JP5573261B2 - 積層セラミックコンデンサ、その製造方法及び内部応力評価方法 - Google Patents

積層セラミックコンデンサ、その製造方法及び内部応力評価方法 Download PDF

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本発明は、積層セラミックコンデンサ、その製造方法及び内部応力評価方法に関する。特には、本発明は、誘電体セラミックスからなるコンデンサ本体と、コンデンサ本体内に設けられており、セラミック層を介して互いに対向している第1及び第2の電極とを備える積層セラミックコンデンサ、その製造方法及び内部応力評価方法に関する。
積層セラミックコンデンサは、小型で高い信頼性を有していることから、研究開発が盛んに行われている。
例えば、下記の特許文献1には、PdまたはPd−Agからなる内部電極層を有する積層セラミックコンデンサであって、X線残留応力測定により算出されるセラミック結晶に作用している圧縮残留応力が50MPa以下である積層セラミックコンデンサが提案されている。この積層セラミックコンデンサでは、セラミック結晶に作用している圧縮残留応力が50MPa以下であるため、高い抗折強度が得られる旨が特許文献1に記載されている。
下記の特許文献2には、積層誘電体素子本体の内部に、積層誘電体素子本体での電界方向と平行な方向の引張応力が残留しており、X線回折測定により算出される引張応力の値が50MPa以上である積層セラミックコンデンサが提案されている。この積層セラミックコンデンサでは、引張応力の値が50MPa以上であるため、誘電率を高くすると共に、取得静電容量を大きくできる旨が特許文献2に記載されている。
また、下記の特許文献3には、コンデンサ本体の有効部の積層方向における上下に位置している保護層のセラミック誘電体層を形成する結晶粒子の平均粒子径が、有効部のセラミック誘電体層を形成する結晶粒子の平均粒子径よりも小さく、かつ、残留圧縮応力が−250MPa以下である積層セラミックコンデンサが提案されている。この積層セラミックコンデンサでは、残留圧縮応力が−250MPa以下であるため、粒子径が小さな誘電体粉末を用いて作製した場合であっても高容量化し得る旨が特許文献3に記載されている。
特開平8−236386号公報 WO 2005/050679 A1号公報 特開2007−123835号公報
ところで、積層セラミックコンデンサが組み込まれた電子機器が駆動されると、積層セラミックコンデンサにも電圧が印加され、その結果、積層セラミックコンデンサの温度も上昇する。このため、積層セラミックコンデンサには、高温雰囲気中において、高電界を印加したときの絶縁破壊電圧が高いことが求められる。
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の積層セラミックコンデンサでは、高温雰囲気中において、高電界を印加したときの絶縁破壊電圧が低い場合があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温雰囲気中において、高電界を印加したときの絶縁破壊電圧が高い積層セラミックコンデンサを提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、常温で、電界を印加していない状態から、高温雰囲気中において電界を印加したときの内部電極の格子定数の変化率が、高温雰囲気中において、高電界を印加したときの絶縁破壊電圧に大きく関与していることを見出した。その結果、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明に係る積層セラミックコンデンサは、コンデンサ本体と、第1及び第2の電極とを備えている。コンデンサ本体は、誘電体セラミックスからなる。第1及び第2の電極は、コンデンサ本体内に設けられている。第1及び第2の電極は、セラミック層を介して互いに対向している。本発明に係る積層セラミックコンデンサでは、300Kにおいて電界を印加していない状態の第1及び第2の電極の格子定数をaとし、400Kにおいて30kV/mmの電界を印加したときの第1及び第2の電極の格子定数をaとしたときに、(|a−a|×100)/aが0.18以下である。
本発明に係る積層セラミックコンデンサのある特定の局面では、(|a−a|×100)/aは、0.15以下である。この構成によれば、高温雰囲気中において、高電界を印加したときの絶縁破壊電圧をより高めることができる。
本発明に係る積層セラミックコンデンサの他の特定の局面では、誘電体セラミックスは、チタン酸バリウム系セラミックスを主成分としており、かつ希土類元素R(Rは、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びYから選ばれる少なくとも1種である。)を、Ti100モル部に対して、6モル部以上含む。
本発明に係る積層セラミックコンデンサの内部応力評価方法は、誘電体セラミックスからなるコンデンサ本体と、コンデンサ本体内に設けられており、セラミック層を介して互いに対向している第1及び第2の電極とを備える積層セラミックコンデンサの内部応力の大きさを評価する方法に関する。本発明に係る積層セラミックコンデンサの内部応力評価方法では、300Kにおいて電界を印加していない状態の第1及び第2の電極の格子定数a を放射光X線回折測定により測定すると共に、400Kにおいて30kV/mmの電界を印加したときの第1及び第2の電極の格子定数a を放射光X線回折測定により測定し、(|a −a |×100)/a の大きさに基づいて積層セラミックコンデンサの内部応力の大きさを評価する。この場合、高温雰囲気中において、高電界を印加したときに積層セラミックコンデンサに発生する内部応力を評価することができる。
本発明に係る積層セラミックコンデンサでは、(|a−a|×100)/aが0.18以下である。このため、高温雰囲気中において、高電界を印加したときの絶縁破壊電圧が高い積層セラミックコンデンサを得ることができる。
本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法では、焼成工程において、誘電体セラミックスの粒子径が、原料粉末の粒子径の3倍以上となるまで焼成を行う。このため、高電界を印加したときの絶縁破壊電圧が高い積層セラミックコンデンサを製造することができる。
本発明に係る積層セラミックコンデンサの内部応力評価方法では、放射光X線回折測定により得られる第1及び第2の電極の格子定数に基づいて、積層セラミックコンデンサの内部応力の大きさを評価する。このため、積層セラミックコンデンサを破壊することなく、内部応力を正確に見積もることができる。
本発明を実施した一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの略図的断面図である。 放射X線透過回折測定を説明するための模式図である。 実験例における、内部電極格子定数変化率と、破壊電圧との関係を表すグラフである。
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1に示す積層セラミックコンデンサ1を例に挙げて説明する。但し、積層セラミックコンデンサ1は、単なる例示である。本発明は、積層セラミックコンデンサ1及びその製造方法に何ら限定されない。
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、定格電圧として誘電体素子に10kV/mm以上の高電界が印加される積層セラミックコンデンサである。
図1に示すように、積層セラミックコンデンサ1は、略直方体状のコンデンサ本体10を備えている。コンデンサ本体10は、誘電体セラミックスからなる。具体的には、本実施形態では、コンデンサ本体10は、BaTiOなどのチタン酸バリウム系セラミックスを主成分としており、かつ、希土類元素R(Rは、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びYから選ばれる少なくとも1種である。)を、Ti100モル部に対して、6モル部以上含む誘電体セラミックスからなる。
コンデンサ本体10の内部には、複数の第1及び第2の内部電極11,12が設けられている。第1及び第2の内部電極11,12は、コンデンサ本体10の第1及び第2の主面10a、10bに対して平行である。複数の第1及び第2の内部電極12は、積層方向(高さ方向)において、交互に配置されている。複数の第1及び第2の内部電極11,12は、コンデンサ本体10内において、セラミック層10eを介して互いに対向するように設けられている。
コンデンサ本体10内のセラミック層10eの層数は、特に限定されないが、セラミック層10eの層数が多い方が、小型化及び高容量化できるため、セラミック層10eの層数は、多い方が好ましい。但し、セラミック層10eの層数が多く、各セラミック層10eの厚みが薄すぎると、耐電力性が低くなりすぎる場合がある。従って、セラミック層10eの層数は、例えば、10〜1000程度であることが好ましく、30〜500程度であることがより好ましい。セラミック層10eの厚みは、0.3μm〜40μm程度であることが好ましく、1μm〜20μm程度であることがより好ましい。
第1及び第2の内部電極11,12は、適宜の導電材料により形成することができる。例えば、第1及び第2の内部電極11,12は、Pt,Au,Ag,Cu,Ni及びPdからなる群から選ばれた金属、もしくは、Pt,Au,Ag,Cu,Ni及びPdからなる群から選ばれた一種以上の金属を含む合金により形成することができる。第1及び第2の内部電極11,12は、例えば、上記金属や合金からなる複数の導電膜の積層体により構成されていてもよい。
コンデンサ本体10の第1の端面10cの上には、第1の外部電極13が形成されている。第1の内部電極11は、第1の端面10cに引き出されており、第1の外部電極13に接続されている。
一方、コンデンサ本体10の第2の端面10dの上には、第2の外部電極14が形成されている。第2の内部電極12は、第2の端面10dに引き出されており、第2の外部電極14に接続されている。
上記第1及び第2の外部電極13,14も、適宜の導電材料により形成することができる。例えば、第1及び第2の外部電極13,14は、Pt,Au,Ag,Cu,Ni及びPdからなる群から選ばれた金属、もしくは、Pt,Au,Ag,Cu,Ni及びPdからなる群から選ばれた一種以上の金属を含む合金により形成することができる。第1及び第2の外部電極13,14は、上記金属や合金からなる複数の導電膜の積層体により構成されていてもよい。その場合、例えば、第1及び第2の外部電極13,14のコンデンサ本体10側の導電膜が、焼成膜により構成されており、外側の導電膜がめっき膜により構成されていてもよい。
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1では、300Kにおいて電界を印加していない状態の前記第1及び第2の電極の格子定数をaとし、400Kにおいて30kV/mmの電界を印加したときの前記第1及び第2の電極の格子定数をaとしたときに、(|a−a|×100)/aは、0.18以下である。(|a−a|×100)/aは、0.15以下であることが好ましく、0.14以下であることがより好ましい。
本実施形態のように、(|a−a|×100)/aを0.18以下、好ましくは、0.15以下、より好ましくは、0.14以下とすることにより、後述する実験例においても裏付けられるように、高温雰囲気中において、高電界を印加したときの絶縁破壊電圧を高めることができる。
ところで、絶縁破壊は、絶縁性を担保しているセラミック層10eが損傷することにより発生する。このセラミック層10eの損傷は、電気的に生じる場合と、機械的に生じる場合とがあるが、近年の積層数が多い積層セラミックコンデンサにおいては、セラミック層10eの機械的な損傷が支配的となる。このことから、従来、絶縁破壊は、積層セラミックコンデンサの残留応力を小さくすることにより抑制できるものと考えられていた。
しかしながら、本発明者が鋭意研究した結果、積層セラミックコンデンサの残留応力を十分に小さくした場合であっても、積層セラミックコンデンサの耐電圧性を十分に高めることができない場合があることが見出された。また、本発明者は、電界の印加によりセラミック層に生じた歪みに起因して、セラミック層と内部電極との間の界面に応力がかかることによって、セラミック層が損傷していることを見出した。具体的には、応力印加の継続や、繰り返しにより、セラミック層にマイクロクラックなどのクラックが進展し、最終的には、第1及び第2の内部電極11,12間の短絡に至っていることが分かった。さらに、本発明者は、電界の印加によりセラミック層に生じた歪みに起因して、内部電極に、セラミック層よりも大きな歪みが生じていることを見出した。
以上の結果を踏まえ、本発明者らは、積層セラミックコンデンサの絶縁破壊電圧を高めるためには、常温、電圧無印加状態から、高温、高電界印加状態に変化したときの、内部電極の格子定数変化を小さくすることが必要であるものと考え、さらに実験を繰り返した。その結果、内部電極11,12の格子定数変化率(|a−a|×100)/aを0.18以下、好ましくは、0.15以下、より好ましくは、0.14以下とすることにより、高温雰囲気中において、高電界を印加したときの絶縁破壊電圧を高められることが分かった。
ここで、従来、内部電極の格子定数変化率を測定する方法としては、積層セラミックコンデンサを研磨や切断することにより、断面を露出させ、その断面のX線回折測定を行う方法が知られていた。しかしながら、内部電極の格子定数は、断面を露出させることにより変化するものと考えられる。また、露出した断面は、損傷を受けた面であり、断面における内部電極は、損傷を受けていない内部電極と性状が異なっているものと考えられる。従って、この方法では、断面が露出していない状態の積層セラミックコンデンサにおける内部電極の格子定数変化率を正確に測定することは困難であった。
また、断面を露出させた状態で、例えば、2kV/mm以上という高電界を印加すると、第1及び第2の内部電極間が短絡してしまう。従って、高電界印加状態における内部電極の格子定数を測定することも困難であった。
本発明者らは、鋭意研究の結果、高いエネルギーを有する放射光X線回折測定(放射光XRD測定)により、積層セラミックコンデンサ1内の内部電極11,12の格子定数を非破壊検査できることを見出した。この方法によれば、断面を露出させる必要がないため、積層セラミックコンデンサ1内の内部電極11,12の内部応力を正確に見積もることができる。また、高電界を印加したときにも、第1及び第2の内部電極11,12間で短絡が生じにくいため、高温、高電界印加時の内部電極11,12の格子定数の測定も可能である。従って、この方法を用いて測定した内部電極11,12の格子定数変化率を用いて、高温、高電界印加時における積層セラミックコンデンサ1の内部、特には、セラミック層10eと内部電極11,12との界面における応力の大きさを評価することにより、積層セラミックコンデンサ1の耐電圧性を正確に評価することができる。
次に、積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例について説明する。
まず、コンデンサ本体10を作製するためのセラミックグリーンシートを用意する。このセラミックグリーンシートは、希土類元素の酸化物の粉末と、チタン酸バリウム系セラミックス粉末と、適宜の焼結助剤などとを含んでいる。
次に、このセラミックグリーンシートの上に、導電性ペーストを塗布することにより、内部電極11,12形成用の導電パターンを形成する。次に、上記導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートと、導電パターンが形成されていないセラミックグリーンシートとを適宜積層した後に、静水圧プレスを行うことにより、マザー積層体を形成する。次に、このマザー積層体を複数に分断することにより、生のコンデンサ本体を作製する。この生のコンデンサ本体を焼成することにより、コンデンサ本体10を作製する(焼成工程)。
次に、コンデンサ本体10の上に、外部電極13,14を適宜の方法により形成することにより、積層セラミックコンデンサ1を完成させることができる。なお、外部電極13,14は、例えば、導電性ペーストを塗布した後に焼成する方法や、めっき法により形成することができる。
上記製造方法において、格子定数変化率(|a−a|×100)/aは、焼成工程の温度や時間、セラミックグリーンシートに含まれる、誘電体セラミックスの原料粉末の組成により制御することができる。具体的には、格子定数変化率(|a−a|×100)/aは、セラミックグリーンシートに含まれる原料粉末の粒子径に対する誘電体セラミックスの粒子径の比((誘電体セラミックスの粒子径)/(原料粉末の粒子径))を大きくすることにより小さくできる。例えば、((誘電体セラミックスの粒子径)/(原料粉末の粒子径))を3倍以上とすることにより、格子定数変化率(|a−a|×100)/aを0.18以下とすることができる。格子定数変化率(|a−a|×100)/aを0.15以下とするためには、((誘電体セラミックスの粒子径)/(原料粉末の粒子径))を1.8倍以上とする必要がある。
なお、単に((誘電体セラミックスの粒子径)/(原料粉末の粒子径))を3倍以上としたのみでは、本実施形態の効果が得られない場合がある。本実施形態の効果は、チタン酸バリウム系セラミックスを主成分としており、かつ、希土類元素Rを含む誘電体セラミックスを得る際に、((誘電体セラミックスの粒子径)/(原料粉末の粒子径))を3倍以上とすることによって初めて得られるものである。
なお、原料粉末の粒子径とは、原料粉末が、希土類元素の酸化物の粉末と、チタン酸バリウム系セラミックス粉末とを含む場合は、チタン酸バリウム系セラミックス粉末の粒子径のことである。
チタン酸バリウム系セラミック粉末の粒子径は、特に限定されない。チタン酸バリウム系セラミック粉末の平均粒子径は、例えば、0.05μm〜1μm程度であることが好ましい。希土類元素の酸化物の粉末の平均粒子径は、例えば、0.03μm〜0.5μm程度であることが好ましい。
原料粉末に添加されている希土類元素Rの種類は、特に限定されないが、例えば、Ho,Y,Dy,Gd,Tb,Smなどであることが好ましい。この場合、良好な誘電特性と絶縁劣化耐性とが得られるためである。
なお、((誘電体セラミックスの粒子径)/(原料粉末の粒子径))を大きくすることにより、格子定数変化率(|a−a|×100)/aを小さくできるのは、十分に焼成を進行させることにより、((誘電体セラミックスの粒子径)/(原料粉末の粒子径))を大きくすることによって、90°ドメインの量を減少させることができるためであると考えられる。例えば、180°ドメインは、高温、高電界印加状態となったときに分極方向が反転する方向に移動する。すなわち、180°ドメインは、高温、高電界印加状態となったときに180°反転するが、それによっては、大きな体積変化は生じない。それに対して、90°ドメインは、高温、高電界印加状態となったときに90°回転するため、90°ドメインが多く存在するほど、大きな体積変化が生じることとなる。従って、誘電体セラミックの粒子径が十分に大きくなるまで、十分に焼成を進行させることにより、90°ドメインの量を低減することによって、格子定数変化率(|a−a|×100)/aを小さくできるものと考えられる。
また、希土類元素Rの含有量が多いほど、90°ドメインの量を低減できるものと考えられる。従って、希土類元素Rを、Ti100モル部に対して、6モル部以上含有させる必要がある。希土類元素Rを、Ti100モル部に対して、8モル部以上含有させることがより好ましい。但し、希土類元素Rの含有量が多すぎると、誘電率が低下する場合がある。このため、希土類元素Rの含有量は、Ti100モル部に対して、30モル部以下であることが好ましい。
(実験例)
以下、具体的な実験例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
出発原料として固相法で作製した平均一次粒子径0.13μmのBaTiOを用いた。なお、共沈法、水熱法、蓚酸法等の他の合成方法で作製したBaTiOを用いても構わない。
上記作製のBaTiO100molに対して、下記の表1に記載の量の希土類酸化物RO3/2及びMgOと、1molのMnOと、1molのBaCOと、2molのSiOとを加え、ボールミル(直径1mmφの部分安定化ZrO玉石を使用)を用いて、水中にて20時間混合することにより、均一に分散させたスラリーを得た。なお、いずれの添加成分も一次粒子径が0.1μm未満の原料を用いた。
次に、上記作製のスラリーに、ポリビニルブチラール系バインダーおよびエタノールなどの有機溶媒を加えて、ボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを作製した。このセラミックスラリーをドクターブレード法により、シート成形し、矩形のグリーンシートを得た。なお、グリーンシートの厚みは、焼成後のセラミック層の厚みが10μmとなるような厚みとした。
次に、上記セラミックグリーンシート上に、Niを導電成分として含む導電性ペーストをスクリーン印刷し、内部電極を構成するための導電ペースト層を形成した。
導電ペースト層が形成されたセラミックグリーンシートを、導電ペースト層の引き出されている側が互い違いになるように36枚積層すると共に、その積層方向における上下に、導電ペースト層が形成されていないセラミックグリーンシートを積層することにより、積層体を得た。なお、導電ペースト層が形成されていないセラミックグリーンシートにより形成される保護層の焼成後の厚みが50μmとなるように、導電ペースト層が形成されていないセラミックグリーンシートを積層した。
得られた積層体を、N雰囲気中にて350℃に加熱し、バインダーを燃焼させた後、H−N−HOガスからなる還元性雰囲気中、Ni/NiO平衡酸素分圧よりも2桁低い酸素分圧にて、下記の表1に示す焼成温度で180分間保持することにより、所望の粒子径の誘電体セラミックスからなるセラミック積層体からなるコンデンサ本体を作製した。
次に、コンデンサ本体の両端面にガラスフリットを含有するCuペーストを塗布し、N雰囲気中において800℃で焼き付けることにより、第1及び第2の外部電極を形成することによって、試料1〜7に係る積層セラミックコンデンサを完成させた。
上記作製の各積層セラミックコンデンサの幅および厚さは約0.5mmであり、積層セラミックコンデンサの内部電極間に介在する誘電体セラミック層の厚みは約10μmであった。また、有効誘電体セラミック層の総数は35であった。
次に、上記作製の各積層セラミックコンデンサについて、高温破壊電圧試験、粒子径測定および放射光XRD測定を行った。
高温破壊電圧試験では、温度400Kにおいて、試料に印加する電圧を100V/sの速度で増加させていき、リークする電流が100mAを超えたときの印加電圧(破壊電圧)を測定した。この高温破壊電圧試験を各試料につき、5個ずつ行い、破壊電圧の平均値を算出した。結果を下記の表1に示す。
粒子径測定では、積層セラミックコンデンサを破断し、1000℃で5分間熱処理した後に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、セラミック層の粒子の平均粒子径(面積平均径)を測定した。
XRD測定は、積層セラミックコンデンサを透過して測定することが可能な高エネルギーの放射光を使用できるSPring−8 BL02B2の大型デバイシェラーカメラでイメージングプレートに撮像する方式で、300Kで電界を印加していない状態と、400Kで300V(30kV/mm)の電界を印加した状態との両方において行った。そして、その測定結果から、内部電極の格子定数変化率(|a−a|×100)/aを算出した。結果を、下記の表1に示す。
なお、このXRD測定には、35keVの放射光(波長λ≒0.35Å)を用いた。測定温度は窒素ガス吹き付け装置で制御した。電界は、直流安定化電源にて印加した。また、電界(内部電極面)に平行な方向における内部電極の格子面間隔を調べるために、X線の入射方向、および積層セラミックコンデンサの位置を図2に示す通り設定し、Niの(222)面の回折条件を満足する入射角となるように積層セラミックコンデンサを傾けた条件(θ≒10°)にてXRD測定を行った。
具体的には、窒素ガス吹き付け装置で試料温度を300Kに設定してから5分以上経過し、十分に試料の均熱性が保てる状態となってからX線を5分間照射して、300K−無電界でのX線回折パターンを得た。その後、窒素ガス吹き付け装置で試料温度を400Kに設定してから5分以上経過し、十分に試料の均熱性が保てる状態となってから電界の印加を開始し、電界を印加してから5分経過後にX線を5分間照射してX線回折パターンを得た。
格子定数はNiの(222)面のピークをシグマ関数でフィッティングし、そのピーク位置2θから(222)面の格子面間隔dをd=λ/(2sinθ)により算出し、立方晶のNiの格子定数aをa=d・(2+2+21/2により算出した。なお、λは放射光X線の波長である。
Figure 0005573261
図3は、実験例における、内部電極格子定数変化率と、破壊電圧との関係を表すグラフである。図3及び上記表1に示すように、内部電極の格子定数変化率が小さくなるほど破壊電圧が高くなることが分かる。但し、内部電極の格子定数変化率が0.18より大きい場合は、内部電極の格子定数変化率を小さくしても、絶縁破壊電圧は、それほど高くならない。内部電極の格子定数変化率が0.18以下であれば、内部電極の格子定数変化率が小さくなるに従って絶縁破壊電圧が高くなる。従って、内部電極の格子定数変化率は、0.18以下であることが好ましい。
内部電極の格子定数変化率が0.18〜0.15の間において、内部電極格子定数変化率に対する破壊電圧の変化率が特に大きい。内部電極格子定数変化率が0.15以下の領域では、内部電極格子定数変化率に対する破壊電圧の変化率が小さくなる。特に、内部電極格子定数変化率が0.14以下の領域では、内部電極格子定数変化率に対する破壊電圧の変化率がより小さくなる。すなわち、内部電極格子定数変化率を0.15以下、より好ましくは、0.14以下とすることにより、より高い破壊電圧を有し、かつ、製造条件のばらつきにより、内部電極格子定数変化率がばらついたときにも、破壊電圧のばらつきが少ない積層セラミックコンデンサを得ることができる。従って、内部電極格子定数変化率は、0.15以下であることが好ましく、0.14以下であることがより好ましいことが分かる。
なお、上述の内部電極の格子定数測定は、微小な格子定数変化でも検出可能で、かつ回折強度が十分に得られる角度であったため、Niの(222)面のピークを評価指標としたが、他のピークを評価指標として用いてもよい。また、ここでは、積層方向(=電圧印加方向)における格子定数変化率を測定することで応力の評価を行ったが、積層方向とは異なる方向における格子定数変化率を測定することで応力の評価を行うこともできる。また、ここでは、放射光を試料全面に照射したが、端面上の外部電極に照射させずに測定することも可能である。特に外部電極にNiを多量に含む場合には、内部の応力状態を正確に反映するために、外部電極に照射しないように、ビームの絞りを小さくすることが好ましい。
1…積層セラミックコンデンサ
10…コンデンサ本体
10a…コンデンサ本体の第1の主面
10b…コンデンサ本体の第2の主面
10c…コンデンサ本体の第1の端面
10d…コンデンサ本体の第2の端面
10e…セラミック層
11…第1の内部電極
12…第2の内部電極
13…第1の外部電極
14…第2の外部電極

Claims (4)

  1. 誘電体セラミックスからなるコンデンサ本体と、
    前記コンデンサ本体内に設けられており、セラミック層を介して互いに対向している第1及び第2の電極とを備え、
    300Kにおいて電界を印加していない状態の前記第1及び第2の電極の格子定数をaとし、400Kにおいて30kV/mmの電界を印加したときの前記第1及び第2の電極の格子定数をaとしたときに、(|a−a|×100)/aが0.18以下である、積層セラミックコンデンサ。
  2. (|a−a|×100)/aが0.15以下である、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
  3. 前記誘電体セラミックスは、チタン酸バリウム系セラミックスを主成分としており、かつ希土類元素R(Rは、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びYから選ばれる少なくとも1種である。)を、Ti100モル部に対して、6モル部以上含む、請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ。
  4. 誘電体セラミックスからなるコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体内に設けられており、セラミック層を介して互いに対向している第1及び第2の電極とを備える積層セラミックコンデンサの内部応力の大きさを評価する方法であって、
    300Kにおいて電界を印加していない状態の前記第1及び第2の電極の格子定数a を放射光X線回折測定により測定すると共に、400Kにおいて30kV/mmの電界を印加したときの前記第1及び第2の電極の格子定数a を放射光X線回折測定により測定し、(|a −a |×100)/a の大きさに基づいて前記積層セラミックコンデンサの内部応力の大きさを評価する、積層セラミックコンデンサの内部応力評価方法。
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