JP5570028B2 - シール部材、シール部材の製造方法、シール部材の使用方法、流水用管路、及び流水用管路の製造方法 - Google Patents

シール部材、シール部材の製造方法、シール部材の使用方法、流水用管路、及び流水用管路の製造方法 Download PDF

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本発明は、シール部材、シール部材の製造方法、シール部材の使用方法、流水用管路、及び流水用管路の製造方法に関するものである。
地上から視認される場所に設置される排水溝や、地中に埋設されるボックスカルバートのような流水用管路は、複数の短尺の管状体が接続されることにより形成されている。従って、その継ぎ目は、管路を流れる水が管外に染み出たり、又は管外の水分が逆に管内に混入したりする最も可能性の高い箇所となるため、特に高度なシール性ないし止水性(以下、総称して「シール性」という)が求められる。
従来から、管状体を接続する継ぎ手(以下、「管継手」という)のシール性を高める技術が複数開示されている(例えば、特許文献1及び2)。
特開2004−336953号公報 特開2008−14455号公報
しかしながら、流水用管路の規模によっては管継手では対応できない場合がある。そのような場合には、管状体自体の接続が適切に行わなければ、十分な止水効果が得られないこととなる。また、たとえシール性を高めた材料が開発されても、流水用管路の製造過程においてその能力が十分に発揮されるように取り扱わなければ、その材料の効能を生かせているは言えない。したがって、管状体の規模あるいは形状への依存性が小さく、また流水用管路の製造過程における作業性にも十分に配慮されたシール部材の開発は、未だ道半ばである。
本発明は、上述の技術課題を解決することにより、管状体の規模あるいは形状への依存性が小さく、また作業性にも十分に配慮されたシール部材を提供するとともに、複数の管状体が接続された流水用管路の製造技術の向上に大きく貢献するものである。
本願発明者らは、これまで行ってきた水分を吸収する材料の開発とともに、その能力を最も効果的に引き出す構造を創出することが、流水状管路の接続部に用いるシール部材にとって重要な要素の一つであると考えた。特に、下水管のような長期間に渡って安定的に止水効果を発揮することを要求されるシール部材にとっては、前述のような観点での構造の創出が急務であると本願発明者らは考え、鋭意研究及び開発を進めた。
その結果、水分吸収性の高い膨張体の性能を十分に生かすために、そのような膨張体を複数の管状体が接続される直前まで外気に曝露されないようにするとともに、接続直前にはその曝露が作業者によって容易に実現できるシール部材の構造及び使用方法と、流水状管路の製造方法を本発明者らは見出した。さらに本発明者らは、そのシール部材を製造する際にも、前述の膨張体やシール部材の材質の特性を踏まえた製造方法を見出した。
本発明の1つのシール部材は、長尺のベースと、そのベースの短尺側の両端部又はその近傍から延設され、かつそのベースから離れるほど互いの間隔が広がるように形成された2つの側壁部と、各側壁部から延設され、かつ薄肉部を介して形成された1つの蓋部と、を備えている。その上で、このシール部材は、前述のベース、前述の2つの側壁部、前述の薄肉部、及び前述の蓋部が、スポンジ状高分子により中空管状体となるように一体に成形され、かつ、水分を吸収して膨張する長尺の膨張体が前述のベースに沿ってその中空管状体内に設けられている。
このシール部材によれば、スポンジ状高分子により一体成形された中空間状体内に水分を吸収して膨張する膨張体が設けられているため、その膨張体の略全てを外気に曝すことなく保護することが出来る。また、蓋部と各側壁部との間に薄肉部が設けられているため、スポンジ高分子で成形されていることと相俟って、例えば作業者が容易に蓋部をその薄肉部に沿って引きちぎることが可能となる。その結果、中空間状体内に設けられていた膨張体を必要なときにのみ外気に曝露させることができるため、その膨張体に不要な水分を吸収させることを適切に防ぐことが可能となる。また、このシール部材によれば、長尺の中空管状体及び長尺の膨張体を備えているため、シール性を要求する接続対象の規模あるいは形状への依存性が小さい。その結果、その適用範囲が広がる。
また、本発明の1つのシール部材の製造方法は、次の2つの工程を含んでいる。その1つの工程は、長尺のベースと、そのベースの短尺側の両端部又はその近傍から延設され、かつそのベースから離れるほど互いの間隔が広がるように形成された2つの側壁部と、各側壁部から延設され、かつ薄肉部を介して形成された1つの蓋部とを備え、かつ前述のベース、前述の2つの側壁部、前述の薄肉部、及び前述の蓋部が、スポンジ状高分子により一体に成形された中空管状体の管内に、そのベースの長さよりも長く、接着部が設けられるとともにその接着部を覆う前述の中空管状体に対して接着性の無いカバー部を備え、水分を吸収して膨張する膨張体と一緒に長尺のガイド部を通すことにより、前述の中空管状体の両開口からその膨張体及びそのガイド部を突出させるように導入する膨張体導入工程である。もう1つの工程は、突出する前述のカバー部と前述のガイド部の一端とを一体化させた後、そのガイド部をそのガイド部の他端側に、前述の膨張体の前述の中空管状体に対する相対位置を実質的に変えることなく、そのカバー部をその膨張体から引き剥がしながら引き抜くことにより、前述の接着部を用いてその膨張体をその中空管状体の管内に止めるカバー剥離工程である。
このシール部材の製造方法によれば、一体成型された中空管状体を、ベースの長さよりも長い膨張体を、それと一体化された長尺のガイド部とともに通した後、そのガイド部によって膨張体の接着部を覆っていたカバー部をその膨張体から引き剥がしながら引き抜くことによって、膨張体の接着部とベースとを接着することが可能となる。従って、このシール部材の製造方法によれば、柔軟なスポンジ状高分子により成形された、いわば取扱い難い中空管状体内に、適切に膨張体を止めることが実現できる。
また、本発明の1つのシール部材の使用方法は、複数の管状体を接続する直前に、長尺のベースと、そのベースの短尺側の両端部又はその近傍から延設され、かつそのベースから離れるほど互いの間隔が広がるように形成された2つの側壁部と、各側壁部から延設され、かつ薄肉部を介して形成された1つの蓋部とを備え、前述のベース、前述の2つの側壁部、前述の薄肉部、及び前述の蓋部が、スポンジ状高分子により中空管状体となるように一体に成形され、水分を吸収して膨張する長尺の膨張体が前述のベースに沿って前述の中空管状体内に設けられたシール部材が、少なくとも一方の前述の管状体の端面上に配置された状態で、その蓋部をその薄肉部に沿って引きちぎることにより、前述の膨張体が外気に曝されるようにする工程を含む。
このシール部材の使用方法によれば、スポンジ状高分子により一体成形された中空間状体内に水分を吸収して膨張する膨張体が設けられているため、その膨張体の略全てを外気に曝すことなく保護することが出来る。また、蓋部と各側壁部との間に薄肉部が設けられているため、スポンジ高分子で成形されていることと相俟って、例えば作業者が、複数の管状体を接続する直前に、容易に蓋部をその薄肉部に沿って引きちぎることが可能となる。その結果、中空間状体内に設けられていた膨張体を複数の管状体を接続する直前にのみ外気に曝露させることができるため、その膨張体に不要な水分を吸収させることを適切に防ぐことが可能となる。
また、本発明の1つの流水用管路の製造方法は、次の3つの工程を含んでいる。その1つの工程は、長尺のベースと、そのベースの短尺側の両端部又はその近傍から延設され、かつそのベースから離れるほど互いの間隔が広がるように形成された2つの側壁部と、各側壁部から延設され、かつ薄肉部を介して形成された1つの蓋部とを備え、前述のベース、前述の2つの側壁部、前述の薄肉部、及び前述の蓋部が、スポンジ状高分子により中空管状体となるように一体に成形され、かつ水分を吸収して膨張する長尺の膨張体が前述のベースに沿って設けられた前述の中空管状体を、複数の管状体の少なくとも一方の前述の管状体の端面上に配置する配置工程である。もう1つの工程は、前述の複数の管状体を接続する直前に、前述の薄肉部に沿って前述の蓋部が引きちぎられることにより、前述の膨張体を外気に曝させる曝露工程である。さらにもう1つの工程は、前述の複数の管状体を接続する接続工程である。
この流水用管路の製造方法によれば、スポンジ状高分子により一体成形された中空間状体内に水分を吸収して膨張する膨張体が設けられているため、複数の管状を接続する際のシール部材として中心的役割を担う膨張体の略全てを外気に曝すことなく保護することが出来る。また、蓋部と各側壁部との間に薄肉部が設けられているため、スポンジ高分子で成形されていることと相俟って、例えば作業者が複数の管状体を接続する直前に、容易に蓋部をその薄肉部に沿って引きちぎることが可能となる。その結果、中空間状体内に設けられていた膨張体を複数の管状体を接続する直前にのみ外気に曝露させることができるため、その膨張体に不要な水分を吸収させることを適切に防いだ状態で、複数の管状を接続することが可能となる。また、この流水用管路の製造方法によれば、長尺の中空管状体及び長尺の膨張体をシール部材として利用するため、接続する対象となる管状体の規模あるいは形状への依存性が小さくなる。
ここで、「ベースの短尺側の両端部の近傍」とは、その両端部からの距離を厳密に限定するものではなく、本出願の「中空管状体」を一体に成形するに際して採用し得る両端部からの距離の範囲内を意味する。管状体の接続面の形状にも依存するが、敢えて言及すれば、「両端部の近傍」とは、その両端部からの距離が5mm以内を意味し得る。
また、本出願において、複数管状体(代表的には2つの管状体)が接続される「直前」とは、特に厳密な時間の限定をしないが、敢えて言及すれば、接続時点から遡って90分以内を意味し、特に、接続時点から遡って60分以内は、より好ましい数値として採用できる意味である。
また、本出願において、「流水」は、生活排水や工場排水が含まれる下水のみならず、中水を含む。なお、本出願において、「中水」は、広く使用されている意味の範囲を逸脱しない。その代表的な例としての意味は、「中水」とは、飲料としては適格性を欠くような、例えば、浴槽水、水洗トイレ用水、あるいは雨水を意味する。
また、本出願において、「流水用管路」は、ボックスカルバートのような閉環状の流水用管路(代表的には図6Aに示すような流水用管路)のみならず、排水溝のような開環状の流水用管路(代表的には図8に示すような流水用管路)も含まれる。
本発明の1つのシール部材及び1つのシール部材の使用方法によれば、例えば作業者が容易に蓋部を薄肉部に沿って引きちぎることが可能となるため、中空間状体内に設けられていた膨張体に不要な水分を吸収させることを適切に防ぐことが可能となる。また、本発明の1つのシール部材によれば、シール性を要求する接続対象の規模あるいは形状への依存性が小さいため、その適用範囲が広がる。
本発明の1つのシール部材の製造方法によれば、柔軟なスポンジ状高分子により成形された、いわば取扱い難い中空管状体内に、適切に水分を吸収して膨張する長尺の膨張体を止めることが実現できる。
本発明の1つの流水用管路の製造方法によれば、接続する対象となる管状体の規模あるいは形状への依存性が小さく、また作業性にも十分に配慮されたシール部材を提供するとともに、複数の管状体が接続された流水用管路の製造技術の向上を実現することができる。
本発明の第1の実施形態におけるシール部材の斜視図である。 図1におけるX−X断面図である。 本発明の第1の実施形態におけるシール部材の製造工程の一過程を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態におけるシール部材の製造工程の一過程を示す斜視図である。 本発明の第1の実施形態におけるシール部材の製造工程の一過程を示す断面図(図3BにおけるY−Y断面図)である。 本発明の第1の実施形態におけるシール部材の製造工程の一過程を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態におけるシール部材の使用方法を説明する斜視図である。 本発明の第1の実施形態におけるシール部材の使用方法を説明する断面図である。 本発明の第1の実施形態におけるシール部材を用いた流水用管路の製造方法の一過程を示す斜視図である。 図6AにおけるZ−Z断面図である。 複数の管状体が接続されて形成された流水用管路示す、図6AのZ−Z断面図に相当する断面図である。 本発明の第2の実施形態におけるシール部材の断面図である。 本発明の第3の実施形態におけるシール部材を用いた流水用管路の製造方法の一過程を示す斜視図である。 本発明の第4の実施形態におけるシール部材の中空管状体を示す断面図である。 本発明のその他の実施形態におけるシール部材の中空管状体を示す断面図である。
本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。さらに、各図面を見やすくするために、一部の符号を省略する。
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態のシール部材100の斜視図であり、図2は、図1のX−X断面図である。また、図3Aないし図3Dは、本実施形態におけるシール部材100の製造工程の一過程を示す断面図又は斜視図である。なお、図2において、便宜上、シール部材100の寸法を説明するための点線と実線とを設けている。
まず、シール部材100の構造および製造方法について説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態のシール部材100は、長尺のベース12と、ベース12の短尺側の両端部から延設されるとともにベース12から離れるほど互いの間隔が広がるように形成された2つの側壁部14と、各側壁部14から延設され、かつ薄肉部16を介して形成された1つの蓋部18とを備えている。加えて、ベース12、2つの側壁部14、薄肉部16、及び蓋部18は、押出成形法によって、スポンジ状高分子を用いて中空管状体10となるように一体に成形されている。なお、本実施形態におけるスポンジ状高分子は、エチレンプロピレン共重合体(ethylene−propylene copolymer)の発泡体である。従って、本実施形態のシール部材100の蓋部18は、例えば作業者により、薄肉部16に沿って容易に引きちぎられるように形成されているため、高い作業性が実現される。
さらに、シール部材100の中空管状体10の空間15内には、水分を吸収して膨張する長尺の膨張体20がベース12に沿って設けられている。本実施形態の膨張体20は、不織布であるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の中に高吸水性樹脂繊維(例えば、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物)を混合することにより形成される。また、本実施形態では、この膨張体20が、接着部30によりベース12に接着することによって中空管状体10の空間15内に止められている。なお、本実施形態のシール部材100は、自重の約20倍の重さの水分を、自らは膨張しつつ吸収することができる膨張体20を採用している。
また、本実施形態のシール部材100の大きさは、接続する複数の管状体の大きさや形状によって変動しうるが、一例としては、図2に示す中空管状体10の最大幅(W)が約27mmであり、ベース12の幅(W)が約20mmであり、高さ(H)が、約15mmである。さらに、本実施形態のシール部材100は押出成形法によって形成されているため、その長さ(図2における紙面の奥行き方向の長さ)も接続対象となる管状体の大きさに応じて適宜変更されるが、一例としての長さは、約5m〜約10mである。
次に、本実施形態の膨張体20を中空管状体10の空間15内に設ける方法について説明する。本実施形態の膨張体20は、図1に示すように、柔軟性が非常に高いものではあるが全体として見れば断面形状が矩形乃至楕円形の長尺の棒状に成形されている。加えて、本実施形態の膨張体20の一面といえる領域が接着部30を備えており、カバー部40によって接着部30が覆われている。なお、本実施形態の接着部30の材質は、公知の接着剤であるクロロプレンゴム系接着剤であり、カバー部40は、中空管状体10に対して接着性を有しない材質で形成されている。但し、本実施形態の接着剤に代えて粘着材も採用し得る。
具体的な方法は、次のとおりである。まず、図3Aに示す長尺の中空管状体10の空間15内に、接着部30及びカバー部40と一体となった膨張体20が長尺のガイド部50と一緒に通される、膨張体導入工程が行われる。本実施形態では、図3Bに中空管状体10の一端が示されているように、膨張体20及びガイド部50が中空管状体10の両開口から突出するように導入される)。その結果、図3Cに示すように、ガイド部50が主にベース12の表面と接する状態となる。なお、本実施形態のガイド部50は、離形紙であり、ガイド部50もカバー部40及び中空管状体10に対して接着性を有しない。
次に、カバー部40が取り除くことにより、接着部30をベース12に接着する、カバー剥離工程が行われる。具体的には、中空管状体10の一方の開口から突出する、膨張体20から一部のみ引き剥がされたカバー部40(具体的には、カバー部40の端部)を、同じく一方の開口から突出するガイド部50の一部に固着又は結び付け等して一体化させた後、中空管状体10の他方の開口から突出するガイド部50が中空管状体10から引き抜かれる。このとき、前述の一方の開口部側のガイド部50が中空管状体10の空間15内を膨張体導入工程の方向と逆方向に移動するにつれて、カバー部40が膨張体20(より具体的には接着部30)から引き剥がされながら、ガイド部50とともに中空管状体10内から引き抜かれることになる。
その結果、図3Dに示すように、カバー部40が取り除かれた接着部30がベース12の表面と接着することにより、膨張体20は中空管状体10といわば一体化される。上述のとおり、ガイド部50は、膨張体導入工程では中空管状体10内へ膨張体20を導入するためのガイドとしての役割を果たすとともに、カバー剥離工程では、膨張体20からのカバー部40の除去を補助する役割も担う。なお、本実施形態のガイド部50は、離形紙であったが、これに限定されない。例えば、プラスティックフィルムがガイド部として採用されても本実施形態の効果と同様の効果が奏され得る。
次に、シール部材100の使用方法及び流水用管路500の製造方法について説明する。図4は、本実施形態におけるシール部材100の使用方法を説明する斜視図であり、図5は、本実施形態におけるシール部材100の使用方法を説明する断面図である。また、図6Aは、本実施形態におけるシール部材100を用いた流水用管路500の製造方法の一過程を示す斜視図であり、図6Bは、図6AにおけるZ−Z断面図である。また、図6Cは、複数の管状体60a,60bが接続されて形成された流水用管路500示す、図6AのZ−Z断面図に相当する断面図である。なお、本実施形態の管状体60a,60bは、コンクリート製のボックスカルバートである。
図4に示すように、本実施形態のシール部材100の中空管状体10はスポンジ状高分子により成形されているため、例えば複数の管状体を接続する作業者は、蓋部18を容易に薄肉部16に沿って引きちぎることができる。蓋部18が取り除かれると、図5に示すように、薄肉部16の全て又はその一部を残した各側壁部14,14のみがベース12と一体化した状態となるため、膨張体20が中空管状体10内に設けられてから初めて膨張体20の全体が外気に曝されることとなる。換言すれば、蓋部18が取り除かれることにより、膨張体20が中空管状体10内に設けられてから初めて、中空管状体10内に設けられた膨張体20が中空管状体10の端部の開口部を介さずに外気に曝されるようになる。
ここで、蓋部18は、図6Aに示すように、複数の管状体60a,60bが接続される直前に、より具体的には、それらの接続時点から遡って90分以内、より好ましくは接続時点から遡って60分以内に、中空管状体10から取り除かれることが好ましい。これは、膨張体20が不要な水分を吸収することによって、その水分吸収能力、ひいてはシール部材100のシール性能が低減することを防ぐためである。その観点から言えば、流水用管路500の製造過程において、図6Aに示すように、シール部材100が少なくとも一方の管状体60a,60bの端面62a,62b上に配置された状態で、蓋部18が薄肉部16に沿って引きちぎられることが好ましい。
ところで、本実施形態では、流水用管路500を構成する1つの管状体60aの端面62aが周状の凹部64aを備えており、シール部材100の一部がその凹部64a内に配置されている。一方、本実施形態では、シール部材100のうち、中空管状体10の各側壁部14,14の先端部14a,14aは、図6Bに示すように、端面62aから突出するように配置されている。
また、図6Bに示すように、本実施形態の中空管状体10の各側壁部14,14の先端部14a,14aは曲面を有している。さらに詳細に見ると、それらの先端部14a,14aは、対向する他方の管状体60bが接すると予想される点(換言すれば、最もベース12から離れた点)を基準に、内側と外側とで異なる曲率半径を有する曲面が形成されている。本実施形態では、その内側の曲率半径(図6Bにおけるα領域の曲率半径)が、その外側の曲率半径(図6Bにおけるβ領域の曲率半径)よりも大きくなるように先端部14a,14aが形成されている。より具体的には、一例として、その内側の曲率半径は、2.5mmであり、その外側の曲率半径は、1.5mmである。このように、各先端部14a,14aの内側の曲率半径をその外側の曲率半径よりも大きくすることにより、複数の管状体60a,60bを接続する際に側壁部14,14が外側(図6Bにおける矢印Tの方向)に倒れ易くなる。その結果、膨張体20が側壁部14,14によって塞がれてしまう、すなわち、シール性が阻害されてしまう可能性を顕著に低減することができる。
複数の管状体60a,60bが接続されると、端面62aから突出していた各側壁部14,14の一部が対向する管状体60bの端面62bによって図6Cに示すように押し潰される。ここで、押しつぶされた各側壁部14,14の一部の厚みにより、管状体60a及び管状体60bの間に僅かに隙間が形成され得るが、本実施形態では、これにより流水用管路500のシール性は実質的に低減されない。というのも、大きさによっても異なるが、コンクリート製のボックスカルバートの端面の寸法精度としては、数mm程度の誤差が存在するため、スポンジ状高分子によって成形された中空管状体10が押しつぶされた際の厚みとしてはその数値範囲内に収まる蓋然性が高いためである。むしろ、図6Cに示すように、各側壁部14,14のうち、管状体60bの端面62bによって押し潰された部分は、流水用管路500の外部や内部からの水分の流入出に対するシール機能を発揮し得る。
他方、本実施形態とは異なり、極めて寸法精度の良い管状体同士を接続する場合は、図6B又は図6Cにおける凹部64aの深さをより深くすることも採用し得る他の一態様である。そうすれば、中空管状体10の各側壁部14,14の先端部14a,14aが、端面62aから突出しないように配置することができるため、各側壁部14,14の一部しか押しつぶされることはない。但し、各側壁部14,14の先端部14a,14aが、端面62aから突出しないようにする場合であっても、出来るかぎりその先端部14a,14aが対向する管状体60bの端面62bに近接するように配置されることが、シール性を高める観点から好ましい。
<第2の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態のシール部材100のうち、ベース12がベース212に変更された点を除き、第1の実施形態のシール部材100の構造、製造方法、及び使用方法、並びに流水用管路500の製造方法と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
図7は、本実施形態におけるシール部材200の図2に相当する断面図である。なお、図7では、シール部材200の各部の位置関係を明確にするために点線が描かれている。
図7に示すように、本実施形態のシール部材200のベース212は、第1の実施形態のシール部材100のベース12とは異なり、突出部212a,212aを備えている。また、本実施形態のベース212は、突出部212a,212aの突出長さが各側壁部14,14の間隔が最も開いたときの幅とほぼ一致するように成形されている。
本実施形態の中空管状体210が上述の構造を備えることにより、例えば、第1の実施形態の管状体60aの凹部64a内にシール部材200をより安定的に配置することができる。加えて、本実施形態のシール部材200も、第1の実施形態のシール部材100と同様の側壁部14、薄肉部16、及び蓋部18を備えていることから、シール部材100の効果と同様の効果が奏され得る。このように、第1の実施形態の中空管状体10のベース12や第2の実施形態の中空管状体210のベース212の形状については、当業者であれば、設置される管状体の端面の形状又は構造に応じて、上述の各実施形態の効果が損なわれない範囲で適宜変更し得る。
また、各側壁部14,14がベース212の端から延設されていないときでも、上述の各実施形態のシール部材100,200の効果と同様の効果が奏され得ることは既に述べたとおりである。従って、一例として、突出部212a,212aの突出長さが各側壁部14,14の間隔が最も開いたときの幅に合うように成形された中空管状体210のように、各側壁部14,14がベース212の端から一定の距離の範囲内から延設されたものであれば、その範囲は、ベース212の短尺側の両端部の近傍に含まれる。
<第3の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態の流水用管路500の管状体60a,60bが管状体362を用いた流水用管路に変更された点を除き、第1又は第2の実施形態のシール部材100,200の構造、製造方法、及び使用方法、並びに流水用管路500の製造方法と同様である。従って、第1又は第2の実施形態と重複する説明は省略され得る。
図8は、本実施形態における流水用管路の製造方法の一過程を示す斜視図である。図8に示すように、本実施形態の流水用管路を構成する1つの管状体362は、コンクリート製の開環状の排水路の一部である。
図8に示すような開環状の管状体362の端面362aに対してシール部材100又はシール部材200が用いられることによって流水用管路が製造された場合であっても、複数の管状体の接続部分におけるシール部材100又はシール部材200が有するシール性を発揮することができる。すなわちその接続部分を介して管路を流れる水が管外に染み出たり、又は管外の水分が逆に管内に混入したりすることを確度高く、かつ安定的に防止することができる。また、複数の開環状の管状体362を接続する際においても、第1又は第2の実施形態の中空管状体10,210の構造により、蓋部18を薄肉部16に沿って容易に引きちぎることができることから、高い作業性が実現できる。
<第4の実施形態>
ところで、上述の中空管状体10,210の側壁部14とは異なり、図9に示すような中空管状体310も、他の好ましい一態様として採用できる。図9は、本実施形態におけるシール部材300の中空管状体310を示す図2に相当する断面図である。図9に示すシール部材300は、各側壁部14,14が各側壁部314,314に変更された点を除き、第1の実施形態のシール部材100の構造、製造方法、及び使用方法、並びに流水用管路500の製造方法と同様である。
図9に示すシール部材300においては、中空管状体310の各側壁部314,314が突起部314b,314bを備えている。これらの突起部314b,314bの少なくとも一部は、膨張体20と接し、柔軟性を有しつつ、いわば膨張体20の一部を押さえ込むように形成されている。従って、膨張体20がベース12に沿って設けられた後、仮に接着部30の接着性が弱いために一部がベース12から離れた場合であっても、安定的に膨張体20が中空管状体310内に保持することができるという効果が奏される。
<その他の実施形態>
また、上述の各実施形態では、中空管状体10,210の側壁部14の先端部14aが曲面を有していたが、その先端部14aの形状は曲面に限定されない。図10は、他の実施形態におけるシール部材の中空管状体410を示す図2に相当する断面図である。なお、図10には、説明の便宜のため点線が描かれている。図10に示すように、各側壁部414,414の先端部414a,414aは、側壁部414の主たる部分がベース12から延設される方向に対して角度θ(例えば、30°)だけ広がる方向の、断面が直線状である斜面を備えている。このような構造の中空管状体410が、第1のシール部材100又は第2のシール部材200の中空管状体として採用されたとしても、上述の各実施形態の効果の少なくとも一部の効果が奏され得る。但し、例えば、管状体60a,60b間に挟まれた際の押しつぶされた側壁部の厚さが与えるシール性への影響を考慮すれば、第1のシール部材100又は第2のシール部材200の中空管状体10,210を採用する方が好ましい。
また、上述の第1の実施形態では管状体60a,60bがコンクリート製のボックスカルバートであり、上述の第3の実施形態では管状体360がコンクリート製の開環状の排水路であったが、上述の各実施形態で採用できる管状体はこれらに限定されない。例えば、樹脂製の流水用管路(例えば、硬質ポリ塩化ビニル管)や、金属製の流水用管路(例えば、鉄製管路)であっても、上述の各実施形態のシール部材100,200を用いてシール性の高い流水用管路を製造することができる。
また、上述の各実施形態の効果が損なわれない膨張体20であれば、公知の吸水ポリマーの成形物(例えば、吸水ポリマーを含むシート状吸水体)や水膨張性不織布も、上述の各実施形態の膨張体20の一態様として採用し得る。
なお、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
本発明のシール部材、シール部材の製造方法、及びシール部材の使用方法、並びに流水用管路及び流水用管路の製造方法は、複数の管状体が接続された流水用管路が用いられる産業界おいて極めて有用である。
10,310,410 中空管状体
12,212 ベース
14,314,414 側壁部
14a,414a 側壁部の先端部
15 中空管状体内の空間
16 薄肉部
18 蓋部
20 膨張体
30 接着部
40 カバー部
50 ガイド部
60a,60b,360 管状体
62a,62b,362a 端面
100,200 シール部材
314b 側壁部の突起部
412a ベースの突出部

Claims (12)

  1. 長尺のベースと、
    前記ベースの短尺側の両端部又はその近傍から延設され、かつ前記ベースから離れるほど互いの間隔が広がるように形成された2つの側壁部と、
    前記各側壁部から延設され、かつ薄肉部を介して形成された1つの蓋部と、を備え、
    前記ベース、前記2つの側壁部、前記薄肉部、及び前記蓋部が、スポンジ状高分子により中空管状体となるように一体に成形され、
    水分を吸収して膨張する長尺の膨張体が前記ベースに沿って前記中空管状体内に設けられた、
    シール部材。
  2. 複数の管状体を接続する際に、少なくとも一方の前記管状体の端面上に配置され、前記接続の直前に前記薄肉部に沿って前記蓋部が引きちぎられることにより、前記膨張体が外気に曝される、
    請求項1に記載のシール部材。
  3. 前記各側壁部の前記ベースから離れた側の端部が複数の曲率半径を持つ曲面を有し、
    前記ベースの長尺方向に垂直な断面において、前記各側壁部の外側の曲率半径が、前記各側壁部の内側の曲率半径よりも小さい、
    請求項1又は請求項2に記載のシール部材。
  4. 前記スポンジ状高分子が、エチレンプロピレン共重合体である、
    請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシール部材。
  5. 前記膨張体が、熱可塑性樹脂を含まず、かつ繊維状ポリエチレンテレフタレート(PET)と高吸水性樹脂とが混合されて形成される、
    請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシール部材。
  6. 長尺のベースと、前記ベースの短尺側の両端部又はその近傍から延設され、かつ前記ベースから離れるほど互いの間隔が広がるように形成された2つの側壁部と、前記各側壁部から延設され、かつ薄肉部を介して形成された1つの蓋部とを備え、かつ前記ベース、前記2つの側壁部、前記薄肉部、及び前記蓋部が、スポンジ状高分子により一体に成形された中空管状体の管内に、前記ベースの長さよりも長く、接着部が設けられるとともに前記接着部を覆う前記中空管状体に対して接着性の無いカバー部を備え、水分を吸収して膨張する膨張体と一緒に長尺のガイド部を通すことにより、前記中空管状体の両開口から前記膨張体及び前記ガイド部を突出させるように導入する膨張体導入工程と、
    突出する前記カバー部と前記ガイド部の一端とを一体化させた後、前記ガイド部を前記ガイド部の他端側に、前記膨張体の前記中空管状体に対する相対位置を実質的に変えることなく、前記カバー部を前記膨張体から引き剥がしながら引き抜くことにより、前記接着部を用いて前記膨張体を前記中空管状体の管内に止めるカバー剥離工程と、を含む、
    シール部材の製造方法。
  7. 複数の管状体を接続する直前に、
    長尺のベースと、前記ベースの短尺側の両端部又はその近傍から延設され、かつ前記ベースから離れるほど互いの間隔が広がるように形成された2つの側壁部と、前記各側壁部から延設され、かつ薄肉部を介して形成された1つの蓋部とを備え、前記ベース、前記2つの側壁部、前記薄肉部、及び前記蓋部が、スポンジ状高分子により中空管状体となるように一体に成形され、水分を吸収して膨張する長尺の膨張体が前記ベースに沿って前記中空管状体内に設けられたシール部材が、少なくとも一方の前記管状体の端面上に配置された状態で、前記蓋部を前記薄肉部に沿って引きちぎることにより、前記膨張体が外気に曝されるようにする工程を含む、
    シール部材の使用方法。
  8. 前記蓋部が引きちぎられた、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の前記シール部材を介して、複数の管状体が接続された、
    流水用管路。
  9. 長尺のベースと、前記ベースの短尺側の両端部又はその近傍から延設され、かつ前記ベースから離れるほど互いの間隔が広がるように形成された2つの側壁部と、前記各側壁部から延設され、かつ薄肉部を介して形成された1つの蓋部とを備え、前記ベース、前記2つの側壁部、前記薄肉部、及び前記蓋部が、スポンジ状高分子により中空管状体となるように一体に成形され、かつ水分を吸収して膨張する長尺の膨張体が前記ベースに沿って設けられた前記中空管状体を、複数の管状体の少なくとも一方の前記管状体の端面上に配置する配置工程と、
    前記複数の管状体を接続する直前に、前記薄肉部に沿って前記蓋部が引きちぎられることにより、前記膨張体を外気に曝させる曝露工程と、
    前記複数の管状体を接続する接続工程と、を含む、
    流水用管路の製造方法。
  10. 前記各側壁部の前記ベースから離れた側の端部が複数の曲率半径を持つ曲面を有し、
    前記ベースの長尺方向に垂直な断面において、前記各側壁部の外側の曲率半径が、前記各側壁部の内側の曲率半径よりも小さい、
    請求項9に記載の流水用管路の製造方法。
  11. 前記スポンジ状高分子が、エチレンプロピレン共重合体である、
    請求項9又は請求項10に記載の流水用管路の製造方法。
  12. 前記膨張体が、熱可塑性樹脂を含まず、かつ繊維状ポリエチレンテレフタレート(PET)と高吸水性樹脂とが混合されて形成される、
    請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の流水用管路の製造方法。
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