以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示し、図2に、この車両用空調装置の電気制御部の構成を示す。本実施形態の車両用空調装置は、エンジン(内燃機関)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車に搭載されるものである。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両の走行負荷に応じてエンジンEGを作動あるいは停止させて、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させている。
車両用空調装置1は、図1に示す室内空調ユニット10と、制御手段としての図2に示す空調制御装置(エアコンECU)60とを備えている。
室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機12、蒸発器13、ヒータコア14等を収容したものである。
ケーシング11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂で成形されている。ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。外気切替ドア23は、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ71によって駆動され、この電動アクチュエータ71は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、遠心多翼ファン12aを電動モータ12bにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置60から出力される制御信号によって回転数(送風量)が制御される。
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器13は、図示しない圧縮機、凝縮器、気液分離器、膨張弁等とともに、冷凍サイクルを構成している。
蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13通過後の空気を流す加熱用冷風通路15、冷風バイパス通路16といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路15および冷風バイパス通路16から流出した空気を混合させる混合空間17が形成されている。
加熱用冷風通路15には、蒸発器13通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア14が配置されている。ヒータコア14は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と蒸発器13通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器13通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。具体的には、ヒータコア14とエンジンEGとの間に冷却水流路31が設けられて、ヒータコア14とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路30が構成されている。
一方、冷風バイパス通路16は、蒸発器13通過後の空気を、ヒータコア14を通過させることなく、混合空間17に導くための空気通路である。したがって、混合空間17にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路15を通過する空気および冷風バイパス通路16を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路15および冷風バイパス通路16の入口側に、加熱用冷風通路15および冷風バイパス通路16へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア18を配置している。
したがって、エアミックスドア18は、混合空間17内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。エアミックスドア18は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ72によって駆動され、この電動アクチュエータ72は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には、混合空間17から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出すために、デフロスタ開口部24、フェイス開口部25およびフット開口部26が設けられている。
デフロスタ開口部24には、図示しないデフロスタダクトが接続され、このデフロスタダクト先端部のデフロスタ吹出口24から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すようになっている。ケーシング11のうちデフロスタ開口部24の空気流れ上流側には、デフロスタ開口部24の開口面積を調整するデフロスタドア24aが配置されている。
フェイス開口部25には、フェイス開口部25からフェイス吹出口41〜44までの空気通路を形成する樹脂製のフェイスダクト40が接続されている。そして、フェイスダクト先端部のフェイス吹出口41〜44から車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すようになっている。
フェイス吹出口としては、車両の運転席(D席)側と助手席(P席)側のそれぞれに、車両の左右方向中央部に位置するセンタフェイス吹出口41、42が設けられ、車両の運転席(D席)側と助手席(P席)側のそれぞれに、車両の左右方向端部に位置するサイドフェイス吹出口43、44が設けられている。
具体的には、フェイスダクト40は、フェイス開口部25よりも空気流れ下流側で、運転席側のサイドフェイス吹出口43に連なる通路45と、助手席側のサイドフェイス吹出口44に連なる通路46と、運転席側および助手席側のセンタフェイス吹出口41、42に連なる通路47との3つに分岐している。これら3つの通路の分岐点よりも空気流れ下流側で、運転席側および助手席側のセンタフェイス吹出口41、42に連なる通路47は、運転席側と助手席側の2つの通路48、49に分岐している。そして、運転席側および助手席側のセンタフェイス吹出口41、42に連なる通路47には、通路面積を調整するフェイスドア47aが配置されている。
さらに、本実施形態では、助手席側のサイドフェイス吹出口44に連なる通路46に、この通路46を開閉する助手席側サイドフェイス用の1席集中切替ドア46aが配置されており、助手席側のセンタフェイス吹出口42に連なる通路49に、この通路を開閉する助手席側センタフェイス用の1席集中切替ドア49aが配置さている。これらの1席集中切替ドア46a、49aは、助手席側のフェイス吹出口42、44からの吹き出しの許可と禁止とを切り替えるものである。
また、フェイスダクト40のうち、運転席側のサイドフェイス吹出口43に連なる通路45には、通路面積を調整することで、運転席側サイドフェイス吹出口43からの吹出風量を調整する風量調整ドア45aが配置されている。
ケーシング11のフット開口部26には、樹脂製のフットダクト50が接続されており、ケーシング11のうちフット開口部26の空気流れ上流側にフットドア26aが配置されている。フットダクト50は、フット開口部26から各フット吹出口51、52、53までの空気通路を形成するとともに、フット開口部26からひざ上吹出口90までの空気通路を形成している。
ひざ上吹出口90は、詳細については後述するが、例えば、車室内の乗員のひざ上付近に配置され、乗員の大腿部から腰にかけての下半身に向けて空調風を吹き出すものである。
また、フットダクト先端部のフット吹出口51、52、53は、車室内の乗員の足元付近に配置されて、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すものである。フット吹出口としては、運転席(D席)の足元に運転席側フット吹出口51が設けられ、助手席(P席)の足元に助手席用フット吹出口52が設けられ、後部席(Rr席)の足元に後部座席用フット吹出口53が設けられている。
具体的には、フットダクト50は、フット開口部26との接続部よりも空気流れ下流側で、運転席側フット吹出口51に連なる通路54と、助手席側フット吹出口52に連なる通路55と、後部席側フット吹出口53に連なる通路56の3つに分岐している。そして、この分岐点57には、3つの通路54、55、56のうち運転席以外の助手席および後部席側のフット吹出口52、53に連なる通路を閉じる位置と、3つの通路54、55、56を全て開く位置との間を切替可能な1席集中切替ドア57aが設けられている。
さらに、フットダクト50は、運転席側フット吹出口51に連なる通路54から分岐してひざ上吹出口90に連なる通路58を有している。このひざ上吹出口90に連なる通路58には、この通路58を開閉するひざ上用の1席集中切替ドア58aが設けられている。この1席集中切替ドア58aは、ひざ上吹出口90からの空調風の吹出の許可と禁止とを切り替えるものである。
上述したデフロスタドア24a、フェイスドア47aおよびフットドア26aによって、以下の吹出口モードが実行される。吹出口モードとしては、従来と同様に、運転席側および助手席側のセンタフェイス吹出口41、42から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、センタフェイス吹出口41、42とフット吹出口51〜53から車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット開口部26を全開するとともにデフロスタ開口部24を小開度だけ開口して、フット吹出口51〜53から主に空気を吹き出すフットモード等がある。なお、次の1席集中モードを除く全ての吹出口モードでは、運転席側、助手席側のサイドフェイス吹出口43、44から空調風が吹き出すようになっている。
これらのデフロスタドア24a、フェイスドア47aおよびフットドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、例えば、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ73に連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータ73は、空調制御装置60から出力される制御信号によってその作動が制御される。なお、各吹出口モードドアを別々の電動アクチュエータによって作動させても良い。
さらに、本実施形態では、フットモード時に、フットダクト50中の分岐点57に設けられたフット用の1席集中切替ドア57aが運転席以外の助手席、後部席側のフット吹出口52、53に連なる通路を閉じることで、全てのフット吹出口のうち運転席側のフット吹出口51のみから空調風を吹き出す1席集中モードを実行できるようになっている。この1席集中モード時では、サイドフェイス用の1席集中切替ドア46aが空気通路を閉じることで、サイドフェイス吹出口のうち運転席側のサイドフェイス吹出口43のみから空調風を吹き出すようになっている。また、ひざ上用の1席集中切替ドア58aが空気通路を開くことで、ひざ上吹出口90からも空調風を吹き出すようになっている。
このように、フット用の1席集中切替ドア57a、フェイス用の1席集中切替ドア46aおよびひざ上用の1席集中切替ドア58aは、吹出口モードを1席集中モードに切り替える1席集中モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、1席集中切替ドア駆動用の電動アクチュエータ74に連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータ74も、空調制御装置60から出力される制御信号によってその作動が制御される。なお、各1席集中切替ドアを別々の電動アクチュエータによって作動させても良い。
次に、ひざ上吹出口90の詳細について説明する。図3に、ひざ上吹出口からの温風吹出による乗員の暖房部位を示す。また、図4に運転席の側面図を示し、図5(a)、(b)に運転席を車両上方から見た運転席の上面図を示す。なお、図中に示す前後左右等の矢印は、車両における前後左右等の方向を表している。また、ひざ上吹出口90から延びている矢印が、ひざ上吹出口90からの吹出風の主流の向きを表している。
図3に示すように、ひざ上吹出口90は、運転席(座席)91に着座する乗員100のひざ101、大腿部102および腰103の部分、すなわち、大腿部102から腰103にかけての下半身104を暖めることを目的とするものである。
このため、図4に示すように、ひざ上吹出口90は、運転席91の車両前方に位置する計器盤92に取り付けられ、車両上下方向においては、乗員100のひざ101よりも高くなるように、運転席91の座面93とハンドル94との間の高さ位置に配置されている。ここでいう座面93の高さ位置とは、座席91の座部91aの最上面の位置を意味し、座面93が傾斜している場合は、車両前後方向での前端部位での座面の位置となる。
そして、ひざ上吹出口90は、乗員の大腿部をなめながら大腿部上を温風が流れるように、ひざ上吹出口90から水平方向に対して斜め下向きに、温風を吹き出すようになっている。大腿部上を温風が流れれば、ひざ上吹出口90から水平方向に温風を吹き出しても良いが、ひざ上吹出口90から水平方向ではなく、下向きに温風を吹き出すことで、顔の高さに温風が向かうのを抑制できる。
なお、ひざ上吹出口90の車両上下方向での位置は、図4に示す位置に限られないが、ハンドル94の上端94aよりも下の位置や、乗員の肩105の位置よりも下の位置であることが好ましく、ハンドル94の下端94bよりも下の位置がより好ましい。これは、ひざ上吹出口90が乗員の下半身104から離れると乗員の温感が低下してしまうからである。ちなみに、通常、フェイス吹出口の高さ位置が標準的な乗員の肩105の位置に相当する。
また、図5(a)に示すように、車両左右方向においては、ひざ上吹出口90は、座席91の左右両端部95、96の間に位置し、図5(a)では、座席91の左右方向中心部と一致する位置に配置されている。すなわち、ひざ上吹出口90は乗員100の真正面に配置されている。
そして、ひざ上吹出口90は、吹出風の主流が乗員100の顔にかからないように、V字状に温風を吹き出すように風向きが設定されている。V字状とは、2つの主流の流れ方向が所定角度をなしていることを意味する。
具体的には、ひざ上吹出口90は、ひざ上吹出口90の右半分側である右側吹出部90aと、ひざ上吹出口90の左半分側である右側吹出部90bとを備えている。そして、図5(a)に示すように、右側吹出部90aからの吹出風の主流の向きは、乗員の右大腿部102a上を通って、乗員の頭部106よりも右側を通り抜ける向きであり、左側吹出部90bからの吹出風の主流の向きは、乗員の左大腿部102b上を通って、乗員の頭部106よりも左側を通り抜ける向きである。
これにより、本実施形態によれば、乗員の左右両方の大腿部102a、102b上を広範囲にわたって温風が流れることとなり、乗員の大腿部102から腰103にかけての下半身104を包み込むような温風流れを形成できるので、乗員の下半身104を包み込むような暖房が可能となる。
また、ひざ上吹出口90から吹き出された温風の主流が車両上方から見て乗員の頭部106よりも左右両側の位置を流れ、乗員の頭部106を避けるように流れるので、温風の主流が乗員の頭部106に向かう場合と比較して、乗員の顔に向かう温風流れを低減でき、乗員の顔火照りを抑制できる。
さらに、本実施形態では、次の問題を解決できる。
すなわち、上述の特許文献1のように、乗員の左右片側に吹出口を設け、乗員に対して横方向から温風を吹き出すと、乗員の下半身の左側部分と右側部分での温感の差が大きいという問題が生じる。具体的には、乗員の左右両側のうち片側のみから乗員の大腿部から腰にかけての下半身に向けて温風を吹き出すと、乗員の下半身のうち吹出口に近い側は暖かいが、吹出口から離れた側は少し寒いという問題が生じる。
これに対して、本実施形態では、ひざ上吹出口90を運転席91の真正面に設け、乗員に向けてV字状に温風を吹き出すので、ひざ上吹出口90から乗員の左右両側までの距離が同程度となり、乗員の下半身の左側部分と右側部分で同程度の温感が得られる。
ところで、図5(b)は、乗員を省略して座席91の座面93のみを示している。図5(a)と比較してわかるように、座席91の座面93の右半分側領域93aに右大腿部102aが位置し、座面93の左半分側領域93bに左大腿部102bが位置する。また、乗員の車両前方側から見ると、座席91のヘッドレスト91bの位置が乗員の頭部(顔)の位置に相当する。
したがって、ひざ上吹出口90からの温風の吹き出し方向は、次のように言い換えることができる。すなわち、右側吹出部90aからの吹出風の主流の向きは、座面93の右半分側領域93aを通り、ヘッドレスト91bの右側を通り抜ける向きであり、左側吹出部90bからの吹出風の主流の向きは、座面93の左半分側領域93bを通り、ヘッドレスト91bの左側を通り抜ける向きである。
また、図5(b)中の破線で示すように、座面93を前後方向で前半分側領域と後半分側領域に区切り、さらに、左右方向で中央部とその左右両側の左右両側領域とに3等分すると、運転席91に乗員100が着座したときの座面93に対する頭部106の標準的な位置は、座面93の後半分側領域における左右方向中央部93cである。
したがって、ひざ上吹出口90からの温風の吹き出し方向は、さらに、次のように言い換えることもできる。すなわち、右側吹出部90aからの吹出風の主流の向きが、座面93の後半分側領域における左右方向中央部93cを除く、座面93の右半分側領域93aを通る向きであり、左側吹出部90bからの吹出風の主流の向きは、座面93の後半分側領域における左右方向中央部93cを除く、座面93の左半分側領域93bを通る向きである。
また、図5(b)に示すように、座面93の後半分側領域における中心位置97が標準的な頭部中心位置106aに近い位置となる。したがって、ひざ上吹出口90からの温風の吹き出し方向は、さらに、次のように言い換えることもできる。すなわち、図5(b)中の一点鎖線で示すように、ひざ上吹出口90の左右方向での中心位置と座面93の車両後方側半分の中心位置97とを結ぶ仮想直線を引いたとき、右側吹出部90aからの吹出風の主流の向きは、座面93のうち、その仮想直線よりも右側の領域を通る向きであり、左側吹出部90bからの吹出風の主流の向きは、座面93のうち、その仮想直線よりも左側の領域を通る向きである。
また、車両前方から見て、座席91の左右方向中央部に乗員の頭部が位置することから、ひざ上吹出口90からの温風の吹き出し方向は、車両上方から見て、右側吹出部90aからの吹出風の主流が座席91の左右方向中央部よりも右側を通る方向であり、左側吹出部90bからの吹出風の主流が座席91の左右方向中央部よりも右側を通る方向であると言える。なお、ここでいう座席91とは、座部91a、背もたれ部もしくは座席91全体を指す。
次に、吹出風の主流について説明する。図6に、ひざ上吹出口90からの吹出風の風速分布を示す。本実施形態のひざ上吹出口90は、図6に示す風速分布98を形成するように、温風を吹き出すようになっている。
ここで、上述の吹出風の主流とは、風流れのうち風速が他よりも高い風流れ方向を意味する。したがって、右側吹出部90aからの吹出風の主流とは、右側吹出部90aからの風流れのうち風速が最も高い、図6中の実線矢印で示す方向である。同様に、左側吹出部90bからの吹出風の主流とは、左側吹出部90bからの風流れのうち風速が最も高い、図6中の実線矢印で示す方向である。
なお、図6の風速分布98に示すように、吹出風は分散するため、ひざ上吹出口90から乗員の頭部106の位置に向かう風流れも存在するが、ひざ上吹出口90からの吹出風の風速分布98において、ひざ上吹出口90から乗員の頭部106の位置に向かう方向での風速が、頭部106の位置よりも右側の位置に向かう方向および頭部106の位置よりも左側の位置に向かう方向での風速よりも低くなっていれば良い。
このように、吹出風の全方向のうち頭部106の位置よりも右側の位置に向かう方向および頭部106の位置よりも左側の位置に向かう方向での風速が最も高くなっている一方で、乗員の頭部106の位置に向かう温風の風速が低くなっていれば、主流が吹出口から乗員の頭部に向かう場合と比較して、乗員の顔に向かう温風流れを低減でき、乗員の顔火照りを抑制できる。
次に、ひざ上吹出口90の具体的構成について説明する。図7に、ひざ上吹出口90の正面図を示す。また、図8に、図7中のVIII−VIII線断面図を示す。
図7に示すように、ひざ上吹出口90の右側吹出部90aと左側吹出部90bとは、別々の吹出口として計器盤に設けられており、隣接して配置されている。この右側吹出部90aと左側吹出部90bは、1つのダクトの先端部に位置するが、ルーバの向きが互いに異なることで、主流の吹出方向が異なっている。なお、1つのダクトとは、図1中の運転席側フット吹出口51に連なる通路54から分岐してひざ上吹出口90に連なる通路58を形成するダクトである。
具体的には、右側吹出部90aおよび左側吹出部90bは、それぞれ、風向き規定部材として、上下方向の風向きを規定する第1ルーバ901、902と、左右方向の風向きを規定する第2ルーバ903、904とを有している。
第1ルーバ901、902は、上下方向に複数並んで配置された左右方向に延びる整流板によって構成され、図示しないが、風向きが水平方向に対して斜め下向きとなるように、これら整流板の板面が斜め下方向に平行となっている。
第2ルーバ903、904は、左右方向に複数並んで配置された上下方向に延びる整流板によって構成されている。そして、図8に示すように、右側吹出部90aでは、風向きが車両後方に対して斜め右方向となるように、車両後方に対して斜め右方向に整流板の板面が平行となっており、左側吹出部90bでは、風向きが車両後方に対して斜め左方向となるように、車両後方に対して斜め左方向に整流板の板面が平行となっている。
なお、第1、第2ルーバ901〜904は固定でも、角度の微調整が可能であっても良い。乗員の体格によって、大腿部上面の位置、顔の位置等が異なったり、風向きの好みがあったりすることから、第1、第2ルーバ901〜904は乗員によって角度の微調整が可能であることが好ましい。また、大腿部に向かって空調風を吹き出すために、ハンドルを高い位置に変更すると、第1ルーバ901、902の板面を下側に傾けるように、第1ルーバ901、902の向きをハンドルのチルトと連動させても良い。
また、上述の構成のひざ上吹出口90は、ダクトに対して一体に構成されていても、ダクトに対して着脱可能に構成されていても良い。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された送風機12、各種電動アクチュエータ71、72、73、74等の作動を制御する。
また、空調制御装置60の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ61、外気温Tamを検出する外気センサ62(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ63、蒸発器13から吹き出される空気温度である蒸発器吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ64(蒸発器温度検出手段)、エンジン冷却水温度TWを検出する冷却水温度センサ65等のセンサ群の検出信号が入力される。
さらに、空調制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフを切り替えるエアコンスイッチ70a、車両用空調装置1の自動制御を設定・解除するオートスイッチ70b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機12の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ70c、冷凍サイクルの省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ70d等が設けられている。
さらに、空調制御装置60は、エンジンEGの作動を制御するエンジン制御装置80に電気的接続されており、空調制御装置60およびエンジン制御装置80は互いに電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置60がエンジン制御装置80へエンジンEGの作動要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。
次に、図9により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図9は、空調制御装置60の制御処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。
次のステップS2では、操作パネル70の操作信号や、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群61〜65等の検出信号を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ70cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機12の風量の設定信号等がある。
ステップS3では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、設定温度と、車室内温度等の環境熱負荷とに基づいて算出され、具体的には、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ70cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ61によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ62によって検出された外気温、Tsは日射センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
続くステップS4では空調制御装置60に接続された各種機器の制御目標値、例えば、送風機12の送風量(ブロワレベル)、吸込口モード、吹出口モード、エアミックスドアの開度、エンジン作動要求の要否等が決定される。エンジン作動要求の要否については、例えば、冷却水温度TWが基準温度よりも低い場合に、エンジン作動要求が決定される。
ここで、図10に、このステップS4の詳細を説明するためのフローチャートを示す。図10では、各種機器の制御目標値のうち吹出口モードの決定ステップのみを示しており、以下では、吹出口モードの決定処理について説明する。
例えば、ステップS11で、目標吹出空気温度TAOに基づいて吹出口モードを決定する。ここでは、従来と同様に、吹出口モードとして、フェイスモード、フットモード等を決定する。このとき、フット用の1席集中切替ドア57aの位置を標準位置、すなわち、運転席、助手席、後部席側の全てのフット吹出口51、52、53に連なる通路を開く位置に決定する。他の1席集中切替ドア46a、49aおよび風量調整ドア45aの位置を、通路を開放する開放位置に決定する。また、ひざ上用の1席集中切替ドア58aの位置を通路を閉じる位置に決定する。
続いて、ステップS12で、吹出口モードがフットモードであるか否かを判定する。外気温が低い冬季の場合、ステップS11で、吹出口モードをフットモードに決定するので、この場合、YES判定して、ステップS13に進む。一方、吹出口モードがフットモード以外の場合、NO判定して、ステップS5に進む。
ステップS13では、一席集中モードが実施可能か否かを判定する。本例では、運転席以外の席が乗員不在であるか否かを判定する。運転席以外の座席が乗員不在であるか否かは、特開2000−142081号公報等に記載されている周知の乗員不在検出手段を用いることとで判定可能である。例えば、乗員不在検出手段として、着座センサやIRセンサ、シートベルトを締めたかどうかを検出するセンサ等を用いることができる。
そして、乗員不在検出手段による検出結果から運転席以外の座席に乗員ありと判定した場合(NO判定の場合)、ステップS5に進む。
図9のステップS5では、ステップS4で決定された制御目標値が得られるように、空調制御装置60に接続された各種機器やエンジン制御装置80に対して制御信号を出力する。これにより、吹出口モードがフットモード以外の場合や、フットモード時でも1席集中モードが実施不可能な場合では、フット用の1席集中切替ドア57aは標準位置となり、他の1席集中切替ドア46a、49a等のドア位置は開放位置となり、決定された吹出モードとなるように、吹出モード切替ドア26a、47aが作動する。
一方、図10のステップS13で、運転席以外の席が乗員不在と判定した場合(YES判定の場合)、ステップS15に進む。ステップS15では、助手席側と後部席側のフット吹出口52、53を閉じる1席集中モードに決定する。
ここで、図11に、1席集中モード時および通常(4席空調)のフットモード時の吹出位置を示す。通常(4席空調)のフットモード時とは、フット用の1席集中切替ドア57aの位置を標準位置とするときである。図11に示すように、通常(4席空調)のフットモード時では、運転席(D席)、助手席(P席)および後席(Rr席)側のフット吹出口51〜53から空調風を吹き出し、ひざ上吹出口90からの吹き出しを禁止する。このとき、フェイス吹出口41〜44のうち、運転席および助手席側のサイドフェイス吹出口43、44のみから空調風を吹き出し、デフロスタ吹出口からも空調風を吹き出す。
これに対して、1席集中モード時では、助手席、後席側のフット吹出口52、53および助手席側サイドフェイス吹出口44からの吹き出しを禁止するように変更し、ひざ上吹出口90および運転席側センタフェイス吹出口41から温風を吹き出すように変更する。運転席側センタフェイス吹出口41から空調風を吹き出すのは、乗員の車両中心側の肩の寒さを防ぐためである。
このため、ステップS15では、具体的には、フットダクト50中のフット用の1席集中切替ドア57aの位置を、運転席以外の助手席、後部席側のフット吹出口52、53に連なる通路55、56を閉じる位置に決定するとともに、サイドフェイス用の1席集中切替ドア46aを閉じる位置に決定する。また、ひざ上用の1席集中切替ドア58aを開く位置に決定する。さらに、フェイスドア47aを開く位置とし、助手席側センタフェイス用の1席集中切替ドア49aを閉じる位置に決定する。
続いて、ステップS16では、デフロスタ開口部24(デフロスタ吹出口)および運転席側サイドフェイス吹出口43の開度を調整する。
具体的には、全てのフット吹出口51、52、53を開く場合に対して、デフロスタドア24aのドア位置を変更する。フットモードにおいて、運転席以外のフット吹出口52、53を閉じた場合、デフロスタ開口部24の開度が運転席以外のフット吹出口52、53を閉じる前と同じだと、デフロスタ開口部24から吹き出す空調風の風量が増加してしまう。そこで、デフロスタ開口部24からの吹出風量を、運転席以外のフット吹出口52、53を閉じる前と同等に保つように、デフロスタ開口部24の開度を運転席以外のフット吹出口52、53を閉じる前よりも小さく設定する。
また、乗員の両肩の寒さを防ぐために、運転席側のセンタフェイス吹出口41およびサイドフェイス吹出口43から温風を吹き出すが、両吹出口からの風量差が大きくならないように、風量調整ドア45aの開度を決定する。
その後、図9のステップS5に進み、制御信号を出力する。これにより、フットモード時であって、1席集中モードが実施可能な場合、図11に示す1席集中モードが実行されるように、吹出口モード切替ドア26a、47aおよび1席集中切替ドア57a、58a等が所定の位置となる。
そして、次のステップS6では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
以上の説明の通り、空調制御装置60は、図10のステップS12、S13、S15のごとく、フットモード時に、運転席以外の座席に乗員が不在の場合、図11に示す1席集中モードを実行する。
ここで、従来では、暖房時に、吹出口モードをフットモードとし、車室内に設けられた全てのフット吹出口51〜53から温風を吹き出すことで、車室内全体を暖めている。しかし、乗員が運転者のみの場合に、車室内全体を暖めるのは、乗員が不在の空間を暖めており、暖房に必要な熱量を無駄に消費していた。
特に、バイブリッド車のエンジン停止時のように、暖房に利用できる熱量が限られている場合では、エンジン冷却水の熱量を無駄に消費してしまうと、エンジン冷却水の熱量がすぐに不足してしまう。この場合、暖房を維持するためにエンジンを作動させたり、補助電気ヒータを作動させたりしなければならず、燃費悪化につながる。
そこで、本実施形態では、乗員が運転者のみであれば、運転席以外のフット吹出口52、53および助手席側のサイドフェイス吹出口44からの吹き出しを禁止する1席集中モードを実行することで、熱源としてのエンジン冷却水の熱量を運転席側の暖房のみに用いることで、熱量の無駄を省くことができる。
また、1席集中モードとして、従来のフットモードに対して、運転席以外のフット吹出口52、53および助手席側のサイドフェイス吹出口44からの吹き出しを禁止して、運転席側のフット吹出口51およびサイドフェイス吹出口43から温風を吹き出すように変更するだけでは、運転者の暖房感が低下する恐れがある。
これに対して、本実施形態の1席集中モードでは、運転席側のフット吹出口51に加えて、ひざ上吹出口90から温風を吹き出して、乗員の大腿部102から腰103にかけての下半身104を温風で包み込むように暖房を行うので、乗員の暖房感を確保できるようになっている。さらに、運転席側のセンタフェイス吹出口41およびサイドフェイス吹出口43から、乗員の両肩に向けて温風を吹き出すことからも、乗員の暖房感を確保できるようになっている。
よって、本実施形態によれば、乗員が運転者のみの場合に、全てのフット吹出口51〜53から温風を吹き出して車室内全体を暖める場合と比較して、乗員の暖房感を維持しつつ、暖房に用いる熱量を低減できる。
これにより、ヒータコア14での放熱量を低減できるので、バイブリッド車のエンジン停止時において、エンジン冷却水の温度低下の傾きを緩やかにできる。この結果、暖房を維持するためのエンジン作動や補助電気ヒータの作動の頻度を低減させることができ、燃費悪化を抑制できる。
(第2実施形態)
図12に、本実施形態におけるひざ上吹出口90の位置を表す運転席の上面図を示す。図12に示すように、ひざ上吹出口90は、座席91の左端部95に対向する位置に配置されている。この位置でも、ひざ上吹出口90から乗員の大腿部を通り、かつ、顔を避けるように、V字状に温風を吹き出すことができる。
具体的には、本実施形態においても、右側吹出部90aからの吹出風の主流は、乗員の右大腿部102a上を通って、乗員の頭部106よりも右側を通り抜け、左側吹出部90bからの吹出風の主流は、乗員の左大腿部102b上を通って、乗員の頭部106よりも左側を通り抜けるように流れる。
また、図12中に示すように、ひざ上吹出口90の左右方向での中心位置と頭部中心位置106aとを結ぶ仮想直線を引いたとき、右側吹出部90aからの吹出風の主流は、座面93のうち、その仮想直線よりも右側の領域を通り、左側吹出部90bからの吹出風の主流は、座面93のうち、その仮想直線よりも左側の領域を通るように流れる。なお、図5(b)に示すように、座面93の車両後方側半分の中心位置97が頭部中心位置106aに近い位置となる。
このように、ひざ上吹出口90は、座席91の正面であれば、座席の左右方向での中心位置だけでなく、座席91の左端部95に対向する位置としても良い。
本実施形態においても、ひざ上吹出口90は、座席91の正面に位置しているので、ひざ上吹出口を座席の正面から外れた座席の左右片側に設けて、乗員に対して横方向から温風を吹き出す場合と比較して、吹出口から乗員の左右両側までの距離の差を縮めることができ、乗員の左右両側での温感の差を低減できる。
なお、ひざ上吹出口90の位置は、座席91の正面、すなわち、左右方向で座席91と重複する範囲内であれば、どの位置に変更しても良い。
(第3実施形態)
図13に、本実施形態におけるひざ上吹出口90の位置を表す運転席の上面図を示す。
本実施形態では、図13に示すように、ひざ上吹出口90の右側吹出部90aと左側吹出部90bとが離れて配置されている。そして、ひざ上吹出口90は、各吹出部90a、90bからの主流がV字状ではなく平行となるように、車両後方に向かって温風を吹き出すように風向きが設定されている。
本実施形態においても、右側吹出部90aからの吹出風の主流は、乗員の右大腿部102a上を通って、乗員の頭部106よりも右側を通り抜け、左側吹出部90bからの吹出風の主流は、乗員の左大腿部102b上を通って、乗員の頭部106よりも左側を通り抜けるように流れる。
また、図13中の一点鎖線のように、ひざ上吹出口90全体での左右方向での中心位置、すなわち、右側吹出部90aと左側吹出部90bとの中間点と、頭部中心位置106aとを結ぶ仮想直線を引いたとき、右側吹出部90aからの吹出風の主流は、座面93のうち、その仮想直線よりも右側の領域を通り、左側吹出部90bからの吹出風の主流は、座面93のうち、その仮想直線よりも左側の領域を通るように流れる。なお、図5(b)に示すように、座面93の車両後方側半分の中心位置97が頭部中心位置106aに近い位置となる。
したがって、本実施形態においても、上述の各実施形態と同様の効果が得られる。
ただし、本実施形態のように、車両上方から見たとき、両吹出部90a、90bから平行に温風を吹き出すと、吹き出された温風の分散により、乗員の顔に向かう温風流れが生じる。そこで、乗員の顔に向かう温風流れを抑制するために、ひざ上吹出口90は、車両上方から見たとき、両吹出部90a、90bからV字状に温風を吹き出すようになっていることが好ましい。V字状に温風を吹き出すと、図5(a)に示すように、ひざ上吹出口90からの2つの主流は、ひざ上吹出口90から離れるに連れて、左右方向の間隔が広がり、乗員の外側に向かって流れるからである。
なお、本実施形態では、ひざ上吹出口90として、2つの吹出部90a、90bを設けたが、3つ以上の吹出部を設けても良い。吹出部が3つ以上の場合は左右方向で両端に位置する吹出部の中間点が、ひざ上吹出口90全体での左右方向での中心位置となる。
(第4実施形態)
図14に、空調制御装置60が実行する空調制御で用いる風量マップを示す。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
まず、空調制御装置60は、送風機12への供給電力を制御することで、送風機12の目標送風量を制御する。具体的には、空調制御装置60は、電動モータ12bを駆動する図示しない駆動回路に制御信号を出力して、駆動回路から電動モータ12bに供給される電力を設定することで、電動モータ12bの回転数を制御する。電動モータ12bへの供給電力が大きいと、電動モータ12bの回転数が高くなり、電動モータ12bへの供給電力が小さいと、電動モータ12bの回転数が低くなる。
例えば、電動モータ12bへの印加電圧を制御する場合(電圧制御)では、空調制御装置60からの制御信号に応じた電圧を、駆動回路が電動モータ12bに印加する。また、電動モータ12bへの供給電流をPWM制御する場合、空調制御装置60からの制御信号に応じて、駆動回路が電動モータ12のON・OFFを制御するパルス信号のパルス幅のデューティー比を設定して、電動モータ12bの平均供給電流を所望の大きさとする。このように、空調制御装置60は、送風機12に対する出力値を設定するようになっており、すなわち、送風機12の電動モータ12bに対して駆動回路から出力される電圧値もしくは電流値を設定するようになっている。
そして、空調制御装置60は、第1実施形態で説明した図9のフローチャートにおいて、ステップS4で、制御目標値の1つである送風機12の目標送風量(ブロワレベル)を決定する際、図14に示す風量マップを用いて、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOに基づいてブロワレベルを決定する。
具体的には、図10のステップS13で、一席集中モードが実施可能であると判定した場合(YES判定の場合)、ステップS15、S16の他に、ブロワレベルを変更するステップを実行する。図14に示すように、1席集中モードでは、4席空調時よりも、ブロワレベルを低く設定して、送風機12の目標送風量を減らすようにする。これにより、送風機12の消費電力を低減でき、車両用空調装置全体の省エネルギー化が可能となる。
ちなみに、第1実施形態で説明した1席集中モードによれば、ひざ上吹出口90からの温風の吹出によって、乗員の暖房感を十分に確保できるので、送風機12の送風量を減らしても、乗員の暖房感への影響を少なくできる。
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、ひざ上吹出口90を座席91の正面に配置したが、2つの主流の1つが乗員の右大腿部102aの位置を通り、かつ、乗員の頭部106よりも右側の位置を通るように、また、残りの主流が乗員の左大腿部102bの位置を通り、かつ、乗員の頭部106よりも左側の位置を通るように、温風を吹き出すことができる範囲内であれば、他の位置に変更しても良い。
(2)第1実施形態では、図7、8に示すように、ひざ上吹出口90の内部に第1、第2ルーバ901〜904を設けたが、風向き規定手段として他の手段を用いても良い。例えば、ひざ上吹出口90の外側に、この吹出口から車室内に向けて延びる形状のガイド部材を設けても良い。また、ひざ上吹出口90に至るまでのダクトの内壁面の向きによって、風向きを規定しても良い。
(3)第1実施形態では、図1に示すように、ケーシング11からひざ上吹出口90に至るまでの空気通路を、フットダクト50から分岐させて形成したが、フットダクト50とは別のダクトによって形成しても良い。例えば、ケーシング11にフット開口部26とは別にひざ上開口部を設け、そのひざ上開口部からひざ上吹出口90までのダクトを新たに設けても良い。
なお、上述の各実施形態では、ケーシング11とダクトとは、別体の関係であったが、一体不可分の関係であっても良い。
(4)第1実施形態では、空調制御装置60が、図10のステップS12で、吹出口モードとしてフットモードが選択されたか否かを判定していたが、フット吹出口から温風を吹き出すモード、例えばフットモード、バイレベルモード等が選択されたか否かを判定しても良い。
すなわち、吹出口モードとしてフット吹出口から空調風を吹き出すモードが選択され、1席集中モードが可能な場合に、ひざ上用の1席集中切替ドア58aを開いて、ひざ上吹出口90から温風を吹き出すようにしても良い。
(5)第1実施形態では、1席集中モードが可能な場合に、図10のステップS15で、助手席、後席側のフット吹出口を閉じていたが(図11参照)、さらに、運転席側のフット吹出口を閉じても良い。すなわち、1席集中モードでは、フット吹出口51の代わりに、ひざ上吹出口90から温風を吹き出すようにしても良い。
(6)第1実施形態では、図11に示すように、1席集中モード時に、助手席側のサイドフェイス吹出口44からの吹き出しを禁止していたが、窓曇りの懸念がある場合には、助手席側のサイドフェイス吹出口44から少なめの風を吹き出すようにしても良い。
例えば、空調制御装置60が、窓曇りセンサなどで窓曇りを検出した場合に、助手席側のサイドフェイス吹出口44を開く制御を実施したり、窓曇りセンサが無い場合には、助手席側のサイドフェイス吹出口44が完全に閉じられないようにしたりしても良い。
(7)第1実施形態では、1席集中モードを実行する際に、ひざ上用の1席集中切替ドア58aを開いて、ひざ上吹出口90から温風を吹き出すようにしていたが、構成の簡素化のために、図1に示す構成に対して、ひざ上用の1席集中切替ドア58aを省略しても良い。この場合、運転席側のフット吹出口51から温風を吹き出す場合に、常に、ひざ上吹出口90からも温風を吹き出す構成となる。
(8)上述の各実施形態では、ひざ上吹出口90を運転席に対して設けたが、運転席以外の座席に対して設けても良い。
(9)上述の各実施形態は、本発明の車両用空調装置をハイブリッド車に適用したが、ハイブリッド車以外の車両に適用しても良い。本発明の車両用空調装置は、例えば、通常のエンジン車、車両停止時に自動的にエンジンを停止するアイドリングストップ車、暖房装置として温水電気ヒータを用いる電気自動車、燃料電池車等に適用可能である。