JP5573377B2 - 多層プラスチック容器 - Google Patents

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Description

本発明は、最内層にオレフィン系樹脂層を有しており、特にケチャップに代表される粘稠な非油性内容物を収容するために好適に用いられる多層プラスチック容器に関するものである。
プラスチック容器は、成形が容易であり、安価に製造できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面が低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成され且つダイレクトブロー成形で成形されたボトル形状のオレフィン系樹脂容器は、内容物を絞り出し易いという観点から、ケチャップなどの粘稠なスラリー状或いはペースト状の内容物を収容するための容器として好適に使用されている。
また、粘稠な内容物を収容するボトルでは、該内容物を速やかに排出するため、或いはボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、ボトルを倒立状態で保存しておかれる場合が多い。従って、ボトルを倒立させたときには、粘稠な内容物がボトル内壁面に付着残存せずに、速やかに落下するという特性が望まれている。
このような要求を満足するボトルとして、例えば、特許文献1には、最内層が、MFR(メルトフローレート)が10g/10min以上のオレフィン系樹脂からなる多層構造のボトルが提案されている。
この多層構造ボトルは、特にマヨネーズのような油脂分を含有する油性内容物を収容するために使用されるものであり、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
また、ケチャップのような植物繊維が水に分散されている粘稠な非油性内容物用のボトルについては、特許文献2或いは特許文献3に、最内層に滑剤として飽和或いは不飽和の脂肪族アミドが配合されたポリオレフィン系樹脂ボトルが提案されている。
特開2007−284066号公報 特開2008−222291号公報 特開2009−214914号公報
上述した特許文献に開示されているオレフィン系樹脂ボトルは、ボトル壁の内面を形成する樹脂層の材質の面から、ボトルを倒立状態に保持したときの内容物の滑落性を向上させたものであり、何れのボトルにおいても、程度の差はあるが、ボトルの胴部壁を速い滑落速度で粘稠な内容物が滑り落ちるため、倒立保存により、粘稠な内容物を胴部の内壁面に付着することなく、下方(ボトル口部側)に落下せしめ、該内容物を綺麗に且つ速やかに排出することができるというものである。
しかしながら、従来公知のオレフィン系樹脂容器では、粘稠な内容物に対する滑落性が経時と共に低下してしまうという問題があり、特に粘稠な内容物がケチャップなどの非油性内容物の場合には、滑落性の経時による低下が著しい。
また、本出願人は、先に、両親媒性分子からなる滑剤成分を含有するオレフィン系樹脂層が内面に形成されているオレフィン系樹脂容器であって、容器内部に非油性の内容物が熱間充填されている包装体において、容器内面に対し反射法によるX線回折測定を行ったときに、得られるX線プロファイルには、容器内面上に形成された滑剤多分子層構造に由来するピークが発現している包装体を提案した(PCT/JP2009/065828)。この包装体では、内容物が熱間充填されているにもかかわらず、ブリーディングにより滑剤分子が積み重なった多分子構造の層が形成されているため、非油性内容物に対して、安定した滑落性を示すのであるが、このような包装体においても、経時と共に、非油性内容物に対する滑落性が低下してしまうという問題があった。
従って、本発明の目的は、粘稠な内容物に対する優れた滑落性が長期間にわたって安定に維持される多層プラスチック容器を提供することにある。
本発明者等は、粘稠な内容物が充填され且つ容器内面に位置するオレフィン系樹脂層に滑剤が配合された多層プラスチック容器について、多くの実験を行った結果、該容器の内面に反射法によるX線回折測定を行ったときに得られるX線プロファイルに、容器内面にブリーディングした滑剤の多分子層構造に由来するピークを有しており、このピークの内、最大強度を示すピークがシャープであるときには、粘稠な内容物に対する滑落性が長期間にわたって安定に保持されるという新規知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明によれば、最内層に滑剤含有のオレフィン系樹脂層を有する多層プラスチ
ック容器において、
該容器の内面について、反射法によるX線回折測定を行ったときに得られるX線プロフ
ァイル(2θ/θ)は、容器内面にブリーディングした滑剤の多分子層構造に由来のピー
クを有しており、該ピーク中の最大強度を示すピークの半値幅が0.05乃至0.3の範
囲にあり、
密度が1.00g/cm 以上且つガラス転移点(Tg)が35℃以上の樹脂からなる滑剤遮断層を中間層として有し、前記滑剤遮断層よりも内側にある樹脂中に含まれる脂肪族アミドの平均濃度が、0.06質量%以上であることを特徴とする多層プラスチック容器が提供される。
本発明の多層プラスチック容器においては、
(1)前記最大強度を示すピークの半値幅が0.05乃至0.15の範囲にあること、
(2)前記滑剤として脂肪族アミドが使用されていること、
(3)前記滑剤遮断層よりも内側には、少なくとも2つの層を有していること、
)前記滑剤遮断層よりも内側の各層には、各層の樹脂に対する脂肪族アミドの濃度が
異なるように配合されていること、
)最内層に隣接する層が、最内層に比して脂肪族アミドの濃度が小さいこと、
)最内層が、最内層に隣接する層に比して脂肪族アミドの濃度が小さいこと、
)前記滑剤が不飽和脂肪族アミドであること、
)前記不飽和脂肪族アミドがオレイン酸アミドであること、
)前記多層プラスチック容器が非油性内容物用であること
好適である。
本発明の多層プラスチック容器は、容器内面について反射法によるX線回折測定を行ったときに、そのX線プロファイル(2θ/θ)には、容器内面への滑剤のブリーディングにより形成された滑剤多分子層構造に由来するピークが発現するが、このピークの内、最大ピーク強度を示すものが極めてシャープであり、特にその半値幅が0.05乃至0.2、好ましくは0.05乃至0.15の範囲にあるという点に顕著な特徴を有している。即ち、このようなシャープなピークが発現しているため、粘稠な内容物、特にケチャップ等の非油性内容物に対する優れた滑落性が長期間にわたって安定に維持されるのである。
例えば、後述する実験例に示されているように、本発明にしたがってシャープなX線回折ピークが発現するものに、ケチャップ等の非油性内容物が充填されたものでは、60日経過後においても高い滑落速度を示すのに対し、半値幅が大きなブロードなX線回折ピークを示すものでは、数日で滑落速度が低下してしまい、その滑落性が大きく低下してしまうのである。
本発明の容器の内面にブリーディングした滑剤(脂肪族アミド)の存在形態を示す図。 本発明の容器をキャップと共に示す図。 実験例1で作製された本発明の容器内面の反射法によるX線回折プロファイル(a)及びその最大ピークを拡大して示す図(b)。 実験例2で作製された本発明の容器内面の反射法によるX線回折プロファイル(a)及びその最大ピークを拡大して示す図(b)。 実験例1、2における滑落速度の保管期間依存性を示す図。
<X線回折プロファイル>
本発明においては、容器最内層のオレフィン系樹脂層には滑剤が配合されており、この滑剤のブリーディングにより容器内面に滑剤多分子層構造が形成され、この結果、粘稠な内容物、特にケチャップ等の非油性内容物に対する滑落性が向上し、例えばボトルを倒立保持させたときに速やかに粘稠な内容物を口部側に滑落させることができるわけである。
即ち、滑剤として脂肪族アミド等の両親媒性化合物を用いた場合、その分子は、親水性の極性基(アミド基)と疎水性の非極性基(炭化水素基)とを有しており、特にアミド基中の酸素原子と水素原子との間で水素結合が形成可能となっている。従って、図1の模式図に示されているように、最内層の表面にブリーディングした脂肪族アミド分子は、水素結合による極性基間の引力と、ファンデルワールス力による引力とにより多分子層を形成するものと思われる。このため、ケチャップ等の非油性の粘稠な内容物は、脂肪族アミドの多分子層上を滑落していくこととなる。この脂肪族アミドの多分子層における内容物側の表面は緻密な炭化水素基で覆われており、内容物と表面との相互作用が低減されていると思われる。また、この表面の緻密な炭化水素基は短いタイムスケールで分子運動をしていると思われる。したがって、表面と内容物(特に非油性内容物)との相互作用の低減、および、炭化水素基の短いタイムスケールの分子運動により、内容物との非付着性が発現すると考えられる。この結果として、ボトルを倒立保持したとき、粘稠な内容物は速い速度で滑落していき、優れた滑落性を示すものと信じられる。例えば、滑剤としてステアリン酸などの脂肪酸やパラフィンワックスなどは、このような多分子層を形成しないため、ボトルを倒立保持したときの滑落速度は遅く、粘稠な内容物の滑落性を向上させる機能はほとんど示さない。
ところで、このような容器の内面について、反射法によりX線回折測定を行って得られるX線プロファイルには、ブリーディングした滑剤の多分子層構造に由来して複数のピークが発現する(図3参照)。このピークの内、最大強度のピーク(ピーク強度が最も大きいもの、以下1次ピークと呼ぶ)は、容器内層表面に配列している滑剤分子層によるものであり、この1層分の面間隔からの回折に由来し、他のピーク(高次ピーク)は、滑剤分子の1層分の面間隔からの高次回折に由来する。例えば、この主ピークの位置は、用いる滑剤の種類によって異なるが、後述する脂肪族アミドが滑剤として使用されている場合には、2.2乃至2.6度(2θ)の領域に発現する。
本発明においては、上記の主ピークが極めてシャープであり、その半値幅が小さいレベル、具体的には、0.05乃至0.2、好ましくは0.05乃至0.15の範囲にある。このために、上述した滑剤多分子層構造による優れた滑落性向上効果が長期間にわたって安定に維持される。かかる効果は、実験により見出されたものであり、その正確な理由は推測の域を脱しないが、本発明者等は次のように推定している。
即ち、粘稠な内容物、特に非油性の内容物に対する滑落性は、図1に示されているような滑剤の多分子層構造が安定に保持されていることにより発現するものであるが、上述した主ピークがシャープな場合(半値幅が小さい値を示す場合)には、最下層の滑剤分子が緻密に且つ規則的に配列されているため、滑剤分子が安定に且つ規則正しく積み重なり、均一な厚みの多分子層構造が形成されるため、3次元に非常に堅固な分子間力が働くこととなる。この結果、このような滑剤多分子構造は崩壊し難く、優れた滑落性が長期間にわたって安定に維持されるものと推定される。これに対して、主ピークがブロードである場合(半値幅が大きい値を示す場合)には、最下層の滑剤分子が疎となり、これに積み重なる滑剤分子との分子間力が小さくなり、厚みムラも生じてしまい、滑剤多分子構造は容易に崩壊してしまう。この結果、短期間で滑落性が低下してしまうものと考えられる。
従って、本発明において、上述した主ピークの半値幅が上記範囲よりも大きな値を示す場合には、粘稠な内容物に対する滑落性が短期間で低下してしまい、本発明の目的を達成することができなくなってしまう。
また、主ピークの半値幅は、0.05が限界であり、これよりも小さい半値幅の主ピークを発現させることは困難である。
尚、半値幅とは、周知の如く、ピーク高さの1/2の点でのピーク幅を意味する。
<滑剤>
1.最内層用の滑剤;
上記の説明から理解されるように、本発明の多層プラスチック容器では、容器内面に位置する最内層のオレフィン系樹脂層に滑剤が配合されるが、かかる滑剤としては、前述した多分子層構造を容易に形成し得る脂肪族アミドが使用される。
上記のような脂肪族アミドとしては、不飽和脂肪族アミド及び飽和脂肪族アミドがあり、何れも本発明の目的に好適に使用することができる。
これらの内、不飽和脂肪族アミドとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、イソクロトンアミド、ウンデシレンアミド、セトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、オレイルパルミトアミド、ステアリルエルカミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミドを例示することができる。また、緻密な炭化水素基で覆われ、かつ分子運動性の高い多分子層を形成し得るという点で、適度な鎖長を有しているものが好適であり、特に炭素数が14〜24の範囲にある不飽和脂肪族アミド、例えばセトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミドが好ましく、オレイン酸アミドが最も好ましく、特に非油性内容物を常温充填する場合(一般に、5乃至60℃での充填)には、不飽和脂肪族アミドは最適である。即ち、不飽和脂肪族アミドは、飽和脂肪族アミドに比して低融点であり、分子の熱運動性が高いため、低温で容易に容器内面にブリーディングし易いからである。反面、殺菌を兼ねて、65乃至90℃で熱間充填する場合には、分子の熱運動性が高いため、ブリーディングにより形成された多分子層構造が熱間充填時に崩壊し易く、このため、熱間充填用としては適していない。
また、飽和脂肪族アミドとしては、ブチルアミド、ヘキシルアミド、デシルアミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドを例示することができる。また、このような飽和脂肪族アミドとしても、緻密な炭化水素基で覆われやすい多分子層を形成し得るという点で、適度な鎖長を有しているものが好適であり、特に炭素数が8〜24の範囲にある飽和脂肪族アミド、特にステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドが最適である。
上記の飽和脂肪族アミドは、特に非油性内容物を上記のような熱間充填する場合に適している。これらの飽和脂肪族アミドは、不飽和脂肪族アミドに比して高融点であり、分子の熱運動性が低く、ブリーディングし難いが、熱間充填時での加熱によりブリーディングが促進され、しかも、多分子層構造が熱間充填時により崩壊し難いからである。
尚、上述した不飽和及び飽和の脂肪族アミドの何れも1種単独或いは2種以上の組み合わせで使用することができるが、何れも1種単独で使用することが規則正しく配列した安定な多分子層構造を形成する上で好適である。
上記のような脂肪族アミドは、一般に、最内層を形成するオレフィン系樹脂層中に、0.05質量%以上、0.4質量%未満、特に0.07質量%以上、0.4質量%未満、最も好適には0.1質量%乃至0.3質量%の量で配合される。この配合量が少ないと、最内層表面へのブリーディング量が十分でなく、このため、前述したシャープな主ピークを有するX線回折プロファイルを示す多分子層構造を形成することが困難となってしまう。また、この配合量を必要以上に多量に配合した場合には、滑落性の向上には限界があり、それ以上の滑落性の向上は得られず、逆にコストや成形性等の点で不都合を生じるばかりか、容器壁に白化を生じてしまい、透明性が損なわれる結果、製品としての価値を大きく低減させてしまうことがある。
2.その他の滑剤;
本発明の多層プラスチック容器では、最内層のオレフィン系樹脂層に滑剤が配合されるが、これとは別に、ボトル外面に滑り性を付与し、ボトル搬送に際して、ボトル同士の粘着を防止してボトルの搬送を高めるために、最外層(或いは、最外層に隣接する層)に滑剤を配合することができる。このような滑剤としては、種々の公知のものを使用することができ、例えば、前述した脂肪族アミド以外に、
(イ)流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワック
ス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、
(ロ)ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、
(ハ)ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等
の脂肪酸エステル系のもの、
(ニ)セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、
(ホ)ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン、
(ヘ)ポリオルガノシロキサン、
などを挙げることができ、これらは、1種単独或いは2種以上を混合して使用することもできる。特にブリーディング性が良好であるという点で、脂肪族アミドが好適であり、中でもオレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪族アミドが低融点であり、最もブリーディングし易く、上記の目的には最適である。
上記のようなボトル外面に滑り性を付与するための滑剤は、オレフィン系樹脂の最内層
に配合された脂肪族アミドのブリーディングによる多分子層の形成に悪影響を及ぼさない
ように使用することが必要であり、このために、最内層とは別個の最外層或いは最外層に
隣接する層に、これらの滑剤を配合し、これらの滑剤を、最外層表面に選択的にブリーデ
ィングするように用いることが好ましい。例えば、最外層或いは最外層に隣接する隣接層
中に0.01〜0.5質量%、特に0.02〜0.1質量%の量で配合されるのがよい。
<層構造>
本発明のプラスチック容器は多層構造とし、容器内面の最内層のオレフィン系樹脂層に滑剤が配合されている。即ち、多層構造とすることにより、容器内面(最内層表面)への滑剤のブリーディング量を適度な範囲に調製することができ、良好な滑落性を安定して確保することが可能となる。例えば、容器壁を単層構造とした場合には、滑落性向上のために配合された滑剤が、容器内面側にブリーディングすると同時に、容器の外面側にもブリーディングしてしまうため、容器内面への滑剤のブリーディング量にバラツキを生じ易く、この結果、粘稠な内容物に対する滑落性が不安定となってしまうからである。
本発明の容器では、ケチャップに代表される粘稠な内容物(好ましくは非油性内容物)を容器内に充填し、これを絞り出しにより排出するという目的のため、内層にオレフィン系樹脂の層を形成すると同時に最外層もオレフィン系樹脂の層とするのがよい。
また、内容物の滑落性を向上させるために最内層に滑剤として脂肪族アミドを配合し、さらには、容器外面に滑り性を付与するために、好適には、最外層にも前述した滑剤が配合される。このため、最外層と最内層との間には、滑落性向上のための脂肪族アミドの最外層側へのブリーディングを防止するために、また、容器外面の滑り性を高めるための滑剤の最内層側へのブリーディングを防止するために、滑剤遮断性を有する中間層(滑剤遮断層)を設けることが好ましく、また、最外層に隣接する位置(最外層と滑剤遮断性の中間層との間)には、容器外面の滑り性を高めるための滑剤が配合された滑剤含有の隣接層が適宜設けられる。
さらには、滑剤遮断層よりも内側には少なくとも2つの層を設け(即ち、最内層と滑剤遮断層との間に少なくとも1つの層を設ける)、最内層と滑剤遮断層との間の層(特に最内層に隣接する層)により、容器内面(最内層表面)での滑剤のブリーディング量を調整することが好適である。
即ち、本発明の容器では、最内層表面にブリーディングにより滑剤の多分子層構造を形成させることが必要であり、この多分子層構造を形成させるためには、ある程度の時間が必要である。必要な時間は、容器の層構成、滑剤濃度、保管温度によっても異なるが、例えば、22℃保管であれば7日程度、30℃保管であれば1日程度の期間を必要とする。上記のように滑剤遮断層と最内層との間に少なくとも一つの層を設けることにより、滑剤のブリーディングの程度を適度な範囲に調節することが容易となる。
1.最内層及び最外層;
本発明において、容器の内面に位置し且つ内容物と接触する位置に設けられる最内層及び容器の外面に露出した最外層は、それ自体公知のオレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどにより形成される。勿論、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等に代表されるオレフィンと極性モノマーの共重合体等であってもよい。また、上述の樹脂のブレンドでしたものであってもよい。また、前述した特許文献1(特開2007−284066号)に開示されている環状オレフィン共重合体により最外層及び最内層を形成することもできる。
本発明において、特に好適に使用されるオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンであり、ポリエチレンであり、特に容器をボトル形状とし、このボトルにスクイズ性を付与し、内容物を絞り出しにより取り出すようにするには、低密度ポリエチレンや直鎖低密度ポリエチレンを用いて最外層及び最内層を形成するのがよい。
特に最内層表面への脂肪族アミドのブリーディング性や最外層表面への滑剤のブリーディング性を高めるという観点からは、前述したオレフィン系樹脂の中で、MFR(190℃)が10g/10min以上及び/又は密度が0.91g/cm以下の範囲にあるもの、特に密度が0.91g/cm以下の直鎖低密度ポリエチレン(以下、超低密度直鎖ポリエチレンと呼ぶことがある)が最適である。
この超低密度直鎖ポリエチレンは、従来公知の低密度のポリエチレンの中でも特に低密度であり、例えば、メタロセン系触媒を用いて、エチレンと少量のα−オレフィン(炭素数が8以下であるエチレン以外のα−オレフィン)を共重合して得られる極めて特殊な低密度ポリエチレンである。即ち、このようなオレフィン系樹脂により最内層或いは最外層を形成すると、これらの層が比較的ルーズな層となり、この結果、脂肪族アミドや滑剤のブリーディング性が向上し、安定して最内層表面に一定の多分子層が形成されて良好な滑落性を得ることができ、同様に、最外層においても滑剤が速やかに表面にブリーディングし、ボトル等の容器の搬送性が高められ、搬送時における容器同士のくっつきやベルト等の搬送材への容器の接着が効果的に防止することができる。
尚、上記のような最外層や最内層の厚みは、各層の機能が効果的に発揮され且つ必要以上に厚くならない程度に設定される。例えば、最外層では、その表面に滑剤が効果的にブリーディングし、優れた容器搬送性が確保でき、最内層は、容器内に収容される非油性内容物に対して、優れた滑落性が確保でき、しかも容器の全体厚みが不必要に厚くならない程度に、容器の層構造に応じて適宜設定される。
2.滑剤遮断層;
本発明においては、最外層と最内層との間に設けられる中間層に、滑剤遮断機能を持たせることにより、最内層表面への脂肪族アミドのブリーディングと最外層表面への滑剤のブリーディングとを完全に機能分離し、内容物に対する安定した滑落性を確保することができる。即ち、最外層或いは最外層隣接層に配合された滑剤が最内層の表面にブリーディングしてしまったり、或いは最内層に配合された脂肪族アミドが最外層表面にブリーディングしたりしてしまうと、最内層表面にブリーディングした脂肪族アミドの多分子層が不安定となったり、或いはそのブリーディング量が低減してしまい、この結果、滑落性が損なわれてしまうおそれを生じる。
このような滑剤遮断層は、通常、密度が1.00g/cm以上且つガラス転移点(Tg)が35℃以上の樹脂により形成される、即ち、このような樹脂により形成される層は緻密な層となり、これにより、該層が滑剤遮断層として有効に機能し、滑剤遮断層よりも外側の層に配合されている滑剤の最内層への移行或いは最内層に配合されている滑剤の最外層側への移行が有効に抑制され、内容物に対する滑落性を安定に保持することが可能となる。例えば、密度あるいはガラス転移点(Tg)が上記範囲よりも低い樹脂を用いて滑剤遮断層を形成する場合には、該層がルーズな層となってしまい、滑剤遮断層としての機能が発現せず、この結果、最内層表面への滑剤のブリーディング量が低下して滑落性が低下するおそれを生じてしまう。
上記のような滑剤遮断層を形成する樹脂としては、密度及びガラス転移点(Tg)の両者が上記範囲内である限り特に制限されず、成形可能な任意の熱可塑性樹脂を用いることができるが、一般的には、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)や芳香族ポリアミドなどのガスバリア性樹脂を用いることが好ましく、特にエチレンビニルアルコール共重合体を用いることが最も好適である。即ち、滑剤遮断層形成用の樹脂としてガスバリア性樹脂を用いることにより、滑剤遮断層に滑剤遮断性と共に酸素バリア性を付与することができ、特にエチレンビニルアルコール共重合体は、特に優れた酸素バリア性を示すため、酸素透過による内容物の酸化劣化をも有効に抑制することができ、優れた滑落性を維持せしめると同時に、優れた内容物保存性を確保することができる。
上記のようなエチレンビニルアルコール共重合体としては、一般に、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適であり、これらの中から、密度及びガラス転移点(Tg)が前述した範囲にあるものが選択的に使用される。
また、上記の滑剤遮断層の厚みは、一般に1乃至50μmの範囲、好適には9乃至40μmの範囲にあることが好ましい。この厚みが過度に薄いと、滑剤遮断性が低下してしまい、滑剤の最内面層側への移行を効果的に防止することが困難となるおそれがあり、また、厚みが過度に厚いと、滑剤遮断性のさらなる向上は得られず、かえってボトルの厚みが必要以上に厚くなったり、或いはコストの増大などの点で不都合を生じてしまうからである。
また、上記のようなガスバリア性樹脂を滑剤遮断層として用いる場合には、内外層との接着性を高め、デラミネーションを防止するために、接着剤樹脂層を介して滑剤遮断層を設けることが好ましい。これにより、滑剤遮断層をしっかりと内外層に接着固定することができる。このような接着樹脂層の形成に用いる接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。このような接着剤樹脂層の厚みは、適宜の接着力が得られる程度でよく、一般的には0.5乃至20μm、好適には1乃至8μm程度の厚みでよい。尚、このような接着剤樹脂層も、前述した密度及びガラス転移点の条件を満足すれば、滑剤遮断層として機能し得る。
3.最外層隣接層;
既に述べたように、本発明においては、容器外面に滑り性を発現させるためには、最外層に隣接する位置(例えば前述した滑剤遮断層と最外層との間)に所定量で滑剤を配合することが好適である。即ち、このような最外層隣接層を形成する樹脂としては、デラミネーションを防止するために、一般に、最外層と同種のオレフィン系樹脂が使用される。このような隣接層を最外層と接着性の乏しい樹脂を用いて形成した場合には、接着剤樹脂層を介在させることが必要となってしまい、コスト等の点で不利となってしまうからである。
また、上記のような最外層隣接層の形成には、この容器成形時に発生するリグラインド(スクラップ樹脂)をバージンのオレフィン系樹脂と混合して用いることもできる。この場合、成形性を維持しつつ、資源の再利用化を図るという観点から、リグラインドの量は、バージンのオレフィン系樹脂100重量部当り10乃至60重量部程度の量とするのがよい。
上記のような最外層隣接層の厚みは、容器壁の全体厚みが必要以上の厚みとならず且つこの層中に配合されている滑剤が最外層に速やかにブリーディングし得るような厚みとすればよく、一般に、20乃至200μm程度の厚みに設定される。
4.滑剤遮断層と最内層との間の層;
本発明においては、最も好適には、最内層と滑剤遮断層との間の位置に、少なくとも1つの層を設け、特に最内層に隣接する位置の層(以下、滑剤調節層と呼ぶ)に滑剤のブリーディングを調節する機能を持たせることが好ましい。即ち、最内層のオレフィン系樹脂層には適当量の滑剤が配合され、この滑剤のブリーディングにより、前述したシャープな主ピークを有するX線回折プロファイルを示す滑剤の多分子層を容器内面に形成するのであり、主ピークの半値幅は、当然、容器内面への滑剤のブリーディング量に依存し、滑剤のブリーディング量が多いほど小さくなり、また、この量は、経時と共に低下する傾向がある。従って、最内層に配合する滑剤の量は、前述した範囲で可及的に多くすることにより、半値幅が前述した範囲内となる主ピークを確実に発現させることが可能となるが、反面、最内層の滑剤量が多くなるほど、滑剤が過剰にブリーディングしてしまい、白化を生じ易くなってしまう。従って、最内層に隣接する位置に滑剤調節層を設けることにより、容器内面上への滑剤の過剰のブリーディングを防止し、これにより白化を効果的に防止すると共に、さらに最内層への滑剤の補給により常に前述したシャープなX線回折ピークを維持し、長期間にわたって優れた滑落性を確保することが可能となるわけである。
上記の説明から理解されるように、滑剤調節層は、最内層に配合されている滑剤の量を調節するために設けられる層であるため、最内層と同種のオレフィン系樹脂が使用される。前述した最外層隣接層と同様、滑剤調節層を最内層と接着性の乏しい樹脂を用いて形成した場合には、接着剤樹脂層を介在させることが必要となってしまい、コスト等の点で不利となってしまうからである。
また、最内層に配合されている滑剤(脂肪族アミド)を吸収・放出し易いという観点から、滑剤調節層を形成するオレフィン系樹脂も最内層と同様、ルーズな層であることが好ましく、従って、前述した低密度ポリエチレンもしくは超低密度直鎖ポリエチレンにより、滑剤調節層を形成することが最適である。
このような滑剤調節層は、最内層の滑剤濃度に応じて適当な量の滑剤を配合させることが望ましい。即ち、最内層に分散された滑剤は時間経過とともに、最内層表面にブリーディングされると同時に隣接層に拡散していく。隣接層への拡散は、最内層内と隣接層内の濃度勾配によって起こる。ブリーディング初期段階においては、隣接層への拡散よりも表面へのブリーディングを優先的に起こすことが好ましい。隣接層へ少量の滑剤を配合することにより、最内層と隣接層の濃度勾配が緩やかになり、最内層から隣接層への拡散よりも表面へのブリーディングを優先的に起こすことが可能となる。また、内容物が充填された後では、内層表面に形成された滑剤層がゆっくりと最内層の樹脂に吸収される可能性がある。この場合、内層の滑剤濃度がある程度高い状態にあれば、この吸収速度は緩やかになり、長期間にわたり安定的に滑剤層が形成されることとなる。こういった観点からも、滑剤調節層には適当な量の滑剤を含有させておくことが望ましい。
上記のような滑剤調節層は、滑剤遮断層と内層との間に2層以上形成することもできるが、一般には、最内層に隣接する層を滑剤調節層とするのがよい。また、滑剤調節層にも滑剤を配合する場合、この滑剤は、当然、最内層に配合されている滑剤(脂肪族アミド)と同種のものでなければならないが、最内層に前述した量で滑剤が配合されることを条件として、滑剤遮断層よりも内側の層には、平均して0.06質量%以上の量で滑剤を配合するのがよい。滑剤遮断層よりも内側に存在する滑剤の量が全体として少ない場合には、前述したシャープなX線回折ピークが長期間にわたって保持されるように、ブリーディング量を調節することが困難となってしまうからである。
また、滑剤調節層に配合される滑剤量は、最内層の厚み及び最内層に配合される滑剤量
、並びに滑剤吸収層の厚みに依存するが、上述した観点から、最内層中の滑剤濃度と滑剤
調節層中の滑剤濃度は、濃度勾配を有しているべきであり、例えば、最内層の滑剤濃度よ
りも滑剤調節層の滑剤濃度を低くし、或いは最内層の滑剤濃度よりも滑剤調節層の滑剤濃
度を高くする。特に、最内層の滑剤量と滑剤調節層の滑剤量とが、以下の条件を満足する
ことが好適である。
0.06 ≦(axA+bxB)/(a+b)≦ 0.2
式中、aは、最内層の厚み(μm)であり、
Aは、最内層の滑剤量(樹脂当りの質量%)であり、
bは、滑剤吸収層の厚み(μm)であり、
は、滑剤吸収層の滑剤量(樹脂当りの質量%)である。
即ち、滑剤調節層に配合される滑剤量が多すぎて上記の条件を満足しなくなるような場
合には、容器内面への過度のブリーディングを抑制するという機能が損なわれてしまい、
また、滑剤調節層に配合される滑剤量が少なく、上記の条件を満足しなくなるような場合
には、最内層表面に充分な量の滑剤をブリーディングさせることが困難となってしまうと
ともに、内容物を充填した後の最表面の滑剤の内層への吸収を低減することが困難となり
、長期安定性が低下してしまう。
尚、前述した各層には、それぞれの層に要求される特性を損なわない程度の量で、種々の配合剤、例えば、顔料、紫外線吸収剤等が適宜配合されていてよく、例えば滑剤調節層には、前述した最外層隣接層と同程度の量でリグラインドを使用することもできる。
上述した説明をまとめ、本発明のオレフィン系樹脂ボトルのボトル壁の層構成の好適例を示すと、以下の通りである。(以下の例示でADは、接着剤層を示す。)
最外層(含滑剤)/AD/滑剤遮断性中間層/AD/最内層(含滑剤)
最外層(滑剤フリー)/隣接層(含滑剤)/AD/滑剤遮断性中間層/AD/最内層(含滑剤)
最外層(含滑剤)/AD/滑剤遮断性中間層/AD/滑剤調節層(含滑剤または滑剤フリー)/最内層(含滑剤)
最外層(滑剤フリー)/隣接層(含滑剤)/AD/滑剤遮断性中間層/AD/滑剤調節層(含滑剤または滑剤フリー)/最内層(含滑剤)
上記のような層構造を有する本発明の多層プラスチック容器は、代表的には、各層を形成するための樹脂組成物を用いての共押出により、前述したチューブ状のパリソンを溶融押出し、例えば2分割金型を用いてのダイレクトブロー成形を行ってボトル形状に成形することにより製造される。勿論、所定の層構造を有する平板形状のプリフォームを押出成形、射出成形等により成形し、これをプラグアシスト成形し、カップ形状の容器とすることも可能である。
<容器の形態>
本発明の多層プラスチック容器は、粘稠な内容物の滑落性に優れていることから、ダイレクトブロー成形によりボトル形状に成形されていることが最適であり、このようなボトル形状の容器は、図2に示されている。即ち、かかる容器(ボトル)は、全体として10で示されており、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部壁15及び胴部壁15の下端を閉じている底壁17を有しており、このようなボトル10に非油性の粘稠な内容物を充填した後、首部11の上端開口部にアルミ箔等の金属箔19をヒートシールにより施し、所定のキャップ20を装着することにより、包装ボトルとして使用に供される。かかる包装ボトルでは、キャップ20を開封し、シール材が塗布された金属箔19を引き剥がし、ボトル10を傾倒乃至倒立させることにより、内容物の取り出しが行われる。
充填される内容物は、例えば、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、味噌類、各種ソース類等が好適であり、中でも粘稠なペースト乃至スラリー状のもの(特に25℃での粘度が100cps以上のもの)は、容器(ボトル)を倒立した状態で保存され、容器から絞り出されるため、本発明には特に好適である。
また、内容物の充填方式には、先にも述べたように、常温充填(5乃至60℃での充填)及び殺菌を兼ねた熱間充填(80乃至90℃)があるが、本発明の容器は、特に常温充填の場合に、滑落性を長期にわたって安定に維持するという本発明の効果が最大限に発揮される。熱間充填では、熱間充填時での加熱によりブリーディングした滑剤の多分子層構造が多少不安定となる傾向があるが、常温充填では、このような不都合は全く生ぜず、滑剤の多分子層構造がより安定に維持されるからである。
尚、常温充填の場合には、既に述べたように、最内層に配合される滑剤は、オレイン酸アミド等の不飽和脂肪族アミドが好適に使用される。
本発明を次の実験例にて説明する。
尚、以下の実験例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び容器(ボトル)の成形
に用いた樹脂等は次の通りである。
実験例2および実験例6は参考例とする。
1.内容物滑落試験
ボトルからケチャップを取り出した後、容器内面を蒸留水で洗浄、常温下で乾燥した。このボトルの胴部から10mm×60mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、70mgのケチャップを試験片にのせ、85°の傾斜角における滑落挙動をカメラで測定するとともに、滑落挙動を解析し移動距離−時間のプロットから滑落速度を算出した。この滑落速度を滑落性の指標とした。前記滑落速度の値が大きい程、ケチャップの滑落性が優れている。
2.X線回折測定
容器胴部から25mmx20mmの試験片を切り出し、測定用セルに取り付け、容器内面側が測定面となるようにして試料台に装着し、ターゲットとしてCuを用い、電圧40KV、電流200mAの条件で、2θ=1.5〜9°の範囲を反射法にてX線回折測定(理学電機(株)社製)を行った。得られた測定データに対し、空気散乱補正を行い、これを試料データとした。得られた試料データにおいて、最大強度を示すピークを1次ピークとし、このピークの半値幅を算出した。
<最外層形成用樹脂>
樹脂A:
低密度ポリエチレン
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
(滑剤として、オレイン酸アミドを0.03質量%含有)
樹脂B:
低密度ポリエチレン
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
(滑剤として、オレイン酸アミド0.3質量%含有)
<接着剤層>
無水マレイン酸変性ポリエチレン
<滑剤遮断層(中間層)>
エチレンビニルアルコール共重合体(密度1.19g/cm、Tg69℃)
<最内層用樹脂>
樹脂A:
低密度ポリエチレン
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
(滑剤として、オレイン酸アミド0.03質量%含有)
樹脂B:
低密度ポリエチレン
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
(滑剤として、オレイン酸アミド0.3質量%含有)
<滑剤調節層用樹脂>
樹脂A :
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
(滑剤として、オレイン酸アミド0.03質量%含有)
(実験例1)
50mm押出機に滑剤調節層用樹脂として、オレイン酸アミドを0.03質量%含有す
る低密度ポリエチレン(樹脂A)、40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂と
して、オレイン酸アミド0.3質量%含有する低密度ポリエチレン(樹脂B)、30mm
押出機Aに接着剤層形成用樹脂として無水マレイン酸変性ポリエチレン、30mm押出機
Bに滑剤遮断性中間層形成用樹脂としてエチレンビニルアルコール共重合体の樹脂ペレッ
トをそれぞれ供給し、温度210度の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、公知
のダイレクトブロー成形法により内容量500g、重量20gのケチャップ用4種6層の
多層ボトルを作製した。
このボトルの胴部層構成は以下の通りである。
最外層:30μm
接着材層:10μm
滑剤遮断性中間層:25μm
接着材層:10μm
最内隣接層(滑剤調節層):190μm
最内層:160μm
成形後のボトルを22℃60%RHの環境下で10日保管した後、温度45℃のトマトケチャップを充填した後、口部をシールし、22℃60%RHの環境下で所定期間保管した。保管日数が3日、14日、60日のボトルに対し、内容物滑落試験、およびX線回折測定を行った。また、X線回折測定に関しては、充填前の空ボトルに対しても行った。充填前の空ボトルのX線回折測定結果を図3に示した。以上の結果をまとめて表1に示した。また、滑落速度の保管期間依存性を図5に示した。
(実験例2)
最内層および最外層形成用樹脂を樹脂A(オレイン酸アミド0.03質量%)とした以
外は実験例1と同様にし、ボトルを作製した。成形後のボトルを22℃60%RHの環境
下で10日保管した後、温度45℃のトマトケチャップを充填した後、口部をシールし、
22℃60%RHの環境下で所定期間保管した。保管日数が3日、14日、60日のボト
ルに対し、実験例1と同様に、内容物滑落試験およびX線回折測定を行った。また、X線
回折測定に関しては、充填前の空ボトルに対しても行った。充填前の空ボトルのX線回折
測定結果を図4に示した。以上の結果を表1に示した。また、滑落速度の保管期間依存性
を図5に示した。
実験例1、2で作製したボトルの層構成、層比率および、各層へのオレイン酸アミドの仕込み濃度、滑剤遮断層より内層側の平均オレイン酸アミド濃度について、まとめて表2に示した。
Figure 0005573377
表1より、実験例1では充填後60日間にわたり、滑落速度は15mm/min以上と高い値を維持しており、滑落性が高いことが判る。加えて、X線回折測定の結果から、充填後60日においても、1次ピークの半値幅が0.15以下の値を維持することが判る。一方、実験例2においては、充填後日数0日においては滑落速度が15mm/min以上の高い値を示すが、充填後3日で滑落速度は5mm/min以下と低減し、さらに保管日数を増加させても滑落速度は小さく、滑落性が低いことが判る。また、X線回折測定の結果から、1次ピークの半値値は、初期値の0.23から0.39と増加した後、ピークが消失することがわかる。
以上の結果から、実験例1では、1次ピークの半値幅が0.15以下と小さい値に維持されているため、滑落速度が高く保持されるのに対し、実験例2では、1次ピークの値が大きくなり、次第にピークが消滅するため、滑落速度が低下していると言える。
Figure 0005573377
(実験例3〜6)
層比率を変更した以外は実験例1と同様にし、ボトルを作製した。成形後のボトルを22℃60%RHの環境下で70日保管した後、温度45℃のトマトケチャップを充填した後、口部をシールし、22℃60%RHの環境下で所定期間保管した。保管日数が6日、13日、28日のボトルに対し、X線回折測定を行った。また、X線回折測定に関しては、充填前の空ボトルに対しても行った。X線回折測定の結果を表3に示した。実験例3〜6で作製したボトルの層構成、層比率および、各層へのオレイン酸アミドの仕込み濃度、滑剤遮断層より内層側の平均オレイン酸アミド濃度について、まとめて表2に示した。
Figure 0005573377
表3より、実験例3〜5では、保管日数が28日においても、1次ピークの半値幅が0.25以下と低い値を維持していることが分かる。一方、実験例6では、保管日数28日において半値幅が0.48と高い値となっている。この結果から、実験例3〜5では、長期間にわたり安定的に表面に構造が維持されるが、実験例6では、構造が不安定化していると言える。
10:多層プラスチック容器(ボトル)
11:首部
13:肩部
15:胴部壁
17:底壁
19:金属箔
20:キャップ

Claims (10)

  1. 最内層に滑剤含有のオレフィン系樹脂層を有する多層プラスチック容器において、
    該容器の内面について、反射法によるX線回折測定を行ったときに得られるX線プロファイル(2θ/θ)は、容器内面にブリーディングした滑剤の多分子層構造に由来のピークを有しており、該ピーク中の最大強度を示すピークの半値幅が0.05乃至0.3の範囲にあり、
    密度が1.00g/cm 以上且つガラス転移点(Tg)が35℃以上の樹脂からなる滑剤遮断層を中間層として有し、前記滑剤遮断層よりも内側にある樹脂中に含まれる脂肪族アミドの平均濃度が、0.06質量%以上であることを特徴とする多層プラスチック容器。
  2. 前記最大強度を示すピークの半値幅が0.05乃至0.25の範囲にある請求項1に記載の多層プラスチック容器。
  3. 前記滑剤として脂肪族アミドが使用されている請求項1又は2に記載の多層プラスチック容器。
  4. 前記滑剤遮断層よりも内側には、少なくとも2つの層を有している請求項に記載の多層プラスチック容器。
  5. 前記滑剤遮断層よりも内側の各層には、各層の樹脂に対する脂肪族アミドの濃度が異なるように配合されている請求項に記載の多層プラスチック容器。
  6. 最内層に隣接する層が、最内層に比して脂肪族アミドの濃度が小さい請求項4または5の何れかに記載の多層プラスチック容器。
  7. 最内層が、最内層に隣接する層に比して脂肪族アミドの濃度が小さい請求項4または5の何れかに記載の多層プラスチック容器。
  8. 前記滑剤が不飽和脂肪族アミドである請求項1〜の何れかに記載の多層プラスチック容器。
  9. 前記不飽和脂肪族アミドがオレイン酸アミドである請求項1〜の何れかに記載の多層プラスチック容器。
  10. 前記多層プラスチック容器が非油性内容物用である請求項1〜の何れかに記載の多層プラスチック容器
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