JP5570057B2 - 高相溶性、水性ブロックポリイソシアネート - Google Patents
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Description
地球環境負荷低減のため、優れた性能を発揮するウレタン系塗料組成物に用いる硬化剤であるポリイソシアネートの水性化検討が行われている。1液性塗料組成物の硬化剤である、ブロックポリイソシアネートに関しても多くの提案がなされている。
ブロックポリイソシアネートを水性化する有力な方法の1つは親水基をブロックポリイソシアネートに付加することが挙げられる。親水基が付加された、ブロックポリイソシアネートは、ブロックイソシアネートの官能基数が多くの場合、低下する。この場合、ジオールなどで鎖延長し、ブロックイソシアネート基の官能基数の増加する技術がある。
しかしながら、この技術は分子量の増加を伴い、同時に使用する樹脂との相溶性を低下させる場合があり、その使用が制限されていた。
更に親水基の多くは、ウレタン塗料組成物の主成分樹脂であるポリオールとの相溶性が良好でないことも、その使用を制限する場合があった。
一方、ブロックポリイソシアネートの低温硬化性の向上が望まれている。ピラゾール系化合物でイソシアネート基がブロックされた、低温硬化性を有する水性ブロックポリイソシアネートに関する、いくつかの提案がある(特許文献1,2)。
1.下記成分組成を有する、水性ブロックポリイソシアネート。
1)脂肪族ジイソシアネートモノマー及び/又は脂環族ジイソシアネートモノマーの少なくとも1種以上から誘導される、イソシアヌレート基を含むポリイソシアネートから誘導される構成単位の割合が25〜75質量%。
2)ジオールから誘導される構成単位(上記1)に含まれるものを除く)の割合が2〜10質量%。
3)数平均分子量300〜2000の、プロピレンオキサイドが重合したモノオールから誘導される構成単位の割合が1〜30質量%。
4)片末端水酸基であるポリエチレンオキサイドから誘導される構成単位の割合が5〜40質量%。
5)ブロック剤から誘導される構成単位の割合が10〜40質量%。
2.前記ブロック剤がピラゾール系化合物である、1の水性ブロックポリイソシアネート。
3.前記脂肪族ジイソシアネートモノマー及び/または脂環族ジイソシアネートモノマーがヘキサメチレンジイソシアネートである、1,または2の水性ブロックポリイソシアネート。
4.1,2,または3のいずれかに記載の水性ブロックポリイソシアネートを含む水性塗料組成物。
本発明に用いることのできる脂肪族、脂環族ジイソシアネートとは、その構造の中にベンゼン環を含まない。脂肪族ジイソシアネートモノマーとしては、炭素数4〜30のものが好ましく、例えば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることが出来る。脂環族ジイソシアネートとしては炭素数8〜30のものが好ましく、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIと言う)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどがある。なかでも、耐候性、工業的入手の容易さから、HDIが好ましい。2種以上併用することもできる。
このポリイソシアネートは、イソシアヌレート基以外の例えば、ビウレット基、尿素基、ウレトジオン基、ウレタン基、アロファネート基、オキサジアジントリオン基等を同時に含むことができる。
イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートは例えば触媒などによりイソシアヌレート化反応を行い、所定の転化率になった時に反応を停止し、ジイソシアネートモノマーを除去して得られる。
イソシアヌレート化反応の反応温度は50〜200℃、好ましくは50〜150℃である。50℃未満では、反応が進み難く、200℃を越えると製品の着色など好ましくない副反応が生じる場合がある。
反応終了後、ジイソシアネートモノマーは薄膜蒸発缶、抽出などにより除去され、実質的にジイソシアネートモノマーを含まないものとなる。得られたポリイソシアネート中の残留未反応ジイソシアネート濃度は3質量%以下、好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。ジイソシアネートモノマー濃度が3質量%を越えると、これを使用して、得られるブロックポリイソシアネートの硬化性が低下する場合がある。
本発明に用いることのできるポリイソシアネートの粘度は25℃において、400〜30000mPa.sであり、好ましくは500〜10000、更に好ましくは550〜4000である。
ポリイソシアネート統計的平均の1分子が有するイソシアネート基数は3〜15、好ましくは3〜10であり、更に好ましくは3〜5である。3未満の場合は架橋性が劣る場合があり、15を超えると、溶剤への溶解性が悪くなる場合がある。
前記のポリエステルジオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸の群から選ばれた二塩基酸の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの群から選ばれた2価アルコールの単独または混合物との縮合反応によって得られるポリエステルジオール及び例えばε−カプロラクトンを2価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類などが挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレンなどが挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしてはアルキル基の炭素数が1〜12のもの、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。
ジアリールカーボネートとしてはアリール基の炭素数が6〜20のもの、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。
アルキレンカーボネートとしては5〜7員環からなり、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
これらのカーボネートモノマーは単独であるいは2種以上の組合せでもよい。
これらジオールの数平均分子量は200〜1500であり、好ましくは300〜1000であり、更に好ましくは300〜800である。
前記の炭素数3以上のアルキレンオキサイドとは、例えば、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどがあり、プロピレンオキサイドが好ましい。
これらのアルキレンオキサイドの単独または混合物を前記の開始モノアルコールに、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体などの複合金属シアン化合物錯体などを使用して、付加して得られる。
本発明に用いるモノオール(1)の数平均分子量は300〜2000であり、好ましくは300〜1500、更に好ましくは350〜1000である。モノオールの数平均分子量が300未満であると、これを使用して得られるブロックポリイソシアネートのポリオールとの相溶性が低下する場合があり、2000を超えるとその塗膜の硬度が低下する場合がある。
この分子量は300〜2000、好ましくは300〜1500、更に好ましくは500〜1000である。
(1)メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのアルコール類、
(2)アルキルフェノール系;炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノおよびジアルキルフェノール類であって、例えばn−プロピルフェノール、i−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類、
(3)フェノール系;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等、
(4)活性メチレン系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、
(5)メルカプタン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、
(6)酸アミド系;アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、
(7)酸イミド系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、
(8)イミダゾール系;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等、
(9)尿素系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、
(10)オキシム系;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、
(11)アミン系;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等、
(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等、及び
(13)ピラゾール系;ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等がある。これらを2種以上併用することができる。好ましいブロック剤はアミン系好ましくは脂肪族アミン系またはピラゾール系化合物であり、更に好ましいブロック剤はピラゾール系化合物であり、特に3,5−ジメチルピラゾールが好ましい。
以上説明したポリイソシアネート、ジオール、モノオール(1)、(2)及びブロック剤を反応させ、本発明の水性ブロックポリイソシアネートを得ることができる。ジオール、モノオール(1)、(2)及びブロック剤の活性水素はいずれも、ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応する。これら各成分の反応順序はいずれでもよいが、ブロック剤とイソシアネート基を反応させることにより、イソシアネート基のすべてが反応することが好ましい。ブロック剤以外の各成分とイソシアネート基を反応させた後、イソシアネート基のすべてが反応することは、その原料の計量変動により、これら成分がが最終的にイソシアネート基と反応しない状態で残る可能性があり好ましくない。最終的にブロック剤が若干未反応状態で残ることが好ましい。
必要に応じて、完全アルキル型、メチロール基型アルキル、イミノ基型アルキル等のメラミン系硬化剤を添加することができる。
・数平均分子量の測定:
数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPCという)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置:東ソー(株)HLC−802A
カラム:東ソー(株)G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折計
・ヘキサン希釈性(ポリオールとの相溶性指標):
ブロックポリイソシアネートをトルエンで75質量%に希釈する。23℃で、この希釈液10gにn−ヘキサンを滴下する。濁りが生じた時のn−ヘキサンの質量を記録する。n−ヘキサンの質量が大きいほどポリオールとの相溶性は良好である。
・水分散性:
水性ブロックポリイソシアネートが30質量%になるように純水を混合し、攪拌する。攪拌後、目視で沈殿物の有無を観察し、沈殿物がない場合を○、ある場合を×として表した。
(製造例1:ポリイソシアネートの製造)
(実施例1)
この水性ブロックポリイソシアネートの水分散性は○であり、ヘキサン希釈性は13であった。
(実施例2、比較例1)
Claims (4)
- 下記成分組成を有する、水性ブロックポリイソシアネート。
1)脂肪族ジイソシアネートモノマー及び/または脂環族ジイソシアネートモノマーの少なくとも1種以上から誘導される、イソシアヌレート基を含むポリイソシアネートから誘導される構成単位の割合が25〜75質量%。
2)ジオールから誘導される構成単位(上記1)に含まれるものを除く)の割合が2〜10質量%。
3)数平均分子量300〜2000の、プロピレンオキサイドが重合したモノオールから誘導される構成単位の割合が1〜30質量%。
4)片末端水酸基であるポリエチレンオキサイドから誘導される構成単位の割合が5〜40質量%。
5)ブロック剤から誘導される構成単位の割合が10〜40質量% - 前記ブロック剤がピラゾール系化合物である、請求項1記載の水性ブロックポリイソシアネート。
- 前記脂肪族ジイソシアネートモノマー及び/または脂環族ジイソシアネートモノマーがヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項1,または2記載の水性ブロックポリイソシアネート。
- 請求項1,2,または3のいずれかに記載の水性ブロックポリイソシアネートを含む水性塗料組成物。
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