JP6446889B2 - 樹脂製表面を有する容器 - Google Patents
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Description
かかる技術によれば、基材表面を形成する樹脂に滑剤などの添加剤を加える場合と比して、滑り性を飛躍的に高めることができるため、現在注目されている。
(1)前記樹脂製表面は、オレフィン系樹脂で形成されていること、
(2)前記オレフィン系樹脂がポリエチレンであり、前記オレフィン系ワックスが少なくともエチレン系ワックスを含むこと、
(3)前記オレフィン系樹脂がポリプロピレンであり、前記オレフィン系ワックスが少なくともプロピレン系ワックスを含むこと、
(4)前記容器の内面は、水平面に対する傾斜角45度となるように傾斜した状態で、粘度(25℃)が100mPa・s以上の粘稠な物質70mgを、45℃において滑落させたときの滑落速度が4mm/min以上となる表面特性を有していること、
(5)45℃において前記粘稠な物質を滑落させたときの滑落速度が55℃において滑落させたときの滑落速度に比して大であること、
が好適である。
即ち、本発明は、このような表面特性を容器に適用したものであり、内容物として親水性の粘稠な内容物(例えばケチャップやマヨネーズなど)を選択し、該オレフィン系ワックス層が液状化する適度な加熱環境下で使用することにより、該内容物に対する滑り性を高め、容器の内面に内容物が付着残存せず、速やかに内容物を排出せしめ、しかも、容器内の内容物のほぼ全量を使い切ることができる。特に、業務用の厨房などは、このオレフィン系ワックス層の少なくとも一部を固体から液状にし得る程度の高温環境(35〜55℃)になるため、このような容器は、特に業務用に適している。
かかる構造体において、表面を形成する下地樹脂は、成形可能な任意の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であってよいが、一般的には、成形が容易であり且つオレフィン系ワックス層を脱落することなく安定に保持できるという観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、以下のものを例示することができる。
オレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体など;
エチレン・ビニル系共重合体、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等;
スチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等;
ビニル系樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等;
ポリアミド樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等;
ポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等;
ポリカーボネート樹脂;
ポリフエニレンオキサイド樹脂;
生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸など;
勿論、成形性が損なわれない限り、これらの熱可塑性樹脂のブレンド物を、下地樹脂として使用することもできる。
なお、このオレフィン系樹脂は、押出し成形や射出成形などの熱成形に適した流動特性を有するものであり、オレフィン系ワックスとは異なり、融点が高く、且つ数平均分子量も20000以上と極めて大きい。
本発明においては、上述した下地樹脂の表面にオレフィン系ワックス層が設けられ、これにより、オレフィン系ワックス層が形成される側を容器内面側とすることにより、親水性流動物質に対して優れた滑り性や撥水性が付与され、容器内容物を速やかに排出することができる。
即ち、この融点が高すぎると、オレフィン系ワックス層を液状化するのにかなりの高温に加熱する必要があり、その実用性に難を生じるおそれがある。一方、融点が低すぎると、生産ライン等で液状化が生じ易くなってしまい、生産ラインの汚染などの不都合を生じ易くなってしまう。なお、この融点は、DSC昇温曲線でのピークトップで示される。
さらに、かかるオレフィン系ワックスの(融点+20)℃での粘度は、20Pa・s以下であることが好ましい。この粘度が高すぎると、下地樹脂層の表面に均一な厚みの層を形成するためには、該ワックスを高温に加熱しなければならず、この結果、下地樹脂の変形等を生じ易くなるおそれがある。
本発明の構造体は、上述したオレフィン系ワックス層が下地樹脂の表面に形成されている限りにおいて、その層構造は制限されない。
例えば、本発明の構造体は、下地樹脂のみによる単層構造の上にオレフィン系ワックス層を有していてもよいし、下地樹脂をガラスや金属、或いは紙等に塗布して下地樹脂層が形成されている構造とすることも可能であるし、さらに、他の樹脂層と積層した多層構造とすることも可能である。何れにしろ、下地樹脂の表面にオレフィン系ワックス層が形成されていればよい。
かかる多層構造での酸素バリア層は、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアミドなどの酸素バリア性樹脂により形成されるものであり、その酸素バリア性が損なわれない限りにおいて、酸素バリア性樹脂に他の熱可塑性樹脂がブレンドされていてもよい。
また、酸素吸収層は、特開2002−240813号等に記載されているように、酸化性重合体及び遷移金属系触媒を含む層であり、遷移金属系触媒の作用により酸化性重合体が酸素による酸化を受け、これにより、酸素を吸収して酸素の透過を遮断する。このような酸化性重合体及び遷移金属系触媒は、上記の特開2002−240813号等に詳細に説明されているので、その詳細は省略するが、酸化性重合体の代表的な例は、第3級炭素原子を有するオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレンやポリブテン−1等、或いはこれらの共重合体)、熱可塑性ポリエステル若しくは脂肪族ポリアミド;キシリレン基含有ポリアミド樹脂;エチレン系不飽和基含有重合体(例えばブタジエン等のポリエンから誘導される重合体);などである。また、遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属の無機塩、有機酸塩或いは錯塩が代表的である。
さらに、各層の接着のために使用される接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。
上述した各層の厚みは、各層に要求される特性に応じて、適宜の厚みに設定されればよい。
さらに、上記のような多層構造の構造体を成形する際に発生するバリ等のスクラップをオレフィン系樹脂等のバージンの樹脂とブレンドとしたリグライド層を内層として設けることも可能である。
本発明の構造体は、種々の形態を有することができるが、特に液層を形成する液体の選択により粘稠な流動性物質に対する滑り性を向上させることができることから、包装容器や蓋材、キャップなどの包装材の形態で使用されることが好ましい。
例えば、このような容器の形態は特に制限されず、カップ乃至コップ状、ボトル状、袋状(パウチ)、シリンジ状、ツボ状、トレイ状等、容器材質に応じた形態を有していてよく、延伸成形されていてもよい。
即ち、図1において、全体として10で示されるこのボトルは、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部壁15及び胴部壁15の下端を閉じている底壁17を有しており、このようなボトル10の内面に前述した液層が形成され、且つ粘稠な内容物が充填されることとなる。
尚、実験例で行った各種の評価或いは測定、及び用いた材料等は以下の通りである。
使用するオレフィン系ワックス(各々約7mg)について、示差走査熱量計(PERKIN ELMER社製Diamond DSC)を用いて融点測定を行った。
試料を、25℃から120℃まで昇温速度10℃/minで走査し、120℃にて3分間保持した。次に、120℃から−50℃まで降温速度10℃/minで走査し、−50℃にて3分間保持した。その後、−50℃から120℃まで昇温速度10℃/minで走査した際に得られたプロファイルから、各ワックスの融点(融解ピーク温度)と融解熱を求めた。得られたプロファイルにおいて、融解ピークが複数現れた場合は、ピーク高さが最も大きいものをメインピークとし、それ以外はサブピークとした。
後述の方法で作製した、オレフィン系ワックス層が表面に被覆された多層フィルムから20mmx70mmの試験片を切り出した。切り出した試験片を温度変調可能な治具にワックス層が表面に被覆された面が上になるように固定し、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、70mgの流動性内容物を試験片にのせ、45°の傾斜角における滑落挙動をカメラで撮影し、滑落挙動を解析し、移動距離−時間のプロットから滑落速度を算出した。この滑落速度を滑落性の指標とした。前記滑落速度の値が大きい程、内容物の滑落性が優れている。なお、測定温度は23℃、45℃、55℃とした。
用いた流動性内容物は下記の通りである。なお、内容物の粘度として、音叉型振動式粘度系SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて25、46℃で測定した値も共に示す。
用いた流動性内容物;
ソース(お好みソース、オタフクソース(株)製)
粘度:560mPa・s(25℃)、410mPa・s(46℃)
後述の方法で作製したオレフィン系ワックス層が表面に被覆された多層フィルムをステンレス製のブロックに接触させ、ワックス層がブロックcに移行するかを目視にて確認した。接触後も移行が確認されなかったものを○、移行が確認されたものを×とした。
総厚み:150μm
層構成:ナイロン/接着/AL/接着/LDPE
用いたオレフィン系ワックスの物性値を下記に示す。融点および結晶の融解熱は前述の示差走査熱量測定によって測定した。代表的な例としてエチレン系ワックスB、Cおよび炭化水素系ワックスBの昇温プロファイルを図2に示す。
エチレン系ワックスA:融点=45℃(メイン)、29℃(サブ)、24℃(サブ)
エチレン系ワックスB:融点=51℃(メイン)、28℃(サブ)
エチレン系ワックスC:融点=59℃(メイン)、42℃(サブ)
炭化水素系ワックスA:融点=55℃(メイン)、74℃(サブ)
炭化水素系ワックスB:融点=69℃(メイン)
ここで、前述の流動性内容物の滑落速度測定の各温度において、用いたオレフィン系ワックスの状態を把握するため、得られた全融解熱のうち、23℃以下、45℃以下、55℃以下の温度域に存在する融解熱の割合を融解率として求めた。結果をまとめて表1に示す。例えば、ある温度Tで融解率が0%となる場合、温度T以下の融解熱が存在せず、オレフィン系ワックスは固体状態であること、また、ある温度Tで融解率が20%の場合、温度Tにおいては、全結晶成分のうち20%は融解しており、液状化した成分が20%存在することを示す。
エチレン系ワックスA5gとヘプタン(特級、和光純薬工業(株)製)45gをガラス瓶中に秤量し、スターラーを用いて攪拌し、エチレン系ワックスA10wt%の溶液を調製した。調製した溶液は室温下でエチレン系ワックスAがヘプタン中に均一に溶解し、透明な溶液となった。
100mmx150mmのポリエチレン系多層フィルムのLDPE面上に調製した溶液をバーコートし、40℃で5分乾燥した後、室温下で充分に乾燥させて、ワックス被覆多層フィルムを作製した。乾燥後、膜厚計を用いて、ワックス層の厚みを測定した。ワックス層の厚みは4μmであった。
作製したワックス被覆フィルムを用いて、前述の流動性内容物の滑落速度測定、金属への移行性試験を行った。結果を表2に示す。
エチレン系ワックスB5gとヘプタン(特級、和光純薬工業(株)製)45gをガラス瓶中に秤量した。エチレン系ワックスBは室温下でヘプタンに溶解しなかったため、ホットスターラーを用いて加熱攪拌し、エチレン系ワックスB10wt%の溶液を調製した。調製した溶液は加熱下でエチレン系ワックスBがヘプタン中に均一に溶解し、透明な溶液となった。この透明な溶液を攪拌しながら徐冷し、エチレン系ワックスBがヘプタン中に微分散した分散液を得た。
100mmx150mmのポリエチレン系多層フィルムのLDPE面上に調製した分散液をバーコートし、40℃で5分乾燥した後、室温下で充分に乾燥させて、ワックス被覆多層フィルムを作製した。乾燥後、膜厚計を用いて、ワックス層の厚みを測定した。ワックス層の厚みは3μmであった。
作製したワックス被覆フィルムを用いて、前述の流動性内容物の滑落速度測定、金属への移行性試験を行った。結果を表2に示す。
エチレン系ワックスCを用いた以外は実験例2と同様の手順でワックス被覆多層フィルムを作製した。ワックス層の厚みは4μmであった。
作製したワックス被覆フィルムを用いて、前述の流動性内容物の滑落速度測定、金属への移行性試験を行った。結果を表2に示す。
炭化水素系ワックスAを用いる点、バーコーターの番手を変更した以外は実験例2と同様の手順でワックス被覆多層フィルムを作製した。ワックス層の厚みは10μmであった。
作製したワックス被覆フィルムを用いて、前述の流動性内容物の滑落速度測定、金属への移行性試験を行った。結果を表2に示す。
炭化水素系ワックスBを用いる点、バーコーターの番手を変更した以外は実験例2と同様の手順でワックス被覆多層フィルムを作製した。ワックス層の厚みは15μmであった。
作製したワックス被覆フィルムを用いて、前述の流動性内容物の滑落速度測定、金属への移行性試験を行った。結果を表2に示す。
多層フィルムにワックスを被覆せず、前述の流動性内容物の滑落速度測定、金属への移行性試験を行った。結果を表2に示す。
実験例6では、ワックス被覆は行っていないため、55℃においても、内容物と多層フィルム表面との接触形態は液/固接触であるといえる。一方、実験例1から5においては、表面に被覆したワックス成分の少なくとも一部は液状化しており、内容物との接触形態が液/液接触となっていることと考えられる。このため、実験例1から5では実験例6に比べ、明らかに大きな滑落速度を示したと解釈できる。
一般的に、オレフィン系ワックスにおいて、低融点成分は高融点成分よりも低分子量であるため、融解後の液状時における粘度は高融点成分よりも低くなる。従って、ワックス層を形成するワックス成分に融点の異なる複数の成分を混合させておくことにより、ワックス成分中の全成分が液状化しうるような高い温度域でなく、ワックス成分中の一部が液状化した比較的低い温度からも、本発明による表面特性の改質効果を発現することが可能であることが分かる。
11:首部
13:肩部
15:胴部壁
17:底壁
Claims (6)
- 樹脂製表面が内面に形成されている容器において、該樹脂製表面には、25〜80℃の融点を有する2種以上のオレフィン系ワックスを含むワックス層が1〜30μmの厚みで形成されており、且つ前記2種以上のオレフィン系ワックスは、少なくとも一部が35〜55℃の温度で液状で存在するように選択されていることを特徴とする容器。
- 前記樹脂製表面は、オレフィン系樹脂で形成されている請求項1に記載の容器。
- 前記オレフィン系樹脂がポリエチレンであり、前記オレフィン系ワックスが少なくともエチレン系ワックスを含む請求項2に記載の容器。
- 前記オレフィン系樹脂がポリプロピレンであり、前記オレフィン系ワックスが少なくともプロピレン系ワックスを含む請求項2に記載の容器。
- 前記容器の内面は、水平面に対する傾斜角45度となるように傾斜した状態で、粘度(25℃)が100mPa・s以上の粘稠な物質70mgを、45℃において滑落させたときの滑落速度が4mm/min以上となる表面特性を有している請求項1〜4の何れかに記載の容器。
- 45℃において前記粘稠な物質を滑落させたときの滑落速度が55℃において滑落させたときの滑落速度に比して大である請求項5に記載の容器。
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