JP6409962B2 - 耐食性に優れる原油タンク用鋼材および原油タンク - Google Patents
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Description
なお、本発明の原油タンク用鋼材には、厚鋼板、薄鋼板および形鋼が含まれる。
(1) 昼夜の温度差による鋼板表面への結露と乾燥(乾湿)の繰り返し、
(2) 原油タンク内に防爆用に封入されるイナートガス(O2約4vol%、CO2約13vol%、SO2約0.01vol%、残部N2を代表組成とするボイラあるいはエンジンの排ガス等)中のO2,CO2,SO2の結露水への溶け込み、
(3) 原油から揮発するH2S等腐食性ガスの結露水への溶け込み、
(4) 原油タンクの洗浄に使用された海水の残留
などが挙げられる。
これらは、通常、2.5年毎に行われる実船のドック検査で、強酸性の結露水中に、硫酸イオンや塩化物イオンが検出されていることからも窺い知ることができる。
かような局部腐食が起こる原因としては、
(1) 塩化ナトリウムを代表とする塩類が高濃度に溶解した凝集水の存在、
(2) 過剰な洗浄によるオイルコートの離脱、
(3) 原油中に含まれる硫化物の高濃度化、
(4) 結露水に溶け込んだ防爆用イナートガス中のO2、CO2、SO2等の高濃度化、
などが挙げられる。
実際、実船のドック検査時に、原油タンク内に滞留した水を分析した結果では、高濃度の塩化物イオンと硫酸イオンが検出されている。
例えば、特許文献1には、塗装や電気防食を施さなくても、塩分を含む恒温多湿に曝される環境下や硫黄分を含む環境下における耐食性が高められ、かつ靭性にも優れた船舶用鋼材を提供することを目的して、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜2.0%、Al:0.005〜0.10%、Bi:0.0005〜0.40%、P:0.003〜0.050%を含有し、残部:Feおよび不可避不純物であり、下式(1)および(2)を満足する船舶用鋼材に関する技術が開示されている。
[P]×7+[Bi]< 0.50% ・・・(1)
0.050 ≦[P]/[Bi]≦ 5.0 ・・・(2)
かような現状に鑑み、原油タンカーの維持管理費を削減すべく、深さ4mm超の孔食発生を抑制する手段の一つとしてタンカーへの耐食鋼の適用が提案されてきた。
その結果、鋼の成分組成、特にWとNdを適正量範囲に厳密に管理し、かつ鋼の転位密度を厳密に制御することによって、上記した全面腐食や局部腐食を著しく軽減できるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.質量%で、
C:0.03〜0.18%、
Si:0.03〜1.50%、
Mn:0.1〜2.0%、
P:0.025%以下、
S:0.010%以下、
Al:0.015〜0.049%、
N:0.008%以下、
W:0.005〜0.5%および
Nd: 0.00002〜0.010%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材であって、該鋼材の転位密度αが次式(1)を満たす耐食性に優れる原油タンク用鋼材。
α(/m2)≦{1020×[%W]×[%Nd]}/{5×([%Al]−0.01)}・・・(1)
但し、[%M]は鋼材中におけるM元素の含有量(質量%)
Cu:0.05〜0.4%、
Ni:0.005〜0.4%、
Mo:0.005〜0.5%、
Sn:0.005〜0.4%および
Sb:0.005〜0.4%
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、かつ鋼材の転位密度βが次式(2)を満たす前記1に記載の耐食性に優れる原油タンク用鋼材。
β(/m2)≦{1020×[%W]×[%Nd]+1015×([%Cu]+[%Ni]+[%Mo]+3×[%Sn]+3×[%Sb])}/{5×([%Al]−0.01)} ・・・(2)
但し、[%M]は鋼材中におけるM元素の含有量(質量%)
Cr:0.01〜0.2%、
Nb:0.001〜0.1%、
Ti:0.001〜0.1%、
V:0.002〜0.2%、
Mg:0.0002〜0.01%、
Ca:0.0002〜0.01%および
REM:0.0002〜0.015%
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する前記1または2に記載の耐食性に優れる原油タンク用鋼材。
まず、本発明の原油タンク用鋼材の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.03〜0.18%
Cは、鋼の強度を高める元素であり、本発明では、所望の強度(490〜620MPa)を確保するために0.03%以上添加する。しかしながら、0.18%を超えるC添加は、溶接性および溶接熱影響部の靭性を低下させる。よって、C量は0.03〜0.18%の範囲とする。好ましくは0.06〜0.16%の範囲である。
Siは、脱酸剤として添加される元素であるが、鋼の強度を高めるのに有効な元素でもある。そこで、本発明では、所望の強度を確保するためにSiを0.03%以上添加する。しかしながら、1.50%を超えるSi添加は、鋼の靭性を低下させる。よって、Si量は0.03〜1.50%の範囲とする。好ましくは0.05〜0.40%の範囲である。
Mnは、鋼の強度を高める元素であり、本発明では、所望の強度を得るために0.1%以上添加する。しかしながら、2.0%を超えるMn添加は、鋼の靭性および溶接性を低下させる。よって、Mn量は0.1〜2.0%の範囲とする。好ましくは0.80〜1.60%の範囲である。
Pは、粒界に偏析して鋼の靭性を低下させる有害な元素であるので、極力低減させることが望ましい。特に、Pが0.025%を超えて含有されると、靭性が大きく低下する。また、Pが0.025%を超えて含有されると、タンク油槽内の耐食性にも悪影響を及ぼす。よって、P量は0.025%以下とする。好ましくは0.015%以下である。
Sは、非金属介在物であるMnSを形成して局部腐食の起点となり、耐局部腐食性を低下させる有害な元素であるので、極力低減させることが望ましい。特に、Sが0.010%を超えて含有されると、耐局部腐食性の顕著な低下を招く。よって、S量は0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
Alは、脱酸剤として添加される元素であり、本発明では0.015%以上添加する。しかしながら、0.049%を超えてAlを添加すると、鋼の靭性が低下するだけでなく、鋼材表面に形成されたアルミ酸化物が酸中で優先的に溶解して耐食性も低下するので、Al量の上限は0.049%とする。
Nは、靭性を低下させる有害な元素であるので、極力低減させることが望ましい。特に、Nが0.008%を超えて含有されると、靭性の低下が大きくなるので、N量の上限は0.008%とする。
Wは、タンカー油槽部底板における孔食を抑制するだけでなく、タンカー上甲板部の全面腐食も抑制することができ、耐食性を向上させる上で極めて有効な元素である。このWの効果は0.005%以上の添加で発現するが、0.5%を超えるとその効果は飽和に達する。よって、W量は0.005〜0.5%の範囲とする。好ましくは0.01〜0.3%、より好ましくは0.02〜0.2%の範囲である。
なお、Wが上記のような耐食性向上効果を有する理由は、鋼板が腐食するのに伴って生成する錆中にWO4 2-が生成し、このWO4 2-の存在によって、塩化物イオンや硫酸イオンが鋼板表面に侵入するのが抑制されるからである。また、WO4 2-の鋼材表面への吸着によるインヒビター作用によっても、鋼材の腐食が抑制されると考えられる。
Ndは、タンカー油槽部上板において、結露によって鋼材表面に形成される水膜中に溶解する原油由来の硫化水素と反応して二硫化ネオジムや三硫化二ネオジムを形成し、鋼材表面に形成された錆層の保護性を補強する効果を有する。また、Ndは、大入熱溶接時に生成する酸化ネオジムが熱影響部の組織の粗大化を阻止するので、溶接継手の低温における靱性を確保する上で極めて有効な元素である。これらのNdの効果は、0.00002%以上の添加で発現するが、0.010%を超えるとその効果が飽和に達する。したがって、Nd量は0.00002〜0.010%の範囲とした。好ましくは0.0001〜0.005%、より好ましくは0.0002〜0.002%の範囲である。なお、上記耐食性に及ぼすNdの効果は、Wと併用した場合にその効果が著しく発現するため、本発明では、耐食性元素としてWとNdを所定量の範囲で併用することが特に重要である。
Cuは、鋼の強度を高めるだけでなく、鋼の腐食によって生成した錆中に存在し、腐食を促進させるCl-イオンの拡散を抑制することにより、耐食性を高める効果がある。これらのCuの効果は、0.05%未満の添加では十分に得られず、一方0.4%を超えて添加すると耐食性の向上効果が飽和する他、熱間加工時に表面割れなどの問題を引き起こすおそれがある。よって、Cu量は0.05〜0.4%の範囲とする。好ましくは0.06〜0.35%の範囲である。
Niは、生成した錆粒子を微細化して、裸状態での耐食性およびジンクプライマーにエポキシ系塗装が施された状態での耐食性を向上させる効果を有する。従って、Niは、耐食性をより向上させたい場合に添加する。上記のNiの効果は、0.005%以上の添加で発現する。一方、0.4%超えてNiを添加してもその効果は飽和する。よって、Niは0.005〜0.4%の範囲で添加するのが好ましい。より好ましくは0.08〜0.35%の範囲である。
Moは、タンカー油槽部底板における孔食を抑制するだけでなく、タンカー上甲板部の全面腐食も抑制することができる、耐食性向上に有効な元素である。このMoの効果は0.005%以上の添加で発現するが、0.5%を超えるとその効果は飽和に達する。よって、Mo量は0.005〜0.5%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは0.01〜0.3%の範囲、さらに好ましくは0.02〜0.2%の範囲である。
なお、Moが上記のような耐食性向上効果を有する理由は、鋼板が腐食するのに伴って生成する錆中にMoO4 2-が生成し、このWO4 2-の存在によって、塩化物イオンや硫酸イオンが鋼板表面に侵入するのが抑制されるからである。また、MoO4 2-の鋼材表面への吸着によるインヒビター作用によっても、鋼材の腐食が抑制されると考えられる。
Snは、腐食時に錆層中に取り込まれ、緻密な錆層を形成することにより、鋼材の局部腐食および全面腐食の抑制に寄与する有用元素である。このSnの効果は、0.005%以上の添加で発現するが、0.4%を超えて添加した場合には低温靭性が低下するだけでなく、溶接時に欠陥の発生を招く。従って、Sn量は0.005〜0.4%の範囲とする。好ましくは0.01〜0.2%の範囲、より好ましくは0.01〜0.1%の範囲である。
Sbは、タンカー油槽部底板における孔食を抑制するだけでなく、タンカー上甲板部における全面腐食を抑制する効果がある。上記のSbの効果は、0.005%以上の添加で発現するが、0.4%を超えて添加してもその効果は飽和する。よって、Sb量は0.005〜0.4%の範囲とする。
Crは、黒皮ままあるいはブラスト処理を施した状態で使用する鋼材に添加した場合は、タンク内の環境においては、耐食性向上に対して格段の効果は無い。しかしながら、Zn含有プライマーを鋼材表面に塗布したときには、Feを中心としたCrやZnの複合酸化物を形成して、長期間にわたり鋼板表面にZnを存続させることができ、これにより飛躍的に耐食性を向上させることができる。上記のCrの効果は、特にタンカー油槽の底板部のように、原油油分から分離された高濃度の塩分を含む液と接触する部分において顕著であり、Crを含有した上記部分の鋼材にZn含有プライマー処理を施すことにより、Crを含有しない鋼材と比較して、格段に耐食性を向上させることができる。このCrの効果は、0.01%未満では十分ではなく、一方0.2%を超えると溶接部の靭性を劣化させる。よって、Cr量は0.01〜0.2%の範囲とする。好ましくは0.05〜0.2%の範囲である。
Nb,TiおよびVはいずれも、鋼材強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて適宜選択して添加することができる。上記の効果を得るためには、Nb,Tiはそれぞれ0.001%以上、Vは0.002%以上添加するのが好ましい。しかしながら、Nb,Tiはそれぞれ0.1%を超えて、Vは0.2%を超えて添加すると、靭性が低下するため、Nb,TiおよびVはそれぞれ上記の範囲で添加するのが好ましい。
Mgは、溶接熱影響部の靭性向上に寄与するだけでなく、鋼の腐食によって生成した錆中に存在して耐食性を高める効果がある。これらのMgの効果は、添加量が0.0002%未満では十分に得られず、一方0.01%を超えて添加すると、かえって靱性の低下を招くので、Mg量は0.0002〜0.01%の範囲とする。
CaおよびREMはいずれも、溶接熱影響部の靭性向上に効果があり、必要に応じて添加することができる。上記の効果は、Ca:0.0002%以上、REM:0.0002%以上の添加で得られるが、Caは0.01%を超えて、またREMは0.015%を超えて添加すると、かえって靭性の低下を招くので、CaおよびREMはそれぞれ上記の範囲で添加するのが好ましい。
本発明の耐食鋼は、上記したように各種耐食性元素を所定量鋼材に添加することにより、タンカー油槽部底板および上板における腐食環境において形成された鋼材表面の錆層に各種耐食性元素が濃縮し、各種腐食因子の拡散を抑制して、鋼材の腐食速度を減じるものである。
その結果、耐食性元素として所定量のWとNdを有する鋼材においては、次式(1)の右辺で規定される値より低い転位密度αを有する場合に、原油タンカーのタンク内の環境において良好な耐食性が得られることが明らかになった。
α(/m2)≦{1020×[%W]×[%Nd]}/{5×([%Al]−0.01)}・・・(1)
但し、[%M]は鋼材中におけるM元素の含有量(質量%)
β(/m2)≦{1020×[%W]×[%Nd]+1015×([%Cu]+[%Ni]+[%Mo]+3×[%Sn]+3×[%Sb])}/5×([%Al]−0.01)} ・・・(2)
但し、[%M]は鋼材中におけるM元素の含有量(質量%)を意味する。
表1に示す成分組成の鋼材を、表2に記載の条件で圧延した。その後、転位密度を制御する目的で、一部の試験片に予歪を1%,3%,5%,7%付与した後に、後述する実施例に記載の寸法の腐食試験片を各25枚採取した。なお、予歪が大きくなるほど、鋼種に拠らず転位密度が増大する。これらの試験片を、実施例に記載の上甲板裏を模擬した全面腐食試験(結露試験)とタンカー底板環境を模擬した局部耐食試験(耐酸試験)にそれぞれ供した。何れの試験も実施例に記載の基準で評価した後、試験片の一部を切り出し、実施例に記載の方法で鋼材表面の転位密度を測定した。得られた結果を表2に併記する。
図1および2に示したとおり、鋼材の転位密度が上記(1)式あるいは(2)式を満たす場合のみ、結露試験において目的とする性能を満たすことが明らかになった。さらに、保護性錆の形成に有効なMo,Sn,Cu,NiおよびSbの添加量が増大するほど、許容される転位密度の上限が増大することが確かめられた。
図3および4に示したとおり、鋼材の転位密度が上記(1)式あるいは(2)式を満たす場合のみ、耐酸試験において目的とする性能を満たすことが明らかになった。
本発明の鋼材は、上記した好適成分組成に調整した鋼を、転炉や電気炉、真空脱ガス等、公知の精錬プロセスを用いて溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法により鋼素材(スラブ)とし、ついでこの素材を再加熱してから熱間圧延することにより、厚鋼板、薄鋼板および形鋼等とすることができる。
かくして得られたNo.1〜37の厚鋼板について、結露試験および耐酸試験を行って、その耐食性を評価した。併せて鋼材の転位密度も測定した。
(1) タンカー上甲板環境を模擬した全面腐食試験(結露試験)
タンカー上甲板裏面における全面腐食に対する耐食性を評価するため、上記No.1〜37の厚鋼板それぞれについて、表面1mmの位置から、幅25mm×長さ60mm×厚さ5mmの矩形の小片を設定試験期間(21日間、49日間、77日間、98日間)にて5枚となるよう計20枚切り出し、その表面を600番手のエメリー紙で研磨した。ついで、裏面および端面は腐食しないようにテープでシールし、図5に示す腐食試験装置を用いて全面腐食試験を行った。
タンカー油槽部底板における孔食に対する耐食性を評価するため、上記No.1〜37の厚鋼板についてそれぞれ、表面1mmの位置から、幅25mm×長さ60mm×厚さ5mmの矩形の小片を5枚切り出し、その表面を600番手のエメリー紙で研磨した。
ついで、10%NaCl水溶液を、濃塩酸を用いてClイオン濃度:10%、pH:0.85に調製した試験溶液を作製し、試験片の上部に開けた3mmφの孔にテグスを通して吊るし、各試験片について2Lの試験溶液中に168時間浸漬する腐食試験を行った。なお、試験溶液は、予め30℃に加温・保持し、24時間毎に新しい試験溶液と交換した。
上記腐食試験に用いた装置を図6に示す。この腐食試験装置は、腐食試験槽8、恒温槽9の二重構造の装置で、腐食試験槽8には上記試験溶液10が入れられ、その中に試験片7がテグス11で吊るされて浸漬されている。試験溶液10の温度は、恒温槽9に入れた水12の温度を調整することで保持している。
耐酸試験および98日間結露試験を行った後のNo.1〜37の試験片から、それぞれ20×20×5mmtの試験片を切り出し、元の鋼材の表面1mm側の面を測定面とした。X線回折測定装置を用いて、鋼材の(110)、(211)および(220)面の回折ピークを測定し、それぞれの回折角2θと半価幅βmを各試験片についてそれぞれ求めた。
横軸にsinθ/λ、縦軸にβcosθ/λをとり、上記の各結晶面の測定結果をプロットした。
ただし、λはX線波長1.789Å、βは真の回折ピーク半価幅をそれぞれ示し、実測半価幅βmおよび無歪半価幅βsから(3)式により求めた。
なお,無歪標準試料としてSi粉末標準試料を使用した(ピーク位置でのβsは放物線近似による補間計算から求めた)。
β =(βm2−βs2)0.5 ・・・(3)
上記のプロット3点に対し最小二乗法により近似曲線を引き、(4)式に示すようにその傾きから歪εを求め、(5)式より転位密度ρとその平均値を求めた。
β・cosθ/λ = 0.9 /D + 2ε・sinθ/λ ・・・(4)
ρ = 14.4 ε2 / b2 ・・・(5)
ただし、bはバーガースベクトル 0.25nm、
Dは結晶子サイズを表す。
得られた結果を、表4に併記する。
これに対し、本発明の条件を満たさない厚鋼板No.3、4、37は、いずれの耐食性試験においても良好な結果を得ることができなかった。
2,8 腐食試験槽
3 温度制御プレート
4 導入ガス管
5 排出ガス管
6,12 水
9 恒温槽
10 試験溶液
11 テグス
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.03〜0.18%、
Si:0.03〜1.50%、
Mn:0.1〜2.0%、
P:0.025%以下、
S:0.010%以下、
Al:0.015〜0.049%、
N:0.008%以下、
W:0.005〜0.5%および
Nd: 0.00002〜0.010%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材であって、該鋼材の転位密度αが次式(1)を満たす耐食性に優れる原油タンク用鋼材。
α(/m2)≦{1020×[%W]×[%Nd]}/[5×([%Al]−0.01)] ・・・(1)
但し、[%M]は鋼材中におけるM元素の含有量(質量%) - 質量%で、
C:0.03〜0.18%、
Si:0.03〜1.50%、
Mn:0.1〜2.0%、
P:0.025%以下、
S:0.010%以下、
Al:0.015〜0.049%、
N:0.008%以下、
W:0.005〜0.5%および
Nd: 0.00002〜0.010%
を含有し、さらに、
Cu:0.05〜0.4%、
Ni:0.005〜0.4%、
Mo:0.005〜0.5%、
Sn:0.005〜0.4%および
Sb:0.005〜0.4%
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材であって、該鋼材の転位密度βが次式(2)を満たす耐食性に優れる原油タンク用鋼材。
β(/m2)≦{1020×[%W]×[%Nd]+1015×([%Cu]+[%Ni]+[%Mo]+3×[%Sn]+3×[%Sb])}
/{5×([%Al]−0.01)} ・・・(2)
但し、[%M]は鋼材中におけるM元素の含有量(質量%) - 前記鋼材が、質量%でさらに、
Cr:0.01〜0.2%、
Nb:0.001〜0.1%、
Ti:0.001〜0.1%、
V:0.002〜0.2%、
Mg:0.0002〜0.01%および
Ca:0.0002〜0.01%
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する請求項1または2に記載の耐食性に優れる原油タンク用鋼材。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の原油タンク用鋼材で構成される原油タンク。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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