JP5569493B2 - 揚貯運炭設備用耐食鋼材、揚貯運炭設備用部材及び耐食鋼材の使用方法 - Google Patents

揚貯運炭設備用耐食鋼材、揚貯運炭設備用部材及び耐食鋼材の使用方法 Download PDF

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本発明は、粉粒体である石炭を荷揚するアンローダー、搬送するコンベヤー、貯蔵・搬出するホッパーなど、石炭腐食環境に曝される揚貯運炭設備に用いられる耐食鋼材、該耐食用鋼材で構成される揚貯運炭設備用部材及び耐食鋼材の使用方法に関する。
なお、本発明においては、石炭運搬貨車、石炭運搬船等、石炭の運搬、荷役に用いられる設備も揚貯運炭設備に含まれる。
石炭火力発電所、石炭ボイラープラント、製鉄所のコークス炉、貨車や船舶等の石炭運搬交通機関、石炭鉱山や港湾施設等において、粉粒体である石炭の荷揚、搬送、貯蔵・搬出等には、アンローダー、コンベヤー、ホッパー等の揚貯運炭設備が用いられる。揚貯運炭設備の部品や部材は、大気中の石炭腐食環境に曝されるため、使用される鋼材には石炭腐食環境下における耐食性が求められる。
このような石炭腐食環境下にあって、耐食性を向上させた、石炭・鉱石運搬船ホールド用耐食鋼材が提案されている(例えば、特許文献1、2)。これらは、石炭腐食環境が、Cl及びSO 2−を含む酸環境であり、鋼材にCuやSnを添加して、耐食性を向上させるものである。特許文献1及び2には、Cuの添加によって緻密な腐食生成物が形成されること、Snが鋼材上に析出するとカソード反応である水素発生反応が抑制されることが記載されている。
また、非特許文献1では、石炭を純水に浸漬すると、滲出液のpHは、室温で浸漬した場合は2.5〜3となり、45℃で浸漬した場合は、150時間までは酸性になるものの、その後、中性物質も滲出するため、6.5になることが報告されている。更に、酸性の石炭滲出液を分析した結果、鉄イオンと硫酸イオンが検出されたことから、硫酸第一鉄により、酸性に傾いていると推定している。この知見及び、pHと鋼材の腐食速度の関係から、ばら積石炭船倉の腐食に関して、石炭滲出液による腐食速度は、希硫酸のpH環境で模擬できるとしている。
非特許文献2においては、鉄鉱石・石炭を積載するバルクキャリア倉内肋骨の腐食状況を調査した結果、塗装面の下では、腐食ピット部分を覆うように生じた錆が数cm〜十数cm程度の範囲でこぶ状に盛り上がっていることが報告されている。こぶ状の腐食生成物が発生した部分では、鋼板の減肉が認められ、腐食の原因は、石炭と凝結した水分が反応して希硫酸水溶液が生成したためであると推定されている。
特開2007−262555号公報 特開2008−174768号公報
小林佑規ら、「ばら積石炭船倉内の腐食を模擬した希硫酸環境における造船用鋼の腐食および腐食疲労」、日本造船学会論文集、1999、第185号、p.221−232 中井達郎ら、「バルクキャリア倉内肋骨の腐食実態と強度」、(財)日本海事協会、平成14年度ClassNK研究発表会講演集、2002、p.35−48(http://www.classnk.or.jp/hp/Top_news_html/RI_presen_2002/H14_PDF/H14_05.pdf)
近年では、製鐵所のコークス炉などの石炭利用プラントや石炭火力発電設備で使用される、コンベヤー等の石炭搬送設備において、設備の腐食に伴って発生した錆が設備内に飛散し、設備トラブルに発展する問題が生じている。また、石炭を貯蔵・搬出するホッパー等においても貯槽内で発生した錆が剥離して石炭中に混入し、錆が多量に含まれるようになると、精製工程やプラントにおいて、操業トラブルに発展することがある。そのため、耐局部腐食性だけでなく、耐発錆性及び耐錆剥離性に優れた鋼材が要望されている。
また、本発明者らの検討の結果、希硫酸に対する耐食性に優れる鋼材を用いても、実際の揚貯運炭設備及びその周辺の部材の腐食の進展を抑制できないことがわかった。そのため、粉粒体である石炭に起因する腐食の原因を明らかにするとともに、石炭腐食環境において、発錆しても錆が剥離せず、好ましくは発錆しない耐食鋼材の開発が必要になった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、揚貯運炭設備及びその周辺の部材が曝される石炭腐食環境において、耐局部腐食性及び耐錆剥離性に優れ、更には無機ジンクリッチプライマー層を設けることによって耐発錆性を向上させることができる、揚貯運炭設備用耐食鋼材、揚貯運炭設備用部材、石炭腐食環境における耐食鋼材の使用方法の提供を課題とする。
非特許文献1及び2によって報告されているように、従来、石炭船倉内やバルクキャリア倉内などの石炭腐食環境における鋼材の腐食は、希硫酸によるもの、又は希硫酸水溶液で模擬できるというのが技術常識であった。そして、酸性環境では、Crは酸に溶解するため耐食性の向上に寄与せず、むしろ制限すべき元素であると考えられており、特許文献1及び2では、Cu、Sn、Niなどを添加した鋼材が提案されている。
しかし、本発明者らは、粉粒状の石炭を貯蔵・搬出するホッパーの側面や、搬送するコンベヤー下の腐食環境を調査した結果、希硫酸は生じておらず、Clイオンが濃化した腐食環境であるという新たな知見を得た。次に、このようなClイオンが濃化した石炭腐食環境で、発錆を防止するために、種々の鋼材の曝露試験を行った。その結果、鋼材に適量のCr、Alを含有させることによって、局部腐食が抑制され、錆の剥離を防止できることがわかった。この理由は必ずしも明らかではないが、Cr及びAlの相互作用によって、腐食形態が局部腐食から全面腐食に移行し易くなって、局部腐食が抑制された可能性がある。更に、適量のCr、Alを添加した耐食鋼材の表面に無機ジンクリッチプライマー層を設けると、長期間に亘って発錆が防止できるという知見を得た。
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 質量%で、C:0.005%以上0.030%以下、Si:0.18%以上0.50%以下、Mn:1.50%以上3.00%未満、P:0.030%以下、S:0.0050%以下、Cr:4.0%以上9.0%以下、Al:0.20%以上1.50%以下、N:0.020%以下、をそれぞれ含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、揚貯運炭設備用耐食鋼材。
[2] 質量%で、さらにCu:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上0.50%以下、をそれぞれ含有することを特徴とする耐局部腐食性、耐発錆性および耐錆剥離性に優れた、前記[1]に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
[3] 質量%で、さらにMo:0.01%以上0.20%以下、V:0.005%以上0.050%以下、Nb:0.005%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.030%未満の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
[4] 質量%で、さらにCa:0.0005%以上0.010%以下、Mg:0.0005%以上0.010%以下、REM:0.001%以上0.010%以下の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
[5] 更に、前記耐食鋼材の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
[6] 更に、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の成分からなる下地鋼材の表面に、金属亜鉛30質量%以上を含有する5〜100μmの厚みの無機ジンクリッチプライマー層を有することを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
[7] 前記無機ジンクリッチプライマー層の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、前記[6]に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
[8] 素材が、質量%で、C:0.005%以上0.030%以下、Si:0.18%以上0.50%以下、Mn:1.50%以上3.00未満、P:0.030%以下、S:0.0050%以下、Cr:4.0%以上9.0%以下、Al:0.20%以上1.50%以下、N:0.020%以下をそれぞれ含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる耐食鋼材であることを特徴とする、揚貯運炭設備用部材。
[9] 前記耐食鋼材が、質量%で、更にCu:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上0.50%以下、をそれぞれ含有することを特徴とする、前記[8]に記載の揚貯運炭設備用部材。
[10] 前記耐食鋼材が、質量%で、更にMo:0.01%以上0.20%以下、V:0.005%以上0.050%以下、Nb:0.005%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.030%未満の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、前記[8]又は[9]に記載の揚貯運炭設備用部材。
[11] 前記耐食鋼材が、質量%で、更にCa:0.0005%以上0.010%以下、Mg:0.0005%以上0.010%以下、REM:0.001%以上0.010%以下の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、前記[8]〜[10]のいずれか1項に記載の揚貯運炭設備用部材。
[12] 更に、前記耐食鋼材の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、前記[8]〜[11]の何れか1項に記載の揚貯運炭設備用部材。
[13] 更に、前記[8]〜[11]のいずれか1項に記載の耐食鋼材を素材とする揚貯運炭設備用部材の表面に、金属亜鉛30質量%以上を含有する5〜100μmの厚みの無機ジンクリッチプライマー層を有することを特徴とする、前記[8]〜[11]のいずれか1項に記載の揚貯運炭設備用部材。
[14] 前記無機ジンクリッチプライマー層の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、前記[13]に記載の揚貯運炭設備用部材。
[15] 質量%で、C:0.005%以上0.030%以下、Si:0.18%以上0.50%以下、Mn:1.50%以上3.00未満、P:0.030%以下、S:0.0050%以下、Cr:4.0%以上9.0%以下、Al:0.20%以上1.50%以下、N:0.020%以下をそれぞれ含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる耐食鋼材を、揚貯運炭設備によってハンドリングされる粉粒体の炭素から滲出するClイオンが濃化した炭素腐食環境で使用することを特徴とする、耐食鋼材の使用方法。
[16] 前記耐食鋼材が、質量%で、更にCu:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上0.50%以下、をそれぞれ含有することを特徴とする、前記[15]に記載の耐食鋼材の使用方法。
[17] 前記耐食鋼材が、質量%で、更にMo:0.01%以上0.20%以下、V:0.005%以上0.050%以下、Nb:0.005%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.030%未満の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、前記[15]又は[16]に記載の耐食鋼材の使用方法。
[18] 前記耐食鋼材が、質量%で、更にCa:0.0005%以上0.010%以下、Mg:0.0005%以上0.010%以下、REM:0.001%以上0.010%以下の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、前記[15]〜[17]のいずれか1項に記載の耐食鋼材の使用方法。
[19] 更に、前記鋼材の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、前記[15]〜[18]のいずれか1項に記載の耐食鋼材の使用方法。
[20] 更に、前記[15]〜[18]のいずれか1項に記載の耐食鋼材の表面に、金属亜鉛30質量%以上を含有する5〜100μmの厚みの無機ジンクリッチプライマー層を設けることを特徴とする、前記[15]〜[18]のいずれか1項に記載の耐食鋼材の使用方法。
[21] 前記無機ジンクリッチプライマー層の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、前記[20]に記載の耐食鋼材の使用方法。
以上のように、本発明によれば、粉粒体である石炭をハンドリングする、アンローダー、コンベヤー、ホッパーなどに使用される、粉粒体の炭素から滲出するClイオンが濃化した炭素腐食環境での発錆が抑制され、錆の剥離が防止された、揚貯運炭設備用耐食鋼材及び揚貯運炭設備用部材を提供することができる。特に、鋼材の表面に無機ジンクリッチプライマーを塗布することにより、長期に亘って揚貯運炭設備及び揚貯運炭設備用部材の発錆を防止することが可能になる。このように、本発明は、産業上の貢献が極めて顕著である。
上述の非特許文献1に、石炭を純水に浸漬した場合、滲出液は低pHになることが報告されているように、従来、粉粒体である石炭に含まれる硫黄分に起因して、滲出した水溶液は希硫酸になると考えられていた。しかし、実際には、本発明者らが知見したように、粉粒状の石炭を貯蔵・搬出するホッパーの側面や、搬送するコンベヤー下では、希硫酸は生じておらず、Clイオンが濃化した腐食環境になっている。
このように、石炭腐食環境が希硫酸を含まず、Clイオンが濃化している理由は、以下のように推定される。
粉粒体である石炭に含まれる硫黄分は、長時間、純水に浸漬すると溶出して希硫酸になる。しかし、石炭の表面は多孔質になっており、硫黄分は吸着されている。そのため、揚貯運炭設備でハンドリングされるような短時間では溶出せず、石炭腐食環境には希硫酸が含まれない。一方、粉粒体である石炭は海岸付近でハンドリングされるため、表面に海塩粒子などが付着しており、空気中の水蒸気や雨水などの水分とともにClイオンが滲出し、濃化すると考えられる。
従来は、石炭腐食環境が希硫酸を含むと考えられていたため、酸に溶解するCrを鋼材に添加することは避けられていた。しかし、本発明者らは、上記の知見に基づき、石炭腐食環境における耐食性を向上させるために、濃化したClイオンに起因する腐食に対して有効であるCrを積極的に活用した。更に、本発明者らは、Cr及びAlの複合添加が、石炭腐食環境における局部腐食及び発錆の防止、耐錆剥離性の向上に有効であること、さらには、無機ジンクリッチプライマーの塗布によって長期間に亘って、発錆を防止できることを見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明の揚貯運炭設備用耐食鋼材について詳細に説明する。
本発明は、適量のCr及びAlを同時に添加し、揚貯運炭設備でハンドリングされる粉粒状の石炭から滲出するClイオンが濃化した石炭腐食環境において、耐局部腐食性、耐発錆性、耐錆剥離性を向上させた揚貯運炭設備用耐食鋼材である。Cr及びAlの相互作用によって局部腐食が抑制され、局所的な減肉及び腐食生成物の成長が防止されるだけでなく、発錆しても錆の剥離を抑制することができる。更に、鋼材の表面に無機ジンクリッチプライマーを塗布することにより、市販のステンレス鋼に比べて、低合金組成でありながら、長期間に亘って発錆を防止することが可能になり、経済性にも優れる揚貯運炭設備用耐食鋼材を得ることができる。
本発明の揚貯運炭設備用耐食鋼材は、質量%で、C:0.005〜0.030%、Si:0.18〜0.50%、Mn:1.50〜3.00%未満、P:0.030%以下、S:0.0050%以下、Cr:4.0〜9.0%、Al:0.20〜1.50%、N:0.020%以下をそれぞれ含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。また、Cu:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上0.50%以下をそれぞれ含んでもよいことを特徴とする。
以下、本発明の鋼材成分を限定した理由について説明する。なお、%の表記は特に断りがない場合は質量%を意味する。
(C:0.005%以上0.030%以下)
Cは、強度を改善する元素で0.005%以上必要であるが、0.030%を超えて添加すると、Cr系炭化物の形成により耐食性を劣化させるために、その添加量の上限を0.030%とする。なお、強度と延性、靭性、溶接性のバランスを考慮すると、0.005%以上0.020%以下が好ましい。さらに、前記バランス達成のための製造安定性を考慮すると、0.010%以上0.020%以下が好ましい。
(Si:0.18%以上0.50%以下)
Siは、Crを2%以上含有する鋼に脱酸剤および強化元素として添加することが有効であるが、含有量が0.18%未満ではその脱酸効果が十分でなく、その結果、溶存酸素とAlが酸化物を生成し易くなり、後述のように不働態皮膜の安定性を向上させるために有効な固溶Al量を十分に確保できなくなる。一方、0.50%を超えて含有するとその効果は飽和し、靭性を低下させうるので、含有量の範囲を0.18%以上0.50%以下に限定する。さらに鋼材の製造性、溶接性を考慮した場合、0.20%以上0.30%以下が好ましい。
(Cr:4.0%以上9.0%以下)
Crは、石炭腐食環境において、不働態皮膜の安定性を向上させる重要な元素であり、後述のAlとともに、耐局部腐食性、耐発錆性及び耐錆剥離性に寄与する。CrをAlとともに添加することにより、相互作用によって、耐局部腐食性を向上させ、たとえ錆が発生した場合であっても、発生した錆と地鉄との密着性を確保し、錆の剥離を防止することができる。更に、無機ジンクリッチプライマー層を設けることにより、長期間に亘って発錆を防止することができる。効果を得るために4.0%以上のCrを含有することが必要であるが、9.0%を超えて含有させてもコストを増すばかりか、母材の靭性を損なうので上限の含有量は9.0%とする。なお、鋼材の耐発錆性、製造性、溶接性、加工性を考慮すると、5.5%以上7.5%以下が好ましい。さらに、コストとのバランスを考慮すると、5.8%以上6.3%以下が好ましい。
(Al:0.20%以上1.50%以下)
Alは、Crともに添加することにより、石炭腐食環境において、耐局部腐食性及び耐錆剥離性の向上、更には無機ジンクリッチプライマー層を設けた際の耐発錆性の向上に寄与する重要な元素である。Crとの相互作用によって、腐食形態を局部腐食から全面腐食に移行させ、錆を剥離し難くするために、固溶Al量を確保する必要がある。効果を得るためには、0.20%以上のAlが必要であるが、一方、1.50%を越えて添加すると、フェライト相変態の温度範囲が極めて広くなり製造過程での鋳片割れなどの原因となるので、上限を1.50%以下に限定する。さらに、加工性を考慮すると、0.50%以上1.30%以下が好ましい。さらに、耐食性、製造性および、コストとのバランスを考慮すると、0.85%以上1.20%以下が好ましい。
(Mn:1.50%以上3.00%未満)
Mnは、本発明においては、主として強度の改善とオーステナイト形成元素として作用し、耐食性の観点から添加されているCrおよびAlにより助長される粗大フェライトの形成を抑制するため、および強度確保のために添加される。すなわち、CrおよびAlは、周知のようにフェライト形成元素であり、これらが多量に添加されると、凝固から室温に至るまで変態を経ずしてフェライト単相組織となり、鋳片割れなどが生じ、製造性が低下する。したがって、Mnは、1.50%以上添加することが必要であるが、3.00%以上の添加では母材の延性が著しく低下するため3.00%未満の添加とする。なお、鋼材の強度、製造性、溶接性、加工性を考慮すると、2.00%以上3.00%未満が好ましい。
(N:0.020%以下)
Nは、鋼板の多量に添加されると窒化物の形成などで母材の延性や耐食性を阻害するために、上限は0.020%とする。
(P:0.030%以下)
Pは、鋼中に不純物として存在するが、延性を低下し、製造性を低下させるので少ない方が望ましく、上限の含有量は0.030%とする。さらに、製造性、コストの観点から、好ましくは0.020%以下である。
(S:0.0050%以下)
Sは、多量に添加すると耐局部腐食性を低下させるので少ない方が望ましく、上限の含有量は0.0050%とする。
なお、SとPは、不可避的な不純物であり、可能な限り少なくするほうがよい。
本発明では、上記の元素に加えて、Cu:0.05%以上0.50%以下及び、Ni:0.05%以上0.50%以下をそれぞれ添加することで、更に、耐局部腐食性及び耐錆剥離性を向上させ、無機ジンクリッチプライマー層を設けた際の耐発錆性を向上させることができる。
更に、Mo:0.01%以上0.20%以下、V:0.005%以上0.050%以下、Nb:0.005%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.030%未満の何れか1種又は2種以上を含有させることで、更に、耐局部腐食性及び耐錆剥離性を向上させ、無機ジンクリッチプライマー層を設けた際の耐発錆性を向上させる、もしくは耐食性に影響を及ぼさずに強度、靭性を向上させることが可能である。
(Cu:0.05%以上0.50%以下)
(Ni:0.05%以上0.50%以下)
Cu、Niは、ともに粉粒体である石炭をハンドリングする揚貯運炭設備の石炭腐食環境において、耐局部腐食性及び耐錆剥離性を向上させ、無機ジンクリッチプライマー層を設けた際の耐発錆性を向上させる元素である。Cu、Niを添加する場合は、後述するように、両方を添加する必要がある。なお、Cu、Niは、これらの効果発現のためには、いずれも0.05%以上の添加を必要とするが、いずれも0.50%を越えて添加すると脆化が生じるために、両者ともに、その限定範囲を0.05%以上0.50%以下とする。更に、安定的な製造性の観点から好ましくは、Cu、Niともにそれぞれ、0.05%以上0.30%以下である。さらに、コストとのバランスを考慮すると、両者ともに、0.10%以上0.20%以下が好ましい。
Cu、Niを添加する場合、両方を添加する理由は以下のとおりである。Cu、Niは共に発錆および局部腐食を抑える効果があり、Cuはその効果が大きい。しかし、Cuは偏析し易く、鋳造組織のデンドライト(Dendrite)間の凝固偏析由来の局部的なCuの偏析部が製品表面で残存する場合がある。製品表面でこのような偏析部があれば、その周囲との間に電位差を生じて、電位が低くなった部位に局部腐食又は発錆の起点となりうる。ところが、Niを同時に添加すれば、NiはCuの偏析を軽減する作用があり、両方添加するとその相乗効果が発現する。
一方、Cuを添加せずにNiのみを添加した場合は、コストが上がる割に発錆及び局部腐食を抑える効果の上昇代は小さいが、Cu、Niを共に添加すると、発錆及び局部腐食を抑える効果が顕著に表れる。
また、Cu、Niを共に添加すると、更に強度を改善するとともに、フェライト生成を抑制する効果がある。特に、Niは、Cu添加によるスラブ割れを防ぎ、かつ、Cuと共に添加することで、母材の延性・靭性を改善する効果がある。
(Mo:0.01%以上0.20%以下)
MoはCrおよびAlが添加された鋼において、0.01%以上添加されると、母材の特性を損なうことなく局部腐食の発生と成長を抑制する効果が認められる。一方、0.20%を超えてMoを添加しても効果が飽和するばかりか、母材の延性及び靭性が低下し、揚貯運炭設備用部材に加工する際、冷間加工割れ、表面微細割れを生じることがある。したがって、その範囲を0.01%以上0.20%以下とする。
(Nb:0.005%以上0.050%以下)
Nbは、耐食性を損なわずに、強度および靭性を改善する元素であり、その効果は0.005%以上から認められるが、0.050%を超えると効果が飽和するので範囲を0.005%以上0.050%以下と限定する。
(V:0.005%以上0.050%以下)
Vは、Nbと同じく耐食性を損なわずに強度を改善する元素であり、0.005%以上で効果が認められるが、多量の添加は延性を阻害するので上限を0.050%とする。
(Ti:0.005%以上0.030%未満)
Tiは、窒化物の生成を通じて高温での結晶粒径の細粒化に寄与する元素であり、耐食性を損なわずに、延性の改善などに寄与し、その効果は0.005%以上から認められる。一方、0.030%以上を添加すると炭化物が多量に析出するために、かえって延性及び靭性を阻害し、揚貯運炭設備用部材に加工し使用する際、冷間加工割れ又は靭性低下の不具合を生じることがある。したがって、その範囲を0.005%%以上0.030%未満に限定する。
また、本発明では、更に、Ca:0.0005%以上0.010%以下、Mg:0.0005%以上0.010%以下、REM:0.001%以上0.010%以下の何れか1種又は2種以上を添加することで、更に、耐局部腐食性及び耐錆剥離性を向上させ、無機ジンクリッチプライマー層を設けた際の耐発錆性を向上させることが可能である。
(Ca:0.0005%以上0.010%以下)
(Mg:0.0005%以上0.010%以下)
Ca及びMgは、Cr及びAlを含有する鋼において、不明な点は多いが、鋼中に添加することで、環境中で選択的に溶解し、鋼板表面でアルカリ環境を形成することから耐食性向上に寄与する元素である。いずれも5ppm以上で耐食性の向上は認められるが、100ppmを越えて添加すると、耐食性向上効果が飽和するばかりでなく、母材の延性や靭性が低下する傾向が明らかとなっており、その添加量を5ppm以上100ppm以下(0.0005%以上0.010%以下)に限定する。
(REM:0.001%以上0.010%以下)
本発明では、希土類元素(REM)を適宜添加しても、その耐食性を損なわずに、母材の延性などを改善することが可能である。その添加量は、0.001%以上を必要とするが、多量の添加はそれを阻害するので、その上限を0.010%とする。
本発明の揚貯運炭設備用耐食鋼材の製造方法については、上記に述べた成分を有する鋼片を出発材として、加熱、圧延工程、及び必要に応じて熱処理工程を経て製造される。鋼片は、転炉あるいは電気炉により成分調整され溶製後、連続鋳造法及び造塊・分塊法などの工程により製造される。鋼片は加熱後、熱間圧延により鋼板、形鋼、もしくは鋼管などとして目的に応じて焼き入れ、焼き戻しや焼きならしなどの熱処理を加えても、本鋼材の耐食性になんら影響を与えるものでない。
(無機ジンクリッチプライマー層)
本発明の揚貯運炭設備用耐食鋼材は、上記組成からなる下地鋼材の表面に、無機ジンクリッチプライマー層を形成させることが好ましい。無機ジンクリッチプライマー層による金属亜鉛による犠牲防食の効果が失われた後も、腐食生成物がCr及びAlを添加した鋼材の表面を保護し、発錆を抑制する効果を長期化させることが可能である。
無機ジンクリッチプライマー層は、その膜厚を5〜100μmとすることが好ましい。膜厚が5μm未満では無機ジンクリッチプライマーの効果が得られ難く、また100μmを超えると、割れやダレを生じやすくなり、耐食性が低下する。更に、無機ジンクリッチプライマー層は、膜厚が厚くなればなるほど、溶断・溶接時にヒュームやブローホールを生じやすくなり、加工性が低下する。また、加工性、耐食性、経済性のバランスを考慮すると、膜厚は10〜30μmがより好ましい。
また、無機ジンクリッチプライマー層は、乾燥塗膜中に金属亜鉛を30質量%以上含有するものを用いることが好ましい。通常、無機ジンクリッチプライマーの組成は、アルキルシリケート、エチルシリケート等のシリケート縮合液をビヒクルとしたものを用いることが多い。また、加熱残分中の金属亜鉛は30質量%以上のものであれば特に規定するものではないが、JIS K 5552 1種相当品であることが、信頼性の点で好ましい。
無機ジンクリッチプライマー層の形成方法については、特に限定されるものではないが、鋼材に無機ジンクリッチプライマーを刷毛又はスプレーにて塗布することで、鋼材表面に無機ジンクリッチプライマー層を形成することができる。但し、無機ジンクリッチプライマーを塗布又はスプレーする前に、ショットブラストやサンドブラストにより、鋼材表面の錆落としをしておくことが、密着性の点で好ましい。また、ブラスト処理レベルとしては、ISO 8501−1に示すSa2・1/2以上が好ましい。また、ブラスト処理された鋼材表面に無機ジンクリッチプライマーをスプレーする場合、エアレススプレーによりスプレーすることが、作業効率の点で好ましい。
また、本発明の揚貯運炭設備用耐食鋼材では、鋼材の表面又は無機ジンクリッチプライマー層の表面に耐熱性のエポキシ系樹脂層またはシリコーン系樹脂層を形成させることで、更に耐久性を向上させることが可能である。
エポキシ系樹脂塗料としては、主剤と硬化剤を含む2液型のものを例示でき、例えば、エポニックス(登録商標)又はマリンバラスター(登録商標)を例示できる。マリンバラスター(登録商標)は、エポキシ樹脂を含む主剤と、変性脂肪族ポリアミンを含む硬化剤からなるエポキシ系樹脂塗料である。
シリコーン系樹脂塗料としては、シリコーン樹脂を含む主剤とトルエン等を含む硬化剤を混合させて得られたものを例示でき、例えば、パイロジンスタックACT#250やパイロジン(登録商標)B#1000を例示できる。
耐熱性のエポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層の厚みは、20〜400μmとすることが好ましい。厚みが20μm未満では耐食性が低下し、400μm超ではそれ以上の耐食性の効果がなく、経済性に不利となる。特に、エポキシ系樹脂層の場合は40〜100μmがよりよく、シリコーン系樹脂層の場合は塗装性、経済性の観点から20〜75μmがよりよく、2回塗りするなど多層塗りすることが望ましい。
エポキシ樹脂層又はシリコーン系樹脂層の施工方法としては、鋼材の表面又は無機ジンクリッチプライマー層の表面に、刷毛、エアレス又はエアスプレー等により、乾燥塗膜の厚さが所望の厚みになるよう、エポキシ系樹脂塗料またはシリコーン系樹脂塗料を塗装し、常温で硬化させて仕上げればよい。
以上説明したような本発明に係る揚貯運炭設備用耐食鋼材よれば、上記成分及び構成により、石炭腐食環境において、局部腐食に進展による穴あき・減肉を防止し、かつ錆を発生させにくく、また、たとえ錆が発生しても錆が剥離し難いため設備外に拡散しにくくなる。その結果、揚貯運炭設備内及びその周辺が腐食生成物や錆で汚染しにくくなり、操業トラブルを防止できる。また、本発明の耐食鋼材を素材とする揚貯運炭設備部材も、耐局部腐食性、耐発錆性及び耐錆剥離性に優れた、揚貯運炭設備用耐食鋼材と同様、揚貯運炭設備内及びその周辺において、発錆や錆の剥離が抑制され、操業トラブルを防止することが可能となる。
更に、本発明に係る耐食鋼材は、上記成分及び構成により、希硫酸を含まず、Clイオンが濃化した石炭腐食環境において、耐局部腐食性及び耐錆剥離性に優れ、無機ジンクリッチプライマー層を設けることにより、長期に亘って耐発錆性を発現させることができる。そのため、本発明に係る耐食鋼材を、揚貯運炭設備によってハンドリングされる粉粒体の炭素から滲出するClイオンが濃化した炭素腐食環境で使用することにより、揚貯運炭設備内及びその周辺において、局部腐食や錆の剥離、更には発錆が抑制され、操業トラブルを防止することが可能となる。
以下、実施例により本発明の効果を説明するが、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
本実施例では、先ず、表1〜5に示す合金組成の鋼を溶製・鋳造し、板厚6mmまで熱間圧延、熱処理後、試験片としたものを作製した。
Figure 0005569493
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次に、上記試験片から500×1000×5mmを採取し、実プラント暴露試験片とした。この実プラント暴露試験片の片面の中央部に、溶接部を模擬するため、日鐵住金溶接工業(株)製の商品名:309ML・R(JIS Z3221 D309MoL−16該当)被覆アーク溶接棒を用い、500mm方向に、500mmにわたって、溶接金属部が幅10mmになるように直線状に2パス肉盛を行った。その後、ショットブラストでSa2・1/2(ISO 8501−1)以上になるようにブラスト処理を施した。この溶接部を含む500×1000mm面を試験面とした。
次に、石炭を貯蔵・搬出するホッパーの側面及び石炭を搬送するコンベヤーの下に、試験面を表面にして、実プラント暴露試験片の全周を、前記309ML・R被覆アーク溶接棒を用いて溶接し、Sa2・1/2(ISO 8501−1)以上になるようにケレン処理を施して設置し、一部の実プラント暴露試験片の試験面全体に無機ジンクリッチプライマーを表6〜表10に示す膜厚となるよう塗布し、常温、相対湿度(RH)70%以下で7日間乾燥させ、無機ジンクリッチプライマー層を有する実プラント暴露試験片を準備した。なお、無機ジンクリッチプライマーには、JIS K 5552 1種相当品(日本ペイント株式会社製 商品名:ニッペジンキー(登録商標)1000P)で調整したものを用いた。
次に、無機ジンクリッチプライマーを塗布したものと、塗布していないものの一部試験片の試験面に、エアレススプレーを用いて、エポキシ系樹脂(大日本塗料株式会社製 商品名:エポニックス(登録商標)#90下塗り‐R)又はシリコーン系樹脂(大島工業株式会社製、商品名:パイロジン(登録商標)B#1000)を、表6〜表10に示す膜厚となるように塗布した。
次に、無機ジンクリッチプライマーまたはシリコーン系樹脂を塗布した実プラント暴露試験片において、不可避的な欠陥を模擬して、幅0.6mm長さ300mmの2本の直線が、互いに試験面の中央部(溶接金属中央)で交わるXカットをカッターで入れ、地鉄面を露出させた。このとき、Xカットは、前記試験面上から見て30°で交わるよう入れた。
なお、全実プラント暴露試験片において、周溶接した溶接金属部を含む試験片側面には、シリコーン系樹脂を刷毛で厚く塗布し、石炭輸送用ホッパー本体および石炭輸送コンベア部材そのものが犠牲陽極とならないようにした。
実プラント暴露試験片を設置したホッパー及びコンベヤーを、実操業に用い、石炭の貯蔵・搬出、搬送に5年間使用した後、実プラント曝露試験片を回収し、これら暴露試験片表面の耐局部腐食性、耐発錆性、耐錆剥離性及びこれらの総合評価を行った。
更に耐発錆性、耐錆剥離性については、実プラント暴露試験片同様に、無機ジンクリッチプライマーやエポキシ系樹脂又はシリコーン系樹脂の塗布処理を施した暴露試験片を、80℃、100%RHの環境中で、石炭下に設置し、ラボにて各種腐食試験を5年間実施した。
これらの評価結果を表6〜10に示す。
耐発錆性は、発錆の有無で評価した。すなわち、肉眼で赤錆の発生が認められないものは○、赤錆の発生が認められるのは×とした。
耐錆剥離性は、錆発生が認められた暴露試験片において、錆部に対し、石炭を手で持って10〜15kgfの力で押し付けたまま10回摺動させ、その錆が剥離するか、否かを肉眼で観察し、錆の密着性を評価した。すなわち、錆破片の剥離が肉眼で認めらない場合は○、認められる場合は×とした。
耐局部腐食性は、錆を完全に除去した後(本条件では、母材は、溶解しないことを確認済み)、レーザー光学顕微鏡を用いて、それぞれ試験面の溶接部を含む中央部の、100×100mmの領域を観察し、局部腐食の進展が最大である部分(最も深い部分)の深さを測定して腐食速度を評価した。腐食速度が、0.03mm/year以下を○とし、腐食速度が、0.03mm/yearを超えるものを×とした。なお、錆は、インヒビターとして、スギムラ化学工業(株)製「ヒビロン」(登録商標)を0.5%添加した、50℃、10%硫酸水溶液中に、腐食後の暴露試験片を20分間浸漬して、除去した。
総合評価については、耐局部腐食性が「○」、耐発錆性が「○」、耐錆剥離性が「○」のものについては「○」、耐発錆性が「×」であっても、耐局部腐食性が「○」かつ、耐錆剥離性が「○」のものについては「○」、それ以外を「×」と評価した。これは、例え、錆が生じても、耐錆剥離性、及び、耐局部腐食性が優れている場合は、設備の錆汚染及び設備腐食を防止できる、という観点に基づく評価である。ただし、実プラント暴露試験後に、その試験片の180°曲げを行った際に、割れを生じたものは、冷間加工性の観点から適さず、総合評価を「×」としている。
なお、耐錆剥離性について、錆が剥離することが肉眼で判別しづらく、その剥離量が極めて微量であって、実質的にプラント操業に影響を与えるとは考えられない場合は、「△」とした。したがって、「△」であっても本願発明の目的とする効果が得られる。
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表6〜10に示すように、本発明の範囲内にあるNo.1〜83の試験片(本発明例)は、耐局部腐食性、耐発錆性、耐錆剥離、の総合評価について何れも優れた結果を示した。
一方、本願発明から外れる比較例1〜30では、いずれかの試験環境で耐錆剥離性または耐局部腐食性が悪かった。
これらの結果から、上述した知見を確認することができ、また、上述した各鋼成分を限定する根拠を裏付けることができた。

Claims (21)

  1. 質量%で、
    C:0.005%以上0.030%以下、
    Si:0.18%以上0.50%以下、
    Mn:1.50%以上3.00未満、
    P:0.030%以下、
    S:0.0050%以下、
    Cr:4.0%以上9.0%以下、
    Al:0.20%以上1.50%以下、
    N:0.020%以下
    をそれぞれ含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、揚貯運炭設備用耐食鋼材。
  2. 質量%で、さらに
    Cu:0.05%以上0.50%以下、
    Ni:0.05%以上0.50%以下、
    をそれぞれ含有することを特徴とする、請求項1に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
  3. 質量%で、さらに
    Mo:0.01%以上0.20%以下、
    V:0.005%以上0.050%以下、
    Nb:0.005%以上0.050%以下、
    Ti:0.005%以上0.030%未満
    の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
  4. 質量%で、さらに
    Ca:0.0005%以上0.010%以下、
    Mg:0.0005%以上0.010%以下、
    REM:0.001%以上0.010%以下
    の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
  5. 更に、前記耐食鋼材の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
  6. 更に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の成分からなる下地鋼材の表面に、金属亜鉛30質量%以上を含有する5〜100μmの厚みの無機ジンクリッチプライマー層を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
  7. 前記無機ジンクリッチプライマー層の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、請求項6に記載の揚貯運炭設備用耐食鋼材。
  8. 素材が、質量%で、
    C:0.005%以上0.030%以下、
    Si:0.18%以上0.50%以下、
    Mn:1.50%以上3.00未満、
    P:0.030%以下、
    S:0.0050%以下、
    Cr:4.0%以上9.0%以下、
    Al:0.20%以上1.50%以下、
    N:0.020%以下
    をそれぞれ含有し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる耐食鋼材であることを特徴とする、揚貯運炭設備用部材。
  9. 前記耐食鋼材が、質量%で、更に
    Cu:0.05%以上0.50%以下、
    Ni:0.05%以上0.50%以下、
    をそれぞれ含有することを特徴とする、請求項8に記載の揚貯運炭設備用部材。
  10. 前記耐食鋼材が、質量%で、更に
    Mo:0.01%以上0.20%以下、
    V:0.005%以上0.050%以下、
    Nb:0.005%以上0.050%以下、
    Ti:0.005%以上0.030%未満
    の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項8又は9に記載の揚貯運炭設備用部材。
  11. 前記耐食鋼材が、質量%で、更に
    Ca:0.0005%以上0.010%以下、
    Mg:0.0005%以上0.010%以下、
    REM:0.001%以上0.010%以下
    の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の揚貯運炭設備用部材。
  12. 更に、前記耐食鋼材の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、請求項8〜11の何れか1項に記載の揚貯運炭設備用部材。
  13. 更に、請求項8〜11のいずれか1項に記載の耐食鋼材を素材とする揚貯運炭設備用部材の表面に、金属亜鉛30質量%以上を含有する5〜100μmの厚みの無機ジンクリッチプライマー層を有することを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の揚貯運炭設備用部材。
  14. 前記無機ジンクリッチプライマー層の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、請求項13に記載の揚貯運炭設備用部材。
  15. 質量%で、
    C:0.005%以上0.030%以下、
    Si:0.18%以上0.50%以下、
    Mn:1.50%以上3.00未満、
    P:0.030%以下、
    S:0.0050%以下、
    Cr:4.0%以上9.0%以下、
    Al:0.20%以上1.50%以下、
    N:0.020%以下
    をそれぞれ含有し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる耐食鋼材を、揚貯運炭設備によってハンドリングされる粉粒体の炭素から滲出するClイオンが濃化した炭素腐食環境で使用することを特徴とする、耐食鋼材の使用方法。
  16. 前記耐食鋼材が、質量%で、更に
    Cu:0.05%以上0.50%以下、
    Ni:0.05%以上0.50%以下、
    をそれぞれ含有することを特徴とする、請求項15に記載の耐食鋼材の使用方法。
  17. 前記耐食鋼材が、質量%で、更に
    Mo:0.01%以上0.20%以下、
    V:0.005%以上0.050%以下、
    Nb:0.005%以上0.050%以下、
    Ti:0.005%以上0.030%未満
    の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項15又は16に記載の耐食鋼材の使用方法。
  18. 前記耐食鋼材が、質量%で、更に
    Ca:0.0005%以上0.010%以下、
    Mg:0.0005%以上0.010%以下、
    REM:0.001%以上0.010%以下
    の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項に記載の耐食鋼材の使用方法。
  19. 更に、前記鋼材の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、請求項15〜18のいずれか1項に記載の耐食鋼材の使用方法。
  20. 更に、請求項15〜18のいずれか1項に記載の耐食鋼材の表面に、金属亜鉛30質量%以上を含有する5〜100μmの厚みの無機ジンクリッチプライマー層を設けることを特徴とする、請求項15〜18のいずれか1項に記載の耐食鋼材の使用方法。
  21. 前記無機ジンクリッチプライマー層の外表面側に、エポキシ系樹脂層又はシリコーン系樹脂層を有し、前記シリコーン系樹脂層又は前記エポキシ系樹脂層の膜厚が20〜400μmであることを特徴とする、請求項20に記載の耐食鋼材の使用方法。
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