JP5556977B1 - 2−シアノアクリレート系接着剤組成物 - Google Patents

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Abstract

金属及び熱可塑性エラストマーに対して優れた接着速度を発現するとともに、貯蔵安定性も良好な2−シアノアクリレート系接着剤組成物を提供する。
2−シアノアクリル酸エステル(a)と、下記一般式(1)で表されるオニウム塩(b)とを含有することを特徴とする2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
+- (1)
[式中、C+はオニウムカチオンである。A-は硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、R1SO3 -で表されるスルホン酸アニオン(R1はアルキル基、炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、パーフルオロアリール基、アラルキル基、もしくはハロゲン原子である)、又は(R2SO22-で表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオンである(R2はアルキル基、パーフルオロアルキル基、もしくはアリール基である)。]

Description

本発明は、2−シアノアクリル酸エステルを主成分とする2−シアノアクリレート系接着剤組成物に関する。
2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、主成分である2−シアノアクリル酸エステルが有する特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、所謂、瞬間接着剤として、工業用、医療用及び家庭用等の広範な分野において用いられている。しかし、2−シアノアクリレート系接着剤組成物の硬化はアニオン重合により進行するため、被着体が酸性を呈する木材や、酸化被膜を形成し易い金属の場合には、アニオン重合が阻害され、結果として接着速度が遅くなり、十分な接着強さを得ることはできないという問題がある。また、被着体が極性の低い熱可塑性エラストマー等の場合には、アニオン重合が抑制され、接着速度が遅くなるという問題がある。従来これらの問題を解決するために、各種の添加剤が提案されている。例えば、特許文献1にはクラウンエーテル類を含有する接着剤組成物が開示されており、特許文献2にはポリアルキレンオキサイド類を含有する接着剤組成物が開示されている。また、特許文献3及び4には、カリックスアレン類を含有する接着剤組成物が開示されている。更に、特許文献5には、相間移動触媒を2−シアノアクリレート系組成物の硬化促進剤として使用することが記載されている。
特開昭53−129231号公報 特開昭63−128088号公報 特開昭60−179482号公報 特開2000−44891号公報 英国特許出願公開第2228943号明細書
しかしながら、特許文献1〜4に開示される接着剤組成物は、各種被着体の接着速度を短縮することはできるものの、生産性の更なる向上が要求される中で、被着体が金属の場合や極性の低い熱可塑性エラストマーの場合の接着速度は満足できるものではなかった。また、特許文献5に具体的に記載された相間移動触媒を硬化促進剤として使用した場合でも、被着体が金属の場合や極性の低い熱可塑性エラストマーの接着速度は不十分であった。
また、クラウンエーテル類、またはポリアルキレンオキサイド類を含有する特許文献1〜2に開示される接着剤組成物は、被着体をEPDM、メタクリル樹脂などとした場合、硬化物が白濁する問題があった。カリックスアレン誘導体を含有する特許文献3〜4に開示される接着剤組成物は、被着体を軟質PVCとした場合には同様に硬化物が白濁する問題があった。
本発明は、前記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、金属及び極性が低い熱可塑性エラストマーに対し優れた接着速度を発現するとともに、貯蔵安定性も良好な接着剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、特定の構造を有するオニウム塩を2−シアノアクリル酸エステルに配合することにより、金属及び極性が低い熱可塑性エラストマーに対し優れた接着速度を発現するとともに、貯蔵安定性にも優れた接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は以下のとおりである。
1.2−シアノアクリル酸エステル(a)と、下記一般式(1)で表されるオニウム塩(b)とを含有することを特徴とする2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
+- (1)
[式中、C+はオニウムカチオンである。A-は硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、R1SO3 -で表されるスルホン酸アニオン(R1はアルキル基、炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、パーフルオロアリール基、アラルキル基、もしくはハロゲン原子である)、又は(R2SO22-で表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオンである(R2はアルキル基、パーフルオロアルキル基、もしくはアリール基である)。]
2.前記オニウム塩(b)のカチオンが、第四級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、及び第三級スルホニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも一つのオニウムカチオンであることを特徴とする前記1に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
3.前記オニウム塩(b)のアニオンが、硫酸水素アニオン及びビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオンの少なくとも一方であることを特徴とする前記1又は2に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
4.前記オニウム塩(b)のアニオンが、硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、及びR1SO3 -で表されるスルホン酸アニオン(R1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である)。]からなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする前記1又は2に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
5.前記オニウム塩(b)の含有量が、前記2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、10〜20000ppmであることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、2−シアノアクリル酸エステルと、特定構造のオニウム塩とを含有しているため、金属及び極性が低い熱可塑性エラストマーに対し優れた接着速度を発現するとともに、貯蔵安定性も良好である。また、前記オニウム塩のアニオンが、硫酸水素アニオン及びビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオンの少なくとも一方である場合には、より優れた接着速度を発現する。また、前記オニウム塩のアニオンが、硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、及びR1SO3 -で表されるスルホン酸アニオン(R1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である)。]からなる群より選択される少なくとも一つである場合には、広範囲の基材の接着、充填またはポッティングにおいても硬化物の白濁が起こらず、かつ優れた接着速度を発現する。
以下、本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物(以下、単に「接着剤組成物」ともいう)について詳しく説明する。
本発明の接着剤組成物は、2−シアノアクリル酸エステル(a)と、特定の構造を有するオニウム塩(b)とを含有する。
前記「2−シアノアクリル酸エステル(a)」としては、この種の接着剤組成物に一般に使用される2−シアノアクリル酸エステルを特に限定されることなく用いることができる。この2−シアノアクリル酸エステルとしては、2−シアノアクリル酸のメチル、エチル、クロロエチル、n−プロピル、i−プロピル、アリル、プロパギル、n−ブチル、i−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、テトラヒドロフルフリル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、2−オクチル、n−ノニル、オキソノニル、n−デシル、n−ドデシル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシイソプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシイソプロピル、ブトキシブチル、2,2,2−トリフルオロエチル及びヘキサフルオロイソプロピル等のエステルが挙げられる。これらの2−シアノアクリル酸エステルは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの2−シアノアクリル酸エステルのうち、硬化性に優れることから、炭素数3以下のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルが好ましく、2−シアノアクリル酸エチルが更に好ましい。
本発明の接着剤組成物は、「下記一般式(1)で表されるオニウム塩(b)」を含有する。このオニウム塩は接着剤組成物の硬化促進剤として機能し、特に金属や熱可塑性エラストマーに対する接着速度を向上させる化合物である。
+- (1)
[式中、C+はオニウムカチオンである。A-は硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、R1SO3 -で表されるスルホン酸アニオン(R1はアルキル基、炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、パーフルオロアリール基、アラルキル基、もしくはハロゲン原子である)、又は(R2SO22-で表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオンである(R2はアルキル基、パーフルオロアルキル基、もしくはアリール基である)。]
前記オニウム塩のカチオンは、下記一般式(2)で表されるオニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン及び一般式(3)で表されるオニウムカチオン が挙げられる。
Figure 0005556977
[式中、R3〜R6は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の非置換若しくは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基又はアルキニル基である;あるいは、R3〜R6の一部又は全部が、Aで示される原子と一緒になって、非置換又は置換の3〜10員環(ここで、該環はO、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成し、該環の形成に関与していないR3〜R6は、前記で定義したとおりである;そしてAは、窒素原子又はリン原子を表す。なお、上記置換のアルキル基の具体例としては、例えば、アルコキシ基及びアルカノイル基が挙げられる。また、R3〜R6の一部が環を形成する場合、通常、R3〜R6のうちの2または3つが環を形成する。R3〜R6の2つが環を形成する式(2)化合物の具体例としては、ピペリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。]
Figure 0005556977
[式中、R7〜R9は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の非置換若しくは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基又はアルキニル基である;あるいは、R7〜R9の一部又は全部が、硫黄原子と一緒になって、非置換又は置換の3〜10員環(ここで、該環はO、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成し、該環の形成に関与していないR7〜R9は、前記で定義したとおりである。なお、上記置換のアルキル基の具体例としては、例えば、アルコキシ基及びアルカノイル基が挙げられる。]
前記一般式(2)で表されるオニウムカチオンの代表例としては、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン等が挙げられる。
第四級アンモニウムカチオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、トリメチル−n−プロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、n−ブチルトリメチルアンモニウム、イソブチルトリメチルアンモニウム、t−ブチルトリメチルアンモニウム、n−ヘキシルトリメチルアンモニウム、ジメチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジメチルジイソプロピルアンモニウム、ジメチル−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、メチルトリ−n−プロピルアンモニウム、メチルトリイソプロピルアンモニウム、メチルジ−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、メチル−n−プロピルジイソプロピルアンモニウム、トリエチル−n−プロピルアンモニウム、トリエチルイソプロピルアンモニウム、n−ブチルトリエチルアンモニウム、トリエチルイソブチルアンモニウム、t−ブチルトリエチルアンモニウム、ジ−n−ブチルジメチルアンモニウム、ジイソブチルジメチルアンモニウム、ジ−t−ブチルジメチルアンモニウム、n−ブチルエチルジメチルアンモニウム、イソブチルエチルジメチルアンモニウム、t−ブチルエチルジメチルアンモニウム、n−ブチルイソブチルジメチルアンモニウム、n−ブチル−t−ブチルジメチルアンモニウム、t−ブチルイソブチルジメチルアンモニウム、ジエチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジエチルジイソプロピルアンモニウム、ジエチル−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、エチルトリ−n−プロピルアンモニウム、エチルトリイソプロピルアンモニウム、エチルイソプロピルジ−n−プロピルアンモニウム、エチルジイソプロピル−n−プロピルアンモニウム、ジエチルメチル−n−プロピルアンモニウム、エチルジメチル−n−プロピルアンモニウム、エチルメチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジエチルイソプロピルメチルアンモニウム、エチルイソプロピルジメチルアンモニウム、エチルジイソプロピルメチルアンモニウム、エチルメチル−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、テトラ−n−プロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、トリイソプロピル−n−プロピルアンモニウム、ジイソプロピルジ−n−プロピルアンモニウム、イソプロピルトリ−n−プロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルノニルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、トリメチルウンデシルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジラウリルジメチルアンモニウム、ジメチルジスチリルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジパルミチルアンモニウム、エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウム、ドデシル(フェロセニルメチル)ジメチルアンモニウム、N−メチルホマロトビニウム等のテトラアルキルアンモニウムカチオン;ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム等の芳香族アルキル基置換アンモニウムカチオン;トリメチルフェニルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム等の芳香族置換アンモニウムカチオン;ピロリジニウム(例えば、1,1−ジメチルピロリジニウム、1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1,1−ジエチルピロリジニウム、1,1−テトラメチレンピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム)、ピペリジニウム(例えば、1,1−ジメチルピペリジニウム、1−エチル−1−メチルピペリジニウム、1,1−ジエチルピペリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム)、モルホリニウム(例えば、1,1−ジメチルモルホリニウム、1−エチル−1−メチルモルホリニウム、1,1−ジエチルモルホリニウム)等の脂肪族環状アンモニウムカチオン等が挙げられる。
また、第四級ホスホニウムカチオンの具体例としては、テトラメチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム等のカチオンを挙げることができる。
イミダゾリウムカチオンの具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウム、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−n−ブチル−2,3−メチルイミダゾリウム、1,2,4−トリメチル−3−n−プロピルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,2,3,4,5−ペンタメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリウム、2−n−ヘプチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルベンゾイミダゾリウム、3−メチル−1−フェニルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、2,3−ジメチル−1−フェニルイミダゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−フェニルイミダゾリウム、2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ウンデシルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプタデシルイミダゾリウム等のカチオンが挙げられる。
ピリジニウムカチオンとしては、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−n−プロピルピリジニウム、1−イソプロピルピリジニウム、1−n−ブチルピリジニウム、1−n−ブチル−3−メチルピリジニウム等のカチオンが挙げられる。
前記一般式(3)で表される第三級スルホニウムカチオンの具体例としては、トリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、トリプロピルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム等のカチオンが挙げられる。
前記オニウムカチオンの中でも、2−シアノアクリル酸エステルへの溶解性に優れること、及び硬化促進能と接着剤組成物の貯蔵安定性のバランスの点から第四級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン又は第三級スルホニウムカチオンが好ましく、第四級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン又はピリジニウムカチオンが更に好ましい。
次に、前記オニウム塩のアニオンは、硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、R1SO3 -で表されるスルホン酸アニオン(R1はアルキル基、炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、パーフルオロアリール基、アラルキル基、もしくはハロゲン原子である)、又は(R2SO22-で表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオンである(R2はアルキル基、パーフルオロアルキル基、もしくはアリール基である)。R1及びR2のアルキル基の炭素数は1〜15が好ましい。
前記R1SO3 -で表されるスルホン酸アニオンの具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、10−カンファースルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸、フッ化スルホン酸、塩化スルホン酸、臭化スルホン酸等のアニオンが挙げられる。また、炭素数3〜10のパーフルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、パーフルオロオクタンスルホン酸アニオン等が挙げられる。パーフルオロアルキル基の炭素数は、対応するオニウム塩の2−シアノアクリル酸エステルに対する溶解性の点から3〜10であり、4〜8であることが好ましい。
また、前記(R2SO22-で表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオンの具体例としては、ビス(メタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(エタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(プロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン等が挙げられる。
これらのアニオンの中でも、金属及び熱可塑性エラストマーに対して優れた接着速度を発現し、接着剤組成物の貯蔵安定性に優れることから、硫酸水素アニオン及びビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオンが好ましく、硫酸水素アニオンが更に好ましく、広範囲の基材の接着、充填またはポッティングにおいても硬化物の白濁が起こらず、かつ優れた硬化速度を発現することから、硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、及びR1SO3 -で表されるスルホン酸アニオン(R1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である)。]が好ましい。
本発明に用いられるオニウム塩は、前記カチオンとアニオンの組合せであれば特に限定されない。オニウム塩の具体例としては、テトラエチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラ−n−ブチルアンモニウム硫酸水素塩、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム硫酸水素塩、アミルトリエチルアンモニウム硫酸水素塩、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム硫酸水素塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム硫酸水素塩、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウム硫酸水素塩、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリウム硫酸水素塩、2−n−ヘプチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−エチル−1−メチルピペリジニウム硫酸水素塩、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム硫酸水素塩、1−エチル−1−メチルピロリジニウム硫酸水素塩、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム硫酸水素塩、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム硫酸水素塩、1−エチルピリジニウム硫酸水素塩、1−エチル−3−メチルピリジニウム硫酸水素塩、1−ブチル−3−メチルピリジニウム硫酸水素塩、1−エチル−4−メチルピリジニウム硫酸水素塩、1−ブチルピリジニウム硫酸水素塩、1−ブチル−4−メチルピリジニウム硫酸水素塩、テトラメチルホスホニウム硫酸水素塩、トリエチルメチルホスホニウム硫酸水素塩、テトラエチルホスホニウム硫酸水素塩、テトラ−n−ブチルアンモニウムメタンスルホネート、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−エチル−1−メチルピペリジニウムメタンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムメタンスルホネート、1−エチル−1−メチルピロリジニウムメタンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムメタンスルホネート、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムメタンスルホネート、1−エチルピリジニウムメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルピリジニウムメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムメタンスルホネート、テトラエチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラエチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラ−n−ブチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−1−メチルピペリジニウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−1−メチルピロリジニウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムp−トルエンスルホネート、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムp−トルエンスルホネート、1−エチルピリジニウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−3−メチルピリジニウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムp−トルエンスルホネート、テトラエチルホスホニウムp−トルエンスルホネート、テトラエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
本発明のオニウム塩は、公知の方法により製造することができる。例えば、Hiroyuki OhnoらのJ.Am.Chem.SOc.,2005,27,2398−2399、又はPeter WasserscheidらのGreen Chemistry,2002,4,134−138に記載のように、対応するオニウムハライドから製造することができる。
接着剤組成物における前記オニウム塩(b)の含有量は、2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、10〜20000ppmであることが好ましく、25〜15000ppmであることがより好ましく、50〜10000ppmであることが更に好ましい。前記含有量が10ppm未満であると、硬化促進剤としての効果が十分に発現しない。一方、20000ppmを超えると、接着剤組成物の貯蔵安定性が悪くなる場合がある。
前記オニウム塩が、接着剤組成物の貯蔵安定性に悪影響を及ぼすことなく、金属及び熱可塑性エラストマーに対する接着速度を向上させることができる理由は明らかではないが、次のように推測される。オニウム塩を構成する求核性の低いアニオンの共役酸は強酸であるため、被着体表面に存在する塩と反応することにより、求核性を有し、2−シアノアクリル酸エステルの重合開始剤となり得るアニオンを遊離させる。一方、このような塩が存在しない貯蔵中には、前記アニオン交換反応、それに続く高反応性のアニオンの遊離も起こさないため、貯蔵安定性も良好である。特に硫酸水素塩は、それ自身酸性を示すため、貯蔵中はむしろ安定剤としても働く。更に硫酸水素イオンは金属表面に生じた酸化物をイオンとして溶解除去することができ、同時に極めて重合開始が高い水酸化物イオンを発生させるため、金属の接着速度が大幅に短縮されるものと考えられる。
本発明の接着剤組成物には、前記オニウム塩以外の硬化促進剤として、従来からこの種の接着剤組成物に配合して用いられている硬化促進剤を配合することができる、当該硬化促進剤としては、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類、シラクラウンエーテル類、カリックスアレン類、シクロデキストリン類及びピロガロール系環状化合物類等が挙げられる。
前記ポリアルキレンオキサイド類とは、ポリアルキレンオキサイド及びその誘導体であって、例えば、特公昭60−37836号、特公平1−43790号、特開昭63−128088号、特開平3−167279号、米国特許第4386193号、米国特許第4424327号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、(1)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンオキサイド、(2)ポリエチレングリコールモノアルキルエステル、ポリエチレングリコールジアルキルエステル、ポリプロピレングリコールジアルキルエステル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル等のポリアルキレンオキサイドの誘導体などが挙げられる。
また、クラウンエーテル類としては、例えば、特公昭55−2238号、特開平3−167279号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−12−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、トリベンゾ−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、ジベンゾ−14−クラウン−4、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、シクロヘキシル−12−クラウン−4、1,2−デカリル−15−クラウン−5、1,2−ナフト−15−クラウン−5、3,4,5−ナフチル−16−クラウン−5、1,2−メチルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−tert−ブチル−18−クラウン−6、1,2−ビニルベンゾ−15−クラウン−5等が挙げられる。シラクラウンエーテル類としては、例えば、特開昭60−168775号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、ジメチルシラ−11−クラウン−4、ジメチルシラ−14−クラウン−5、ジメチルシラ−17−クラウン−6等が挙げられる。
また、カリックスアレン類としては、例えば、特開昭60−179482号、特開昭62−235379号、特開昭63−88152号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、5,11,17,23,29,35−ヘキサ−tert−butyl−37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔6〕アレン、25,26,27,28−テトラ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔4〕アレン、4−tert−ブチルカリックス〔4〕アレン−0,0’,0’’,0’’’−四酢酸テトラエチル等が挙げられる。シクロデキストリン類としては、例えば、特表平5−505835号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、α−、β−又はγ−シクロデキストリン等が挙げられる。ピロガロール系環状化合物類としては、特開2000−191600号等で開示されている化合物が挙げられる。具体的には、3,4,5,10,11,12,17,18,19,24,25,26−ドデカエトキシカルボメトキシ−C−1、C−8、C−15、C−22−テトラメチル[14]−メタシクロファン等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
接着剤組成物におけるオニウム塩以外の硬化促進剤の含有量は、2−シアノアクリル酸エステル100質量部に対して、10〜30000ppmであることが好ましく、50〜20000ppmであることがより好ましく、100〜10000ppmであることが更に好ましい。前記含有量が10〜30000ppmの範囲内であれば、接着剤組成物の貯蔵安定性を損なうことなく、各種被着体に対する接着速度を向上させることができる。
本発明の接着剤組成物には、前記硬化促進剤の他に、従来、2−シアノアクリル酸エステルを含有する接着剤組成物に配合して用いられている安定剤、可塑剤、増粘剤、粒子、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤等を、目的に応じて、接着剤組成物の硬化性及び接着強さ等を損なわない範囲で適量配合することができる。
安定剤としては、(1)二酸化硫黄及びメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素メタノール及び三弗化ホウ素ジエチルエーテル等の三弗化ホウ素錯体、HBF4、並びにトリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2−エチルヘキシル)、2−エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2−シアノアクリル酸エステルとの相溶性が良く、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステルとの共重合体、 アクリルゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル−2−シアノアクリル酸エステル及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
1.評価方法
(1)接着速度
JIS K 6861「α−シアノアクリレート系接着剤の試験方法」に準じて、23℃、60%RH環境下で接着速度を測定した。使用した試験片は次のとおりである。
・アルミニウム:日本テストパネル社製、アルミニウム試験片(材質:A1050P)
・鉄:日本テストパネル社製、鉄試験片(材質S10C)
・スチレン系熱可塑性エラストマー:リケンテクノス社製 商品名「アクティマー A E−2060S」
(2)粘度
E型粘度計を用い、25℃、100rpmの条件下にて測定した。
(3)貯蔵安定性
初期の接着速度及び粘度と、50℃、95%RH環境下で1週間又は2週間保管後の接着速度及び粘度を比較して評価した。保管は、接着剤組成物1.5gを2gポリエチレン容器に密封して行った。
(4)硬化物外観
3mm×25mm×50mmのEPDM(エチレンプロピレンゴム)板、および軟質PVC(ポリ塩化ビニル)板に、接着剤を数滴垂らし、23℃、60%RH環境下で3日間放置し、硬化させた。その硬化物の外観を観察し、評価結果は○×で表した。○は、硬化物に白濁・シワがないことを、×は硬化物に白濁・シワが見られることを示す。使用した試験片は次のとおりである。
・EPDM:中京ゴム社製、EPDM−5065/3t
・軟質PVC:日本ウェーブロック社製、商品名「タフニール Dブルー」
2.オニウム塩の合成
・合成例1(1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩)
50mlナス型フラスコに1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド1.887g(10.00mmol)(表1参照)、陰イオン交換樹脂(オルガノ社製、商品名「アンバーライトIRA900A OH AG」、強塩基型)13.2g(20mg当量)、イオン交換水25mlを仕込み、室温下で48時間攪拌した。イオン交換樹脂をろ別後、氷冷下で49%硫酸水溶液2.002g(10.00mmol)を滴下した。氷浴を外し、室温下で更に12時間攪拌を続けた。これにトルエン25mlを加えて洗浄し、更にイオン交換樹脂で精製後、減圧下で濃縮した。得られた残渣をメタノール25mlに溶解し、不溶物をろ別した。減圧下で溶媒を留去し、淡黄色オイル2.203gを得た。
・合成例2〜4
表1に示した原料と仕込み量に代えた以外は、合成例1と同様にオニウム塩を合成した。
・合成例5(ジメチルジオクチルアンモニウム硫酸水素塩)
100mlナス型フラスコにジメチルジオクチルアンモニウムブロミド2.103g(3.33mmol)(表1参照)、陰イオン交換樹脂(オルガノ社製、商品名「アンバーライトIRA900A OH AG」、強塩基型)4.40g(6.70mg当量)、メタノール50mlを仕込み、室温下で48時間攪拌した。イオン交換樹脂をろ別後、トルエン15mlに溶媒交換し、溶媒氷冷下で49%硫酸水溶液0.667g(3.33mmol)を滴下した。氷浴を外し、室温下で更に12時間攪拌を続けた。これにイオン交換水10mlを加えて3回洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。減圧下で溶媒を濃縮後、得られた残渣をメタノール25mlに再溶解し、不溶物をろ別した。再度、減圧下で溶媒を留去し、白色固体2.278gを得た。
Figure 0005556977
3.2−シアノアクリレート系接着剤組成物の製造
・実施例1
2−シアノアクリル酸エチルに、二酸化硫黄を20ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸エチルを100質量部とする)配合し、これに1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩を100ppm配合して、室温(15〜30℃)で30分間撹拌、混合して接着剤組成物を製造した。得られた接着剤組成物を用いて、アルミニウム及び鉄に対する接着速度、粘度並びに貯蔵安定性を評価した。結果は表2のとおりである。
・実施例2〜13及び比較例1〜5
接着剤組成物に配合するオニウム塩、又は硬化促進剤を表2、3のように代えた以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を製造して評価した。結果は表2、3のとおりである。
・実施例14
2−シアノアクリル酸エチルに、二酸化硫黄を20ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸エチルを100質量部とする)配合し、これに1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩を500ppm配合して、室温(15〜30℃)で30分間撹拌、混合して接着剤組成物を製造した。得られた接着剤組成物を用いて、熱可塑性エラストマーに対する接着速度、粘度及び貯蔵安定性を評価した。結果は表4のとおりである。
・実施例15〜22及び比較例6〜8
接着剤組成物に配合するオニウム塩、又は添加剤を表4のように代えた以外は、実施例14と同様にして接着剤組成物を製造して評価した。結果は表4とおりである。
Figure 0005556977
Figure 0005556977
Figure 0005556977
表2及び表3の結果によれば、実施例1〜13の接着剤組成物は、従来の硬化促進剤を配合した接着剤組成物(比較例1〜3)や、本発明の範囲外のオニウム塩を配合した接着剤組成物(比較例4)に比べ、アルミニウム及び鉄に対して優れた接着速度を発現する。また、50℃、95%RH×2週間後の粘度変化も2倍以内であり、貯蔵安定性にも優れていることがわかる。
更に表4の結果によれば、実施例14〜22の接着剤組成物は、従来の硬化促進剤を配合した接着剤組成物(比較例6、7)に比べ、熱可塑性エラストマーに対して優れた接着速度を発現する。また、50℃、95%RH×1週間後の粘度変化も1.5倍以内であり、貯蔵安定性にも優れていることがわかる。
・実施例23
2−シアノアクリル酸エチルに、二酸化硫黄を20ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸エチルを100質量部とする)配合し、これに1−ブチル−3−メチルピリジニウム硫酸水素塩(表1のオニウム塩B)を150ppm配合して、室温(15〜30℃)で30分間撹拌、混合して接着剤組成物を製造した。得られた接着剤組成物を用いて、アルミニウム、鉄及び熱可塑性エラストマーに対する接着速度、および硬化物の外観を評価した。結果は表5のとおりである。
・実施例24〜34及び比較例9〜14
接着剤組成物に配合するオニウム塩、又は硬化促進剤を表5、6のように代えた以外は、実施例23と同様にして接着剤組成物を製造して評価した。結果は表5、6のとおりである。
Figure 0005556977
Figure 0005556977
表5及び表6の結果によれば、実施例23〜34の接着剤組成物は、従来の硬化促進剤を配合した接着剤組成物(比較例9、10)や、本発明の範囲外のオニウム塩を配合した接着剤組成物(比較例11〜13)と比較しても、アルミニウム、鉄、及び極性の低い熱可塑性エラストマーに対して優れた接着速度を発現すると共に、EPDM、軟質PVCいずれの基材上においても、硬化物外観に優れていることがわかる。
本発明は、2−シアノアクリル酸エステルを含有し、所謂、瞬間接着剤として一般家庭用、医療分野等の他、各種産業界などの広範な製品、技術分野において利用することができる。特に、金属の短時間接着が要求される用途に有用である。

Claims (5)

  1. 2−シアノアクリル酸エステル(a)と、下記一般式(1)で表されるオニウム塩(b)とを含有することを特徴とする2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
    +- (1)
    [式中、C+はオニウムカチオンである。A-は硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、R1SO3 -で表されるスルホン酸アニオン(R1はアルキル基、炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、パーフルオロアリール基、アラルキル基、もしくはハロゲン原子である)、又は(R2SO22-で表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオンである(R2はアルキル基、パーフルオロアルキル基、もしくはアリール基である)。]
  2. 前記オニウム塩(b)のカチオンが、第四級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、及び第三級スルホニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも一つのオニウムカチオンであることを特徴とする請求項1に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
  3. 前記オニウム塩(b)のアニオンが、硫酸水素アニオン及びビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオンの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1又は2に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
  4. 前記オニウム塩(b)のアニオンが、硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、及びR1SO3 -で表されるスルホン酸アニオン(R1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である)。]からなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
  5. 前記オニウム塩(b)の含有量が、前記2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、10〜20000ppmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
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