JP5574590B2 - ゲル状食品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明において、水性飲食物とは、低粘度の飲料や水性飲食物をいい、具体的には、牛乳、乳酸飲料、豆乳、各種果樹飲料、お茶飲料、コーヒー、紅茶、炭酸飲料、スープ、などが例示されるが、これに限られない。また、食品の粉末化物(乾燥野菜、米粉など)を水に分散させたものも用いることができる。
本発明の低置換カルボキシメチルセルロースは、無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.4である水不溶性および/または水膨潤性のカルボキシメチルセルロースを主成分として含有するものである。
カルボキシメチルセルロースは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基がカルボキシメチルエーテル基に置換された構造を持つ。カルボキシルセルロースは、塩の形態であっても良く、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩などの金属塩などとすることができる。本発明においてセルロースとは、D−グルコピラノースがβ−1,4グリコシド結合で連なった構造の多糖を意味し、無水グルコースを基本単位とする。一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。天然セルロースとしては、晒または未晒木材パルプ、精製リンター、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等が例示される。晒又は未晒パルプの原料は特に限定されず、例えば、木材、木綿、わら、竹等が挙げられる。また、晒又は未晒パルプの製造方法も特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合わせた方法でも良く、例えば、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、砕木パルプ、亜硫酸パルプ、クラフトパルプ等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に、化学的に精製され、主として薬品に溶解して使用する、人造繊維、セロハンなどの主原料となる溶解パルプを用いてもよい。再生セルロースとしては、セルロースを銅アンモニア溶液、セルロースザンテート溶液、モルフォリン誘導体など何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸されたものが例示される。微細セルロースとは、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとするセルロース系素材を酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等によって解重合処理したものや、前記セルロース系素材を機械的に処理したものが例示される。
本発明のカルボキシメチルセルロースは、水不溶性および/または水膨潤性を示す。すなわち、水不溶性及び水膨潤性のうちの少なくとも一方を示すことが必要であり、好ましくは両方を示すものである。
本発明のカルボキシメチルセルロースを製造するにあたっては、公知のカルボキシメチルセルロースの製法を適用することができる。即ち、原料セルロースをマーセル化剤(アルカリ)で処理してマーセル化セルロース(アルカリセルロース)を調製した後に、エーテル化剤を添加してエーテル化反応させることで本発明のカルボキシメチルセルロースを製造することができる。
本発明のゲル状食品は、カルボキシメチルセルロースと水性飲食物を混合した後その混合物を、高せん断処理することにより得ることができる。または、カルボキシメチルセルロースと水性飲食物を混合しながら、高せん断処理をすることによっても得ることができる。具体的には、例えば、高せん断処理を行う装置に、カルボキシメチルセルロースと水性飲食物を投与することが挙げられる。
前記混合物には、必要に応じて、甘味料、着色料、保存料、安定剤、pH調整剤、増粘剤、界面活性剤、香料などの食品添加物などを添加しても良い。また、混合物を高せん断処理をしたものに添加してもよい。
本明細書でいう、前記1回パスとは、高圧ホモジナイザーのインタラクションチャンバー内を試料が1回通過することをいう。
高圧ホモジナイザーの処理温度は、処理する飲食品が安定な範囲であれば特に限定されない。処理時のpHは、生成されるゲルの安定性を考慮し、pH3〜pH8、望ましくは、pH4〜pH7が好適である。
本発明では、高せん断処理を行うカルボキシメチルセルロースと水性飲食物の混合比率は、水性飲食物重量あたり、低置換度カルボキシメチルセルロースを0.1〜5.0重量%、好ましくは、0.5〜2.5重量%混合することが好ましい。
(無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度(DS)の測定)
試料約2.0gを精秤して、300ml共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール(無水メタノール1Lに特級濃硝酸100mlを加えた液)100mlを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na−CMC)をカルボキシメチルセルロース(H−CMC)にした。その絶乾H−CMC1.5〜2.0gを精秤し、300ml共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mlでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOH100mlを加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。DSは滴定に要した0.1N−H2SO4の量(ml)を次式に代入して算出した。
A=((100×F'−0.1N−H2SO4(ml)×F)×0.1)/H−CMCの絶乾重量(g)
DS=0.162×A/(1−0.058×A)(mol/C6)
A:H−CMC1gを中和するのに必要な1N−NaOHの量(ml)
F:0.1N−H2SO4のfactor
F':0.1N−NaOHのfactor
セルロースI型の結晶化度は、試料のX線回折を測定することで求めた。X線回折の測定は、試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(RAD−2Cシステム、理学電気社製)を用いて測定した。結晶化度の算出はSeagelらの手法(L.Seagel,J.J.Greely et al,Text.Res.J.,29,786,1959)、並びにKamideらの手法(K.Kamide,et al,polymer J.,17,909,1985)を用いて行い、X線回折図の2θ=4°〜32°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出した。
xc=(I002C−Ia)/I002C×100
xc=セルロースI型の結晶化度(%)
I002C:2θ=22.6°,002面の回折強度
Ia :2θ=18.5°,アモルファス部分の回折強度
レーザー回折・散乱式粒度分布計(マイクロトラック Model−9220−SRA、日機装(株)製)により測定される体積累計50%粒子径(平均粒子径)において、膨潤溶媒である水を分散媒に用いて測定した値の非膨潤溶媒であるメタノールを分散媒に用いて測定した値に対する比を膨潤度とした。
実施例および比較例の添加剤2gを水100ml中に加え、スターラーで3時間撹拌後、その状態を目視判定した。尚、評価は以下の様に定めた。尚、試料のうち一部でも不溶性を示せばその部分を分離、抽出等して不溶性のカルボキシメチルセルロース又はその塩として利用可能である。よって、下記評価のうち「×」のほか「△」である試料は、水不溶性を示すものと判断できる。
○:溶解、△:一部溶解、×:不溶
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム30部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、酢酸を26部添加して過剰のマーセル化剤を中和する。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸11部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度(DS)0.16のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明に用いた。
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム33部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、酢酸を16部添加して過剰のマーセル化剤を中和する。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸19部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.28のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明に用いた。
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム38部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、酢酸を13部添加して過剰のマーセル化剤を中和する。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸26部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.38のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明に用いた。
回転数100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)435部と水酸化ナトリウム39.5部を水65部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。45℃で30分攪拌、混合しマーセル化セルロースを調整後、50%モノクロル酢酸のIPA溶液9.0部を加え、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.06のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明に用いた。
回転数100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)435部と水酸化ナトリウム29.6部を水65部に溶解したものを加え、市販の晒クラフトパルプ(日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で1時間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調整後、50%モノクロル酢酸のIPA溶液14.0部を加え、70℃に昇温し90分反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.11のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明に用いた。
回転数100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム44.4部を水78部に溶解したものを加え、脱脂木粉100部を仕込んだ。45℃で30分攪拌、混合しマーセル化セルロースを調整後、50%モノクロル酢酸のIPA溶液28.0部を加え、70℃に昇温し90分反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.23のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明に用いた。
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム23部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸23部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.34のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明に用いた。
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム30部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸9部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.03のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明に用いた。
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム49部を水78部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸37部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.45のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明に用いた。
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム32.4部を水78部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、50%モノクロル酢酸のIPA溶液5.0部を加え、70℃に昇温し90分反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.005のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明に用いた。
水性飲食物として、市販の牛乳1リットルに、製造例1〜7の試料を2重量%添加し混合後、高圧ホモジナイザ(APV GAULIN LABORATORY HOMOGENIZER 15MR-8AT)にて、450Kgw/cm2(約44MPa)で1回〜5回パスさせた。
水性飲食物として、市販の牛乳1リットルに、製造例8〜10の試料を2重量%添加し混合の上、高圧ホモジナイザ(APV GAULIN LABORATORY HOMOGENIZER 15MR-8AT)にて、450Kgw/cm2(約44MPa)で1回〜5回パスさせた。
製造例1で調整した低置換度カルボキシメチルセルロース粉末を、水1リットルに10g添加後、高圧ホモジナイザ(APV GAULIN LABORATORY HOMOGENIZER 15MR-8AT)にて、500Kgw/cm2(約49MPa)で1回パスさせたのち、得られたゲル溶液にスキムミルクを50g添加し、攪拌機(機器名称)で500rpmで5分間で処理したが、均一なゲル状食品は得られなかった。
市販の牛乳1リットルに、ミクロフィブリル化セルロース(ダイセル化学株式会社製、商品名セリッシュFD-100F)の固形分が、溶液あたり20gとなるように添加後、高圧ホモジナイザ(APV GAULIN LABORATORY HOMOGENIZER 15MR-8AT)にて、530Kgw/cm2(約52MPa)で5回パスを行ったが、ゲル状食品は得られなかった。
Claims (4)
- 水に溶解あるいは分散していない粉末状の無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.4である水不溶性および/または水膨潤性のカルボキシメチルセルロースと水性飲食物(水を除く)とを混合した後、または混合しながら、高せん断処理するゲル状食品の製造方法。
- 前記カルボキシメチルセルロースが、非結晶であることを特徴とする請求項1に記載のゲル状食品の製造方法。
- 前記カルボキシメチルセルロースが、レーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累計50%粒子径に於いて、水を分散媒として測定した値のメタノールを分散媒として測定した値に対する比が2.0以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のゲル状食品の製造方法。
- 前記高せん断処理が、高圧ホモジナイザー処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル状食品の製造方法。
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