JP5562873B2 - 二酸化炭素と水素からメタンを合成する方法 - Google Patents
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文献1は、触媒としてロジウム(Rh)を用いることを特徴とし、選択的にメタンを合成可能とするものである。この場合の水素と二酸化炭素の反応モル比は、2−4が好ましいとしている。
文献2は、希土類金属を含む金属間化合物を触媒とすることを特徴とし、反応温度及び圧力が比較的低い条件でも有効な収率でメタンを合成可能としている。この場合の水素と二酸化炭素の反応モル比は、特に限定していないが、2−8、好ましくは3−6、特に好ましくは4を推奨している。
文献4は、流動床反応器に使用した場合でも磨耗による劣化鉄族遷移元素粉末の表面に金属酸化物の混合酸化物の被覆を設けてなる触媒を用いるものであり、水素と二酸化炭素の反応モル比については記載がないが、実施例中において、CO:20%、CO2:50%、H2:60%の原料ガスを用いて、CO:1%、CO2:65%、H2:2%、CH4:32%の生成結果が示されている。
二酸化炭素と水素を原料とするメタン合成反応は、実際には、反応平衡特性が全く異なる素反応A(後述(2)式)と素反応B(後述(3)式)の複雑な熱平衡関係により成立している。従来、それぞれ単独には素反応A、Bの最適化に関して多くの開示があるが、メタン合成反応の素反応としての位置づけで最適化を検討した文献等については、今回見出せなかった。
一方、近年、再生可能エネルギーを用いて高純度の水素を生成し、これを原料とするメタン合成が現実的になりつつあるが、このような合成メタンを、例えば都市ガス原料として用いる場合、未反応残留成分(H2、CO2、CO)の分離、回収等のコストを低減化することが必要であり、メタン合成反応における最適反応条件の設定が喫緊の課題となっている。
本願発明者らは、各々の素反応及び反応全体としての最適条件について鋭意検討の結果、反応後における二酸化炭素や一酸化炭素濃度を格段に低減化できる高純度メタン合成方法を完成した。
(1)二酸化炭素と水素からメタンを合成する方法であって、二酸化炭素と水素を反応させて、一酸化炭素を得る第一反応工程と、第一反応工程により生成した一酸化炭素と水素を反応させて、メタンを得る第二反応工程と、を含むことを特徴とする。
(2)上記発明において、前記第二反応工程において、原料である水素及び一酸化炭素並びに前記第一反応工程において残留する二酸化炭素の組成比(モル換算)につき、組成比パラメータ(Pcr)=1/((3CO+4CO2)/H2) の値が、1.0乃至1.1となるように、原料である水素及び一酸化炭素の供給比と、二酸化炭素水素及び水素の分離・リサイクル比と、を制御する、ことを特徴とする。
(3)上記発明において、前記第二反応工程において、組成比パラメータ(Pcr)=1/((3CO+4CO2)/H2) の値が、1.0乃至1.02となるように、原料である水素及び一酸化炭素の供給比と、二酸化炭素水素及び水素の分離・リサイクル比と、を制御する、ことを特徴とする。
(4)上記各発明において、前記第一反応工程後に二酸化炭素を分離回収することなく水のみを分離する工程と、前記第二反応工程後に水素を分離回収することなく水のみを分離する工程と、をさらに含むことを特徴とする。
(5)上記発明において、前記第一反応工程における反応温度を460-550℃に設定し、前記第二反応工程における反応温度を250−450℃に設定する、ことを特徴とする。
(6)上記各発明において、前記第二反応工程における反応圧力を1.0−5.0MPaに設定することを特徴とする。
CO2+4H2→CH4+2H2O ΔH=−39.4 kcal/mol (1)
CO2+H2→CO+H2O ΔH=+9.8 kacl/mol (2)
CO+3H2→CH4+H2O ΔH=−49.3 kcal/mol (3)
本発明は、二酸化炭素と水素からメタンを合成するにあたり、素反応Aにより最初に一酸化炭素を合成し(第一反応工程)、しかる後、素反応Bによりメタンを合成する(第二反応工程)、2つの反応工程により構成される。
原料である水素と二酸化炭素のモル比については、効率的反応進行を促すため化学量論比よりやや大きいH2/CO2≧1.1であればよい。さらに水素量については、第二反応工程のモル比に合わせることができる。
反応温度については、反応速度の面からは高温ほど好ましいことになるが、一酸化炭素による触媒被毒や、温度を上げても二酸化炭素の反応率が顕著に上昇することはないことを考慮すると、460−550℃、より好ましくは500℃付近の温度が適当である。
本反応工程において未反応の二酸化炭素は、第二反応工程の上流側で分離してリサイクルすることができる。また、生成する水は系外に排出することが望ましい。
反応圧力は、反応式からも明らかなように高圧ほど有利となる。0.5MPa以下では反応率上昇への効果が小さく、また、7.0MPa以上では昇圧効果が小さいのみならず、メタノール生成等の副反応が併発して好ましくない。これらを考慮すると、0.5−7.0MPa、より好ましくは1.0−5.0MPaに設定することが適当である。
これより、H2/(3CO+4CO2)又は1/((3CO+4CO2)/H2)なるパラメータ(以下、Pcrと略記することがある)が、上記目的に即した管理指標となりうることが推察される。
さらに、最終組成中のH2及びCO2濃度を下げてCH4純度を高くするには、該パラメータとしては、1.00−1.02近傍に制御することが好ましい。
また、それぞれの素反応に適した触媒は異なるが、本発明によれば、素反応ごとに最適触媒の選択が可能となるため、触媒選択のフレキシビリティーが増し、収率の向上、コストダウンに資する。
また、発熱反応である第二反応工程で発生する熱を、第一反応工程(吸熱反応)に利用できるため、熱収支の改善が可能となる。
また、例えば、砂漠等で太陽光発電により得られる水素を、本発明によるシステムに適用する場合、第一反応工程で分離した水を、他の用途に有効利用できるという効果がある。
また、第一反応工程で生成する水を、第二反応工程前に分離・除去する工程を含む発明にあっては、素反応Aを生成側に推進するため、第一反応工程の収率のさらなる改善が可能となる。
以下、図9を参照して、本発明の一実施形態に係るメタン合成装置1について説明する。本実施形態では、後段の第二反応工程におけるH2とCOモル比最適化を考慮し、原料であるH2及びCO2を4.1−4.2のモル比で供給する。原料H2は、例えば、太陽光発電による水の電気分解により得た純粋H2を用いることができる。また、CO2については、例えば都市ガス需要家先で排出されるCO2を回収し、用いることができる。
H2及びCO2をコンプレッサ2a,2bでそれぞれ2.0−5.0MPaに昇圧し、混合させた後に反応器3に導き、第一反応工程である素反応Aを行わせてCO、H2Oを生成させる。昇圧用コンプレッサとしては、軸流式、往復式、スクリュー式、ロータリー式、スクロール式等のいずれをも用いることができる。
反応触媒としては、アルミナ担体に担持させたZnO、Cr2O3、FeO、CuO 等の金属酸化物を用いることができる。
第一反応工程により生成するガスはCO、H2Oを主成分とし、未反応残留成分としてH2、CO2を含む。このうち、H2Oについてはフラッシュ蒸留塔6a(又は分離膜等)を用いて分離除去する。CO2については、CO2再生ユニット4において分離(分離膜又は化学物資(アミン系、炭酸カリ系)による吸収)を行い、さらに加熱放散により回収して、CO2回収ライン10を介してコンプレッサ2cで昇圧後、再供給する。
反応温度条件は、反応器出口温度約250℃となるように熱交換器により調整し、中間熱交を設けて断熱反応、又は(断熱+等温)反応により250−450℃に維持するように制御する。反応圧力は3.0MPa程度に設定する。
反応後のガスはCH4、H2Oを主成分とし、未反応残留成分としてH2、CO2、COを含む。このうち、H2O
については第一反応工程と同様にフラッシュ蒸留塔6bにより分離除去する。H2については、PSA(Pressure Swing
Absorption)7により分離回収し、H2回収ライン9を介してコンプレッサ2dで昇圧後、原料ライン8に戻す。
さらに、図10を参照して、本発明の他の実施形態に係るメタン合成装置20について説明する。本実施形態は、組成比パラメータPcrの管理により第一反応工程後の残留CO2、第二反応工程後の残留H2を、リサイクル不要レベルに制御する形態に係る。
メタン合成装置20の構成が上述のメタン合成装置1と異なる点は、メタン合成装置1が備えているCO2分離のための再生ユニット4、リサイクル用配管10、コンプレッサ2c、及び、H2分離のためのPSA7及びリサイクル用配管9、コンプレッサ2dを備えていないことである。その他の構成はメタン合成装置1と同様であるので重複説明を省略する。
次に、本実施形態におけるメタン合成プロセスについて説明する。第一の実施形態と同様にして昇圧・混合後のH2及びCO2を反応器3に導き、第一反応工程である素反応Aを行わせてCO、H2Oを生成させる。ここに、H2、CO2の供給量は、後述する第二反応工程に導入するガスの組成比が、パラメータ値Pcr=1.00−1.02の範囲内となるように管理されている。その他の反応条件等は第一の実施形態と同様である(以下の各工程においても同様)
第一反応工程により生成するガスはCO、H2Oを主成分とし、未反応残留成分としてH2、CO2を含む。このうち、H2Oのみをフラッシュ蒸留塔6aを用いて分離除去する。CO2については分離を行わず、そのまま第二反応工程に供給される。
(a)シミュレーションモデル
演算に際し使用したシミュレーションモデルは以下の通りである。
組成成分については、チッソ、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、水とした。各成分の物性値は、純物質はAspen Plus(登録商標)のデータベースDBを用いた。また、熱平衡モデルは'PSRK'(Predictive Redlich-Kwrong-SoaveEOS)状態方程式等を利用した。二酸化炭素と水素の反応は圧力下で行われるため、特に圧力下で高い精度を示す'PSRK'が適当と判断した。
(b-1)素反応Aにおける反応平衡組成の温度依存性
図75に原料CO2:H2=1:1としたときの、反応後における各成分の組成比(%)を示す。反応温度が上がるにつれて、CO、H2Oの組成比は上昇していくが、顕著な上昇ではないことが分かる。さらに、温度上昇による一酸化炭素による触媒被毒の問題をも考慮すると、460−550℃、好ましくは500℃近傍が適当であると判断できる。
(b-2)素反応Bにおける反応平衡組成の温度依存性
図86は、原料CO:H2=1:3で供給したときの、反応後におけるCO転嫁率の温度依存性を示す図である。同図より、反応圧力1.0MPaの場合、約700K(427℃)までは転化率100%を維持できることが分かった。
吸熱反応の特性及び反応速度との関係を考慮して、上述のように反応温度の下限値としては200℃、好ましくは250℃を選定すべきである。
原料供給比及びリサイクル比について(a)−(c)のように設定し、第一反応工程および第二反応工程における物質収支・熱収支計算を行い、第二反応工程後のCO2、CO及びH2濃度の挙動を検討した。
(a)設定条件1
CO2およびH2供給量をほぼ一定(H2/4CO2=0.85〜1.01)とし、第一反応工程後のCO2、および第二反応工程後のH2のそれぞれのリサイクル比を変化させた。
(b)設定条件2
第一反応工程後のCO2、および第二反応工程後のH2のそれぞれのリサイクル比をほぼ一定(約90%)とし、供給するCO2/H2モル比を変化させた。
(c)設定条件3
上記設定条件2において特に、第一反応工程後のCO2及び第二反応工程後のH2のそれぞれの反応系へのリサイクル比を特にゼロ、CO2及びH2のパージ量を0.1%、H2供給量を一定としてCO2供給量の変化の幅をより大きくして
(H2/4CO2=0.85〜1.018)、第二反応工程反応後および供給ラインにおけるメタン中のCO2、CO及びH2濃度の挙動を検討した。
以上をまとめると表1の通りとなる。
図1に、横軸を第二反応工程前のPcr(=1/((3CO+4CO2+)/H2)とし、縦軸を反応後のCO2濃度及びH2濃度とした設定条件1、設定条件2および設定条件3の結果を示す。図2には、同じく縦軸をCO濃度及びH2濃度とした結果を示す。
図1、2より、いずれの設定条件においても第二反応工程前のPcrの変化に対して、第二反応工程後のCO2濃度およびCO濃度がPcr≒1.0近傍で急激に減少し、対数軸に対して変曲点をもつことが明らである。
設定条件2について、図3に第二反応工程後のCO2濃度とH2濃度の関係を、図4にCO濃度とH2濃度の関係を、それぞれ示した。これらの図から、化学量論比H2/CO2=4を基軸として、大幅なCO2及びCOの減少と残存H2の増加が認められることが分かる。
設定条件3(リサイクル比:0)について、図5に第二反応工程後の供給ラインにおけるCO2濃度とH2濃度の関係を、図6に同じくCO濃度とH2濃度の関係を、それぞれ示した。各濃度はそれぞれH2O除去後の値である。反応器温度条件は300℃である(一部、282℃条件の値も付記してある)。
図5、図6より、第二反応工程前の組成比パラメータPcr値=1.00近傍でメタン純度が最大値(約94%)を示し、1.00以上では純度が低下する。その理由は、図6から明らかなように、Pcrが1.00以上において残存H2濃度が極めて大きくなることにある。一方、残存CO2濃度は、Pcrの増加に伴い著しく低下し、特に1.00以上では顕著である。
以上の結果より、供給ラインにおけるH2及びCO2濃度を下げ、メタン純度を高くするには、Pcr=1.00−1.02が最適であると判断される。
なお、図5、図6には、第二反応工程の温度条件を282℃に下げた結果を示した(白抜き記号で表示)。本検討条件は、表4においてCase37に該当し、温度条件以外はCase35と同一である。これより、供給ラインにおけるメタン純度(93.0 vol%→93.6vol%)、不純物としてのCO2(2,229 molppm→952 molppm)やH2(58,262 molppm→53,342 molppm)の絶対濃度が改良される方向を示している。
2a−2d・・・・コンプレッサ
3、5・・・・反応器
4・・・・CO2再生ユニット
6a、6b・・・・フラッシュ蒸留塔
7・・・・PSA
8・・・・原料ライン
9・・・・H2回収ライン
10・・・・CO2回収ライン
11、21・・・供給ガスライン
12a、12b、22a、22b・・・H2O除去ライン
Claims (2)
- 二酸化炭素と水素からメタンを合成する方法であって、
二酸化炭素と水素を反応させて、一酸化炭素を主成分として含むガスを得る第一反応工程と、
第一反応工程により生成した一酸化炭素と水素を反応させて、メタンを得る第二反応工程と、
を含み、
前記第一反応工程における反応温度を460−550℃に設定し、前記第二反応工程における反応温度を250−450℃に設定し、
前記第二反応工程における反応圧力を1.0−5.0MPaに設定し、かつ、
前記第二反応工程に導入するガスの組成比(モル換算)につき、
組成比パラメータ(Pcr)=1/((3CO+4CO2)/H2) の値が、1.00乃至1.02となるように、原料である水素及び一酸化炭素の供給比と、前記第一反応工程において残留する二酸化炭素及び水素の分離・リサイクル比と、を管理することにより、
最終組成中の水素及び二酸化炭素濃度を下げてメタン純度を高めることを特徴とする二酸化炭素と水素からメタンを合成する方法。 - 前記第一反応工程後に、二酸化炭素を分離することなく、水のみを分離する工程と、
前記第二反応工程後に、水素を分離することなく水のみを分離する工程と、
を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素と水素からメタンを合成する方法。
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