JP4811277B2 - 石炭・鉱石運搬船ホールド用耐食性鋼材 - Google Patents
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Cは、材料としての強度を確保するために必要な元素であり、0.01%以上含有させる。しかし、0.2%を超えて含有させると溶接性が低下するとともに、低pH腐食環境でカソードとなって腐食を促進するセメンタイトの生成量が増大する。このためCの含有量は0.01〜0.2%とする。好ましくは、0.03〜0.18%である。
Siは、脱酸に必要な元素であり、十分な脱酸効果を得るためには0.01%以上含有させる。しかし、1%を超えて含有させると母材および溶接継手部の靱性が損なわれる。このため含有量は0.01〜1%とする。好ましくは、0.05〜0.5%である。
Mnは、低コストで鋼の強度を高める作用を有する元素であり、この効果を得るためには0.05%以上の含有量とする。しかし、2%を超えて含有させると溶接性が劣化するとともに継手靭性も劣化する。このため含有量は0.05〜2%とする。好ましくは、0.1〜1.5%である。
Pは、鋼中に含まれる不純物元素で、溶接性を低下させる。特に、その含有量が0.05%を超えると、溶接性の低下が著しくなる。このため、含有量は0.05%以下とする。なお、Pの含有量は少ない方がよい。
Sは、鋼中に含まれる不純物元素で、その含有量が0.03%を超えると腐食の起点となるMnSが鋼中に多く生成し耐食性を低下させる。このため含有量は0.03%以下とする。なお、Sの含有量は少ない方がよい。
Cuは、鋼を製造する際、圧延時に割れが発生する原因となる。また、本願発明で扱うSnを含有する鋼の場合は、割れ感受性はさらに高くなる。したがって、Cuの含有量は不純物で含有しているとしても0.05%以下とする。好ましくはCuの含有量は0.01%未満とする。
Snは耐酸性に優れた元素であり、合金元素としてSnを含有させると、塗装部の耐食性が著しく向上するだけでなく、塗膜が剥がれて裸鋼となった後の耐食性も著しく向上する。これは、鉱石運搬船ホールド内のpHが低下した環境において、Snが溶解して鋼材上に析出するが、Snは水素過電圧の大きい元素であるから、Snが析出した部分では低pH環境におけるカソード反応である水素発生反応を著しく抑制することになり、その結果、耐食性が向上する。また、Snはイオンとして存在する場合においても、鋼材の溶解反応であるアノード反応を抑制する効果がある。これは、Snイオンの作用により鉄の溶解経路となる鉄表面へのOH−やCl−の吸着を抑制し、鉄の溶解そのものを抑えるためである。これらの効果を得るには、0.01%以上の含有量が必要であるが、0.3%を超えて含有させても前記の効果は飽和するばかりでなく、靭性の著しい劣化をまねく。したがって、含有量は0.01〜0.3%とする。好ましくは、0.02〜0.25%である。
Crは、低pH環境における耐食性を低下させる元素であり、特に、その含有量が0.05%を超えると耐食性の低下が著しくなる。したがって、Cr含有量は不純物で含有しているとしても0.05%以下とする。好ましくはCrの含有量は0.01%未満とする。
Alは、鋼の脱酸に使用され不可避的に鋼中に混入し、Crと同様、低pH環境における耐食性を著しく低下させる。また、含有量が多いと窒化物が粗大化するために靱性の低下をきたし、さらには溶接性も著しく劣化する。したがって、Al含有量は不純物で含有しているとしても0.1%以下とする。好ましくは、0.07%以下である。
Niは、酸性環境において耐食性を向上させる元素であり、合金元素としてNiを含有させると、母材の耐食性とさびの防食性の両方の効果により腐食を抑制する作用を有する。しかし、Niを1%を超えて含有させてもコスト上昇に見合う耐食性が得られないばかりか、Snの析出を抑制するためSnによる耐食性改善効果を低下させることから、Niの含有量を1%以下とする。好ましくは、0.01〜1%である。
Coは、Niと同様に、湿潤・乾湿繰り返し環境での耐食性、低pH環境における耐食性、Cl−含有時の耐酸性酸性環境における耐食性を向上させる元素であり、母材の耐食性とさびの防食性両方の効果により腐食を抑制する作用を有する。しかし、Coを1%を超えて含有させてもコスト上昇に見合う耐食性が得られないばかりか、Snの析出を抑制してSnによる耐食性改善効果を低下させることから、Coの含有量を1%以下とする。好ましくは、0.01〜1%である。
Moは耐酸性に優れた元素であり、裸鋼の耐食性および塗装部の耐食性を向上させる効果を有する。しかし、1%を超えて含有させても効果が飽和するばかりか溶接性を損なうし、コストも嵩むため、含有量は1%以下とする。好ましくは、0.01〜1%である。
WもMoと同様に、耐酸性を高める元素であり、裸鋼および塗装部の耐食性を向上させる効果がある。しかし、1%を超えて含有させても前記の効果は飽和しコストが嵩むし、溶接性の悪化につながるので、その含有量は1%以下とする。好ましくは、0.01〜1%である。
Sbは耐酸性を向上させる元素であり、裸鋼および塗装部の耐食性を向上させる効果がある。しかし、0.2%を超えて含有させると効果が飽和するだけでなく、靭性の著しい劣化をまねく。したがって、含有量は0.2%以下とする。好ましくは、0.01〜0.2%である。
Tiは、鋼の強度を高める作用を有する。Tiには、鋼の靱性を向上させる作用や、TiSを形成することによって腐食の起点となるMnSの生成を抑制し、耐食性を高める作用もある。しかし、0.1%を超えて含有させても効果は飽和しコストが嵩むばかりである。したがって、含有量は0.1%以下とする。好ましくは、0.005〜0.1%である。
ZrはTiと同様に、硫化物を優先的に形成し、腐食の起点となるMnSの生成を抑制する効果を有する。またZrはTiに比べ窒化物を形成しにくい元素であり、より効率よく硫化物が形成されるという特徴も有する。しかし、0.2%を超えて含有させると靱性の低下を招くので、含有量は0.2%以下とする。好ましくは、0.005〜0.2%である。
Caは、腐食反応時に水に溶けてアルカリとなり鋼材界面のpH低下を抑制する作用がある。このため、裸鋼および塗装部の耐食性が向上する。しかし、0.01%を超えると効果が飽和するため、Caの含有量は0.01%以下とする。好ましくは、0.0003〜0.01%である。
Nbは、鋼の強度を高める作用を有する元素である。しかし、0.1%を超えると靱性が劣化するため、含有量は0.1%以下とする。好ましくは、0.005〜0.1%である。
Vは、鋼の強度を高める作用を有する元素である。しかし、0.1%を超えると靱性及び溶接性が劣化するため、含有量は0.1%以下とする。好ましくは、0.005〜0.1%である。
Bは、鋼の強度を高める作用を有する元素である。しかし、0.01%を超えると靱性が劣化するため、含有量は0.01%以下とする。好ましくは、0.0003〜0.01%である。
Claims (7)
- 質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.01〜1%、Mn:0.05〜2%、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cu:0.05%以下、Sn:0.01〜0.3%、Cr:0.01%未満及びAl:0.1%以下を含有し、残部Fe及び不純物からなることを特徴とする石炭・鉱石運搬船ホールド用耐食性鋼材。
- 質量%で、さらに、Co:1%以下を含有することを特徴とする、請求項1に記載の石炭・鉱石運搬船ホールド用耐食性鋼材。
- 質量%で、さらに、Mo:1%以下、W:1%以下及びSb:0.2%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の石炭・鉱石運搬船ホールド用耐食性鋼材。
- 質量%で、さらに、Ti:0.1%以下及びZr:0.2%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の石炭・鉱石運搬船ホールド用耐食性鋼材。
- 質量%で、さらに、Ca:0.01%以下を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載の石炭・鉱石運搬船ホールド用耐食性鋼材。
- 質量%で、さらに、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下及びB:0.01%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載の石炭・鉱石運搬船ホールド用耐食性鋼材。
- 表面が塗膜によって被覆されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれかに記載の石炭・鉱石運搬船ホールド用耐食性鋼材。
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