以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示し、図2に、この車両用空調装置の電気制御部の構成を示す。本実施形態の車両用空調装置は、エンジン(内燃機関)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車に搭載されるものである。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両の走行負荷に応じてエンジンEGを作動あるいは停止させて、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させている。
車両用空調装置1は、図1に示す室内空調ユニット10と、本発明の制御手段としての図2に示す空調制御装置60とを備えている。
室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機12、蒸発器13、ヒータコア14等を収容したものである。
ケーシング11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂で成形されている。ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。外気切替ドア23は、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ71によって駆動され、この電動アクチュエータ71は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、遠心多翼ファン12aを電動モータ12bにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置60から出力される制御信号によって目標回転数、すなわち、目標送風量が制御される。
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器13は、図示しない圧縮機、凝縮器、気液分離器、膨張弁等とともに、冷凍サイクルを構成している。
蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13通過後の空気を流す加熱用冷風通路15、冷風バイパス通路16といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路15および冷風バイパス通路16から流出した空気を混合させる混合空間17が形成されている。
加熱用冷風通路15には、蒸発器13通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア14が配置されている。ヒータコア14は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と蒸発器13通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器13通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。具体的には、ヒータコア14とエンジンEGとの間に冷却水流路31が設けられて、ヒータコア14とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路30が構成されている。
一方、冷風バイパス通路16は、蒸発器13通過後の空気を、ヒータコア14を通過させることなく、混合空間17に導くための空気通路である。したがって、混合空間17にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路15を通過する空気および冷風バイパス通路16を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路15および冷風バイパス通路16の入口側に、加熱用冷風通路15および冷風バイパス通路16へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア18を配置している。
したがって、エアミックスドア18は、混合空間17内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。エアミックスドア18は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ72によって駆動され、この電動アクチュエータ72は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には、混合空間17から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出すために、デフロスタ開口部24、フェイス開口部25およびフット開口部26が設けられている。
デフロスタ開口部24には、図示しないデフロスタダクトが接続され、このデフロスタダクト先端部のデフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すようになっている。ケーシング11のうちデフロスタ開口部24の空気流れ上流側には、デフロスタ開口部24の開口面積を調節することで、空調風の風量を調節するデフロスタドア24aが配置されている。このデフロスタドア24aが、デフロスタ吹出口の開度を調節する開度調節手段を構成する。
フェイス開口部25には、樹脂製のフェイスダクト40が接続され、フェイスダクト先端部のフェイス吹出口41〜44から車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すようになっている。
フェイス吹出口としては、車両の運転席(D席)側と助手席(P席)側のそれぞれに、車両左右方向の中央部に位置するセンタフェイス吹出口41、42が設けられ、車両の運転席(D席)側と助手席(P席)側のそれぞれに、車両左右方向端部に位置するサイドフェイス吹出口43、44が設けられている。
フェイスダクト40は、フェイス開口部25よりも空気流れ下流側で、運転席側のサイドフェイス吹出口43に連なる通路45と、助手席側のサイドフェイス吹出口44に連なる通路46と、運転席側および助手席側のセンタフェイス吹出口41、42に連なる通路47の3つに分岐している。これらの3つの通路の分岐点よりも空気流れ下流側で、運転席側および助手席側のセンタフェイス吹出口に連なる通路47は、運転席側と助手席側の2つの通路48、49に分岐している。
そして、運転席側および助手席側のセンタフェイス吹出口41、42に連なる通路47に、通路面積を調整するフェイスドア47aが配置されている。さらに、本実施形態では、助手席側のサイドフェイス吹出口44に連なる通路46に、この通路を開閉する1席集中切替ドア46aが配置されている。この1席集中切替ドア46aは、助手席側のサイドフェイス吹出口44からの吹き出しの許可と禁止とを切り替えるものである。
フット開口部26には、樹脂製のフットダクト50が接続され、フットダクト先端部の複数のフット吹出口51、52、53から乗員の足元に向けて空調風を吹き出すようになっている。ケーシング11のうちフット開口部26の空気流れ上流側にフットドア26aが配置されている。
複数のフット吹出口は、車室内の4席に対して設けられており、具体的には、運転席(D席)の足元の位置に運転席側フット吹出口51が設けられ、助手席(P席)の足元に助手席側フット吹出口52が設けられ、2つの後席(Rr席)の足元に後席側フット吹出口53が設けられている。
フットダクト50は、フット開口部26との接続部よりも空気流れ下流側で、運転席側フット吹出口51に連なる通路54と、助手席側フット吹出口52に連なる通路55と、後席側フット吹出口53に連なる通路56の3つに分岐している。そして、この分岐点57には、3つの通路54、55、56のうち運転席以外の助手席および後席側のフット吹出口52、53に連なる通路を閉じる位置と、3つの通路54、55、56を全て開く位置との間を切替可能な1席集中切替ドア57aが設けられている。
上述したデフロスタドア24a、フェイスドア47aおよびフットドア26aによって、以下の吹出口モードが実行される。吹出口モードとしては、従来と同様に、運転席側および助手席側のセンタフェイス吹出口41、42から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、センタフェイス吹出口41、42とフット吹出口51〜53から車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット開口部26を全開するとともにデフロスタ開口部24を小開度だけ開口して、フット吹出口51〜53から主に空気を吹き出すフットモード等がある。なお、次の1席集中モードを除いて、運転席側、助手席側のサイドフェイス吹出口43、44から常に空調風が吹き出すようになっている。
このように、デフロスタドア24a、フェイスドア47aおよびフットドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、例えば、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ73に連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータ73は、空調制御装置60から出力される制御信号によってその作動が制御される。なお、各吹出口モードドアを別々の電動アクチュエータによって作動させても良い。
さらに、本実施形態では、フットモード時に、フットダクト50中の分岐点57に設けられたフット用の1席集中切替ドア57aが運転席以外の助手席、後席側のフット吹出口52、53に連なる通路を閉じることで、全てのフット吹出口51〜53のうち運転席側のフット吹出口51のみから空調風を吹き出す1席集中モードを実行できるようになっている。この1席集中モード時では、サイドフェイス用の1席集中切替ドア46aが通路46を閉じることで、サイドフェイス吹出口43、44のうち運転席側のサイドフェイス吹出口43のみから空調風を吹き出すようになっている。
このように、フット用の1席集中切替ドア57aおよびフェイス用の1席集中切替ドア46aは、吹出口モードを1席集中モードに切り替える1席集中モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、1席集中切替ドア駆動用の電動アクチュエータ74に連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータ74も、空調制御装置60から出力される制御信号によってその作動が制御される。なお、各1席集中切替ドアを別々の電動アクチュエータによって作動させても良い
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された送風機12、各種電動アクチュエータ71、72、73、74等の作動を制御する。
空調制御装置60の出力側のうち送風機12に対する出力について説明すると、空調制御装置60は、送風機12への供給電力を制御することで、送風機12の目標送風量を制御する。具体的には、空調制御装置60は、電動モータ12bを駆動する図示しない駆動回路に制御信号を出力して、駆動回路から電動モータ12bに供給される電力を設定することで、電動モータ12bの回転数を制御する。電動モータ12bへの供給電力が大きいと、電動モータ12bの回転数が高くなり、電動モータ12bへの供給電力が小さいと、電動モータ12bの回転数が低くなる。
例えば、電動モータ12bへの印加電圧を制御する場合(電圧制御)では、空調制御装置60からの制御信号に応じた電圧を、駆動回路が電動モータ12bに印加する。また、電動モータ12bへの供給電流をPWM制御する場合、空調制御装置60からの制御信号に応じて、駆動回路が電動モータ12のON・OFFを制御するパルス信号のパルス幅のデューティー比を設定して、電動モータ12bの平均供給電流を所望の大きさとする。このように、空調制御装置60は、送風機12に対する出力値を設定するようになっており、すなわち、送風機12の電動モータ12bに対して駆動回路から出力される電圧値もしくは電流値を設定するようになっている。
また、空調制御装置60の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ61、外気温Tamを検出する外気センサ62(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ63、蒸発器13から吹き出される空気温度である蒸発器吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ64(蒸発器温度検出手段)、エンジン冷却水温度TWを検出する冷却水温度センサ65等のセンサ群の検出信号が入力される。
さらに、空調制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフを切り替えるエアコンスイッチ70a、車両用空調装置1の自動制御を設定・解除するオートスイッチ70b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機12の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ70c、冷凍サイクルの省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ70d等が設けられている。
さらに、空調制御装置60は、エンジンEGの作動を制御するエンジン制御装置80に電気的接続されており、空調制御装置60およびエンジン制御装置80は互いに電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置60がエンジン制御装置80へエンジンEGの作動要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。
次に、図3により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図3は、空調制御装置60の制御処理を示すフローチャートである。なお、図3中の各ステップは、空調制御装置60が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。
次のステップS2では、操作パネル70の操作信号や、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群61〜65等の検出信号を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ70cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機12の風量の設定信号等がある。
ステップS3では、車室内吹出空気の目標吹出空気温度TAOを算出する。目標吹出空気温度TAOは、車室内設定温度と、車室内温度等の車両環境条件とに基づいて算出され、具体的には、下記数式F1により算出される。TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ70cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ61によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ62によって検出された外気温、Tsは日射センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
続くステップS4では、空調制御装置60に接続された各種機器の制御目標値、例えば、送風機12の送風量(ブロワレベル)、吸込口モード、吹出口モード、エアミックスドアの開度、エンジン作動要求の要否等を決定する。送風量、吹出口モード等については、目標吹出空気温度TAOに基づいて決定し、エンジン作動要求の要否については、例えば、冷却水温度TWが基準温度よりも低い場合に、エンジン作動要求信号の出力を決定する。
その後、ステップS5では、ステップS4で決定された制御目標値が得られるように、空調制御装置60に接続された各種機器やエンジン制御装置80に対して制御信号を出力する。
これにより、送風機12が所望の送風量となるように作動し、所望の吹出口モードとなるように、吹出口モードドアおよび1席集中切替ドアが所定の位置となる。
続く、ステップS6では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
次に、上述したステップS4での制御目標値決定処理の詳細な内容を説明する。図4に、ステップS4の詳細を説明するためのフローチャートを示す。図4では、各種機器の制御目標値のうち吹出口モードと送風機12の送風量の決定ステップのみを示しており、以下では、吹出口モードと送風量の決定処理について説明する。
例えば、ステップS11で、目標吹出空気温度TAOに基づいて吹出口モードを決定する。ここでは、従来と同様に、吹出口モードとして、フェイスモード、フットモード等を決定する。このとき、フット用の1席集中切替ドア57aの位置を、運転席、助手席、後席側の全てのフット吹出口51、52、53に連なる通路を開く標準位置に決定し、サイドフェイス用の1席集中切替ドア46aの位置を、助手席側サイドフェイス吹出口44に連なる通路46を開く標準位置に決定する。
続いて、ステップS12で、吹出口モードがフットモードであるか否かを判定する。外気温が低い冬季の場合、ステップS11で、吹出口モードをフットモードに決定するので、この場合、YES判定して、ステップS13に進む。一方、吹出口モードがフットモード以外の場合、NO判定して、ステップS14に進む。
ステップS13では、1席集中モードが実施可能か否かを判定する。具体的には、運転席以外の座席が乗員不在であるか否かを判定する。運転席以外の座席が乗員不在であるか否かは、特開2000−142081号公報等に記載されている周知の乗員不在検出手段を用いることとで判定可能である。例えば、乗員不在検出手段として、着座センサやIRセンサ、シートベルトを締めたかどうかを検出するセンサ等を用いることができる。
そして、乗員不在検出手段による検出結果から運転席以外の座席に乗員ありと判定した場合(NO判定の場合)、ステップS14に進み、従来と同様に、4席空調用の送風機12の目標送風量(ブロワレベル)を決定する。具体的には、ステップS3で決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して、ブロワレベルを決定する。その後、ステップS5に進み、制御信号を出力する。
これにより、吹出口モードがフットモード以外の場合や、フットモード時でも1席集中モードが実施不可能な場合では、フット用の1席集中切替ドア57aおよびサイドフェイス用の1席集中切替ドア46aのドア位置は標準位置となり、従来と同様に、決定された吹出モードおよび送風量となるように、吹出モード切替ドアや送風機12が作動する。この場合が4席空調時であり、本発明の標準空調モードに相当する。
一方、ステップS13で、運転席以外の座席が乗員不在と判定した場合(YES判定の場合)、ステップS15に進む。
ステップS15では、助手席側と後席側のフット吹出口52、53を閉じる1席集中モードに決定する。具体的には、フットダクト50中のフット用の1席集中切替ドア57aの位置を、運転席以外の助手席、後席側のフット吹出口52、53に連なる通路55、56を閉じて、運転席側のフット吹出口51に連なる通路54を開く位置に決定する。これにより、運転席側のフット吹出口51からの吹き出しを許可し、助手席側と後席側のフット吹出口52、53からの吹き出しを禁止する。また、フェイスダクト40中のサイドフェイス用の1席集中切替ドア46aの位置を、助手席側サイドフェイス吹出口44に連なる通路46を閉じる位置に決定する。これにより、助手席側サイドフェイス吹出口44からの吹き出しを禁止する。
続いて、ステップS16では、デフロスタ開口部24(デフロスタ吹出口)を開閉するデフロスタドア24aの開度を調整する。フットモードにおいて、運転席以外のフット吹出口52、53を閉じた場合、デフロスタ開口部24の開度が全てのフット吹出口51、52、53を開く場合と同じだと、デフロスタ開口部24から吹き出す空調風の風量が増加してしまう。そこで、デフロスタ開口部24からの吹出風量を、全てのフット吹出口51、52、53を開く場合と同等に保つように、デフロスタ開口部24の開度を全てのフット吹出口51、52、53を開く場合よりも小さく設定する。
続いて、ステップS17では、1席集中モード用の送風機12の目標送風量(ブロワレベル)を決定する。具体的には、ステップS3で決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して、制御目標となるブロワレベルを決定する。このとき用いる制御マップは、ステップS14で用いる4席空調用の制御マップと異なるものである。
ここで、図5に1席集中モード時に用いる送風量の制御マップと、4席空調時に用いる送風量の制御マップとを示す。図5の縦軸はブロワレベルを示しており、図5の横軸は目標吹出空気温度TAOを示している。
なお、ブロワレベルとは、送風機12の目標送風量、すなわち、電動モータ12bの目標回転数であり、電動モータ12bへの供給電力に対応している。例えば、電動モータ12bを電圧制御する場合、駆動回路が電動モータ12bに印加する電圧値がブロワレベルに対応し、電動モータ12bを電流制御する場合、電動モータ12bのON時間とOFF時間の割合であるデューティー比がブロワレベルに対応する。
図5に示すように、4席空調時に用いる制御マップは、TAOに対してブロワレベルがいわゆるバスタブカーブを描く関係を有するものである。すなわち、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワレベルを最大値付近にして、送風機12の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワレベルを減少して、送風機12の風量を減少させる。さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワレベルを減少して、送風機12の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワレベルを最小値にして送風機12の風量を最小値にするようになっている。
これに対して、1席集中モード時に用いる制御マップは、4席空調時に用いる制御マップと比較して、同じTAOに対するブロワレベルが全体的に低くなっている。このため、1席集中モード時の送風機12の目標送風量は、TAOが同じ場合における4席空調時の送風機12の目標送風量よりも減少する。
そして、この減少量については、通常のフットモード(4席空調時)から1席集中モードに変更した際に、運転席側のフット吹出口51からの吹出風の風量を維持するように設定している。これは、通常のフットモード(4席空調時)から1席集中モードに変更した場合、TAOに対するブロワレベルの関係が変更前と同じままだと、運転席側のフット吹出口51から吹き出される吹出風の風量が増加するからである。このようにして、送風機12の送風能力を低減させるようになっている。
その後、ステップS5に進み、制御信号を出力する。これにより、フットモード時であって、1席集中モードが実施可能な場合、吹出口モード切替ドア26a、47aの位置がフットモード時の位置になるとともに、フット用の1席集中切替ドア57aの位置が運転席以外のフット吹出口52、53を閉じて、運転席側のフット吹出口51を開く位置となる。この結果、フット吹出口51〜53のうち運転席側のフット吹出口51のみから温風が吹き出す1席集中モードとなる。
また、デフロスタドア24aの位置が、通常のフットモード時の位置よりも開度を小さくする位置となって、通常のフットモード時と同等の風量の吹出風が、デフロスタ吹出口から吹き出される。
さらに、運転席側のフット吹出口51から吹き出される吹出風の風量を通常のフットモード時の風量に維持するように、通常のフットモード時と比較して、小さなブロワレベルで送風機12が作動する。
以上の説明の通り、空調制御装置60は、ステップS12、S13、S15のごとく、フットモード時に、運転席以外の席に乗員が不在の場合、助手席と後部座席への温風の吹き出しを行わないように、助手席側と後席側のフット吹出口52、53を閉じて1席集中モードを実行するようになっている。さらに、この場合、空調制御装置60は、ステップS17で、通常のフットモード(4席空調時)から1席集中モードに変更した際に、運転席側のフット吹出口51からの吹出風の風量を維持するように、4席空調時と比較して、同じTAOに対するブロワレベルを低く設定している。
ここで、乗員が運転者のみの場合に、車室内全体を暖めるのは、乗員が不在の空間を暖めることになり、暖房に必要な熱量を無駄に消費することになる。
これに対して、本実施形態では、乗員が運転者のみであれば、運転席以外のフット吹出口52、53からの吹き出しを禁止する1席集中モードを実行することで、熱源としてのエンジン冷却水の熱量を運転席側の暖房に用いるので、熱量の無駄を省くことができる。
また、本実施形態によれば、1席集中モードになっても、運転席側のフット吹出口51からの吹出風の風量が通常のフットモード時と同じなので、運転者の温感を維持できる。さらに、通常のフットモード時と比較して、同じTAOに対するブロワレベルを低減しているので、送風機12の電動モータ12bが消費する電力を低減でき、省エネルギ化を実現できる。
また、通常のフットモード時と比較して、ブロワレベルを低減させることで、ヒータコア14を通過する風量が減ってヒータコア14での放熱量を低減できるので、エンジン作動時ではエンジン冷却水の温度上昇が早くなり、エンジン停止時ではエンジン冷却水の温度下降が遅くなる。
この結果、暖機時では、エンジン冷却水の温度が早く所望の温度となるので、エンジン停止開始の早期化が可能となる。また、エンジン停止中の暖房時では、エンジン冷却水の温度が低下して暖房を維持できなくなると、エンジン作動要求信号を出力して、暖房を維持するためにエンジンを作動させたり、補助電気ヒータを作動させたりするが、本実施形態によれば、エンジン冷却水の温度低下の傾きが緩やかとなるので、暖房を維持するためのエンジン作動や補助電気ヒータ等の作動の頻度を低減でき、燃費悪化を抑制できる。
なお、上述の図4中の各ステップは、空調制御装置60が有する各種の機能実現手段を構成している。すなわち、ステップS15が、運転席以外の座席に乗員が不在の場合に1席集中モードを実行する1席集中モード実行手段に相当し、ステップS17が、1席集中モード時に、4席空調時(標準空調モード時)と比較して、送風機12への供給電力を小さくして目標送風量を少なく設定する目標送風量設定手段に相当する。
(第2実施形態)
図6に、本実施形態の車両用空調装置の全体構成を示す。本実施形態では、第1実施形態で説明した図1の構成に対して、フェイスダクト40の内部に、運転席側のサイドフェイス吹出口43からの吹出風量を調整する風量調整ドア45aを設けている。風量調整ドア45aは、運転席側のサイドフェイス吹出口43に連なる通路45に設けられている。
そして、空調制御装置60は、第1実施形態と同様の空調制御を実行するが、図4のステップS16で実行するデフロスタ開口部24の開度を調整するときに、運転席側のサイドフェイス吹出口43の風量も調整する。具体的には、運転席側のサイドフェイス吹出口43の風量を、運転席以外のフット吹出口52、53を閉じる前と同等に保つように、風量調整ドア45aの開度を運転席以外のフット吹出口52、53を閉じる前よりも小さく設定する。
また、本実施形態では、フェイスダクト40の内部に、助手席側のセンタフェイス吹出口42からの吹き出しの許可と禁止とを切り替える助手席側センタフェイス用の1席集中切替ドア49aを設けている。この助手席側センタフェイス用の1席集中切替ドア49aは、助手席側のセンタフェイス吹出口42に連なる通路49に設けられている。
これにより、第1実施形態では、フットモード時に1席集中モードを実行するものであったが、本実施形態によれば、フットモード時だけでなく、バイレベルモード時においても、第1実施形態のような1席集中モードが実行可能である。例えば、第1実施形態の空調制御装置60の空調制御を次のように変更することで実行可能となる。
図4中のステップS12では、フットモードもしくバイレベルモードであるか否かを判定するように変更する。また、ステップS15では、助手席側と後席側のフット吹出口52、53と助手席側のサイドフェイス吹出口44を閉じることに加えて、1席集中切替ドア49aによって助手席側のセンタフェイス吹出口42を閉じるように変更する。これにより、バイレベルモード時では、フェイスドア47aによってセンタフェイス通路47を開き、1席集中切替ドア49aによって助手席側のセンタフェイス吹出口42に連なる通路49を閉じることで、フット吹出口とセンタフェイス吹出口においては、運転席側の吹出口51、41のみから空調風を吹き出すことができる。
(第3実施形態)
図7に、本実施形態の車両用空調装置の模式図を示す。本実施形態の車両用空調装置は、運転席側と助手席側とで独立に空調制御を行うものである。
具体的には、本実施形態の車両用空調装置では、図7に示すように、室内空調ユニット10のケーシング11内に、蒸発器13の空気流れ下流側の空気通路を運転席側の空気通路111と助手席側の空気通路112とに仕切る仕切壁11a、11bが設けられている。そして、運転席側の空気通路111と助手席側の空気通路112の両方にまたがってヒータコア14が配置されている。
さらに、運転席側の空気通路111と助手席側の空気通路112とのそれぞれには、第1実施形態と同様に、加熱用冷風通路15a、15b、冷風バイパス通路16a、16bおよび混合空間17a、17bが形成されており、ヒータコア14の上流側にエアミックスドア18a、18bが設けられている。
また、図示しないが、運転席側の空気通路111は、運転席側のフット吹出口等の各吹出口に連なっており、運転席側の吹出口モードを切り替える吹出モードドアが設けられている。同様に、助手席側の空気通路112は、助手席側のフット吹出口等の各吹出口に連なっており、助手席側の吹出口モードドアが設けられている。
エアミックスドア18a、18bや吹出口モードドアは、空調制御装置60によって、運転席側と助手席側で独立して制御されるようになっている。
ここで、このような構成の車両用空調装置では、1席集中切替ドアを設けなくても、助手席側の吹出口モードドアを閉じることで、第1実施形態と同様に、1席集中モードを実行することができる。したがって、助手席側の吹出口モードドアが1席集中モードに切り替える切替手段を構成する。
しかし、助手席側の吹出口モードドアを閉じると、ヒータコア14の熱交換コア部の全体で送風空気と熱交換できないので、ヒータコア14から熱量を十分に取れないという問題が生じる。これは、ヒータコア14は、運転席側の空気通路111内の空気が通過する運転席側部分と、助手席側の空気通路112内を流れる空気が通過する助手席側部分とに分かれており、助手席側の吹出口モードドアを閉じると、ヒータコア14の助手席側部分には空気が流れず、ヒータコア14の助手席側部分で冷却水と空気との熱交換がされないからである。
そこで、本実施形態では、ヒータコア14通過後の空気を送風機12の上流側に還流させるための還流通路113と、この通路113を開閉する開閉ドア114とを設けている。本例では、この開閉ドア114は、還流通路113と助手席側の吹出口に連なる空気通路との分岐点に設けられており、この開閉ドア114によって、還流通路113に向かう空気流れと助手席側の吹出口に向かう空気流れとが切り替え可能となっている。
そして、1席集中モード時には、空調制御装置60が還流通路113の開閉ドア114を開けることで、ヒータコア14の助手席側部分を通過した空気を、還流通路113を介して送風機12の上流側に流れ込ませて、送風機12の吸い込み空気と混ぜるようにしている。このとき、エアミックスドア18a、18bを最大暖房位置とするようになっている。
これにより、ヒータコア14の助手席側部分で得た熱量を、運転席側の吹出口に向かう空気に与えることができ、ヒータコア14の熱量を十分に利用することができる。(第4実施形態)
図8に本実施形態の車両用空調装置の模式図を示す。本実施形態の車両用空調装置は、運転席側と助手席側とで独立に空調制御を行うものである。本実施形態では、図7に示す構成における蒸発器13とヒータコア14との間に位置する仕切壁11aを、図8に示すように、運転席側の空気通路111と助手席側の空気通路112との風量割合を変更する風量割合変更ドア121に変更している。
風量割合変更ドア121は、ヒータコア14よりも空気流れ上流側に配置され、ドア位置を変更することで、運転席側の空気通路111と助手席側の空気通路112の通路断面積を変更するものである。具体的には、風量割合変更ドア121は、両方の空気通路111、112の通路断面積を同じとする標準位置と、運転席側の空気通路111の通路断面積を助手席側の空気通路112の通路断面積よりも小さくする位置との間を移動可能となっている。
風量割合変更ドア121によって、運転席側の空気通路111の風量と助手席側の空気通路112の風量との割合が変更されると、運転席側の吹出口からの吹出風量と、助手席側の吹出口からの吹出風量との割合が変更される。したがって、風量割合変更ドア121は、運転席側の吹出口と助手席側の吹出口とからの吹出風量の割合を変更する吹出風量割合変更手段を構成する。
なお、本実施形態では、ヒータコア14における運転席側と助手席側の通風面積の割合すなわち、ヒータコア14における運転席側の吹出口に向かう風が通過する断面積と助手席側の吹出口に向かう風が通過する断面積との割合は固定されている。
次に、図9により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図9は、空調制御装置60の制御処理の一部を示すフローチャートであり、図4に対応している。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、ステップS21〜S24を有する点である。
具体的には、本実施形態では、図9に示すように、ステップS13で、1席集中モードが可能であると判定した場合に、ステップS21で、目標吹出空気温度TAOが冷却水温度TWから算出したヒータコア吹出空気温度TWDよりも低いか否かを判定する。ヒータコア吹出空気温度TWDは、ヒータコア14からの吹出空気温度であり、ヒータコア14でエンジン冷却水TWとの熱交換によって空気が加熱されたときの加熱空気温度である。このヒータコア吹出空気温度TWDは、厳密には、冷却水温度TW、蒸発器13の通過後の空気温度TE、ヒータコア14の熱交換性能等に基づいて算出されるが、冷却水温度TWと略同一である。
そして、目標吹出空気温度TAOがヒータコア吹出空気温度TWDと同じかそれよりも高い場合、NO判定して、ステップS15〜S17に進む。ステップS15〜S17は、第1実施形態と同様である。一方、目標吹出空気温度TAOがヒータコア吹出空気温度TWDよりも低い場合、YES判定して、ステップS22に進む。
ステップS22では、運転席側の空気通路111の風量が相対的に少なく、助手席側の空気通路112の風量が相対的に多くなるように、運転席側の空気通路111と助手席側の空気通路112との風量割合を変更する。具体的には、風量割合変更ドア121の位置を、運転席側の空気通路111の通路断面積を助手席側の空気通路112の通路断面積よりも小さくする位置に決定する。これにより、運転席側のフット吹出口からの吹出風量を相対的に少なくし、助手席側のフット吹出口からの吹出風量を相対的に多くする。なお、ステップS22を実行する場合では、ステップS15とは異なり、助手席側、後席側のフット吹出口を閉じないで、開いた状態とする。
続いて、ステップS23では、運転席側と助手席側のデフロスタドアの開度を調整する。例えば、運転席側の開度を助手席側の開度よりも小さく設定する。これにより、運転席側と助手席側のデフロスタ吹出口からの吹出風量のバランスを調整する。
続いて、ステップS24では、送風機12の送風量(ブロワレベル)を決定する。ここで、ステップS14、S17と同様に、制御マップを参照してブロワレベルを決定するが、この制御マップとしては、例えば、同じTAOに対するブロワレベルが1席集中モード時と4席空調時との中間となる制御マップを用いる。なお、ステップS14と同様の4席空調用の制御マップを用いても良い。
なお、図示しないが、ステップS22〜S24を実行する場合では、さらに、運転席側および助手席側のエアミックスドア18a、18bを最大暖房位置とする。また、助手席側の空調制御については設定温度をキャンセルする。
その後、ステップS5に進み、制御信号を出力する。これにより、運転席側、助手席側、後席側の吹出口モード切替ドアや風量割合変更ドア121が制御目標位置となり、送風機12が制御目標風量となるように作動する。
ここで、本実施形態では、フットモード時で1席集中モードが実施可能な場合であって、ヒータコア吹出空気温度TWDが目標吹出空気温度TAOよりも低い場合では、ステップS15のごとく、第1実施形態と同様に、1席集中モードを実行して、フット吹出口のうち運転席側のフット吹出口のみから温風を吹き出すようにしている。さらに、ステップS17のごとく、4席空調時のフットモード時と比較して、運転席側のフット吹出口からの吹出風量は維持しつつ、小さなブロワレベルで送風機12を作動させるようにしている。
このような制御を行うことで、4席空調時と比較して、ヒータコア14を通過する風量が減ってヒータコア14での放熱量を低減できるので、エンジン作動時ではエンジン冷却水の温度上昇が早くなり、エンジン停止時ではエンジン冷却水の温度下降が遅くなる。このため、エンジン冷却水の温度TWが空調の目標吹出空気温度TAOよりも高い状況が多くなる。
ちなみに、目標吹出空気温度TAOに応じて、エンジン作動要求を決定する際の基準(しきい値)となる要求水温が決定され、目標吹出空気温度TAOが低ければ、要求水温も低く設定されるが、エンジン冷却水温度がすぐに下がらないので、空調の目標吹出空気温度TAOよりも高い水温となる状況はすぐに解消されない。
そして、空調の目標吹出空気温度TAOよりも高い水温となる状況では、空調風の吹出温度はエアミックスドア18aの開度によって調整されるが、ヒータコア14で空気と熱交換されなかった熱量は、エンジン表面から放出されてしまうので、熱量を有効に利用できないという問題が生じる。
そこで、本実施形態では、空調制御装置60は、ヒータコア吹出空気温度TWDが目標吹出空気温度TAOよりも高い場合、ステップS22のごとく、運転席側のフット吹出口だけでなく、助手席側、後席側のフット吹出口も開くことで、運転席および運転席以外の座席に向けて温風を吹き出すようにしている。
これにより、運転席の暖房では余ってしまうエンジン冷却水の熱量を、車室内全体の暖房に用いるので、エンジン表面からの放熱ロスを低減でき、熱量を有効に利用できる。さらに、この場合、車室内全体の暖房によって1席集中モード時よりも室温が上昇するので、目標吹き出し温度が低下し、エンジン要求しきい値が低下する。このため、エンジン稼働率が低下するので、燃費が向上する。
また、空調制御装置60は、ステップS22のごとく、運転席側のフット吹出口からの吹出風量が少なく、助手席側のフット吹出口からの吹出風量が多い関係(D席風量<P席風量)となるように、運転席側と助手席側の吹出風量割合を設定している。ここで、吹出口からの吹出風量が少ない場合、吹出口からの吹出風量が多い場合と比較して、吹出風の温度が高くなる。これは、加熱用熱交換器の加熱能力が一定の場合、吹出風量が減少すると、単位空気量あたりの吸熱量が増大するからである。
したがって、本実施形態によれば、運転席側の吹出口からの吹き出し空気温度を助手席側の吹出口よりも高くでき、このときとブロワレベルが同じであって、運転席側と助手席側とで風量が同じ場合と比較して、運転者の温感を向上できる。
このように、本実施形態によれば、乗員に対して、できるだけ高い温度の温風を直接当てることで、十分な温感が得られるようにでき、車室内に対しては、1席集中モード時のエンジン放熱ロス分の熱量を用いて暖房を行うことができる。
なお、本実施形態は、フットモード時に1席集中モードを実行するものであったが、フットモード時だけでなく、バイレベルモード時に本実施形態のような1席集中モードを実行しても良い。
また、上述の図9中の各ステップは、空調制御装置60が有する各種の機能実現手段を構成している。本実施形態では、ステップS15、17が、運転席以外の座席に乗員が不在の場合に1席集中モードを実行する1席集中モード実行するとともに、4席空調時(標準空調モード時)と比較して、送風機12への供給電力を小さくして送風機12の目標送風量を少なく設定する1席集中モード実行手段に相当する。また、ステップS22が、運転席以外の座席に乗員が不在の場合であって、目標吹出空気温度よりも加熱空気温度が高い場合に、運転席側吹出口からの吹出風量を相対的に少なくし、助手席側吹出口からの吹出風量を相対的に多くするように、吹出風量割合設定する準1席集中モード実行手段に相当する。ちなみに、ステップS22は、1席集中モードを実行するためのステップではないが、運転席以外の座席に乗員が不在の場合に実行するステップなので、1席集中モードに準じた準1席集中モードを実行する手段であると言える。
(第5実施形態)
図10に本実施形態の車両用空調装置の模式図を示す。本実施形態の車両用空調装置は、第4実施形態と同様に、運転席側と助手席側とで独立に空調制御を行うものであるが、図8に示す構成における風量割合変更ドア121の代わりに、ヒータコア14の運転席側と助手席側の通風面積を変更する通風面積変更手段としての通風面積変更ドア122、123を用いている。
具体的には、ヒータコア14の空気流れ上流側に隣接して、上流側の通風面積変更ドア122が設けられており、ヒータコア14の空気流れ下流側に隣接して、下流側の通風面積変更ドア123が設けられている。なお、蒸発器13と上流側の通風面積変更ドア122との間には運転席側と助手席側の空気通路111、112を仕切る仕切壁11aが設けられており、下流側の通風面積変更ドア123の空気流れ下流側には運転席側と助手席側の空気通路111、112を仕切る仕切壁11bが設けられている。
両方の通風面積変更ドア122、123は、破線で示すように、ヒータコア14の運転席側の通風面積と助手席側の通風面積とを同じとする標準位置と、実線で示すように、ヒータコア14の運転席側の通風面積を相対的に小さくし、助手席側の通風面積を相対的に大きくする位置との間で移動可能となっている。
そして、本実施形態では、第4実施形態で説明した空調制御装置60の制御処理を次のように変更する。
図9のステップS11において、通風面積変更ドア122、123の位置を標準位置に決定することを追加する。
また、図9のステップS22では、運転席側の空気通路111と助手席側の空気通路112との風量割合を変更する代わりに、ヒータコア14の運転席側の通風面積と助手席側の通風面積との割合を変更する。具体的には、通風面積変更ドア122、123の位置を、ヒータコア14の運転席側の通風面積を相対的に小さくし、助手席側の通風面積を相対的に大きくする位置に決定する。
これにより、本実施形態においても、1席集中モードが実施可能であって、ヒータコア吹出空気温度TWDが目標吹出空気温度TAOよりも高い場合に、運転席側のフット吹出口からの吹出風量を相対的に少なくし、助手席側のフット吹出口からの吹出風量を相対的に多くすることができるので、第4実施形態と同様の効果が得られる。
(第6実施形態)
図11に本実施形態の車両用空調装置の模式図を示す。本実施形態の車両用空調装置は、図1に示す第1実施形態の構成に対して、計器盤用空気通路としてのインパネ用空気通路131と、この空気通路131を開閉する開閉手段としてのインパネ用開閉ドア132とを設けている。
このインパネ用空気通路131は、車室内ではなく、計器盤の内側の空間に向けて空調風を吹き出すためのものである。具体的には、インパネ用空気通路131は、ヒータコア14よりも空気流れ下流側であって、ケーシング11の空気流れ最下流部に、デフロスタ開口部、フェイス開口部25およびフット開口部26とは別に設けられている。インパネ用空気通路131の先端部となる吹出口は、図示しないが、計器盤の内側に配置されている。なお、図11では、デフロスタ開口部、各吹出口モードドアおよび各吹出口を省略している。
そして、空調制御装置60は、第4実施形態で説明した制御処理を次のように一部変更して実行する。
図9のステップS11やステップS15において、インパネ用開閉ドア132の位置を、インパネ用空気通路131を閉じる位置に決定することを追加する。
また、図9のステップS22では、フット用の1席集中切替ドア57aの位置を、運転席以外の助手席、後席側のフット吹出口52、53に連なる通路55、56を閉じる位置に決定するとともに、インパネ用開閉ドア132の位置を、インパネ用空気通路131を開く位置に決定する。
このため、本実施形態では、フットモード時で1席集中モードが実施可能であって、ヒータコア吹出空気温度TWDが目標吹出空気温度TAOよりも高い場合に、1席集中モードを実行するとともに、インパネ用空気通路131を介して、計器盤の内側の空間に向けて温風を吹き出すこととなる。これにより、計器盤の内側空間を暖めて、フットダクト50を暖めることができ、フットダクト50内を温風が通過する際に発生する放熱ロスを低減できる。この結果、インパネ用空気通路131を閉じている場合と比較して、運転席側のフット吹出口51からの吹き出し空気温度を上昇させることができる。
このように、本実施形態によれば、乗員に対して、できるだけ高い温度の温風を直接当てることで、十分な温感が得られるようにできるとともに、1席集中モード時のエンジン放熱ロス分の熱量を有効に利用できる。
なお、本実施形態では、インパネ用空気通路131を介して、計器盤の内側の空間に向けて空調風を吹き出すようにしたが、温風のダクト通過時の放熱ロスを低減させるためには、フットダクト50のうち運転席側の吹出口51に連なる空気通路54を形成しているダクト部に対して空調風を吹き出すように、インパネ用空気通路131の吹出口が設けられていれば良い。
また、本実施形態では、ステップS15、17が、運転席以外の座席に乗員が不在の場合に1席集中モードを実行する1席集中モード実行するとともに、4席空調時(標準空調モード時)と比較して、送風機12への供給電力を小さくして送風機12の目標送風量を少なく設定する第1の1席集中モード実行手段に相当する。また、ステップS22が、運転席以外の座席に乗員が不在の場合であって、目標吹出空気温度よりも加熱空気温度が高い場合に、1席集中モードを実行するとともに、計器盤の内側空間に向けて温風を吹き出すように、計器盤用空気通路(131)の開閉を決定する第2の1席集中モード実行手段に相当する。
(第7実施形態)
図12に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。本実施形態では、第1実施形態で説明した図1の構成に対して、運転席の前方にひざ上吹出口を追加し、第2実施形態と同様に、センタフェイス用の1席集中切替ドア49aを設けている。
ひざ上吹出口90は、運転席の乗員のひざ上付近に配置され、乗員の大腿部から腰にかけての下半身に向けて空調風を吹き出すものであり、フットダクト50に連なっている。フットダクト50は、運転席側フット吹出口51に連なる通路54から分岐してひざ上吹出口90に連なる通路58を有している。このひざ上吹出口90に連なる通路58には、この通路58を開閉するひざ上用の1席集中切替ドア58aが設けられている。この1席集中切替ドア58aは、ひざ上吹出口90からの空調風の吹出の許可と禁止とを切り替えるものである。
次に、本実施形態の作動を説明する。図13は、本実施形態における空調制御装置の制御処理の一部を示すフローチャートであり、図4に対応している。本実施形態では、図4中のステップS14、S17を、それぞれ、ステップS31、S33に変更し、ステップS15とステップS16との間にステップS32を追加している。
図13に示すように、ステップS13でNO判定した場合、ステップS31で、4席空調用の送風機12の目標送風量(ブロワレベル)とエンジン作動の要求水温とを決定する。
一方、ステップS13でYES判定した場合、ステップS15で、助手席側と後席側のフット吹出口52、53を閉じる1席集中モードに決定した後、ステップS32で、運転席側の吹出口を全て開くことを決定する。すなわち、運転席に対応して設けられた吹出口のうち、4席空調のフットモード時に空調風の吹き出しが禁止される吹出口からの空調風の吹き出しを許可する。
具体的には、フェイスドア47aの位置をセンタフェイス通路47を開く位置に決定する。そして、フェイス用の1席集中切替ドア49aの位置を助手席側のセンタフェイス吹出口42に連なる通路49を閉じる位置に決定して、運転席側のセンタフェイス吹出口41からの吹き出しを許可する。
また、サイドフェイス用の1席集中切替ドア46aの位置を助手席側のサイドフェイス吹出口44に連なる通路46を閉じる位置に決定して、助手席側のサイドフェイス吹出口44からの吹き出しを禁止する。さらに、ひざ上用の1席集中切替ドア58aの位置をひざ上吹出口90に連なる通路58を開く位置に決定して、ひざ上吹出口90からの吹き出しを許可する。なお、フットモード時では、運転席側のフット吹出口51は吹き出しが許可され、常に、運転席側のサイドフェイス吹出口は吹き出しが許可された状態となっている。
このようにして、1席集中モード時では、運転席側の全ての吹出口からの吹き出しを許可する。
続いて、ステップS16で、デフロスタ吹出口の開度調整した後、ステップS33で、1席集中モード用の送風機12の目標送風量(ブロワレベル)とエンジン作動の要求水温とを決定する。このとき、図3中のステップS3で決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照してブロワレベルと要求水温とを決定する。
ここで、図14、15に、本実施形態で用いるブロワレベルの制御マップと要求水温の制御マップとを示す。図14の縦軸はブロワレベルを示し、図15の縦軸はエンジン作動の要求水温を示しており、図14、15の横軸は目標吹出空気温度TAOを示している。
図14に示すように、1席集中モード時に用いるブロワレベルの制御マップは、4席空調時に用いる制御マップと比較して、同じTAOに対するブロワレベルが全体的に低くなっている。このため、1席集中モード時の送風機12の目標送風量は、TAOが同じ場合における4席空調時の送風機12の目標送風量よりも減少する。
ただし、本実施形態で用いる制御マップでは、TAOが所定温度よりも高い高温域でのブロワレベルが、第1実施形態で用いる制御マップと比較して、高くなっている。このため、1席集中モード時の送風機12の目標送風量は、TAOが同じ場合における第1実施形態での1席集中モード時の送風機12の目標送風量よりも増大する。
図15に示すように、4席空調時や第1実施形態の1席集中モード時でのエンジン作動の要求水温の制御マップは、TAOが所定温度よりも低い低温域では、要求水温は一定温度となり、TAOが所定温度よりも高い高温域では、TAOが高くなるに連れて、要求水温も高くなり、TAOがある温度以上で要求水温が最大温度で一定となるようになっている。
これに対して、1席集中モード時に用いるエンジン作動の要求水温の制御マップは、4席空調時や第1実施形態の1席集中モード時に用いる制御マップと比較して、TAOの高温域において、同じTAOに対する要求水温が低くなっている。このため、TAOが高温域となるフットモード時では、1席集中モード時のエンジン作動の要求水温は、TAOが同じ場合における4席空調時の要求水温よりも低い温度に決定される。
このような1席集中モード時のブロワレベルの制御マップとエンジン作動の要求水温の制御マップは、以下に説明するブロワレベルと要求水温との関係に基づいて得られたものである。
図16に、冷却水温度毎におけるブロワレベルと乗員周囲平均温度との関係を示す。図16は、本実施形態の車両用空調装置の構成において、図13中のステップS15、S32で、運転席に対応する全ての吹出口からの吹き出しを許可した場合の測定結果である。乗員周囲平均温度とは、運転席での乗員周囲の平均温度であって、運転席における乗員の頭の位置から足の位置までの測定温度の平均値である。
本発明者の実験結果より、図16に示すように、冷却水温度がいずれの場合においても、冷却水温度が一定のとき、ブロワレベルが増大して、送風機の送風量が上昇すると、乗員周囲平均温度が上昇するという関係があることがわかった。さらに、図16中破線で示すように、冷却水温度が低い場合、冷却水温度が高い場合よりもブロワレベルを高くすることで、乗員周囲平均温度を同等にできることがわかった。
ここで、図17に、乗員周囲平均温度が同等となる冷却水温度とブロワレベルとの関係を示す。図17中に実線で示す曲線は、図16の測定結果に基づいて、乗員周囲平均温度が同等なるときの冷却水温度とブロワレベルとの関係を示す曲線であり、乗員の温感が等しいことを示す等温感線である。また、図17中の破線で示す曲線は、暖房に用いる熱量が等しいことを示す等熱量線である。
冷却水温度とブロワレベルとの関係が図17に示す等温感線上に位置する関係であれば、乗員の暖房感が同等となる。ただし、冷却水温度とブロワレベルとの関係が等温感線上に位置する関係であっても、冷却水温度がTbとTcとの間のように、図17に示す等熱量線上よりも上側に外れると、暖房に用いる熱量が増大する。このため、冷却水温度とブロワレベルとは、省エネルギー化という観点では、冷却水温度がTaとTbとの間のように、図17に示す等温感線上であって、等熱量線上に位置する関係であることが好ましい。
したがって、図14、15に示す1席集中モード時のブロワレベルの制御マップとエンジン作動の要求水温の制御マップは、4席空調時の要求水温およびブロワレベルに対して、図17に示す等温感線上であって等熱量線上に位置する関係を満たすように、1席集中モード時の要求水温とブロワレベルとが設定されている。例えば、1席集中モード時の要求水温が4席空調時の要求水温よりも10℃程度低く設定され、4席空調時と同等の暖房感を運転席の乗員が得られるように、その要求水温に応じた1席集中モード時のブロワレベルが設定されている。
その後、ステップS5に進み、制御信号を出力する。これにより、吹出口モードがフットモードに決定される場合であって、1席集中モードが実施可能な場合では、各ドアの位置が上述の1席集中モードの位置となる。
このとき、送風機12は、通常のフットモード時よりも小さく、かつ、第1実施形態の1席集中モード時よりも大きなブロワレベルで送風機12が作動する。また、空調制御装置60は、通常時よりも低く設定された要求水温に基づいて、エンジン作動要求の要否を判定する。
この結果、フット吹出口51〜53のうち運転席側のフット吹出口51のみから温風が吹き出し、フェイス吹出口41〜44のうち運転席側のセンタフェイス吹出口41およびサイドフェイス吹出口43のみから温風が吹き出し、ひざ上吹出口から温風が吹き出される。
以上の説明の通り、本実施形態の空調制御装置60は、ステップS33で、1席集中モード時に、通常のフットモード時と比較して、同じTAOに対するブロワレベルおよびエンジン作動の要求水温を低く設定している。
このため、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、送風機12の電動モータ12bが消費する電力を低減でき、省エネルギ化を実現できる。
さらに、本実施形態では、エンジン作動の要求水温を低く設定することで、エンジンEGの停止直後から作動開始までの停止期間を長くでき、エンジンEGの稼働率を低減できる。よって、本実施形態によれば、運転席の乗員の暖房感を損なうことなく、エンジンの燃料消費量を低減でき、単位燃料当たりの走行距離である実用燃費を向上できる。
図18(a)、(b)、(c)に、それぞれ、1席集中モード時における燃費、エンジン稼働率、暖房熱量について本実施形態と第1実施形態とを比較した結果を示す。図18(a)、(b)、(c)は、所定の実用燃費評価モード走行で測定した結果である。なお、測定時では、第1実施形態の要求水温Ta(℃)よりも本実施形態の要求水温Tb(℃)を低くし(Ta>Tb)、第1実施形態の送風機回転数Na(rpm)よりも本実施形態の送風機回転数Nb(rpm)を高くした(Na<Nb)。
図18(a)、(b)、(c)に示すように、本実施形態によれば、第1実施形態と比較して、消費する暖房熱量を同等付近に維持しつつ、エンジン稼働率を低減でき、燃費を向上できることを確認している。
(第8実施形態)
図19は、本実施形態における空調制御装置の制御処理の一部を示すフローチャートである。図19は、第7実施形態で説明した図13のフローチャートに対してステップS32を省略したものである。
すなわち、第7実施形態では、1席集中モードを実行する場合に、ステップS32で、運転席側の吹出口を全て開くことを決定したが、本実施形態では、ステップS15で、フット吹出口51〜53のうち運転席側のフット吹出口51からの吹き出しのみを許可する。
このように、1席集中モード時に、運転席側の吹出口を全て開かず、運転席側のフット吹出口51から温風を吹き出す場合であっても、第7実施形態とは程度の差は生じるが、図16のように、冷却水温度が一定のとき、送風機の送風量が上昇すると、乗員周囲平均温度が上昇するという関係がある。また、図17に示すように、乗員周囲平均温度が同等となるときの冷却水温度とブロワレベルとの関係がある。
したがって、本実施形態においても、4席空調時と同等の暖房感を運転席の乗員が得られる範囲で、1席集中モード時のブロワレベルおよび要求水温を4席空調時よりも低く設定することができる。
(第9実施形態)
図20は、本実施形態における空調制御装置の制御処理の一部を示すフローチャートである。図20は、第7実施形態で説明した図13のフローチャートに対して、ステップS31、S33をそれぞれステップS41、S42に変更し、ステップS41、S42の後にステップS43を追加したものである。本実施形態では、ブロワレベルとエンジン作動の要求水温とのうちエンジン作動の要求水温のみを、4席空調時よりも1席集中モード時が低くなるように設定する。
具体的には、ステップS13でNO判定した場合に、ステップS41で、4席空調用のエンジン作動の要求水温を決定する。このとき、予め空調制御装置60に記憶された4席空調用のエンジン作動の要求水温の制御マップを参照して、TAOに基づいて要求水温を決定する。
一方、ステップS13でYES判定した場合、第7実施形態と同様に、ステップS15、ステップS32、ステップS16を実行した後、ステップS42で、1席集中モード用のエンジン作動の要求水温を決定する。このとき、予め空調制御装置60に記憶された1席空調用のエンジン作動の要求水温の制御マップを参照して、TAOに基づいて要求水温を決定する。この制御マップとしては、第7実施形態と同様に図15に示す制御マップを用いることができる。
そして、ステップS41、ステップS42の後、ステップS43で、4席空調と1席集中モードに関係なく、予め空調制御装置60に記憶されたブロワレベルの同じ制御マップを参照して、TAOに基づいてブロワレベルを決定する。
このように、ブロワレベルについては、4席空調と1席集中モードで区別することなく、同じ制御マップを用いて決定し、エンジン作動の要求水温を、4席空調時よりも1席集中モード時が低くなるように設定することもできる。
ここで、1席集中モード時は、4席空調時よりも同じTAOに対する吹出風量が多くなる。このため、エンジン冷却水が同じ温度の場合、1席集中モード時の方が4席空調時よりも、運転席の乗員の暖房感が高くなる。そこで、1席集中モード時の暖房感が4席空調時と同等以上となる範囲内であれば、エンジン冷却水の温度を低下させることができ、エンジン稼働率を低減させることができる。
(第10実施形態)
図21は、本実施形態における空調制御装置の制御処理の一部を示すフローチャートである。図21は、第9実施形態で説明した図20のフローチャートに対してステップS32を省略したものである。第7実施形態を第8実施形態に変更したように、第9実施形態を本実施形態のように変更することもできる。
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、空調制御装置60は、図4のステップS17のごとく、1席集中モードを実行する場合に、運転席側フット吹出口51からの吹出風量が4席空調時と同等となるように、ブロワレベルを低く設定したが、1席集中モード時の運転席側フット吹出口51からの吹出風量が、同じTAOのときの4席空調時の運転席側フット吹出口51からの吹出風量と同等以上となる範囲で、ブロワレベルを低く設定しても良い。また、1席集中モード時の運転席側フット吹出口51からの吹出風量が、4席空調時の運転席側フット吹出口51からの吹出風量よりも少なくなるように、ブロワレベルを低く設定しても良い。
(2)上述の各実施形態では、前席用の車室内空調ユニット10は、後席側フット吹出口53を有していたが、後席側フット吹出口53を有していなくても良い。この場合、1席集中モード時に、運転席側のフット吹出口51からの吹き出しを許可し、助手席側のフット吹出口52からの吹き出しを禁止する。
また、上述の各実施形態では、1席集中モード時に、運転席側のフット吹出口51からの吹き出しを許可し、助手席側と後席側のフット吹出口52、53からの吹き出しを禁止したが、運転席と助手席の両方に乗員が着座している場合では、後席側のフット吹出口53からの吹き出しのみを禁止するようにしても良い。このように、1席集中モード時では、運転席以外の座席に対応して設けられた他の吹出口のうち少なくとも1つからの空調風の吹き出しを禁止するようにしても良い。
(3)第1〜第6実施形態では、空調制御装置60は、図4のステップS17のごとく、1席集中モードを実行する場合に、自動的に、4席空調時と比較してブロワレベルを低く設定していたが、自動的ではなく、エコノミースイッチ70dが乗員に操作されてエコノミーモードが選択されている場合に、4席空調時と比較してブロワレベルを低く設定するようにしても良い。
また、第7、第8実施形態では、空調制御装置60は、図13のステップS33のごとく、1席集中モードを実行する場合に、自動的に、4席空調時と比較してブロワレベルとエンジン作動の要求水温を低く設定していたが、自動的ではなく、エコノミースイッチ70dが乗員に操作されてエコノミーモードが選択されている場合に、4席空調時と比較してブロワレベルとエンジン作動の要求水温を低く設定しても良い。また、空調制御装置60は、エコノミースイッチ70dが乗員に操作されてエコノミーモードが選択されている場合に、第7実施形態のように、4席空調時と比較してブロワレベルとエンジン作動の要求水温を低く設定し、エコノミーモードが選択されていない場合に、第1実施形態のように、ブロワレベルと要求水温のうちブロワレベルのみを4席空調時と比較して低く設定しても良い。
また、第9、第10実施形態では、空調制御装置60は、図20のステップS42のごとく、1席集中モードを実行する場合に、自動的に、4席空調時と比較してエンジン作動の要求水温を低く設定していたが、自動的ではなく、エコノミースイッチ70dが乗員に操作されてエコノミーモードが選択されている場合に、4席空調時と比較してエンジン作動の要求水温を低く設定するようにしても良い。
(4)上述の各実施形態では、空調制御装置60は、図3のステップS4のごとく、各機器の制御目標値を、空調熱負荷から算出される目標吹出空気温度TAOに基づいて決定したが、直接、空調熱負荷に基づいて決定しても良い。空調熱負荷は、例えば、設定温度と、少なくとも内気温を要素とする環境条件とに応じて決定される。
(5)上述の第1〜第7実施形態では、暖房時に1席集中モードを実行していたが、冷房時に1席集中モードを実行しても良い。例えば、第1実施形態において、図4のステップS12を省略し、フェイスモード等においても、1席集中モードを実行できるようにしても良い。
冷房時に上述の1席集中モードを実行し、ブロワレベルを低く設定することで、蒸発器13での吸熱量を低減でき、要求される圧縮機の吐出能力を低減できるので、これによっても、車両用空調装置の省エネルギ化を実現できる。
(6)上述の各実施形態は、本発明の車両用空調装置をハイブリッド車に適用したが、ハイブリッド車以外の車両に適用しても良い。本発明の車両用空調装置は、例えば、エンジンEGのみから車両走行用の駆動力を得る通常のエンジン車、車両停止時に自動的にエンジンを停止するアイドリングストップ車等に適用可能である。また、駆動手段としての燃料電池を備える燃料電池車に、本発明の車両用空調装置を適用することができる。
例えば、第1実施形態の車両用空調装置をエンジン車に適用した場合でも、第1実施形態で説明した空調制御装置60による1席集中モードの実行およびブロワレベルの低下の制御によって、第1実施形態と同様に、暖機時での早期終了が可能となり、暖房を維持するための補助電気ヒータ、ヒートポンプサイクル等の作動の頻度を低減でき、燃費悪化を抑制できる。
(7)上述の実施形態では、駆動手段の冷却流体として冷却水を用いたが、冷却流体として、冷却水以外の他の液体や気体を用いても良い。
(8)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。