
また、図10(b)の駆動停止時間帯における応答加速度のRMS値は2.81cm/sであったのに対して、図10(b)の駆動時間帯における応答加速度のRMS値は1.36cm/sであった。このことから、アクティブマスダンパー18の駆動により、解体ビルに発生する振動が約1/2に減っている(約6dBの振動低減効果が発揮された)ことがわかる。
図11(a)、(b)には、図10(a)、(b)の計測結果に基づいて、解体ビルの周辺に建てられた近隣ビルに発生する振動をシミュレートした結果が示されている。図11(a)は、駆動停止時間帯における値であり、図11(b)は、駆動時間帯における値である。
図11(a)の横軸には、近隣ビルに発生した振動の周期が示され、縦軸には、近隣ビルに発生した振動の加速度応答スペクトルが示されている。曲線76A、76Bは、減衰を1%とした値であり、曲線78A、78Bは、減衰を2%とした値であり、曲線80A、80Bは、減衰を3%とした値である。
図11(a)と図11(b)とを比べることにより、減衰が小さい振動ほどアクティブマスダンパー18の振動低減効果が大きいことがわかる。減衰が1%の場合には、アクティブマスダンパー18の駆動により、近隣ビルに発生する振動が約1/3に減っている(約10dBの振動低減効果が発揮された)ことがわかる。
また、図11(a)から、周期が0.6s付近が近隣ビルの固有周期であることが推測できるが、この近隣ビルの固有周期に近い振動成分ほどアクティブマスダンパー18の振動低減効果が大きいことが、図11(a)と図11(b)とを比べることによりわかる。
本発明の第1の実施形態に係る解体建物の振動制御方法を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係るアクティブマスダンパーを示す正面図である。 本発明の第1の実施形態に係る同定手段及び制御手段を示すブロック図である。 本発明の第1の実施形態に係る同定方法を示す線図である。 本発明の第1の実施形態に係る解体建物の振動モデルを示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る解体建物の振動モデルを示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る振動低減効果を示す線図である。 本発明の第2の実施形態に係る解体建物の振動制御方法を示す説明図である。 本発明の実施形態に係るアクティブマスダンパーの変形例を示す正面図である。 本発明の実施例に係る測定結果を示す線図である。 本発明の実施例に係るシミュレーション結果を示す線図である。 従来のアクティブマスダンパーを示す正面図である。 従来の構造物の振動制御方法を示す説明図である。
符号の説明
10 解体建物
14 近隣建物
18、66 アクティブマスダンパー
30 錘
54 駆動手段
56 センサー
58 同定手段
60 制御手段
68 可動マス(錘)
82 加振手段
h 減衰定数(建物特性)
M 質量(建物特性)
T 固有周期(建物特性)
u 加振力
W 振動波形(振動)

Claims (12)

  1. 上方の階から下方の階へ解体される解体建物に設置され、前記解体建物の解体作業時に駆動し、
    加振手段により前記解体建物へ作用させた加振力と前記加振手段により前記解体建物へ加振力を作用させた後に前記解体建物に発生した振動とに基づき、前記解体建物の解体作業の進行に従って前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定する同定手段と、
    前記同定手段により同定された前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数と前記解体建物の解体作業時に前記解体建物に発生した振動とに基づき、前記解体建物の解体作業時に前記解体建物に発生した振動を打ち消す加振力を前記加振手段により作用させる制御手段と、を備えるアクティブマスダンパー。
  2. 錘と、
    前記錘を移動させて前記解体建物へ加振力を作用させる駆動手段と、
    前記解体建物に発生した振動を計測するセンサーと、
    前記同定手段及び前記制御手段を有する制御部と、
    を個別に備える複数のユニットによって構成される請求項1に記載のアクティブマスダンパー。
  3. 請求項1又は2に記載のアクティブマスダンパーを用いて、前記解体建物に発生する振動を制御する解体建物の振動制御方法において、
    前記解体建物の解体作業休止中に、前記同定手段により前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定する解体建物の振動制御方法。
  4. 請求項1又は2に記載のアクティブマスダンパーを用いて、前記解体建物に発生する振動を制御する解体建物の振動制御方法において、
    前記解体建物の解体作業中に、前記同定手段により前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定する解体建物の振動制御方法。
  5. 前記アクティブマスダンパーを前記解体建物の解体作業の進行に従って下方の階に移動し該アクティブマスダンパーを前記解体建物の解体作業を行う施工階に近い階に設置するアクティブマスダンパー移設工程を有する請求項3又は4に記載の解体建物の振動制御方法。
  6. 前記アクティブマスダンパー移設工程の後に前記同定手段により前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数を同定する請求項5に記載の解体建物の振動制御方法。
  7. 前記解体建物の固有周期が前記解体建物の周辺に建てられた近隣建物の固有周期の1/2以下になるまで前記解体建物を解体した後に前記アクティブマスダンパーを撤去するアクティブマスダンパー撤去工程を有する請求項5又は6に記載の解体建物の振動制御方法。
  8. 前記解体建物の固有周期が前記解体建物の周辺に建てられた近隣建物の固有周期の2/3以下になるまで前記解体建物を解体した後に前記アクティブマスダンパーを撤去するアクティブマスダンパー撤去工程を有する請求項5又は6に記載の解体建物の振動制御方法。
  9. 前記解体建物の周辺に建てられた近隣建物の1/2の高さ以下に位置する、前記解体建物の階に前記アクティブマスダンパーを設置するアクティブマスダンパー設置工程を有する請求項3又は4に記載の解体建物の振動制御方法。
  10. 前記解体建物の周辺に建てられた近隣建物の2/3の高さ以下に位置する、前記解体建物の階に前記アクティブマスダンパーを設置するアクティブマスダンパー設置工程を有する請求項3又は4に記載の解体建物の振動制御方法。
  11. 解体される解体建物にアクティブマスダンパーを設置し、前記解体建物の解体作業時に該アクティブマスダンパーを駆動し、前記解体建物の解体作業の進行に伴い変化する前記解体建物の質量、固有周期及び減衰定数に応じて前記解体建物に発生した振動を打ち消す加振力を作用させ、前記解体建物から該解体建物の周辺に建てられた近隣建物へ伝達される振動を低減する解体建物の解体方法。
  12. 前記解体建物または前記近隣建物に設置した振動検知センサーにより計測した振動の大きさが一定値以上のときに前記アクティブマスダンパーを駆動する請求項11に記載の解体建物の解体方法。
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